海洋情報旬報 2014年2月11日~20日

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2月11日「ロシア海軍、ウラジオストク近郊にヘリ搭載揚陸艦用施設建設」(RIA Novosti, February 11, 2014)

ロシアは2月11日、Mistral級ヘリ搭載揚陸艦用の施設建設を開始した。Mistral級ヘリ搭載揚陸艦は、ロシア海軍が購入し、現在フランスで建造中である。この施設は、ウラジオストク近郊のウリス湾沿岸にある既存の海軍基地に建設される。ロシア太平洋艦隊のセルゲイ・アバキャンツ司令官が起工式で明らかにしたところによれば、基本的なインフラの建設は2015年10月までに完了し、2018年初めまでには、同艦の受け入れが可能になるという。ロシア国防省報道官によれば、同基地の埠頭が1,600メートルから2,700メートルに拡張され、給水設備、電気、通信設備システムも更新され、また弾薬搭載サイトも大幅に近代化され、アクセス道路と鉄道も改良されることになっている。ロシアは2011年6月に、フランスとの間で2隻のMistral級ヘリ搭載揚陸艦をフランスで建造する契約を結んでおり、1番艦、Vladivostokは2014年11月1日にロシア海軍に引き渡される予定であり、2番艦、Sevastopolは2014年10月に進水予定である。

記事参照:
Russia Begins Construction of Mistral Ship Base

2月12日「ロシアの北極戦略―米紙論評」(The Washington Post, February 12, 2014)

2月12日付けの米紙、The Washington Postは、ロシアの北極戦略について、要旨以下のように報じている。

(1) 北極におけるロシアの行動は、幾つかの要因によって動機付けられている。最も重要な要因は、いうまでもなくロシア北極地域の経済開発である。ロシアの天然資源省は、ロシアが領有権を主張する北極海域における石油資源の埋蔵量は現在のサウジアラビアのそれを上回っているかもしれない、と見積もっている。ロシアは既に、ヤマル半島とその周辺の沖合で石油資源開発計画を進めている。最初の沖合油田開発は、ノヴァヤゼムリャ島南部のPrirazlomnoye油田で、2013年12月に生産を始めた。北極地域の経済的将来性は、天然資源の開発に限られない。北極海の海氷の融解は、北方航路の利用可能性を向上させた。ロシアは、北方航路が通商航路として将来的にはスエズ運河経由航路と競争できるかもしれない、と期待している。それには、砕氷船、港湾の新設や拡張、避難場所やその他の航行支援施設などに対する多額の投資を必要とする。北極地域に経済的可能性に加えて、ロシアの指導者は、北極を、国際的大国としてのロシアのステータスを誇示する場と見なしている。そのため、ロシアは、北極地域に対する主権を主張するとともに、この地域でのロシアの安全保障を確保する措置を講じてきている。

(2) ロシアの政策は、2つの方向を目指している。1つは、北極地域の資源開発を確実にするために、国際協力を求めていることである。このため、海洋境界確定を巡る紛争とその他の利害対立を解決する努力を進めている。2つ目は、北極海域で最大部分の海域に対するロシアの主権を主張するために、好戦的な主張を展開していることである。ロシアは、北極地域への軍事力の増強を進めている。全体として、ロシアは、北極地域における協力的な国際関係を求めている。ロシアの指導者のレトリックが時に敵対的であるが、それは主として国内向けである。北極地域に対するロシアの主権主張に当たってのプーチン大統領やその他の政府首脳の好戦的な発言を、拡張主義的あるいは軍国主義的なものと見なすべきではない。ロシアは北極地域における軍事力や国境警備能力の強化を進めているが、これらは主として、沿海域や沖合の掘削施設の防衛、捜索救難活動及び砕氷船能力などの分野を重点とするもので、従って、他の北極沿岸国に脅威を及ぼすものと見なすべきではない。

(3) 北極地域におけるロシアの活動を見る場合、米国政府は、ロシアの挑発的な主張が主として国内向けであり、この地域における敵対的な意図の表れと見ないよう注意する必要がある。しかしながら、もしロシアが北極関係の国際機構の決定や権威を蔑ろにしたり、あるいはこうした機構から脱退したりした場合には、ロシアが北極地域において協力的姿勢から、対決的姿勢に実際に転換しつつあると見なさなければならない。

