海洋安全保障情報旬報 2023年05月21日-05月31日

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5月22日「拡大する中国の海洋進出―米専門家論説」(Proceedings, USNI, May 22, 2023)

 5月22日付のThe U.S. Naval Instituteが発行する月刊誌Proceedingsのウエブサイトは、元U.S. Navy 情報将校で、米政府職員の能力向上計画に基づきジュネーブのGeneva Centre for Security Policy in Geneva, Switzerlandで研究を行っているJames E. Fanell退役海軍大佐の“China: Growing and Going to Sea”と題する論説を掲載し、ここでJames E. Fanellは2022年の中国海軍は艦船の総数、トン数、超音速対艦巡航ミサイルの総数で米海軍を凌駕し、外洋進出を図っており、習近平国家主席は戦争の準備を進めているとする演説を行ったとして、要旨以下のように述べている。
(1) 2022年、地球上で最大の海軍である中国人民解放軍海軍(以下、「PLAN」という)は、艦船の総数、トン数、超音速対艦巡航ミサイルの総数で米海軍を凌駕し、台湾に焦点を当てた総合火力演習への支援や、ロシアとの共同作戦の増加とともに、第1列島線の外側で空母による作戦を遂行するなど外洋へと進出し、台湾侵略の可能性を含め、あらゆる命令を実行できることを示している。
(2) 中国は2022年に10隻の戦闘艦を就役させた。それは075Type強襲揚陸艦1隻、Type055ミサイル駆逐艦3隻、Type052Dミサイル駆逐艦4隻、Type054Aフリゲート1隻、そして非大気依存型推進システム搭載のType039通常型潜水艦1隻である(原文は‘ten warships and one submarine’と書かれているが、上述のように内訳の合計で10隻である。訳者注)PLANは、少なくとも過去5年間はそうであったように、世界で最も多くの艦船を就役させている。注目すべきは、中国で最も技術的に進んだ80,000トンの空母「福建」の進水であり、これはアジア諸国がこれまでに建造した中で最大の艦艇である。2023年中に海上公試が行われる予定で、電磁カタパルトにより、固定翼の早期警戒機などの大型航空機の発艦が可能になり、スキージャンプ方式を採用する「遼寧」や「山東」よりもはるかに高い戦闘能力を持つ。
(3) PLANは同様に、水陸両用戦艦艇の建造を強化している。2022年9月にType075強襲揚陸艦(LHA)3番艦「安徽」を就役させ、2020年以降に就役した2隻のType071ドック型輸送揚陸艦(LPD)とともに、強固な遠征打撃群能力の開発へのPLANの意図は明らかである。2022年8月には、生産中止と思われていたType052Dミサイル駆逐艦の量産を再開し、大連の造船所で建造中の5隻が撮影された。
(4) PLANは、U.S. Navyの潜水艦戦力との差を縮め続けている。中国は、唯一の原子力潜水艦建造施設である葫芦島の造船所に新しい造船施設を建設している。これらの新しい施設は、弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(以下、SSBNと言う)と攻撃型原子力潜水艦(以下、SSNと言う)の両方を含む4から5隻の潜水艦を一度に建造できると見積もられている。2022年10月には、現行の潜水艦よりも大きく、雑音が低く、能力が高いとされる新型のType095 SSNまたはType096 SSBNの建造を示唆する船体が確認されている。2022年5月には、垂直発射システムを組み込んだ潜水艦が確認され、これが既存SSNの改修か、新型かは明確ではないが、注視するべき能力を示している。
(5) 11月にU.S. Pacific Flee司令官Samuel Paparo大将は、PLANが運用中のType094 SSBNの6隻が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)JL-3を搭載していることを認めた。前身のJL-2は射程約7,200kmで、米国東海岸を目標にするにはハワイ以東まで進出しなければならなかったが、JL-3の射程は10,000kmとされ、南シナ海の聖域から米国本土全域を攻撃することが可能となる。
(6) 10年あまりの間に、PLANは空母を持たない状態から3隻の空母を保有するようになり、そのうち2隻は完全に運用されている。PLANは、米海軍と同じように空母打撃群を編成し、ミサイル駆逐艦に対空戦指揮官を乗せ、さらに護衛艦および補給艦を配置している。2022年8月2日にNancy Pelosi前米下院議長が台湾を訪問したことを受け、中国人民解放軍は8月4日から10日まで台湾周辺で大規模な空・ミサイル・海上演習を実施した。この演習では、ミサイル、宇宙、サイバー、航空、陸軍、海軍の各戦力を協調的に運用し、台湾を孤立させ、侵攻軍に対する沿岸部の抵抗を最小限に抑えることを目的とした新しい統合軍の運用が試された。
(7) PLAN の日本海域およびその周辺での活動は増加しており、その多くはロシア海軍と連携している。8月には、ロシアの戦略指揮所演習Vostok 2022に参加するための部隊を派遣している。この後、PLANとロシア海軍は、共同哨戒を行った。ロシアがウクライナに侵攻してから2年目を迎え、世界は中国が同様に台湾に侵攻するのではないかと考えている。2023年3月の全国人民代表大会と中国人民政治協商会議において、中国の習近平国家主席は4つの演説を行い、戦争の準備を進めていると述べている。
記事参照:China: Growing and Going to Sea

5月22日「中東で第2のQUAD誕生か?―インド専門家論説」(The Diplomat, May 22, 2023)

