海洋情報旬報 2016年1月21日~31日

Contents

1月25日「空母の脆弱化阻止のための米海軍の取り組み―米専門家論評」(The National Interest, Blog, January 25, 2016)

米シンクタンク、The Center for the National Interestの上席研究員、Harry J. Kazianisは、米誌The National Interestの1月25日付ブログに、"Can the U.S. Navy Stop Aircraft Carriers From Becoming Old 'Battleships'?"と題する論説を寄稿し、最近の空母の脆弱性を減少させる米海軍の取り組みを紹介し、要旨以下のように述べている。

(1) 現在、アメリカの戦闘力のシンボルである空母は、あらゆる方面からの批判に晒されている。ある人は、現在の空母戦闘群は酷使され、非常に疲れ切っているという。他の人は、最新の空母を追加配備することはコストが高過ぎるという。中国、ロシア、そしてイランの対艦兵器によって、空母は脆弱になったという人もいる。更には、現在の空母航空団は、将来の戦争を戦うには航続距離が足りないという人もいる。こうした批判を要約すれば、アメリカの戦力投射の至高のシンボルは、今後必要不可欠な強化措置が施されなければ、やがては往年の「戦艦」になりかねないであろう、ということに尽きる。

(2) これら全ての課題を解決するためには、時間、経費、技術的進歩、そして最も重要な政治的意志が必要であろう。しかし、現在、既に空母を効果的な戦力として維持していくための措置が取られている。その良い例は、大西洋での演習中の2015年12月16日、空母、USS Dwight D. Eisenhower搭載のMK 53 Decoy Launching System (DLS) から発射されたデコイ、MK234 Nulkaのテストである。MK234 Nulkaは、対艦ミサイルに対抗するために開発されたもので、既に数年前から他の戦闘艦に搭載されている。陸上、海中そして上空からの精密誘導対艦ミサイルの脅威に晒されている空母へのMK234 Nulkaの搭載は、時宜に適ったアイディアである。MK234 Nulkaは、発射されると、実際のターゲットからミサイルを引き離すために、大型船ほどの大きさのレーダー反射断面を形成する。ミサイル防衛システムやその他の防御プラットフォームなど、空母護衛のための他のシステムと組み合わせれば、空母は、現在世界中に拡散しつつある多くの対艦兵器に対して、大きな優位性を維持する可能性があるように思える。MK234 Nulkaは、オーストラリアとアメリカの共同開発である。USS Dwight D. Eisenhowerは、MK234 Nulkaを搭載した2番目の空母だが、海洋においてMK234 Nulkaを成功裡に発射した最初の空母となった。

(3) しかし、MK234 Nulkaは、マッハ10~12の速度でターゲットに降下してくる、中国のDF-21D対艦弾道ミサイルのような、最高レベルの対艦兵器に対しても機能するのだろうか。筆者 (Kazianis) が2012年に、RAND研究所のRoger Cliffに、SM-3などの他の様々なタイプの対抗手段がDF-21Dに対してどのように機能するのかを問うた時、以下の回答を得た。

a.中国が弾道ミサイルによる米海軍戦闘艦に対する攻撃を成功させるためには、まず目標とする艦を探知し、攻撃したい軍艦のタイプ(例えば空母)であるかを確認し、ミサイルを目標艦に発射できるように、その正確な位置を測定し(例えば、当該艦は1時間前に衛星画像を撮った位置から25カイリも離れた場所に移動しているかもしれないので、1時間前の衛星画像は恐らく役に立たない)、そして発射ミサイルに中間軌道の最新情報を提供しなければならない。最終的に、弾頭は、目標艦をロックオンし、それに向かって飛行していかなければならない。

b.こうした複雑な "kill chain" は、その途上で相手側に敵ミサイルの攻撃を無力化できる多くの機会を提供してしまう。例えば、目標艦を探知するために使用される超水平線レーダーを妨害したり、騙したり、また破壊したりすることができる。予測可能な軌道を進む画像衛星が艦隊上空を通り過ぎる時に、煙幕や他の視界を遮る手段を講じることができる。中間軌道の最新情報を電波で妨害することができる。そして、ミサイルがターゲットをロックオンした際、追尾装置を電波で妨害したり、あるいは騙したりすることができる。

c.しかしながら、これら全ての措置が実際にどのように機能するかを事前のテストで知ることは不可能である。例え中国が実物の戦闘艦に対するミサイル攻撃実験を行っても、それは米海軍戦闘艦があらゆる対抗手段を駆使する実際の戦闘環境下で実験したことにはならないであろう。実際の戦闘環境では、誰かが驚いたり、失望したりする可能性があるが、その誰かを事前に知る術はない。

(4) 米海軍における空母の重要性を考えれば、そして既に次世代空母に多大の資金を投入していることを考えれば、ワシントンは、空母を公海における「シッティング・ダック」にしないために、あらゆる手段を講じなければならない。MK234 Nulka システムや、接近阻止/領域拒否 (A2/AD) 環境を突破し、攻撃できる長距離無人攻撃プラットフォームの開発、配備など、最近の各種の取り組みは、空母の有用性を高めるとともに、その脆弱性を減少させることになろう。

記事参照:
Can the U.S. Navy Stop Aircraft Carriers From Becoming Old 'Battleships'?

