海洋情報旬報 2015年12月11日~20日

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12月13日「空母対攻撃型原潜、中国人専門家の見方」(The National Interest, Blog, December 13, 2015)

米海軍大学准教授、Lyle J. Goldsteinは、米誌、The National Interestのブログに、12月13日付けで、"How to Sink a U.S. Navy Carrier: China Turns to France For Ideas"と題する論説を寄稿し、空母と攻撃型原潜の優劣に関する中国人専門家の見方について、要旨以下のように述べている。

(1) 2015年初めにフランス国防省によってネット上に投稿されたが、直ちに削除された、気がかりなレポートがあった。このレポートは、米海軍の、USS Theodore Roosevelt空母戦闘群に対抗する演習における、フランス海軍攻撃型原潜 (SSN)、Safirの成功した作戦に関係したものであった。このレポートには、Safirが演習の間、「空母戦闘群の半分」を撃沈することに成功したという衝撃的な内容が含まれており、このことがネット上から直ちに削除された理由かもしれない。米海軍の空母戦闘群がSSNに対して脆弱であったというという意外な事実は多くの防衛アナリストにもあまり注目されなかったが、中国の防衛メディアは、特に米海軍の空母戦闘群の能力に関しては油断がなかった。実際、『兵工科技』(2015年No. 8)の特別版ではこの「出来事」を取り上げ、巻頭記事として、中国海軍潜水艦学校の迟国仓教授とのインタビューが、「1隻の原子力潜水艦が空母戦闘群の半分を『撃沈した』」というタイトルで掲載された。

(2) 同教授は、「演習は、実戦と比較することは難しい」ことを指摘した上で、米空母に対する多層護衛網を構成する、米海軍の対潜水艦戦 (ASW) 能力は「非常に効率的で」かつ「調整された」システムであると評価している。それでも同教授は、フランスのレポートを「かなり信憑性が高い」とし、この観点から、現代の海軍戦闘におけるSSNの有用性についての見解を披瀝している。インタビューの初めで、同教授は、潜水艦は空母にとって「克星(歯が立たない強敵)」であるとし、第2次大戦中、少なくとも17隻の空母が潜水艦によって撃沈され、その内8隻は米海軍が撃沈したと説明している。しかし、同教授がインタビューで繰り返し取り上げた事例は、第2次大戦のものではなく、フォークランド紛争のものであった。1980年代初めの短いが高烈度であったこの紛争は、中国海軍の発展に多大の影響を及ぼした。その後、北京は、休みない努力を対艦巡航ミサイル (ASCM) 開発に注力してきた。同教授は、最新のSSNの能力を示す事例として、この紛争で、英海軍SSN、HMS Conquerorが、アルゼンチン海軍戦艦、General Belgranoに止めの一撃を加える前に、同艦を探知されることなく50時間も追尾できた事実を指摘している。

(3) 中国のインタビュアーは同教授に直截に尋ねている、即ち、レポートでは空母とその護衛艦群の一部も「撃沈した」とされているが、では、如何にしてフランス海軍は、空母、USS Theodore Rooseveltの周囲を護る米海軍の強力なASW網の中に進入することができたのかと。同教授は、この質問に対して多くの仮説を提示しているが、特にフランスのSSNの排水量が小さいことに注目している。同教授は、フランスのRubis級SSNは世界で最も排水量が小さい(潜水時で2,670トン)SSNで、従って探知が難しいと指摘している。同教授の分析によれば、特に双方の乗組員の技量が伯仲している状況では、空母を護衛する、ほぼ3倍の排水量を持つ、Los Angeles級SSNは不利になる。中国の潜水艦専門家がフランスの小排水量SSNを賞賛するのはこれが初めではなく、彼らは、西太平洋の浅海域に小排水量SSNが特に適していると考えているようである。更に、中国の分析では、フランスのSSNの比較的低い最大速度(25ノット)も大きな欠点ではないと見ているようである。同教授は、これに関連して、米海軍の対潜哨戒機はレーダによる海洋表面またはその近くでの潜水艦探知に大きく依存しており、従って、SSNを対潜哨戒機で捜索することは「広大な海洋から1本の針を発見するほど困難」と述べている。同教授のその他の観察点として、戦闘群が大きくなればなるほど遠距離からでも目標追尾が容易になる、武器使用が戦域の音響環境を複雑にする可能性があることから、ASW兵器の使用が攻撃後の敵潜水艦の脱出に役立ったリ、攻撃する敵潜水艦の捜索の障害になったりする、などの指摘があった。また、フランスのSSN、Safirの成功に対する可能な別の説明としては、自然に生じる複雑な水中音響環境をフランス指揮官が有効に活用したことである。また、同教授は、戦域の天候が海中での作戦に影響を与えないが、水上戦闘艦群や特に対潜哨戒機の活動をかなり制約するので、このこともSSNにとって重要な利点になるとしている。

