海洋情報旬報 2013年11月1日~10日

Contents

11月1日「ソマリア海賊に支払われた身代金の流れ―世界銀行報告書」(World Bank, November 1, 2013)

世界銀行は11月1日、“Pirate Trails: Tracking the Illicit Financial Flows from Piracy off the Horn of Africa” と題する129頁の報告書を公表した。それによれば、2005年4月から2012年12月までの間、ソマリア沿岸沖と「アフリカの角」海域で、179隻の船舶がソマリアの海賊によってハイジャックされ、4億米ドル以上の身代金が支払われたと見積もっている。この報告書は、国際刑事警察機構 (ICPO)、国連薬物犯罪事務所 (UNODC) 及び世界銀行による研究の成果で、ジブチ、エチオピア、ケニア、セイシェル及びソマリアを対象としており、30人以上の海賊ビジネス関係者へのインタビューが行われた。報告書は、① 身代金支払いのためにどれだけの資金が集められたか、② この資金がどのようにして誰に配分されたか、③ そしてこれらの資金がどのように使われたか、を分析し、「誰がこの資金の流れの中で利益を得たか」を解明することを狙いとしている。以下は、主な内容である。

(1) Pirate Financiers:海賊ネットワークの中心人物で、海賊ビジネスへの投資家であり、受益者で、“The Money Kingpins” といわれる。彼らは、個人あるいはグループとして、平均して身代金総額の30~50%を受け取る。

(2) Low Level Pirates:海賊ビジネスの “The Foot Soldiers” で、彼らの典型的な受取額は、ハイジャック船1隻当たり3万~7万5,000ドルで、平均的な身代金支払額のわずか0.01~0.025%に過ぎない。最初にハイジャック船に乗り込んだ海賊には最大1万ドルの特別手当が支払われている。

(3) 村落共同体は、食糧、機材補修サービス及びソマリアの合法ドラッグであるチャット(興奮剤)を含む、物資やサービスを海賊に提供する。

Pirate Financiersは、資金を(洗滌のために)合法的ビジネスに投資する一方で、犯罪活動にも環流させている。犯罪活動には、海賊行為への再投資、不法移民支援、薬物密輸、あるいはソマリア内の民兵の強化などが含まれる。また、特にケニアにおけるチャットの取引にも使われている。

記事参照:
Pirate Trails: Tracking the Illicit Financial Flows from Piracy off the Horn of Africa
World Bank, November 1, 2013
Infographic: The piracy Money Cycle
Full Report

11月5日「台湾、大平島のインフラ整備へ」(Taipei Times, November 6, 2013)

台湾の交通部国道新設工程局は11月5日、台湾漁民の安全確保のために、2014年から南シナ海の台湾占拠島嶼、大平島でインフラ整備を始める、と発表した。工程局の陳議標局長によれば、このプロジェクトには新しい桟橋の建設と国防部が建設した滑走路の補修が含まれ、工事は2014年から始められ、2015年末までに完了を予定している。工費は1億1,100万米ドルと見込まれている。大平島は台湾から1,600キロも離れており、陳議標局長によれば、工費の約60%が台湾からの資材の輸送費になるという。国防部は、C-130輸送機が常時着陸できる滑走路を必要としており、補修工事には排水設備の建設が含まれている。今回のインフラ整備の重点は桟橋の新設にあり、陳議標局長によれば、桟橋が完成すれば、2,000トン級の艦船が直接接岸できるようになる。

記事参照:
Itu Aba reconstruction to start next year: official

11月5日「P-Trap、非致死性海賊接近防止装備」(Offshore-technology.com, November 5, 2013)

オランダの海事安全専門家、Westmarkは、11月5日から8日までロッテルダムで開催される、The Maritime Europort Tradeshowで、自らデザインした非致死性海賊接近防止装備、P-Trapを展示する。P-Trapは、船首の両側から最大10メートルまで伸びたブームから長く細い綱を何本も海面直下に垂れ流し、海賊船の接近を阻止するためのセーフティーゾーンを構成する、非致死性海賊接近防止装備である。ブームの伸長方式には、スライド式と旋回方式の2種類あり、海賊多発海域に入る前に乗組員によって容易に準備できる。P-Trapは航行船舶の速度に影響を与えることがなく、船長は自船の最高速度を維持できる。

