海洋情報旬報 2014年1月21日~31日

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1月21日「習近平主席は人民解放軍を再編しているのか―韓国専門家論評」(RSIS Commentaries, January 21, 2014)

韓国海洋戦略研究所主任研究員の尹碩俊 (Sukjoon Yoon) 韓国海軍退役大佐は、シンガポールのS.ラジャラトナム国際関係学院(RSIS)の1月21日付RSIS Commentariesに、“Is Xi Jinping Reshaping the PLA?” と題する論説を寄稿し、中国の習近平主席は統合戦闘能力を強化するために人民解放軍 (PLA) を再編しようとしているが、容易な道ではないとして、要旨以下のように述べている。

(1) 習近平主席は、人民解放軍(PLA)を再構成しているのか?北京は否定しているが、日本の読売新聞やThe China Daily の報道によれば、既に再編は進行中である。済南、南京及び広州の3つの沿岸軍区は、黄海、東シナ海及び南シナ海の海洋戦域を担当する単一の統合軍に統合されるであろう。更に、2個の統合軍が、瀋陽、北京、蘭州及び成都軍区から編成されることになろう。しかし、今何故、再編しようとしているのか。中国国防部は、統合作戦部隊の編成を否定している。しかしながら、これまでにもPLAの再編が続けられてきた。1948年に創設された13個の軍区は、1969年には11個に、そして1987年には7個に統合された。習主席が2013年秋に運用上の迅速性を改善するとともに、戦闘能力の相乗効果を増大するよう指示したことから、再編が進んでいるように見られる。PLAは、兵力を230万人から200万人に縮小し、調達及び統合軍部隊の運用所要に資金を再分配しようとしている。

(2) PLAの実働部隊の再編は以下の4つの理由から必要とされている。

a.第1に、他国と重複するEEZと新たに論議を呼んでいるADIZを含め、特に部隊の運用戦域が中国の国境を越えて周辺の海域と空域にまで拡張されたことから、新たに出現した脅威に対処するための既存の意思決定方法が、複雑で不透明になったことである。

b.第2に、PLAは、これまで主として中国の国境防衛に重点を置いてきた。そのため、特に係争海域において、外的脅威に迅速に対応できる即応戦力になるためには、PLAは、中国共産党のイデオロギーによる影響をより少なくし、真に専門的な軍事力を構築するために革新的な軍事技術を重視していかなければならない。

c.第3に、PLAの将来的な運用概念は、現在の防衛的な「接近阻止・領域拒否 (A2 /AD) 」から、攻撃的な統合戦闘に向けられて行くように思われる。地上部隊主導の作戦に代わって、空・海の統合作戦が標準的な運用概念となり、そこでは、中国の国境を越えて戦力が投入されることになり、従って、4軍種の指揮官同士と将兵間の緊密な調整が要求されることになろう。

d.第4に、2013年に最高国家指揮機構として国家安全保障会議が設立されたが、このことは、新しい指揮統制機構の構築を意味している。1920年代以来、PLAは、国家と共産党の間の緩やかな命令系統によって指揮されてきた。習主席は、中央軍事委員会主席を兼ねることで、文官の最高司令官として、統合軍能力を強化するとともに、統合戦闘概念を開発する上で、中心的な役割を担っている。