記事参照:
How to Sink a U.S. Navy Carrier: China Turns to France For Ideas

12月16日「中国の世界観とアメリカとその同盟国の対応―豪専門家論評」(The Interpreter, December 16, 2015)


オーストラリアのシンクタンク、Lowy Instituteのアナリスト、Dr. Merriden Varrallは、同シンクタンクのWeb誌、The Interpreterに12月16日付で、"How China's world views are manifested in the South China Sea"と題する論説を寄稿し、アメリカやその同盟国は中国の世界観を理解し、ケース・バイ・ケースで中国の行動に対応していく必要があるとして、要旨以下のように述べている。

(1) 南シナ海での中国の活動を巡る現在の論議から、中国の世界観がその行動にどのように現れているかを検証することは時宜に適っている。特に、如何にそれが中国の外交活動を支え、また将来的にもそうなのか、そして、我々が中国の世界観を無視し続けた場合、我々自身の行動が最終的に如何なる逆効果を生むことになるのか、ということである。

(2) 中国の外交政策における鍵となる世界観は、①屈辱の世紀、②固有で不変の文化的特性という見方、③歴史を運命と見る考え方、そして④中国人が中国国内と中国の近隣諸国の両方に適用する孝行と家族の義務という徳目、である。全体的に、これら4つの世界観は、地域的、世界的問題に対して果たしていた、かつての中心的な役割を再び担いつつあると考える中国、そして外部世界はこのことを認識すべきであると考える中国ということに集約される。中国は、アメリカや一部のアメリカの同盟国によって、こうした中心的役割から引き離されてきた、そしてこれら諸国は彼らができる領域において中国の発展を引き続き制約するであろう、と思い込んでいる。

(3) 南シナ海における中国の最近の行動は、これらの世界観の幾つか、特に運命としての歴史という世界観を反映している。この世界観に従えば、中国の南シナ海における行動は、中国がこの地域での正当で尊敬される立場を漸進的に回復する行動ということになる。南シナ海における他の領有権主張国に対する中国の態度は、孝行と家族の義務という徳目を反映している。この世界観に従えば、中国の役割は、近隣諸国が強制されずに進んで敬意を払い称える、平和な地域における父親像であり、慈悲深い監督者である。逆に言えば、中国の近隣諸国が進んで敬意を払わず称えない場合には、この家族的序列が尊重されるようにするために、より強い手段を取ることが正当化されることになるということになる。また、屈辱の世紀と文化的特性の不変性という世界観は、アメリカが南シナ海で果たしている役割を中国がどのように見ているかを教えてくれる。中国は、最近の「航行の自由」作戦などのアメリカの行動を、国際的な海洋規範を維持するための限定された行動ではなく、その覇権を維持し、中国が世界における正当な立場を再び占めないようにする長期的な努力の一環である、と解釈している。

(4) 東シナ海における中国の最近の行動にも、前記4つの世界観が反映されている。日中間には、2012年に再び燃え上がった、尖閣諸島を巡る長期的な紛争がある。中国は2013年11月、尖閣諸島周辺に新たに防空識別圏 (ADIZ) を設定した。こうした状況では、文化的特性の不変性と屈辱の世紀という世界観が、特に共鳴する。ここから、日本の拡張主義的行動という、第2次大戦当時の歴史的記憶が引き出され、日本が根っからの帝国主義的、拡張主義的国家であり、信頼できない国として、印象づけられている。

(5) 4つの世界観は、安全保障問題に関する中国の行動に対する理解に関連しているだけではない。アジアインフラ投資銀行 (AIIB) と「一帯一路 (OBOR)」構想は、屈辱の世紀と運命としての歴史という世界観が反映されている。中国国内では、これら2つは、中国が弱体であった時期をついに克服しつつある証左として、喧伝されている。これらは、豊かで、強力でそして責任ある国として、中国が域内の経済的相互依存ネットワークの中心にける正当な位置を回復するための手段と見なされている。