記事参照:
Non-Lethal Physical Anti-Boarding Devices Prove Cost-Effective in Preventing Piracy Activity
See also Presentation slide: P-Trap, non-lethal self-protection measure by Westmark

11月5日「EU艦隊、海賊襲撃グループの海洋への進出阻止」(EUNAVFOR, Somalia, November 7, 2013)

EU艦隊所属のドイツ海軍フリゲート、FGS Niedersachsenは11月5日、海賊襲撃グループの出動を阻止した。EU艦隊の発表によれば、FGS Niedersachsenは、ソマリア沿岸で、2隻の小型ボートを曳航した母船を発見した。母船には、10人の海賊容疑者が乗っており、また海賊襲撃グループの典型的な装備である、10本以上の燃料タンクと2本の長い梯子を積んでいた。発見された海賊グループは、梯子を海中に投棄して、海岸に向かって逃亡した。海岸には、約80人の人々が事態の推移を見守っており、その内、何人かは母船を引き上げるために海中に入った。FGS Niedersachsenは、監視を続けた。

翌、11月6日には、サウジアラビアからモザンビークに向けて航行していた、香港籍船のケミカルタンカーが、高速小型ボートに乗った5人の海賊容疑者から自動火器で銃撃された。該船に添乗していた民間武装警備チームが襲撃を撃退し、双方に負傷者はなかったが、EU艦隊のタラント司令官 (RADM Bob Tarrant) は、「ソマリアの海賊が依然として、船舶を襲撃するために洋上に出てし、身代金目的で乗組員を人質に取る意図と能力を持っていることは明白である。こうした海賊襲撃事案は、船舶の乗組員やその家族を悲惨な目に遭わせるだけでなく、世界の海運を不安定化させることになる。各国海軍の海賊対処部隊と海運業界は、海賊襲撃事案を成功させないために、引き続き厳重に警戒すべきである」と強調した。

記事参照:
EU Naval Force: Piracy Continues – EU Warship Prevents Suspect Pirates Going To Sea And A Merchant Ship is Attacked by Pirates In The Indian Ocean
Photo
1: During her counter piracy patrol, FGS Niedersachsen located 2 small vessels – a whaler towing a skiff, close to the Somali coast.
2: Suspected pirates dropping ladders into the sea
3: People from the beach wading out to assist the suspect pirates to drag their boats back on to the beach

11月5日「ロシア、中国周辺諸国との関係強化」(The Diplomat, November 5, 2013)

Web誌、The Diplomatの副編集長、Zachary Keckは、11月5日付けのThe Diplomatに、“To Hedge Its Bets, Russia Is Encircling China” と題する論説を寄稿し、ロシアは中国とその周辺の日本、北朝鮮、韓国、ベトナム及びインドなどの諸国との関係をともに強化する全方位外交を展開しており、このことは中国の影響力に対するヘッジを構築することに狙いがあるように思われるとして、要旨以下のように論じている。

(1) 最近の中国との関係では、ロシアのメドベージェフ首相の訪中時における李克強首相との会談がある。この会談の最も重要な成果はエネルギー協力であった。メドベージェフ首相は今後10年間、ロシアの国営石油会社ロスネフチによる石油供給計画を明らかにした。両国はまた、中国の石油精製所の共同建設と、原子力協力の継続にも合意した。 中国外交部によると、メドベージェフ首相は会議において、ロ中関係が名実ともに包括的な戦略的協力関係となり、ロシアは今後さらなる中国との貿易、投資の拡大を予定していると述べた。

(2) 両国の歴史的な競争関係を考えると、このようなロ中関係の急発展は、多くの観察者を戸惑わせるものであった。しかし、ロシアは、中国の周辺諸国との二国間関係を拡大することで、中国の影響力に対してバランスをとろうとしている。例えば、11月初め、日本との間で、外務大臣と国防(防衛)大臣による初の2+2会合を開催し、テロと海賊対処等のための合同海軍演習の実施と2+2会合の毎年開催に合意した。

