事業紹介

2009年
事業

293 中国若手ジャーナリスト招へい

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事業内容
世論形成に影響力をもつ中国のジャーナリストに、等身大の日本への理解を促進
  • 笹川日中友好基金は、 日本理解を深め、等身大の日本像を中国国民に伝えることを目的に、 本年度は中国の大手ウェブサイトの現場責任者を中心に日本へ招へいしました。
一行 (14名)は09年10月20日から28日までの9日間で東京、 北海道を訪問しました。 東京では、 民主党本部、 自民党本部の取材や大手材料メーカー TEIJIN、 東京証券取引所、 幕張モーターショーを視察しました。 港区立特別養護老人ホームも訪問し、 メディア現場では、 読売新聞の関係者と交流しました。 このほか、 国会議事堂、 明治神宮、 靖国神社、 浅草、 秋葉原を視察しました。

北海道では、 北海道新聞、 北海道放送で関係者と懇談、道庁や運輸局の観光部門と交流し、 千歳地域観光情報交換会に出席しました。 また、 北海道大学東アジアメディアセンターと共催のシンポジウムに参加し、 日本のメディア関係者と意見を交わしました。

参加者たちは日本で見聞した内容をブログなどで随時発信し、 帰国後に新聞やインターネットなどの媒体で訪日の記事を掲載し、 訪日取材の成果を新聞読者やインターネットのユーザーに発信しました。

事業実施者 笹川平和財団 清華大学清華-日経メディア研究所(中国) 年数 3年継続事業の2年目(2/3)
形態 自主助成委託その他 事業費 7,668,979円
事業実施の背景と事業概要

笹川日中友好基金ではこれまで、中国のメディアを通じた日本理解促進のため、中国のメディア関係者にさまざまな日本研修のプログラムを提供してまいりました。

たとえば、日本経済の発展を学ぶため中国から来日した経済記者の取材支援( 1991年度事業「023 経済記者日本取材」)や、外国との交流機会が少ない地方テレビ局の責任者の訪日研修(1997年度事業「141 地方テレビ局長訪日視察」)、日中関係の報道のあり方について議論し、日本の報道体制を研修する事業(2002年度事業「222 中日マスコミ対話促進」)などを助成した実績があります。

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地方テレビ局長訪日視察、テレビ朝日訪問(1997年)

こうした事業は、差し迫った課題を解決するというよりは、中国において広く日本理解促進に役立ててほしいという狙いから実施していました。そのため数年に一度実施する程度で、継続性のある複数年度の重点プログラムではありませんでした。

 

「中国若手ジャーナリスト招へい」事業の開始

しかし、2000年代に入ってから中国メディアをめぐる環境は一変し、日中両国でメディアをめぐって問題が起きるようになってきました。日中双方の国民世論のレベルでは相互認識のギャップが大きく、新興の地方紙やネットメディアがそうしたギャップをあおるような記事を配信する、そのようなケースが多く見られるようになってきたのです。

こうした状況を踏まえて、笹川日中友好基金では中国の大衆世論の健全化を図るべく、中国でも影響力をもつ新興メディアのジャーナリスト、それも40代までの若手を対象にした「中国若手ジャーナリスト訪日招へい」事業を3年間にわたって実施することを決めました。

 

事業のねらい

新興メディアに焦点をあてたことには次のような理由があります。

一つは影響力です。中国の大手ネットメディアのページビューが「億」を超え、新興の新聞は数百万部を発行し、中国の国民に与える影響が非常に大きくなってきています。中国における日本像の改善を図るには、こうした新興メディアの責任者や記者に等身大の日本を広く見てもらうことが妥当であるとわたしたちは考えました。

二つ目に、大手の新聞社・通信社は日本に駐在員を置いて取材ができますが、新興メディアは特派員を日本に置くことができない上、日本関連記事の担当者ですら、日本訪問経験が無い中で仕事をしているケースが多い、という状況がわかってきたことです。

そこで、わたしたちは、来日する機会の少ないネットメディアや雑誌、都市報や夕刊紙など、新興メディアの記者・責任者に訪日研修の機会を提供する事業を実施することにしました。

 

事業実施の体制

事業実施にあたっては、中国メディア研究の第一人者である清華大学の崔保国教授に協力を依頼しました。中国の新興メディアで有力な記者、責任者の選抜や日本への派遣、事業計画立案への協力などを崔教授が所長をつとめる清華大学清華・日経メディア研究所に業務委託し、ともに訪日研修を準備することとしました。

本事業は2008年度に開始し、3年計画の自主事業として実施しています。2009年度は2年目になります。

 

具体的には、以下の活動を行います。

  • 招へいメンバー、視察テーマ、視察先の選定
  • プログラムの作成と訪問先への協力依頼
  • 8泊9日の訪日研修
  • 日本の政治家・研究者・企業等の訪問・取材
  • 日本の報道機関訪問・取材
  • 東京周辺の視察・取材
  • 北海道札幌・千歳・登別・洞爺方面の視察・取材
  • 帰国後の総括会
  • 報告書の作成
参加者と日本研修のスケジュール

