海洋情報旬報 2013年9月21日~30日

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9月22日「マースク・ラインTriple-Eシリーズ・コンテナ船2番船、コペンハーゲン到着」(gCaptain, September 24, 2013)

マースク・ラインの最新で世界最大の1万8,270TEUコンテナ船、Triple-Eシリーズの2番船、MV Majestic Maerskは9月22日、処女航海の途上、コペンハーゲンに到着した。9月25日に同港で、正式な命名式典が実施される。マースク・ラインは、Triple-Eシリーズを韓国の大宇造船海洋に20隻発注している。なお、3番船、MV Mary Maerskは9月16日、韓国の釜山を出港し、処女航海に出発している。

記事参照:
World’s Largest Ship on Display in Copenhagen
Photo: Majestic Maersk, the second vessel in Maersk Line’s new Triple-E class, seen in Copenhagen Monday, September 23, 2013. Image courtesy Jon 

♦♦ Coffee Break ♦♦
「マースクTriple-Eシリーズ・コンテナ船、レゴに」(gCaptain, September 30, 2013)

デンマークの玩具メーカー、Brickipediaは、2014年1月に、マースク・ラインの世界最大のコンテナ船、Triple-Eシリーズのレゴを発売する。ブリックは1,518個で、金色のプロペラ・ブレード、ブリック組み立てのツイン・エンジン、機関室透視窓、脱着可能なライフボート、コンテナ、クレーンアームなどが含まれている。価格は、149.99米ドルである。

記事参照:
Lego Unveils MaerskLineTriple-EBuilding Block Kit
Image credit: Lego Group via Facebook
Check out the Lego Triple-E designer video below:
http://gcaptain.com/lego-unveils-maersk-line-triple-e-block-kit/

9月22~23日「デンマーク船、北西航路を初めて横断」(The Globe and Mail, September 25, and September 26, 2013)

デンマークのNordic Bulk Carriers社所有でパナマ籍船の耐氷ばら積船、MV Nordic Orion (7万5,603DWT) は、9月22日から23日にかけて、ばら積み船として北西航路を初めて横断し、バフィン湾に入った。該船は石炭を積載し、9月6日にカナダのバンクーバーを出航し、フィンランドに向かっていた。該船は、10月初めにフィンランドのポリ (Pori) 港に到着予定である(該船は2010年に、ロシア船以外では初めて、北方航路を通航し、ノルウェーから中国に航行したことがある)。北西航路を利用することで、パナマ運河経由より距離にして1,000カイリ強短縮できる上に、パナマ運河を通航するより石炭を25%余り多く積載することができる。

ばら積船が初めて北西航路を横断したことで、大型貨物船による商業海運航路としての可能性が拓けたが、一方で北西航路の主権とインフラ整備を巡る論議は、現実的かつ緊要なものとなった。問題は、カナダが、適切な環境保全措置を講じながら、通航船舶をモニターし、また緊急事態が発生した時、支援できるかということである。ハーパー政権は、2007年の北方戦略で、6~8隻の砕氷船とそれらの運航を支える深水港の建設を公約した。しかしながら、砕氷船建造は財政難で遅れており、深水港建設も、2013年になって小規模な給油ステーションに縮小された。2006年に公表された、捜索救難機6機の購入も行き詰まっている。更に、北西航路の位置づけを巡る論議も高まろう。多くの国は、北西航路をカナダの内水ではなく、国際航路と見なしているからである。

記事参照:
Ship crosses Northwest Passage, sails into history
The Northwest Passage and Canada’s unfulfilled northern potential
Photo: MV Nordic Orion
Infographic: Navigating the Northwest Passage

9月24日「アジアの海賊、電子機器や現金強奪が狙い」(The Jakarta Post, September 24, 2013)

マレーシア海洋法令執行庁 (MMEA) によれば、マレーシア領海付近を航行する船舶を襲撃する海賊は、今のところ、乗組員のコンピューター、携帯電話、現金、私物などを強奪するのが目的だという。また、インドネシア領海における事案も、ほとんどが航行中の船舶を狙う強盗である。一方で、MMEAの指揮・統制・通信・情報局長は、ソマリアの海賊事案のように状況が悪化するのを避けるために注意深く対処する必要がある、と警告している。現在、スールー・スラウェシ海における越境犯罪取締りのためにインドネシア、マレーシア及びフィリピンの各沿岸警備隊の間で、そしてマラッカ海峡の哨戒のためにタイ、シンガポール、マレーシア及びインドネシアの間で、それぞれ協力体制が構築されている。マレーシアとインドネシアは、両国国境沿いにおける海洋安全維持のための定期的な措置を講じることで合意している。これは、海賊と船舶に対する武装強盗に備えたものである。また、両国は、アジア海上保安機関長官級会合 (The Heads of Asian Coast Guard Meeting) などを通じて、でアジア各国の沿岸警備隊と定期的に話し合いを行っている。

記事参照:
Asian pirates now want electronics, cash

9月25日「中国海洋石油、LNG受け入れ能力強化へ」(Rigzone.com, Reuters, September 25, 2013)