(3) ロシアはまた、韓国と北朝鮮の間においても微妙なバランスを取りながら連携を強化している。ロシア外務省は9月、合計110億ドルに及ぶ旧ソ連時代の対北朝鮮債務の90パーセントを免除すると発表した。残りの10億ドルは、「援助のための債務」プログラムとして再編し、今後20年をかけて徐々に返済される。ロシア外務省は、今回の合意を、ロシアと北朝鮮間の開発および金融関係の新しい段階の始まり、と述べている。今後、北朝鮮が求めているパイプライン、鉄道、電気等の開発プロジェクトの進捗が容易になることが期待されている。ロシアは10月に、ロシアのハサンと再開発された北朝鮮の羅津港を結ぶ54キロの鉄道建設が完了したと発表した。プーチン大統領は、この鉄道が最終的には韓国と北朝鮮を結び、シベリア横断鉄道へ繋がることを目指している。これは事実上、ロシアがヨーロッパと朝鮮半島、そしてアジアの他地域を結ぶ通過点となることを意味する。この鉄道による輸送は、費用は高いものの、スエズ運河を経由する海上輸送よりも約30日間も短縮できることになろう。既に、ロシアを経由してドイツと中国を結ぶ鉄道プロジェクトは完成している。ロシアはまた、北朝鮮を経由して韓国に至る天然ガスパイプラインの建設を提唱しており、ロシアと韓国は10月に、パイプライン建設のための交渉を再開した。

(4) プーチン大統領はまた、長い間緊密な関係を保って来た、中国の隣国、ベトナムとも関係を強化している。1979年に、鄧小平時代の中国はベトナムに侵攻したが、その小さくない理由の1つに、ロシアとベトナムの関係強化によって中国が包囲されるとの恐れがあった。ロシアは、多くの分野で中国との協力関係を強める一方で、再びベトナムを、中国パワーとの均衡を図る潜在的な手段と見なし始めた。アメリカのロシア専門家、ステファン・ブランク (Dr. Stephen Blank) が指摘するように、「ロシアは、中国の影響力拡大に、静かに、しかし目に見える形で対抗しており、そして、この目標追求のために、ベトナムとの軍事的、政治的関係の深化を加速させている」のである。

(5) ロシアはインドとも強固な関係を維持している。インドのシン首相は10月にモスクワを訪問し、プーチン大統領と会談した。会談後に発表された共同声明では、ロケット、ミサイル及び海軍技術と兵器システムの分野における両国間の協力を強化すると述べられている。シン首相のロシア訪問直後、両国は、大隊レベルでは初となる合同軍事演習を実施した。

記事参照:
To Hedge Its Bets, Russia Is Encircling China

11月5日「緊張続く東シナ海―オースリン論評」(The Wall Street Journal, November. 5, 2013)

米シンクタンク、The American Enterprise Institute (AEI) のオースリン (Michael Auslin) 研究員は、11月5日付けの米紙、The Wall Street Journalに、“Tensions Are Escalating in The East China Sea” と題する論説を寄稿し、尖閣諸島を巡る緊張の危険性について、要旨以下の諸点を指摘している。

(1) 東シナ海は、世界で初めて無人機による戦争が始まる場所になるかもしれない。日中両国が領土問題で速やかに解決策を見出さなければ、軍事衝突へと向かうことになろう。しかも、この危険な事態において、国内外で痛手を負ったアメリカは、何の役割も果たせていない。その結果、アジアは、近年の記憶の中でどの時期よりも、最も紛争が起こりやすい状況になっている。中国は9月、この海域に無人偵察機を飛ばした。これに対して、日本は、尖閣諸島の領空から退去することを拒否した全ての無人偵察機を撃ち落とすと言明した。北京は、無人偵察機に対する如何なる攻撃も戦争行為と見なされるであろう、と主張している。