 5月22日付のデジタル誌The Diplomatは、インドのシンクタンクThe Observer Research FoundationのThe Centre for Security, Strategy & Technologyセンター長Dr. Rajeswari (Raji) Pillai Rajagopalanの “A Second Quad in the Making in the Middle East?”と題する論説を掲載し、ここでRajeswari (Raji) Pillai Rajagopalanは中東では現在インド、米国、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)の4ヵ国の国家安全保障フォーラム(I2U2)が活動しているが、米国とインドは、このI2U2の努力をさらに価値のあるものにするために、中東においてインド、米国、サウジアラビア、UAEから成る第2のQUAD結成を模索しているとして、要旨以下のように述べている。
(1) インド、米国、サウジアラビア、UAEの4ヵ国の国家安全保障担当補佐官が最近サウジアラビアで会合した。これは中東諸国が関与する第2のQUADとなる可能性がある。第2のQUADはI2U2とも呼ばれているもので、構成国はインド、米国、イスラエル、UAEである。米ホワイトハウスの声明によると、米国のJake Sullivan国家安全保障問題担当補佐官、インドのAjit Doval国家安全保障問題担当補佐官、サウジアラビアのMohammed bin Salman皇太子、UAEのSheikh Tahnoon bin Zayed Al Nahyan国家安全保障問題担当補佐官が2023年5月7日に「より安全で繁栄した中東という共通の展望を前進させる」ために会談した。インドと米国は近年、中東への外交的働きかけを強化している。2020年に署名されたアブラハム合意は、イスラエル、UAE、バーレーンを含む中東の多くの国々間の関係の正常化を発展させ、外交活動への新たな扉を開く上で重要であった。これらの国々間の関係の正常化は、特に防衛と安全保障の分野で新しい可能性を探求するための道を開いた。 
(2) イスラエルとサウジアラビアはまだ外交関係を正常化していないが、双方の間には根強い裏での交流がある。この両国は、中東における米国の存在感と影響力の低下を警戒しており、イランの核開発計画とこの地域での軍事資金提供活動について米国がテヘランに「圧力」をかけ続けることを望んでいる。両国の関係は拡大しているが、サウジアラビアはまだイスラエルとの関係を正常化する準備ができていない。イスラエルのNetanyahu首相は、イスラエルが潜在的に強力な提携国となることを依然として期待している。そして、サウジアラビアは、イスラエルとの関係正常化の代償として、米国からの安全保障、民間の核開発計画への支援、米国の武器売却に対する制限を減らすことを求めている。最新の報道によると、Biden政権は2023年末までにサウジアラビアとイスラエルが和平協定を結ぶことに自信を持っているようである。 
(3) 一方、インドも中東での外交を強化している。インドは中東と古くからのつながりがあるが、近年、高官級相互訪問により、外交関係は進んでいる。Gulf Cooperation Council(湾岸協力会議:以下、GCCと言う)と個々のGCC諸国、特にUAEとサウジアラビアは、インドのエネルギー確保において不可欠の国々であり、投資の重要な提携国であり続けている。過去10年間の関係は、防衛と安全保障の関係、特に海上安全保障、テロ対策、サイバーセキュリティを含め、拡大してきた。インドのModi政権の「ルック・ウェスト」政策は、中東に本格的に浸透することに成功したが、インドと中東の関係はまだ脆弱である。Modi首相の訪問は、抗議行動後の関係強化に加えて、UAEの新大統領とアブダビの支配者との人事関係を作ることも意図していた。
(4) インドと米国は中東で長期的な存在感を示してきたが、中国が中東で対立関係にあったサウジアラビアとイランの間の和平を仲介するなど、この地域で中国が果たす役割が高まっている。2023年3月初旬、イランの最高国家安全保障会議書記のAli Shamkhaniとサウジアラビアの国家安全保障顧問Musaid bin Muhammad Al-Aibanは、北京で長年の敵対行為を終わらせ、両国間の外交関係を再確立する合意に署名した。中東も中国の一帯一路構想の重要な要素であり、中国の国有企業は地域全体に鉄道、道路、港湾、電力供給網を建設している。
(5) 米国のSullivan国家安全保障問題担当補佐官は、ワシントン近東政策研究所での演説の中で、中東に対する米国の将来像は、提携、抑止、外交と緊張緩和、統合、価値観という5つの重要な要素に基づいて構築されていると述べ、これらのそれぞれを詳しく説明し、提携の分野では、サウジアラビア、インド、アラブ首長国連邦の国家安全保障問題担当補佐官との会談について述べている。Sullivan補佐官は演説で、インド、イスラエル、UAE、米国の「中東QUAD」にも言及し、「(I2U2の)基本的な概念は、米国の経済技術と外交を進歩させる方法で南アジアと中東、そして米国を結ぶことである」と付け加え、すでに進行中の多くの計画があり、今後さらに多くの構想が予定されていると述べている。
(6) 南アジアや中東などのさまざまな地域を革新的な方法で統合し、インフラ、技術開発、防衛、安全保障におけるより大きな協力をもたらすことは、中東やその他の場所での中国の忍び寄る存在感を和らげるために大いに必要である。I2U2が現在稼働中のフォーラムであり、米国とインドは、このI2U2の努力をさらに価値のあるものにするために、第2の中東におけるQUAD結成を模索しているところである。
記事参照:A Second Quad in the Making in the Middle East?

5月22日「米国とパプアニューギニア、地域安全保障と中国抑制のために防衛協力協定締結―英通信社報道」(Reuters, May 22, 2023)

 5月22日付けの国際ニュース通信社Reuterのウエブサイトは、“US, Papua New Guinea sign defence agreement as Modi pledges support for Pacific Islands”と題する記事を掲載し、米国とパプアニューギニアが締結した防衛協力協定と地域情勢について、要旨以下のように報じている。
(1) 米国務長官Antony Blinkenは、5月22日にパプアニューギニアと締結した防衛協力協定が、この太平洋島嶼国の能力を拡大し、米軍がその軍隊との訓練を行うことをより容易にするだろうと述べている。
(2) Antony Blinken国務長官とインドの首相Narendra Modiは、パプアニューギニアの首都ポートモレスビーで14の太平洋島嶼国の指導者と個別の会合を開き、健康、開発、気候変動という地域の優先事項への支援を約束した。米国とその同盟国は、台湾をめぐる緊張の中で高まる懸念、中国政府がソロモン諸島との安全保障協定を締結した後、太平洋島嶼国が中国との安全保障関係を形成することを抑止しようとしている。
(3) その領土が4,000万平方kmの海洋を跨いでいる太平洋島嶼国の指導者たちは、気候変動による海面上昇が彼らにとって最も差し迫った安全保障上の優先事項と述べている。
(4) Antony Blinkenは、パプアニューギニアの首相James Marapeに対して、米政府がパプアニューギニアとの提携を全面的に深化させ、米国企業との提携が数百億ドル相当の新たな投資をもたらすことを期待していると伝えている。
(5) James Marape首相は共同記者会見において、この協定は既存の米軍との関係を更新するものであり、「中国とは何の関係もない」と述べている。
(6) James Marape首相は5月21日、この防衛協定により、今後10年間で米軍の展開が増加するだろうと述べ、一方でU.S. Department of Stateは、これが地域の安全保障を強化すると述べている。防衛協定は、人道支援と災害救援を強化し、米軍とパプアニューギニア軍との共同訓練を容易にするためのパプアニューギニアの国防能力を拡大するだろうとAntony Blinken国務長官は述べている。
(7) この動きに関して、中国外交部の報道官毛寧は、「我々が警戒する必要があるのは、協力の名の下で地政学的な駆け引きに参加すること」と述べている。
(8) 米国とパプアニューギニアは、U.S. Coast Guardの哨戒によりパプアニューギニアの排他的経済水域の監視を強化する別の協定を締結し、違法漁業からその経済を保護する。
(9) 経済と安全保障を強化するためにパプアニューギニアと協力することになったため、米国は新たに4,500万ドルの資金を提供する。これには、Papua New Guinea Defence Forceへの防護装備、気候変動緩和、国際犯罪とHIV/AIDSへの対策が含まれるとBlinkenは述べている。
(10) 太平洋島嶼国14ヵ国の指導者たちに対し、Blinkenは秋にワシントンで行われる、2022年の初会合に続く2回目の首脳会談にBiden米大統領が彼らを招待していると伝えている。
(11) Narendra Modi首相は、Forum for India-Pacific Islands Cooperation(インド太平洋諸島協力フォーラム)においてインドは開発のために信頼できる提携国であり、「自由で、開かれ、包括的なインド太平洋」に尽力すると話した。オーストラリア、米国、日本、インドのQUADの指導者たちは、5月第3週の週末に日本で、太平洋地域との協力を強化することで合意したとModiは述べている。
(12) パプアニューギニアで、米国はパラオと自由連合盟約(以下、COFAと言う)の更新に署名し、5月23日にはさらにミクロネシアと署名する予定である。これにより、米国はこれらの国家の防衛に責任をもち、広範な太平洋地域の利用が引き続き可能になる。Antony Blinken国務長官は、米政府がマーシャル諸島との3番目のCOFAについて「すぐに」交渉を開始することを楽しみにしており、3つの協定の下で、米国は20年間で71億ドルを拠出することになると述べている。
記事参照:US, Papua New Guinea sign defence agreement as Modi pledges support for Pacific Islands

