基金について

設立の経緯

広大な太平洋に散在する1万を越える島々。海や険しい山に隔てられた各地域には多様な伝統が今なお強く残っています。
多くの人々は太平洋島嶼国に楽園のイメージを抱いています。緩やかな時間の流れのなかにあるエメラルド色の海、珊瑚の白い砂浜、風に揺れる椰子の木、そして温和な島の人々は、常に効率性を要求される先進国の人々から見れば“楽園”そのものといえます。しかし、そこに住む人々にとって自然は時にきびしく、また外界からの影響や避けることのできない自らの近代化は、伝統的社会システムや自然環境にさまざまな弊害を生じさせています。同時に国際社会の中で生きて行くためには各島嶼国のその距離的隔絶性やスケールの小さいことなど地理的、経済的ギャップがあり、国や人々の生活の発展を妨げています。

長年の植民地支配から独立を果たしながらも援助に依存している島嶼国は、今自立への道を模索しています。日本からの援助や経済投資は年々増加の傾向にありますが、過去に於いては、それを行なう日本人の島嶼国の伝統や社会システムに対する理解が充分とはいえず、また一般的に情報が相互に不足しているのが現実です。太平洋島嶼国はアジアと同様、日本の隣人であり、歴史的にも文化的にも深いつながりがある地域です。

1988年に笹川平和財団はこういった状況を踏まえ東京に各島嶼国首脳と日本の各界関係者を招き「太平洋島嶼国会議」を開催しました。この会議の成果として、出席者からの要請に応え、「笹川島嶼国基金」が設立されました。(1999年4月1日付で「笹川太平洋島嶼国基金」に名称変更)

太平洋島嶼国会議

太平洋の安定と平和を求めて

はじめに

1989年3月
笹川平和財団
会長 田淵 節也

笹川平和財団は、1986年9月に設立され、ようやく2年の歳月を経過いたしました。この間、当財団は自ら研鑽を積むとともに、モーターボート競走業界をはじめ関係方面からの多大なご支援並びにご協力を得て、今日では、わが国屈指の国際交流財団として、国の内外における民間公益団体から寄せられている期待は極めて大きいものがあります。

当財団は満2歳を迎えるに当り、1988年8月26・27の両日にわたり「太平洋島嶼国会議」を開催いたしました。この会議の目的は、太平洋に点在する島嶼諸国における相互関係をより一層深めるとともに、これらの国々に対する日本の協力の具体的なアプローチを探り、相互利益の向上を図ろうとするものであります。同会議は、フィジー共和国、キリバス共和国、ミクロネシア連邦、パプア・ニューギニア、ソロモン諸島、トンガ王国、トゥヴァル、ヴァヌアツ共和国、西サモア、クック諸島のメンバー10ヵ国の最高指導層の方々、及びオーストラリア、ニュージーランド、インドネシアのアソシエイツ3ヵ国代表、並びに南太平洋委員会、南太平洋経済協力機構、太平洋開発計画、南太平洋沿岸鉱物資源共同委員会の4国際機関の代表らが出席し、倉成前外務大臣が議長を務め挙行され、極めて有意義かつ十分な成果を収めて終了いたしました。

この報告書は、同会議の内容を正確に収録し、広く関係各位にご理解いただくために取り纏めたものであります。皆様のご高覧を賜れば幸甚であります。なお、同会議の最終セッションにおいて、当財団名誉会長笹川良一が「太平洋島嶼国財団」の設立構想を提唱いたしました。同構想は、その後の具体化の段階において、当財団の中に「笹川島嶼国基金」(基金総額30億円)を設置することとなり、同基金は、1989年4月から運営される予定となっております。当財団は、今後の国際社会において、政府や企業とは異なった、独特な活動を展開すべく、役職員一同邁進努力いたす所存でありますので、皆様方のご指導ご鞭撻を切にお願いいたす次第であります。


目次
開会式
開会宣言
笹川良一名誉会長
内閣総理大臣祝辞
小渕恵三内閣官房長官代読
議長挨拶
倉成 正
最終セッション
議長総括
倉成 正
太平洋島嶼国財団設立の発表
笹川 良一

プログラム

海洋の安全保障や海洋資源への関心が世界的に高まる中で、太平洋島嶼国においても、海域の開発による資源の発掘が期待されるとともに、太平洋を舞台とする安全保障の観点からの重要性が意識されるようになりました。

太平洋を平和で開かれた海とするために、太平洋島嶼国には大きな役割が期待されています。必要に応じて、日本、米国、オーストラリア等太平洋を通じて繋がる国々とも協力し、排他的経済水域を関係国が安全かつ有効に活用できるような工夫が求められているといえます。

笹川太平洋島嶼国基金は、1989年の設立以来、太平洋島嶼国を日本の重要なパートナーと位置づけ、種々の交流事業、人材育成事業等を実施してきました。さらに、第2次ガイドラインでは、日本と歴史的なつながりが深く、地理的にも近い位置にあるミクロネシア地域を重点支援地域とし、ミクロネシア域内の調和的な発展をめざしてきました。

2009年度から始まるプログラムにおいては、海洋の安全、海洋管理に関わる事業を基軸に、海洋管理の共同実施等について歩調を合わせた活動が期待される、マーシャル諸島共和国、ミクロネシア連邦、パラオ共和国の3カ国を中心とした事業を行います。このミクロネシア3国での取り組みを基本に、持続可能な開発のための資源の管理、海洋・島嶼の自立的発展に向けた人材の育成等に尽力します。これらの努力を段階的にミクロネシア全域からメラネシア、ポリネシア地域へ拡大することをめざし、太平洋地域の安定と島嶼国の繁栄に貢献することを目的に、以下の事業領域において活動を展開します。

海洋国家としての平和と連帯への協力

ミクロネシア地域の海洋管理

マーシャル諸島共和国、ミクロネシア連邦、パラオ共和国の3国の共同による海洋管理について、民間財団としての特徴を生かしつつ、官民連携と諸外国との協力を推進します。特に、これら3国に対する海上保安機能向上に向けた支援については、各国の合意をもとに、調査、提言、および海上保安業務に必要とされる人材育成支援等を行います。

海洋安全に関わる連携と交流

太平洋地域における海洋の安全と海洋管理に関する島嶼国間での連携と交流を支援します。特に、海上交通・保安、環境保全、持続可能な漁業の育成等につき、太平洋島嶼国間で知見・経験を共有し、協力体制を形成することを目指します。

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島嶼国の自立への協力

教育

域内での遠隔通信教育について、質の向上とアクセスの拡大に関わる事業を支援します。域内の人材育成を図るとともに、特に優秀な人材には、日本はじめ域外での教育・研修の機会を提供します。

医療・保健

人口の少ない島々が点在する島嶼国では医療・保健体制の基盤整備が急務となっています。保健・医療分野での専門家の育成を支援するほか、島嶼国の実情とニーズに合わせた制度や予防医学のあり方を追求する事業を支援します。

情報共有

太平洋島嶼国の間での情報共有と交流を推進するとともに、太平洋島嶼国と日本との間の相互理解を促進する事業を実施もしくは支援します。

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所在地

〒105-8524 東京都港区虎ノ門1-15-16 笹川平和財団ビル

TEL:03-5157-5170(代表)
FAX:03-5157-5158(代表)

地下鉄銀座線 虎ノ門駅(4番出口)より徒歩1分

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