海洋情報旬報 2013年8月11日~20日

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8月12日「インド国産空母、進水」(BBC News, August 12, and Channelnewsasia.com, AFP, August 12, 2013)

インドは8月12日、南部ケララ州コチンの造船所で、初の国産空母、INS Vikrantの進水式を行った。同艦は、排水量3万7,500トン、全長260メートル、全幅60メートルで、コチンの造船所で建造されてきた。同艦の建造は、進水式で第1段階が完了し、この後、再びドックに入り、艤装と更なる工事が行われる。その後、2016年に海上公試を行い、2018年に就役すると見られる。同艦は、設計、建造とも国産で、国営製鉄所の高品質スチールを使用して建造された。同艦の進水で、インドは、アメリカ、英国、ロシア及びフランスに次いで、国産空母を運用する5番目の国となる。インドは現在、稼働空母1隻を保有しているが、この空母、INS Viraatは、1987年に英国から購入したもので、既に艦齢60年になり、今後数年以内に退役予定である。ロシアから購入したもう1隻の空母、INS Vikramadityaは現在、ロシアで海上公試中であり、2013年末までにインドに回航される予定である。INS VikrantとINS Vikramadityaには、ロシア製のMiG-29戦闘機が搭載される。

記事参照:
Indian-built aircraft carrier INS Vikrant launched
India “milestone” as it launches own aircraft carrier
See also video: The INS Vikrant was launched at the Kochi shipyard in the southern state of Kerala

8月12日「中国海軍の実力―ホルムズ論評」(Foreign Policy, August 12, 2013)

米海軍大学のホルムズ (James Holmes) 教授は、8月12日付けのWeb誌、Foreign Policyに、“Red Tide: Just how strong is China’s navy, really?” と題する論説を掲載し、中国海軍の実力について、要旨以下のように論評している。

(1) 中国海軍の装備と将兵の質に関しては、未知の部分が大きい。まず、装備については、例えば、ジェーンのFighting Shipsなどから、我々は、中国海軍が2020年までに、70隻以上の通常及び原子力推進の攻撃型潜水艦に加えて、84隻の駆逐艦とフリゲート、2隻の空母そしてより小型であるが攻撃能力の高い戦闘艦艇を保有する、と見積もることができる。しかしながら、実際の戦闘環境で実証されるまで、これらの兵器やプラットホームがどのように機能するかを前もって判断することは不可能であり、どの程度の脅威になるかについては、大部分は推測に頼らざるを得ない。

(2) 例えば、中国の海軍専門家は、最新の誘導ミサイル駆逐艦 (DDG) を米海軍のイージス艦に相当すると喧伝してきた。中国海軍の野心は、依然として中国近海と西太平洋海域に留まっている。この海域は、艦隊の行動範囲であるとともに、陸上配備の各種兵器の覆域内である。潜水艦、ミサイル装備哨戒艇、沿岸配備の戦術戦闘機、及び対艦ミサイルを活用すれば、このイージス相当艦は、東アジアの海域に中国の重層的な抑止力を構成することになろう。イージス艦は、米海軍が最初のイージス巡洋艦、USS Ticonderogaを配備して以来、30年間にわたって改良してきた、レーダー、コンピューター及び射撃統制システムの複合システムである。中国海軍のDDG―特に2012年に公開された最新のType 052D DDGが、どの世代かのイージス艦に匹敵するというのは正しい。Type 052Dがどの世代のイージス艦か、1980年代か、1990年代か、あるいは最新のイージス艦か。もしUSS Ticonderoga相当艦とすれば、それほど懸念するに及ばない。しかしながら、中国の兵器開発者が最新イージス艦と同等程度を目指しているならば、新型DDGは将来、アメリカの脅威となろう。中国海軍が新型DDGをより現実的な状況下で運用し始めるまでは、部外者がその実力を窺い知るのは困難である。DDGばかりでなく、ステルス戦闘機、対艦弾道ミサイル及びその他の海軍の兵器システムについても、ほとんどはその機能が試されていないので、多くの未知の部分が残る。