日本研修は笹川日中友好基金と清華・日経メディア研究所が計画し、10月20日(火)から10月28日(水)まで、以下の内容で実施する予定です。北海道視察にあたっては、社団法人千歳観光連盟のご協力をいただきました。

日本研修のスケジュール(予定)
月日活動
10月20日(火)北京からCA925便で13:50成田空港着、都内ホテルへ移動、歓迎会
10月21日(水)国会見学、皇居見学、笹川陽平日本財団会長表敬、TEIJIN訪問・取材、民主党本部訪問
10月22日(木)特別養護老人ホーム取材、東京証券取引所訪問
10月23日(金)自由民主党本部訪問、読売新聞東京本社訪問、夕刊印刷の取材、都内視察
10月24日(土)浅草・秋葉原取材、東京モーターショー見学、NH81便で羽田から新千歳空港へ移動、千歳市内ホテルへ
10月25日(日)道の駅・鮭のふるさと館取材、千歳地域情報交流会、登別、洞爺湖取材
10月26日(月)アイヌ民族博物館取材、札幌市内取材、北海道新聞訪問取材、北海道放送訪問取材
10月27日(火)北海道庁訪問取材、国土交通省北海道運輸局訪問取材、尾形武寿日本財団理事長との懇談、北海道大学訪問・交流座談会「変化する中国メディアと新たな地域間交流」、歓送会
10月28日(水)帰国

参加者についてはここ→「293-02.pdf」をクリックするとPDFファイルでご覧いただけます。

日本研修:東京

第2回中国若手ジャーナリスト訪日団(13名)を10月20日(火)から10月28日(水)まで招へいしました。一行は東京と北海道を訪問し各地で取材を行いました。

10月20日に到着した一行は2日目から本格的に活動を開始。2日目は国会、皇居、日本財団、TEIJIN、民主党本部を訪問・取材しました。

国会見学
中央広間の四隅には板垣退助らの銅像と空の台座があります。空の台座は「政治は常に未完」の象徴だという説明に皆さん感心していました。

皇居東御苑01
21日は東御苑が公開されている日だったので、本丸跡や天守台も見学しました。非常に陽射しのきつい日でした。写真は百人番所前です。

皇居東御苑02
皇居では建築物を通して現代(丸の内)と伝統(江戸城)を一度に体験できます。写真は汐見坂からの眺めです。

日本財団笹川陽平会長01
昼食会形式で日本財団の活動、日本政治・社会・文化の特徴など幅広く議論しました。

日本財団笹川陽平会長02
全員での集合写真のほか、会長は気軽にひとりひとりとも写真撮影に応じていました。

帝人01
TEIJIN未来スタジオを訪問、日本の素材メーカーの技術力の高さに感心。

帝人02
大八木成男社長には帝人の成り立ちや上海万博出展の計画などを伺いました。北京五輪・中国代表のユニフォームにも同社の素材が使われていたとの説明に驚いていました。

衆議院総務委員長・近藤昭一議員と懇談01
民主党本部を訪問。近藤議員は中日新聞の元記者で、北京留学経験もある知中派。流暢な中国語による挨拶に、訪日団一行も感心していました。

近藤昭一議員との懇談02
民主党政権の外交政策、アメリカ・中国との関係のほか、民主党政権の福祉政策、ご自身のNPOでの植林活動についても意見をお聞きしました。

3日目は港区立特別養護老人ホーム港南の郷、明治神宮、原宿、東京証券取引所を訪問・取材しました。

港南の郷01
まず所長から施設概要説明を受けました。訪日団の面々は介護保険の仕組やデイサービス、ケアハウスの入居条件など細かな点まで質問していました。

港南の郷02
施設内ではケアハウスや、老人ホームの状況説明を受けながら見学。プロの理髪師によるボランティア、介助のボランティアの方々に感心していました。

明治神宮参観
明治神宮を参観。明治神宮の由来、鳥居、神前結婚式、手水、お賽銭、拝礼作法などについて説明しながら参観しました。

原宿視察
明治神宮参観のあと、原宿を参観。表参道から明治通り、竹下通りなどを見学しました。

東京証券取引所訪問01
浦西友義常務執行役と金融危機後の日本資本市場の現状と東京証券取引所や中国の新興市場について意見交換。

東京証券取引所訪問02
意見交換後に東京証券取引所のモニュメントで記念撮影。

4日目は、靖国神社、自民党本部、読売新聞東京本社を訪問・取材しました。

靖国神社訪問
靖国神社を訪問。神社設立の目的や遺族の慰霊の気持ちなどを説明しながら見学。ただ遊就館での顕彰・展示の仕方についてはやはり異論があるようでした。

河野太郎自民党国際局長と懇談
自民党本部で河野太郎国際局長を訪問。団員からの自民党が選挙で負けた理由や靖国神社問題の質問にも率直に答えてくださり、大変好評でした。