5月23日「QUADは対中国グループ以上の存在になるべきである―オーストラリア戦略研究者論説」(The Strategist, May 23, 2023)

 5月23日付のAustralian Strategic Policy InstituteのウエブサイトThe Strategist は、同シンクタンクのアナリストTeesta PrakashとGatra Priyanditaによる“How the Quad can become more than an anti-China grouping”と題する論説を掲載し、そこで両名はQUADが地域への関与を成功裏に進めるためには、東南アジア諸国との協調が重要であり、そのためには過度に中国との対決姿勢を打ち出してはならないとして、要旨以下のように述べている。
(1) QUADが戦略的に成功するためには、インド太平洋地域の、特に東南アジアの国々からの賛同を得る必要がある。地域における中国の経済的影響力等の拡大を東南アジア諸国は懸念しつつも、彼らはQUADが中国と対決する協力枠組みとなることに警戒してもいる。したがって、QUADはQUADの地域への関与のあり方を東南アジアのそれと一致させることによって、幅広い同意を得ることが重要になってくる。
(2) そうした意味で、東南アジア諸国のQUADに対する見方は、安全保障に焦点を当てたAUKUSに対するものよりも好意的である。QUADが地域の繁栄に役割を果たすことを強調しているためである。2017年にQUADが再始動してからその方向性は明確であり、2020年の共同声明以降、QUAD構成国首脳はASEANの中心性やASEAN主導の機構に対する支持を再確認してきている。
(3) 上述の認識の下で、QUADはCOVID-19用ワクチンの大規模な提供や海洋状況把握に関する提携など地域への実践的な協力を進めてきた。特に海洋状況把握は地域の国々にとって必要なものであった。そのほとんどが沿岸諸国でありながらも、東南アジア諸国の海軍や沿岸警備隊は海域の監視や海上で起こる課題への対処に苦慮してきたからである。こうした構想は、東南アジアの安定を構築するためにQUADが関わりうる問題の範囲が幅広いことを示してきた。
(4) そのうえでQUAD諸国は、こうした幅広い構想が効果的に進められる努力を続ける必要がある。そのためにはまず、東南アジアにおける関与を調整するための独立した作業委員会を創設すべきであろう。そうすることで、地域への必要な関与を実践的なものにすることができ、またQUADが共通の目標に向けて動いていることを示すことができる。そしてこの委員会は、QUAD特有の関与に集中すべきである。つまり制度としてのASEANを脇に追いやるようなことがあってはならない。重要なことは、東南アジア諸国の利益と必要性を念頭に置くことである。東南アジア諸国の多くが中国の台頭に警戒しつつも、QUADの関与のあり方が過度に中国と対決するようなものであれば、QUADに対する疑念は強まる。
(5) この点においてQUADにはメンバーの半数がアジアの国で、そのすべてがインド太平洋地域の国だという利点がある。すなわち世界が二極ではなく多極化していることを反映しているのである。QUADはその立場を活かし、東南アジアをはじめとするインド太平洋諸国の戦略的選択と主体性を維持するよう行動すべきである。QUADと既存の東南アジアの機構による幅広い戦略的協調は、インド太平洋における安定を強化することに大きく寄与するであろう。
記事参照:How the Quad can become more than an anti-China grouping

5月24日「AUKUSの拡大―シンガポール専門家論説」(IDSS Paper, RSIS, May 24, 2023)

 5月24日付のシンガポールのThe S. Rajaratnam School of International Studies(RSIS)が発行するIDSS Paperは、同SchoolのMilitary Transformations計画の研究員Manoj HARJANIの” Is an AUKUS Expansion on the Cards?”と題する論説を掲載し、ここでManoj HARJANIはAUKUSをはじめとして近年、インド太平洋地域で成立した少数国間枠組みがどのように発展していくかは未解決の問題で、それらの構想の重複は調整の課題であるとして、要旨以下のように述べている。
(1) 2021年に締結されたAUKUSからカナダが除外されたことは、Five Eyes情報共有同盟(以下、「FVEY」と言う)のメンバーであることを考えると除け者にされた印象を受ける。FVEYは、AUKUSの3ヵ国とカナダ、ニュージーランドで構成され、始まりは第2次世界大戦にまで遡る。AUKUSが締結された際、カナダのJustin Trudeau首相は、AUKUSの対象が原子力潜水艦であることを強調し、自国が除外されたとの認識は薄かった。AUKUSの中心は、確かにオーストラリアの原子力潜水艦の取得を支援する英米の合意だったが、サイバー能力、人工知能、量子技術、及び海底における能力にも及んでいる。カナダは最近、AUKUSへの参加に関心を示しているが、それが現実となれば、FVEY以外の国も含めて、他の国もAUKUSに参加できることになる。
(2) 2021年9月にオーストラリア、英国、米国がAUKUS協定を発表したとき、一部の国は否定的な反応を示した。中国共産党の機関紙『環球時報』は、「冷戦の精神」の新たな表現と評し、フランスはAUKUSがオーストラリアに攻撃型潜水艦を供給する既存の600億米ドルの契約の取り消しにつながるとして、「裏切り」と呼んだ。東南アジア諸国の反応はまちまちで、マレーシア、インドネシア、フィリピンは、この地域で軍拡競争が激化することへの懸念を表明し、シンガポールとベトナムは、暗黙の支持を示した。タイは正式な反応を示さなかった。これはどちらかの側に立つことを避けるためかもしれない。ASEANも同様に沈黙を守っているが、これは域内の大国間競争に関する加盟国間の長年の溝を反映している。
(3) 重要なのは、AUKUSの交渉が秘密裏に進められ、関係する3ヵ国の同盟国や提携国を驚かせたことである。また、原子力潜水艦と核兵器搭載潜水艦を区別していない国も多く、核拡散に対する懸念は根強い。一方、AUKUSは潜水艦が強調され過ぎたため、第2の柱と称されるもう1つの側面への関心が薄れている。ここには、自律型水中船、量子技術、AI、高度なサイバー防衛、極超音速兵器、電子戦の能力開発が含まれる。これらの技術は、現時点ではまだ発展途上であるが、将来の戦争のあり方を決定付けると期待されている。
(4) カナダがAUKUSの第2の柱に参加することに、障害がないわけではない。カナダは、GDPの2%を防衛費として毎年支出するというNATOの目標に遅れをとっており、2022/2023会計年度には1.29%にしか達していない。しかし、カナダはFVEYに加盟している以上、AUKUSに参加するのに有利な立場にある。米国の国際武器取引規制(International Traffic in Arms Regulations :ITAR)に基づく独自の免除措置によってカナダの防衛産業は1990年代に設立された米国の国家技術・産業基盤に参加している。さらに、特定の技術におけるカナダの強みは、第2の柱の多くの重点分野にとって資産となり得る。たとえば、カナダはAIの研究開発エコシステムが充実しており、Stanford Universityが開発したGlobal AI Vibrancyの順位付けでは29ヵ国中5位に位置付けられている。また、カナダは量子技術における世界的先導者もあり、さらに第2の柱と重なる自律走行車やサイバー防衛などの分野の研究を奨励している。
(5) カナダ以外にも、ニュージーランドがAUKUSの第2の柱への参加を希望している。両国の加盟が実現すれば、FVEYがAUKUSによって事実上分裂しているという懸念を払拭し、安全保障協力を活性化させることができる。インドと日本も、オーストラリア、米国とともにQUADに属していることから、将来的にAUKUSに加盟する可能性があると言われている。当初米国は、AUKUSを他の国々に拡大しない立場を採っていたが、ウクライナ戦争をきっかけに、その態度は変化している。
(6) 東南アジアでは、最近AUKUSに対する態度が軟化してきている。たとえば、2023年3月にオーストラリアの原子力潜水艦の取得に関する詳細が発表された後、マレーシアとインドネシアは2021年と比較して異なる反応を示し、ある程度の融和を示唆した。しかし、AUKUSをはじめ、インド太平洋地域で近年生まれた少国間枠組みが今後どのように発展していくかは、未解決の問題である。このような枠組みがASEANの中心性に与える懸念に加え、特にインド太平洋を重視する防衛戦略の転換を図る国が増える中、さまざまな構想が重複する部分については調整すべき課題となっている。
記事参照:Is an AUKUS Expansion on the Cards?

