基金について

太平洋島嶼国会議

第1セッション 参加国代表者演説

フィジー共和国 カミセセ・マラ首相

まず最初に議長と、ホストでありスポンサーでもある笹川氏及び笹川平和財団に謝意を表明し、太平洋島嶼地域の開発に対する願望、必要性、優先性について協議するため、南太平洋の同志たちが一堂に集まる素晴らしい機会を提供していただいたことに感謝する次第であります。
我々全員が笹川平和財団のご招待を喜んでお受けし、本会議に出席させていただいたことは、取りも直さず、我々全員が笹川氏の「世界は一家、人類は皆兄弟姉妹」の基本理念を共有している事実を如実に証明するものであります。そして、この太平洋島嶼国による特別な集まりを通して、太平洋地域からこの理念を開始していくことが、この哲学に現実性を与える最上の方法であると言えましょう。
また、議長として、ここに倉成先生の出席を戴いていることは、1987年1月に日本の外務大臣として当地域に来訪された際の公約を、貴国が引き続き守っていることの、確かな証であります。

日本は、隣人としての友情と率直な精神に基づき、太平洋島嶼国と協力して、その開発に貢献する道を求めていくというのがその公約でありました。
同時に、本日、南太平洋から私どもが出席いたしておりますことは、太平洋及び世界における日本の重要性を認識し、その日本との協力と友情を最大限まで高めたいという切なる願望の確認に他なりません。
日本と太平洋島嶼国間の友情及び協力に基づく強力で活気に溢れた関係は、我々のお互いの利益となるばかりでなく、私ども太平洋地域の平和と安定と発展に大きく寄与するものであります。数年前、私が初めてこの美しい国に公式訪問した時は、ホストは故大平首相でありました。その際の彼の素晴らしい歓迎の言葉を、私は片時も忘れないでしょう。
彼はこう言いました。「太平洋地域の国々は広大な距離を置いて広がっておりますが、実は太平洋が我々すべてをひとつに結び付けており、国家間をつなぐ鎖の輪として、人々の心に架かる永遠の相互理解の橋として、その計り知れない潜在的可能性を最大限まで求めてゆくことは、太平洋国家共同体としての共通の利益であり相互に有益となるものであります。」太平洋国家共同体という概念を最初に進んで採り上げた人たちの中に、大平首相がいたことは、言うまでもありません。大平首相や倉成議長自身が当地域訪問の際に発言したように、太平洋は、国家間の交易の道としてばかりでなく、人々の間により親密な関係を築くための架け橋としても、無限の機会を秘めている大洋であると、私は考えております。
将来に目を向ければ、我々が太平洋島嶼国の一地域共同体として、友情と協力を通じて一丸となって地域の平和、進歩、繁栄の促進に当たっていく姿が目に浮かびます。この2日間、相互の必要性と問題点、そして協力を推進し友情をさらに強化するために合意のできる行動計画について討議し、意見を交換することを楽しみにしておりましたのは、このためであります。最後にもう一度、ここにおられる倉成議長を通じ、笹川氏及び笹川平和財団に対して、この歴史的な会合を招集された先見の明と主導力に心よりのご慶賀と、謝意をお伝えしたいと存じます。

同時に議長のお許しを得て、南太平洋の優れた同僚、友人たちに、この場を借りまして、一言述べさせて戴きたいと思います。
昨年の政治事変後、皆様方との会合に加えさせて戴くのはこれがはじめてでありますが、フィジーの常態への復帰努力に際し、皆様方それぞれがお示し下さった理解、共感、支援に対し、謝意を表明したいと存じます。私どもは、経済的な復興ばかりでなく、国家に議会政治を復活させるための新たな組織的枠組みの組立てにおいても、着実な歩みを重ねております。
事実、私どもが本会議のためにフィジーを出発する際も、内閣は、フィジーの種々の民族共同体の代表者からなる委員会にかけるための、憲法草案を完成したところでありました。新憲法に対する集団的な考察が完了するまでには、まだしばらくの時間が必要でありましょう。しかし、私どもは、正しい方向へ前進しております。フィジーにとりまして最も感動的であった経験は、ここにおられます太平洋島嶼地域の隣国たちや、日本のような親密な友好国が、フィジーが最もそれを必要としていた時に、動揺することなく期待通りの支援や理解を示してくれたことでありました。これこそ正にパシフィック・ウェイというものであり、興味のある見方をすれば、我々各自の文化的気質における非常な類似性の直接の反映とも言えます。それはともあれ、私どもは限りない謝意を以って、皆様方のフィジーに対するこの上ない誠実と信頼の行為を、片時も忘れることはないでありましょう。ご清聴を感謝いたします。



