海洋情報旬報 2013年10月11日~20日

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10月11日「英ロ、北方航路の航行安全強化で協力」(WorldCargoNews.com, October 11, 2013)

英・アイルランドのThe General Lighthouse Authorities (GLA) とロシアのThe Internavigation Research and Technical Centre (IRTC) はこのほど、北方航路の航行安全の強化で協力すると発表した。協力の重点は、相互運用可能で耐久性のある「位置・航行・時間調整 (position, navigational and timing: PNT)」技術の開発、そして英国とアイルランドのeLoran システムとロシアのeChayaka システムの標準化に置かれる。これらのシステムは、超長波の低周波差動信号を発信し、衛星測位システム (Global Navigation Satellite System: GNSS) をバックアップする。GNSSは、北極海では航行船舶が極点に近づくにつれて衛星データの利用が難しくなり、また気象条件にも左右されるため、船舶の安全で効率的な航行に供し得る耐久性のある新たな航法技術が不可欠である。英国は南部と東部の沿岸に、7カ所のeLoran局を設置し、2014年夏までに運用可能になる。GLAとIRTCは相互協力に熱心で、IRTC所長のツァリョーフ博士は、eLoran システムとeChayaka システムの相互情報交換と技術協力のための技術分野が多くある、と語っている。

記事参照:
Arctic navigation on the radar

10月13日「インド沿岸警備隊、米民間警備会社所有船舶を拘束」(The Economic Times, October 13, 2013)

インド沿岸警備隊は10月13日、インド領海内で武器弾薬を携行する許可証を保持していなかったとして、米民間警備会社、AdvanFortが運航するシェラレオネ籍船、Seaman Guard Ohioとその乗組員10人、武装警備員25人の計35人を拘束したと発表した。沿岸警備隊によれば、該船は10月11日に停船を命じられ、インド南部のトゥーティコリン港に拘束されており、必要書類が提示されるまで、該船を拘束するとしている。AdvanFort は、海賊対処を専門とする米バージニア州に拠点を置く民間警備会社である。35人の国籍はインド、英国、エストニア及びウクライナである。

インドの南端は、アジアから欧州向けの主要海上輸送路に近く、トゥーティコリン港に近いスリランカは民間武装警備員の主要な乗船地となっている。

記事参照:
India seizes armed ‘anti-piracy’ ship owned by US security firm
Photo: AdvanFort’s Seaman Guard Ohio

10月15日「保険料と氷海、依然北方航路の障害要因」(gCaptain, Reuters, October 15, 2013)

気候変動により、北方航路が啓開されたものの、この航路が通航船舶で混雑することは当分考えられない。これまで、石炭、ディーゼル油及び天然ガスといった貨物がこの航路経由で輸送されたが、低速航行と厳しい環境規制は、北方航路の即時利用を妨げる要因である。更に砕氷船によるエスコートは、必須の要件である。また、通常の商業保険よりも高額な保険料も障害要因の1つである。航行可能船舶も少なく、支援施設や港湾インフラも不備で、保険料を適正水準に保つに十分な程、リスクが軽減されていない。

更に、コンテナ輸送にとって、北方航路経由は商業的な可能性が低いとする見方もある。その理由は、1つには、コンテナによる消費財の輸送は今後数十年の間、中国中心の貿易パターンからアフリカや南アメリカを含む他の地域に発展していくと見られるからである。海運の専門家は、全体的に中国中心の貿易パターンがよりグルーバルなパターンに変われば変わる程、北極ルートの魅力が薄れていくであろう、と見ている。ノルウェー船級協会によれば、北極海経由の輸送に最も適切なのは、環境汚染の可能性が少ない、石炭のようなドライバルク貨物で、石油輸送やコンテナ輸送は流出の際に甚大な環境汚染をもたらすため、これらの輸送は極めて限定的になるであろう、と予測している。

記事参照:
Insurance and Icebergs Still Present Huge Obstacles for Arctic Shipping

10月15日「CTF-151、海賊容疑者拘束」(The Combined Maritime Forces, October 18, 2013)