1月27日「中国、『普通の海軍国』へ―RSIS専門家論評」(RSIS Commentaries, January 27, 2016)

シンガポールのS.ラジャラトナム国際関係学院 (RSIS) の訪問上席研究員、Geoffrey Tillは、1月27日付のRSIS Commentariesに、 "China and Its Navy: Drifting Towards Normality?"と題する論説を寄稿し、計画中のジブチにおける中国海軍基地の設営は中国海軍が近海から遠海域においても行動できる「普通の海軍国」を目指していることを示唆しており、これが警戒すべきかどうかは中国がこの基地をどのように運用するかにかかっているとして、要旨以下のように述べている。

(1) 中国海軍は最近、ソマリア沖及びそれ以遠での作戦行動のために、ジブチに「基地」を設営する意図があることを明らかにしたが、これは2つの理由からちょっとした驚きであった。

a.第1に、ごく最近まで、どの国でも外国領土に基地を設営するという考えは流行遅れと見なされてきた。何故なら、コストや政治的脆弱性に加えて、基地防衛に少なからぬ資源が投資されていない限り、紛争状況下ではその価値が極めて限定的なものになるからである。このため、現代の海軍は、米海軍に代表されるように、補給艦船群による「洋上基地」に投資している。それでも、ロシアは、シリア北西部のラタキアに、一見基地に見え、しばしばそう呼ばれてきた施設を整備してきた。フランスと英国もバーレーンにそうした施設を整備してきた。しかしながら、これらの施設は、大規模な複合的軍事施設ではなく、幕僚が駐在し、燃料やその他の補給物資を貯蔵し、艦船の整備や小規模の修理ができ、そして時には乗組員のための休養施設となっている。これらは、基地というよりは「拠点 ('places')」という方が適切である。それでも、これらの「拠点」は、他国の海軍や軍隊と直接戦闘するような事態でなければ、当該国海軍の効率的な作戦能力を高めることになろう。このことは、中国が南シナ海で建設中と見られる新しい施設についてもいえることである。

b.第2に、歴史的に西欧帝国主義の産物である在外基地の設営は本質的に不安定化をもたらす営為であり、しかも中国の近海における権益と自国の「平和的台頭」のみを保守するという中国の意図にとって何の利益にもならないという、北京のこれまでの考え方から明らかに逸脱している。そして在外基地の設営は、中国が徐々に普通の海軍国家 (a normal naval power) になりつつあることを示す証左と見られる。この点で、中国は旧ソ連の初期の軌跡を辿りつつある。旧ソ連は1920年代から30年代にかけて、古典的なシーパワーの概念を、技術的に時代遅れで、ロシアの戦略的所要に適さず、そしてイデオロギー的に不都合なものとして拒否した。しかしながら、スターリン、フルシチョフそしてブレジネフ政権下で戦略環境が改善された時代になって、ロシアは、(「ロシア的特色」を持っているとしても)西欧と同じ古典的な概念に基づき、他の主要海軍国と非常に似通った艦隊を建設し、そして1982年の国連海洋法条約に至る協議を通じて、その法的前提 (its legal assumptions) も、旧ソ連の敵対勢力と次第に同じようなものになった。

(2) 中国が遠海域での作戦行動を支援するために陸上施設を設営することは、同じ経過を辿ってきた他の事例を見ているような印象を受ける。既に、中国海軍の「遠海」作戦行動能力は、空母艦載航空部隊の着実な建設、汎用駆逐艦、両用戦闘艦艇そして補給支援艦艇への増大する投資に見られるように、明らかに強化されつつある。ロシアと同様に、中国も、何十年にもわたって空母を非難してきたが、今ではそれを建造している。中国海軍のインド洋及びそれ以遠への展開も、ロシアと同じ方向を目指している。更に日本やアメリカのEEZにおける「相互的な (in 'reciprocal')」軍事活動を容認する意志と、最近のSubi Reef(渚碧礁)周辺海域におけるアメリカの航行の自由作戦に対する抑制された対応も、中国が長く立脚してきた法的前提について再考し始めているかもしれないことを示唆している。もしそれが事実なら、海洋大国 (great maritime powers) が常に保持してきた伝統的利益が海洋の自由であったことを考えれば、このことはさして驚くべきことではないであろう。しかしながら、例えそれが事実としても、拙速に、あるいは過大な期待をすべきではない。外部の観察者にとって、その変化は、スーパータンカーの進路変更が変針し終わって初めて明らかになるように、目に見えにくいものに思えるかもしれない。

(3) しかし、こうした変化が事実と分かれば、そして中国が実際に「普通の海洋国家 (a 'normal seapower')」(ここでの用語は、a normal naval powerではない)になるとすれば、何を意味し、他の諸国はどのように対応すべきか。旧ソ連との明らかな類似性と同時に、1つの大きな相違がある。即ち、中国は、国際的な海上交易システムの円滑な運営における積極的な参加国であり、利害関係国である。しかし、旧ソ連はそうではなかった。しかも、今日では、冷戦期のようなイデオロギー的対立要素もない。従って、「普通の海洋国家」としての中国の台頭は、それが多くの脅威から世界システムを防衛するのに貢献するのであれば、恐れなければならない戦略的脅威ではなく、むしろより歓迎すべき機会であるかもしれない。

記事参照:
China and Its Navy: Drifting Towards Normality?