(6) これらの世界観を理解しようとするのは、対中宥和のための議論ではない。幾つかのケースでは、政策立案者は、例えそれが長期のコストを要するものであっても、中国の行動に対して確固たる対応をとる必要がある。東シナ海において、中国のADIZに対するアメリカと一部同盟国の強い反応が、中国に屈辱の世界観を一層感じさせたかもしれない。しかしながら、中国の世界観を理解することは、政策決定者にとって、最終的に逆効果になりかねない、こうした世界観の負の側面を強調しないような対応を策定する上で役立ち得る。例えば、中国では、ワシントンのAIIBに対する厳しい対応と、OBOR構想に対する曖昧な態度は、アメリカが中国に対して責任ある利害関係国となることを要求しているにもかかわらず、アメリカは常に、国際システムにおけるより中心的な役割を果たす中国の登場を抑制しようとしている、という思いを強めることになったであろう。結局、アメリカとその同盟国が中国に対して如何に対応するかという選択肢は、ケース・バイ・ケースが基本になろう。

記事参照:
How China's world views are manifested in the South China Sea

12月18日「東アジアにおける米中相互の『サラミ・スライス戦術』―RSIS専門家論評」(RSIS Commentaries, December 18, 2015)


シンガポールのS.ラジャラトナム国際問題研究所 (RSIS) のHarry Sa調査アナリストとEvan N. Resnick准教授は、12月18日付のRSIS Commentariesに、"Reciprocal Salami-Slicing in East Asia"と題する論説を寄稿し、東アジアでは中国の狡猾な「サラミ・スライス戦術」が喧伝されるが、実はアメリカのオバマ政権も同じ戦術を巧妙に展開しており、地政学的に見れば、むしろアメリカの配当の方が多いとして、要旨以下のように述べている。

(1) 2015年の早い時期に、南沙諸島における中国の埋め立て活動が予想外のスピードで進んでいることが判明し、東アジア全域に深刻な懸念が広まった。中国の埋め立て活動は、東シナ海と南シナ海における係争領域に対する中国の漸進的侵出を指して近年使われてきた、「サラミ・スライス戦術」の最近の事象に過ぎない。人民解放軍のある将官が「キャベツ・スライス」と呼んだ、中国の「サラミ・スライス戦術」は、中国の活動全般に及んでいる。これらの活動には、フィリピンからScarborough Reef(黄岩島)をもぎ取った非軍事船舶の活用、尖閣/釣魚諸島を含む防空識別圏 (ADIZ) の宣言、ベトナムのEEZに含まれるトンキン湾南部海域への深海石油掘削装置の設置などが含まれる。これらの活動の目標とされた当該各国は、当初は抵抗したが、不承不承ながら現状の変更を受け入れてきた。一部の評論家は、中国の東アジアにおける漸進的修正主義によって、オバマ政権はしばしば不意打ちを食らった、と非難してきた。彼らは、ホワイトハウスが中国の行動に対抗する適切な戦略を持たず、傍観したために、アメリカが1945年以来西太平洋で確立してきた支配的な軍事的地位が侵食されることになろう、と主張している。

(2) これら政府批判者は、中国の「サラミ・スライス戦術」を賞賛さえするが、一方で、東アジアにおけるアメリカの地政学的立場を強化するために、ホワイトハウスが「再均衡化戦略」の名の下に同じような戦術を巧みに活用してきたことを見逃している。「再均衡化戦略」が2011年後半に公表されて以来、アメリカは、既に域内で支配的であったその軍事力を一層強化するために、一連の目立たない施策によって、増大する中国パワーに対抗しようとしてきた。重要なことは、これらの施策は、北京が侵略者として非難されることなしにはこれらの施策に報復することを極めて困難にするような、巧妙で目立たない方法で遂行されてきたことである。こうした施策はまた、中国の武力による威嚇に怯えながらも、中国とアメリカのいずれかに与するよう強要されたくない、域内の懐疑的な中小諸国に対して再保証するという、微妙な役割も果たしてきた。