中国海洋石油総公司(CNOOC)の幹部が9月25日に明らかにしたところによれば、CNOOCは、2015年までにLNG受け入れターミナルを5カ所新設し、現在の4カ所、受け入れ能力、年間1,870万トンから、3,500万~4,000万トンに倍増する計画である。中国は、世界最大のエネルギー消費国として、石炭による排気ガスを削減するとともに、輸入石油への依存を減らすために、エネルギー消費に占めるLNGの比率を、2015年までに現在の5%から8%に増やすことを目指している。CNOOCは、2013年末までに、天津の浮体式貯蔵再ガス化設備 (Floating Storage Regasification Unit: FSRU) と珠海の通常ターミナルを稼働させる。他の3カ所のターミナルも既に建設中である。

記事参照:
China’s CNOOC Plans to Double LNG Import Capacity by 2015

9月25日「台湾、米から対潜哨戒機1番機受領」(Channel News Asia, AFP, September 25, 2013)

台湾国防部は9月25日、対中防衛力強化措置の一環として、アメリカから購入する対潜哨戒機、P-3C Orion 12機の内、最初の1機を受領した、と発表した。1番機は、台湾南部の屏東県の基地に到着した。国防部によれば、残りの11機は2015年までに受領する計画である。P-3C飛行隊は、旧式化したS-2T対潜哨戒機を代替する。

記事参照:
Taiwan receives first US anti-submarine aircraft

9月26日「パナマ運河庁、北朝鮮船に罰金」(gCaptain, Reuters, September 26, 2013)

パナマ運河庁は9月26日、キューバ製武器の密輸容疑で7月に拘束した北朝鮮船、「清川江」に対して、最高100万米ドルの罰金を課した。運河庁長官によれば、この罰金は積載貨物を正確に申告しなかったこと、そしてその結果、運河と作業員を危険に曝したことに対するもので、また「最高」とは今後の交渉の余地があることを示唆しているという。平壌は「外交手段」による解決を求めているが、該船と35人の乗組員は依然、パナマの大西洋側で拘束されたままである。該船の船主はまた、運河を通航する前に、65万ドルの保証金を支払わなければならない。武器の密輸については、キューバは、北朝鮮で修理しその後キューバに戻されることになっていた、2機のMiG戦闘機と15基のMiG戦闘機エンジンを含む、240トンの「旧式武器」を北朝鮮に売却したことを認めた。

記事参照:
North Korean Shipowner Fined By Panama Canal Authority

9月27日「Austal USA、米海軍に沿岸戦闘艦引き渡し」(Marine Log.com, September 29, 2013)

米アラバマ州モービルのAustal USAは9月27日、Independence級沿岸戦闘艦、USS Coronado (LCS 4)を米海軍に引き渡した。同艦は、12隻建造予定のIndependence級の2番艦である。Austal USAは現在、4隻のIndependence級沿岸戦闘艦、USS Jackson (LCS 6)、USS Montgomery (LCS 8)、USS Gabrielle Giffords (LCS 10)、USS Omaha (LCS 12)を建造中で、USS Jackson (LCS 6)は2013年末までに進水予定である。

記事参照:
Austal USA delivers LCS 4

9月28日「イラン、潜水艦国産能力を強化」(The Diplomat, September 28, 2013)

Web誌、The DiplomatのZachary Keck副編集長は、9月28日付の同誌に、“Eyeing Gulf Shipping, Iran’s Mass Producing Submarines” と題する論説を掲載し、イランは多様な潜水艦の国産能力を着実に高めているとして、要旨以下のように述べている。

(1) カスピ海にあるイラン軍第4海軍管区のハキミ (Khordad Hakimi) 司令官は、イランのFars News Agencyとのインタビューで、イランは小型潜水艦を大量生産しており、中型潜水艦の建造も開始した、と述べている。イランが初めて潜水艦取得に関心を持ったのは、1980年代後半のイラン・イラク戦争中に起きた「タンカー戦争」において多くの艦船が米海軍に沈められてからのことである。米海軍に正面から挑むには無力であることを悟ったイラン海軍は、非対称戦略を追求した。潜水艦は、その機雷敷設能力、対艦巡航ミサイル運用能力から、他の高速戦闘艇や小型艦艇と共に、飽和攻撃の一翼を担うことになった。

(2) 潜水艦については、イランは、1980年代終わりから1990年代初めにかけて、877EKM Kilo級ディーゼル推進潜水艦3隻をロシアから購入した。イランは、1隻当たり6億米ドルを支払ったといわれる。これら潜水艦は1992年~1996年に就役し、Tareq級潜水艦と名付けられてイラン海軍に配備された。イランのTareq級潜水艦は、排水量3,900トン、対潜水艦、対水上艦用としてロシアで設計された。6門の533ミリ魚雷発射管を備え、18本の魚雷と24個の機雷を搭載できる。実際には、イランがこの潜水艦をペルシャ湾内で運用するには、制約が多い。水深が浅いため、湾内の約3分の1の海域でしか運用できない。しかも海水の塩分濃度が高いため、探知されることなく他の艦船を捕捉するために、パッシブソナーを使う能力も制約される。