1月27日「歴史的遺産を活用する中国、インド、インドネシアの海洋構想―インド人専門家論評」(The National Maritime Foundation, January 27, 2016)

印シンクタンク、The National Maritime Foundation (NMF) の研究員、Shereen Sherifは、1月27日付のNMFのWebサイトに、"Silk, Cotton and Cinnamon: Maritime Renaissance of the Indian Ocean"と題する長文の論説を発表し、歴史的遺産を活用する中国、インド、インドネシアの海洋構想について、要旨以下のように述べている。

(1) インド洋は、グローバルな地政学的環境におけるアジアの重要性が高まってきたことに伴って、増大する貿易、相互依存と経済成長に不可欠な海洋となってきている。インド洋は、世界経済を支えるのに不可欠なシーレーンよって東と西の世界を結び、世界の海運による石油輸送のほぼ80%がインド洋のチョークポイントを通航している。地理的・経済的重要性から、インド洋地域と太平洋地域を包含する、「インド洋・太平洋地域」は戦略的に極めて重要な地域となってきた。この新しい地政学的概念は、インド洋と太平洋の2つの海洋をシームレスに一体視するものである。アメリカは、経済的関与と、海・空軍部隊の増強によって、この地域における再均衡化を進めつつある。中国、インドそしてインドネシアなどは、グローバルな海上交通路における自国の通商上の権益を保全するために、自国の海洋遺産を再活性化することを重視した、国家的な政策構想を推進している。これらの諸国は、海洋交易ネットワークにおける自国の象徴的な存在と遺産を表象するものとして、この地域における海洋への歴史的な関与を利用している。経済的利益が動機付けになっているにもかかわらず、これらの諸国によって始められた相互協力と協働のアプローチは、この地域における多くの国家にとって、世界の歴史において「忘れられ、無視された」彼らの過去の貢献を再認識させるプラットフォームになっている。

(2) 中国の習近平国家主席は2013年9月、訪問先のカザフスタンで、「シルクロード」と呼ばれる大陸ルートを復活させる構想を発表した。ほぼ1カ月後、習近平は、インドネシア議会での演説で、「21世紀の海上シルクロード (MSR)」を構築することによって中国と東南アジア諸国間の連結性を高めるため、古代の「海上シルクロード」を復活させる構想を発表した。中国の説明によれば、「シルクロード」構想は、古代の中国の港を、南太平洋や、南シナ海とインド洋を経由してヨーロッパと連結することになろう。この構想は世界的な注目を集めたが、その地政学的曖昧さから来る懸念から、しばしば提起された疑問は、何故中国が古代のシルクロードを復活させるという途方もない事業を推進するのかということであった。中国政府当局者は、この構想を、インフラ開発、そして妨害のない貿易と人的交流を通じた、共通の利益、責任そして運命を持つ共同体を形成することを狙いとした、経済協力事業である、と説明してきた。しかしながら、「シルクロード」という用語は、象徴的なものであり、インド洋交易ネットワークにおける貿易に対する中国の過去の歴史的な独占状況を表象している。過去の海洋の重要性を理解するために「海洋シルクロード (MSR)」という用語を使用することは、その特質と特徴が中国的なものであることから、「中国の海洋ルネッサンス ('China's Maritime Renaissance')」と呼ぶこともできる。

(3) モディ政権下のインドは、インド洋地域におけるその戦略的立場を強固にするために、各種の事業を開始した。インドのProject MausamはしばしばMSRに対抗する構想と見られてきたが、これは、世界各国との文化と貿易交流のための、海洋ルートを「再接続し、再構築する」文化省の事業である。Mausamという言葉は、アラブ海を指してアラブ人旅行者が最初に使ったもので、初期の航海を可能にした規則的な季節風(モンスーン)を意味した。海洋交易における歴史的理解を利用した、海洋による各国との結び付きを強化するインドのもう1つの事業は、「スパイス・ルート (the 'Spice Route')」である。中国のMSRからヒントを得て、ケララ州政府は、2000年前の「スパイス・ルート」を復活し、推進するために、ユネスコとの間で覚書に調印した。この構想は、アジアの全31カ国を結び付け、この歴史的な海外ネットワークにおいてケララ州が果たしてきた不可欠の役割を強調することを狙いとしている。また、インドの古代の「コットン・ルート ('Cotton Route')」も、環インド洋地域の結び付きを再生させる媒体として復活された。産業革命以前には、インド綿は、インド洋両岸地域に輸出され、あらゆる社会的、経済的階層で使われていた。これらの事業は、文字通り古代の海洋による結び付きを復活させ、インドの関与を強化する政策といえる。しかしながら、それらはまた、'Look East'から'Act East'へのインドの戦略的転換を表象する構想と見ることもできる。モディ政権下のインドは、'Act East'ビジョンを積極的に追求しており、これらの構想はその強い推進力となっている。