キリバス共和国 イエレミア・T・タバイ大統領

この場をお借りして、特に笹川平和財団と、寛大にも私どもの集まりのためにその施設ばかりでなく資金も投入された、笹川良一氏の名を挙げ、本会議の実現のために多くの時間と労力を注ぎ込んで下さった方々に、謝意を表明したいと存じます。また、来日のその時から私ども全員に示して下さった暖かいもてなしに対し、日本の政府と日本人の皆様に感謝いたします。
この度、ここ東京で開催される本会議は、多くの理由により重要なものであります。第一に、時折集まってお互いに意見や考えを共有することは望ましいことであります。これは、忙しい我々にはあまり容易なことではありません。しかし、それだけの価値はあります。本会議が終了した時、我々全員が何かしら得るところがあったという気持ちを抱いて日本を去ることができるよう望むものであります。第二に、この機会に我々はこの大国と国民の立派な成果を目にすることができ、それによって、それぞれの国の開発努力にとって貴重な教訓を引き出す機会を得ることができるでありましょう。

社会組織や文化遺産を損なうことなく近代的な開発を達成することができるという点も、その貴重な教訓のひとつでありましょう。
これは称賛に値するものであります。我々は皆、国民の生活水準の改善を目指して経済の発展に努力しておりますが、国民が長い時間をかけて確立してきた文化遺産や伝統を維持し、振興させていくこともまた必要不可欠なことです。新しい思想や方法が選択されがちなことは事実であります。これは悪いことではありません。しかし開発の名のもとに伝統を投げ捨てる必要はどこにもないのであります。日本は、伝統も開発にとって不可欠な要素であることを教えてくれました。先の世界大戦の後、日本は目覚ましい発展を遂げました。開発を促進する手段として、初めは海外から思想や技術を借りなければならなかったことを、我々は承知しております。
しかもその間に、既成の強国に対して有利に競ってきたのでした。キリバスのような小国が同じような成功を収めることは、容易ではありません。人口は少なく、利用できる資源は限られています。市場もまた非常に狭く、私どもの開発の水準で先進国と競争することはできません。較差が大きすぎるのです。しかし日本のように、勤勉と成功への意志があれば、生活の向上と政治的独立を維持できるだけの開発水準を達成できるものと信じるものであります。
独立以後私どもが学んだ教訓のひとつは、どの島にも島のままでいられるほどの余裕はないということでありました。しかしそれは国際舞台においても同様であります。通信や輸送の分野における大きな技術的進歩とともに、私どもを隔てていた長大な距離の壁は消え去りました。太平洋の一方の端から他方の端まで、数ヵ月もかかったものが、今日では眠る間もなく数時間で到着してしまいます。太平洋は、そして真に世界は、ひとつの小さな共同体に縮まってきているのです。

ひとつの共同体として調和よく生きていくことを学ばねばなりません。それには、大小、貧富にかかわらず、その構成員の希望や国家的願望を尊重することが必要であります。日本には、経済大国のひとつとして、この新しい地球共同体の中で果たす役割があります。例えば太平洋においては、さまざまな面における開発援助を実施していただいており、感謝に堪えません。また、当地域への援助を増加させるという日本政府の将来の計画についても、注目いたしております。これらは確かに重要なことではありますが、相互の理解や望ましい関係を促進させることによって、補完される必要があります。それは、意見の交換や対話によってしか成し遂げられないものであります。それゆえに、我々は日本におけるこのような会合の機会を喜ばしいものと考えております。本会議はそのような目標に貢献するものと信じておる次第であります。



ミクロネシア連邦 ジョン・H・ハグレルガム大統領

最初に、天皇陛下、皇太子殿下、竹下登首相に対し、個人的なご挨拶を申し上げたいと存じます。
美しく豊かな文化の国日本の国民の皆様へ、そして特にここにおられる笹川良一氏と笹川平和財団へ、ミクロネシア連邦の国民からの暖かいご挨拶をお伝え申し上げる次第であります。太平洋からやってまいりました同僚たちとともに、親切なご招待と寛大な援助に対しまして、笹川平和財団に私の心よりの謝意を表明いたします。また日本政府により実施されております援助に、私どもがどれほど深く感謝しておりますかをお伝え申し上げます。
行き届いた準備と暖かい歓迎には日本の人々の有能で礼儀正しく親切な気質が見て取れ、私どもの滞在を最も楽しいものとしてくれています。ご列席の皆様、我々は今日ここに、世界平和という貴い大義のために集いました。
笹川良一氏は、人生のすべてを世界平和のために捧げておられます。彼の平和のための基本理念であります。

 