5月24日「海底ケーブルを守るためのQUADとICPCの役割―インド専門家論説」(The Interpreter, May 24, 2023)

 5月24日付のオーストラリアのシンクタンクLowy InstituteのウエブサイトThe Interpreterは、インドのJawaharlal Nehru University修士課程院生であり、インドのシンクタンクCentre for Air Power Studiesの研究研修生Aishwarya Acharyaの“The Quad needs to talk security for subsea cables”と題する論説を掲載し、Aishwarya AcharyaはQUADがInternational Cable Protection Committee(国際ケーブル保護委員会)を通して海底ケーブルの安全保障に取り組む必要があるとして、要旨以下のように述べている。
(1) 1958年に設立されたInternational Cable Protection Committee(国際ケーブル保護委員会:以下、ICPCと言う)は、企業から政府機関まで、約190の加盟団体に代表される69ヵ国から成る国際機関である。名前からも分かるように、この委員会の目的は、世界の海洋を跨ぐ広大な通信網の保護を目指し、情報の共有、意識向上および維持管理に焦点を当てた方針を策定している。
(2) ICPCは機関として、意図的な脅威から海底ケーブルの安全性について、真剣に議論することが可能である。しかし、多くの多国間組織と同様に、この議論が具体的な行動に結びついていかないようである。最近では、NATOはウクライナ戦争を受けてロシアによる海底ケーブルへの攻撃が起こる可能性を検討している。一方で、米中間の技術競争の激化に伴い、同様に海底ケーブルへの関心も集まっている。しかし、デジタル時代の発展に対する国際規制は追いついていない。
(3) 事実、海底ケーブルに特化した特定の国際法的枠組みは存在しない。海底ケーブルは大陸間通信のデータや情報の流れの約97%を担っている。
(4) 2023年2月には、中国の船舶が馬祖島のインターネット・ケーブルを切断し、台湾の周辺島を約6週間にわたって不安な孤立状態に追い込んだ。中国の華為海洋網絡が海底ケーブル業界で台頭しており、中国のスパイ活動に対する懸念が多方面で増大している。
(5) しかし、中国が情報の支配を目指したとしても、QUAD構成国が構築した既存の強固な海底ケーブルの構造を上回る必要がある。米国のSubCom LLCや日本のNECはトップ2の海底ケーブル製造業者であり、一方でオーストラリアとインドは太平洋とインド洋で戦略的な位置にあることから、海底電気通信運営業者とネットワーク・サービス・プロバイダーの合併企業にとってそれぞれが経路設定の優先事項となっている。
(6) この重要な基幹設備の保護はQUADの責任である。そして、ICPCはQUADが海底ケーブル・エコシステムにおける利害関係者、つまり製造業者、敷設業者、保守整備業者、ネットワーク運営業者、そして主要なクラウド・サービス・プロバイダーと交流するための最適な機会を提供している。
(7) QUADの国々は、ICPCにおいて、海底ケーブルへの意図的な損傷に対する責任追求の機構を実行するまでいかなくても、強化する機会を模索することで「安全保障」について議論することができる。特に地位が上昇しているインドは、安全性の側面を推進する必要がある。オーストラリア政府のDepartment of Home Affairsは既にICPCのメンバーであり、他のQUAD構成国も、海底ケーブルの安全の必要性に関する重大さを示すために、関連する政府機関が参加するようにすべきである。
記事参照:The Quad needs to talk security for subsea cables
関連記事:8月2日「インド太平洋を繋ぐ海底ケーブルのためにオーストラリアは一層尽力すべし:オーストラリア専門家論説」(The Strategist, August 2, 2022)
https://www.spf.org/oceans/analysis_ja01/_20220801.html

5月25日「フィリピンとベトナムが南シナ海で中国に対抗するために手を組む―フィリピン専門家論説」(Asia Times, May 25, 2023)