(4) インドネシアは、インド洋と太平洋との地政学的中枢という戦略的位置にあり、10カ国と海洋境界を共有する世界最大の群島国家である。現在、インドネシアは、地域的海洋国家を目指して、積極的な政策構想を推進している。ジョコ大統領は、インドネシアを、「世界の海洋の要 (a 'Global Maritime Fulcrum')」にするという野心的な構想を打ち出している。この構想は、5つの重要な要素、即ち、海洋文化、海洋資源、経済的結び付き、海洋外交、そして海洋能力の育成である。世界の重心がインド洋・太平洋地域に移りつつある時代において、インドネシアの新しい構想は、変化する世界の力学的環境を利用して、自国を台頭する海洋国家として確立しようとするものである。ジョコ大統領は、「世界の海洋の要」構想の中で、インドネシアを「インド・太平洋国家 (an 'Indo-Pacific' power)」と位置付けている。この構想の最重要の柱として、インドネシア政府は、インドネシアの古代の海洋文化とその遺産をしばしば強調している。「シルクロード」のはるか以前にあった「古代シナモン・ルート (the ancient cinnamon route)」は、紀元前5世紀のインドネシアの海洋ルーとして、シナモン、コショウ、ショウガそしてクローヴといった、スパイスを世界の市場に輸送するために使われた。東南アジアの別称は'Survarnabhumi'といわれるが、この言葉は「本物の金」を意味し、これは恐らくスパイス交易を通じて得られた利益を金と同等に見做したことによる比喩であった。インドネシアは、当時、スパイス交易のハブであり、Spice Islandとして知られていたが、スパイスの需要によって東と西を結び付ける海洋ルートが活用された。カシア桂皮のようなスパイスは、紀元前2000年の頃から交易されていて、医療や儀式などで使われていた。一番古いスパイス交易の痕跡は、シリアで見つかった紀元前1721年のクローヴで、東部インドネシアのモッルッカ諸島で収穫されたものであることから、交易ルートはインドネシアから東アフリカのマダガスカル島にまで至るものであった。インドネシアは、「世界の海洋の要」構想の中で、自国を台頭する海洋国家として確立しようとしており、その海洋遺産を復活させようとしている。しかしながら、'Cinnamon Route'という用語は、シナモンがスリランカ原産なので、誤った呼称になる。南東アジアはスパイス交易のハブと呼ばれていたが、シナモン交易はスリランカが中心であった。インドネシアはカシア桂皮を独占していて、それは紀元前2世紀という早い時期に既に交易品であった。

(5) 以上のように、中国、インド及びインドネシアが推進しようとしている海洋構想は似通ったもので、これら3国は、海洋ルートにおける自国の歴史的存在を再確立する政策を推進している。シルク、コットンそしてシナモンは、象徴的で、愛国主義的アイデンティティーを表象している。現在の地政学的パワープレイに伴って、これらの海洋構想は依然、進化中だが、国家間の協力という新たな戦略は、海洋を共有空間と認識する新しい概念である。海洋による結び付きがグローバリゼーションの発端の1つであることを認識することで、国家間を結び付け、あるいは引き離し、また商品、人、知識そして宗教における交流を通じて文化を形成してきた、海洋の広大さと複雑さを理解することができる。

記事参照:
Silk, Cotton and Cinnamon: Maritime Renaissance of the Indian Ocean

1月28日「オバマ政権の功績、アジア関与のアーキテクチャー構築―米専門家論評」(The Diplomat, January 28, 2016)

米シンクタンク、The Center for American Progressの東・東南アジア部長、Brian Hardingは、1月28日付のWeb誌、The Diplomatに"Obama's Asia Engagement Architecture: A Framework on Which to Build"と題する論説を寄稿し、アメリカの大統領がアジアに振り向ける時間と関心を引き上げたことがオバマ政権のアジア政策における遺産だとして、要旨以下のように述べている。

(1) オバマ大統領は、2016年には5月のG7サミットのために日本を、9月には東アジアサミットのためにラオスとベトナムを、また同じ9月にはG20 サミットのために中国をそれぞれ訪問することが既に予定されており、アメリカの大統領として、アジア地域の国を最も多く訪問したブッシュ前大統領の記録を塗り替えることが決まっている。大統領就任以来7年間における、オバマ大統領の7度のアジア訪問は、アメリカのアジアへの関与における「新しい常態 (the "new normal")」の主要な柱となった。オバマ大統領のアジアへの関心は、この間におけるアメリカのアジアでの大きな成果に繋がった。就中、TPP交渉の成功、東南アジアとオセアニアにおける軍事アクセス協定の実現、中国との気候変動に関する歴史的な合意、そして日米同盟を刷新する新ガイドラインである。これらの成果は、次期政権がそれらを踏まえて更なる進化を追求できる、オバマ政権の大きな遺産である。

