海洋情報旬報 2015年2月11日~20日

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2月11日「北極評議会議長国としてのアメリカの課題―カナダ北極専門家論評」(World Policy Blog, February 11, 2015)

カナダのThe University of Saskatchewanの研究員で、The Arctic Yearbook の編集主幹、Heather Exner-Pirotは、米シンクタンク、World Policy Instituteの2月11日付ブログに、“The Road to the U.S. Arctic Council Chairmanship”と題する論説を発表し、2015年4月から2年間北極評議会の議長国を努めるアメリカの課題について、要旨以下のように述べている。

(1) アメリカは2015年4月からの2年間、北極評議会の議長国を務める。オバマ政権は、これに備えて、北極圏に対する政策と目標を策定するために多くの努力をしてきた。北極評議会の議長を努めるアメリカの北極担当特別代表、パップ提督(元米沿岸警備隊司令官)は、次期議長として以下のアジェンダを提示している。① 北極海の安全性、セキュリティと管理、② 経済と居住環境の改善、③ 気候変動の影響への対応。これらのアジェンダは、最近カナダのイエローナイフで開催された北極評議会の高級北極実務者会議 (Arctic Council’s Senior Arctic Officials: SAO) で提示された。アメリカが北極圏政策に関心を高めていることは歓迎されているが、あからさまな疑惑ではないとしても、用心深い目で見られそうである。北極圏を巡る近代史は、時折、善意の南方人が自らの壮大なビジョンや価値観を、愚かな北方人に押し付ける事象として理解される。北方の利害関係者は、北極圏の大部分に対する自己決定権を取り戻すための40年余に及ぶ苦しい闘いを経て、もはや南方からの資本を直接呼び込む大構想を検討することに興味を示さないかもしれない。北極評議会は、常時参加者である先住民団体の影響で、このような状況に非常に敏感になっている。北極評議会における作業処理が遅くて漸進的であるとすれば、それはコンセンサスの上で進めているからである。北極評議会ではプロセスが重要であり、これが、アメリカの北極圏に対する新たな野心にとって最大の挑戦になると思われる現実である。

(2) アラスカは北極圏問題における重要な当局者であるが、アメリカは、北極圏においてリーダーシップを発揮することには積極的ではなかった。ソ連崩壊後間もない1990年代初め、北極圏における地域協力が始まった。環境保護や持続可能な開発など、北極評議会に与えられた議題は、北極海沿岸国間のコンセンサスと支持が取り付けられる問題であった。しかし、アメリカは北極評議会においてマイナーな役割に甘んじ、そのため例えば、軍事問題は議論から外されたし、財政面での貢献も明確ではなかった。気候変動が北極圏に目立った影響を及ぼし始めた2000年代半ばから、北極圏が大きな地政学的な重要性を持つようになるまで、アメリカが北極圏に大きな関心を払うようなことはなかった。アメリカは、北極圏にとって重要な時期、即ち北極評議会が高度の科学レポートの主要な成果を提示する役割から、北極圏の環境保護や国家的なレベルにおける規制の実施にまで影響を及ぼす、政策形成機構に進化しつつある時期に、議長国を努めることになる。しかも、中国からEUまで、非北極圏国家の関心が高まるつれ、北極評議会の任務に新たな要素が加わった。

(3) パップ提督は、北極担当「特別代表」(“Special Representative” to the Arctic) という珍しい肩書きを付与されている。パップ提督はまた、米北極評議会議長職「コーディネーター」(“Coordinator” of the U.S. Arctic Council Chairmanship) という、北極評議会にはなかった特殊な肩書きも持っている。伝統的に、当該加盟国の外相や国務長官が公式的に北極評議会の議長を務め、外交官が評議会の通常の任務を担当する上級職員として任命されてきた。明らかにパップ提督の肩書きはいずれでもない。しかしながら、パップ提督の役割をめぐる混乱は、少なくとも現時点ではアメリカの問題である。ワシントンとアラスカの利害関係者との認識のギャップは依然あり、気候変動に優先順位を置く国務省に対して、多くアラスカ人は異議を提起している。アラスカ州選出議員らは、雇用や経済的機会、そして自殺予防と衛生施設などの実際的な問題を重視している。オバマ大統領の一方的なANWR (Alaska’s Arctic National Wildlife Refuge) 提案はこのようなギャップを一層拡大し、アメリカの議題に対するコンセンサスを形成しようとするパップ提督の立場を困難にしている。議長国として、そして北極圏政策全般を成功させるために、国務省は、アラスカとの共通点を見つけるために外交手腕を発揮しなければならない。そして、議長国が特別に強力な役割を担うことではないことにも留意すべきである。何故なら、第1に、北極評議会はコンセンサスに基づいて運営されるものであり、そして第2に、北極評議会は特別に強力な組織ではないからである。