(2) この紛争は、軍事技術の進展によって加速されている。中国は、日本の南西諸島の間を抜けて公海に海軍部隊を展開させ、近海の戦略上の要衝に早期警戒管制機を飛ばし、また無人偵察機を多用することによって、過去20年間にわたり開発した(そしてアメリカからも盗み出した)軍事力を誇示している。一方、日本の自衛隊も数年間の沈滞から脱して強化されつつある。今や、他の国々ではほとんど持っていない、無人軍用システムに関する交戦規則を考え出さなければならない状況にある。中国の台頭は、サイバー攻撃から宇宙における(衛星攻撃兵器のような)能力に至るまで、従来の軍事ドクトリンに挑戦している。アメリカ、ロシア、インドやその他の国は、先進諸国と対峙する中国軍の運用能力、軍事ドクトリン及びその軍事的自信を知る手掛かりとして、東シナ海における対決を注視している。中国と日本の対決のダイナミズムは、地域紛争は力を通じてのみ解決されるとの懸念を、アジア全域に高めている。このことは特に、中国との領土紛争に直面するアジアの小国を神経質にしている。

(3) ワシントンは、領土問題で東京にも北京にも与することは避けたいと望んでいるかもしれないが、戦争になれば、特にアメリカの日本との同盟条約の存在が米軍(米国のクレディビリティーは言うまでもない)を危険に晒さらすことになり、それこそ誰の利益にもならない。結局、この危機は、いずれかの形で東アジアの勢力均衡を変えることになろう。即ち、日本が1 世代にわたり支配して来た領土を明け渡すことになるのか、あるいは中国が引き下がり、現行の国際秩序に対して以前にも増して反感を募らせることになるのか、といった形で。少なくとも、ケリー国務長官は、その交渉好きのエネルギーをアジアに振り向けるべき時にきている。日中間に未解決の問題が山積していることから、集中的な危機外交は、日中両国を覚醒させ、問題の重大性を認識させられるようになるかもしれない。

(4) それ以上に重要なことがある。日米両国が同盟関係にあるということは、中国が一線を越えるか、あるいは日本を領土防衛で軍事力行使に追い込むようなことになれば、直ちにアメリカの軍事支援が発動されることになるということを、ワシントンは明確にしておく必要があるということである。一方で、東京が中国への対応でやり過ぎないように、如何なる事態が安保条約の相互防衛規定の発動につながるかを明確にしておくために、日米両国は非公式に協議する必要がある。ワシントン、北京そして東京、3国の首都における放任主義的アプローチはいずれも失敗した。技術が経験を凌駕してしまった今日、東シナ海情勢が悪化して手のつけられない事態にならないよう、昔ながらの外交の出番が来た。

記事参照:
Tensions Are Escalating in The East China Sea

11月6日「ベトナム、対米軍事関係の強化へ―セイヤー論評」(The Diplomat, November 6, 2013)

オーストラリアのThe University of New South Wales のカール・セイヤー (Carl Thayer) 名誉教授は、11月6日付のWeb誌、The Diplomatに、“Vietnam Gradually Warms Up to US Military” と題する論説を寄稿し、ベトナムはアメリカとの間で徐々に軍事関係を強化しつつあるとして、要旨以下のように述べている。

(1) アメリカとベトナムは10月にワシントンで、2つの重要な高級レベルの年次安全保障会議を開催した。1つは10月1日に開催された6回目の政治、安全保障及び防衛対話で、アメリカ側代表は国務省のケリー政治軍事問題担当国務次官補代理、ベトナム側はハ・キム・ゴック外務次官で、政治、安全保障及び防衛問題等の広範囲な問題が話し合われた。もう1つは4回目の防衛政策対話で、10月28、29日の両日ワシントンで開催された。アメリカ側代表はシン南アジア・東南アジア担当国防省次官補代理で、ベトナム側は国防副大臣、グエン・カイ・ビン中将で、2011年9月に調印された相互の防衛協力のための了解覚書 (MOU)で取り上げられた5つの優先すべき分野、国防省高官レベルの定期的対話、海洋安全保障、捜索救難、人道的支援と災害救済、及び平和維持について話し合われた。米越防衛対話はベトナム戦争時代の遺産を引きずっている。ベトナムは、戦争中行方不明となった米軍兵士(MIA)の捜索の進捗を発表するために、これらの機会を利用している。一方、ワシントンは、ベトナム戦争時代の不発弾および枯れ葉剤の副作用の処理に対する継続的な関与を再確認するために、防衛対話をその機会として利用している。