(2) しかしながら、オバマ政権のアジア重視政策において正当に評価されていない主たる功績は、2009年の就任以前に姿を現し始めたばかりの、この地域への関与のための多くのアーキテクチャーの構築であった。ヨーロッパでは冷戦期間中に、定期的なNATOサミット、G7/G8サミット、あるいは頻繁なNATO閣僚会議など、関与のための制度的枠組ができ上がっていたが、アジア太平洋地域には、米政府首脳がアジアを重視せざるを得ないようなアーキテクチャーはほとんどなかった。その結果、ジョンソン、ニクソン、フォード、カーター、レーガンそしてブッシュ父の歴代大統領は、在任中アジアを訪問したのはそれぞれわずか2回に過ぎなかった。その前のトルーマンとケネディは訪問さえしていない。米大統領のアジア訪問が増えたのはクリントンからで、彼はAPECを創設し、以後、ブッシュ前、オバマ現大統領は少なくともAPECのアジア開催に併せてアジアを訪問した。皮肉にも、東アジアサミットに参加するというオバマ大統領の決定は、アメリカの大統領が毎年ASEAN加盟国を訪れるという公約となった。ヨーロッパとはすでに何十年にも亘って大統領が出席するサミットが行われてきたが、アジアでの大統領の出席を求めるサミットは初めてであった(なお、中東やアフリカではまだない)。その結果、今後、2016年のようにAPECがアジアで開催されない年にも、大統領は東アジアサミット出席のために東南アジアを訪問することになろう。それに併せて、オバマ大統領はラオスを訪問する最初の米大統領になる。このように、国連関係の会議やその他の会議に併せて、米大統領とASEAN首脳との会合を定期的に開催するというオバマ大統領の決定は、アメリカとASEANの関与のレベルを首脳レベルに引き上げることになった。

(3) オバマ政権の閣僚も、アジアへの定期的な関与のためのアーキテクチャーを構築してきた。例えば、国務・国防両長官は、日本やオーストラリアとの閣僚レベルの「2+2」会合を拡大し、韓国とフィリピンとの間でも開催した。国務長官と財務長官は、毎年行われている米中・経済戦略対話に参加している。クリントン前国務長官とケリー現長官は、インドネシアとシンガポールとの間で年次外相会談を立ち上げた。2010年には、当時のゲイツ国防長官が拡大ASEAN国防相会議(ASEAN Defense Ministers Meeting Plus:ADMMプラス)の一連の会議に参加し、多国間の国防相レベルの会議への関与を事実上制度化した。更に、国務省と国防省は、以前には存在しなかった次官級レベルにおけるアジアへの関与を制度化する、例えば米比2国間戦略対話、米マレーシア防衛政策対話、そして米ラオス2国間包括的戦略対話など、多くのメカニズムを立ち上げた。

(4) オバマ政権のアジア政策において重要だが過小評価されている側面は、こうした米政府首脳レベルのアジアへの関与の時間を増やしたことであり、そして後継政権にも引き継がれることになるアジアへの関与のためのアーキテクチャーを構築したことである。今後、専門家がアジアに関するオバマ政権の遺産を議論する際には、アメリカの大統領がアジアに振り向ける時間と関心を大幅に引き上げた、ということについては大方の頷けるところとなるであろう。

記事参照:
Obama's Asia Engagement Architecture: A Framework on Which to Build

1月29日「オバマ政権の『再均衡化戦略』に欠けているもの―米専門家論評」(The Diplomat, May 23, 2015)

米イェール大学のThe China Center上席研究員、Graham Websterは、1月29日付のWeb誌、The Diplomatに、"Asia Pivot: Does the US Need to 'Rebalance Harder'?"と題する論説を寄稿し、オバマ政権が2011年にアジア地域における再均衡化戦略を打ち出したものの、以後の政策には明確なビジョンと首尾一貫性が欠けていたとして、戦略国際問題研究所の報告書を取り上げて、要旨以下のように述べている。

(1) オバマ米大統領が政権最終年に入り、いわゆるアジア太平洋地域に対する再均衡化戦略がこの地域に対するアメリカの外交政策における同政権の主要な特色になるであろうことが、次第に明らかになってきている。しかしながら、議会の要請で国防省が戦略国際問題研究所 (CSIS) に委託した報告書が2016年1月に公表されたが、この報告書*は、「再均衡化戦略には一貫して混乱が見られ、その実行には懸念が残る」と結論づけ、混乱がアジア太平洋地域の政府や大衆だけに留まらず、むしろ米政府部内に広がっている、と述べている。驚くべきことに、同報告書は、「再均衡化戦略やそれに関連する事項について述べた、米政府の文書は全くない」とも指摘している。