(4) 間違いなく、北極評議会の最大の成果は、先住民とその他の北方の利害関係者が北極圏政策の決定に意見を述べる場を提供したことであり、同時に北極評議会とその作業部会に地域の意向を反映することの重要性を認識させたことであった。南方の大都市に住んでいる人々にとって、北極圏を、海氷の状況と気候変動の脅威に晒されているホッキョクグマの問題として、そして北極評議会をそれらの問題に専念する組織と見なすこと以上に、北極圏を理解することは困難である。この故に、多くの人々は、カナダが持続可能な経済発展を重視する中で、オバマ政権が気候変動に焦点を当てたことを歓迎したのである。しかし、北極圏に住んでいる人は、非常に現実的な意味で気候変動の影響を日々経験している。彼らにとって、北極圏は、単に保護されるべき自然ではない。北極圏は、良い雇用機会と生活条件の改善が求められる人々の家庭であり、生活の場なのである。北極評議会は環境と社会問題をともに扱うフォーラムであり、従って、議長国としてのアメリカは、両者のバランスを図る方法を見出さなければならない。

(5) パップ提督は、アメリカが北極圏国家であることをアメリカ国民に理解させることに努めると述べた。北極評議会議長に認められる場を活用して、北極圏がメディアで扱われる海氷状況、北極海航路そしてホッキョクグマだけの問題ではないことをアメリカ国民に教育することができれば、彼の努力は成功するであろう。北極圏は、革新的なガバナンス、強力な文化、膨大な天然資源そして大きな政治的課題が存在する、ダイナミックな国際領域である。北極評議会は、地元の意向とキャパシティ・ビルディングを重視しながら、北極圏全体の課題の多くに対処するために、正しい軌道に歩んできた。アメリカは、リーダーではなくパートナーとして、北極評議会の共通の目標を達成するために努力することになろう。

記事参照:
The Road to the U.S. Arctic Council Chairmanship

2月13 日「タイ船籍タンカー、積荷抜き取り事案」(ReCAAP ISC Incident Report, February 15, 2015)

ReCAAP ISC Incident Reportによれば、タイ船籍精製品タンカー、MT Lapin (1,848GRT)は2月12日、15人の乗組員と積荷の2,000トンの燃料油とともに、タイのクラビー(アンダマン海側)からシンガポールに向け出港した。13日1955頃、マレーシアのポートクラン西南沖約39.73カイリの海域でピストルとナイフで武装した6~8人の強盗が小型ボートから該船に乗り込み、乗組員を集め、該船を制圧下に置いた。その後、別の船が該船に横付けされ、5トンのディーゼル油と2,000トンの燃料油が抜き取られた (siphoned)。14日0400頃、強盗は該船を停船させ、ポートクラン南西約62.7カイリの海域で錨泊させた。強盗は、積荷油を抜き取った後、該船の通信機器を破壊し、船舶備品と乗組員の持ち物を盗んだ。強盗はまた、乗組員を縛り、爆発物を仕掛けたとし、動かないよう脅した後、逃亡した。14日0700頃、乗組員は自力で自由を回復し、15日に該船をタルタオ島まで航行させ、錨泊し、船舶安全警報システム (The Ship Security Alarm System: SSAS) を作動させ、その後、船長は運航船社とコンタクトを取った。爆発物はタイの爆発物処理チームが調査したが、電気回路のみで爆薬はなかった。

ReCAAP ISCによれば、この事案は、2015年になって初めての抜き取り既遂事案である。マラッカ海峡での事案発生は、2014年4月以来であった。2014年の抜き取り事案のほとんどは、南シナ海での事案であった。

記事参照:
Siphoning of Fuel/Oil from Product Tanker, Lapin
Photo: MT Lapin, Chronology of Events involving Lapin, and Cabins ransacked by pertetrators

【関連記事】「2月2度目の抜き取り事案、タイ籍船タンカー」(ReCAAP ISC, Report for February 2015)

ReCAAP ISC, Report for February 2015によれば、2月20日、タイ籍船の精製品タンカー、MT Phubai Pattra 1 (5,681GRT) は、南シナ海をタイのシラチャに向け航行中、長刀とピストルで武装し、小型ボートに乗った6人の強盗に乗り込まれた。強盗は、該船の航法、通信システムを破壊した。強盗の1人は船の設備に精通しているようで、携帯用GPSと双眼鏡を持っていた。強盗は該船を制圧下においた後、アウル島南東15カイリの海域に錨泊させた。船長を除く他の全ての乗組員は食堂に拘束された。全長約70メートルの別の船が該船の右舷に横付けし、積荷のガソリン、980mtを抜き取った。強盗は逃亡する前に、該船のケーブルTVを破壊し、乗組員の現金と持ち物を盗んだ。乗組員に負傷者はなく、該船はシラチャに向け航行を再開した。

記事参照:
ReCAAP ISC, Report for February 2015
Photo: MT Phubai Pattra 1
Location of boarding of MT Phubai Pattra 1

2月15日「中国の新シルクロード構想の戦略的含意―米専門家論評」(The National Bureau of Asian Research, February 15, 2015)