「世界は一家、人類皆兄弟姉妹」の意味が、ここにおります我々全員にひしひしと伝わってまいります。
笹川氏はご自分が信じていることを口にし、それを達成するために資産をなげうっていらっしゃるのであります。齢89歳にして、その平和のための精力的な努力は実に世界中を感動させるものであります。太平洋島嶼国の指導者たちが、日本で一堂に会するのは、これが初めてであります。
太平洋諸国とこの美しい国との間の協力関係をさらに推進するための方法を討議し、それによって世界平和を推し進めようと、この重要な会議を招集した笹川平和財団の先見の明と英知は、賞賛されるべきものであります。
また同志である太平洋の指導者たち、初対面の方もおられれば、旧交を温め会う方もいらっしゃいますが、彼らに会いまみえることのできる稀な機会を提供してくださったことに対しても、笹川平和財団に感謝の意を表明したいと存じます。地域的協力は重要であり、追及されるべきであるというのが、我が国の政策であります。太平洋島嶼各国は、国内の経済的政治的安全が保証されなければなりません。国際協力及び平和にとって、これは重要な要素であると我々は信じております。
ご列席の皆様、私はここに軽輩の身ながら提案致しますが、日本や米国、その他、寛大にも私どもに援助を実施して下さっている工業各国は、協力や援助が、常に私どもの国々の開発に実際に必要であるもの、すなわち世界的な相互依存の時代の平和、安定、協力の基礎として必要であるものと一致するよう、取り計らう必要性を認識すべきであります。我が国と日本との関係の始まりが今世紀初頭までさかのぼるということは、いささか鼻が高いことであります。

国連信託統治制度による40年間に亘った押し付けの外部支配が終了し、ミクロネシア連邦は今、その望みどおり、日本の人々とミクロネシア連邦の人々の間に、民族的文化的きずなと親善を打ち立てております。これに関連し、ミクロネシア連邦が、大いに必要としている援助を日本政府から得ていることを、心からの感謝とともに、ここに発表したいと存じます。我が国政府は先頃日本政府と、青年海外協力隊プログラム延長に関する協定を結びましたが、これは徐々に発展、強化してまいりました日本との関係に新しい頁を開くものであります。
私は、将来にわたり日本との関係が拡大し、協力関係が推進することを、楽天的に期待しております。もう一度、このような機会を提供し、太平洋島嶼各国の指導者たちを招集し、日本とともに、相互の協力を推進するため、また島嶼国の必要性をより多く日本に認識してもらうため、討議する場を与えて下さった本会議の主催者に、感謝いたします。私は楽天主義者でありまして、本会議の成果に全幅の信頼を寄せております。重ねて、私をこの美しい国にご招待下さったことを笹川平和財団にお礼申し上げます。

ドウモ アリガトウ ゴザイマシタ



パプア・ニューギニア ミカエル・T・ソマレ外務大臣

この度、日本の東京で開催されることとなりました第1回太平洋島嶼国会議に、こうして他の代表者の皆様とともに参加できますことを、喜ばしく、誇りに思っております。
ここ東京では、工業社会に参加している全国民の活力が、体全体で感じ取れます。西洋の工業経済社会の鼓動を感じることができるのであります。また同時に、個人の尊厳や他への尊敬の念も強く感じ取れますが、これこそが東京あるいは日本を、近代の経済制度において特異な存在とならしめているものであります。過去の文化と現在及び未来の価値観が見事な調和を示しております。実現可能な開発のモデルとして、日本は欧州や米国が試みているものとはまたひと味違った、別の手本を提供してくれています。太平洋島嶼国にとっては、日本の方がずっと親しみやすく、打ってつけの環境を示してくれていると言うことができるでしょう。工業化への圧力とその足並みが日増しに増大しつつある現代にあっては、必然的に、太平洋島嶼国が西洋の工業世界の影響下にさらされることはますます避けられなくなってきております。

 

ここ20年の間に、大部分の太平洋島嶼国が、政治的独立または自治をはたしてきております。
「宴会」は終わり、島嶼諸国は開発への挑戦が生易しいことではないことに気付き始めました。事実、環境は劇的な変化を遂げ、以前になく必死に開発を求める切迫したものが新たに感じ取られるようになってまいりました。これは各国の基本的な社会構造が脅かされてきているためで、原因は、実は、いかにもと思われるような外国管理ではなく、多くの国民が新しい社会の建設から取り残されているか、除外されているという事実なのであります。同時に、各国の統治制度を土台から大幅に改修しなければ、変化を引き起こしている力を見越し、これに影響を与え、管理し、逆転させることは不可能であります。太平洋地域に起こった最近の事件は、ここに至る全員が慎重に考慮しなければならない警告であろうと考えます。オーストラリア及びニュージーランドは、太平洋島嶼国への援助に活発かつ寛大であります。そして今度は日本への期待が集まっております。
このような意味において、本会議は真に時宜を得たものであり、開催地にこれほど適した場所はないと思われます。比較的小国である太平洋島嶼国に、日本はもう一度、小国であることは必ずしも無力を意味するものではなく、目標の達成の障害にはならないのだということを、証明してくれているのであります。これからの数日間、我々島嶼国の国民の大目的を推進し、日本の国民との友情の種を撒こうという期待と努力の強化に、少しでも、役立つことができれば幸せであります。
日本は経済大国であります。太平洋地域を含めた世界各国の多くの人々のくらしに影響力を持っております。今年、日本は開発途上国への開発援助では他を抜きん出ることとなるでありましょう。太平洋島嶼国にとって、これが意味するものには重大であります。しかし私は、日本が援助プログラムを島嶼国の必要性、特に環境に適合させることができるよう、期待しております。それゆえ、日本と島嶼国間の協議方法の改善が急務であります。