(2) CSISの報告書は、オバマ政権やブッシュ前政権の元高官が中心となって纏めたものである。CSISの報告書を読めば、オバマ政権のアジア外交政策ビジョンは不明瞭で確信に満ちたものではないが、その方向性は間違っていないことが分かる。この報告書の核心的メッセージは、アメリカは特に軍事面においてより強力に再均衡化を進める必要がある、ということである。報告書の筆者らは、アメリカのアジア太平洋地域における「核心的利益」は「米国民や同盟国の安全を護る」、「貿易や経済的機会を拡大する」、そして「普遍的な民主主義の規範を支持する」ことにある、という伝統的な前提に基づいて論を進めている。彼らは、「アジア太平洋地域の台頭を管理するためには、関与、抑止そして再保障を総合した政策が必要である」としているが、中国に対する「封じ込め」については明確に否定している。しかしながら、この報告書に示された提言の一部は、北京から見れば、中国封じ込めと見えるかもしれない。最初に示されている提言には、「同盟国やパートナー諸国の能力、回復力そしてインターオペラビリティを強化する」、「アメリカの軍事プレゼンスを維持し、拡大する」ことが含まれている。更に、東南アジアの海洋における同盟国やパートナー諸国間の協力と能力の強化、そしてそのための資金援助の増大も提言されている。そして「中国の強まる高圧的姿勢」を指摘した上で、筆者らは、この地域における米海軍水上戦闘艦のプレゼンスを強化することを主張している。また、彼らは、東シナ海や南シナ海における情報収集、監視及び偵察活動面での条約上の同盟国との「共同行動」を提唱している。CSISの報告書が、報告書で提言した諸施策に対して予想される、中国からの反応にほとんど配慮していないことは、驚くべきことである。報告書は、アメリカが「中国との間で信頼醸成と危機管理を強化する」ことを勧告しているが、アメリカと同盟国の軍事努力が大幅に強化されるようになれば、中国軍部や政府指導者が感じることになるかもしれない不安感の増大については、ほとんど懸念していないようである。ある意味で、こうした配慮の欠如は、再均衡化戦略自体に見られる概念の曖昧さによる当然の結果であるといえよう。

(3) CSISの報告書の筆者らが言う「明確で、首尾一貫した戦略」なしに、防衛専門家は、能力の強化や効果的な抑止力を当然のこととして提唱する。再均衡化戦略が保証する事項の一部は、防衛、経済及び外交分野における、そしてアメリカが域内諸国との間で持つ多様な関係における、アメリカの諸活動をその実現のために統合すべきものであった。オバマ大統領が2011年11月、「アメリカはアジア太平洋地域の大いなる可能性に着目している」と述べた時、周囲の観察者は当然ながら、十分に調整され、十分に根回しされた諸政策の優先順位を期待した。しかし実際には、これらの諸政策が政府当局者の発言の中で言及されることはあっても、アメリカのイニシアチブと域内の多様な対応措置が相互にどう関連するかについては、明確にされることはなかった。CSISの報告書や最近数年間のその他の議論の中で求められてきた首尾一貫性とは、実際には、防衛、経済及び外交分野におけるアメリカの政策努力が如何に相互に連関しているか、そして究極的には、今日、中国によって引き起こされつつある大きな変化や不確実性にこれらの諸政策がどう対応していくのか、ということについて我々自身が語り得る論理を求められているのである。オバマ大統領は2017年3月までに「インド洋・アジア太平洋地域におけるアメリカの国益を推進するための総合的な戦略」を策定することを求められているが、実際問題として、オバマ政権には、新たな統合されたビジョンを示したり、行動に移したりするだけの時間は残されていない。もしオバマ政権がアジア太平洋地域政策における実績を残したいのであれば、大統領は、この問題を次期政権に委ねるのではなく、2011年以来、多くの者が待ち望んできたことを直ぐに実行すべきである。

記事参照:
Asia Pivot: Does the US Need to 'Rebalance Harder'?
備考*:Full Report
Asia-Pacific Rebalance 2025: Capabilities, Presence, and Partnerships
An Independent Review of U.S. Defense Strategy in the Asia-Pacific
CSIS, January 19, 2016
Study directors: Michael Green, Kathleen Hicks, and Mark Cancian
Team leads: Zack Cooper and John Schaus
Abridged Report

1月28日「台湾の馬英九総統、南沙諸島の太平島訪問」(The China Post, January 29, 2016)

台湾の馬英九総統は1月28日、南沙諸島で台湾が実効支配する太平島を訪問した。1月29日付の台湾紙、The China Post(英文中国郵報電子版)は、要旨以下のように報じている。

(1) 馬英九総統は1月28日午前11時、軍のC-130輸送機で、随行の政府職員や学者らとともに、太平島に到着した。太平島 (Itu Aba) は、台湾本島から南方約1,600キロに位置する、南沙諸島で台湾が実効支配する唯一の島嶼である。

(2) 馬総統は到着後の声明で、太平島訪問の主な理由として、①春節(2月8日)を前に同島駐留の海岸巡防署職員を慰問すること、②南シナ海平和イニシアチブ(南海和平倡議)で提示したロードマップを推進すること、③太平島が如何に平和目的に寄与できるかを示すこと、そして④太平島の法的地位を明確にすることを挙げた。

(3) 馬総統は同日夕方、台北松山空港に帰着後の会見で、太平島には真水があり、多くの野生生物が生息し、また滑走路、桟橋、病院及び発電所などのインフラが整備されており、太平島は4つの機能、即ち科学調査、クリーン・エネルギー資源の開発、海上犯罪取り締まり拠点、そして人道的捜索救難支援を提供できる、と述べた。その上で、馬総統は、フィリピンが中国を提訴した仲裁裁判で、太平島を島ではなく岩と主張していることに対して、「全くの虚偽」であると強調した。

