海洋情報旬報 2014年4月11日~20日

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4月「大躍進する中国海軍―米人ジャーナリスト論評」(National Defense Magazine, April 2014)

ワシントン在住のジャーナリスト、Stew Magnusonは、米誌、National Defense Magazine、 4月号(電子版)に、“China’s Navy Takes Great Leap Forward” と題する論説を寄稿し、最近の中国海軍の動向について、要旨以下のように論じている。

(1) 中国海軍南海艦隊の2隻の駆逐艦と新型両用戦艦が2月にインドネシアのジャワ島とスマトラ島の間のスンダ海峡を通峡し、インド洋での訓練を終えて、数週間後、バリ島に近いロンボク海峡とカリマンタンに近いマカッサル海峡を通峡して帰港した。これらの海域を中国海軍艦艇が通過するのは初めてである。今回の通峡は、2013年夏に中国海軍艦艇が宗谷海峡を通峡したのに続くものである。更に、ロックリア米太平洋軍司令官によれば、中国はハワイで夏に実施される、RIMPAC演習に、3~4隻の戦闘艦を参加させると見られる。ロックリア司令官は、「これは歴史的な出来事である」と語っている。

(2) ヘリテージ財団のDean Cheng上級研究員は、「中国は単に海軍艦艇の隻数を増やしているだけではない。中国は、海洋における拒否能力の広範な基盤を整備しようとしている。その拒否能力は、アメリカだけでなく、周辺国にも影響を及ぼすことは避けられない」と指摘している。議会調査局の海軍問題専門家、R. O’Rourkeは2月28日付の報告書で、「中国の海軍近代化には、造修と後方、海軍のドクトリン、人員の質、教育、そして訓練と演習の分野における、改革、改善が含まれている。中国海軍は、中国の近海を越えて運用する能力を着実に備えている」と指摘している。O’Rourkeによれば、海軍の近代化計画には、各種の対艦ミサイル、新型潜水艦、航空機、駆逐艦、フリゲート、コルベット及び両用艦艇が含まれ、「プラットホームの数の増大以上に、その能力の向上が顕著である。」

(3) 中国海軍の最初の空母は多くの関心を集めたが、中国はその後、国産の空母部隊の創設計画を発表した。前出O’Rourke の報告書によれば、2012年9月に就役した「遼寧」は、通常型空母で、満載排水量6万トン、30機以上の固定翼機及び回転翼機の搭載が可能である。「遼寧」の能力と排水量は米海軍の空母の約半分である。国防省の報告書や専門家は、中国の空母を、「事始めの空母 (“starter aircraft carrier”) 」と呼んでいるが、中国海軍は、訓練、特に動く空母からの離発着艦という際どい作業を通じて、空母を如何に運用するかを学ぶのに今後数年を要することになろう。米海軍退役大佐で、The Center for Strategic and Budgetary Assessmentsの上級研究員、Jan van Tolは、中国が新たに建造する国産空母は恐らく「遼寧」よりも能力の高いものになると思われるが、何のために空母を建造するのかというのが最大の疑問であり、もし中国がグローバルな海軍力を目指しているのであれば、それには何十年もかかるであろう、と指摘している。Tolは、国産空母が米空母と比べて小型で、能力が劣っていても、東アジア海域においてプレゼンスを誇示し、戦力投射を行うには、十分理に適ったプラットホームになろう、と見ている。Tolによれば、中国は「この地域においてアメリカができることは何であれ、自分達もできることを誇示したいと望んでいる。」米海軍は、今日の空母部隊を建設するのに長い期間をかけてきた。中国はその基礎を学び始めたばかりであり、中国海軍は他国の教訓を学ぶことで時間を節約することができても、実地の運用経験を習得するのは最も時間がかかる、とTolは指摘している。

(4) 中国は、攻撃型潜水艦について独自の基準を設定している。中国の潜水艦部隊は隻数が大幅に増えているが、これは中国自身の安全保障のためなのか、それとも他の目的があるのか。海軍情報局 (ONI) の上席分析官、Jesse Karotkinは、1月30日の米議会中国経済安全保障諮問委員会で、中国は、潜水艦部隊を、高度な装備を持つ敵(アメリカ)による「介入を阻止する」のための決定的な抑止力と見なしている、と証言している。前出O’Rourke の報告書によれば、中国は、ロシアから購入した12隻の通常型潜水艦に加えて、4艦種の新しい国産潜水艦を保有している。「晋」級SSBN、「商」級SSN、及び2つの攻撃型潜水艦、「元」級と「宋」級である。ONIは、「晋」級SSBNの後継艦は2015年初めにも配備される可能性がある、と予測している。