合同海上部隊 (CMF) 隷下の第151合同任務部隊 (CTF-151) は10月15日、ソマリアの海賊襲撃グループを拘束し、乗っていた小型ボート2隻を破壊した。この海賊グループは、インド洋で2隻の船舶を襲撃した容疑で追跡されていた。CTF-151によれば、英海軍艦隊補給艦、RFA Fort Victoria座乗のCTF-151司令部は、オーストラリア海軍フリゲート、HMAS Melbourne、韓国海軍駆逐艦、「王建」、EU艦隊旗艦オランダ海軍両用揚陸艦、HMLMS Johan de Witt、及びセイシェル基地のルクセンブルグ派遣海上哨戒機による追跡作戦を調整した。この海賊グループは、10月11日に香港籍船のタンカー、MT Island Splendorを襲撃し、添乗していた民間武装警備員と銃火を交え、その3日後、スペイン漁船を襲撃した容疑で追跡されていた。HMAS Melbourneの搭載ヘリがソマリア東方沖約500カイリの海域でこのグループを捉え、同艦を誘導した。同艦の臨検チームが小型ボートを臨検し、9人の海賊容疑者を拘束し、2隻のボートと積んでいた襲撃用装備を破壊した。CTF-151の司令官、ブランドン英海軍准将は、「これは素晴らしい成果であった。多国籍部隊が、迅速に位置を特定し、ソマリアの海賊グループを拘束した。これは、海賊行為がもはや見返りを期待できないことを示すメッセージとなった」と語った。その上で、ブランドン准将は、海運業界に対して、海賊の襲撃を阻止するために、海賊対処マニュアル、Best Maritime Practice (BMP) に従って引き続き警戒を怠らないよう、警告した。

記事参照:
CTF 151 Apprehends Somali Pirates and Destroys their Skiffs
Photo: The pirate skiff being fired upon

10月16日「フィリピン人船員、EU籍船から排除の可能性―EC関係筋」(Inquirer.Net, October 17, 2013)

欧州委員会(EC)関係筋が10月16日に明らかにしたところによれば、マニラが船員教育に関する問題点を改善しない限り、フィリピン人船員が間もなくEU籍船から排除される可能性がある。この関係筋は匿名を条件に、「既に刻限が刻まれ始めている」とし、EU籍船からのフィリピン人船員の排除は2012年に実施されるべきであったが、フィリピン政府の要請で実施を延期してきた、と語った。ECの海事安全基準の監視を補佐する「欧州海上保安機関 (The European Maritime Safety Agency: EMSA)」は、フィリピンの海事教育機関における質の低さに懸念を表明してきた。フィリピンは世界最多の船員供給国の1つで、28カ国のEU船籍に乗船しているフィリピン人船員は約10万人に達する。

記事参照:
EU official on possible ban of Filipino seafarers: Clock is ticking

10月17日「中国の『微笑外交』、新たな南東アジア戦略の兆候」(CSIS, October 17, 2013)

米シンクタンク、The Center for Strategic and International Studies (CSIS) のPhuong Nguyen研究員は、“China’s Charm Offensive Signals a New Strategic Era in Southeast Asia” と題する10月17日付のCSISレポートで、最近の習近平国家主席と李克強首相の東南アジア歴訪で提示した、貿易とインフラ投資の分野における中国の提案を、南東アジアに対する新たな「微笑外交 (“charm offensive”)」であるとして、要旨以下のように述べている。

(1) 最近終了した中国の習近平国家主席と李克強首相による東南アジアの訪問は、新しい「微笑外交」の徴候を示しており、主要なメディアの注目を引きつけている。習主席は、マレーシア及びインドネシアのジャカルタとアジア太平洋経済協力会議 (APEC) に参加のためバリを訪問した。李首相は同じ時期、東南アジア首脳会議に参加するためにブルネイを訪れた後、タイとベトナムを訪問した。この間、オバマ米大統領は、連邦政府閉鎖のためにアジア諸国歴訪を中止した。中国のリーダー達がこれを外交上の好機と見たことは議論の余地がないが、今回の両首脳の訪問は、近年中国とASEAN諸国間で軋轢を生んだ、特に南シナ海の領有権問題を巡る北京の政策上の過失を修正する努力であった。両首脳の訪問は、対ASEAN政策を展開する上で経済的影響力を活用することについて、北京の高まる自信を誇示するものであった。両首脳は、東南アジアにとって非常に重要な2つの分野、即ち、貿易とインフラ整備に焦点を当て、高い外交上の実力を実証した。両首脳の訪問全体を通じたメッセージは、APECで習主席が強調した、中国とアジア太平洋地域は一層の繁栄のために相互に必要としている、ということであった。