(3) オバマ政権の「隠された」対中均衡施策は、幾つかの要素から成り立っていた。まず、政府高官は、「再均衡化戦略」が中国を封じ込めるものではないと、繰り返しそして明確に否定したことである。むしろ、彼らは、人道支援・災害救助 (HADR) 活動を強調することで、この施策の狙いが中国を含む域内全ての国による集団安全保障を強化することである、と主張した。この観点から、アメリカは2014年に、隔年毎に開催されるRIMPAC海軍演習に中国を初めて招請さえした。ごく最近では、国防省当局者は、12月初めからの1週間にわたるシンガポールへのP-8 Poseidon 哨戒機の展開について、中国に対する監視任務ではなく、合同のHADRと海上警備活動を行うためである、と公言した。加えて、オバマ政権は、漸進的かつ着実にこの地域に軍事力を追加配備してきた。しかし、太平洋と大西洋戦域の海軍の戦力比率を50/50の配分から60/40に再分配する計画は2020年までの実現を期待できないし、また海兵隊空地任務部隊2,500人をオーストラリアのダーウィンにローテーション展開させる計画も2017年~2018年までには完了しないであろう。

(4) アメリカが中国と直接対峙した事例は少ないが、そうした場合でも最小限の挑発に止められた。例えば、こうした最近の事例は、10月末に米海軍誘導ミサイル巡洋艦、USS Lassenが南シナ海で行った「航行の自由 (FON)」作戦で見られた。USS Lassenは、中国が造成した人工島の1つ、Subi Reef(渚碧礁)周辺の12カイリ海里以内の海域を通過することによって、人工島は主権を持つ領土を構成するという中国の主張を否定した。しかしながら、重要なことは、USS Lassenが最も穏健なFON作戦、即ち「無害通航」を行なったことである。更に、アメリカは、同盟国における恒久的な軍事基地の建設(あるいはは再建)を避けてきた。例えば、フィリピンとの間で締結した、防衛協力強化協定では、フィリピンの既存の軍事施設に米軍がローテーション配備できることになっている。この「基地ではなく、配備地 ("places, not bases")」というアプローチは、恒久的な米軍基地の受け入れを嫌う同盟国ではない国におけるアメリカの軍事プレゼンスの可能性を拓くものである。最後に、オバマ政権は、武器移転を通じて静かにその影響力を進化させており、例えば、武器移転を通じて米印間の戦略的協力関係は前例のないレベルに達している。

(5) 評論家の非難とは違って、東アジアにおける米中相互の「サラミ・スライス戦術」は、地政学的に見れば、北京よりワシントンに大きな配当をもたらした。この地域におけるアメリカの軍事的立場を強化するオバマ政権の巧妙な努力は、条約上の同盟国に加え、インド、シンガポール、マレーシアそしてベトナムなどの同盟国ではないが、重要な戦略的パートナーとの間で、安全保障協力を着実に強化してきた。中国の漸進的な拡張主義は東シナ海と南シナ海における係争海洋地勢に対するその支配を少しは強化することになったが、中国は、事実上全ての隣国を中国から遠ざけるという、途方もない代価を支払うことになった。

記事参照:
Reciprocal Salami-Slicing in East Asia

12月19日「中国原潜、初の核抑止哨戒任務に」(The Diplomat, December 19, 2015)


Web誌、The Diplomatの副編集長、Benjamin David Baker(ノルウェー軍予備役将校)は、12月19日付のThe Diplomatに、"China Deploys First Nuclear Deterrence Patrol"と題する論説を寄稿し、中国の原潜が初めて核抑止哨戒任務に就いたと報じられたことについて、その意味するところを、要旨以下のように述べている。

(1) 冷戦期、核兵器による抑止は、ワルシャワ条約機構とNATO間の緊張を戦争に至らしめない効果的な方法として受け止められていた。核兵器による相互確証破壊 (MAD) のレトリックはソ連とともに姿を消したにもかかわらず、核保有国は、他国からの攻撃を思い止まらせるために、依然相当規模の核兵器を保有している。信頼性のある核報復能力を保有する上での中心的課題は、いわゆる「核の3本柱」を開発することである。「核の3本柱」は、敵が最初に核を投射した場合、「第2撃力」を保持するために地上、空中及び海洋配備の核戦力から構成される。MIRV(複数個別再突入体)化した核弾頭を装着した弾道ミサイルを搭載した、潜水艦や地上移動式の小型発射装置は、探知し、目標とすることが困難で、従って第2撃能力として不可欠である。