読売新聞訪問01
午後、夕刊記事の締め切り時間に編集部を見学しました。ある訪日団員曰く、フロア一面が見渡せる形で仕事をしているのがおもしろい、と興味深そうでした。

読売新聞訪問02
印刷工場を見学。印刷用機械の性能や導入時期などの意見交換。中国も日本とほぼ同じ印刷機械だけど、導入時期は日本の方が早いとのこと。刷り上ったばかりの夕刊を頂きました。

読売新聞訪問03
Yomiuri On Line(YOL)について神崎公一メディア戦略局長と意見交換。利益率や広告費、閲覧数、人気コンテンツなど細かいところまで意見交換しました。

読売新聞訪問04
濱本良一論説委員と意見交換。読売新聞全体の規模や記者数、採用方法、販売体制、中国関連の報道、新聞業界の未来まで、幅広く議論しました。

5日目は、浅草、秋葉原、東京モーターショーを見学して、夜の便で北海道千歳市へ移動しました。

浅草
浅草仲見世で縁日の雰囲気を体験しました。

東京モーターショー01
ある団員は上海モーターショーと比べて、海外メーカーが少ないという感想を漏らしていました。

東京モーターショー02
団員たちはかわるがわる乗りこんで、乗り心地や居住性などを確かめていました。

日本研修:北海道

第2回中国若手ジャーナリスト訪日団(13名)を10月20日(火)から10月28日(水)まで招へいしました。一行は東京と北海道を訪問し各地で取材を行いました。

6日目は、日曜日ということもあり、観光業を中心に視察。鮭の故郷館や千歳地域の観光情報のプレゼンを受け、そのあと登別方面に行きました。

サケのふるさと館
千歳川はサケの近代的孵化放流事業発祥の地。サケの成長過程や漁獲高などを聞く。サケが淡水→海水→淡水と生活環境を変えることを知らなかったと驚く人もいました。

千歳地域情報交流会
北海道・千歳観光情報についてのプレゼン。農場、牧場、渓流下り、熱気球体験、スキー、ゴルフ、チョコなど紹介。写真は千歳ハネムーン企画「千年寿プロジェクト」の紹介シーン。

北海道箱根牧場
牧場でバーベキューをしたあと、経営状況について取材しながら、牧場内を視察しました。中国の一般的な牧場と比較すると、設備状況や経営状況、環境もいいようです。

7日目は午前にしらおいポロトコタン、アイヌ民族博物館を視察。午後は札幌入り。北海道新聞社、北海道放送を訪問しました。

しらおいポロトコタン
アイヌの風習や文化などについて研修しました。ポロトコタンは、ポロ=大きい、ト=湖、コタン=村という意味。札幌のポロもアイヌ語。

北海道新聞
実際に新聞紙面を手に取りながら、意見交換。北海道新聞の経営状況や道警裏金問題の報道などについて率直な意見交換がされました。

北海道放送
6時から6時40分、生のニュース放送を見学。放送の前には、編集の現場も見学しながら、地方テレビ局の実情について視察しました。

8日目は北海道庁、国土交通省北海道運輸局を訪問。お昼は日本財団の尾形武寿理事長とも意見交換。午後には北海道大学東アジアメディア研究センターとの協力で「変化する中国メディアと新たな地域間交流」というシンポジウムを開催。シンポには50名ほどが参加しました。

北海道庁
道庁が進める中国向けPR計画について意見交換。沖縄に比べて、北海道のPRは弱いのではないか?というややきつい感想も団員から出ました。

国土交通省北海道運輸局
北海道の観光全体について意見交換。昨年中国からの観光客が4万人を突破。特に道東観光は映画「非誠勿擾」の影響が大きかったとのこと。

日本財団尾形武寿理事長と懇談
尾形理事長とは日本財団のことのみならず、日本の政治状況や靖国神社問題、所得税の累進課税や福祉問題などについて意見交換しました。

シンポジウム@北海道大学01
10月27日14:30から17:00の2時間半にわたって、シンポジウム「変化する中国メディアと新たな地域間交流」を東アジアメディア研究センターの協力を得て開催。

シンポジウム@北海道大学02
第一部では中国の新聞業界の動向、中国におけるメディアのデジタル化、日本のメディア産業の現状について3人から基調報告が30分ずつ、計1時間半されました。

シンポジウム@北海道大学03
第二部ではパネルディスカッションが行われました。もっと時間が欲しい!という印象。テレビカメラも取材に入って、翌日朝の北海道放送のニュースで放送されました。

9日目、最終日。訪日団は成田経由で北京に帰国しました。

千歳アウトレットモールレラ
空港近くのアウトレットモールを訪問。たくさんお土産も買っていました。

新千歳空港
お世話になった千歳観光連盟の皆さんとのお別れ。

成田空港
8泊9日の旅を終えて帰国。お疲れ様でした。

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