米シンクタンク、The National Bureau of Asian Research (NBR) のシニア・プロジェクト・ディレクター、Nadège Rolland は、2月15日付の同シンクタンクのWeb上に、“China’s New Silk Road”と題する長文の論説を発表し、習近平国家主席が提唱する新シルクロード構想について、もし大陸を横断する経済回廊の構築に成功すれば、世界的な戦略環境を変化させる可能性があるとして、要旨以下のように述べている。

(1) 習近平国家主席が唱える「中華民族の偉大なる復興」という「中国の夢」は、「豊かで、力強く、文化的に進んだ、調和のとれた社会」を目指すために、中国が19世紀以前に持っていた偉大さや影響力を回復することである。2000年前に東洋文化と西洋文化を結びつけた、ユーラシア大陸を横断する偉大なる貿易ルートの復興という考えは、その目的を実現するのに役立つかもしれない。習近平主席が2013年10月の中央アジア諸国歴訪中に打ち出した、新しい「シルクロード経済ベルト (“Silk Road economic belt”)」という構想は主として、中央アジア、トルコ、バルカン半島そしてコーカサス地方を経由してヨーロッパと中国西部の幾つかの都市を結ぶ、1万1,000キロに及ぶユーラシア大陸横断鉄道網に沿って構築されることになろう。中国当局は、この交通インフラ網を、内陸部の中央アジア諸国の経済開発によって、将来的にヨーロッパ市場とアジア市場を結び付ける、ユーラシア大陸「経済回廊」の建設に向けた第1歩と見なしている。そして中国当局は、鉄道網で連結された各国経済間の貿易の自由化と金融協力の強化によって、究極的には新たな地域経済共同体を実現し、そして習近平主席の言う、近隣諸国間の「運命共同体意識 (“a sense of common destiny”)」を高めることを期待している。また、新たなシルクロード構想は、東南アジア諸国を経由し、インド洋と超えてペルシャ湾や地中海に広がる海洋部分を含む。

(2) 要するに、中国のシルクロード経済ベルト構想(中国語では「一帯一路」と称される)は、44億人の人口を網羅し、合計すれば世界の富の3分の1に当たる21兆米ドルのGDPとなり、そして、今後、力強く成長する可能性のある新興市場を結び付けるものである。中国は既に、貿易や経済協力関係などを通じて、同構想の沿線諸国と密接な関係を有しているが、更に物流インフラを強化するとともに、新たな地域的ハブと各所に新たな工業団地を創設することを考えている。中国が想定している物流インフラ網は、海運ルートとともに、鉄道、パイプラインそして道路網によって陸上貿易の活性化を図るもので、実現すれば、最終的には、文字通り全ての道は北京に繋がることになることになろう。21世紀の地球市民にとっては、大陸横断鉄道の建設は時代遅れに思えるかもしれないが、鉄道網の急速な拡充は依然、変革への重要な推進力である。19世紀の大陸横断鉄道は、農業国だったアメリカを強力な工業国に変質させ、列車と鉄道はパッチワーク状態だった国家を1つに纏め上げた。輸送コストの低下によって、新たな製品が遠隔地にももたらされ、新たな産業が誕生し、天然資源の採掘チャンスが訪れ、数々の技術革新が生まれ、そして現代的な生産管理手法が生み出されたのである。中国の新たなシルクロード経済ベルト構想が完成すれば、これと同様のことが中国の裏庭で実現し、その戦略的景観が一変するかもしれない。中国にとって、新たなシルクロード構想は、輸出を拡大し、天然資源へのアクセスを強化し、そして国内の重要産業に対する梃子入れを図ることによって、国家の経済成長を促進するツールでもある。

(3) 国内の安全保障に対する配慮もまた、地域的な物流インフラ整備を動機付けている。2000年に当時の胡錦濤国家主席が、急進的な過激派による民族主義的テロ事件が頻発していた新疆ウイグル自治区について、一層の同化政策を促進することを決定した。この決定によって、経済的に進んだ東部地域と西部の貧困地域を結ぶ、鉄道や道路といった交通インフラの整備を促進する大規模なプロジェクトが動き出した。北京は、経済を発展させることで、新疆ウイグル自治区における政治的、民族的緊張を緩和できると確信しており、この信念に基づいてこの地域の経済やインフラに多大の投資を行ってきた。15年後、この信念が今や中国の「近隣外国」にも適用されている。中国は、インフラ網の整備による経済発展がこの地域の政治的安定を強化するとの期待を込めて、鉄道建設によって、新疆地域をカザフスタンやキルギスなどの近隣諸国と連結し、引いては更に西方の中東地域やヨーロッパと連結させようと意図している。更に、中国のこうした「インフラ外交」は、領有権紛争によって海洋に沿った隣国との関係が緊張している時期に、大陸周辺諸国との関係強化を図るという不可避的な外交事情を反映している。習近平主席が2013年10月に近隣諸国との友好関係の構築を優先する方針を示したことから、それが中国外交の中心的課題となった。東側海域での外交関係の悪化という現状から、中国は今や、自国領土の西側に接する諸国との関係の安定化を図りたいと考えている。北京は、できる限り自国の裏庭の安定を維持したいと望んでいる。明らかに中央アジアを重視することで、中国は、そこにおけるロシアのプレゼンスや影響力と競合することになる。しかし、新シルクロード構想は、ロシアとヨーロッパ諸国との関係が緊張している状況下で、北京とモスクワとの一層の協力関係を創出することを意図している。