記事参照:
Ma visits Taiping, asserts nation's claim
Photo: President Ma Ying-jeou visits a monument on Taiping Island on Jan. 28. (Courtesy of the Office of the President)

【関連記事】「アメリカは南シナ海問題で台湾を無視すべきでない―米専門家論評」(The National Interest, January 31, 2016)

米シンクタンク、The American Enterprise Institute (AEI) 研究員、Michael Mazzaは、1月31日付けの米誌、The National Interest(電子版)に、"To Fix the South China Sea, Look to Taiwan"と題する論説を寄稿し、AEIで台湾重視の必要性を説いてきた立場から、馬英九総統の太平島訪問に関連して、ワシントンは台北を無視するようなことを止めなければならないとして、要旨以下のように論じている。

(1) 台湾の馬英九総統は1月28日、台湾が唯一南シナ海で実効支配する太平島 (Itu Aba) を訪問したが、このことはワシントンからの強い非難を招くことになった。事実上の在台大使館であるアメリカ在台湾協会の報道官は、今回の訪問について、「全く無意味なものだ」と述べ、不満を表明した。国務省が今回の訪問を「南シナ海問題の平和的解決に寄与するものではない」とすることは間違っていないかもしれないが、オバマ政権は、台湾の状況にもっと配慮すべきであった。もちろん、馬総統は、ホワイトハウスが今回の太平島訪問を挑戦的なものとして受け止めるであろうことは承知していた。台北は訪問のほんの数日前にワシントンに連絡を入れ、そして対外的に公表したのは訪問のちょうど24時間前であった。これは、ワシントンが馬総統に対して圧力をかけるだけの時間的余裕がないことを見越しての行動であった。いずれにせよ、台湾に今回の行動を思い止まらせることは難しかったであろう。

(2) 南シナ海における台湾の主張に正当性があるかどうかは別にして、台湾の領有権主張国としての地位は、他の係争国のそれと変わりがない。しかし、他の東南アジアの係争国の方針に倣って、アメリカは、基本的に南シナ海における台湾の役割を無視してきた。馬総統が南シナ海の紛争海域に対する平和プランを打ち出した(実現は難しいかもしれないが)恐らく唯一の指導者であるにも関わらず、台湾は、係争国と同等というよりは厄介な存在として扱われてきた。馬総統が2015年5月に「南シナ海平和イニシアチブ(南海和平倡議)」を打ち出したが、実際には、アメリカは、南シナ海問題に関して台湾が積極的に行動することを本音では歓迎していないのであろう。ワシントンは、台北に対して、国連海洋法条約を遵守すること、そして大陸側の主張との違いを際立たせるような主張―それは両岸関係の緊張を高めるとともに、アメリカの「1つの中国」政策が実態とかけ離れたものであることを暴露しかねない―を自制することを望んでいる。これは、台湾にとって難しい綱渡りのようなものである。紛争が生じた際に、台湾は事実上、何の権利も主張できない。更に、最近の出来事は台湾の孤立感を強め、台湾は、自らの存在を排除され、そこにおける国益を護ることが困難な国際秩序に対する不信感を募らせている。特に、台湾は、フィリピンによる常設仲裁裁判所への提訴に対してアメリカが支持を言明したことに不満を持っている。

(3) 仲裁裁判所への提訴の一環として、フィリピンは、太平島を島ではなく岩であると主張している。フィリピンの主張は台湾を怒らせたことは確かだが、それだけではなく、仲裁裁判所が台湾提出の文書受理を拒否したり、仲裁手続きへのオブザーバー参加を認めなかったりしたことも、同じように台湾の怒りを買った。言い換えれば、台湾は、強風に向かって発言をしているような思いを、益々実感するようになってきているということである。中国が台湾の生存にこれまでにない脅威を及ぼしている現在、そしてアメリカが台北と距離を置き、台湾を除く全てのアジアのパートナー諸国との安全保障上の結び付きを強化しつつある現在、国際社会は黙して語らない。それ故に、台湾がある程度の不安感を抱いても無理はない。当然ながら、自国の主権と領土保全が脅かされて、座視している国などない。だからこそ、台湾は、主張が聞き入れないのであれば、行動で誇示する他にないと決断したのである。馬総統の太平島訪問に対して本当に「不満」だったのか、あるいは、それは「全く無意味なもの」だったのか。これらは過剰反応である。馬総統の訪問に対する様々な雑音は急速に沈静化し、他の係争国はほぼ確実に、再び台湾の存在を無視するようになるであろう。南シナ海で紛争が生起した場合、中国と特殊な関係を有する台湾の存在は事態を複雑化させることになろう。台湾の存在は檻の中の象のようなものであり、誰も触れたがらない。