当然ながら、工業国の指導者層及び民間部門にとって、島嶼諸国は取るに足らない存在であります。日本の指導者たちが、米国やオーストラリアやニュージーランドの存在故に、島嶼国を見落としていたとしても、無理からぬことであります。日本の指導者たちがこの道を通らなかったことを、私は喜ばしく思います。当時の日本の首相でありました中曽根康弘氏をパプア・ニューギニアへお迎えしたことは私の誇であります。また昨年は、当時の外務大臣でありました倉成氏がフィジー、ヴァヌアツ、パプア・ニューギニアを訪問されました。
倉成氏が太平洋地域に対する変わらぬ深い関心をもって、本会議に出席され、議長を引き受けられたことは、私にとりましても大きな喜びでございます。また、本会議を主催された笹川氏及び笹川平和財団の洞察と主導力に、特に賞賛の言葉を捧げたいと存じます。重ねて申し上げますが、笹川氏は他の人々が足を踏み入れることを渋るか、あるいは避けたがっている領域において、先頭に立たれておられるのであります。笹川平和財団は、その使命と精神により、太平洋島嶼国の利益増進を目指した最も論理的で当を得た組織であります。太平洋は平和を求めております。そして私どもは、子々孫々のための進歩と繁栄を望んでおります。財団の太平洋に対する活発な関心と関与は、歓迎されるものであり、それはまた、一陣の清々しい新風でもあります。日本と太平洋島嶼国との関係は、改善され得るものであります。我が国の国民の大部分は、いまだに日本を戦争の経験の下に見ております。またもっと最近は、漁業や林業を通して見ております。決して明るい面ばかりではありませんが、それが我々が直面しなければならない現実であります。それゆえに、日本の指導者方や、笹川氏のような民間人の関心には、勇気づけられるものを感じます。

我々は相互理解、真のパートナーシップ、協力関係を打ち立てるための、正しい一歩を歩んでいるのだと確信しておる次第であります。竹下政権の新しい基本方針と経済運営5ヵ年計画が、「世界とともに生きる日本」と題されておりますが、これは素晴らしいテーマであります。我々は今、本会議及び笹川平和財団においても同じタイプの計画を即時採択すべきかどうかを考慮できる場に臨んでおるのであります。先にも申しましたように、太平洋島嶼国は今分岐点に立っております。このまま後戻りをして、世界の多くの国々の不幸な経験をなぞることになるか、太平洋時代の一翼を担うか! 本会議は平和と繁栄のための道を探り、これを推進することができます。このために、日本と太平洋島嶼国が共に協力しあうことがどうしても必要なのであります!
本会議の要望の先回りをするわけではありませんが、今後同様の会議を開催するに当たっては、パプア・ニューギニアに主催国の誉れを賜りたいと願うものであります。もう一度、本会議に出席できましたことは、光栄の至りであります。ここには多くの友人がおりますし、また新しい友情を育てることもできますことは、真に喜ばしい限りであります。ご清聴を感謝いたします。



ソロモン諸島 エゼキエル・アレブア首相

笹川平和財団はその功績が広く世界に知れ亘っている財団でありますが、この度、賢明かつ寛大にもこのような重要な会議を主催なされる運びとなり、これに私が参加できますことは誠に有難く、名誉なことであります。開発途上にあります小国の指導者として、初めての訪日の機会を与えられ、またさらにはこのような偉大な財団と親しく交流できますことに、感謝の意を表明いたします。
このような会議、ひいては日本へ我々、南太平洋の小国の指導者たちを招待されたことは、財団にとって真に価値のある、当を得た決断と申せましょう。我が国と日本との歴史的、経済的つながりは、重要なものであります。かつてソロモン諸島が日本の歴史の一部となり、また日本がソロモン諸島の歴史の一部となった時代がありました。