(3) PLAの運用概念の変更はまた、任務の改訂と機構改編をも意味する。このことは、新しい運用ドクトリン、戦力構成と装備、訓練、そして最も重要な新たな戦闘能力を必要とする。しかしながら、大きな障害が立ちはだかる。中国共産党とPLAの間における複雑な軍民関係は、真に専門的な軍事力の構築を困難にしている。このトップダウンによるPLAの運用態勢の再編は、効果的な新しい戦略ドクトリン、戦力構成及び装備とともに、運用訓練、そして最も重要なこととして、新しい戦闘能力を伴うものでなければならない。 もしこれらが改善されなければ、中国共産党とPLAとの間の指揮系統の異常な特性から、指揮統制が曖昧で、訓練プログラムも未調整のままということになろう。例え統合運用の計画立案が明らかに戦闘即応態勢の強化をもたらすとしても、これらの問題は再編の有効性を弱めることになる。統合軍が特に国境を超えた統合戦闘作戦においてどのように運用されるのかについて、明確で総括的な戦略ドクトリンが示されるべきである。習主席は、統合軍の作戦運用経験をほとんど持っていないPLAに対して、こうした総括的戦略ドクトリンを提示していない。もっとも、PLAが新しい任務と運用概念を開発しつつある、幾つかの徴候がある。「機動5号」と呼称される、前例のない大規模な統合艦隊演習が2013年10月に西部太平洋で実施された。この演習は、北海、東海及び南海の各艦隊から水上戦闘艦、航空機及び潜水艦が参加した、大規模な戦闘遂行演習であった。しかも、この演習は、以前のシナリオに沿った演習から、迅速な戦力投入に必要な自発的な機動をより重視した演習に代えることを意図していた。

(4) 習主席によるPLAの再編は、統合軍指揮官の自主裁量権を重視し、共産党の干渉を押さえることで、PLAを「党の軍隊」から「国家の軍隊」に漸進的に変革させていくことを意味している。しかし、軍内部を見れば、大部分の幹部は依然、軍と党の2つの帽子を被ったままであり、両者の緊張関係は指揮系統の混乱を生んでいる。国家レベルにおいて単一の統一的指揮統制機構を構築するためには、極めてやっかいな機構上の障害がある。習主席によるPLAの再編は、長い極めて複雑な作業の始まりに過ぎない。

記事参照:
Is Xi Jinping Reshaping the PLA?

1月21日「カナダ沿岸警備隊、北極海シーレーン調査を計画」(Canada.com, January 21, 2014)

カナダのメディアが1月21日付で報じるところによれば、カナダ沿岸警備隊は、将来の極北における商業、社会活動の基盤整備のために、大規模な調査演習を計画している。沿岸警備隊は、産業界、地方政府、原住民共同体及びその他の連邦政府機関と協同で、極北地域がアクセス可能になるにつれ、船舶の通行が可能になる北極海のシーレーンの本数を確認する計画である。沿岸警備隊の副司令官によれば、現代的な水準の海図が作成されている北極水域は全体のわずか12%に過ぎず、更に多くの海図が必要だが、100%になることは決しないという。沿岸警備隊は、今後数年間に数百万ドルを投入して、新たな通信施設や後方支援施設を整備するが、同副司令官は、まず船舶の安全通行が可能になるシーレーンを確認した上で、投資すると語った。2014年中に調査し、秋頃には連邦政府機関に選択肢を提示する予定という。

カルガリー大学の北極専門家、ヒューバート教授は、極北地域のシーレーン確認調査を、既にロシアや北欧諸国も同様の調査をしており、歓迎するとしながらも、この調査がパンドラの箱を開けることになりかねない、と警告している。それは、カナダ北西航路がカナダの内水か、あるいは国際航路かという、アメリカとカナダの対立である。また同教授は、外国の船舶が確認されたシーレーンを意図的に迂回した場合はどうするか、そしてカナダがこれらのシーレーンをどう警備するかについて、政府はあらかじめ検討しておくべきだ、と指摘している。

記事参照:
Coast guard to scope out Arctic shipping lanes

1月21日「ニュージーランド、NATO海賊対処作戦に参加」(NATO News, January 21, 2014)

NATOとニュージーランド (NZ) 政府は1月21日、交換書簡に署名し、NZ海軍のフリゲート、HMNZS Te Manaが1月23日から、NATOの海賊対処作戦、Operation Ocean Shieldに参加する。NZのコールマン国防相は、NZは国際的な海賊対処努力にコミットしており、NATOの対処作戦への参加はNATO諸国とのインターオペラビリティーを促進する機会となる、と語った。NZは、ウクライナに次いで、NATOの海賊対処部隊、CT-508に参加する2番目のNATOパートナー国となった。

記事参照:
New Zealand joins NATO counterpiracy mission Ocean Shield

1月25日「北極圏、ロシアの特別な利害関係地域」(The Voice of Russia, January 25, 201)