(5) 中国の水上戦闘艦艇も近代化の途上にある。前出のJesse Karotkinによれば、10年足らず前までは、中国の水上戦闘艦艇は、性能がばらばらな輸入と国産そして新旧の艦艇が混在していたが、現在の中国海軍は、外国からのライセンス建造の一部艦艇を除いて、国産の兵装を搭載した国内で設計された艦艇に完全に移行している。中国は現在、6種の新型国産駆逐艦を建造しており、そのほとんどが対艦ミサイルを装備している。ONIによれば、国産駆逐艦は、2015年までに28~32隻になろう。前出O’Rourke の報告書によれば、「旅洋III (Luyang III) 」級駆逐艦は、対地巡航ミサイル、対空ミサイル、対潜ロケット及び対艦巡航ミサイルを発射できる多目的垂直ランチャーシステムを装備する最初の駆逐艦であると見られる。また、前出のCheng上級研究員によれば、中国は、駆逐艦とフリゲートを同時に2~3隻建造するペースからシリーズ建造に移行しており、建造隻数が急速に増大している。シリーズ建造は、共通の装備、艦隊間の艦艇及び人員の移動を可能にし、そして1つの単位としての海軍の行動能力を強化することになり、「これは極めて重要な変化である」とCheng は指摘している。ONIによれば、中国は2015年までに、52~56隻のフリゲートを保有することになろう。また、中国は最近、コルベット級の艦を導入しており、2015年までに20~25隻を保有することになろう。また、ステルス性能を有する双胴型高速ミサイル艇、「紅稗」級約60隻を建造している。このミサイル艇は、8基の対艦巡航ミサイルを搭載している。

(6) 「中国の海軍建設が後戻りする兆候はほとんどない。それは非常に秩序だった進捗ぶりである」とChengは言う。前出のVan Tolは、「中国は、単に新しい水上艦艇や潜水艦を取得しているだけではない。彼らは、海軍ドクトリンの構築に努力しており、また、多くの時間と資金を訓練に注ぎ込んでいる。即ち、中国は、次の戦争に勝つためには何が必要になるかを体現した真にプロフェッショナルな軍隊を目指して、努力しているのである」と指摘している。

記事参照:
China’s Navy Takes Great Leap Forward
Graphic: Projected Types and Numbers of Chinese Navy Ships by 2015

4月11 日「米第7艦隊関係者、沿岸戦闘艦のアジア戦域での適合性を疑問視」(Bloomberg, April 11, 2014)

米Bloomberg Newsは、米会計監査院 (The U.S. Government Accountability Office: GAO) による56頁の「部内限り」の報告書を入手したが、それによれば、米海軍第7艦隊の関係者は沿岸戦闘艦 (Littoral Combat Ship: LCS) はペルシャ湾のような狭い海域の作戦に適合しているのであり、アジア周辺海域において作戦するための速力、航続距離及び電子戦能力が不足していると指摘しているとして、要旨以下のように報じている。

(1) 報告書によれば、その能力の限界から太平洋において効果的に運用できないとすれば、米海軍はLCSの建造隻数を再考すべきであるとしている。また、価格、任務、及び狭隘な沿岸域において作戦を実施するように設計された艦艇の戦闘時における残存性も疑問視している。ヘーゲル国防長官は2月24日の会見で、財政的制約や能力的限界などから、LCSの建造隻数について、当初計画より20隻少ない、32隻に留める方針を明らかにした。GAOの報告書のタイトルは、“Littoral Combat Ship: Additional Testing and Improved Weight Management Needed Prior to Further Investments” で、ヘーゲル長官の方針を裏付けるものとなっている。