(2) 米越両国の最高レベルの対話は、2013年7月にオバマ大統領がベトナムのチュオン・タン・サング主席とホワイトハウスで会談したことで実現した。両首脳は会談で、米越間の包括的パートナーシップを形成することで、「両国関係の新たな段階」を拓くことに合意した。9項目からなる共同声明の中で、第6項目では戦争遺産問題を、第7項目では防衛および安全保障の協力を規定している。そして両大統領は、2011年のMOU の履行状況に満足の意を示し、政治、安全保障及び防衛政策対話を引き続き継続することに合意した。将来の協力に関しては、両大統領が、ベトナムの捜索救難、災害対処機能を強化するとともに、今後、安全保障協力の範囲を広げていくことを決定した。前出の第4回目の防衛政策対話では、米越両国は、両国海軍間に加えて、両国の国防大学及び関係機関との間の協力を強化していくことに合意した。両国の沿岸警備隊(ベトナムは以前の海洋警察)間の協力に関するMOUも調印された。

(3) 米越間の漸進的な政治、安全保障及び防衛対話は、米中両国との等しくバランスのとれた関係を維持しようとする、ベトナムの用心深いアプローチを反映している。例えば、ベトナムは現在まで、米軍との軍事演習の実施を控えている。また、ベトナムは、米海軍艦艇の寄港を1年に1回とし、カムラン湾への米海軍艦艇の寄港を認めていない。更に、ベトナムは、パネッタ長官が2012年6月に求めた、ハノイの米国大使館に防衛協力事務所を開設する要請を未だに承認していない。一方、アメリカは、2012年6月にグエン首相と国防大臣がパネッタ長官に直接要請したにもかかわらず、ベトナムへの武器売却を依然、制限している。アメリカは、武器の国際的移転に関する規定に基づいて、ベトナムに対して、ケース・バイ・ケースで殺傷兵器でない軍事物品と役務を提供できる。しかしながら、殺傷兵器や夜間暗視ゴーグルのような殺傷兵器ではないが特殊物品の売却は、禁止されている。

(4) 最近、ベトナムは、両国間の戦略的信頼を高めるために、イニシアチブをとってきた。2013年8月のブルネイでの拡大ASEAN国防相会議 (ADMM) の際、ベトナムの国防大臣は、ヘーゲル米国防長官と会談し、2014年のベトナム訪問を招請し、ヘーゲル国防長官はこれを受け入れた。2003年の合意では、両国は、3年毎の国防大臣(長官)の相互訪問に合意した。この合意に基づいて、ベトナムの国防大臣は2003年と2009年にワシントンを訪れ、米国防長官は2006年と2012年にハノイを訪れた。2014年のヘーゲル国防長官のハノイ訪問は、この3年に1回のサイクルが終了し、今後はより頻繁な国防大臣間の接触の始まりになるかもしれない。

記事参照:
Vietnam Gradually Warms Up to US Military

11月6日「ロシア地理学会、北極海調査で海軍と協力」(Russia and India Report, November 6, 2013)

ロシア地理学会のキリル・チスチャコフ副会長は11月6日、同学会とロシア海軍が世界の海洋調査に関する相互協力協定に調印したが、双方の協力の最も重要な項目は北極海調査になろう、と語った。同副会長によれば、海軍のハイテク能力の提供が協力の要で、例えば、深海潜水艇は最大6,000メートルまでの潜水調査が可能である。同副会長は、北極海の大陸棚の開発の可能性は大陸棚そのものに関する信頼できるデータの入手のみならず、北極海の海底の地層と北極海全域の地形に関するデータの収集にかかっており、そのためには現地調査が不可欠である、と指摘している。その他の重要な協力項目としては北極海の気象調査がある。北極海の資源開発には、長期の気象予測が必要となる。

記事参照:
Russian Geographical Society and Russia’s Navy to cooperate in Arctic studies

11月6日「ロシア、世界最大の原子力砕氷船建造開始」(Barents Observer, November 6, 2013)

