海洋情報旬報 2013年12月11日~20日

Contents

12月12日「中国、空母2隻建造へ」(Want ChinaTimes.com, December 12, 2013)

台湾メディア、Want ChinaTimes.comが12月12日付けで中国中央軍事委員会消息筋の情報として報じるところによれば、中国は、2014年から2016年の間に大連と上海で2隻の通常型空母の建造に着手するであろう。中国は、3個艦隊が空母を中核として任務が遂行できるようにするために、2020年までに3個空母戦闘群の保有を目指している。2隻のType 001A型国産空母は、「遼寧」の改良型となろう。また、スキージャンプ甲板装備になると見られる。消息筋によれば、海軍は既に、中国船舶重工業集団との間で、空母2隻の建造契約を結んでいるという。また、同筋によれば、中国は、次世代艦載機としてJ-15戦闘機をJ-31ステルス戦闘機に代替するかどうかを決定していないという。J-15より先に就役したJ-31は、「遼寧」の飛行甲板から発着艦可能である。

記事参照:
New aircraft carriers to be built in Dalian and Shanghai

12月12日「カナダ、北極点までの大陸棚外縁の延伸を目指す」(Daily Mail Online, December 12, 2013)

カナダは、北極点までの大陸棚外縁の延長を目指している。カナダは12月初め、国連海洋法条約に基づき、北極海を含む大西洋における大陸棚外縁の延伸を申請した。今回の申請面積は、約170万平方キロに及ぶ。ベアード外相は、最終的には北極点までの延伸を目指しており、それを裏付けるための科学調査が今後継続される、と述べている。カナダの北極専門家は、今後の調査は研究者、砕氷船と科学装備の活用にかかっているが、急げば1年以内に完了できる、と見ている。

カナダが今後申請する海域には、ロモノソフ海嶺が含まれることになろう。ロモノソフ海嶺は、カナダ最北のエルズミーア島とロシアの東シベリア沿岸の間に存在する、北極点を跨いで長さ1,800キロに及ぶ海嶺で、ロシア、カナダ及びデンマークが自国の大陸棚の一部であると主張している。従って、カナダが北極点までの大陸棚外縁の延伸を申請するためには、新たな科学的根拠と膨大な情報が求められる。カナダの北極専門家は、もし科学調査がカナダの主張を裏付けるものでなくても、ハーパー首相は北極点を諦めることはないであろうと見、「ハーパー首相がやろうとしていることは、北極点までのカナダの主権を誇示することである」と指摘している。大陸棚限界委員会の勧告は、拘束力を持つものではないが、今後長期に及ぶと見られる北極圏の境界画定を巡る関係各国間の交渉に影響を及ぼす。北極点周辺海域の水深は3,650メートルで、どの沿岸国の港からも数百カイリ以上離れており、年間3カ月は極夜であり、ほぼ通年海氷に覆われており、石油やガスの開発に適した海域ではない。

一方、カナダの動きに対抗して、ロシアのプーチン大統領は、北極海における軍事プレゼンスの強化を命じた。ロシアはすでに、1993年以来閉鎖されていたノボシビルスク諸島の空軍基地の再開するプロジェクトを完了した。

記事参照:
Canada’s audacious bid to own the ARCTIC: Country lays claim to region that could hold up to 15% of the world’s undiscovered oil
Map: Currently, under international law, Canada, Denmark, Norway, Russia and the U.S. – the five countries with territories near the Arctic Circle – are allotted 200 nautical miles from their northern coasts. The different regions are shown on this map.Graphic: This graphic shows how Canada wants to expand its borders in the Arctic

12月16日「2013年夏季の北極海の海氷、前年比50%増―欧州宇宙機関発表」(CBC News, December 16, 2013)

欧州宇宙機関 (ESA) は12月16日、2013年10月時点での北極海の海氷は前年比50%増であった、と発表した。ESAの極点観測衛星、Cryosatの観測データによれば、2013年10月の北極海の海氷は約9,000立方キロで、前年同期の6,000立方キロより3,000立方キロ多かった。Cryosatは、2010年に打ち上げられ、北極海の海氷の厚さを観測している。観測データによれば、2013年の海氷の増大部分の約90%は多年氷の増大によるもので、平均的厚さは前年比約20%増、約20センチ厚かった。