(2) 報告書によれば、LCSの最初の2隻は、重量超過のため速力40ノット以上という要求性能を満たしていない。海軍の調達責任者は、上院軍事委員会シーパワー小委員会で、海軍は既に、報告書が指摘するそれぞれの問題点について、それは正しいのか、完全な情報なのかを検討している、と証言している。更に、上述の第7艦隊関係者の指摘については、海軍水上艦艇の指揮官はLCSの有効性について疑念を持っていない、と答えた。一方、軍事委員会の共和党筆頭理事、マッケイン上院議員は、LCS建造計画については2004年度以来120億ドルを越える支出が議会で承認されており、国防調達システムを破壊する信じられない失敗だ、と指摘した。海軍報道官は、この報告書は既に海軍が包括的に対応に取り組んでいる分野について言及しているが、海軍はこの初めての艦種のあらゆる可能性を把握するため、LCS建造計画を継続的に見直しテストしている、と語った。

(3) 報告書は、ロッキード社が建造した、USS Freedom の2013年のシンガポールにおける10カ月間のローテーション展開を検証している。国防省当局者は、USS Freedom のローテーション展開を、同盟国に最良の装備を展開させることで国防省のコミットメントを誇示する、アメリカのアジア重視の重要な措置の1つ、と強調している。しかし報告書は、今回の展開は「今後のLCS展開計画の検討する上で重要な実地の教訓」となったと言えるが、「LCSの構想とその運用に関して重大な不明点が残っている」と指摘している。報告書は、USS Freedomが減速器、油圧系統、発電機、及びウォータージェット推進システムといったメカニカルな問題のために55日間を無駄にした、と指摘している。一方、LCSの重量の問題について、報告書は、建造社であるロッキード社とヘンダーソン社の仕事ぶりを非難している。報告書によれば、両社は、不完全で、不正確な報告書を何度も提出し、このため、海軍がLCSの重量超過問題を見過ごすことになった。

(4) ヘーゲル国防長官は海軍に対し、2014 年末までに可能性のある艦艇の選択肢を報告するよう命じた。この選択肢は概ねフリゲートの能力と同等であり、沿海域戦闘艦の改造あるいは新しい艦を含むとしている。

記事参照:
Littoral Ship’s Fitness for Asia Questioned by Some in U.S. Navy

4月11日「重要性を増す日米海軍協力―米専門家論評」(The Diplomat, April 11, 2014)

米会計監査院 (The U.S. Government Accountability Office: GAO) の国家安全保障と国際関係の担当官、Dr. Elizabeth Guranは、4月11日付けのWeb誌、The Diplomatに、“Dangerous Neighborhoods: U.S.-Japan Naval Cooperation” と題する論説を寄稿し、① 日米間の海軍協力は長年に亘って日米安全保障関係の核心と認識されてきた、② 今日、両国海軍部隊は、海洋における緊張が高まるアジア太平洋地域において、1980年代に旧ソ連の脅威に対抗したように、再び最前線に立っているとして、日米の海軍協力の在り方について、要旨以下のように述べている。(なお、グラン博士は、最近まで政策研究大学院大学の海外特別研究員であった。)

(1) 海上自衛隊はこの10年間、米海軍とのパートナーシップを大きく前進させ、非常に有能で尊重される海軍戦力になった。海上自衛隊の変貌は、2001年の9.11テロ事件から数カ月後に始まった。海上自衛隊の護衛艦は、インド洋に派遣され、当初米海軍に対して、その後アフガニスタンとその周辺で対テロ活動に参加するその他の国の海軍に対しても、燃料と物資を提供した。その後、海上自衛隊は、人道支援や災害救助活動に加えて、現在進行中の護衛艦とP-3C哨戒機によるソマリア沖での海賊対処など、地域安定化活動に参加している。

(2) 海軍は、戦略の明快さを必要としている。それによって、日米両国海軍は、相互の役割と任務を明確にでき、同盟の戦略目標を促進する実際的な演習と訓練を行うことができる。海上自衛隊はこの10年間で、今後直面するかもしれない戦略環境の評価に基づいた、予想される役割と任務、そして運用概念を明確にする上で、大きく前進した。更に、日本政府は2013年12月、初めて日本の安全保障戦略を発表した。防衛力の増強とともに、戦略計画の立案と分析の重視は、同盟関係を強化する。しかしながら、アメリカでは、軍事戦略と運用概念を巡る論議が依然、続いている。同盟国は未だ、こうした動向の全容を知らされていない。更に、国防省が2012年に「戦略ガイダンス」を公表したものの、政府は、「アジアにおける再均衡化」宣言を具現する総合的な戦略を未だ開発していない。下院軍事委員会が2013年秋と2014年冬に再均衡化に関する公聴会を開催し、この問題に対して注意を喚起した。この問題は国内の他の国家的な課題と絡み合って、それが国際問題と同盟関係においてアメリカの足を引っ張っている。米海軍と同盟国海軍同士の関係にも影響を及ぼしている。