 5月25日付の香港のデジタル紙Asia Timesは、University of the Philippines, Asian Center上席講師Richard Javad Heydarianの〝Philippines-Vietnam teaming up on China in South China Sea″と題する論説を掲載し、ここでRichard Javad Heydarianは中国による南シナ海支配に対抗するため、フィリピンとベトナムが協力関係を強化しているとして、両国関係の変遷や越比両国とASEANの関係について、要旨以下のように述べている。
(1) フィリピンのFerdinand Marcos Jr.大統領は、欧米同盟国との防衛関係を活性化させただけでなく、中国の南シナ海での主張に反発する地域諸国との戦略的協力の強化を図っている。特にベトナムは、地政学的に重要な海域で争っている中国の野心を抑制し、後退させるというフィリピンの新たな地域戦略に、極めて重要な役割を果たしている。
(2) 5月初め、Marcos Jr.は就任1年目にして3度目のベトナム政府高官との高官級会談を行った。インドネシアで開催された第42回ASEAN首脳会議および関連首脳会議に合わせて、ベトナムのPham Minh Chinh首相と会談し、両首脳は南シナ海に重点を置いた戦略的協力の強化を約束した。5月中旬、両国はJoint Permanent Working Group on Maritime and Ocean Concerns(海洋・大洋問題常設共同作業部会:JWG-MOC)を開催し、南シナ海に関する2国間行動規範(COC)を共同で提唱した。この会合には、外交官のほか、Philippine Coast Guard、National Security Council、Department of National Defense、Bureau of Fisheries and Aquatic Resourcesなどの関係機関の幹部が出席した。
(3) ベトナムは、フィリピンが2016年にハーグで中国を相手に画期的な仲裁裁定勝利を得たことを支持しており、両国は 「UNCLOSに基づき自国の権利と正当な利益を守るために協力し、関連機関間の信頼醸成措置を強化すること」でも合意した。また、両国は海洋環境保護、捜索・救助、漁業管理など、南シナ海におけるあらゆる協力活動に取り組むことを強調した。
(4) フィリピンの親中派Rodrigo Duterte前大統領の下で何年も中断が続いた後、フィリピンとベトナムは、中国による近海支配と軍事化に対抗するASEAN内の抵抗軸となる可能性を模索している。フィリピンとベトナムをイデオロギー面で対立させた冷戦終結以来、両国は、中国がこの地域で力を発揮するたびに、共同して抵抗した。Fidel Ramos政権時代(1992-1998)、フィリピンはベトナムのASEAN加盟を積極的に支援し、東南アジア全体の地域統合と地政学的関係の安定を図った。1994年、中国がフィリピンの領土であるミスチーフ礁を占拠した際、フィリピン政府はベトナム政府と連携して地域的な対応を強く主張し、2002年の「南シナ海における関係国の行動宣言」(DOC)として結実させた。
(5) その10年後、Gloria Arroyo大統領(2001-2010)は、紛争海域の資源を共同で管理するための幅広い取り組みの一環として、ベトナム、中国との3ヵ国共同海洋地震探査事業(JMSU)協定を結んだ。ASEANの大半の加盟国は中国政府との対決に消極的であったため、フィリピンとベトナムは、地域組織内でタカ派コンビと目された。2010年、ベトナムは、南シナ海で強まる中国支配に対抗するため、米国の戦略的展開をより強固なものにするよう主張し、ASEANのために闘った。これに対し、オバマ政権は、南シナ海での航行の自由を初めて「国益」の優先事項として明確に位置づけた。
(6) 1990年代半ばのミスチーフ礁危機がASEANの2ヵ国を結びつけたように、2012年のスカボロー礁危機は、戦略的協力の強化にさらなる弾みをつけるものとなった。2014年は、両国の関係にとって新たな節目となる年であった。南シナ海の係争地の1つで、比越海軍部隊がスポーツ交流を通じて友情と友好の新時代を告げた。2014年には、当時のフィリピンAquino大統領とベトナムのNguyen Tan Dung首相との会談も行われた。双方は中国に対抗する新たな同盟関係を強固にするため、あらゆる取り組みを模索した。
(7) 一方、フィリピンが南シナ海の紛争をUNCLOSに基づいてハーグの国際法廷に提訴し、最終的に中国の拡張的な領有権主張を違法とする判決を得たことについて、両者は緊密に連携した。フィリピン政府は、ベトナム政府がアジアの超大国に対する裁判への参加や提訴を決めた場合、繰り返し支援を行ってきた。さらに、ベトナムがフィリピンへの艦艇の親善訪問を強化したのと同様に、両国は共同演習、防衛会議、中国の海洋活動に関する情報共有の拡大に努めた。Aquino政権末期には、長期的な戦略的協力の道筋を示す「フィリピン共和国とベトナム社会主義共和国の戦略的パートナーシップの確立に関する共同声明」を両者が発表している。
(8) 2016年に親中派のRodrigo Duterteがフィリピン大統領に選出されたことで、進展していた比越の戦略的関係が頓挫した。Duterte大統領は、6年間の任期中、ベトナムの首脳部を1人も受け入れず、ほとんど無視しただけでなく、海洋紛争に関する北京の路線を従属的に鸚鵡返しにしてきた。フィリピンがASEAN議長国であった2017年には、ベトナムが中国による海洋紛争の軍事化に反対してASEANの姿勢強化を求めたが、フィリピンの指導者は海洋紛争を問題にしなかった。2017年、南シナ海でフィリピンの艦艇とベトナムの漁船が衝突し、2人のベトナム人漁師が死亡したことで、2国間の関係はどん底となった。しかし、2019年、フィリピンと中国が領有権を争うリード堆で中国民兵のものと思われる船と衝突して溺れかけた十数名のフィリピン人漁師をベトナムの漁師が救助する事件があり、2020年には、パラセル(西沙)諸島で中国海兵隊がベトナム漁船を沈没させた事件で、フィリピンはベトナムを外交的に支援し、恩返しをした。Duterte政権末期には、別のフィリピン人漁師がベトナムに救われ、2国間関係がますます強固になった。
(9) Marcos Jr.の大統領当選は、2国間関係に新たなエネルギーを注入し、南シナ海の領有権を主張する2ヵ国間の事実上の同盟という希望を蘇らせた。2022年11月、フィリピンのMarcos Jr.大統領は、カンボジアのプノンペンで開催されたASEAN首脳会談の際、ベトナムのChinh首相と、またマニラのマラカニアン宮殿でVuong Dinh Hueベトナム国会議長と会談を行った。前者の会談では、「食料安全保障、気候変動、防衛、食料供給を含む幅広い分野で 」ベトナムとの協力を「強化」することを約束した。また、マニラでの会談でも、「両国の優れた関係を構築し」、国際政治の場で相互に支援し続けることを誓っている。
記事参照:Philippines-Vietnam teaming up on China in South China Sea

5月25日「フランスのインド太平洋戦略全体を弱体化させかねない仏領マヨット島の国内危機―シンガポール専門家論説」(RSIS Commentary, RSIS, May 25, 2023)