(4) 北京が進めるインフラ外交は、重要な戦略的意図を持っている。この10年以上に亘って、中国当局は、現在、中東や西アフリカから輸送される中国のエネルギー供給の80%が通過する東南アジアの海峡への依存を軽減することで、いわゆる「マラッカ・ジレンマ」を回避することを模索してきた。鉄道、パイプラインそして道路建設を含む、インフラ整備計画は、中央アジアや中東の供給国からのエネルギー輸送能力の強化に繋がる。東アジアで紛争が生起した場合、アメリカが実施する海上封鎖に対する恐怖心から、中国の戦略家は、米海軍の優勢下にあるシーレーンを如何に回避するかの方策を検討してきた。この意味で、新シルクロード構想は、歴史的に海洋進出を犠牲にして陸地を重視してきた中国にとって、一種の先祖返りとも言えるであろう。新シルクロード構想は、単なるユーラシア大陸における鉄道網の拡大以上のもので、新たな戦略的・経済的な可能性を切り拓くものである。中国当局は最終的には、中国の鉄道網の拡充によって経済的に統合されることでヨーロッパがアジア大陸西端の単なる半島になり、一方でアメリカが遠隔の島国の位置に追いやられるような、そういった状況になることを期待している。大陸を横断する経済回廊の誕生は、中国当局が想定しているように、戦略と商業の重点を、中国を取り巻く海洋からユーラシア大陸に移行させ、それによって海洋における米海軍の優位がもたらす戦略的意味を軽減させることになり、世界的な戦略環境を変化させる可能性がある。更に、この回廊は、アジア政策に関するヨーロッパ諸国間の相違を際立たせ、アメリカとヨーロッパの同盟国間との溝を深め、そして商業的な競合を激化させる可能性がある。もしヨーロッパが大西洋の向こう側よりもアジアに視線を向けるようになれば、そしてもし中国がロシア、中央アジア、東欧そして中東との密接なリンクを築き上げることに成功すれば、アメリカの政策立案者は、これらの地域に対する、引いては全世界に対する伝統的なアプローチの劇的な変更を迫られるかもしれない。

記事参照:
China’s New Silk Road

2月16日「ナトゥナ諸島、南シナ海の次の発火点になるか―インドネシア人研究者の視点」(RSIS Commentaries, February 16, 2015)

シンガポールのS.ラジャラトナム国際関係学院 (RSIS) のRistian Atriandi Supriyanto研究助手は、2月16日付の RSIS Commentariesに、“Indonesia’s Natuna Islands: Next Flashpoint in the South China Sea?”と題する論説を寄稿し、インドネシア領ナトゥナ諸島が南シナ海の係争海域に隣接していることから次の発火点になる可能性があるとして、インドネシア人研究者の視点から要旨以下のように論じている。

(1) インドネシア領ナトゥナ諸島は154の島嶼からなり、その内、人が居住している島嶼は27に過ぎず、南シナ海にあるインドネシアの最北端領土として、潜在的に最も脆弱である。南シナ海の係争海域に隣接しているため、次の発火点になる可能性がある。しかしながら、ナトゥナ諸島における如何なる効果的な安全保障も、そして軍事プレゼンスも、現地における経済とインフラの開発ができるかどうかにかかっている。インドネシアはウィドド大統領の下で、南シナ海の広大な海域に対する自らの領有権主張を高圧的に押しつけてくる中国に対抗して、この潜在的な発火点を如何に管理しようとしているのか。

(2) ナトゥナ諸島はジャカルタから1,000キロ以上離れており、東西マレーシアのほぼ中間に位置し、26万2,000平方キロの海域に島々が点在している。この地理的位置が重大な挑戦となっており、しかも各島嶼間にも距離的な海洋の壁がある。また、ナトゥナ諸島は、リアウ諸島州に属しているが、インドネシアの他の島々との間も遠く離れている。この距離の壁は結果的に、北方の国境を監視し、管理する上で同国の弱点となっている。大ナトゥナ島最大の都市、ラナイとジャカルタの間には民間機の直行便がなく、日用品は西カリマンタ州ポンティアから、あるいはシンガポールに近いバタム島やビンタン島から長距離を海上輸送しなければならない。しかもラナイには深水港がないため大型船が入港できず、また小型船舶は、モンスーン・シーズンには荒海を航行する危険を冒すことができない。ナトゥナ諸島の約7万6,000人の住民は、ジャワ人に対してよりも、マレーシアのマレー人同胞とのより近い歴史的、文化的類似性があると主張している。