1月25日付のThe Voice of Russiaは、北極圏はロシアにとって特別な利害関係地域であるとして、要旨以下のように報じている。

(1) ロシアでこのほど、政府機関、専門家や国際機関の代表が集まって、北極圏の開発問題に取り組むための会議が開かれた。一方、プーチン大統領は、北極圏における軍事プレゼンスの問題に関する会議を開催した。プーチン大統領は、トゥーラ地域の主要な防衛産業を視察した際、軍産複合体の代表者と北極圏地域を防衛する問題について意見交換を行った。プーチン大統領は2013年に、国防省に対して「北極圏におけるインフラ整備や軍事プレゼンスに格別の注意を払う」よう指示した。現在、軍事産業は、北極圏で必要な武器を国防省に納入できる態勢にある。

(2) ロシアは、北極圏の資源を巡る競争を、最も深刻な脅威ではないとしても、注意を払うべき懸案事項と見なしている。実際、地球温暖化や海氷の融解が進むにつれ、北極圏に対する関係諸国の関心が高まっている。ロシアに次いで、アメリカも、北極圏における軍事プレゼンスの増強を発表した。こうした状況の中で、モスクワはソ連時代に選んだコースを遵守する必要があると、ロシア連邦議会のニコライ・フェドーリャクは以下のように語った。「当時は、ソ連軍の重大な懸念は北極にあった。当該地域に駐在する部隊は、敵の空襲の可能性に備えていた。アメリカの爆撃機の戦略的な飛行ルートが北極点を通っていることは、秘密ではなかった。アメリカの精密誘導兵器の性能は、1970年代や80年代に比べて著しく向上した。そのため、ロシアは、ロシアの国益を護るために、防衛インフラを修復し、必要ならより高いレベルに強化する必要がある。」防衛産業界は既に、北極圏の過酷な気象条件で動作できる武器を生産している。例えば、北極圏の気候下でも作動できる、ミサイル防空網、Pantsir – S1は、トゥーラ地域に配備された。モスクワで開催された、「北極圏と国家安全保障利益」に関する会議で、専門家らは、この戦略的に重要な地域におけるインフラ整備はロシアの優先課題の1つであると主張した。北極圏配備のロシア軍の編成は、2014年中に完了する予定である。

(3) 北極圏におけるロシアのプレゼンス強化には、経済的要因も大きい。経済面での主たる関心は、運輸施設の整備にある。地政学問題アカデミーのコンスタンチン・シブコフ副会長は、「現在の鉄道網は高い輸送能力を持っているが、増大しつつあるEUとアジア地域間の輸送需要に対応するには不十分である。北極海の海運に関しては、北極海の海氷の状況如何に関わりなく、北極海における通年の船舶航行を実現するためには、強力な砕氷船隊の建造が不可欠である。各国とも安価な通航路として北極海を利用することに熱心であり、既に中国は砕氷船隊の建造を始めている。複雑に入り組んだ北極海沿岸域を通航するためには、砕氷船による適切な先導支援と捜索救難サービスの整備が不可欠である」と指摘した。ロシアは、ヨーロッパからアジアへの最も人気のある航路になるかもしれない、北方航路の開発に大きな期待をかけている。国際海事機構 (IMO) が北極海の船舶航行に関する、「ポーラーコード」の採択準備を進めており、今後2年以内に、北極海の通航に関する規制が実現することになろう。「ポーラーコード」は、北緯72度以北の海域を通航する船舶とその乗組員に関する規制を定めるものである。現在に至るまで、北極海の通航を規制する国際的な規約がなかった。北極海の特殊な気象環境を考慮してない、アドリア海や地中海にも適用されている規則がそのまま使われてきたのである。

(4) 北極海を巡る関心は、ここ数年間で異常に高まってきている。北極海における明確な境界が今に至るまで確定されていないことが、それに拍車をかけている。北極海域は、ロシア、アメリカ、ノルウェー、カナダ及びデンマークが管轄権を主張する5つの海域に分かれている。更に、スウェーデン、フィンランド及びアイスランドの北極圏国に加えて、その他の国も、豊富な北極海の資源開発に期待をかけている。北極海を巡るゲームには、大きな実利が絡んでいる。従って、北極圏において最も積極的なプレイヤーが、北極圏における経済的そして地政学的影響力を確保することになろう。