現在日本は、私どもの経済開発の主要な貢献国であります。日本の大企業数社が、ソロモン諸島における投資を拡大しております。大洋漁業、北野建設などがそれであります。さらに多くの日本人旅行者が、ガダルカナルやニュージョージアなどの思い出の地を訪れています。
私どもが今後深めていきたいと考えている日本との関係は、このような経済的かつ人間的な協力関係であります。
日本はその経済力により、島嶼諸国の近代化の過程において、より建設的かつ相互に有益な役割を果たし得ると、私は確信いたしており、また喜ばしいことには、平和と相互理解と尊敬の上に立った経済的な協力関係を拡大するに当たっては、日本に全幅の信頼を寄せることができるということを、経験から知っております。

ソロモン諸島は、日本と同じく、平和を愛する国であり、今後もそうあり続けたいと願っております。私どもは、個人対個人のレベルにおいて、他を理解し、他に理解されたいと考えております。このような相互作用によってこそ、国家間の誤解も最小限に止まり、新しい建設的な関係が打ち立てられるものと信じるからであります。ソロモン諸島は太平洋に浮かぶ小さな独立国ながら、その平和は二国間あるいは多国間による怪しげな経済的取引や、超大国同士のあからさまな競争によって脅かされ続けてまいりましたが、南太平洋の内外の国々と力を合わせ、この地域の穏やかな平和を支えて行きたい所存であります。日本はこれに関して、主導力を発揮していただきたい国のひとつであります。本会議が取り扱う問題は、日本と南太平洋の国々との関係促進のためには重要なものであります。私は本会議に積極的に参加し、かつ我が国と笹川平和財団との関係を強化することを楽しみにしております。最後にこの場を借りまして、本会議を主催し、我が国に参加の機会を与えて下さいました笹川平和財団に、心よりの謝意を表明いたします。財団がそう遠くない将来、南太平洋地域において太平洋島嶼国財団を設立され、それにより十二分な活躍をされることを心より願っております。
我が国はそのような財団の設立に支援を惜しまない所存であります。ご清聴を感謝いたします。



トンガ王国 ツゥポウトア皇太子

我が国政府を代表し、かくも重要な会議にご招待戴いたこと、また私を含め代表団を暖かく歓迎していただいたことに、感謝の意を表明いたします。南太平洋の大部分の指導者たちを一堂に集めた最初の民間財団が、世界の平和と相互理解に献身している財団であったことは、十分うなずけることであります。私どものように笹川良一氏を存じ上げ、個人的なつながりや人類が皆兄弟であるという基本的な理念への熱心な貢献を知っている者にとっては、これはしごく当然のことと思われます。
この崇高な理念を共有すれば、20世紀が終わろうとしているこの困難な時代に、我々は、笹川平和財団を良き足掛りとし、激励と新たな希望を以って、21世紀の平和な幕開けを見ることができるのではないでしょうか。笹川氏もそのような幸せな機会を、我々と共に持ちたいと望んでおられるに違いありません。
躍動的な経済体制としての環太平洋の重要性や、これを実現させる日本の力を、疑問視する者もいるでしょう。日本の経済的成功を踏襲したいと願う者たちにとって重要なことは、日本が現在世界でも有数の金持ち国と言われるほど経済的復興に成功したという事実ばかりでなく、その成功が、日本が数世紀に及んで育み、結果として独自性の強いものとなった固有の価値観を変更することなく、獲得されたという事実であります。
300年間にわたり日本を孤立させていた同じ太平洋が、今は我々をより緊密に結び付けているとは、感慨深いものであります。ご清聴を感謝いたします。



トゥヴァル トマシ・プアプア首相

初めにこの場をお借りしまして、私及び代表団に示していただいた暖かい歓迎と、この重要な会議への参加を可能にして下さった笹川良一氏と笹川平和財団へ、感謝の意を表明いたします。
また笹川平和財団に対しましては、本会議を主催、招集されたそのご尽力に大いに感謝する次第であります。本会議によって我々は、各国の社会的経済的問題について意見を交換するばかりでなく、旧交を暖め、新しい知己を得る機会を持つことができました。また本会議が日本で開催されますことも、喜ばしいことであります。日本は私がかねがね訪問したいと願っていた国であり、太平洋地域へ世界の耳目を集めることに大いに尽力された国でもあります。この10年間に我が国を含めた南太平洋地域の各国と日本との間に結ばれたきずなは、非常に重要なものであります。我々は、この地域の平和的発展に共通の関心を抱いているわけであります。