記事参照:
How to understand Russia’s Arctic strategy

2月13日「中国軍、尖閣上陸侵攻を想定した訓練実施―米太平洋艦隊情報部長」(USNI News, February 18, 2014)

米太平洋艦隊情報副部長、ファネル大佐が2月13日にカリフォルニア州サンディエゴで開催された会議で明らかにしたところによれば、中国は、長年にわたって軍事演習では台湾侵攻のための両用作戦を訓練してきたが、最近では東シナ海で日本が領有する島嶼に対する同様の作戦を含む訓練に拡大した。ファネル大佐によれば、中国軍の全軍種が参加して実施された大規模な軍事演習「使命行動2013」*の一部として、尖閣諸島奪取の訓練を実施した。ファネル大佐は会議で、「我々は、『使命行動2013』と呼ばれる、軍区を跨いで行われた大規模な両用作戦演習を確認している。中国軍が東シナ海において日本の部隊を撃破する『電撃的な戦闘 (a “short, sharp war”) 』を実施することができるよう新たな任務を付与された、と我々は結論づけた。一部の研究者も指摘するように、その狙いは尖閣諸島、あるいは更に琉球諸島南部の奪取であると見られる」と指摘した。

中国は2013年に、南シナ海のいわゆる「9段線」周辺での挑発的な軍事行動を増加させた。ファネル大佐は、一連の行動の詳細を示した上で、「米政府高官(注:ラッセル国務次官補)が最近指摘したように、周辺国の反対にもかかわらず、こうした南シナ海での中国の行動が『9段線』で囲まれた海域に対する支配を徐々に強めていこうとする努力の現れである」と強調した。それらの行動には西フィリピン海(南シナ海)南部における戦闘訓練が含まれており、中国はこれを「海洋権益の擁護」と呼んでいる。しかし、ファネル大佐は、「海洋権益の擁護」は隣国の沿岸国としての権利を強制的に奪おうとする行為の婉曲的な表現に過ぎない、と指摘した。

記事参照:
Navy Official: China Training for ‘Short Sharp War’ with Japan

備考*:「使命行動2013」は、南京軍区隷下の第31集団軍の1万7,000人を中核に、広州軍区、東海艦隊、南海艦隊、南京軍区空軍など約4万人が参加し、華東、華南地区に展開して実施された、大規模な跨区機動戦役演習である。演習の重点項目としては、3次元の兵力投射、情報を活用した火力の運用、部隊の協同要領、及び軍と民間が協同した後方支援などが挙げられている。なお、南京軍区は台湾正面を受け持つ軍区であり、その隷下にある第31集団軍は福建省厦門に司令部を置き、2個師団、4旅団からなる台湾解放の軍事作戦において中心となる部隊である。しかし、乙類集団軍に類別されており、有事の際には兵員、装備の補充を必要とする。歴代軍長は水陸両用戦の第1人者と目される者が多く補職されており、その後、上位の南京軍区司令員に補職される例が多い。現在の南京軍区司令員蔡英挺も第31集団軍の軍長勤務の経験を持つ。(解説:山内敏秀)

2月14日「北方航路、中国の新たなシルクロードにならない―米北極研究所所長」(The Maritimes Executive, February 14, 2014)

北極海の海氷の融解に伴って、特に北方航路の利用に対する世界的な関心が高まってきている。今世紀半ばまでに、北方航路がこれまでのアジア向け輸送航路のライバルとなる、あるいはスエズ運河経由航路を補完する航路となるとの予想もある。北方航路への期待の高まりには、中国の国際貿易の急速な成長が主たる要因の1つとなっている。中国は、貿易ルートの多様化を図り、マラッカ海峡への依存度を軽減するためにも、代替ルートとしての北方航路に注目している。しかも、この航路は、スエズ運河経由航路と比較して大幅な航行距離の短縮が可能である。果たして、そうなるか。

米シンクタンク、The Arctic Instituteのハンパート (Malte Humpert) 所長は、中国の現在の貿易パターンから見て、こうした予測に慎重な見方を示している。それによれば、中国にとって、北方航路の利点は、特に北ヨーロッパと中央ヨーロッパとの貿易の場合に限られる。アフリカ、アメリカ及び中東を含む、他の地域との貿易では、例え北極海の解氷期間が急激に増大しても、北極海経由のルートを利用しないであろう。中国の主な輸入国は日本と韓国のような隣国か、オーストラリアやブラジルなどの南半球の国家であり、現在の貿易パターンからは北方航路の距離短縮が中国にもたらす利点はほとんどない。北方航路を利用できる北ヨーロッパとの貿易は、中国の全貿易量の2.9%を占めるに過ぎない。