(3) ジャカルタからの効果的な管理が行き届いていないため、ナトゥナ諸島は、多くの安全保障上の問題に悩まされている。周辺海域では不法操業が蔓延しており、インドネシアは、違法操業によって年間約25億ドルの損失を被っていると主張している。この数字はインフレ気味で、実際の損失はその1割程度と見られるが、それでも人口2億4,000万の11%が1日2ドル以下の生活をしている国にとっては大きな損失である。不法操業問題は、ナトゥナ諸島が南シナ海の係争海域に隣接しているため、一層複雑になっている。インドネシアは南シナ海における紛争当事国ではないと公式に主張しているわけではないが、ナトゥナ諸島の北東海域はインドネシアの200カイリEEZと中国の「9段線」主張が重複している。ジャカルタは、表だって北京を敵に回すことを望んでいないが、中国の主張に対し何らかの手段を講じなければならないと感じている。

(4) インドネシアの軍事力増強報道とは裏腹に、ナトゥナ諸島の軍事力は低レベルのままである。海軍力は小型艦艇だけで、インドネシアのEEZ内の荒海を安全に航行できない。更に、ラナイ空港には作戦機が常時駐留していない。ナトゥナ諸島における軍事演習は1996年以降、実施されているが、ナトゥナ諸島における実質的な軍事力増強そのものは、限られて軍用施設に加えて、維持補修に必要な燃料や予備部品といった運用上必要な資材の入手が困難なため、難しいように思われる。 ナトゥナ諸島に外国の投資、特に中国からの投資を呼び込むことは、そこにおける軍事力の不足を補いながら、インドネシアの領土主権に対する認識と尊敬を獲得する、インドネシアのより包括的な戦略に役立てることができる。ナトゥナ諸島にはインフラが不足しているにもかかわらず、中国の3つの会社が現地での水産加工業に興味を示していると報じられている。

(5) しかし、中国の投資を呼び込むことは、北京に誤ったシグナルを送ることになるかもしれない。インドネシアは、南シナ海における中国の野心に対して何も心配していないとの印象を与えることになるかもしれない。中国が占拠する近くの島礁で進められている埋め立て工事によって、ナトゥナ諸島は、北京の海空軍のレーダー覆域に容易に入ることになろう。ファイアリー・クロス礁(中国名:永暑礁)やジョンソン・サウス礁(中国名:赤爪礁)の滑走路に中国の前線戦闘攻撃機が配備されれば、インドネシア領が一層近くなる。また、中国の防空識別圏 (ADIZ) が設定されれば、ナトゥナ諸島の一部が含まれる可能性がある。埋め立てられた島嶼はまた、インドネシアのEEZ内で操業する中国の遠洋漁船とその武装護衛船の補給基地となるかもしれない。そうなれば、インドネシアの漁船と哨戒艦船と遭遇する可能性が一層高くなろう。インドネシアは、こうした可能性を念頭に、ナトゥナ諸島開発を早急に実施に移さなければならない。

記事参照:
Indonesia’s Natuna Islands: Next Flashpoint in the South China Sea?

2月17日「中国の海洋シルクロード構想に対するインドの対応の在り方―インド専門家論評」(National Maritime Foundation, February 17, 2015)

インドのシンクタンク、The National Maritime Foundationの会長で、インド海軍退役大佐のGurpreet S Khuranaは、2月17日付の同シンクタンクのWeb上に、“India’s Approach to China’s Maritime Silk Road: An Alternative View”と題する論説を発表し、中国が提唱する海洋シルクロード戦略を拒否するという現在のインドの政策は経済面でも安全保障面でも得策ではないとして、要旨以下のように述べている。

(1) スリランカのシリセーナ大統領は、2014年12月に発表した選挙前のマニフェストで、コロンボ港の開発のために中国が拠出した14億ドル規模のプロジェクト基金について再考することを表明した。しかしながら、2015年2月初旬の中国特使、劉建超・中国外交部部長助理の同国訪問によって、この問題は「慎重に評価」されることになり、この訪問後、スリランカ政府は同プロジェクトを進める可能性を示唆した。コロンボ港開発プロジェクトは、中国の習近平国家主席の提唱する「海洋シルクロード戦略 (MSR)」にとって必要不可欠である。バングラデシュ、インドネシア、ケニア、モルディブ、パキスタン及びタイなどの、インドの海洋隣国の多くは、MSR「バンドワゴン」に乗る気である。