 5月25日付のシンガポールのS. Rajaratnam School of International Studies(RSIS)のウエブサイトは、RSIS客員研究員Dr Paco Milhietの “France’s Indo-Pacific Strategy: Crisis in Mayotte”と題する論説を掲載し、ここでPaco Milhietはモザンビーク海峡北端に位置するコモロ諸島に隣接する仏領マヨット(Mayotte)島におけるコモロ諸島からの不法滞在者の追放に端を発した騒動がフランスのインド太平洋戦略を弱体化させかねないとして、要旨以下のように述べている。
(1) Macron フランス大統領は2018年以降、インド太平洋地域におけるフランスの資産を強化するためのインド太平洋戦略を発展させてきた。インド太平洋地域に所在するレユニオン島、マヨット島、ニューカレドニア、仏領ポリネシアフランスなどの海外領における主権の行使は、この戦略における主要な要素である。海外領の内、マダガスカルの北西300kmに位置するマヨット島では、幾つかの科学調査の結果、島周辺に大規模な天然ガスの埋蔵が確認され、同島のEEZは外国勢力の関心を引き付けることになった。たとえば、中国は既にこの海域で地震探査を実施しており、またロシアはマヨット島に対するコモロ連合の主権主張を支持している。
(2) マヨット島は、地理的にも文化的にもコモロ諸島に属している。群島全体は1886年からフランスの海外領土であったが、1974年に行われた自主的な住民投票により、95%が独立に賛成票を投じたが、マヨット島住民の63%がフランス共和国内に留まることを選択した。この結果、1975年7月にコモロ国家(コモロ連合)が創設されたが、マヨット島はフランス統治下に留まった。以来今日まで、コモロ連合は、マヨット島に対する完全な主権を主張し、住民の不法移住による危機が常態化している。この領有権問題は、フランスがインド太平洋戦略を推進する上での戦略的な難問となっている。コモロ連合のマヨット島に対する主権主張は、国連総会決議(第3385号と決議31/4)とアフリカ連合(現在の議長はコモロ連合の大統領)によって支持されている。コモロ政府の主権主張は、独立獲得後の国家的統一と領土保全の尊重を宣言した国連の原則(決議1514号)に基づく。一方、マヨット島に対するフランスの主権主張は、民族自決の自由という国連の原則に基づく。確かに、マヨット島の住民は1974年、1976年そして2009年に、フランス人であり続けるとの意志を表明してきた。
(3) マヨット島はフランスでは最貧県だが、隣人のコモロ住民よりもはるかに裕福である。マヨット島を巡るフランスとコモロの領有権紛争は、毎年何千人もの不法移民がより良い生活を求めてボートでマヨット島に押し寄せることで日常化している。その結果、マヨット島の住民(26万人)のほぼ2人に1人が外国籍となっている。不法移民は依然としてコモロ政府とフランス政府間の意見不一致の焦点で、関係改善の障害となっている。不法移民は深刻な社会不安をもたらしており、マヨット島住民の不安感を高めている。現在のマヨット島は不安定な状況にある。
(4) 社会的状況の悪化に加えて、マヨット島は地域的、さらには準地域的統合の過程からも阻害されたままである。インド洋に所在する別の仏領レユニオン島とは異なり、マヨット島は、セイシェル、モーリシャス、コモロ、マダガスカルおよびフランスから構成される政府間組織である「Indian Ocean Commission(インド洋委員会)」にも参加していない。フランス政府は、他のほとんどの加盟国から「新植民地主義」と非難されている。また、モーリシャスとマダガスカルは、マダガスカル周辺の4つの小さな無人島群、フランス領インド洋無人島群(les îles Eparses)に関してパリとの領有権紛争を抱えている。この状況は、この地域において合法的な行為者と見られたいフランス外交にとっては、厄介な問題となっている。
(5) マヨット島選出の国会議員は長年、不法移民を規制するための軍事的展開の強化を待ち望んできた。しかしながら、抑圧的な統治だけでは長期的な解決策にはならない。フランス政府とコモロ政府間には大きな意見の不一致があるが、2国間協力の拡大が不可欠である。不法移民に対する持続可能な解決策を見出せなければ、マヨット島の国内治安問題は、フランスのインド太平洋戦略全体を弱体化させる可能性がある。
記事参照:France’s Indo-Pacific Strategy: Crisis in Mayotte

5月26日「インド太平洋パートナーシップを通じてIUU漁業に対抗せよ―オーストラリア対外政策専門家・Pacific Islands Forum高官論説」(East Asia Forum, May 26, 2023)

 5月26日付のAustralian National UniversityのCrawford School of Public Policy のデジタル出版物EAST ASIA FORUM は、Asia-Pacific Development, Diplomacy & Defence Dialogue局長Melissa Conley TylerとPacific Islands Forum Fisheries Agency(太平洋諸島フォーラム)漁業機関漁業部部長Alllan Rahari、およびSustainable Fisheries上席顧問Keith Symingtonの“Australia can combat illegal fishing through Indo-Pacific partnerships”と題する論説を掲載し、そこで3名はオーストラリアが今こそ太平洋、インド洋、南氷洋に跨がる海域における違法・無報告・無規制漁業対策に乗り出し、関係各国との協力を推進していくべきであるとして、要旨以下のように述べている。
(1) 違法・無報告・無規制(以下、IUUと言う)漁業は、生態系や経済、ひいては人類の発展に影響を与える問題で、インド太平洋地域において優先的に対処しなければならない課題である。そのなかで、オーストラリアはIUU漁業に対する姿勢を再構築する必要がある。そのためには地域の提携国との協力、関与が重要になってくるだろう。IUU漁業は単独の国の問題ではなく、地域における協調のための機構を必要とし、国家間で教訓や情報を共有すべきものだからである。
(2) オーストラリアは、Pacific Islands Forum Fisheries Agencyの太平洋地域監視・管理・哨戒戦略を支持するなど、地域における協力の推進に重要な役割を担ってきた。オーストラリアはIUU漁業対策のために、毎年500万豪ドルの出資をしており、それは電子報告システムや電子管理システムの整備を促進するという結果を生み出している。こうした計画は、オーストラリアの長期的かつ継続的な関与を示している。
(3) オーストラリアはこうした関わりの記録を土台にして、現在関与している南氷洋だけでなく、太平洋、東南アジア、インド洋全体を跨いでIUU漁業に対処するための幅広い提携を構築できるだろう。南氷洋に関しては、今後諸国の関与が深まっていくに違いない。食料安全保障の問題が深刻化するなか、この海域での漁業を管理することがますます重要になる。また、オーストラリアは太平洋における関与を深めることができる。これまで、IUU漁業対策のための条約としてニウエ条約補助協定があったが、十分機能していたとは言い難い。今後、漁業機関と法執行機関との情報交換を強化するなどの手段が講じられていくことが求められる。
(4) 東南アジアへの関与も維持していくべきである。オーストラリアは地域の国々とトラック1.5レベルの対話を行い、ASEANの沿岸諸国とQUADの提携国を巻き込んで、協力や行動能力改善を推進できる。またオーストラリアは、これまでほとんど関与してこなかったインド洋における提携を拡大することもできる。インド洋は、オーストラリアにとって戦略的に重要であり、IUU漁業対策の最前線であるべきである。まず、環インド洋連合などへの関わりを深めることから始めるのがよいだろう。
(5) オーストラリアは、地域の既存の機構を通じて提携国との関係を強化できる。最近APECはIUU漁業対策のための道程に合意し、QUADも構想を開始している。また、日本などIUU漁業対策を実施し続けてきた提携国との協力を深めることができる。多国間の構想を推進することも大事だろう。IUU漁業との戦いはインド太平洋諸国にとっての最優先事項であり、オーストラリアは積極的に関わるべきである。オーストラリアはその独自の立場を利用して、地域間の教訓を共有し、魚類資源の保持に貢献するだけの能力がある。
記事参照:Australia can combat illegal fishing through Indo-Pacific partnerships

5月27日「AUKUS:海中からの抑止を強化―米専門家論説」(PacNet, Pacific Forum, CSIS, May 27, 2023)