今後20年間、中国において著しい成長が予想されるのは、アジア太平洋地域諸国と南半球諸国との貿易である。アフリカと中米諸国との貿易も、中国の貿易量におけるシェアが増えるであろう。一方、中国の主要な貿易相手としてヨーロッパの重要性は、今後数十年間に亘って低下していくであろう。実際、中国は、アジア、中東、アフリカそしてヨーロッパにおいて港湾インフラへの巨額の投資を行って、広範な港湾ネットワークを構築してきた。こうした投資はいずれも、中国が北極海を新たな輸送路として検討していないことを示している。

中国遠洋運輸公司 (COSCO) は、スエズ運河経由ルート沿いの港湾に多額の投資を続けているが、北極海に対してほとんど関心を示していない。また中国では、現在のコンテナ船のほぼ2倍の大きさの超大型コンテナ船が就役予定である。コンテナ船は益々大型化する傾向にあり、従って、北極海には大型港湾がないなど、制約の多い北方航路の利用拡大を阻む要因となり得る。コンテナ輸送では、原材料をより安いコストで長距離輸送するためには、大型化が必要である。ばら積み船による輸送でも、同じことが言える。北極仕様のArcticmaxでも、大量輸送に対応できないであろう。 

北極海域における船舶輸送路としての将来は、北極地域における経済活動の増大に必要な物資の輸送に加えて、北極地域の天然資源を東アジア市場に輸送するための、主として季節限定の輸送航路ということに留まるであろう。季節限定の輸送航路以外に、北極海経由の航路が世界の主要輸送航路と競合し得る存在になることは不可能であろう。従って、今後の数十年間に亘る気象変動によって、北極海が通年航行可能な輸送航路になっても、北極海経由の航路が中国にとって新しいシルクロードになることはないであろう。

記事参照:
Arctic Shipping is Not China’s New Silk Road
Map: Arctic Shipping Routes
A report by Malte Humpert, “The Future of Arctic Shipping: A New Silk Road for China?”

2月17日「デンマーク、北極における中国の協力に期待」(Xinhuanet, February 18, 2014)

デンマークのローレンゼン北極大使とアンデルセン外務次官(グリーンランド人)は2月17日、北京でChina Daily紙とのインタビューに応じ、デンマークは北極における特に鉱物資源開発、漁業及び北極航路の開発などの面で中国の参画を歓迎する、と述べた。アンデルセン次官は、グリーンランドにおける鉱物資源開発協力について、江西省の鉱物会社を含む中国の2つの会社と話し合っていることを明らかにし、「もしこれが成功すれば、グリーンランドとの協力を望む中国企業にとって好ましい前例となろう」と語った。また、同次官は、グリーンランドの輸出額の90%以上が水産加工物であり、巨大な中国市場はグリーンランドにとって非常に重要であるとし、更に大陸氷河などの科学調査の面でも中国の協力に期待を表明した。ローレンゼン北極大使は、デンマークと中国は新たな北極航路の開発でも協力できる、と語った。

記事参照:
Bigger Chinese role sought in the Arctic

2月17日「ナトゥナ諸島周辺海域における密漁対策、インドネシア」(The Jakarta Post, February 17, 2014)

インドネシアのThe Jakarta Postは、2月17日付けで、南シナ海のインドネシア領、ナトゥナ諸島周辺海域における密漁の現状と対策について、要旨以下のように報じている。

(1) インドネシアのナトゥナ諸島地方政府によれば、毎年少なくとも11隻の外国漁船が密漁で拿捕されており、それによる損失額は約2兆ルピー(1億6,900万米ドル)にのぼるという。地元の漁民は長年に亘って、インドネシア管轄海域での乱暴な密漁を取り締まるよう政府に要求してきたが、ほとんど何の措置もとられてこなかった。地元メディアの報道によれば、海洋水産省 (DKP) は、2013年3月に違法操業の中国漁船を9人の乗組員とともに拿捕したが、釈放を要求する中国の戦闘艦からDKPの哨戒艇が威嚇射撃を受けて、釈放を余儀なくされた。中国の「9段線」地図によれば、ナトゥナ諸島周辺の一部海域が中国に属しており、インドネシアは長年に亘って抗議してきたが、無視されてきた。