(3) 日本とアメリカは、1978年の最初の日米防衛協力ガイドラインに至る1970年代半ばに、同様の国内的、国家的な課題に直面した。貿易戦争は日米間で猛威をふるい、また安全保障面でも、安全保障上の課題と脅威の認識に一致はなかった。戦略的コンセンサスに到着することは必ずしも容易ではなかったが、一度これらが解決されると、その後は、安全保障関係にとって最良の時期となった。同盟史上この成功した期間の教訓は、今日、日米両国が当時よりはるかに複雑な国際環境を考慮するに当たって、有益である。

a.第1に、脅威認識、及び安全保障環境の見通しと優先順位―要するに結局のところは国益―に違いがあることを念頭に置く必要がある。海軍にとって、脅威認識の差は運用概念の相違に繋がるので、重要な問題である。同盟における核心的関心は、優先順位を巡る論議である。日本の「隣国」は、大方のアメリカ人が認識しているよりもはるかに危険で、そして日本の国家としての意志決定は、この隣国に対する脅威認識に基づいている。中国の挑戦に対処する共通のビジョンを開発することは、優先順位を巡る論議の一部でなければならない。

b.第2に、国家レベルと軍種間レベルにおける、両国の戦略的取り組みを強化すべきである。包括的な地域戦略に資する実行可能な運用概念の開発は、同盟にとって、そして将来的な挑戦の最前線に立つ海軍にとって、不可欠である。1997年の防衛協力ガイドラインを改訂する議論は進行中であるが、同時に戦略議論も行なわれるべきである。日本は、この点に関して指導的役割を果たすことができる。

c.最後に「視覚化 (“visuals”)」である。アメリカは、日本の(そしてアジアの)領土紛争に巻き込まれることを懸念しているかもしれない。しかし、日米安全保障コミットメントの強さを誇示するために、この地域で目につく形で訓練や演習を実施することは非常に重要である。海上自衛隊と米海軍が新しい安全保障上の課題への対処や自国での任務遂行に追われている現在、両海軍は、相互の直接的な取り組みを増す創造的な方法を見出す必要がある。日本の2013年の防衛白書、2013年10月の日米安全保障協議委員会(2+2)声明、そしてその他の日米の主要な政策文書はいずれも、2国間、3国間そして多国間訓練の拡大を勧告している。両国海軍は、例えば、アデン湾におけるように両国海軍が互いに近接して活動している機会を利用したり、グアムやマリアナ諸島などの日本国外の訓練施設を利用したりすべきである。2013年6月にカリフォルニア州沖合で実施された統合両用演習、Operation Dawn Blitzは、目につくインパクトの高い訓練の好例である。

(4) 日米海軍関係は、より広範な安全保障関係の一部として、数十年間に亘って地域の安定に貢献してきた。北東アジアは危険な地域であり、海洋に関連した危機が深刻な損害を伴う紛争にエスカレートする可能性がある。日米同盟関係は、この地域で生起するかもしれない安全保障上の挑戦に如何に対処するかについて、適切な戦略に根ざした共通のビジョンがなく、深刻な危機に直面している。数十年前に同様の環境下で行ったように、アメリカ(そして陸、海、空軍)はできるだけ早く、この地域に対するコミットメントを縮小する意図がないという明確な再保証を、日本に示す必要がある。この再保証には、以下の3つが含まれるべきである。

a.日米両国政府の高官レベルで、脅威認識と安全保障上の優先順位の相違について率直な議論をすること。

b.この地域における、そして両国の軍が担うべき役割に重点をおいた共通の戦略ビジョンを開発するという目標を持って、あらゆるレベルにおける戦略的関わりを増やすこと。

c.インド・太平洋地域全域において目に見える形で訓練や演習を増やすことで、日米安全保障パートナーシップの侮り難い強靱性を誇示すること。

米海軍は、両国海軍関係がこれまで以上に重要になっており、そして米海軍にとって長期的なパートナーであることを、海上自衛隊に再保証する重要な役割を担っている。この十年間に培ってきた海上自衛隊の技能と経験は、海上自衛隊を将来にわたって米海軍の掛け替えのないパートナーとするであろう。