(2) 中国は最近、潜水艦と地上移動式小型発射装置の分野で重要な一里塚に到達した。IHS Jane'sによれば、米軍当局は、人民解放軍がType-094「晋」級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦 (SSBN) を核抑止哨戒任務に就けたことを確認した。これが本当であれば、中国は初めてSSBNをこの種の任務に就けたことになる。全般的に中国の軍事については秘密の壁があるため、この潜水艦が実際に核弾頭装着の弾道ミサイルを搭載しているかどうかは確認できない。しかしながら、米戦略軍司令官、Cecil Haney海軍大将はそのように推測している。そうであるとすれば、これは、北京の核戦略における新たな展開といえよう。中国の核弾頭は通常、平時にはミサイル本体と分離して保管されているといわれるからである。その理由の1つは、中国が核兵器の「先行不使用 ("no first use")」政策、即ち、紛争において先に核兵器を使用せず、敵が核攻撃を行った場合にのみ報復として使用するということを誇示するためである。その他の理由としては、中国共産党が戦略的軍事能力に対する政治的統制を必要としているからである。核弾頭をミサイルから分離することで、弾頭数300発前後と推定される核戦力に対して、より中央集権的な統制が可能になる。中国指導部は、潜水艦艦長に核ミサイルの発射権限を与えることを危惧し、軍のタカ派の一部が核兵器に対する党の指揮系統を無視し、独自に核攻撃の命令を発出することを懸念している。核抑止哨戒任務中の潜水艦で核弾頭とミサイルを分離保管することは実際的ではないが、今回の展開が米戦略軍司令官の推測通りとすれば、海軍の指揮官に対する北京の信頼が新たな段階にあることを示しているといえる。

(3) 搭載弾道ミサイルは、恐らく東風-34 (CSS-9) の海洋発射型、巨浪-2 (CSS-NX-5) と見られる。巨浪-2 (JL-2) は、少なくとも1983年から開発中であり、その最大射程は8,000~9,000キロと言われている。更に、中国は最近、地上発射型ICBMの発射実験を行った。米紙、Washington Free Beaconによれば、第2砲兵は12月4日、長射程ICBM、東風-41の発射実験に成功した。この発射実験では、MIRV弾頭が使用された。この発射実験は、2015年における2度目の実験で、2012年以来通算5度目であった。米情報筋によれば、東風-41は3~10個のMIRV弾頭を装着できる。東風-41は1万2,000~1万5,000キロの射程を有し、米本土全域とロシアの大部分を射程内に収める。米議会米中経済安全保障諮問委員会の最近の報告書*では、東風-41は2015年現在既に配備されていると見られ、2018年から2020年の間、更に多くが配備されると見られる。

(4) 中国の核開発については、懸念すべき多くの理由がある。MIRV弾頭装着のICBM、東風-41はロシアを悩ませるかもしれないが、「晋」級SSBNの新しい核抑止哨戒任務は、当然ながら核保有の沿岸国(特にインドやアメリカ)を念頭に置いている。ロシアは、通常戦力の近代化に努めているが、NATOや中国が自国の国益を侵害することを抑止するために、依然として大量の核兵器に依存している。北京のMIRV弾頭装着の東風-41の開発と発射実験は、恐らくモスクワを警戒させるであろう。皮肉なことに、今日の状況は、中国がソ連とアメリカの軍事的冒険主義を思い止まらせるために必死に核を手に入れようとしていた、冷戦期に似ている。先人の言葉に従えば、「歴史はそのままでは決して繰り返すことはないが、しばしば同じようなことが現出する。」

記事参照:
China Deploys First Nuclear Deterrence Patrol
備考*:この報告書は以下のURLを参照
http://origin.www.uscc.gov/sites/default/files/Annual_Report/Chapters/Chapter%202%3B%20Section%202%20China%E2%80%99s%20Military%20Modernization.pdf

【補遺】旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書


1. Flying close to Beijing's new South China Sea islands
BBC News Magazine, December 14, 2015

2. China's Pivot to the Sea: The Modernizing PLA Navy
The Heritage Foundation, December 17, 2015
By Dean Cheng, Dean Cheng is a Senior Research Fellow for Chinese Political and Security Affairs in the Asian Studies Center, of the Kathryn and Shelby Cullom Davis Institute for National Security and Foreign Policy, at The Heritage Foundation.







編集責任者:秋元一峰
編集・抄訳:上野英詞
抄訳:飯田俊明・倉持一・関根大助・山内敏秀・吉川祐子