 5月27日付の米シンクタンクCenter for Strategic and Intenational Sudeisの Pacific Forumが発行するPacNet Commentaryのウエブサイトは、Pacific Forum のIndo-Pacific Foreign and Security Policy Program上席部長John Hemmingsの“AUKUS: Enhancing Undersea Deterrence”と題する論説を掲載し、John HemmingsはAUKUSには安全保障上の連携と防衛産業基盤の強化による2つの間接的抑止を促進する一方、オーストラリアの攻撃型原子力潜水艦導入による海中からの抑止力の強化、敵の海上交通路、SLOCへの脅威、西太平洋への潜水艦部隊の集中、指揮機構の下で行動する統合された部隊の作戦能力といった4つの直接抑止機能をもたらすとして、要旨以下のように述べている。
(1) 米国の諜報機関は、2049年までに「中華民族の偉大な復興」を達成するという中国共産党の義務に駆り立てられて、習近平国家主席が人民解放軍にインド太平洋におけるアメリカの軍事力に対抗し、2027年までに台湾を奪取する準備をするよう命じたと示している。人民解放軍海軍は、その力量の増大を背景に東シナ海と南シナ海に対する違法な中国の主張を支持し、さらには強制するために、その海軍力を使用する可能性がある。
(2) この悪化する地政学的環境の中で、オーストラリア、英国、米国は、AUKUSと呼ばれる潜水艦および技術共有協定を作成した。
(3) AUKUSが能力・規模・兵力組成の観点から「直接抑止」をどのように助長するかを説明する前に「間接抑止」とはなにかを押さえておくことが重要である。「間接抑止」は安全保障上の連携と防衛産業基盤(以下、DIBと言う)の強化によって抑止を促進すること言う。AUKUSや日米豪3ヵ国協定およびQUADは少国間枠組みである。これらの少国間枠組みは厳密には同盟ではないが、参加国に軍事力の予備、または「防衛の連合型」とも呼ばれるものを提供する。米国内では、これらの連携は、2022年の国家安全保障戦略等で示された「統合抑止」という政権の組織原則と整合している。AUKUSは、さまざまな米国政府機関と米国の同盟国との間の計画、調整、および運用を促進するための取り組みを加速することに加えて、3ヵ国すべてに対してDIB段階での統合抑止も提供している。これを「海底からの抑止力」と呼ぶのは無理があるが、AUKUSによる海軍造船所等国防産業強化に言及しないのは怠慢であろう。これらは国力を支えるものだからである。
(4) 米国防次官補Mara Karlinは、AUKUSは単に侵略を抑止し、戦闘において信頼できる部隊を構築するだけでなく、さまざまな分野にわたるインド太平洋全体の海中からの抑止にも焦点を当てていると指摘した。最も単純な段階では、この協定は、加盟国、特にオーストラリアに新しい高度な戦闘能力を提供することにより、海中からの抑止力を高め、成熟した措置ではないが、遠距離作戦能力の備えた艦艇を増強することは先進的な兵器の能力とそれを遠達させることを可能にする運動能力による相乗効果で敵を効果的に抑止できる可能性がある。
(5) AUKUSは西太平洋において人民解放軍海軍と比較して、作戦海域に近く、より広範な海域に分散配備された兵力を米英豪3ヵ国に提供することになる。原子力潜水艦は、中国の計算を非常に複雑にしている。中国の海上交通路をより脆弱にすることにより、AUKUSは人民解放軍海軍により防勢的姿勢を採ることを強制し、遠海作戦用に設計された大型艦や後方支援艦を資源から遠ざけることが可能となる。
(6) これは、2023年3月に合意された2部構成の方針の枠組みに基づいて実施される。方針の最初の部分は、2027年以降、米国と英国のSSNによる寄港の増加で構成されており、これにより、米国と英国の海軍が直面する距離の暴虐を緩和することができる枠組みの2番目の部分には、2027年までに開始する予定のSubmarine Rotational Force West(輪番制前方展開潜水艦部隊)の下でオーストラリア潜水艦も含まれている。Australian Department of Defenceによると、これは「1隻の英原子力潜水艦と最大4隻の米原子力潜水艦がFleet base West(西海軍基地)に輪番で展開することになる。輪番で展開する原子力潜水艦は統合および共同作戦を強化し、共同訓練機会の増加を通して米英豪3ヵ国は共同能力を一致させ、マラッカ海峡から日付変更線間の海域における持続的な部隊の展開を強固なものにすることができる。
(7) したがって、AUKUSは複数の段階での抑止力を提供する。最初の2つは「間接的抑止」、すなわち国家段階での一般的な抑止力を強化する要因である。
a. AUKUSは、政治的連携の合図を通じて意図を発信し、潜在的な攻撃者の計算を混乱させる可能性がある。これが、少国間枠組みとしての、そして防衛産業上の取引と言うより機構としてのAUKUSである。
b. AUKUSは、産業の協力と生産の機会を提供することにより、米英豪のDIBを増進し、国力を増強することによって間接的な抑止力を提供する。それは、以前は衰退していたかもしれない海運業界に国家資源を注入することになる。
(8) AUKUSは、直接抑止という点でもいくつかの効果がある。それらを分解するためU.S. Indo-Pacific Commandの取り組みである「構想を理解する」(“Seize the Initiative”)4点が有用である。
a. 最も単純で最も直接的な形で、AUKUSは、米英豪、特にオーストラリアに攻撃型原子力潜水艦とそのシステムという新しい高度な戦闘手段を提供することにより、海底からの抑止に貢献することである。
b. 原子力潜水艦は優れたシステムであり、原子力推進が可能にする長大な行動範囲は潜在的な敵の後方支援と計画への影響を大きくする。潜水艦は水中に隠れることができるため、非対称兵器システムであり、海上交通路、SLOCと海上輸送を脅かすことになる。
c. 2023年3月に締結された合意には、海底からの抑止を可能にする戦闘において信頼できる部隊を得ることを可能にする2つの方策、つまり地域全体に分散配備された体制で原子力潜水艦を提供する方策がある。その方策が寄港によるものであろうとSubmarine Rotational Force Westによる持続的な配備であろうと、AUKUSは西太平洋でより多くの同盟国の部隊を米英豪にもたらすことになる。
d. 最後に、Submarine Rotational Force Westそのものが生み出す抑止効果がある。理想的に統合された指揮機構の下で行動する統合された部隊の作戦能力がそれである。
(9) 米英豪の潜水艦が訓練され、演習を重ね、配備されることで、3ヵ国の潜水艦部隊の作戦能力と有用性が高まっていくだろう。AUKUSによる潜水艦部隊は、インド太平洋において抑止という大きな戦略的効果を発揮し、米英豪の戦争計画者にとって価値のある資産となるだろう。AUKUSがもたらす6つの抑止の形態が、習近平が人民解放軍海軍に台湾海峡を越えて台湾への侵攻を命じることや第1島嶼線の至る所で強制的な行動を採ることを抑止するかは疑問である。AUKUSに基づく潜水艦部隊が稼働するまでにかかる時間を考えると十分ではないかもしれない。しかし、AUKUSが生み出す能力は人民解放軍海軍の計画と後方支援を複雑なものにし、将来的には破壊を伴う不測の事態において中国の地域への野心と軍事的強制を封じ込める強力な手段となるだろう。
記事参照:AUKUS: Enhancing Undersea Deterrence

5月29日「COCをめぐる中国とASEANの埋められない主張の相違―香港英字紙報道」(South China Morning Post, May 29, 2023)