記事参照:
Dangerous Neighborhoods: U.S.-Japan Naval Cooperation

411日「ロシア、ウクライナ海軍への艦船引き渡しを開始」(Российская Газета, April 11, 2014)

ロシアは、ウクライナ海軍艦艇のウクライナへの引き渡しを開始した。現在、ミサイル艇をセバストーポリの港から公海に移動させており、この後、ウクライナ側に引き渡される。イタルタス通信によれば、ロシア黒海艦隊司令官は、「黒海艦隊のタグボートは、公海上の引き渡しポイントまでミサイル艇を移動させている。これは、ミサイル艇の技術的な状況から、自走することが不可能であるためだ。その後、ウクライナのタグボートが、ミサイル艇をオデッサ方面へ曳航する。ロシア海軍は、クリミアに残されているウクライナ海軍艦艇のほとんどが、老朽化のため、今後利用できるとは思えない」と語っている。 ウクライナ海軍には、約70隻の艦艇が引き渡される。

記事参照:
Россия начала передачу боевых кораблей ВМС Украины

4月12日「米海軍、新世代駆逐艦命名式」(Mail Online, April 13, 2014)

米海軍は4月12日、新世代の誘導ミサイル駆逐艦、DDG-1000級の1番艦の命名式を行い、USS Zumwaltと命名した。艦名は、1970~1974年の間、海軍作戦部長を努めた、Adm. Elmo R. Bud Zumwalt Jrに由来する。USS Zumwaltは、排水量1万5,000トンの刃先のような艦首形状が特徴のステルス艦で、建造費は30億ドルを超える。2014年後半に海軍に引き渡され、2,016年の就役が予定されている。合計3隻建造予定である。

記事参照:
The U.S. Navy’s christens its huge $7bn stealth ship that looks like a fishing boat on radar
Photo: USS Zumwalt (DDG-1000)

414日「クリミアの軍需企業、ロシア国防省から注文受注」(RT, April 14, 2014)

ロシア紙コメルサントの報道によれば、ロシア国防省はこのほど、国防省の注文を受ける可能性のあるクリミアの軍需企業リストを作成した。リストに挙げられた企業は23社で、その多くが無線電子工学を専門としている。同紙によると、捜索・救難やナビゲーションに関わる装置やセンサーの製造を行う企業の他、造船会社、航空機製造企業も含まれている。企業リスト作成に関し国防省の消息筋は、「これは、プーチン大統領の指示に基づき、ボリソフ国防副大臣の指揮で行われた。現在は、企業の有効な活用案を練り上げているところ」と伝えている。クリミアの軍需産業の生産力の85%以上がセバストーポリとフェオドーシヤに集中している。国防副大臣は「ライセンス等の手続きを完了次第、発注計画に着手する」としている。

クリミアの軍需企業に対し、ロシア国防省が発注を行うことに関しては、ショイグ国防相が4月4日に、「クリミアの軍需産業の生産・技術能力を有効に活用すべきだ」と、その需要性について言及していた。戦略技術分析センター(Центра анализа стратегий и технологий)の専門家は、「多くのクリミアの企業の生産基盤が著しく老朽していることに鑑みれば、発注だけに満足するのではなく、それに向けた準備をしなければならない」とし、生産工場改修の資金が必要であると指摘している。

記事参照:
Оборонные предприятия Крыма получат госзаказы от Минобороны РФ

4月14日「JMU、郵船向け新型コンテナ船8隻建造」(gCaptain, April 14, 2014、日本郵船ニュースリリース、2014年4月14日)

ジャパンマリンユナイテッド (JMU) は4月14日、日本郵船向けの新型コンテナ船8隻の建造を受注した。日本郵船のニュースリリースによれば、JMU呉事業所で建造予定の1万4,000TEUコンテナ船8隻を定期用船する。 これら8隻は、2016年2月から2018年1月までに順次就航予定である。これら8隻は、現在香港の東方海外貨櫃航運公司 (OOCL) から用船している1万3,000TEUコンテナ船4隻と既存船を代替し、アジア・欧州航路に投入される予定という。