私どもは南太平洋が、核による対立の可能性はともかくとして、超大国同士の対立に巻き込まれずにすんでいる幸せに感謝しております。このような環境をこれまで維持できたのも、通常兵力が貧弱であるおかげであります。
1986年12月11日に発効した南太平洋非核地帯条約は、核兵器の導入により現在のバランスが壊されないことを目的としたものであります。トゥヴァルはこの条約を逸早く批准したものですが、特に環太平洋諸国がこの条約の目的を尊重することを常に願っておるものであります。このような条約も存在し、また南太平洋の諸小国が強く平和を願っているにもかかわらず、私は、平和と安定は当地域のすべての国家が経済的安定を果たさなければ維持できないものと、確信いたしております。トゥヴァルのように資源に限りのある国が、経済的に生き残っていくためには、他国の援助に頼ることが不可欠であります。
日本から提供されます二国間の、あるいは地域的な援助プログラムは非常に貴重であり、我が国の将来への自信を打ち立てるのに役立っております。日本による援助は現在、技術訓練、漁業、遠距離通信などの分野で進行中であります。このような二国間のあるいは地域的なつながりは、今後も継続され、他の開発援助へと拡大されて、地域の平和と安定の維持を確固たるものとしていくことでありましょう。事実、開発が強化されていくことは、南太平洋にも日本にも利益となることであります。日本において、南太平洋地域との関係強化への関心が高まり、開発係としての役割が増進されることを、トゥヴァルは歓迎するものであります。
我が国は小国でありますので、日本が近年達成したような高水準の発達を、必ずしも期待するものではありません。
しかし我が国の長期的な開発目標を援助してくれる他の国々とともに、友好国としてまた隣国としての日本の積極性には、励まされるものがあります。南太平洋の人々は、生活水準の向上を求めておりますが、これを果たすには、日本を初めとする国々の援助を受け、私どもの限られた資源を最大限に利用するほかはありません。最近我が国が承認した漁業地域開発プロジェクトは、私どもの漁業資源の商業化を促進するために、日本の技術的財政的援助が利用される一例であります。アメリカ合衆国及び太平洋島嶼国との既存の漁業協定をモデルとした、地域的な漁業協定の概念に日本が難色を示すのは、無理からぬことであります。しかし日本は、必ずや近いうちにこの困難を克服する道を見付けることでありましょう。

漁業は太平洋島嶼国の数少ない資源のひとつであり、このような取り決めを通した日本の協力は、大いに歓迎されるものであります。このような取り決めにおいて、私どもは既存の二国間協定が不公平ではないかと考えているわけではありませんが、地域性の概念及び私どもが国際舞台において存在を認められるにはこの方法しかないという信念に、太平洋地域諸国が強い支持を与えているという点では一致しております。近年、太平洋島嶼国の問題点に対する地域的なアプローチが、世界的な認識を高める最も強力な手段となってまいりました。
国際的な事件に対し反対の意を表明する際など、必ずと言っていいほど「荒野に呼ばわる者の声」が実感される、私どものような小国にとって、これは重要なことであります。非核地帯条約、米国を含めた多国間漁業協定、ニューカレドニアに対する南太平洋フォーラムの立場などが、地域的な結束を通して世界的な認識を克ることができた良い例であります。先にも指摘したように、海洋資源、特に漁業は私どもの主要な経済的資源であります。私どもはこれらを開発し、現在及び将来にわたるトゥヴァル国民の財産とし、質、量ともに安定した利益を確保したいと願っております。私どもは、当地域への核及びその他の有毒廃棄物投棄によりもたらされる危険に対しては、断固反対するものであります。
私どもは当世代のトゥヴァル国民の健康維持のみならず、次代の国民の生命をも守らねばならないのであります。今年、島嶼国が議題となる国連総会の場において、私どもは、ニューカレドニアのすべての民族グループが満足できるような長期的解決をもたらすことを目的とした決議案を提案する予定であります。国際舞台において大きな影響力を持っている日本の支援が大いに必要とされる機会でもあり、フランス政府が国際的にも承認済みであるニューカレドニアの植民地状態からの独立を速やかに実行し、決議案の目的が達成されるための、大きな力となることでありましょう。我々すべてに神の祝福と導きのあらんことを祈りながら、ご挨拶を終わりたいと思います。



ヴァヌアツ共和国 セシー・T・レーゲンバヌ文部大臣

本日このような重要な会議に、ヴァヌアツの政府及び国民を代表してこうして出席できますことは、誠に晴れがましく、名誉なことであります。ヴァヌアツの大統領、首相そして国民より、笹川平和財団と日本の皆様へ、心からのご挨拶を申し上げます。また、私ども代表団のために設けられました素晴らしい施設と、行き届いた心使いに対し、本会議の主催者へ感謝の意を表明いたします。この会場には、様々な人種、場所、事情を代表する方々が集まっています。言語も考え方も異なっていますが、ひとつだけ共通するものがあります。すなわち、人類のために貢献しようという心であります。私の言う人類とは、死にかけている者、困窮している者、貧しい者、飢えている者、そして自由を求めて戦っている者たちです。つまりこれらの悪に苦しんでいる人々が、平和の不在、理解の欠如を、明白に示しているからです。