(3) イランは2007年11月、Ghadir級ミゼット潜水艦の1番艦を進水させた。同級潜水艦は現在、湾岸におけるイランの潜水艦艦隊の中核となっている。イランはこの潜水艦を国産と主張しているが、多くの専門家の間では、北朝鮮のYono級潜水艦の派生型と見られている。イランは現在、120トン級のこの潜水艦を20隻余運用していると見られ、前出ハキミ司令官の発言は、この潜水艦を指していると考えられる。Ghadir級潜水艦は、2門の533ミリ魚雷発射管を装備し、機雷敷設能力も持っている。また、この潜水艦は、特殊部隊を敵地に輸送し、侵入させるためにも使用できる。

(4) では、イランはこの潜水艦をどのように使うのか。米海軍第5艦隊に将校として20年も勤めた、Institute for Study of Warのハーマー (Christopher Harmer) 上席研究員は、西側の基準では、Ghadir級潜水艦は「とても小さく、短距離しか航行できず、最低限の能力しかない」が、それにもかかわらず、この潜水艦はイランの目的に合致しているとして、「この潜水艦は、海底の砂地に待機する。これが、イランのGhadir級潜水艦の運用法である。即ち、港から出て、浅いペルシャ湾の海底に着底し、砂地で待機し、そして目標が来るのを待つ」と説明している。ハーマーによれば、このような運用方法によって、イランは、米海軍の強力な対潜水艦能力をかいくぐることができるという。ハーマーは、「イランの潜水艦の性能はとても悪い。しかし、もしイランがこれらの潜水艦をペルシャ湾に投入し、着底して待機させれば、これらの潜水艦の捕捉は非常に困難になる。潜水艦が動かない限り、周辺の雑音より大きな音を出すことはない。もし周辺の雑音より大きな音を出さなければ、アクティブソナーを使うしか捕捉する方法はない。米海軍の最新のアクティブソナーが着底している静止目標を捕捉できる範囲は、2,500ヤード(2.3キロ弱)程度である」と指摘している。従って、イランの潜水艦を捕捉するには、相手が魚雷を発射しない限り、かなり接近しなければならない。もし魚雷を発射したとすれば、即、位置を捕捉され、潜水艦は反撃にさらされる。こうしたことから、ハーマーは、イランの潜水艦運用ドクトリンは抑止に力点を置いたもので、もし抑止に失敗すれば、イランの潜水艦は事実上「自爆攻撃用の船」になる、と指摘している。

(5) 世界の原油輸送の20%が通航するホルムズ海峡の海運を脅かすイランの潜水艦能力は、イランの抑止力を基本とした軍事ドクトリンを構成する3本柱の1本である。ミゼット潜水艦は、ホルムズ海峡におけるイランの脅威の信憑性をアメリカとその同盟国に確信させる上で、大きな役割を果たしている。特にGhadir級潜水艦は、海峡における海運を攪乱させる効果的な手段になり得る。イランは、機雷を敷設するだけでなく(イランは機雷敷設用の艦艇を他にも保有)、商船を攻撃するために予め配備しておいた潜水艦によって、ホルムズ海峡とペルシャ湾の狭いシーレーンと限定されたルートを利用して通商破壊することもできる。しかしながら、この戦術は、潜水艦を「自爆攻撃用の船」として使う必要があり、予想される米海軍の反撃によって、おそらく短期間しか継続できないであろう。

記事参照:
Eyeing Gulf Shipping, Iran’s Mass Producing Submarines

9月30日「パナマ運河拡張、LPGタンカー・ブームの終わりの始まり?」(gCaptain, Bloomberg, September 30, 2013)

オスロのシップブローカー、Joachim Grieg & Co.によれば、パナマ運河が拡張されれば、輸送航路が大幅に短縮されることから、アメリカからアジア諸国向けのLPG価格が安くなり、また大型タンカーによる輸送が可能になり、LPGタンカー需要も低下すると見られる。パナマ運河の拡張は2015年には完了し、その結果、アメリカからアジアへのVLGCの航行日数は、アフリカ周りの42日から25日に短縮される。一方で、現在VLGCの新造隻数は、2008年以来最大となっている。

パナマ運河庁の9月10日付HPによれば、拡張工事は64%完成しており、完了すれば、長さが現在の965フィートから最大1,200フィートまで、船幅が106フィートから最大160フィートまでの船舶が通航可能となる。現在は、世界で運航中の154隻のVLGCの内、7隻しか通航できない。一方、現在、2015年までに合計で190万立米の輸送能力を持つ、23隻のVLGCが建造中で、これによって2015年までに輸送能力が15%増え、1,500万立米になると見られる。アメリカからのアジア向けLPGの輸出は、2012年には前年比5%増の1,960万立米となり、2013年は5月の段階で1,050万立米となっており、少なくとも1981年以来最大の年間輸出量になると見られている。

記事参照:
Expanded Canal Could Mark the Beginning of the End for the Booming LPG Sector