(2) アジアの海上貿易と文化交流に対する古の中国の貢献を思い起こさせるMSR構想だが、この構想は本質的に、経済的結び付きを強化するために港湾インフラを開発するとともに、内陸部に経済的インセンティブを伴った工業、貿易自由特区を設置するために、中国がパートナー諸国を支援しようとするものである。従って、MSRは、経済的構想として提案されている。しかしながら、その詳細は未だ明らかになっていないが、その多様な戦略的意図と幅広い波及効果を無視することはできない。MSRに対するインドの対応は慎重であるが、こうした対応は、中国との潜在的に敵対的な関係を考えれば理解できる。インドは中国のMSRの提案を拒否しているわけではないが、ニューデリーは、より客観的にMSRを検討する必要があるかもしれない。そのためには、経済と安全保障という2つの要素を検討することが必要である。

(3) 経済的要素:世界最大の製造業を持つ中国経済の過去数十年の急速な成長は、収入の向上とより良い生活スタイルをもたらしたが、その一方で、製造コストの上昇による輸出の減少も招いた。中国は、MSRのパートナー諸国に製造業をアウトソーシングすることで、この難局を乗り切ろうとしている。インドにとって、人件費や原材料などが比較的低コストであるという利点を考えれば、これは、製造業の基盤を強化し、「インド製」を宣伝し、そして雇用機会を生み出すチャンスとなる。中国の産業力がインドより少なくとも20年は先に進んでいることを考えれば、インドの産業界は、日本の多国籍企業によるアウトソーシングを背景として成長した1980年代の東南アジア諸国の経済と同じように、急成長できるかもしれない。このようなアウトソーシングによる経済成長論は、「雁行型経済発展 (Flying Geese Paradigm)」として知られる。その一方で、もしニューデリーがMSRに参加しない方針を決定した場合、インドの産業界は、その多くが中国のMSRの公然のパートナーとなるアジアの隣国に遅れを取るであろう。また、インドは、自国経済に大きな割合を占める海外貿易の発展性を確保するために、インフラ施設を改善する必要がある。MSRは、ニューデリーが現在積極的に検討している、陸上のThe Bangladesh-China-India-Myanmar Economic Corridor (BCIM-EC) 回廊構想に対して、海洋における効果的な補完ルートになり得る。MSRはまた、インドの‘Sagarmala’プロジェクト(国内水路ネットワーク)と結び付けることで海上貿易との連結を強化し、内陸部における「港湾主導による経済発展 (‘port-led development)」に繋げることができよう。更に、MSRは、海洋産業や造船産業の能力強化を通じて、インドの「青い経済 (‘blue economy’)」の発展にも役立つかもしれない。

(4) 安全保障要素:MSRの背後にある中国の軍事的、戦略的意図を無視することはできない。2014年9月の中国海軍潜水艦のコロンボ港への前例のない寄港は、将来的なインド洋への進出に先鞭をつけた。中国は今後、インドにおける戦略的プレゼンスを高めるため、その拠点となる海洋インフラに対して、海軍のアクセスを求めていく可能性がある。中国海軍は、チッタゴン、コロンボ、グワダル及びハンバントータといった港湾に、補給施設を求めてくるかもしれない。問題は、これを阻止するために、インドは何ができるかということである。インドは恐らく、インド洋沿岸 (IOR) 諸国に対する影響力を利用しようとするかもしれないが、中国のMSRに対抗出来るだけの経済的な魅力を提示できないであろう。注目すべきは、既にバングラデシュやモルディブさえもMSRを支持することを決めており、パキスタンに対してもそうだが、インドはこれら諸国に何の影響力も持っていない。従って、現在の趨勢が進展することは避けられず、ニューデリーはこれに対してほとんど影響力を持っていない。その一方で、インド国内の適切な場所に中国企業が港湾と内陸部を結びつける経済特区を開発することを認めれば、財政面、技術面そして恐らく熟練した人材面において、中国からの大きな投資を呼びこむことができよう。インドがこれまで、港湾とそれに繋がる地域を含む死活的な兵站補給インフラを「戦略部門」と読んで、用心深い態度をとってきたことは、理解できる。しかしながら、こういった施設の戦略的価値は、周辺環境の如何による。港湾を「戦略的」施設として「包括的」に指定することは、適切でないかもしれない。従って、港湾建設用地として中国企業に割り当てた沿岸地区を、戦略的地区として指定する必要はない。むしろ、ニューデリーにとって、インドの北東部諸州の「(もう1つの)戦略的」施設である道路インフラを、BCIM-EC 回廊構想と連結させることを積極的に検討することが重要である。

(5) MSRは北京のイニシアチブであるが、その歴史的ルーツは中国だけのものではない。MSRは、アジア内部における古の海洋の結び付きを象徴するものであって、定期的に風向きを変えるモンスーンと密接に関連した、海洋を媒介とするアジア全域における通商や文化交流を可能にした。従って、インドがMSR構想を支援することは、アジアの「台頭」を喧伝し、アジアを経済的に統合することに役立つであろう。そのプロセスにおいて、相互の信頼関係が生まれ、そしてそれは地域の安定と繁栄に貢献することになろう。反対に、地域各国が経済的統合を促進する基盤としてMSRを支援している中にあって、インドが排他的アプローチを続ければ、それは限界を迎えることになるであろうし、いずれ自らの裏庭におけるインドの影響力は中国に「取って代わられる」ことになろう。