(3) 人的要因も、検証困難な変数である。戦略的軍備競争も戦争も、等しく人間の営為である。最新の戦闘艦艇、航空機そしてミサイルも、それを使いこなすのは人間ある。戦闘環境下のストレスの中で発揮する将兵の能力は戦闘の結果を左右するが、戦闘で優越するためには、平時における継続的な訓練、演習が必要である。将兵は、技能を演練するためには、できるだけ多く海洋に出る必要がある。中国海軍の海洋での活動は、米海軍に比べて散発的である。短い海洋活動と基地での長い滞留は、操船術、戦術及び技術力を伸ばすことはできない。本格的な海軍戦闘を経験する機会が滅多にないことを考えれば、真の戦闘力を維持することは、特に難しい。米海軍が同等の海軍力と干戈を交えたのは、1944年のレイテ湾での日本海軍との戦いが最後であった。中国海軍は、強大な海軍力と戦ったことがない。もし中国海軍が今後10年間に、任務部隊を一度に数週間あるいは数カ月間洋上で活動させるといった、より頻度の高い運用ができるようになれば、中国海軍は侮り難い海軍力になるであろう。かつて西側の軍隊が絶頂期のソ連海軍を監視したように、演習や定期的な海洋活動における技能をモニターすることによって、どの程度侮り難い実力かを判定できる。各国海軍は、日常的な洋上活動の間に、海上で他国の海軍と遭遇する可能性がある。こうした遭遇は、相手の艦艇の船体が錆びているかどうか(整備不十分と将兵の無関心さの印)、公海における操艦能力など、あらゆることを判断する機会となる。中国海軍が2014年のRIMPAC演習に参加すれば、これは絶好の機会となる。隻数を推測することは易しいが、戦闘遂行能力の判定は、より高度で主観的な判断である。

(4) しかし、もう1つの隠れた変数がある。アメリカのシーパワーが海軍、海兵隊及び沿岸警備隊で構成されるのに対して、北京は、マリタイムパワーをより包括的に捉えている。そこには、海軍と沿岸警備隊ばかりでなく、商船隊と膨大な隻数の漁船団さえ含まれる。加えて、中国軍は、第2砲兵部隊の対艦弾道ミサイルや空軍の戦術戦闘機を含む、陸上基地の補完能力が艦隊をバックアップする。兵器を満載した戦闘艦艇とトロール漁船を同じ脅威と見ることに違和感があるかもしれないが、漁師は外国海軍に関する情報を収集できる。かつてハイテク電子センサーを備えたソ連の情報収集船 (AGI) やトロール漁船が、アメリカの港湾の沖合に展開していた。漁船団は、機雷敷設や掃海もできる。中国の漁師は、海上民兵の一種である。例えば、北京は、1974年の西沙諸島での南ベトナム海軍との戦闘の勝利に、彼らが貢献したことを喧伝した。中国海軍が世界的な戦力になってきた今日でも、海上民兵の役割を重視している。1例を挙げれば、中国魚船団は、2012年のスカボロー礁で、中国のシーパワーの前衛を務めた。スカボロー礁は現在、中国の手中にある。中国は、内側から漁船、沿岸警備隊そして海軍戦闘艦でスカボロー礁を「キャベツ」のように取り囲んでいるという。これは、状況と力のバランスに応じて、最小の戦力を展開するという、中国の海洋戦略の典型である。フィリピン海軍のような脆弱なアジア諸国の海軍に対峙できる漁船団や小型戦闘艦艇から、海上自衛隊のような本格的な海軍力と対峙できる外洋戦闘艦まで、中国海軍の連続的な戦闘力は、中国の海洋文化に深く埋め込まれている。中国経済の景気後退で艦艇の取得が減少しても、この北京の基本的なアプローチは、見通し得る将来にわたって継続されるであろう。

(5) 中国海軍は、沿岸警備隊、陸上基地戦闘機とミサイル、そして商業部門の商船や漁船団に支援され、中国近海で行動する他国の海軍力にとっては、既に厄介な存在になっている。この存在は、ライバルに対して中国の意志に対抗することを思いとどまらせるに足りる力であり、それはまた、弱体なアジア諸国の海軍を大きく凌駕する力でもある。しかしながら、中国海軍は、アジアから離れた海域に常続的なプレゼンスを維持できるであろうか。それは疑わしい。中国海軍は、中国の近海を制することが最優先任務である。北京の海軍力増強が現在の路線を維持するならば、それによって整備される戦力は、中国にとって、北は尖閣諸島を巡る日本との対峙から、南はマラッカ海峡まで、中国近海における鉄壁の布陣となるかもしれない。その上、継続的な海軍力の増強によって、中国は、2番目に重要な海域であるインド洋へのある程度の前方展開を維持するに十分な、戦闘艦艇の余力を得ることになるかもしれない。北京は、東アジアと南アジアを超えて冒険に乗り出す喫緊の必要性を感じていない。中国の指導者は、彼らが不公平で、不合理で、時間をかけて改めていかなければならないと考えている西欧優位の国際秩序において、警察官的役割を果たすことにはほとんど関心がない。中国の目標は、アジアにある。戦闘艦艇から漁船団まで、北京は、目標達成のために、シーパワーを益々強化しているのである。

記事参照:
Red Tide: Just how strong is China’s navy, really?