(2) バリで習主席は、中国・ASEAN貿易を2012年の4,000億ドルから、2020年には1兆ドルに増加させるとの目標を設定した。習主席は、さらにアジアのインフラ整備開発のための銀行設立を提言し、これが実現すれば、域内各国にとって日米が支配するアジア開発銀行以外の多様な選択肢ができる、と述べた。ブルネイで李首相は、貿易自由化スキームでASEAN10カ国と他の6カ国を含む、「東アジア地域包括的経済パートナーシップ (The Regional Comprehensive Economic Partnership: RCEP)」について、2015年までに交渉を終える約束を再確認した。両首脳は、全ての訪問国で、当該国との野心的な貿易目標額を掲げ、その見返りとして中国・ASEAN間の道路と鉄道による連結網を構築する大規模なインフラ整備に中国企業を参加させるためのロビー活動を展開した。域内各国のリーダー達は、各国政府が近年、経済成長を維持し、より多くの投資を引きつけようと努力していることもあって、中国のメッセージに対する高い受容性を示した。

(3) 北京の新しい「微笑外交」のタイミングは重要な意味がある。中国は今回、拡大したASEAN経済が長期的な成長の可能性を妨げかねない構造的問題に直面している時に、ドアをノックしてきた。中国は今や、1980年代と1990年代のように輸出市場で東南アジア諸国の競争相手ではなく、むしろASEAN諸国が進出を望む市場なのである。北京には、その外交攻勢が成果を上げると確信するだけの十分な理由がある。ASEANは、より高い経済成長を達成するために、より整備されたインフラを必要としており、北京は、それを提供する用意があるからである。一方で、北京は、南シナ海の領有権問題を仲裁裁判所に提訴し、中国を怒らせたフィリピンを無視することで、隣国との関係において鞭とニンジンを使い分ける意図を明らかにした。ASEAN諸国の訪問の最終行程で、李首相は、ベトナムとの間で、貿易、インフラ整備及び海洋安全保障問題に関して、幾つかの協定に調印した。

(4) これらの進展は、地域覇権を争うワシントンと北京の間のゼロサム・ゲームの一部と見なすべきではない。しかしながら、ワシントンにとって、オバマ大統領のアジア歴訪中止にもかかわらず、アジアにおけるアメリカの再均衡化政策が依然有効であり、上手くいっていることをアジア諸国に再保証するためには、オバマ大統領が2014年の早い時期にアジア諸国を歴訪することが重要である。その際、大統領が財界代表団を同行させることができなければ、大統領は、米国企業が優位に立つ、通信、石油・天然ガス探査、エネルギー・プロジェクト、港湾・空港の設計建設などの分野における貿易及び投資を促進するため、プリツカー商務長官を含む主要閣僚が企業幹部を同行して主要なASEAN諸国を訪問できるようにすべきである。この10年の間、アジアで、そしてその中心にある東南アジアで、貿易と地政学的関係を巡って、異なった将来像が見られることになろう。北京の新しい「微笑外交」はそのゲームにおける最新の動きであり、従ってアメリカは、中国の見事なイニシアチブに過剰に反応することなく、戦略的な対応を提示しなければならない。

記事参照:
China’s Charm Offensive Signals a New Strategic Era in Southeast Asia

10月18日「ソマリア沖の海賊襲撃事案、再び活性化か―専門家警告」(ThaiShipper.com, October 18, 2013)

ソマリア沖で10月11日と13日にVLCCと漁船が襲撃されたことに関連して、これらの事案がこの海域における海賊襲撃事案の再活性化の兆しと見られ、しかも海賊が武装警備員の警告射撃に応戦する用意があることを示していると、専門家は海賊多発海域を航行する船舶に対して警告している。10月11日朝、ソマリアのホブヨ沖230カイリの海域を航行中の香港籍船のVLCC、MT Island Splendor (29万6,900DWT) にそれぞれ5人と3人の海賊が乗った小型ボート2隻が接近し、VLCCに添乗の武装警備員がボートに先ず警告弾を発射し、その後至近距離に迫ったボートに警告射撃を行ったが、海賊はその警告を無視し該船に接近し続け、2度目の警告射撃で停止したが、海賊は自動小銃を発射しつつ逃亡した。13日朝の漁船の襲撃はソマリア沖約560カイリでの事案で、2隻の小型ボートの乗った海賊に襲撃されたとされるが、詳細は不明である。