記事参照:
India’s Approach to China’s Maritime Silk Road: An Alternative View

2月17日「米海軍、2017年から4隻のLCSをシンガポールにローテーション配備へ」(Yahoo.com, AFP, February 17, 2015)

米海軍第7艦隊Task Force 73のウィリアムズ司令官(海軍少将)が2月17日に明らかにしたところによれば、現在16カ月の期間でシンガポールにローテーション配備中の沿岸戦闘艦 (LCS) 、USS Fort Worth の後に、4隻のLCS が2017年5月から2018年のある時期まで、シンガポールにローテーション配備される。ウィリアムズ司令官は、USS Fort Worthの艦上での会見で、「東南アジアと北東アジアにおける米海軍の役割はプレゼンスである。何処に、何時存在しているかが重要である」と語った。USS Fort Worthは、2月24日~3月6日まで、韓国でのFoal Eagle演習に参加し、その後、東南アジア諸国とのCARAT (Cooperation Afloat Readiness and Training ) 年次演習に参加する。

記事参照:
Four US littoral combat ships to operate out of Singapore by 2018

2月20日「海洋での勝利、日本の最良の対中戦略―米専門家論評」(The Diploat, February 20, 2015)

Web誌、The Diplomatの共同編集者でThe EastWest Instituteの上席研究員、Franz-Stefan Gadyは、2月20日付のThe Diplomatに、“This is Japan’s Best Strategy to Defeat China at Sea”と題する論説を発表し、日本が中国に勝利する最良の戦略は海洋で勝つことであるとして、要旨以下のように述べている。

(1) 日本の海上自衛隊は非常に能力が高いが、規模は小さい。海自は、主たる競争相手である中国海軍より、技術的に進歩し、多くの経験を持ちそして良く訓練されている。しかし、長期的に見れば、海洋治安を担当する海自と海上保安庁は、この地域の海洋バランスを有利に変えつつある中国海軍に比して、相対的に不利な立場にある。米海軍大学教授のトシ・ヨシハラは米シンクタンク、CNASの2014年のレポート*で、「軍事的な視点からすれば、東京は、日中抗争において弱者になりつつある」と見ている。そしてヨシハラは、「日本は、平時における尖閣/釣魚諸島紛争に対する中国の強硬姿勢の後ろ盾となっている中国の潜在的な軍事力と、有事におけるグローバルコモンズに対するアクセスを妨害する中国の能力との間で、対応に苦慮している」と指摘している。

(2) 日本の軍事力の相対的な劣勢が明らかであるとすれば、近い将来における中国との対峙において海自にとって最良の戦略とは何か。ヨシハラによれば、それは日本の特性を生かした固有のアクセス阻止作戦構想である。要するに、日本は、中国と同じ手口、つまり中国海軍のアクセス阻止/領域拒否 (A2/AD) 戦略に匹敵する作戦で反撃すべきである。日本固有のA2/AD作戦構想は、太平洋の公海への出入り口における門番として日本の役割を考慮し、琉球列島に沿って海自戦力を巧みに配備することによって米海軍と他の連合国海軍が全面的に展開できるまで中国海軍を東シナ海に封じ込めるため、中国に対する日本の海洋地政学的優位を活用することが中核となるであろう。この作戦の短期的な目標は、優勢な同盟国軍が戦力を発揮できるまで、軍事的な手詰まり状態を作為することである。ヨシハラは、「琉球列島は中国軍の接近阻止海域の内側に入っているが、琉球列島の戦略的位置は、日本にとって、中国に対して形勢を逆転するチャンスとなる。琉球列島沿いにA2/AD部隊を配備することによって、防衛する側の日本は、中国の水上戦闘艦艇、潜水艦そして空軍部隊が太平洋の公海に進出するための重要な出口を締め切ることができる」と指摘している。米海大教授のBernard D. Coleは、自書、 Asian Maritime Strategies – Navigating Troubled Watersで、「正式に公表されているわけではないが」、日本は「現在、海自により広範な任務を付与していることから見れば、既に未だ包括的なものではないが実質的なA2/AD戦略を進めている」と見ている。