記事参照:
JMU to Build Eight 14,000 TEU Containerships for NYK
日本郵船ニュースリリース

414日「プーチン大統領、オホーツク海の大陸棚画定について指示」(Российская Газета, April 14, 2014)

4月14日付けロシア大統領府のウェブサイトによれば、プーチン大統領は、ロシア外務省、国防省、連邦保安局をはじめとする関係省庁に、2014年7月までに、オホーツク海中心部がロシアの大陸棚の一部と認定されたことに対して、それぞれの有益な提案を提出するよう指示した。この他、国防省に対して、「水路通報」には、ロシア連邦のオホーツク海の大陸棚は、ロシアのEEZの限界線である基線から200カイリを超えて中心部も含まれているとの情報を載せるよう指示した。ロシア外務省は今後、国連事務総長を通じ、用意した海図と測地資料やロシアの大陸棚外側の限界線を明記した、しかるべき情報を提出する。これは、プーチン大統領の指示に基づき2015年3月1日までに行われる。

記事参照:
Путин поручил определиться с границей шельфа в Охотском море к 1 июля

【関連記事】「大陸棚限界委員会、オホーツク海中心部をロシアの大陸棚と認定」(Российская Газета, March 15, 2014,)

イタルタス通信によれば、ロシア天然資源環境相は、国連大陸棚限界委員会 (CLCS) が3月11日、オホーツク海中心部の5万2,000平方キロに及ぶ海域(注:オホーツク海沿岸からEEZ境界線を引くと真ん中にできる、enclaveのこと。地図参照)を、ロシアの大陸棚の一部と認めたことを公表した。天然資源環境相によれば、既にCLCSから正式な認定書類を受け取っており、委員会の決定は最終的なもので、翻ることはない。今後はこの中心部にもロシアの管轄権が及ぶことになる。天然資源環境相は、「地質学者によれば、この海域には10億トンを超える炭化水素資源があり、ここで発見される全ての資源はロシアの国内法に基づいて採掘される」と強調した。(なお、日本政府は、オホーツク海大陸棚に関するロシアの申請に異議を唱えていない。)

天然資源環境相はまた、北極海の大陸棚延長申請に関して、申請の準備は2014年秋にも整うとしながら、国連大陸棚限界委員会への申請の提出時期については、他国がどのように主張するかによると述べた。

記事参照:
ООН признала анклав Охотского моря частью шельфа РФ

Note: SUMMARY OF RECOMMENDATIONS OF THE COMMISSION ON THE LIMITS OF THE CONTINENTAL SHELF IN REGARD TO THE PARTIAL REVISED SUBMISSION MADE BY THE RUSSIAN FEDERATION IN RESPECT OF THE SEA OF OKHOTSK ON 28 FEBRUARY 2013
http://www.un.org/Depts/los/clcs_new/submissions_files/rus01_rev13/2014_03_13_COM_REC_RUS_Summary.pdf

なお、日本政府の口上書については以下参照;
http://www.un.org/Depts/los/clcs_new/submissions_files/rus01_rev13/2013_05_23_JPN_NV_UN_001.pdf

オホーツク海中心部のenclave
a140411-1

Source: http://www.un.org/Depts/los/clcs_new/submissions_files/rus01_rev13/2014_03_13_COM_REC_RUS_Summary.pdf

4月16日「南シナ海の領有権紛争解決における台湾の役割―CSIS専門家」(PacNet, Pacific Forum CSIS, April 16, 2014)

米シンクタンク、The Center for Strategic and International Studies (CSIS) の上級研究員、Bonnie S. Glaser は、4月16日付けのPacNet に、“A Role for Taiwan in Promoting Peace in the South China Sea”と題する論評を発表し、南シナ海の領有権紛争において台湾が果たすべき役割について、要旨以下のように論じている。

(1) 台湾は、東シナ海をめぐる外交において、創造的でかつ建設的な役割を果たしている。 しかし、南シナ海においては、台湾は、依然として沈黙を保っている。南シナ海における不安定の主たる要因は、9段線にある。9段線は、1947年に中華民国政府が作成した11段線を起源とする。台湾は、9段線の意味を明確にするとともに、海洋における領有権主張を、国際法、特に国連海洋法条約 (UNCLOS) に準拠させることによって、南シナ海における緊張を緩和するために積極的なアプローチを取るべきかどうか、真剣に検討しなければならない。UNCLOSは、領有権の根拠が陸上起因であることを規定している。UNCLOSは、EEZや大陸棚外側限界の延伸を主張するための根拠として、「歴史的権原」を認めていない。

