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太平洋島嶼国会議

第3セッション 各国の日本との関係並びに日本に対する要望-自由討論-

第3セッションは、「太平洋島嶼国と日本の関係並びに日本の今後の協力に対する要望」に関し、太平洋島嶼国10ヵ国の代表、本会議のアソシエーツ、日本からの参加者が意見を述べる自由討論会であった。初めに、太平洋島嶼国に協力する際の日本側の5原則が説明された。倉成正氏が日本の外務大臣として太平洋島嶼国を訪問した際、フィジーにおいて発表したものである。
すなわち、

  1. 、嶼国の独立や自治を尊重し、これに敬意を払い、
  2. 、地域協力を支援し、
  3. 、域内の政治的安定を確保し、
  4. 、経済協力を拡大し、
  5. 、人々の交流を推進することである。

これらの原則に基づき日本政府が主導力を取ってきているが、長期的には、民間部門が域内への協力拡大の主要責任を果していくことが望ましいということが説明された。政府による主導力の一環として、竹下首相が表明した中期目標に基づき、日本のODAが今後5年間に2倍以上に増額される見込みであること、また太平洋島嶼地域としてはこれによる利益を期待できることなどが述べられた。
政府レベルでの協力のほかに、より自由な立場で革新的な理念や対応を試みることができるNGOが、草の根的協力や援助の実施に貢献すべきであるとの説明がされた。また最初に日本側からは、より良い情報伝達装置が各国間のコミュニケーション改善に役立つこと、日本はこのネットワーク作りへの援助が可能であることなども述べられた。
太平洋島嶼国側は、既に第2セッションで述べられた多くの援助可能な分野について、繰り返し発表した。これらの中にはとりわけ以下のものが含まれていた。
すなわち、ホテル・空港建設への援助や日本の航空会社に空路を提供することなどによって域内の観光業を振興すること、太平洋島嶼国が、その漁業資源を生かして、日本に対する漁業基地となること、島の青年達に対する技術訓練、教育を援助すること、熱帯果物栽培を強化するための効果的な栽培法や缶詰製造技術並びに施設に援助することなど、遠距離通信や道路の施設提供に加えて内航海運の開発に援助すること、そして若者の雇用、女性の雇用機会の増進、病気の予防、治療、研究、上水道などの社会サービスなどに支援すること、などである。
太平洋島嶼国への現在の援助の必要性は認識されながらも、日本側から、域内の各国は将来援助に頼る必要のない強い経済を確立すべきではないかという意見が出され、太平洋島嶼国もこれを認めた。
太平洋島嶼国の多くの国々が結集し、「援助ではなく、貿易を」を目標として太平洋諸島生産協会(PIPA)を設立することが述べられた。また、外からの援助は長期的には島の社会に有害となる可能性もあり、真の協力は、建国に必要とされる技術が提供されるような教育に重点が置かれるべきであることも指摘された。
NGO援助に関しては、太平洋島嶼国の代表のひとりから、過去の経験に照らした問題点がいくつか指摘された。ある国々におけるNGOの管理の脆弱さ、NGOからの資金提供によるプロジェクトにその場限りのものが時折見受けられること、NGOプロジェクトは小さすぎて影響を及ぼすまでに至らない傾向にあること、などがそれである。
NGOは方針を再検討して、島嶼国の人々の福祉に直接関係するような政府推進のプロジェクトに直接的な援助を提供してはどうかというのが、彼の提案であった。
しかしそれでも、太平洋島嶼国の代表者たちはNGO援助に強い関心を抱いており、それぞれ歓迎の意向を表明した。

しかし、代表者からの発言によれば、日本のNGOの存在を「我々は初めて知った」ということであり、日本にあるNGOと、それらが太平洋島嶼国に提供できる援助の種類についての情報が要請された。議長が、日本のNGOに関する資料を集め、太平洋島嶼国の代表者たちに提供することを約束した。
(会議終了後、笹川平和財団によって英訳されたNGOの名簿と住所氏名録が、代表者たちに郵送された。)NGOのほかに、民間部門における海外投資の必要性も強調された。しかし代表者のひとりにより、南太平洋の比較的大きな国々と投資家がほとんどあるいは全くいない小さな国々との間で、格差がますます拡大していることが指摘された。
長期的な安定のためには、特に困難な開発問題に直面している国々を優遇する必要があることが提案された。
また別の観点からは、太平洋島嶼国は同種の問題を共有しており、相違点はそれらの優先事順位だけであるという意見が述べられた。
すべての島嶼国の共通の目標は、真の独立を達成することであるとの言明がなされた。いわゆる「太平洋の時代」が、太平洋島嶼国にとって何等かの実質的な意味合いを持つに至るだろうかという点について、重ねて討議がなされた。
日本側からは、太平洋地域の国々が力やエネルギーを蓄積することができれば、皆にとって明るい将来が待っているであろうという激励がなされた。
太平洋島嶼国の代表者のひとりがこれに応え、時代を作り上げる経済の波は主に北太平洋で起こるであろうが、時代が約束する躍動的な経済から利益を得るために重要な戦略を強調していくのは、太平洋島嶼国の責任であると述べた。
討論は、総合的に楽天主義的な考え方と、太平洋島嶼国の開発の必要性に見合った方法を見付け、協力していこうとする強い願いのうちに幕が降ろされた。

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