8月12日「関水IMO事務局長、北方航路体験航海へ」(IMO Briefing, August 12, 2013)

国際海事機関 (IMO) は8月12日、関水事務局長がロシア政府の来賓として、原子力砕氷船、50 Let Pobedyで、8月15日から5日間、北方航路を体験航海する、と発表した。関水事務局長は、カラ海に面したジクソン港から東シベリア海に面したペヴェク港までの1,680カイリを体験航海する。この間、50 Let Pobedyは、カラ海、タイムイル半島、ショカリスキー海峡、セーヴェルナヤゼムリャ諸島、ラプテフ海、サンニコフ海峡ノーヴァヤシビーリ島徐いて東シベリア海を通航する。この体験航海には、ロシア側から運輸次官を含む政府高官と海運業界幹部が同行する。この体験航海は、北極海の海氷の融解に伴う、世界の海運業界における北方航路への関心の高まりを反映したもので、関水事務局長は航海中、北極海における気候変動の影響を視察するとともに、シベリア沿岸に整備されつつある北極海の航行に必要な施設やインフラについても視察する。また、この航海は、北極海の航行に関連する諸問題を検討する機会ともなる。

IMOは現在、極地海域を航行する船舶の安全に関する国際コード (The Polar Code) の草案を作成中である。The Polar Codeは、南北の極点周辺の厳しい海域を航行する船舶に関する、設計、建造、装備、操船、訓練、捜索救難及び環境保護といった、あらゆる問題を網羅したものとなろう。今回の体験航海は、極地海域航行に関する現在のIMOのガイドラインの適用ぶりを視察するとともに、検討中のThe Polar Codeの作成にも資する機会ともなろう。

記事参照:
Arctic voyage to give IMO Secretary-General first-hand insight on polar issues
Photo: The Russian icebreaker, 50 Let Pobedy

【関連記事】「北極海航路の輸送量-2020年、現在の8倍に」(日本経済新聞電子版、2013820)

タス通信が伝えたところによれば、ロシア運輸省は19日、地球温暖化による解氷に伴い、欧州からアジアへの最短航路として注目される北極海航路の輸送量について、2020年に現在の約8倍となる3,000万トンに急増する見通しを明らかにした。これは、東シベリア海を航行中のロシア砕氷船「戦勝50年」に乗船し航路を視察中の関水国際海事機関(IMO)事務局長に、ロシアの運輸次官が語ったもの。次官によれば、カラ海から東シベリア海を経由しベーリング海に抜ける航路は、ロシア北部のヤマル半島東岸に建設中のサベッタ港の開港によって本格的に稼動する。2020年には、同港を起点とする輸送量が1,500万トン、同港を経由地とする欧州からの輸送量が1,500万トンになるという。

記事参照:
北極海航路の輸送量、20年8倍に

812日「中国、北極圏における役割強化へ」(Russia Beyond The Headlines, August 12, 2013)

中国は既に、北極圏に対する大国としての野心と計画を露わにし始めた。北極圏に関する現行の国際レジームは、北極海沿岸国の特権を認めている。今後このような国際レジームが修正される場合は、北極海沿岸諸国、特にロシアにとって、望ましくない結果を招く可能性がある。例えば、もし北極圏が「人類共通の遺産」として認定された場合、北極圏におけるより大きな役割を与えられるべきとする、中国の主張は正当化されることになろう。中国は、北極圏の将来を北極評議会加盟国のみで決定されるべきでなく、北極圏全体が人類の未来のために極めて重要であり、従ってこの地域に関するあらゆる決定には中​​国の13億人の意見と利益が反映されるべきだ、と主張する。