記事参照:
Russia in Arctic dimension

1月27日「中国の空母建造計画、その安全保障上の含意」(The Diplomat, January 27, 2014)

台北在住の軍事問題専門のジャーナリスト、J. Michael Coleは、1月27日付けのWeb誌、 The Diplomat に、“Why China’s Carrier Program Makes (Some) Sense” と題する論説を寄稿し、中国の空母に対する関心は現代戦の心理的側面における戦略的な計算に基づいているとして、要旨以下のように論じている。

(1) 空母の第1の役割は、実利以上により心理的な意義にある。中国の内政プログラムが大国と見なされたいという中国の願望と直接結びついていることは疑いのないところであり、就中、空母は、例え戦力的には役立たないとしても、明白なシンボルとして役に立つ。また、旧Varyagを自力で改修し、空母「遼寧」として就役させたことは、中国のセルフイメージを大いに高めることになった。それだけに、国産空母の建造は、中国が今や自立した大国になったというメッセージを世界に発信する上で大いに役立つであろう。

(2) この点で重要となるキーワードは「力の投射 (power projection)」である。大国、小国を問わず、多くの国が空母を撃沈できる手段を保有し、あるいは容易に保有できる時代にもかかわらず、高価で、しかも結局は脆弱なプラットホームを建造し、配備するという決定は、矛盾しているように見えるかもしれない。純軍事的観点からは、同じ費用で、魚雷と巡航ミサイルを装備した、何百といった隻数でなくとも、多数の小型艦艇を建造する方が兵力を分散し、レーダー探知を逃れ、またその他の理由から遙かに賢明である、との批判もあろう。しかしながら、空母はもはや主たる戦闘手段と見なされないもしれないが、地域的な力の投射という面から見て、むしろ心理戦の手段としては有用なのである。そして、心理戦ではサイズもまた重要な要素となる。

(3) 心理戦における空母の有用性は、搭載戦闘機や爆撃機の拡大された行動範囲にあるというよりも(無視できない要素ではあるが)、むしろ、敵対国をして実際に攻撃させないようにする兵器、即ち大国の威嚇兵器としての効果にある。その理由は明快である。即ち、実際の戦闘段階に先行する対立抗争の過程で、相手国は、攻撃作戦の発動という一線を超えることによる利害を絶えず評価しなければならない。最初に攻撃する側は、こうした攻撃が相手側の迅速な対応を招くことを認識していなければならない。相手側の対応は、楽観的には相手側の降伏であるかもしれず、また最悪のシナリオとしては相手側の報復攻撃であるかもしれない。報復攻撃は通常、最初の攻撃に見合ったものか、あるいは多少とも段階的拡大を伴うものとなろう。従って、問題は、対応の程度ということになる。あらゆる武力行使の決定は対応を誘発するが故に、決定に当たっては、戦闘作戦を発動することの妥当性という心理的な抑制が常に働く。合理的な軍事、政治の意思決定者は、このことを念頭に、恐らく最初に付加価値の少ないプラットホームを攻撃するか、撃沈することで、相手側の対応を見ようとするであろう。この論理から、有人機より無人機 (UAV) を撃ち落とす決定の方が遙かに容易ということになる。何故なら、人間の殺傷は紛争の梯子を一段上げることになるからである。更に、攻撃目標には、人的損失以上に象徴的な価値が高い目標もある。攻撃目標の象徴的価値が高ければ高いほど、それを攻撃する場合の心理的葛藤も大きくなる。象徴的価値という点では、空母に勝るプラットホームはない。