(2) ナトゥナ諸島立法議会 (DPRD) のハーディ議長は、ナトゥナ諸島周辺海域で密漁が絶えない主な理由として周辺海域の哨戒回数が少ないことを挙げ、「例えば、DKPは、年間わずか15日間しか哨戒していない。当然ながら、これでは周辺海域全てを哨戒するには十分でない」と指摘した。更に、ナトゥナ諸島のほとんどの離島は無人の小島で、違法操業漁民の避難所となっている。近隣諸国による無人島の占拠を阻止するために、ナトゥナ諸島地方政府は、2007年に施政下にある最も遠隔の離島、Sekatung島に5棟の家を建設して、居住を志願した5家族のために毎月1回補給品を届けていた。政府はこの6年間、1家族当たり毎月150万ルピーの生活費を提供してきたが、住民の多くは島を離れる決心をした。関係者は、「住民の多くは自分の家を捨てて、首府、ラナイに移住した。ここには社会活動や経済活動が全くないので、我々は彼らを責めることはできない。彼らは、ほとんど隔離された状態にある」と語っている。国防省は、各棟を2,000万ルピーで買い上げ、軍要員を配置することに合意した。国防次官は、「Sekatung島を無人のままに放置することは適切でない。我々は、各棟2,000万ルピーで購入することに合意した。同島に配置されている軍要員を1カ所に集まれるようにする」と語った。ナトゥナ諸島地方政府と住民は、ベトナムに近い離島における軍要員の存在が外国漁民による密漁を抑止することに役立つとして、国防省の措置を歓迎している。また、軍要員の配備によって、政府の開発計画が近隣の離島にも及ぶことが期待されている。

(3) インドネシア軍は、海洋境界域での脅威の高まりに対応して、海兵隊の拡充と長射程攻撃用兵器の調達を含む、海洋安全保障を強化する各種の措置をとっている。国防省は、国の領域と主権を護るために、ナトゥナ諸島、アチェ特別州、東ティモールのアタンブア及びパプアの防衛上の拠点に、統合コマンドの配備を計画している。各コマンドは、固有の戦闘艦艇、ジェット戦闘機飛行隊及び陸軍部隊を持ち、各司令官は、ジャカルタの軍中央部の官僚主義に煩わされることなく、現場で独自に対応する権限を与えられる。

記事参照:
Govt takes small steps to protect Natuna

2月18日「日米同盟の強さ、中国と東アジアとの関係の行方を左右―フォーブス米下院軍事委員会小委員長」(The Diplomat, February 18, 2014)

米下院軍事委員会シーパワー・戦力投射小委員会のフォーブス (J. Randy Forbes) 小委員長(共和党)は、2月18日付けのWeb誌、The Diplomatに、“Stand With Our Ally in Tokyo” と題する論説を寄稿し、日米同盟の強さが今後10 年の中国と東アジア諸国との関係の行方を大きく左右する、日米は協力して中国に対抗すべきであるとして、要旨以下のように論じている。

(1) 日米同盟は、この70年間、アジアにおける平和の要石 (the cornerstone of peace in Asia)であったが、今日ほどそれが重要になったことはなかった。今日、アジアが国際関係の中で新たな重要性を高めるにつれ、日米同盟は、域内の安全保障構造を構築する上で、重要な役割を担っている。より具体的に言えば、日米同盟の強さが今後10 年の中国と東アジア諸国との関係の行方を大きく左右するであろうということである。2013年11月に中国が発表した東シナ海における「防空識別圏 (ADIZ)」は、日米同盟の、そしてより広い意味では、この地域に対するコミットメントを維持するアメリカの意志の強靱さに対する一種のテストであった。北京は2010年以来、アメリカとその同盟国に対して執拗に挑戦するために、一貫して高圧的な威嚇政策をとってきた。