(3) 日本のA2/AD戦略の要は水中戦闘能力で、最近のRANDのレポート**でも指摘されているように、中国海軍の貧弱な対潜水艦戦能力は中国軍の弱点であり、従って水中戦闘能力は日本にとって効果的なA2/ADツールとなっている。潜水艦は、海自の主力戦闘艦である。海自は2010年に、潜水艦戦力を16隻から22隻に増強すると発表した。中核となるのは既に5隻が就役している「そうりゅう」級で、2019年までに全10隻が就役する。「そうりゅう」級は、世界で最も大きく、最も技術的に進んだディーゼル潜水艦である。これに加えて、海自は11隻の「おやしお」級のディーゼル潜水艦も引き続き運用する。日本国際問題研究所主任研究員の小谷哲男は、米シンクタンク、CSISのレポート***で、「日本の南西部に沿った海域を哨戒するためには、少なくとも8隻の潜水艦が必要であると見られる(沖縄列島線に6隻とバシー海峡に2隻)。一般的に、潜水艦は訓練と整備のために2隻のバックアップを必要とし、従って24隻の潜水艦戦力が理想的であるが、22隻の潜水艦戦力は現在の16隻態勢より運用上の柔軟性を提供する」と指摘している。小谷も、日本独自のA2/AD戦略を支持し、「中国の侵略を抑止するために、日本とアメリカは、第1列島線の内側に海洋拒否能力を維持するとともに、第1列島線の外側に制海能力を維持すべきである」と述べている。

(4) 他にも、日本がA2/AD戦略を暗黙裡に進めているという徴候がある。満載排水量2万トンの2隻の新しい「いずも」級ヘリ搭載護衛艦は15機のヘリ搭載が可能で、海自の対潜水艦戦能力と海洋境界域の哨戒能力を強化するとともに、琉球列島に速やかに部隊(例えば、対水上艦、対空ミサイル部隊)を輸送するのに用いることも可能である。その上、日本は、P-1海上哨戒機20機の配備を計画しており、また2020年度末までにイージス艦を4隻から8隻に倍増することを計画しており、更に2020年度以降2隻が追加される可能性があり、従って、イージス護衛艦戦力は、海自の対空戦闘能力を高め、A2/AD戦略の重要な構成要素となるであろう。また、海自は、機雷戦艦艇を現有の27隻から少なくとも2隻増強する計画である。日本は、多数の優れた対艦船用機雷を保有しており、その一部は狭い海峡を通峡する艦船を目標として特別に設計されている。前出のヨシハラは、「日本の機雷の脅威は、有事において中国にとって非常に挑戦的なものになる。中国の掃海部隊と随伴する護衛部隊は、琉球列島に到達するために、数百キロに及ぶ危険な海空域を横断しなければならない」と指摘している。その危険な海空域の横断過程で、島嶼の背後に隠れて、秘密裏に対艦ミサイルを発射する、高速の攻撃艇(例えば、「はやぶさ」級ミサイル艇)は、中国海軍にとってもう1つの厄介な問題となろう。

(5) 果たして、中国海軍は、包括的な「対中国海軍 A2/AD戦略 (“Anti-PLAN A2/AD Strategy”)」を遂行するために海自があらゆる資源を投入することを正当化するような、日本にとっての脅威となっているかどうか、このことは大きな問題である。現在のところ、答えは明らかにノーである。何故なら、A2/ADコスト強要戦略 (an A2/AD cost-imposing strategy) は中国海軍が有事に東シナ海の狭隘部を突破するのを阻止できるかもしれないが、この戦略は、「グレーゾーン論争」(即ち、尖閣/釣魚諸島紛争対処を巡る進行中の意見の対立)の解決、北朝鮮の脅威の抑止、あるいは地域のシーレーン(東京、グアム及び台湾の三角形の海域)を護る海自の任務遂行―実際、この任務は日本の安全保障の要である日米安保条約における東京の責任である―といった、他の海洋問題の軽減にはほとんど役立たないであろうからである。地域のシーレーン防衛はA2/AD戦略に必要とされるよりもより広範なスキルを必要とし、前出のColeによれば、「哨戒任務から弾道ミサイル防衛まで、沿岸警備隊と海軍の双方の任務を跨ぐ、熟達した実力を必要とする。」日本は、ハリネズミよりもむしろキツネでなければならない。何故なら、英国の哲学者、Isaiah Berlinの比喩を借りれば、「ハリネズミはでかいことを1つだけ知っているが、キツネは沢山のことを知っている」からである。要するに、日本は現在暗黙裡に部分的なA2/AD戦略を進めているが、それは、中国海軍の脅威と、他の新たに出現しつつある脅威そして地域大国としての多様な海洋における責任との間でバランスが取れたものでなければならない。包括的な「対中国海軍 A2/AD戦略」が中国との軍事対決において勝利する一番の近道かもしれないが、近い将来において日本の海洋戦略に大きな変化は見られそうにない。

記事参照:
This is Japan’s Best Strategy to Defeat China at Sea
備考*:Toshi Yoshihara, Going Ahti-Access at Sea: How Japan Can Turn the Tables on China, CNAS, September 2014
備考**:China’s Incomplete Military Transformation: Assessing the Weaknesses of the People’s Liberation Army (PLA), RAND Report 2015
備考***:Tetsuo Kotani,“U.S.-Japan Allied Maritime Strategy: Balancing of the Rise of Maritime China,”CSIS, April 2014

編集責任者:秋元一峰
編集・抄訳:上野英詞
抄訳:飯田俊明・倉持一・黄洗姫・山内敏秀・吉川祐子