ロシアの原子力砕氷船運航船社、Atomflotのビャチェスラフ・ルクシャ会長は11月6日、サンクトペテルブルグのBaltic Shipyardで行われた、世界最大の原子力砕氷船の起工式に出席した。この砕氷船、LK60型は、船名は未定だが、2基の原子炉を備え、全長173メートル、幅34メートルで、現有原子力砕氷船では最大の、50 let Pobedyより、14メートル長く、4メートル幅広である。建造費は11億ユーロで、2017年の運航開始を目指しており、北方航路の先導船として通年使用が可能である。同型船2隻の建造計画も発表された。LK60型は、総出力60メガワットで、厚さ8.5~10.8メートルの砕氷が可能である。

記事参照:
Russia lays down world’s largest nuclear icebreaker
Illustration: The current sketch for the next generation of nuclear icebreakers, which has been named the LK60-class

11月7日「米中の『新しいタイプの大国関係』に必要な課題―クローニン論評」(PacNet, Pacific Forum CSIS, November 7, 2013)

米シンクタンク、Center for a New American Securityのパトリック・クローニン (Dr. Patrick M. Cronin) 上席顧問は、11月7日付けのPacNet (Pacific Forum) に、 “The Path to a New Type of Great Power Relations” と題する論説を寄稿し、中国が言うアメリカとの「新たなタイプの大国関係」は中国外交の要石だが、内容は曖昧であり、従って米中両国は安全保障課題に取り組むことで、衝突よりも協力から多くのものが得られることを認めるような関係を目指すべきとして、要旨以下のように論じている。

(1) アメリカとの新しい大国関係を構築することは、中国の対外政策の要石である。アメリカから見て、この概念は北京の大気のように霞んでおり、曖昧である。これを厳格に定義しようとすればするほど、不満が高まる。例えば、両国関係の安定という面で見れば、この概念は、両国関係がゼロサム・ゲーム的な戦略的抗争関係にスライドすることを阻む試みであるかもしれない。しかしながら、別の解釈では、新しいタイプの大国関係とは、アメリカと中国を完全に対等に位置付けようとする試みと見ることもできる。そして3つ目の解釈としては、アメリカの合理的な政策策定者には受け入れ難いかもしれないが、この概念は中身もなく、また明確な目標もない、単に「アド・ホック」なものに過ぎないというものである。 多くの挑戦に晒され、国内の秩序と安定に関心が向いている中国指導者にとって、この概念は、平和共存理論をほんの少し焼き直しただけのものかもしれない。現在の中国の指導者は、短期的な環境を心配し、大戦略を構想する余裕を持っていない。

(2) 新しいタイプの大国関係は、様々なレベルで解釈できるが故に、実用性がないわけではない。米中両国は、地域そして世界の平和と繁栄を促進するために、安定した協調的な関係を構築できる戦略的枠組みを必要としている。世界の超大国と再び台頭しつつある大国との関係が先行き不透明であることは、極めて重大である。米中関係が協調的であるか、あるいは対立的であるか、その関係如何がアジア太平洋地域そして世界に影響を及ぼすであろう。新しいタイプの大国関係は、よく言えば願望、そして悪く言えば、中国の台頭を遅らせる動きを阻止することを狙った煙幕であると見ることもできることから、米中両国は、先ず困難な安全保障上の課題について進展を図る方策を見出す必要がある。

(3) 安全保障上の課題については、以下の3 つの措置がとられるべきである。

a.第1に、米中両国は、海洋におけるリスク軽減措置について、交渉を促進する必要がある。中国は、アメリカが「修正主義 (“revisionist”)」の同盟国、日本を「諭し (“discipline”)」、東シナ海での領有権紛争の存在を認めさせるかどうかを見極めようとしている。中国がそのエネルギーを、寛大な経済的インセンチブの提供などを通じて、隣国との関係改善に向けるようになれば、中国の意図に対する周辺諸国の不安は取り除かれよう。日本やフィリピンを孤立させよるようなやり方は、役に立たないし、必ず失敗する。主権を巡る紛争はすぐには解決しない。こうした解決困難な対立に対しては、全ての関係当事国が武力の行使による現状変更を自制するように仕向けることが肝要である。