(4) 中国との領有権紛争に直面している東南アジアの小国、例えば、中国より遙かに弱いある小国が、空母は保有していないが、空母を撃沈できる能力を持っている場合を考えてみよう。数週間に及ぶ威嚇的な武力の誇示と会談に失敗した後、中国海軍が係争海域への艦艇派遣を決定し、これに対して相手側も自国艦艇を派遣する。緊張が高まるにつれ、中国は空母を派遣し、当該海域内における様々な目標に対して搭載戦闘機や爆撃機を使用できる状況を作為すれば、この軍事的対峙は全く新しい次元に進むことになる。戦闘状況下で空母を撃沈することは最も合理的な選択であり、それによって中国の主たる攻撃能力を排除することになろう。しかしながら、未だ戦闘状況にない軍事的対峙の段階では、空母は大きな心理的威力を発揮する。例えある小国が空母を撃沈できるとしても、実際に空母を攻撃するに当たっての心理的障壁は非常に高いものとなろう。何故なら、空母に対する攻撃は、中国軍による相応の報復、この場合、全面戦争あるいは相手国の高価値目標に対する報復攻撃を想定せざるを得ず、紛争は一挙にエスカレートすることになろう。中国の紛争相手国は、こうした壊滅的な結果に直面するよりも、空母攻撃を自制し、行き詰まりの打開を目指して交渉するか、あるいは不利な条件を受け入れざるを得ないであろう。例え空母攻撃以外の中国軍に対する軍事作戦を発動するという、低い段階の選択肢をとっても、中国軍が空母からの空爆作戦を遂行する能力を保持していることから、そうした選択肢も戦争シナリオを誘発するだけであろう。

(5) 紛争の相手国が中国と同等の強さ、あるいはより強い場合、逆に中国の報復攻撃によるコストが遙かに大きくなるので、空母の有用性は減殺される。従って、中国の空母は、恐らくアメリカ、日本あるいはインドのような強力な国に対して誇示するつもりはないであろう。むしろ、現有の、そして将来の中国の空母は、恐らく空母撃沈能力を持たない国(例えばフィリピン)、あるいは(例えば台湾のように)そうした能力を持ってはいるが、壊滅的な中国軍の報復を誘発するような紛争の拡大を望んでいない国、こうした小国が関わる紛争シナリオにおいて活用されることになろう。何千人もの人命と共に、何十億ドルもの装備と国家の威信を海底に沈めることは、中国からの壊滅的な報復を引き出す最も確実な方法であろう。空母の象徴としての価値と心理的な価値に加えて、それを攻撃することに伴うコストは、結局のところ空母にとって最良の防御となっており、従って一定のシナリオの下で、空母が依然として重要な役割を果たし続ける所以でもある。

記事参照:
Why China’s Carrier Program Makes (Some) Sense

1月28日「南シナ海、初めての海洋科学掘削調査開始へ」(South China Morning Post, January 27, 2014)

南シナ海で初めての海洋科学掘削調査のために、アメリカの海洋掘削調査船、JOIDES Resolutionが1月28日、香港を出航する。この調査計画は中国が主導し、資金も提供する。31人の海洋科学者からなる国際調査チームは、62日間にわたって、南シナ海の3カ所で掘削調査する。採集サンプルは、南シナ海の地質構造を解明し、石油・天然ガス資源地図作成に資するために公開される。この掘削調査は、2008年に中国によって提案されたもので、「2013年-2023年国際深海科学掘削計画 (The 2013-2023 International Ocean Discovery Programme: IODP)」による最初の掘削調査となる。IODP加盟26カ国によって十数件の掘削調査計画が提出されたが、南シナ海の掘削提案は多数の賛成を得られなかった。しかし、調査計画費用の70%に当たる、600万ドルを負担するという、中国政府の気前の良さが決めてとなって、実現した。31人の科学者は、中国からの13人、アメリカからの9人及び台湾からの1人を含む、10カ国・地域から参加している。調査では、水深1,930メートルの海底の掘削調査が行われるが、これはIODPの掘削調査としては5番目の深さである。JOIDES Resolutionは、中国、フィリピン及びベトナムの領有権主張が重複する南シナ海の係争海域を航行することになる。マニラと北京は通行許可を与えているが、南西部の掘削調査に対するハノイからの回答は得られていない。許可がなければ、他の掘削海域を探すことになる。

記事参照:
Chinese-led international mission to explore South China Sea for oil
Photo: US scientific drill ship, JOIDES Resolution