記事参照:
Arctic sea ice volume up 50%

12月19日「北方航路海氷面縮小、通航量増大」(Treehugger.com, December 19, 2013)

北方航路は、2007年に2隻の船舶が通航したのが最初で、2010年には10隻が、その後通航船舶が大幅に増え、2013年には、中国から欧州向けの船舶を含む、71隻の船舶が通航した。北方航路の主な貨物は、ディーゼル燃料油であった。通航量の大幅な増大は、海氷面の縮小による。北極海の海氷は、2012年にはアメリカ本土とメキシコを合わせたより大きい面積の海氷が溶解し、1979年から2000年の平均海氷面積の半分以下になった。2013年夏季の海氷の溶解面積は前年ほどではなかったが、それでも、過去35年間の衛星観測データでは、6番目に小さかった。北極海の気温は急速に温暖化しており、1960年以来、摂氏2度上昇している。UCLAの科学者は、2050年までの北極海は夏季にはアイスフリーになると予測しており、この時期までには北極点を通航する航路も現実化すると見ている。

記事参照:
As Sea Ice Shrinks, Arctic Shipping Options Expand
Data: Ships Crossing Arctic Northern Sea Route, 2007-2013

12月19日「無人機、カナダ北極圏を初飛行」(Northrop Grumman, News Release, December 19, 2013)

Northrop Grumman社の発表によれば、同社、NASA Dryden Flight Research Center及び国際科学者チームは12月19日、カナダ北極圏の環境データ収集の一環として、同社製造のNASA Global Hawk無人機による初めてのカナダ北極圏への飛行を成功させた。Global Hawkは、高細密画像カメラとともに、Uninhabited Aerial Vehicle Synthetic Aperture Radar (UAVSAR)を搭載しており、約21時間に及ぶ飛行中、地上の地図作成データの収集や北極圏の海氷の状況の観測を行った。これらのデータは、米加合同の科学者チームによる地形図の作成や海氷の研究に活用される。

記事参照:
Northrop Grumman, NASA Fly Global Hawk in Canadian Airspace for First Time to Study Canadian Arctic

12月19日「中国、珠江河口域でメタンハイドレート層発見」(Rigzone, Reuters, December 19, 2013)

中国の国土資源部は12月19日、中国南部の珠江河口域でメタンハイドレート層を発見したと発表した。発表によれば、メタンハイドレート層は珠江河口域で55平方キロに及び、埋蔵量は1,000~1,500億立米の天然ガスに相当するという。「燃える氷」として知られるこのエネルギー資源は、専門家によれば、商業ベースの開発生産が可能になるのは2030年以降と見られている。国土資源部によれば、珠江河口域に23本の試掘井を掘り、4カ月近い探査の結果、純度の高いメタンハイドレートのサンプル収集に成功した。水深600~1,000メートルの海底下に厚さ15~30メートルのメタンハイドレート層が2層になって存在している。中国は、アメリカ、日本及びインドに次いで、4番目のメタンハイドレートのサンプル収集に成功した国となった。

記事参照:
China Finds Major Gas Hydrate Reserve in South China Sea

12月20日「ロシア、北極海で石油生産開始」(gCaptain, Reuters, December 20, 2013)

ロシアのGazpromが12月20日に発表したところによれば、同社は、ペチョラ海のロシア初の北極海油田、Prirazlomnoyeで石油生産を開始した。GazpromのCEOは声明で、「我々は、ロシア北極海開発のパイオニアとなった」と語った。生産開始は当初予定よりほぼ10年遅れた。環境保護派は掘削・貯蔵プラットホームの一部が30年前のものであり、環境に危険であると非難するなど、論議を呼んだプロジェクトである。グリーピースの活動家が逮捕されたのも、ここであった。Gazpromは、2014年に日産1万2,000バレルの当初生産量を見込んでおり、2021年までに日産12万バレルの生産を見込んでいる。

記事参照:
Gazprom Starts Production at Russia’s First Offshore Arctic Oil Field Amid Controversy and Delays
Photo: The Prirazlomnaya platform is now pumping oil from under the sea.