b.第2に、米中両国は、核拡散の脅威を阻止することである。北朝鮮は、アジアの平和にとって最も深刻な脅威である。北京もワシントンも、6カ国協議の再開を提案するだけではだめで、一層の働きかけが必要である。例えば、もし北朝鮮が4回目の核実験を行おうとしたら、米中両国は、その軍事力を動員するとともに、北朝鮮が核兵器を配備したり、輸出したりすることを阻止するための国際的な包囲網を構築する用意がなければならない。ペルシャ湾についても同様のことが言える。イランの核拡散が多くの不安定な湾岸諸国をして核兵器の取得に走らせかねず、湾岸石油への依存を強める中国が見たくないような状況が現出するということを、中国は認識しなければならない。

c.第3に、米中両国は、戦略的対話を重ね、サイバー空間や宇宙空間といった領域を含めた、戦略的抗争を限定する新しい方策を見出さなければならない。アメリカが核戦力を更に削減しようとしているのに対して、中国は、米国との核戦力のパリティーを求めて大幅増強を目論んでいるので、米中両国は、誤算や核軍拡競争をいかに回避するかについて真剣に協議することが緊要である。

(4) こうした措置によって、米中両国の異なる文明は完全に調和するわけでも、また新しいタイプの大国関係が構築されるわけでもない。しかし、米中2大国が紛争ではなく協調によってより一層多くのものを得ることができると認めるような米中関係の構築には一歩近づくかもしれない。

記事参照:
The Path to a New Type of Great Power Relations

11月7日「米運輸省海事局、LNG燃料化プロジェクトに資金援助」(gCaptain, November 7, 2013)

米運輸省海事局 (MARAD) は11月7日、海運業界におけるLNG燃料化を促進するために、2つのプロジェクトに140万ドルの資金を援助すると発表した。MARADによれば、この資金は、船舶のLNG燃料化に関する情報収集とともに、LNG燃料の貯蔵施設などに関する課題を調査するために使用される。MARADによれば、最初のプロジェクトは、Horizon Linesに90万ドルを援助して、同船社の米国籍コンテナ船、MV Horizon Spirit (2,437TEU) をLNG燃料と通常燃料の両用に改修するプロジェクトで、該船はロングビーチとホノルル間を航行して、燃料効率と排気ガスを測定する。改修は外国の造船所で行われ、2015年後半までの完了を見込んでいる。もう1つのプロジェクトは、ノルウェーの船級協会、DNV (Det Norske Veritas) 傘下の米機関が実施する、LNG燃料の貯蔵や船舶への搭載に必要な貯蔵所や関連インフラに関する問題点などの研究で、50万ドルが援助される。この研究は、2014年春までの完了を予定している。

記事参照:
MARAD to Fund Two LNG Projects for $1.4 Million
Photo: MV Horizon Spirit

11月7日「London Gateway港、1番船受け入れ」(gCaptain, Bloomberg, November 7, 2013)

ドバイの世界的港湾管理会社、DP World (Dubai Ports World) が運営する、ロンドン東方25マイルに位置する深水港、London Gateway港に、11月7日、1番船が入港した。リビア籍船のコンテナ船、MV MOL Caledon (4,500TEU) は、果物や自動車部品などを積んで、6本建設される最初の埠頭に接岸した。DP Worldは、24億ドルを投資して、Royal Dutch Shellの製油所跡地に同港を建設した。同港のコンテナ処理能力は、年間350万TEUを見込んでいる。DP Worldによれば、埠頭の長さは、1万8,000TEUを超える世界最大の400メートル級コンテナ船でも接岸可能である。

記事参照:
London Gateway Opens With Arrival of First Ship
Photo: MOL Caledon docked at DP World’s London Gateway ‘super port’, November 7, 2013.