1月30日「北東アジア4カ国の戦略的関係、アジアの安全と安定に対する影響―インド専門家論評」(South Asia Analysis Group, January 30, 2014)

インドのシンクタンク、South Asia Analysis GroupのDr. Subhash Kapilaは、1月30日付けの同シンクタンクのHPに、“Asian Security: Impact of the North East Asia Strategic Quadrilateral” と題する論説を掲載し、ロシア、日本、中国そしてアメリカによる北東アジアの戦略的な4カ国関係におけるパワープレーと勢力均衡ほど、アジアの安全と安定に対して影響を及ぼすものはないとして、インド人の視点から要旨以下のように論じている。

(1) 北東アジアにおけるパワープレーと勢力均衡運動は、戦略的にアジアの4分の1に止まるものではなく、東南アジアや南アジアに、簡潔に表現すれば「インド太平洋アジア (Indo Pacific Asia) 」全域に影響を与えている。それはまた、アジア大陸の中核地域全域にも影響を及ぼしている。北東アジアは過去10年、アメリカとロシアという最も支配的な2つの大国から戦略的に無視されてきた。この北東アジアにおける戦略的空白は、世界の2つの支配的な大国から阻止されることなく、中国の急速な軍事的台頭を可能にした。現在では、インド太平洋アジアに及ぶ「中国の脅威」の台頭を促した責任は、1991年のソ連崩壊後唯一の超大国であり世界の警察となったアメリカにある。アメリカは、気前よく中国の経済的台頭に貢献し、それが軍事的台頭を可能にし、中国によってアジア全体の安全保障が危険に晒されるようにしただけでなく、もう一方の正当なアジアの大国として日本やインドの台頭を促すという喫緊の課題を蔑ろにしてきた。

(2) 中国は、自らの並外れた軍事力を「ハード・パワー」として用いるのに十分だと感じており、最初は南シナ海でベトナムやフィリピンに対して、そして今や東シナ海で日本に対して用いてきた。南シナ海も東シナ海も、中国が紛争をエスカレートさせた結果、今やグローバルな「発火点」の1つとなってきた。同時に、中国は、インドの腰の引けた戦略的対応にも助けられ、インドとチベットの国境においても「ハード・パワー」を誇示し始めた。北東アジアにおける中国の軍事的台頭とその戦略的影響力の広がり、そしてその威嚇的誇示に対抗して、2009年にはアメリカがアジアへの戦略的な「軸足移動」を打ち出し、2012年にはロシアもその戦略的軸足をアジア太平洋に移すようになった。両国とも、アジア太平洋における中国の抑制のない軍事的冒険主義を阻止することを暗に目標としている。今日、東アジアの戦略環境は複雑で挑戦的である。ロシア、日本及びアメリカは、中国の過剰な威圧的姿勢に対応するため、その戦略的態勢を再評価し、再構築しようとしている。その中国は、超大国として台頭すること一点だけに固執し、米中間の新しい2国間のグローバルな戦略枠組みを構築しようとしており、残念なことに、アメリカは渋々これを是認してきた。

(3) 最近の日本は、東シナ海の領有権紛争を口実とした、中国による軍事的瀬戸際外交、威嚇そして挑発的な行動に断続的に直面している。こうした行動の背景には、日本に戦略的な後退を強いるとともに、北東アジアそしてアジア全体で中国の真の競争相手としての日本のイメージを損なおうとする、中国の思惑がある。日本は長年にわたって、中国の急激な軍事的台頭とその日本の安全保障に及ぼす影響について深刻に懸念してきた。特に、日本が軍事的に懸念しているのは、強力な中国海軍の登場によって日本の海洋における生命線が脅かされていることである。中国の脅威に対する日本の対応は3段構えである。日本は現在、特に海、空軍力の実質的な強化を進めている。日本は、その軍事力を南方へ再配備している。更に、日本の国家安全保障機構は強化され、より統合された機能を持つ新しい機構が整備された。北東アジアの戦略的なパワープレーにおいて注目すべきは、日本が、日米同盟関係を自国の安全保障の要としながらも、独自の自立的な防衛能力の構築を目指していることである。このことは恐らく、日本が中国と対決しなければならなくなった時における、アメリカの来援に対する信頼感に疑念が生じていることの反映と見られる。