(2) 台湾がとり得る最初の措置は、中華民国の歴史資料を渉猟し、11段線を引いた当初の意図を完全に把握することである。次に、台湾は、領有権を主張する島嶼の内、200カイリのEEZを主張できる島はどれか、そして12カイリの領海しか主張できない(人間の居住または独自の経済生活を維持できない)岩礁はどれか、を確認しなければならない。UNCLOSに準拠すれば、南シナ海の中央部の島であれば、完全な200カイリのEEZを主張できよう。しかし、同じく領有権を主張するASEAN各国の本土や群島に近い島々のEEZは、台湾が領有権を主張する島と他の領有権主張国に属する陸地との間の中間線までに制限される。 

(3) 領有権主張の根拠を明確にすることで、台湾は、自国が南シナ海において重要な権益を有しており、領有権紛争に対処するに当たって建設的な役割を果たす意思があることを、周辺諸国および国際社会に認知させることができる。ASEAN諸国は、南シナ海における領有権紛争を国際法に従って平和的に解決することに合意しており、台湾の国際法に準拠した領有権主張を歓迎するであろう。台湾のアプローチに対応して、ASEANは、南シナ海における行動規範 (COC) 作成のための中国との協議に、台湾を入れることを支持することで応えることになるかもしれない。最も重要なのは、台湾の行動は、11段線を起源とする9段線による領有権主張の根拠を明確に示すよう、北京に圧力をかけることになることであろう。中国が台湾の行動に倣って、UNCLOSに基づいてその領有権主張を明確にした場合、領有権主張が重複する海域を、共同開発を含め、如何に管理するかについて議論することができ、この地域の平和と安定を強化することになろう。

(4) 北京は、台湾のこうしたアプローチを歓迎しないであろう。中国は、海峡の両岸がともに「共通の」領有権を主張しているとする、台湾との共同歩調を望んでいる。しかし。馬政権は、こうした協力を拒否してきた。台湾による自らの国益に基づく南シナ海における領有権主張の明確化が、両岸関係の改善という近年の趨勢を逆転させることになるとは、考え難い。馬相当が提案した「東シナ海平和イニシアチブ (The East China Sea Peace Initiative: ECSPI)」や日台漁業協定は、間違いなく中国を刺激したが、それが緊張激化の原因になったり、他の分野における両岸の協力を妨げたりすることにはならなかった。台湾にとって、南シナ海における領有権紛争の当事国として、また法治国家として、肯定的な模範を示し、東アジアにおける海洋紛争の管理と最終的な解決のための平和的なプロセスを提示する機会である。

記事参照:
A Role for Taiwan in Promoting Peace in the South China Sea

4月18日「ロシア・ガスプロム、北極原油初の積出」(gCaptain, Reuters, April 18, 2014)

ロシアのプーチン大統領は4月18日、北極原油の初の積出を祝福した。ロシア最大手の天然ガス会社、Gazpromの石油部門、Gazprom Neftは、ロシア最北沿岸沖のペチョラ海のPrirazlomnoyeプラットホームから、原油7万トンをタンカーで初めて積み出した。プーチン大統領は、プラットホームとのビデオリンクで、「これは、北極海における我が国の鉱物資源と石油資源産出の大いなる始まりである。このプロジェクトは、将来の世界のエネルギー市場におけるロシアの存在感を大いに高めるとともに、ロシア経済とエネルギー部門を強化することになろう」と強調した。Prirazlomnoyeプラットホームは、2013年9月にグリーンピースの活動家30人に襲撃されたプラットホームで、北極海での石油生産は環境保護団体から非難されている。Prirazlomnoye油田は、ロシア最北沿岸60キロ沖合のペチョラ海にあり、7,200万トンの採掘可能石油資源があると推測されている。Gazprom Neftは、2020年以降、年間600万トン(日量12万バレル)の産出量に達するとみている。

記事参照:
Gazprom Ships First Arctic Oil from Controversial Prirazlomnoye Platform

編集責任者:秋元一峰
編集・抄訳:上野英詞
抄訳:飯田俊明・倉持一・黄洗姫・山内敏秀・吉川祐子