C-Level Maritime RisksのMichael Frodlは、VLCCの事案について、ソマリアの海賊が武装警備員を恐れなくなってきており、一部の海賊は応戦するようになっている、と警告している。また海上治安サイト、Oceanus LiveのGlen Forbesは、VLCC襲撃事案を海賊の襲撃戦術の変化を画するものと見、海賊が武装警備員による反撃を予想し、より本格的な戦闘態勢で攻撃を始めた可能性を示唆する、と警告している。Dryad Maritime Intelligence のIan Millenは、今回の襲撃事案は南西モンスーンが終わって以降初めての海賊による発砲事案であり、しかもソマリア沖220カイリの海域で2隻の小型ボートが活動していることはより大型の母船と協同していることを示している、と指摘している。Millenは、4日間で2つの事案が生起していることはソマリアの海賊のビジネスモデルが崩壊していないことを示している、と警告している。

記事参照:
New attacks show Somali pirates are less impressed with guards and some will put up a real fight

10月18日「北方航路の今後―関水IMO事務局長インタビュー」(The Maritime Executive, October 18, 2013)

国際海事機構 (IMO) の関水康司事務局長はこのほど、サンクトペテルブルグで行われた、ロシア船級協会 (The Russian Maritime Register of Shipping) の100周年記念式典に出席した際、ロシアのIAA Port Newsとのインタビューに応じ、北方航路の今後の見通しなどについて、要旨以下のように述べた。

(1) 北方航路の安全性の問題は、IMOとして最も重視している。今後数年間において北方航路の運航が急増する見通しである。そのため、IMOは、北方航路の安全運航に関する国際的な基準の策定に尽力している。私は今夏、北方航路を体験航海したが(8月15日から5日間)、北方航路の状況は印象的であった。航路の最大90%近くが解氷域で、海氷に覆われた海域は全行程1,700カイリの内、10%に過ぎなかった。このことは明らかに、夏季における北方航路の運航が今後増大する可能性を示している。もし砕氷船によるエスコートが提供されるなら、ロシアからアジア諸国向けの鉱石や石油を積載した船舶ばかりでなく、アジアからヨーロッパ向けの運航隻数も増加するであろう。カナダ沿岸に沿う北西航路と北方航路を比較するなら、2つの航路は大きく異なる。依然として海氷が多いカナダ沿岸航路は、夏季でも航行には困難が伴う。カナダ政府の厳しい規制もあり、今後5年間を見通せば、北方航路が主要なルートとなろう。

(2) IMOではロシアの専門家の参加を得てThe Polar Codeを策定中だが、ロシアの専門家は、長年の北極海での運航経験と知識を提供している。2014年末までにThe Polar Codeを採択できるよう準備しており、The Polar Codeは、2016年中か、あるいは2017年初までには施行されることになろう。

記事参照:
IMO Sec-Gen Discusses Arctic Shipping

10月18日「ロシア、北方航路の海図整備」(Strategy Page, October 18, 2013)

ロシアはこのほど、2012年の海軍による北極海沿岸域の調査で、フランツヨーゼフランド群島で新島を発見した、と発表した。これは雪と氷に覆われた1つの島が嵐と潮流の変化によって2つに分かれたことによるもので、この発見は、ロシアが進めている広範な北方航路の詳細な海図作成努力の産物である。他国は、北方航路に関する詳細な情報提供については、ロシアに依存している。ロシアは北方航路の利用を奨励しており、ヨーロッパへの物産の主要輸出国である中国にとって、ヨーロッパへの最短コースである北方航路は魅力的である。北方航路が信頼できるルートになれば、中国は、ヨーロッパ向け輸出の最大15%程度が利用できると期待している。