(4) 2つの重要な出来事が、超大国の地位を達成しようとする中国の動きを牽制する、アメリカの軍事的信憑性に影を落としている。1つは、アメリカの中国に対する戦略的な宥和政策で、他のアジア諸国の首都では、これがアメリカの中国に対する卑屈な追従のように見える。2つ目は、中国が軍事的に優勢なアメリカとの戦略的、軍事的な力の差を益々縮めつつある結果、例えアメリカが中国と対決する政治的な意志を持っていたとしても、アメリカの中国に対する抑止力が低減しつつあることだ。アメリカのアジアへの戦略的な「軸足移動」は、米議会の対応如何に左右される人質となっており、それ故、アジア諸国の首都では、その信憑性は大幅に低下している。

(5) 最後に、北東アジアの4カ国のパワープレーを戦略的な利害得失の観点から見れば、中国もアメリカも大いなる敗者になるであろう。中国は、アジアの隣国に対する「ハード・パワー」戦略への転換がアジア各国による反中国対抗網の形成をもたらしたことから、最大の敗者になりつつある。中国は今日、戦略的に孤立している。アメリカも、「対中ヘッジ戦略」を継続しているが、アジア諸国の首都では、それは結局、戦略的に衰退する超大国として、アジアで「戦略的に凶暴 (‘strategically berserk’)」になりつつある中国に対抗するための必要なパワーを提供できない、アメリカの「対中宥和政策」の裏返しに等しいと見なされ、2番目の戦略的敗者となっている。今後数年間、北東アジアの4カ国の戦略的なパワープレーがどんなパターンになろうとも、確かなことは、戦略的パターンの結果はアジアの安全保障全体に重大な影響を与えるであろうということである。既に2つの変化が明確になってきている。1つは、中国が南シナ海の領有権紛争をエスカレートさせたことによって生まれたアジアにおける反中国対抗網の形成であり、もう1つは、日印の戦略的なグローバル・パートナーシップの強化である。

記事参照:
Asian Security: Impact of the North East Asia Strategic Quadrilateral

1月30日「米、北極戦略履行計画公表」(Reuters, January 30, 2014)

米大統領府は1月30日、北極戦略(2013年5月10日に公表)の履行計画を公表した。履行計画によれば、国防省は、衛星の打ち上げと海氷状況の予測分析手法の改善によって、海氷状況を予測する省庁間取り組みを主導する。商務省は、船舶の安全航行を確保するための北極海のアメリカ管轄海域における調査と海図作成、及び気候変動に対する沿岸域住民の環境改善に関する省庁間努力を調整する。更に、国務省は、ボーフォート海におけるカナダとの海洋境界画定について合意に向け努力する。本土安全保障省は、北極海域において行動する船舶に関する国際規範の作成努力を主導する。

記事参照:
White House releases plan to make Arctic shipping safer
See: Implementation Plan for The National Strategy for the Arctic Region
See also: The National Strategy for the Arctic Region

1月30日「豪印両国研究機関、インド洋の生態調査のためにバイオ・ロボット投入」(The Guardian, January 30, 2014)

オーストラリアの科学調査機関、「オーストラリア連邦科学産業研究機構 (Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation: CSIRO)」は、インドの「海洋学研究所 (The Indian National Institute of Oceanography: NIO)」と共同で、インド洋の海洋環境調査のために、バイオ・ロボットをインド洋に投入する。既に、これまで3,600本の自由漂流センサー、Argo floatが投入されている。新たに投入される、最新型のArgo floatは、インド洋内部の生態に関する情報を収集する。現在のArgo floatは、水面に浮上する前に、水深1,000メートルと2,000メートルの海中に数日間留まるが、最新型は、水深1,000メートルと2,000メートルの海中に潜航する前に、プランクトンなどを調査するために、200メートルの海中に長時間留まる。

記事参照:
Scientists to launch bio robots in Indian Ocean to study its ‘interior biology’