しかし、笹川平和財団は、「平和」、「国際理解」、「交流」、「協力」の精神の下に、設立されました。私に付け加えさせていただけるならば、これらの目標を達成するには、恵まれた裕福な者たちが助けを必要としている人たちに、積極的な援助の手を差し延べるより他に方法はありません。
「平和」、「国際理解」、「交流」、「協力」の中では、「国際理解」がまず肝要であると私は考えます。なぜ平和が不在であるのか、何が原因で、どのような救済手段がとれるのかを理解しなければ、平和を見付けることはできないからです。物や意見を交換する前に、自分たちが行っていることが皆のためになるということを、理解していなければなりません。協力について話し合う前に、協力の有益性、理由をお互いに理解する必要があります。このように、地域的国際的を問わず、お互いの理解は、地球的な平和、交流、協力のための必要条件であります。ヴァヌアツは、非同盟政策によって、隣国の地域的国際的な立場を理解しようと努めております。この政策により世界と人々を、「西洋」、「東洋」、「北」、「南」、「第三世界」、「第一、第二世界」に区別することなく、「ひとつの地球」としてより良く深く理解することができると考えるからであります!非同盟政策の採用に当りましては、何度か非難も受けましたが、私どもはこれを「博愛主義的」アプローチと考えております。

今日では、私どもは多くの国家、機関、協会と、地域的国際的レベルで、つながりを深めております。折角こうして日本におりますので、例として我が国と日本との関係についてお話しようと思います。正式に国交を開きましたのは、我が国が1980年に独立した後のことでありました。現在までのところ、我々の関係は相互に有益なものであります。我が国は日本より技術的財政的援助を受け、日本は我が国の国際的な金融中心地を投資基地として、また我が国の楽園を休日の目的地として利用されています。1987年4月初旬、日本ヴァヌアツ友好協会が設立され、公式の問題、ビジネス、文化交流、貿易、観光旅行などを、あらゆるレベルにおいて推進、発展させていくこととなり、日本とヴァヌアツの関係は新局面を迎えました。日本側の会長は、前フォーラムクラブ会長の吉岡文之助氏であります。
彼はこの協会の設立及びその日本での推進に大きな貢献をされました。彼のおかげで当協会は日本において急速に発展しております。日本ヴァヌアツ友好協会は、現在笹川平和財団の参加を求めているところであります。ヴァヌアツにおいては、大統領アチ・ジョージ・ソコマヌの後援を受けて、サンプソン・ナグウエル氏が初代会長に任命されております。当協会は二国間の関係の育成と強化に重要な役割を果たすでありましょうし、また私どもの希望である、文化的な訪問やその他の交流を通して日本をより良く理解するという目的をも達成してくれるでありましょう。同様に私どもも、日本の友人たちが我が国の国際的な金融中心地での投資を通して、開発に参加してくれるよう、ご招待申し上げる次第であります。すでにヴァヌアツヘの投資は何件か実現していますが、まだまだ余地は残されています。最後に、本会議で演説させていただいたことは、大変に光栄なことでございました。皆様のご清聴に感謝いたします。



西サモア ツゥイラエパ・サイレレ大蔵大臣

南太平洋地域の指導者方及び閣僚諸兄がお集まりになったこのような席に出席し、演説する機会が持てましたことを、心より感謝いたします。
特に、太平洋諸国の指導者方がここ日本に集う、このような特異な会議に、西サモア政府を招待してくださった笹川平和財団に、感謝の意を表明いたします。
また、私どもの今後の開発に直接影響を与える地域の問題を討議し、かつ実りある交流を果たすために、太平洋の指導者や代表者たちを一堂に会せしめた、財団の先見の明と主導力は賞賛に値するものであります。
倉成議長、本会議及びこれが日本で開催されることは、日本の皆様にとって、太平洋地域とはどのようなところか、何を主張しているのか、島嶼諸国が建国に当たってどのような問題に直面しているのかなどについて、直接知識が得られる稀有な機会となります。
1987年に南太平洋を訪問した倉成外務大臣は、「日本は太平洋島嶼国が直面している問題に無関心ではいられない。」と発言されています。全く同感であります。