この2年間、ロシアは、ムルマンスクからベーリング海峡に至る5,600キロに及ぶ北方沿岸域を、通常は空から定期的に哨戒してきた。哨戒活動の強化は、北方沿岸域で増大しつつある石油・ガス田を護るためでもあるが、北方航路を利用する船舶のためのより精確な海図作成のためでもある。この過程で、航行の妨げとなる岩礁の正確な位置などが特定される。2015年までには、海軍艦艇による定期的な哨戒活動が開始される。ロシアは、夏季における航路沿いの海域の水上艦艇による哨戒の必要性を認識しており、冬季には原潜による海中の哨戒も続けられる。

記事参照:
Russia Finds A New Island In The Arctic

10月18日「太平洋の未来を築く―ケリー米国務長官」(Los Angeles Times, October 18, 2013)

アメリカのケリー国務長官は、10月18日付の米紙、Los Angeles Timesに、“John Kerry on forging a Pacific future” と題する論説を寄稿し、「アメリカ人の一部にアジアからの撤退を求める動きがでているが、こういう時こそ、グローバルに協力して挑戦に立ち向かうことが重要だ」として、要旨以下のように述べている。

(1) 国務長官としてこれまで3回のアジア諸国訪問を通じて、私は、アメリカが太平洋パワーとして太平洋の未来を築くために継続した努力をしなければならないと、より深く確信するに至った。しかし、未来を構築することは数々の挑戦に立ち向かうことであり、そのためには、我々の同盟国との協力そして敵対勢力との粘り強い交渉を必要とする。

(2) そのような挑戦の内、幾つかは国家安全保障に直接的に関わるものである。我々は、日本、韓国そしてその他の国々と共に、核保有国である北朝鮮の脅威や高まりつつあるサイバー諜報活動の脅威に対処しなければならない。我々は、南シナ海における領有権問題を平和的に解決するために、アジア太平洋地域の国々と協力しなければならない。そして我々は、アジア太平洋地域の国々の経済が、アメリカの商品やサービスに対して広く門戸を開放するように、貿易関係を発展させていかなければならない。アジア歴訪を通じて、私は、何十年も前に我々が構築した安全保障態勢を強化することから始め、そして今後何十年にもわたってアメリカの労働者に利益をもたらす経済的パートナーシップの強化を目指す、アメリカのアジア関与の実態に直に関わることができた。

(3) もちろん、まだ障害はある。その1つは、北朝鮮に対して、国際社会の規範に従うよう説得する外交的手段を発見することである。厄介な難問を解決する努力の一環として、ヘーゲル国防長官と私は10月3日、日本との間で、すでに深い同盟関係をさらに強化する歴史的な合意文書に調印した。この合意によって両国は、北朝鮮の脅威と同時に、高まりつつある海洋安全保障やサイバー諜報活動に対して、共同で対処することになる。その他の挑戦は、海洋における航行の自由と通商の自由を確保するために、シーレーンの安全を護ることである。日本との合意文書に調印してから数日の間に、アメリカは、ブルネイでのASEAN諸国との会合で、南シナ海やその他の死活的に重要な海域において緊張が高まっているこの時期に、意思疎通の不足や計算違いによる不測の事態を防止するために、明確な行動規範を作成するための協同努力を提案した。

(4) 安定と繁栄には、安全保障以上のものが必要である。環太平洋パートナーシップ (TPP) がオバマ大統領のアジア経済政策の要石になっているのは、1つには経済成長と経済的革新を域内各国と共有しようとすることにある。TPPは、アジア太平洋地域とアメリカにおいて経済成長を促し、新たな雇用創出を加速させることになろう。インドネシアのバリ島では、世界経済の40%を占める12カ国の合意に向けた進展があった。

(5) センシチブな地域的問題が依然存在しているが、我々は、相互の違いを率直に認め、アジア太平洋地域への関与を継続するというメッセージを発信し続けることで、我々の目標達成が可能になるのだ。再均衡化というアジアにおける我々の外交政策の優先課題は、完了したわけでも、またそのための努力が阻害されたわけでもない。それは、日々の長期にわたる努力であって、短期間に測られるものでもない。しかし、前進し続けており、それ故にこそ、アメリカとアジアは共に強くなっていくのである。

記事参照:
John Kerry on forging a Pacific future