(2) 中国の高圧的な威嚇政策の事例の中で、日本の南西の島嶼を巡る事例が最も深刻なものである。中国による日本の領空と領海に対する侵犯は近年異常に増大し、誤算による紛争の可能性を高めている。尖閣諸島は日本の施政下にあり、現状を変更しようとする一方的な試みは、日米安保条約第5条の規定の適用事案である。一部のアメリカの傍観者は、アメリカが東シナ海における「小さな岩礁」の防衛をコミットする必要はないと主張する。彼らは、北京の高圧姿勢に屈するか、あるいは島を分割すれば、問題を解決することができると言う。しかしながら、ここにおける問題は、海洋における管轄権や領空ではなく、アメリカが第2次世界大戦後、アジアで確立し維持してきた法的規範に基づく一連の諸原則である。今日、これら諸原則に対する中国の挑戦を放置し、それらが蔑ろにされることを容認するならば、北京は一層強固に出て、明日には、「航行の自由」や「紛争の平和的解決」に対するコミットメントは、かつてアジアに秩序があった時代の「フレーズ」と言われるようになってしまうであろう。

(3) 米中関係が平和的競争関係であるためには、中国に対して東アジアの法的規範に基づく秩序に従った政策決定を促す、強固な日米関係が必要である。世界の多くの民主国家が防衛費を削減している中で、日本が防衛費を増額し、しかも離島防衛のために海域の管理、機動力及びISRといった必要な能力を強化しようとしていることは、賞賛に値する。加えて最近の国家安全保障会議の設置などと併せ、日本は東北アジアの安定の錨としての役割を果たそうとしている。東京は地域安全保障への将来の貢献について論議を高めており、将来的に同盟における等分の責任分担を担うことができる、より「普通の (“normal”) 」国、日本への努力を歓迎する。

(4) 中国の接近拒否・領域拒否能力の強化に対応していくためには、ワシントンは、新たな戦略概念と技術でアジア太平洋における防衛態勢を強化する必要がある。

a.第1に、紛争状況下で米軍部隊をより効果的に運用できるようするために、AirSea Battleのような新しいドクトリンと運用概念が必要である。また、中国軍の接近介入阻止戦略に対抗するために、現有能力を如何に多様な方法で運用できるかを創造的に考える必要がある。

b.第2に、潜水艦、水陸両用戦能力そして特に一連の戦力投射システムといったプラットフォームに投資しなければならない。更に、誘導弾の発展に見合った新世代の弾薬にも投資する必要がある。

c.最後に、アメリカがゲームチェンジャーとなり得る革新的技術における優位を維持し続けるために、電磁波、指向性エネルギー、極超音波そして電子戦といった技術分野を育成する必要がある。

(5) 日米が中国軍の近代化努力に対抗する最良の方法は、中国の恒常的弱点の幾つかに対する比較優位を共同で高められる分野を見出すことである。日米同盟は、中国軍の戦略に新たな負荷を課すとともに、時間をかけて力の均衡を有利な方向に変えていくための分野を見出すことができる。その1つの分野が対潜水艦戦 (ASW) 能力であることは明白である。ワシントンと東京は、まだ初期の段階にある中国のASW 能力に対して、質的優位を維持している。潜水艦隊の拡充、新しいソナー技術そして無人潜航艇などによって水中での競争に投資すれば、中国はそれに対抗するために、防衛的なASW能力により多くの時間と資源を投資しなければならなくなろう。このような競争戦略は、今後十年間の日米同盟の防衛計画の枠組となるべきである。

(6) 更に、北京の様々な威嚇行為に対して、ワシントンは、現在よりも包括的な東アジアに対する国家戦略の策定を含め、大きな政策調整が必要である。そのため、最近(1月16日付け)、私(フォーブス小委員長)は超党派で、スーザン・ライス国家安全保障問題担当大統領補佐官への書簡*で、「東アジア戦略評価 (East Asia Strategy Review)」を実施するよう要請した。(再評価に当たっては)単に目的の詳細なリストを羅列するだけでは十分でなく、目標とそこに至るための手段の適切な組み合わせを決めなければならない。現在のところ政府は再評価に躊躇しているが、議会やシンクタンクの研究者の間では支持が増えている。

(7) 最後に、日米両国は、東アジア地域のアメリカの同盟国とパートナー諸国の間に、信頼と協力を一層高める方法を見出さなければならない。友好国を作り、その関係を維持することがかつてないほど重要になっている。このため、安定した同盟の管理と一体化は、今後の主要な外交的、戦略的任務である。日韓関係に外交的関心を払うとともに、日米両国は、例えばフィリピンなどとの3カ国間協力を進めることも検討すべきである。自己主張の強い中国の台頭がもたらす挑戦は日米同盟を再活性化させる触媒となり、東京に重要な国家安全保障に関する改革を促し、他方でワシントンに長期にわたる東アジアへのコミットメントに関する根強い疑問に対応するよう促すことになろう。活力ある日米同盟は、アジア太平洋地域の将来的な安定と繁栄を保持する最も確実な方法であることは明らかである。私は、議会がこの重大な努力を慫慂し、支援する方法を見出すことを期待している。