 5月29日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、“South China Sea: Asean and Beijing’s ‘unbridgeable’ conflict could undermine code of conduct for years”と題する記事を掲載し、南シナ海における行動規範(COC)に関する2度目の審議があったことに言及し、COC交渉が進展していることの意義と、進展の障害について、専門家の見解を整理しつつ、要旨以下のように報じている。
(1) 5月17日の中国外交部の発表によれば、2023年、南シナ海における行動規範(以下、COCと言う)に関する2度目の審議が終わるとのことである。中国とASEAN高官による第20回会合によってそのような合意に達した。それとは別に、フィリピンとベトナムもCOCの完成に高い優先順位を与えることで合意に至っている。
(2) COCに関する交渉は着実に進んでいるが、それでもなお中国とASEANとの間には大きな意見の相違があると専門家は見ている。ISEAS-Yusof Ishak Instituteの上席研究員Le Hong Hiepは交渉の進展を指摘しつつも、上記の合意は画期的な打開策とは言えないと論じ、今後もさらなる議論が必要だが、それによって意見の相違が埋まるかは不透明だという見通しである。S. Rajaratnam School of International Studiesの上席研究員John Bradfordも、COCに関する交渉の進展は緊張を和らげる効果があると指摘しつつも、双方の意見の相違は「埋めることができないほど広い」と見ている。
(3) 5月26日、「向陽紅10号」と護衛船5隻がベトナムのEEZ内に侵入した。Stanford UniversityのRay Powellによれば、これは2019年以降で最も重大な侵犯であるという。中国はまた、南沙諸島周辺に航行用標識を設置したが、これはフィリピンが4月はじめに同様の装置を設置したことを受けてのことである。同じく4月には、報じられるところによれば中国海警船がフィリピンの巡視船を妨害したことで衝突が起きかけた。
(4) 台湾のNational Chengchi University非常勤研究員Lucio Blanco Pitlo IIIは、2023年のASEAN議長国であるインドネシアが、南シナ海論争における重大な利害関係国であると指摘する。非公式な地域の指導者であるインドネシアがASEAN議長国を務める間に、交渉の大きな進展が見られるかもしれないとのことである。2024年の議長国ラオスは、基幹施設整備計画など、中国への経済的依存が強く、そうしたことが期待できないという。
(5) 中国とASEANの領有権主張諸国の間の小競り合いとは別に、ASEAN加盟国間のいざこざも起きている。たとえば5月25日、ベトナム政府は自国が主権を主張する南沙諸島周辺にフィリピンが航行用ブイを設置したことを批判し、フィリピンはそれに対し、ブイ設置は航行の安全のためのものであり、UNCLOSが定める沿岸国の権利であると述べている。専門家は、ASEANの領有権主張諸国の間でのこうしたいざこざが、COC完成にとっての障害になると見ている。Le Hong Hiepは、フィリピンとベトナムが利害を調整して、中国との交渉において自分たちの利益を守るべきだと主張している。
記事参照:South China Sea: Asean and Beijing’s ‘unbridgeable’ conflict could undermine code of conduct for years

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書

(1) China’s Port Power
The Maritime Network Sustaining Beijing’s Global Military Reach
https://www.foreignaffairs.com/united-states/chinas-port-power
Foreign Affairs, May 22, 2023
By Isaac Kardon, a Senior Fellow for China Studies at the Carnegie Endowment for International Peace
Wendy Leutert, an Assistant Professor at the Hamilton Lugar School of Global and International Studies at Indiana University
2023年5月22日、米シンクタンクCarnegie Endowment for International Peaceの中国専門家であるIsaac Kardon上席研究員と米Indiana University のWendy Leutert准教授は、米Council on Foreign Relationsが発行する外交・国際政治専門の隔月発行誌Foreign Affairsのウエブサイトに" China’s Port Power ―The Maritime Network Sustaining Beijing’s Global Military Reach "と題する論説を寄稿した。その中で両名はここ数年、米国の国家安全保障当局は、中国の軍事力の増強に強い関心を寄せてきたが、人民解放軍海軍の猛烈なまでの近代化などに着目する一方で、中国のグローバル・パワー・プロジェクションを支えるもう一つの側面である、経済的側面の考察が不十分であると評している。そして両名は、中国は多くの国にとって最大の貿易相手国であるだけでなく、今や国際貿易を可能にする重要な基幹施設の多くを提供しており、この支配的な影響力は特に海上輸送において顕著で、中国政府と密接な関係を持つ中国企業は、世界各地の港湾ターミナルの融資、設計、建設、運営、所有の司令塔的地位に立っていると指摘した上で、ジブチ以降、中国は海外に基地を開設していないが、こうした商業港の広大な世界的港湾網が、中国の兵力投射能力を増幅させていることに注目すべきだと主張している。

(2) US nuclear umbrella for Taiwan: solid cross-strait shield or wishful thinking?
https://www.scmp.com/news/china/military/article/3222018/us-nuclear-umbrella-taiwan-solid-cross-strait-shield-or-wishful-thinking?module=perpetual_scroll_0&pgtype=article&campaign=3222018
South China Morning Post, May 28, 2023
5月28日、香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、“US nuclear umbrella for Taiwan: solid cross-strait shield or wishful thinking?”と題する記事を掲載した。その中では、①台湾は自身を米国の核の傘の下に置くことを議論している。②この議論は、台湾の呉釗燮外交部長が5月22日に、米国と核の傘について話し合っていることを示唆したことから始まった。③米政府はこの問題についての立場をまだ発表していない。④米国の核の傘に入ることによって台湾の安全保障が強化される一方で、台湾が非核政策を選択することで他国からの軍事支援を得易くなるの見解がある。⑤台湾が米国の核の傘に入らない場合の代替策として、米国が台湾海峡付近に原子力潜水艦を派遣することによってある種の抑止力を示す可能性も指摘されている。⑥核の傘に入ることが中国の西太平洋への軍事的展開を鈍らせる可能性があるが、台湾が中国本土に近いため、中国による核攻撃の可能性は低いともいわれている。⑦台湾が最も必要とするのは先進的な兵器であり、これが核の傘に入るよりも優先されるべきであるとの見解がある。⑧台湾が米国の核の傘の同盟国になることは現実的ではないとの意見も存在する。⑨米国の戦略的にあいまいな台湾防衛政策が変わらなければ、核の傘に関する対話は難しく、この問題は中国政府の反応を激化させる可能性があるとの指摘があるといった内容が報じられている。

(3) India’s Foray into the South Pacific
https://www.vifindia.org/article/2023/may/29/india-s-foray-into-the-south-pacific
Vivekananda International Foundation, May 29, 2023
By Prof Rajaram Panda, former Senior Fellow at the Nehru Memorial Museum and Library, New Delhi
2023年5月29日、インドのシンクタンクNehru Memorial Museum and LibraryのRajaram Panda前主任研究員は、インドのシンクタンクVivekananda International Foundation (VIF)のウエブサイトに" India’s Foray into the South Pacific "と題する論説を寄稿した。その中でRajaram Pandaは、世界の地政学が激しく揺れ動く中、地政学的な争いの中で、オーストラリア以北の南太平洋の島々は突如として重要な位置を占めるようになり、重要な選択を迫られている今、突如、中国がその足跡を残すためにこの争いに加わってきたが、QUADの一員でもあるインドはこの争いに遅れることは許されないとした上で、先般のModi首相のパプアニューギニア訪問は、このような広い視野の中で、より大きな意味を持つと指摘している。そしてRajaram Pandaは、G20の議長国に就任したインドは、グローバル・サウスを重視する責任を負っており、Modi首相の南太平洋島嶼国に対する外交戦略は、その決意を示すものであるとした上で、太平洋島嶼国のインド支持の発言は、この地域における米国と中国の戦略競争の二極化が進む中で、インドは対抗しうる存在として歓迎されていることを示すものだと好意的に評している。