(4) 今後、他の領有権主張国を巻き込む手段として、台湾がその主張をより挑発的な手段で訴える可能性はないのであろうか。もしワシントンが台北との安全保障関係を再確認するだけでなく、それを強化してくとすれば、恐らくこうした可能性は回避できるであろう。オバマ政権と次期政権は、台湾に対して、以下の政策をとらなければならない。即ち、台湾が防衛上最も必要としている武器を売却すること、台湾との合同訓練の拡大、多国間合同訓練への台湾の招請、台湾とアジア諸国、特に日本やフィリピンとの安全保障上の結び付きを強化すること、TPPへの台湾の参加を歓迎すること、国際機関への台湾の加盟促進を国務省の優先政策とすること、そして太平島が南シナ海紛争の解決に対して重要な役割を果たし得るとの考えを台湾に伝えることである。こうした政策は全て台湾の安全保障を一層強化することになり、台湾は、自らの安全保障が強化されればされる程、自らの国益を護るために挑発的な行動をとる必要性を感じなくなるであろう。ニクソンは大統領を目指していた1967年当時、アメリカは早晩、中国を「国際社会」に迎え入れることになろうと主張し、数年後に大統領になってから、それを実行した。アメリカは今こそ、台湾に対しても同じようにすべき秋ではないか。

記事参照:
To Fix the South China Sea, Look to Taiwan

1月30日「米海軍、南シナ海での2度目の『航行の自由』作戦実施」(USNI News, January 30, 2016)

アメリカ防省報道官が1月30日に明らかにしたところによれば、米海軍は1月30日、南シナ海の西沙諸島で「航行の自由 (FON)」作戦を実施した。中国が南沙諸島で人工島を造成して以来、南シナ海でのFON作戦は2015年10月27日に次いで2度目である。今回のFON作戦は、ミサイル駆逐艦、USS Curtis Wilbur (DDG-54) が西沙諸島のTriton Island(中建島)周辺12カイリ以内の海域を航行した。国防省報道官は、「今回のFON作戦は、中国、台湾及びベトナムの領有権主張国が、領有権を主張する当該海洋地勢の領海内通航に当たって事前許可あるいは通報を求める政策によって、航行の自由の権利を規制しようとする企図に対する挑戦である」と述べた。Triton Island(中建島)は、中国が1974年に2日間の海軍戦闘によって当時の南ベトナムから奪取して以来、その実効支配下にあるが、台湾とベトナムも領有権を主張している。

記事参照:
U.S. Destroyer Challenges More Chinese South China Sea Claims in New Freedom of Navigation Operation

【関連記事】「米イージス艦の西沙諸島進入、中国国防部談話発表」

中国国防部は1月30日、要旨以下の談話を発表した。

(1) 1月30日、米海軍の「カーティス・ウィルバー」イージス艦が中国の法律に違反し、中国の西沙領海に無断に進入した。中国の守島部隊と軍艦が即時に行動をとり、米軍艦に対し、識別を行い、離れるようと警告を発した。アメリカの行動は、厳重な違法行為であり、関係海域の平和、安全と良好な秩序を破壊した。地域の平和と安定に不利である。中国国防部はこの行為を断固反対する。

(2) 中国は1992年に「領海及び接続水域法」を公布した。外国の軍艦が我が国の領海に進入する場合、事前の許可を得なければならない。この規定は、国際法と国際的慣行と一致しており、世界の多くの国の法律とも同じである。1996年5月15日に、中国政府は「領海基線に関する声明」を発表した。中国大陸の領海の一部の基線と西沙諸島の領海基線を公表した。アメリカがこれらの事実を承知の上で、軍艦を中国の領海に勝手に進入させたのは、故意的な挑発行動である。アメリカの如何なる挑発行動に対し、中国軍はすべての必要な措置をとり、国家の主権と安全を断固維持する。

記事参照:
国防部新聞発言人楊宇軍就美国軍艦擅自進入我西沙領海発表談話

【補遺】旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書

1. PLA Expeditionary Capabilities and Implications for United States Asia Policy Before the U.S.-China Economic and Security Review Commission By Kristen Gunness
The RAND Corporation, January 21, 2016

2. Developments in China's Military Force Projection and Expeditionary Capabilities Before the U.S.-China Economic and Security Review Commission By Timothy R. Heath
The RAND Corporation, January 21, 2016

3. Good News, World! You Can Stop Worrying About the South China Sea!
China Matters, January 23, 2016

4. Coast Guard Cutter Procurement: Background and Issues for Congress
Congressional Research Service, January 27, 2016
Ronald O'Rourke, Specialist in Naval Affairs

5. Can China Copy the U.S. Marine Corps?
The National Interest, January 29, 2016
Grant Newsham and Koh Swee Lean Collin
Grant Newsham is senior research fellow at the Japan Forum for Strategic Studies, based in Tokyo, and a retired US Marine Colonel. Koh Swee Lean Collin is associate research fellow at the Institute of Defence and Strategic Studies, a constituent unit of the S. Rajaratnam School of International Studies, based in Nanyang Technological University, Singapore.


編集・抄訳:上野英詞
抄訳:秋元一峰・飯田俊明・倉持一・高翔・関根大助・山内敏秀・吉川祐子