近年、中国は、カナダに大規模な投資を行うとともに、北極圏の「ゲートキーパー」であるグリーンランドとアイスランドとの協力を推進している。2013年の春には、習近平主席の歴史的なモスクワ訪問を契機に、ロシアのロスネフチと中国CNPC間に北極海油田の協力協定が締結された。中国はすでに、ロシアを経由する北方航路を利用するために、リースベースで幾つかの北朝鮮の港を使っている。

中国政府は、北極圏での気候や環境の変化に注意を払っている。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の専門家によると、中国は、競合する国家がこのような変化を自国の利益増進のために利用することを懸念している。このような事態に備えて、中国の世界的な海運大手、中国遠洋運輸公司(COSCO)は既に、北方航路を経由する中国の輸送量増大の可能性について費用をかけた調査を行った。一方、中国の造船業界は、砕氷船の建造を加速している。また、中国は、フィンランドの別の砕氷船を発注しており、2016年には引き渡されることになっている。

中国の砕氷船は2012年8月、初の北極海航海を実施し、船舶航行に関する重要なデータを収集した。中国は2013年には、北方航路を利用する定期的な商業運航を開始する予定である。中国は、2020年までは輸出の16%を北方航路経由とすることを期待している。

記事参照:China eyeing energy-rich Russian Arctic
View the inforgraphic: Arctic Resources and Maritime Boundary Lines;

8月13日「米沿岸警備隊、北極海で漏洩石油探知・回収技術の実験を計画」(The Maritime Executive, August 13, 2013)

米沿岸警備隊研究開発センター (RDC) は、北極演習、Operation Arctic Shield 2013の一環として、北極海での漏洩石油を探知し、回収する技術の実験を計画している。DRCに率いられた各省庁からの技術者と研究者からなるチームは9月に、砕氷巡視船、USCGC Healyに乗船して、各種の無人空中監視システム (UAS)、無人水中システム (UUV)、及び遠隔操作システム (ROV) の漏洩石油探知・回収能力をテストする。チームはまた、沿岸警備隊のその他の任務に対するUASの支援能力もテストする。USCG Healyは、2000年に就役した最も新しい大型極地砕氷巡視船で、各種の科学調査を行うことができる。

記事参照:
U.S. Coast Guard to Test Oil Spill Technologies in Arctic

8月14日「イラン、インド船籍タンカーを抑留―原油輸入削減に対する意趣返しか?」(The Times of India, August 15, and others, 2013)

イラン革命防衛隊 (IRGC) は8月14日、インドに向けて航行中のインド籍船スエズマックス・タンカー、MT Desh Shanti (15万8,030DWT) をペルシャ湾の公海で抑留した。インド最大手の船社、The Shipping Corporation of India (SCI) が船主の該船は、14万トンのイラク原油を積載して、イラクのバスラからインド東岸のビシャカパトナムに向け航行中であった。該船が抑留された理由は、海洋の環境汚染である。

バーレーンにある、ペルシャ湾の石油・天然ガスの漏洩を監視する域内の多国間機関、The Marine Emergency Mutual Aid Centre (MEMAC) が7月30日、MT Desh Shantiが意図的に石油を放出していると非難し、汚染警報を発出した。MEMACが発出した警報によれば、この時点の該船の位置はイラン領ラーヴァーン島東方30カイリにあり、9ノットで航行しているとしている。イランによる該船の抑留は、この警報に基づいたものである。警報によれば、長さ10カイリの油膜が見られ、関係当局は監視を続けている。MEMACのジャニヒ (Abdulmunem Janahi) 事務局長は、石油を捨てられた海域に近い国は、この場合はイランが最も可能性が高いが、現行法規に照らして当該船舶を処罰しなければならないが、これにはMEMAC加盟国―バーレーン、イラン、イラク、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア及びアラブ首長国連邦の承認を得る必要がある。また、当該船舶は、IMOのブラックリストにも載せられるという。しかし、実際には、この時点での該船の位置はラーヴァーン島西方85カイリの位置にあり、イラクのバスラに向けて13ノットで航行していた。この違いから、消息筋は、MEMACが実際には別の船を追跡していた、と指摘している。

インド政府は8月17日、MT Desh Shantiが汚染海域から少なくとも400カイリに離れた海域を航行していたとする証拠を提示した。また、イランに対して、石油を放出したとされた時点ではMT Desh Shantiが原油を積載していないことから、該船が汚染源ではないと抗議した。実際、IRGCが公海で該船を臨検した時、該船はバラスト水を積んでいた。