記事参照:
Stand With Our Ally in Tokyo
備考*:See, Forbes: Omnibus Directive for Asia Strategy Review Strengthens U.S. National Security

2月19日「ロシア、2014年末までに北極海統合軍新設へ」(RIA Novosti, February 17, 2014)

ロシア連邦軍参謀本部高官が明らかにしたところによれば、ロシアは2014年末までに、北極海を担当する新たな軍事組織、「北方艦隊・統合戦略軍 (The Northern Fleet-Unified Strategic Command: NF-USC) 」を創設する予定である。NF-USCは、北方艦隊を基幹として、北極戦闘旅団、空軍部隊及び防空軍部隊から編成され、更に管理部門からなる。NF-USCは、北極海の海運、漁業、北極海大陸棚の石油・天然ガス田、及びロシアの北部国境の防衛を担当する。NF-USCは軍管区と同等の地位を付与されるが、現在のロシアの軍管区―西部、南部、中央及び極東の4個軍管区―の数が増えるわけではない。プーチン大統領は2013年12月、軍に対して、北極海におけるプレゼンスを強化するとともに、2014年中に軍事施設の整備を完了するよう、指示している。航空宇宙防衛軍のアレクサンドル・ゴロコフ司令官によれば、軍は既に、北極地域への航空宇宙防衛部隊の配備と極北地域への対ミサイル早期警報レーダーの建設に着手している。更に、国防省は、北極海のノヴォシビルスク諸島とフランツ・ヨーゼフ諸島の複数の港と飛行場に加え、1993年に閉鎖された北極圏沿岸の所在する少なくとも7カ所の飛行場を再開する計画を明らかにしている。

記事参照:
Russia to Set Up Arctic Military Command by 2015

2月20日「比豪両国、防衛協力の継続に合意」(The Inqiurer.net, February 20, 2014)

フィリピンのデルロサリオ外相は、2月20日のオーストラリアとの第4回年次閣僚会議後の記者会見で、「我々は、対テロ対策を中心として、オーストラリアとの防衛、安全保障協力を継続、促進することに合意した。また、両国の外務、防衛閣僚による第2回戦略対話の開催にも合意した」と語った。フィリピンとオーストラリアの「訪問部隊の地位に関する協定 (Status of Visiting Forces Agreement: SOVFA)」は2012年9月に発効した。デルロサリオ外相は、この協定はフィリピンの災害救助活動とともに、海洋安全保障を強化する上でも有益であるとし、この協定によって、フィリピン中央部を襲った2013年の台風の際、オーストラリア軍の災害救助活動が可能になった」と語った。

記事参照:
PH-Australia agree to continue defense, security cooperation

2月20日「各国別船舶保有隻数、コンテナ船ではドイツがトップ」(The Maritime Executive, February 20, 2014)

VesselsValue.comの2013年6月現在の統計による各国別船舶保有隻数では、コンテナ船ではドイツの船主の保有隻数がトップであった。しかし、1万6,000TEUの最大のコンテナ船を運用しているのはデンマークのMaerskとフランスのCMA CGMで、ドイツの船主は伝統的に小型と中型のコンテナ船を運用してきた。ドイツの船主の保有コンテナ船は、3,000TEU以下では全体の45%、3,000~7,999TEUでは全体の32%を占めている。全保有隻数では、ギリシャ、中国そして日本がビッグ・スリーとなっている。バルカーは全世界の商船の約15%を占めるが、その大部分は中国、ギリシャあるいは日本の船主の保有である。以下は、各国別の全保有隻数と船種毎の各国別保有隻数である。なお、この統計では、バルカーは2万DWT以上、コンテナ船は500TEU以上、タンカーは1,000DWT以上の船舶が対象となっている。

各国別の全保有隻数
a140211-1

船種毎の各国別保有隻数
a140211-2

記事参照:
How Does Your Country Rank as a Shipowner?

編集責任者:秋元一峰
編集・抄訳:上野英詞
抄訳:飯田俊明・倉持一・黄洗姫・山内敏秀・吉川祐子