ご存じのように太平洋地域が超大国の抗争の焦点となっているこの時期に、「太平洋の10年」宣言とともに我々がここに集まり、パシフィック・ウェイとして認識し育んでいるやり方にふさわしい平和で落ち着いた雰囲気の中で、将来の発展について討議するとは、何と時宜にかなったことでありましょうか。
南太平洋諸国は、目標達成のために、域内の政治的経済的安定を保証する手段に賛同する様々な地域機関を通して、共に努力を重ねております。
太平洋フォーラム加盟国が採択した重要な手段のひとつが、1985年8月ラロトンガで開催された南太平洋フォーラムにおいて採択した南太平洋非核地帯条約でありますが、偶然にもこの年は、広島に原爆が投下されてから40年目にあたります。この条約は域内での核兵器の生産、実験、使用を禁ずるものであり、1986年12月に発効いたしました。
同会議の指導者たちが、同じ太平洋の仲間で開発の進んでいる日本との対話を確立することの重要性を認識したのも、このラロトンガにおいてでありました。日本政府は私どもの要求に確実に応えてくれていますが、私どものような小さな経済機構を発達させるためには、まだまだやり残されていることがたくさんあります。
この度、笹川平和財団が太平洋の指導者や代表者によるこのような会議を主催したように、民間組織が価値あるプロジェクトを積極的に支援して、平和と国際理解の推進に貢献することは、賞賛すべきことであります。非政府機関や日本の一般大衆が、太平洋島嶼国の開発に並々ならぬ関心を抱いていることの表れでありましょう。日本と太平洋島嶼国は地理的にも、歴史的なつながりを見ても、同じ太平洋共同体の一員でありますが、その間に時折生じる文化的社会的誤解をとくためには、残念ながら多くの問題がやり残されています。私ども、太平洋フォーラム加盟国と日本の間に確立された対話が、将来も推進され、本会議の終わりに設立が予定されている太平洋島嶼国財団が我々の社会的文化的きずなや理解の強化に貢献することを、期待いたしております。西サモア政府は、太平洋島嶼国財団の設立を歓迎し、この価値ある貢献に対し笹川平和財団に心よりの賞賛を贈るものであります。最後に、私ども代表団への暖かい歓迎に対し、笹川平和財団と本会議の関係者の皆様に深甚なる謝意を表します。ドウモ アリガトウ ゴザイマス。



クック諸島 ププケ・ロバチ首相

まず初めに倉成議長、議長に選出されたお祝いを申し上げます。あなたの指導力により、我々は必ずや本会議の目的を達成することができると確信するものであります。また、日本での第1回太平洋島嶼国会議の名のもとに、ここ東京に太平洋諸島から私どもを招待された笹川平和財団の主導力にも、お祝いを申し上げたいと存じます。本会議は、太平洋諸島の政府指導者及び閣僚たちによる、日本で最大の集まりでありましょう。これが、民間の財団による尽力の成果であるという事実は、重要なことであります。1960年代や70年代においては、特に民間財団の主催によるこのような集まりは不可能なことでありました。当時新興国であった太平洋島嶼国政府は、地域内において、いわんや国際社会において、民間財団が果たし得る主要な役割を認識するほどの国際的経験を積んではいなかったのであります。

本日ここに出席の太平洋島嶼国の多くが、現在、笹川平和財団のような民間機関が域内の開発に果している重要な役割を認識していることを、とりわけて表明しております。今朝、この会場に我々がこうして一堂に会しているところを眺めますと、「ルイヲモッテ アツマル」という日本のことわざを思いだします。私はこのことわざの意味を、「同じ種類のものはより集まる」というように教えられました。
同じ意味のことわざを英語では "Birds of a feather flock together"(同じ羽毛の鳥はおのずから一所に集まる)と言います。私個人は、笹川平和財団が我が国と国民の開発願望を強く魅きつけることは必至と考えております。
その一方でこの度ご招待をお受けした大きな理由は、「国際理解、交流、協力」を通して世界平和を追及していくという笹川平和財団の基本理念に、私やクック諸島政府や国民が、何の抵抗もなく共鳴できたからであります。平和の追及は、それが我々の存在には不可欠な要素でありますから、国民も私も魅きつけられずにはいられません。本会議に共に出席した我々の心中には、このような価値ある目的の追及があるはずと、私は信じております。「ルイヲ モッテ アツマル」すなわち、「同じ種類のものは寄り集まる」であります。地球のどのような片すみにも平和が訪れるように、たとえ微力でも尽力したいというクック諸島の政府、国民の願いを代表して、私は本日ここに出席しているのであります。また、私ども太平洋島嶼国がどのような財団活動を求めているかを見極めるため、その現状を学ぶ必要性を認識されるに至った、笹川平和財団とその設立者であられる笹川良一氏に、賞賛の言葉を呈したいと存じます。財団が設立されてまだ2年足らずであることを考えれば、この太平洋島嶼国会議の実現は真に驚異的なものであります。倉成議長、私はこれからの数日間の討議を楽しみにしております。

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