11月9日「米海軍多目的強襲揚陸艦、造船所海上公試完了」(MarinLog.com, November 14, 2013)

米ミシシッピー州バスカグーラのHuntington Ingalls IndustriesのIngalls造船所で建造中の米海軍多目的強襲揚陸艦、USS America (LHA 6) は11月9日、造船所によるメキシコ湾での海上公試を成功裡に終了し、寄港した。Ingallsのテスト及び公試チームは、11月4日からドック・トライアルを開始し、その後5日間洋上で各種試験を実施し、試験項目は200を超えた。海軍の水陸両用戦プログラム管理事務所のプログラムマネージャー、マーサー大佐は、「艦は洋上で良い性能を示し、それは予想以上であった。造船所の公試としての完成度は適正であった。結果は2014年に行われる受領試験の成功と引き渡しに向けて、明確な道程を示してくれるものであった」と述べた。

LHA 6は、老朽化するTarawa級を更新するために設計され、「大甲板」装備の次世代揚陸艦の1番艦である。この新型艦は、搭載航空機のメンテナンス能力が強化され、燃料積載量が増強され、予備品と支援機材用の保管能力が大幅に強化され、海兵隊の航空戦闘部隊の将来所要に対応できるように設計されたものである。LHA 6は、造船所による海上公試で、ガスタービンと電気動力の組み合わせを推進力とする推進システムの運用と必要とされる関連試験をすべて実施した。他に錨の作動状況、航空運用および戦闘システムの評価試験を実施した。Ingallsの試験及び公試担当のシェンク副社長は、「LHA 6は、戦闘艦としての耐航性を証明した。試験及び公試チームは、艦が出航する前日のドック・トライアルを含めて、全ての試験をスケジュール通りに実施した」と述べた。同艦は、2014年1月末に予定されている受領のための海上公試運転で今回と同じ試験を行い、運用上の性能を米海軍の検査・検証委員会 (The U.S. Navy’s Board of Inspection and Survey: INSURV) に対し実証するため、現在準備をしている。

USS America (LHA 6) は、艦隊へ編入されれば、人道的支援、災害救難、海洋安全保障、海賊対策および他の地上軍に航空支援を実施する作戦を含む任務全般において、戦略的海兵隊遠征部隊を陸岸へ揚陸する遠征攻撃グループの旗艦になる。LHA 6型は、長さ844フィート(約257メートル)、幅106フィート(約32メートル)で、排水量は4万4,971トンである。ガスタービン推進システムは、20ノット以上の速力での航行を可能とし、個艦乗組員1,059人(内士官65名)及び1,687名の兵員を輸送できる。LHA 6型LHAは、海兵隊用ヘリコプター、MV-22オスプレイ・チルトローター航空機及びF-35B統合攻撃戦闘機を搭載するとともに、海兵隊の遠征部隊を輸送する能力を持つ。

記事参照:
LHA 6 completes builder’s sea trials
Photo: The amphibious assault ship America (LHA 6) returned to Ingalls Shipbuilding on November 9, 2013, following successful builder’s sea trials in the Gulf of Mexico.

11月10日「デンマーク海軍戦闘艦、海賊容疑者を拘束」(MarineLog.com, November 11, 2013)

NATO艦隊に所属するデンマーク海軍指揮・支援艦、HDMS Esburn Snareは11月10日、インド洋で海賊容疑者9人を拘束した。海賊容疑者は9日に、インドのグラジャート州シッカ港から南アフリカのモーゼル・ベイに向け航行中であった、デンマークの船社、Torm A/S所有の精製品タンカー、MT Torm Kansasを襲撃した。Torm A/Sによれば、海賊は、小型ボートで該船に接近し、銃撃した。該船は、海賊対処マニュアル、BMP4に基づいて対処行動をとるとともに、添乗の民間武装警備員が武器使用規則に基づいて警告射撃を行った。現場海域に最も近くにいた、HDMS Esburn Snareは、NATO艦隊、The Ocean Shield Task Force (CTF-508) 司令官の指令で現場海域に急行し、10日朝、母船と小型ボートを発見し、艦載ヘリに支援された臨検チームが、降伏した海賊容疑者9人を拘束し同艦に収容した。

記事参照:
Armed guards deter pirate attack on Torm tanker
Photo: Pirates surrender to team from HDMS Esburn Snare
MT Torm Kansas: