海洋安全保障情報旬報 2016年12月1日-12月31日合併号

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126日「中国のインド洋進出の狙い、中国の新しい世界戦略インド人専門家論評」(South Asia Analysis Group, December 6, 2016)

 在ニューデリーの戦略アナリストBhaskar Royは、South Asia Analysis GroupのWebサイトに12月6日付で、"China's naval base in Pakistan Revealed - China's New Global Game"と題する論説を寄稿し、中国のインド洋進出の狙いについて、要旨以下のように述べている。

(1)パキスタン海軍によれば、中国海軍は、「中国・パキスタン経済回廊 (CPEC)」による港湾と通商の安全を護るため、グワダル港に艦艇を配備する。中国海軍とパキスタン海軍の艦艇4~6隻からなる特別編成の合同部隊が配備されるようである。この合同海軍部隊は専守防衛部隊だが、その担任範囲はグワダル港の防衛だけに止まらず、中国の関心事であるパキスタンからの海洋交易の安全を確保することにも及ぶことになろう。グワダル港は中国が建設し、中国は現在、40年間の同港運営権租借契約を結んでおり、中国軍と関係のある中国国営港湾運営企業が責任を負っている。

(2)中国が2012年頃までにインド洋に進出する計画であったことは、中国の海軍増強計画とその活動、そして中国の海洋専門家の論説などから明らかになってきている。事実、人民解放軍総后勤部長趙南起が「インド洋はインドの海にあらず」と題した政策文書を中央軍事委員会と共産党政治局に提出した1990年代初めに、インド政府は警戒しておくべきであった。中国は既に、ジブチに係留、後方支援及び補給施設を取得している。スリランカの前政権は、インドに対抗するため、国内への中国のプレゼンスを強く望み、支援を受けた。2014年9月には中国の原子力潜水艦がコロンボ港に寄港し、2014年11月には通常型潜水艦が寄港した。インドが強い懸念を伝えたため、潜水艦の寄港は繰り返されなかった。スリランカの現政権は、対インド関係を安定させてきた。スリランカの元首相は後継者に対して、もし政府がトリンコマリーに中国の基地を認めれば、次の中印戦争はスリランカ国内で戦われることになろう、と警告していた。中国がコロンボでロータス・タワーを建設中であることも注目される。この通信傍受拠点ともなり得る大規模なテレビ塔の建設には、中国輸出入銀行が推定1億300万ドルの資金を提供している。更に中国国営企業2社(中国電子輸出国営公司と中国航天科技集団公司)がこの民間プロジェクトに関与しており、インドやインド洋地域の近隣諸国に深刻な懸念を引き起こしている。

(3)中国は、石油と天然ガスの死活的な資源輸入の経路としてマラッカ海峡への依存度を、2つの理由から削減することを決定している。1つはマラッカ海峡経由の輸送コストが高いから、もう1つは軍事的危機の際には封鎖される可能性があるからである。代替ルートとして、ミャンマー東岸から雲南省への石油の天然ガスのパイプラインが選択された。この建設作業は現在進行中である。他のルートは新疆ウイグル自治区からパキスタンを通ってグワダル港に至る回廊 (CPEC)で、このルートは部分的に使用可能である。中国のインド洋進出をより巨視的に見れば、習近平主席の「中国の夢」―建国100年目の2049年までに、過去の栄光を回復し、完全に発展した国にする―に辿り着く。この夢は遠大な望みと見えるかもしれないが、実現の可能性は大いにある。2002年頃、中国のシンクタンクの専門家の間で海外へ影響力の拡大について盛んな議論があり、そこでの1つの結論は、中国はペルシャ湾岸地域からアジア太平洋地域にまでに影響力を及ぼすべきというものであった。こうした論議は下火になったが、以後の中国の行動はこの結論を追求するものであった。「一帯一路」構想は少なくとも部分的にはこの結論に基づくものであると見られ、CPECはこの構想の重要な一部を構成する。中国軍の近代化は、グローバルな兵力投射を狙いとするものであり、世界を跨いで急速に拡大する国益を護るためである。従って、その重点は海軍力の急速な近代化に置かれている。中国の戦略は、北京に頭を下げる進貢国を従えた、中華帝国の実現である。北京は、米中間で世界を分断し、2極構造を構築しようとしている。米中両国は、「新しい大国関係」を反映した世界秩序の中で抗争していくことになろう。そこでは、ロシアは最早、大国とは見なされていない。

記事参照:
China's naval base in Pakistan Revealed - China's New Global Game

126日「南シナ海におけるリスク管理アプローチの必要性豪専門家論評」(The Strategist, December 6, 2016)

 豪グリフィス大学アジア研究所客員研究員Peter Laytonは、Web誌The Strategistに12月6日付で、"The South China Sea's worsening strategic dilemmas"と題する論説を寄稿し、中国が海洋進出を強める南シナ海情勢について、南シナ海戦略よりむしろリスク管理アプローチを採用する時かもしれないとして、要旨以下のように述べている。

(1)下表は、2023年頃の南シナ海が協調的状態か抗争的状態かのいずれかの状態にある場合、それぞれの状態における南シナ海の状況を想定したものである。協調的状態はかなり楽観的と思われるであろうし、悲観的なリアリストは、抗争的状態を現在の南シナ海情勢にある程度似通っていると見るであろう。しかし、政策決定者の仕事は、より良い明日を目指し、悪い明日から遠ざかることである。心配なのは、ASEANとアメリカというる現時点での2つの主要な戦略的主体が、我々を良い方向に動かしているとは思えないことである。

(2)ASEANは、拘束力のある行動規範 (COC) に署名するよう中国を慫慂している。2017年後半が現在期待されている協定あるいは少なくとも協定草案の合意目標期限である。しかし、中国は長年、南シナ海は多国間の問題ではなく、従ってグループとしてのASEANにはこの問題を論じる資格はないと主張してきた。そして最近、中国は、カンボジア、ラオスそして今やフィリピンにも、中国の南シナ海に対する姿勢を受け入れるよう説得している。このことは、南シナ海問題に対するASEANのコンセンサスを難しくしている。

(3)南シナ海におけるアメリカの戦略は、はるかに重点的である。定期的な「航行の自由(FON)」作戦を通じて、米海軍戦闘艦は、中国が造成した人工島周辺海域を航行している。しかしながら、FON作戦が永続する成果を生み出すとは思われない。中国はいずれ、強硬手段―多分、漁船と新型の大型巡視船を使って、人工島周辺海域へのアクセスを拒否しようとするであろう。アメリカは、同盟国がFON作戦に加わることを期待している。しかし、真の問題は、より良い未来の世界を創造するという観点からは、FON作戦が無意味であるということである。

(4)重要な問題は、中国が戦略的イニシアチブを握っているということである。中国は、多大な費用をかけて人工島を造成し、3カ所の航空基地と3カ所の大規模な電子監視施設を作り上げた。中国は、適切な時期と判断すれば、南シナ海全域に防空識別圏 (ADIZ) を設定し、管制することができる。最も懸念されることは、中国が初めてマレーシア、シンガポール、ブルネイ及びボルネオ全域にまで現実的な航空脅威を及ぼしていることである。中国は現在、これらの新しい航空基地によってASEAN地域の中央部を軍事的に支配し、事実上、ASEANの地理的中心地に自らの軍事プレゼンスを確立した。中国は現状を変更した。例えASEANが中国も受け入れ可能なCOCを提示しても、あるいはアメリカがFON作戦を継続しても、中国は、多額の費用を投入した新たな施設を放棄することはないであろう。

(5)南シナ海のより良い将来に向かって進む方法があるかもしれないが、中国に進路変更を強いる必要なコスト強要政策を指向する動きはほとんどない。ASEANも、アメリカも、そしてアメリカの同盟国も、こうした政策を目指すつもりはない。従って、今や、リスク管理アプローチを採用する時かもしれない。このアプローチによって、少なくとも中国の新たな人工島基地が近隣のASEAN諸国、特にマレーシア、シンガポールそしてインドネシアに及ぼす脅威を抑制することができる。このアプローチの目的は、リスク管理の観点から、中国の圧力、脅威そして高圧的な外交に対する、これらの諸国の強靱性を高めることである。強靱性の強化は、国内的なもので、どの国にも脅威を及ぼすものではないが、平時、危機あるいは限定的紛争時において、中国の人工島基地が持つ政治的、外交的そして軍事的効果を最小限に抑える。今こそ、将来指向の政策決定の時期である。

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記事参照:
The South China Sea's worsening strategic dilemmas

127日「インド海軍の新戦略」(WIONE News.com, December 7, 2016)

 インド海軍退役将校Dr. P K Ghoshは、12月7日付のインドのニュースサイト、WIONE News.comに"Indian Navy and India's strategic transition"と題する論説を寄稿し、インドは2015年の最新の海軍戦略の下で、海洋安全保障におけるより大きな責任を負う覚悟であるとして、要旨以下のように述べている。

(1)インドは現在、海洋安全保障におけるより大きな責任を負う覚悟であり、益々激動的になるインド洋地域において「力のバランサー」として、そして「安全保障の提供者」としての役割を担うことに熱心である。これらは、インド海軍による最新の海洋戦略文書である、2015年の"Ensuring Secure Seas: Indian Maritime Security Strategy"において示された。この海軍戦略は、「海洋における共通の脅威に対処するために、各国海軍間の協力と調整を引き受けること」に焦点を当てている。従って、この戦略の狙いの1つは、友好諸国との多角的なレベルでの協力関係を構築しながら、インド洋地域の海洋安全保障を強化するために、好ましい海洋環境を作為していくことにある。この戦略の一環として、インド海軍は「外交的、安全保障的および経済的利益」を護るために活動する。他の沿岸諸国の能力構築を支援し、これらの海軍との相互運用性を強化することは、現在の重点目標である。このことは、海軍の戦略的到達範囲を拡大するだけでなく、遠海やインド洋の最遠方において必要な活動継続能力の強化に繋がる。

(2)インドの戦略的思考過程におけるもう1つの重要な変化は、海洋領土に対する戦力投射能力である。以前の海軍戦略は、7,500キロ近いインドの長い沿岸から延びるEEZを含む、インドの管轄領域を護る能力が中心だった。しかし、インドの海洋権益の拡大に伴い、以前の「アデンからマラッカまで」から、現在の「スエズから南シナ海まで」、対象とする地理的範囲が著しく拡大した。各国へのインド軍艦の友好訪問、アデン湾沖での海賊対処活動、海上交通路の哨戒、海外移住者の本国送還、人道支援災害救助 (HADR) 任務の遂行などは、この間における戦力投射能力や海洋能力の成長を示すものである。更に、国益の拡大を受けて、インドは、航行の自由とグローバルコモンズの安全維持にも深く関わっている。このことは、領有権紛争の当事国ではないにも関わらず、インドが南シナ海に関心を持つ主たる要因の1つである。

(3)インド海軍は現在、海洋安全保障における多国間協力の一環として、インド洋地域の全ての主要海洋国家と定期的に合同訓練を行っている。その狙いは、インドを中心とする共通の海洋安全保障網を通じて、共生関係を進展させることである。こうした進展と明白な戦略的利益にもかかわらず、国家権力と軍事外交のツールとしてのインド海軍の戦力投射の真の価値は、これまで国防省と外務省によって十分に理解されておらず、または行使されてこなかった。しかし現在では、漸進的ながらより良い方向に変わりつつある。

記事参照:
Indian Navy and India's strategic transition

1215日「中国、南シナ海で米無人潜水機奪取」(Defense News.com, December 16, 2016)

 米国防省報道官が12月16日に明らかにしたところによれば、中国海軍は南シナ海で米海軍調査船が運用していた小型無人潜水機 (UUV) を奪取した。それによれば、海軍軍事海上輸送コマンド所属で文民乗組員の調査船、USNS Bowditch (T-AGS 62) が12月15日、フィリピンのルソン島スービック湾の北西約50カイリの海上で、2機のUUVを回収中、同船から約450メートルの位置にいた中国海軍の潜水艦救難艦「南救510」が小型ボートを発進させ、1機を奪った。USNS Bowditchは、無線でUUVの返還を求めたが、中国艦は要求を無視した。国防省報道官は、同船は国際水域で通常の軍事調査を実施しており、UUVは海中温度、塩分濃度、透明度などの海洋データを収集するための非機密システムであるとした上で、「UUVは外国の主権が及ばない免除特権船 (a sovereign immune vessel) であり、中国に即時返還と、国際法の遵守を求める」と述べた。

記事参照:
China Grabs Underwater Drone Operated by US Navy in South China Sea

【関連記事1

「中国の米無人潜水機奪取、国際法違反米法律専門家論評」(Lawfare Blog.com, December 16, 2016)

 米海軍大学教授James Kraskaと米国防省外局Defense POW/MIA Accounting Agency (DPAA) 副法律顧問Raul "Pete" Pedrozoは、12月16日付のWeb誌Lawfareに、"China's Capture of U.S. Underwater Drone Violates Law of the Sea"と題する論説を寄稿し、中国の米無人潜水機の奪取は国際法違反だとして、要旨以下のように述べている。

(1)海軍調査船、USNS Bowditch (T-AGS 62) が12月15日、南シナ海のフィリピンのEEZ内で2機の無人潜水機 (UUV) を回収中、近くにいた中国海軍潜水艦救難艦が小型ボートを発進させ、1機を奪った。UUVは自律式航行の無人潜水機で、中国によるUUVの奪取は、国際海洋法に組み込まれ、国連海洋法条約 (UNCLOS) やその他の条約に反映されている3つの規範に違反している。1つは、UUVは「アメリカの船 (a "U.S. vessel")」で、その奪取は海洋で合法的に運用されている米財産を公然と盗む意志の表れである。2つは、アメリカの「船」は外国主権免除特権船 (a sovereign immune vessel)であるが故に、中国の行動は極めて露骨である。そして3つは、UUVの奪取は、中国による公海における航行の自由に対する妨害行為である。

(2)中国による「アメリカの船 (a "U.S. vessel")」の奪取:「船 ("vessels")」とは一般的には"ships"と同義である。1972年のロンドン海洋投棄条約は、"vessels"を「あらゆる種類の水上に浮かぶ又は空中を飛ぶ物体」と定義し、第3条2項では、この物体には「自律推進式であるかどうかを問わず、エアクッション船と浮遊機器」を含むと規定している。ロンドン条約の1996年付属議定書第1条6項では、「水上に浮かぶ物体、及びそれらの部品、その他の付属品」も含まれる。更に「海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約」(COLREGS) 第3条は、"vessels"を「水上輸送の用に供され又は供することができる非排水船、表面効果翼戦及び水上航空機を含む、船舟類」と定義している。この定義には、中国が奪取したUUVのような、自律式海洋機器装置や使い捨て式海洋機器装置が含まれる。有人システムと無人システムにはサイズ、推進装置、航続距離、能力などの多様な面で差があるが、このことは"vessel" や "ship" の定義要件ではなかった。更に、UUVの奪取は、水中における他の船舶を脅かすことを避けるための積極的な措置を取ることが船員に求められる、COLREGSそれ自体に対する違反行為でもある。

(3)外国主権免除特権船の奪取:有人システムと同様に、専ら非商業目的の政府任務に従事しているUUVは、外国主権が及ばない免除特権船の法的地位を享受する。更に、UUVの法的地位は、それを発進させる船舶、潜水艦または航空機の法的地位には必ずしも左右されない。軍事用UUVの免除特権船の立場は、UNCLOS第32条、95~96条及び26条の規定に従って、旗国を除くいずれの国の管轄権からも完全に免除される。更に、さらに、USNS Bowditchが運用していたUUVは、軍事活動に従事していた。領海を越えた水域における軍事活動は、外国の船舶または国家による管轄権の行使から免除される。UNCLOS第29条の「軍艦」の定義に従えば、UUVは「軍艦」としての資格はないが、そのことはUUVが外国主権の免除特権船の地位を持たないことを意味するわけではない。専ら非商業目的の政府所有または政府運用の水上船として、UUVは、それを発進させるプラットフォームとは別に、外国主権免除特権船としての資格を有する(UNCLOS第32条および指揮官ハンドブック第2.3.6項)。

(4)中国はアメリカの公海の自由を妨害した:中国はフィリピンEEZ内でUUVを奪取した。無人システムを含む全ての船舶及び航空機は、公海における航行の自由と上空飛行の自由、そして12カイリの領海における航行や上空飛行に関する、そ​​の他の国際的に適法な海洋の利用を享受できる(UNCLOS第58条、第87条)。公海の自由には軍事活動も含まれるが、UNCLOS第58条と第87条の唯一の規制は、こうした軍事活動がEEZと公海における他国の権利、そして他の船舶及び航空機の安全な運行に対する「妥当な考慮」を払わなければならないことである。中国は、アメリカのUUVによる調査活動を妨害することによって、この「妥当な考慮」の基準を遵守できなかった。

(5)中国の敵対的行為の危険性:アメリカは正式にこの事件に抗議し、中国にUUVの返還と、海洋規範である国際法を遵守するよう求めた。更に一歩進めて、アメリカは、合法的に公海とその海面下、そして上空を航行中の米調査船や偵察機に対する今後の妨害行為を敵対的行為と見なし、状況次第で米軍は自衛のために反撃する権利を有することを中国に警告するべきである。

記事参照:
China's Capture of U.S. Underwater Drone Violates Law of the Sea

【関連記事2

「米UUV、外国主権免除特権船ではない中国専門家の反論」(IPP Review, December 20, 2016)

 中国南海研究院のThe Research Center for Oceans Law and Policy副所長Yan Yanは、12月20日付のWeb誌、IPP Reviewに、"The US Underwater Drone is not Entitled to Sovereign Immunity"と題する論説を寄稿し、中国海軍に押収された無人潜水機 (UUV) は外国主権免除特権の地位を享受する船として分類できないとして、要旨以下のように述べている。

(1)中国は12月20日、押収した無人潜水機 (UUV) を米海軍に引き渡された。中国国防部報道官は通過する船舶の安全航行のためにUUVを水面から取り除いたと述べたが、アメリカは、UUVが外国主権免除特権を享受する船で、中国の行動は国際法違反だと主張した。米国防省報道官は、UUVを「英語で水面から取り除いてはならないとの明確な標識が付けられた外国主権免除船舶」であり、アメリカの所有物であり、南シナ海で合法的に軍事調査を行っていたと主張した。同じように、(前出【関連記事1】の)James KraskaとRaul "Pete" Pedrozoの論説において、2人の共著者は、UUVは外国主権免除の地位を享受している「船舶」であり、このような中国の活動は国際法違反であると主張している。

(2)海洋法の主権免除の規定と、UUVの任務を子細に検討すれば、アメリカの主張には法的欠陥がある。国連海洋法条約 (UNCLOS) 第32、95及び96条によれば、2つのタイプの船、即ち「軍艦」と「国が所有し又は運行する、非商業的役務にのみ使用される政府の他の船舶」が海洋における外国主権免除の地位を付与されている。まず、筆者 (Yan) は、UUVは「軍艦」ではないとする2人の共著者の見解に同意する。しかし、このUUVは、国が所有し又は運行する非商業的役務にのみ使用される「船」なのか。2人の共著者は、UUVを「海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約」第3条の「船舶」の定義に当てはまると見ている。しかし、米海軍によるUUVの使用を見れば、主に偵察と潜水艦戦目的で使用されているが、「水上輸送の用」としては全く使用されていないことは容易に判明する。このUUVは無人で水中を移動することが可能な物体で、通常、遠隔操作式無人潜水機 (ROV) と自律式無人潜水機 (AUV) の2つの型式がある。近年、技術の進展により、AUVはより多くの任務に使用することが可能になり、将来の海戦における重要な要素になると広く認識されている。従って、筆者 (Yan) は、米海軍はUUVを輸送目的で使用しておらず、外国主権免除の地位を享受する船舶として分類できないことは非常に明白である、と考える。むしろ、米海軍における機能と使用方法を見れば、外国主権免除の権利がない「機械」、「ロボット」または「軍用機器」として分類する方がはるかに合理的である。

(3)アメリカは、近年における中国海軍の、特に潜水艦戦力の目覚ましい増強に注目してきた。アメリカは、情報収集任務の遂行によって、中国周辺海域をカバーする水中監視探知網を徐々に整備してきている。米軍は既に黄海と東シナ海でこうしたネットワークを完成しているといわれるが、今や南シナ海でネットワークを構築しようとしている。将来、南シナ海で米海軍がより多くのUUVを使用することは、十分予測される。そのような「機械」または「機器」の使用に関する明確な規則はないが、UNCLOSの枠組みの下で他の国際慣行と同様に、UUVの運航者は、海洋の平和利用の精神を守り、航行の安全への正しい配慮を示し、沿岸諸国の法律や規制を尊重し、UUVを使用して沿岸諸国の治安を害して脅かすような任務を遂行することを控えるとことが肝要である。

記事参照:
The US Underwater Drone is not Entitled to Sovereign Immunity

【関連記事3

UUVの奪取、中国の政治的行為米専門家論評」(Maritime Awareness Project, December 21, 2016)

 米MIT準教授M. Taylor Fravelは、The Maritime Awareness Projectのサイトに12月21日付で、"The Implications of China's Seizure of a U.S. Navy Drone"と題する論説を寄稿し、中国によるUUVの奪取を、その位置から見て政治的意図を持った行為であるとして、要旨以下のように述べている。

(1)米国防省の発表によれば、UUVが奪取された位置は、スービック湾の北西約50カイリの海域で、この位置はフィリピン沿岸、中国の「9段線」ライン、更に中国が実効支配するスカボロー礁(黄岩島)に近接する場所である。

(2)この事案では、UUV奪取の位置が重要である。UUV奪取は、中国が如何なる海洋管轄権も行使しできない海域で発生した。奪取位置はスカボロー礁から200カイリ以内にあるが、スカボロー礁は僅かな高潮高地の岩を有する環礁で、国連海洋法条約(UNCLOS)の規定では12カイリの領海を有するが、EEZを主張できない。しかも、中国は「9段線」ラインの正確な位置を示してはいないが、奪取位置は「9段線」ラインの東側(外側)であり、その内側ではない(フィリピンの領海の外側と「9段線」ライン外側との間)。中国国防部報道官は、この事案は南シナ海の関係海域で起こったと述べているが、中国の管轄海域内で起こったとは言っていない。中国政府でさえ、この事案を自国の管轄海域内での事案とは主張できなかった。

(3)故に、中国によるUUVの奪取は純然たる政治的行為と見るべきで、中国が主張する管轄海域内における海洋法令執行行為ではない。反対に、この事案が「9段線」の内側、あるいは中国が海洋管轄権を主張していた海域で発生したのであれば、その場合は、UUVの奪取は、南シナ海の大部分を占める中国のEEZ内におけるアメリカの軍事調査活動に対する中国の反対を示唆するものであろう。UUVは外国主権免除特権を享受する船であり、その奪取は不法行為である。法的根拠を欠く行為は、その意図が政治的である証拠である。

記事参照:
The Implications of China's Seizure of a U.S. Navy Drone

【関連記事4

「中国、UUVを米海軍に返還」(Reuters.com, December 20, 2016)

 中国は12月20日、米無人潜水機 (UUV) をアメリカに返還した。中国国防部は声明で、「中米双方の友好的な協議を経て、米UUVを南シナ海の関係海域で米側に引き渡した」と述べた。米国防省報道官は、UUVが奪取された海域の近くにいた誘導ミサイル駆逐艦、USS Mustinに引き渡されたことを確認し、「アメリカは、国際法の原則と、航行の自由と上空飛行の自由を遵守し、国際法の許容範囲内で、引き続き南シナ海における飛行、航行及び作戦行動を継続する」と述べた。

記事参照:
China returns underwater drone, U.S. condemns 'unlawful' seizure

1216日「米海軍、355隻態勢へ」(Defense News.com, December 16, 2016)

 12月16日付のWeb紙、Defense Newsは、米海軍の355隻態勢について、要旨以下のように報じている。

(1)米海軍が予算制約の壁を打ち破り、世界で最強の海軍は、現在の308隻態勢から、トランプ次期政権が提起した350隻態勢を越えて355隻態勢に目標を引き上げ、1980年代以来最大の戦力増強に取り組みつつある。新たな戦力組成評価は、現在の戦力組成評価に空母1隻、大型水上戦闘艦16隻、そして攻撃型原潜3隻を追加するとともに、沿岸戦闘艦 (LCS) を、退任するカーター国防長官の40隻制限案を斥け、海軍の目標である52隻に戻している。新しい計画は、航空機や兵員数の増加分については言及していないが、海軍高級幹部達は、攻撃戦闘機、特にF/A-18 E と F/A-18 Fの増勢を公に求めており、2018年度予算でかなりの機数が要求されると見られる。空母が11隻から12隻に増えることは、更なる艦載航空部隊が必要であることを意味する。通常、艦載航空部隊は、48機の攻撃戦闘機に、電子戦機や早期警戒機を加えて編成されている。兵員数についても、現有の約32万4,000人から、34万人から35万人までの増強が検討されている。

(2)新しい艦隊に対する経費見積もりは未だ提示されていないが、米海軍の拡張は、近年その活動を劇的に増大させているロシア海軍と中国海軍に対する警告であることは明らかである。再生されたロシア海軍は、新しい潜水艦と射程の長い巡航ミサイルを搭載した強力な小型戦闘艦艇を配備しつつあり、空母戦闘群はシリアでの陸上戦闘を支援している。 太平洋では、中国は、多くの点で米海軍を見習って大幅に改良し、近代化した海軍を建設しつつあり、西太平洋の安定を保証する地位をアメリカに取って代わろうとしている。アメリカは、海軍戦力配備の重点を大西洋から太平洋に移しつつあり、その配分比を60対40にしようとしている。しかし、ロシアが活動を増大させ、挑発的になってきており、欧州及び地中海方面においても、より大きな規模の海軍部隊を維持する必要について再検討せざるを得なくなってきている。

(3)海軍は355隻態勢に向けての時程表も発表していないが、12月16日に海軍が公表した資料によれば、艦種毎の増強計画は以下の通りである。

 a.空母:11隻から12隻に増強。12隻は、「撃破/拒否のための戦力規模に対する国防計画指針 (the Defense Planning Guidance Defeat/Deny force sizing direction)」における戦闘戦力所要の増大を満たす最小戦力である。

 b.大型水上戦闘艦:88隻から104隻に飛躍的に増大。3隻のZumwalt級以外、現有艦種は全てイージス・システムを搭載する巡洋艦か駆逐艦で、空母に対する防空任務、弾道ミサイル防御任務などの様々な任務を遂行している。海軍は、2030年代に実現する新しい水上戦闘艦部隊開発の初期段階にある。

 c.小型水上戦闘艦艇:総数は52隻で変わらず、その内容はLCSとフリゲートである。国防省が近年、総数を40隻あるいはそれ以下に上限を定めようと努力してきたにもかかわらず、海軍はこの分野の艦艇52隻という要求を引き下げたことはない。撃破/拒否への挑戦、現に実施中の対テロ、対密輸、戦域における安全保障協力/パートナーシップ構築努力に対応するためには、これら艦艇が必要である。

 d.水陸両用戦艦艇:34隻から38隻に増強。これらの強襲揚陸艦 (LHD、LHA)、ドック型揚陸輸送艦 (LPD)、ドック型揚陸艦 (LSD)、次世代揚陸艦 (LXR) は、海兵隊の揚陸所要に適合し、広範な人道支援や災害救助の場面に貴重である。

 e.攻撃型原潜:48隻から66隻に増強。この増強は、改訂戦力組成評価で最も野心的な目標である。より多くの攻撃型原潜部隊の所要は長年にわたり広く認識されてきたが、造船工業界は、現有のVirginia級攻撃型原潜に加え、新しいColumbia級弾道ミサイル原潜の建造準備を整えなければならず、攻撃型原潜の増強にスムーズに対処することは困難であろう。

 f.巡航ミサイル搭載原潜:現有の4隻が艦齢に達し、全艦除籍されることに対する部隊の計画に変更はない。現有の巡航ミサイル搭載原潜の任務は、Virginia Payload Module(トマホーク・ミサイル28発を搭載できる垂直発射装置)を搭載した、Virginia級原潜の船体を延長した、新型のVirginia級原潜Block V(総計40発のトマホーク・ミサイルが搭載可能)に引き継がれる。

 g.弾道ミサイル搭載原潜:SSBN12隻の要求には変化がない。現有のOhio級は2030年代に新型のColumbia級と交代する。

 h.戦闘後方支援部隊(軍事海上輸送司令部が所掌する任務の内、補給担任る部隊):展開する戦闘艦艇を支援するために29隻から32隻に増強。

 i.遠征高速輸送艦/高速輸送艦:Austal USAとの間で12隻の建造契約があるが、要求は10隻に留まっている。

 j.遠征支援洋上移動型基地:3隻から6隻に倍増。対テロ、特殊作戦を支援する新しいタイプの船である。

 k.指揮支援艦船:21隻から23隻に増強。更に2隻の監視船の所要を反映。

下表は以上の増強計画を纏めたものである。
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記事参照:
US Navy's New Fleet Goal: 355 Ships

1220日「台湾問題と米新政権の課題米専門家論評」(Asia Times.com, December 20, 2016)

 米The Center for the National Interest防衛研究部長Harry Kazianisは、12月20日付のWeb紙Asia Timesに"The Chinses 'Red Line' in Asia that could Spark a War"と題する論説を寄稿し、トランプ次期大統領とその政策担当者に対して、台湾問題を米中間の緊張要因にしないよう、慎重な対応を求めて、要旨以下のように述べている。

(1)経済的観点から見れば、南シナ海は、年間約5兆3,000億ドルに達する世界で最も多い物流ルートであり、最も重要な戦略的ルートであり、そしてアジア経済の心臓部といえる。南シナ海を巡っては中国による大規模な人工島の造成、アメリカによる「航行の自由」作戦の実施、あるいはベトナムの軍備強化など、様々な動きが見られ、この「アジアの大釜 ("Asia's Cauldron")」(ロバート・カプラン)は、今後数年間、アジア太平洋地域における最大のホットスポットの1つであり続けることは確実であろう。

(2)しかも、中国は、アメリカとトランプ次期大統領に対して、台湾問題についての重要なメッセージを送る場としても南シナ海を利用しようとしている。トランプ次期大統領が台湾の蔡英文総統に直接電話を掛けたことと、それに報復するように中国海軍艦艇がアメリカの海洋調査用無人潜水機を奪取した事案を鑑みれば、中国にとって台湾は「核心的利益」であり、それを証明するためには中国は如何なる手段をもとる用意があることを示したメッセージといえる。北京は、自らの「レッドライン」に基づいて、台湾に対する主権防衛のために戦う用意があることを強調してきた。一方、ワシントンでは、トランプ次期大統領の誕生で空気が変わった。トランプ次期大統領周辺の外交政策保守派層は、アジア太平洋地域における台湾の影響力の向上を求めている。加えて、共和党内の安全保障専門家たちの間でも中国流の威圧的な態度に対する不満は増大しており、台湾の存在は、それらの不満解消や、ワシントンが現状を打破する選択肢を持っていることを北京に示す重要な機会を提供している。当然ながら、このようなアメリカの態度の変化に対して中国政府は敏感で、特に、アメリカの政策や態度の変化が究極的には台湾の独立への動きにつながりかねないと不安視する中国共産党や軍関係者は少なくない。しかし少なくとも今のところは、中国側がとった唯一の具体的な行動は無人潜水機の奪取に止まっている。

(3)とはいえ、中国にとって最大の核心的利益である台湾が独立を目指す動きを見せれば、中国は、戦争も含めたあらゆる選択肢を考慮するであろう。第1次湾岸戦争を通して、中国は、自国の軍事力が時代遅れであることを認識した。そして1995~1996年の台湾危機では、アメリカの最新型空母2隻の威力を目の当たりにして、この点を再認識させられた。実際、中国は、少なくとも今後10年かあるいはそれ以上の間、最新技術を駆使した最新兵器を装備したアメリカの軍事力に対抗し得る力を持てないであろう。それ故、近年、中国は、アメリカの空母打撃群の優位を相殺する努力を強化してきた。1995~1996年の台湾危機の時との明確な違いは、中国が最近数年間に配備してきた、ミサイル戦力主体の「接近阻止/領域拒否 (A2/AD)」戦略の存在である。台湾危機以後の「空母キラー」ともいわれる中距離対艦弾道ミサイル「東風21D (DF-21D)」の開発、巡航ミサイルや静粛性の高い潜水艦の開発などの一連の軍備増強は、いずれもが台湾危機を発端としたアメリカに対する脅威認識と、台湾を巡る軍事衝突の可能性とそれを抑止しなければならないという認識を念頭においていることは明らかである。

(4)トランプ次期政権の政策立案者は、アジア太平洋地域における中国の攻撃的な態度を憂慮しており、これを抑え込もうとしている。台湾問題はこうした政策それ自体の目標ではないが、トランプ次期大統領とその政策担当者は、決定的行動を起こすまでの中国の忍耐の限界点が何処までかを、十二分に理解しておく必要がある。台湾独立を支持するような如何なる言動も緊張を激化させ、南シナ海や、東シナ海においてアメリカの重要な同盟国である日本に対して、あるいはサイバー空間においてさえ、中国の更なる攻撃的な政策を誘発することになりかねないであろう。それ故に、トランプ次期大統領とその政策担当者は、対中政策のみならず、アジア太平洋地域全体を俯瞰する視点で地域内の国々との関係についても包括的な視野を以て対応していくことが望まれる。

記事参照:
The Chinese 'red line' in Asia that could spark a war

1227日「中国海軍の大型帆船建造、その意図するもの米海大専門家論評」(The National Interest, December 27, 2016)

 米海軍大学中国海洋研究所准教授Lyle J. Goldsteinは、米誌The National Interestに12月27日付で、"The Chinese Navy's New 'Tall Ship' May Reveal Beijing's True Intentions"と題する論説を寄稿し、中国海軍が建造中の大型帆船について、要旨以下のように述べている。

(1)中国の『艦船知識』2016年7月号は、中国海軍艦船では他に例がない、士官候補生訓練用と見られる大型帆船を紹介している。この船は、21世紀における海軍国として台頭する中国を象徴する重要なシンボルとして注目に値する。この記事の筆者は、このような帆船は本質的に「西側風」であり、中国海軍とは関係はないと主張する者がいるかもしれが、「こうした見解は中国海軍の歴史に対する理解の欠落を示している」と指摘している。事実、この記事によれば、中国は清末に何隻かの練習帆船―340トンの「建威」に始まり、400トンの「敏捷」を経て、最終的に1,900トンの「通済」に発展する―を建造してきた。 しかし、人民解放軍海軍は、1980年代まで専用の大型練習艦を重要視してこなかった。1987年に最初の練習艦「鄭和」が配備されたが、帆船に関しては、中国初の帆船部隊が2009年に大連艦艇学院に創設されただけである。しかし、『艦船知識』7月号の記事は、2009年に実施された中国海軍創設60周年記念観艦式に参加したメキシコの練習帆船が与えた非常に強い印象を強調している。それによれば、「同船の船のセイルドリル(停泊中の展帆作業展示)は全ての人の注意を引いた。」続けてこの記事は、人民解放軍海軍が煙台にある海軍航空工程学院に地上設置式の大規模な繰帆訓練装置を建設したのは、メキシコの練習帆船のセイルドリルからほどない時期であると指摘している。そして完成しつつある大型帆船の計画が始まって時点でもあると推論することは可能である。2016年12月の中国のニュース報道では、このユニークな船は2017年末に進水する予定である。更に12月の報道では、もう1つの地上設置式の繰帆訓練装置が大連艦艇学院に完成したとのことである。

(2)この大型練習帆船について、大事なことは何であろうか。それは本当に我々の注目に値するのだろうか。この記事の筆者は、海軍のあらゆる分野で進む「デジタル化過程」に批判的で、海軍士官を真の「海の達人」にするための訓練において、帆船は海に対する恐怖心を払いのけ、「海という環境に立ち向かう本物の自信」に置き換えることができると強調している。更に、大型帆船には海の歴史と文化に敬意を表する重要な儀式的任務があるとし、平時に外国の港湾を訪問する軍艦はしばしば脅迫的な感じあるいは自然と恐れさせる「力の誇示(耀武揚威)」を伝えるが、大型帆船は全く武装しておらず、どのような港においても負の感情を伴わずに興奮を引き起こすことは間違いない、と興味深い観察を示している。要するに、この帆船は、中国の海軍に対する野望と中国の対外政策の将来について多くを語ってくれる。確かに、この帆船は、より有能な中国海軍士官を育成する上で重要な役割を果たすであろう。それ以上に、この帆船は、海洋国家のエリートクラブに受け入れられたいという中国の願望を示している。この帆船は中国がオリンピックに求めたものとある程度似通っている。そして、このことは、中国の戦略目標や海洋への進出という目標を理解する上で、重要である。言い換えれば、中国の海軍力は、安全保障の追求といういわば合理的な枠組みを超えて、威信あるいは尊敬と訳することのできる「面子」を追求しているということである。

(3)実際、アジア太平洋地域の軍事バランスは、不安定で流動的である。しかしながら、中国問題のより掘り下げた評価は、「脅威」とは能力と意志の関数であることを気付かせてくれるであろう。意志について、中国が「面子」に拘泥しているということは、結局のところ寛容で、予測可能で、しばしば交渉による解決を受け入れる余地があることを示している。中国の新しい海軍の大使、人民解放軍海軍にために建造されている大型帆船は、パンダのような外交上の役割を果たすものではないにしても、中国がより広い世界と海洋に対する穏当な文明化された態度を示す方向への前進といえよう。

記事参照:
The Chinese Navy's New 'Tall Ship' May Reveal Beijing's True Intentions

1227日「トランプのアジアへの軸足移動米専門家論評」(Foreign Plolicy.com, December 27, 2016)

 米シンクタンク、外交問題評議会上級研究員Max Bootは、12月27日付のWeb誌Foreign Policyに"Donald Trump's Pivot Through Asia"と題する論説を寄稿し、トランプ次期大統領の政策は未知数であり、そして、彼は同盟国と自由貿易への嫌悪感を再考する必要があるとして、要旨以下のように述べている。

(1)オバマ大統領による太平洋へのリバランスは、実際には実現しなかった。オバマの失敗の後、トランプ次期大統領は成功することができるだろうか。アメリカの無人潜水機が12月15日に南シナ海の国際水域で中国によって奪取されたことは、オバマ政権のリバランスやアジアへの軸足移動が失敗した証左であった。この事案は、中国海軍の階級の低い艦長による反抗的な行為でない限り、西太平洋で望んでいることを中国が行うことが可能で、アメリカはそれを止めることができないというメッセージだった。このメッセージは、中国が南シナ海における人工島の要塞化を中止しないことによって、一層力強いものになった。オバマ大統領のアジアへの軸足移動は、この中国パワーの台頭を止めるために、より大規模な米軍部隊と外交的影響力をこの地域に展開することを意図していたが、著しい成果を達成できなかったことは明らかである。

(2)トランプは、中国に対するアメリカの貿易赤字によって象徴される、中国の成長力を抑えることを決定した。従って、12月2日のトランプによる蔡英文台湾総統との電話会談―1979年以降アメリカの大統領または次期大統領が台湾総統と話した初めてのことだが―は、北京への警告が明らかに意図されていた。中国との交渉に関しては、トランプには有利な点が2つある。彼の不穏な予測不可能性と、国防費を引き上げるという約束である。多くの評論家は、トランプが中国や他の敵国に譲歩を強いるために、ニクソンの「マッドマン」行為を模倣しようとしていることを示唆している。確かに、マッドマン・セオリーは、ニクソンにとって上手くいかなかった。しかし、トランプは、ニクソン以上に、戦争を利用する狂人と思わせる印象を与えることができるかもしれない。確かに中国は、「ドラマのない」オバマよりは、トランプとの争いをより案じるであろう。蔡英文とのトランプの電話会談は、彼(トランプ)には、善かれ悪しかれ彼の前任者(オバマ)に欠けていた瀬戸際政策の傾向があることを示唆している。従って、トランプは、中国に無理矢理譲歩させる、あるいは失敗して誰も望んでいない戦争に入り込む可能性もある。トランプのもう1つの切り札は、米軍の増強に対する支持である。海軍と空軍の増強は、中国のミサイルの備蓄量と潜水艦によって、太平洋の勢力均衡が米第7艦隊に不利な方向に傾いているだけに、特に重要である。 問題は、トランプがこの軍事力増強のために、4年間で最低3,630億ドルの費用をどのように支払うのかということについて、何らの示唆も与えていないことである。 トランプが大規模なインフラ支出と減税の計画を発表したことも考慮すれば、議会の財政再建論者が、彼が国防費を増やすことを許可するかどうかは、全く未知数である。

(3)トランプは、アジアにおける勢力均衡を変えようとする際に多くの問題に直面する。彼のこの地域に対する知識が不足している、または彼の外交もしくは国家安全保障問題に関して経験が不足しているという問題だけではない。更には、彼が乱暴なレトリックを好むこと、夜遅くにツィートを発信する習慣だけではない。同様に、長年に亘って、彼が恩知らずのたかり屋と考えているアメリカの同盟国、そして彼がぼったくりと考える自由貿易に対する敵意がある。選挙の後、トランプは韓国と日本の指導者と会話しており、アメリカの同盟関係を放棄するつもりはないと彼らを安心させたといわれている。しかし、彼がそうすると言ったように、韓国と日本がアメリカの保護の特権にもっと負担を増やすように彼が要求すれば、何が起きるだろうか。安倍晋三首相は十分な親米派である。しかし、韓国で朴大統領の後に親米的ではなく、対北朝鮮宥和派が大統領選挙に勝利した場合、トランプが在韓米軍の経費負担増を求めれば、韓国は米軍が戦闘を行わずに去ることを認めるかもしれない。もしそれが起こるならば、太平洋地域でのアメリカの地位は暴落するであろう。同様に、ワシントンがTPPの復活を試みない一方で、北京がアメリカ抜きの貿易協定を進めれば、アメリカの影響力は低下するであろう。トランプが関税を引き上げ、中国との貿易戦争を宣言すればさらに悪化するであろう。中国とアメリカの経済が相互に関連していることを考えると、結局相互心中になるであろう。関税障壁を是正することは、アメリカ経済を傷つけ、アジアにおけるアメリカの影響力を大幅に低下させる。太平洋への軸足移動を重視しているなら、トランプは、同盟国と自由貿易への彼の嫌悪感を再考する必要があるであろう。

記事参照:
Donald Trump's Pivot Through Asia

1228日「アメリカの『一つの中国』政策は再検討すべき米専門家論評」(The National Interest, Blog, December 28, 2016)

 米シンクタンク、The Global Taiwan Institute (GTI) 理事長Russell Hsiaoは、12月28日付の米誌The National Interestのブログに、"What is the U.S. "One China" Policy?"と題する論説を寄稿し、アメリカの「1つの中国」政策は再検討の時を迎えているとして、要旨以下のように述べている。

(1)トランプが次期大統領は12月11日にアメリカのテレビで「何故、アメリカは『1つの中国』政策に縛られなければならないのか、私には分からない」と述べて物議を醸したが、「1つの中国」政策は固定的なものではなく、また少なくとも次期大統領の発言を、アメリカの政策の転換と読み取るべきものでもない。誰もそれが何なのかを実際には知らない。「1つの中国」政策は、法律でもなく、これまで明確に定義されたこともない。タブーであり過ぎて触ることすらできないように思える、アメリカの「1つの中国」政策は、良くても曖昧であり、最悪の場合解読不可能であるため、この解釈を巡って混乱がある。この政策が引き続き謎に包まれているということは、この政策が巧みな操作や誤用の影響を受けやすいという危険な神話を生み出す。アメリカの「1つの中国」政策は、少なくとも再検討の時を迎えているといえる。

(2)BrookingsやRANDの専門家は、アメリカによる現在の「1つの中国」政策からの逸脱または放棄によるリスクを強調する一方で、「1つの中国」政策の融通性を認めている。しかし、これらの専門家は、アメリカの「1つの中国」政策の進化的属性を軽視し、北京の反応を過大視する傾向がある。アジア問題専門家でGTI顧問のShirley Kanが強調している重要な点は、「アメリカの『1つの中国』政策は、ワシントンがその政策を如何に実施していくかという進化の過程であり、北京の他国への指図によって縛られるものではない」ということである。1971年以来そうであったように、北京は、自身の時代遅れの定義に厳密に沿って、アメリカの「1つの中国」政策を定義しようとするであろう。北京が「1つの中国」をどのように「考えているか」ということへの卑屈な恭順によって実施される政策は危険である。中華人民共和国と台湾の関係に対処するに当たって、公式のアメリカの立場は、意図的に柔軟であろうとしている。1972年の上海コミュニケは、「米国側は次のように表明した。アメリカは、台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分であると主張していることを認識 ("acknowledge") している」となっている。"acknowledge"は、アメリカがこの立場を受け入れる (accepts) ことを意味しない。

(3)しかし、ワシントンの台湾に対する政策の遂行は、次第に過剰になってきた官民による北京の「1つの中国」原則への配慮もあって、誤った誤魔化しの選択によって操られている。北京の詭弁は定義の力に依存しており、そしてより一般的にいえば、「1つの中国」原則の適用範囲を拡大している。トランプ次期大統領の発言に対する中国の反応は、アメリカの「1つの中国」政策の明確さの欠如に付随して増大する危険性に焦点を当てたものである。特に中国の「1つの中国」原則と区別されない場合、台湾に対するアメリカの政策は中国によって次第に蝕まれることになろう。ワシントン、台北、北京の三者関係に対するアメリカのアプローチは、再検討が必要である。少なくとも、次期大統領は、北京の「1つの中国」原則との間に一線を引くことで、北京のルールの呪縛から逃れることができるであろう。最終的には、台湾に対する中華人民共和国の領土回復主義者の権利主張を事実上容認するような受け身のアプローチの継続は、台湾海峡のより大きな不安定化を招く。既存の枠組みの中でアメリカの政策立案者が取り組むことができる広い領域があるが、それには台湾海峡におけるソフトバランシングについて明確に定められたアジェンダがまず必要となろう。

記事参照:
What is the U.S. "One China" Policy?

1214日~1230日「中国海軍空母『遼寧』の動向」(Various Sources, December 12~30, 2016)

 中国海軍の空母「遼寧」は、12月14日の朝鮮半島に近い渤海湾での実弾射撃演習を皮切りに、12月24日には当初7隻の随伴艦を伴った空母「遼寧」を中核とする空母打撃群が西太平洋での初めての遠海訓練に向けて出発した。台湾の東側の西太平洋を夜間航行し、12月26日に空母「遼寧」と5隻の随伴艦から編成される「遼寧」打撃群が台湾とフィリピンの間のバシー海峡を通過し、南シナ海に入り、12月30日に南シナ海を航行して海南島三亜の基地に到着した。以下はその関連情報である。

(1)ロイター通信が中国メディアの報道として伝えるところによれば、中国軍は12月14日、朝鮮半島に近い渤海湾で、空母「遼寧」も参加して、実弾射撃演習を実施した。それによれば、演習には空母「遼寧」を含め艦艇数十隻、航空機数十機が参加し、空対空、空対艦、艦対空戦闘演習が実施され、空母打撃群編成での初めての実弾射撃演習となった。中国は、この演習は如何なる国をも目標としたものではないとしている。(Reuters, December 14, 2016)

(2)中国海軍報道官は12月24日、空母「遼寧」を中核とする空母打撃群が西太平洋での遠海訓練に向けて出発したことを明らかにした。中国の空母打撃群が第1列島線を越えて西太平洋に進出し、訓練を行うのは初めてとみられる。防衛省統合幕僚監部の12月25日の発表によれば、海上自衛隊護衛艦が12月24日午後、7隻の随伴艦を伴った空母「遼寧」を東シナ海中部の海域で初めて確認したと発表した。それによれば、東に向かって航行する「遼寧」打撃群は、「遼寧」の他に、Type 052C(旅洋II級)駆逐艦2隻(東海艦隊「鄭州(151)」、南海艦隊「海口(171)」)、Type 052D(旅洋III級)駆逐艦1隻(南海艦隊「長沙(173)」)、Type 054A(江凱II級)フリゲート2隻(北海艦隊「煙台(538)」、「臨沂(547)」)、Type 056(江島級)対潜コルベット1隻(南海艦隊「株洲(594)」)、Type 903A補給艦1隻(東海艦隊「高郵湖(966)」)の7隻である。

(3)米メディアの報道によれば、この「遼寧」打撃群の編成は、2つの点で注目される。第1に、通常混成されることのない海軍の3つの艦隊からの各種戦闘艦で構成されていること。第2に、対空駆逐艦、対潜フリゲートとコルベット、洋上補給艦、更に少なくとも13機の艦載ジェット戦闘機と数機のヘリからなる、多様な戦力構成であること。

加えて、中国海軍の声明にも、防衛省の発表にも言及されていないが、中国海軍の潜水艦、例えば、Type 09Ⅲ「商」級潜水艦が初めて西太平洋に進出する「遼寧」を護衛するために随伴していると見られる。

「遼寧」打撃群がこの時期に初めて西太平洋に進出する目的は定かではないが、「遼寧」打撃群が第1列島線を越える前日に呉勝利海軍司令員が「遼寧」に乗艦している。短期的、中期的に見て、中国海軍は、最初の空母打撃群を、例えば米海軍の空母打撃群と対峙させようとは考えていないであろう。中国海軍は、まず、運用を開始したばかりの空母航空団の「耐用性」を検証しようとしていると見られる。第2に、今回の目的は、恐らく、次のより複雑な環境での「全面的な」運用テスト段階に移る前に、艦載機搭乗員が基本技術の習得という第1段階を修了するレベルに達しているかどうかをチェックすることにあると見られる。要するに、中国海軍最初の空母打撃群が公海で艦隊防衛ができ、作戦運用ができるかどうかをチュックする、この4年近い実習訓練の「最終テスト」ということであろう。(Navy Recognition.com, December 25, 2016)

(4)台湾国防部の12月26日の発表によれば、空母「遼寧」と5隻の随伴艦から編成される「遼寧」打撃群は台湾とフィリピンの間のバシー海峡を通過し、南シナ海に入ったと発表した。国防部は「遼寧」が初めて空母打撃群編成で第1列島線を突破し、台湾東部に接近したことで警戒を強めており、台湾空軍は東部の花蓮基地から2機のF-16戦闘機と2機のRF-16戦闘偵察機をスクランブル発進させた。国防部によれば、「遼寧」打撃群は宮古海峡を抜けた後、25日夜、台湾の防空識別圏 (ADIZ) の外側約37キロを航行し、26日朝、台湾本島最南端から約167キロの沖合を通過して、バシー海峡から南シナ海に入り、同日午後2時には台湾が実効支配する東沙諸島の南東沖を航行し、南シナ海に向かった。台湾海空軍は、E-2K Hawkeye、P-3C哨戒機や、「成功」級と「康定」級フリゲートを出動させ、動向を監視している。「遼寧」打撃群は今回初めて第1列島線を突破して西太平洋に進出し、台湾の東部を回り込む形で南シナ海に入ったが、国防部は、「遼寧」打撃群の西太平洋での行動や、潜水艦を随伴しているかどうかについては、言及することを拒否した。(Taipei Times.com, December 27, 2016)

(5)中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は12月30日、南シナ海を航行していた「遼寧」打撃群は12月30日までに海南島三亜の基地に到着したと伝えた。国防部報道官は前日29日の記者会見で、今回の航行は「年度計画に沿った訓練」とし、今後も西太平洋やその他海域で訓練を継続していくと述べた。(Global Times.com, December 30, 2016)


【補遺】 旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書

1. Indonesia in the South China Sea: Going it alone
Lowy Institute, December 2, 2016
Aaron L Connelly, a Research Fellow in the East Asia Program at the Lowy Institute for International Policy

2. Chinese Strategy and Military Modernization in 2016: A Comparative Analysis
CSIS, December 5, 2016
AUTHOR: Anthony H. Cordesman, WITH Joseph Kendall

3. China's Contribution to Peacekeeping Operations: Understanding the Numbers
China Brief, The Jamestown Foundation, December 5, 2016
By Dennis J. Blasko, Dennis J. Blasko, Lieutenant Colonel, U.S. Army (Retired), is a former U.S. army attaché to Beijing and Hong Kong and author of The Chinese Army Today, second edition (Routledge, 2012).

4. How America Can Lead in Asia
The National Interest, December 12, 2016
Joseph W. PrueherJ. Stapleton Roy, Paul Heer, David M. Lampton, Michael D. Swaine and Ezra Vogel
Joseph W. Prueher is a former career U.S. Naval officer, having served as Commander of the Pacific Command, and after retiring from the Navy, as U.S. Ambassador to China for Presidents Clinton and Bush (1999-2001). He has also worked in academia and serves on the boards of U.S. corporations and nonprofit organizations.
J. Stapleton Roy is a former senior career U.S. diplomat specializing in Asian affairs. He served as U.S. ambassador in Singapore (1984-86), the People's Republic of China (1991-95), and Indonesia (1996-99). He was also director of the Kissinger Institute for Chinese-U.S. Studies at the Woodrow Wilson International Center for Scholars.
Paul Heer is a former career U.S. intelligence official who served as National Intelligence Officer for East Asia from 2007 to 2015. During 2015-6, he was a Robert E. Wilhelm Fellow at the Center for International Studies at the Massachusetts Institute of Technology.
David M. Lampton is Professor and Director of China Studies at Johns Hopkins School of Advanced International Studies and is former President of the National Committee on U.S.-China Relations.
Michael D. Swaine is a career policy analyst specializing in Asian security issues, especially those involving the U.S.-China relationship. He was a Senior Political Scientist at The RAND Corporation from 1989-2001 and is currently a Senior Fellow in the Asia Program at the Carnegie Endowment for International Peace.
Ezra Vogel is Henry Ford II Professor of the Social Sciences Emeritus, Harvard University, a former director of the Asia Center and Fairbank Center, Harvard University, and served as National Intelligence Officer for East Asia from 1993 to 1995.

5. Maritime Issues in the East and South China Seas
Summary of a Conference Held January 12-13, 2016
RAND, December 12, 2016
Edited by Rafiq Dossani, Scott Warren Harold

6. China's New Spratly Island Defenses
Asia Maritime Transparency Initiative, CSIS, December 13, 2016
(人工島軍事化の進捗状況を示す画像多数)

7. COUNTERING CHINA'S ADVENTURISM IN THE SOUTH CHINA SEA: STRATEGY OPTIONS FOR THE TRUMP ADMINISTRATION
CSBA, December 14, 2016
Ross Babbage, Non-Resident Senior Fellow of CSBA

8. Old Treaties Called Into Question as Arctic Competition Increases
USNI News, December 20, 2016

9. The Strategic Support Force: Update and Overview
China Brief, The Jamestown Foundation, December 21, 2016
By John Costello, John Costello is a Senior Analyst for Cyber and East Asia at Flashpoint.

10. 2017 Annual Forecast: East Asia
Stratfor.com, December 27, 2016

11. Taiwan: Asia's Orphan?
The National Bureau of Asian Research, December, 2016
Steven M. Goldstein, Director of the Taiwan Studies Workshop and an Associate at the Fairbank Center for Chinese Studies at Harvard University.

12. Australia's Strategic Culture and Asia's Changing Regional Order
The National Bureau of Asian Research, December 2016
Nick Bisley, Executive Director of La Trobe Asia and Professor of International Relations at La Trobe University in Australia

13. Roundtable: The Arbitral Tribunal's Ruling on The South China Sea-Implications and Regional Responses
Contemporary South East Asia: A Journal of International and Strategic Affairs, Vol. 38, No. 3, December, 2016)


編集・抄訳:上野英詞
抄訳:秋元一峰・倉持一・高翔・関根大助・向和歌奈・山内敏秀
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