これらの事実は明らかに、インドがイランからの原油輸入を逓減させてきていることに対する、テヘランのインドに対する意趣返しであることを示唆している。これは、インドがアメリカとEUのイラン制裁に伴って、イランからの原油輸入を削減したためである。実際、イランは、インドの原油供給先としては、サウジアラビアに次いで2番目であったが、2010年以来、徐々に減少し、現在では6番目の供給先となっている。現在ではインドの輸入原油の多くはイラクとなっており、これはイランにとって受け入れ難いことである。虚偽の理由で該船を抑留することで、テヘランは、こうした現実に対する不快感を示したと見られる。

結局、MT Desh Shanti は9月6日に釈放され、9月14日にビシャカパトナムに到着した。

記事参照:
Iran seizes Indian ship carrying oil from Iraq
Iran’s charges against MT Desh Shanti are absurd: India
DNA, August 17, 2013
Iran hopes detention of Indian tanker won’t affect ties
The Economic Times, September 14, 2013
Oil tanker released by Iran after 26 days arrives in Visakhapatnam
The Times of India, September 18, 2013
Photo: MT Desh Shanti

8月15日「カナダ、北極軍事訓練施設開設」(CBC News, August 16, 2013)

カナダ政府が8月15日に公表したところによれば、新たな北極軍事訓練施設がレゾリュートに開設された。この施設は、寒冷地生存訓練やその他の北極作戦の基地として、通年利用される。軍によれば、この基地は、緊急事態作戦や災害対処の指揮所ともなる。施設には、最大140人の人員が配置され、装備や車両の保管スペースを持つ。この基地は、カナダの北極地域における軍事プレゼンス強化措置の1つである。

記事参照:
Military’s Arctic training facility opens in Resolute

8月16日「中国商船、初めて北方航路経由欧州へ」(Business Insider, AFP, August 16, 2013)

2013年夏季の中国商船による北方航路経由欧州への初めての航行は、世界最大の輸出国である中国の商品を欧州市場にスピーディーに届けることになり、北京の北極圏に対する戦略的野心を象徴するものでもある。中国国営海運大手、中国遠洋運輸公司 (COSCO) 所有の一般貨物船(香港籍船)、「永盛」(1万9,150DWT) は8月8日、重機、鉄鋼を含む各種の貨物を積載して、遼寧省の大連港を出航し、北方航路経由で、オランダのロッテルダムに向かった。COSCO によれば、今回の航海は3,380カイリ(5,400キロ)を30日間かけて航行するもので、スエズ運河を経由する通常の航路より最大2週間程短縮できる。

北方航路は、中国のヨーロッパ接近への新しい可能性を与えている。中国は、世界第2の経済大国を維持するために必要なエネルギー資源の供給先として、北極への関心を高めている。北極海の非沿岸国であり、当該海域における領有権を持っていない中国は、科学的研究と戦略的な側面から当該地域が保持する潜在的な価値に注目している。上海国際海運研究所の研究者は、新たな航路の開設は中国の北極海問題への積極的な関与を象徴するものである、と指摘している。EUは中国最大の輸出先であり、2012年の輸出額は2,900億ユーロに達した。COSCOは「永盛」の出航時、北方航路を航行期間の短縮、運航経費と燃料の節約などの面から、純粋な商業的視点で捉えており、「北方航路は、通常航路より12~15日短縮でき、海運業界では『黄金の航路』と呼ばれる」と述べている。北極海の航路は将来的に、世界海運業界の市場形態に変化をもたらすといわれる。しかしながら、北極海の航路が啓開されるには、インフラの整備などにまだ時間がかかり、短期的には経済的な価値はあまり大きくなく、しかも航行可能期間が短い。一方で、中国の一部の専門家は、今後7年ほどの間に、中国の国際貿易の5~15%程度が北極海の航路を利用するようになろうと予測している。

記事参照:
China Begins Using Arctic Shipping Route That Could ‘Change The Face Of World Trade’
Photo: 「永盛(Yong Sheng)」

8月16日「インド、東アジアで軍事外交攻勢」(The Diplomat, August 16, 2013)

インドのNDTVの安全保障・戦略問題担当ジャーナリスト、Nitin A. Gokhale は、8月16日付のWeb誌、The Diplomatに、“India’s Growing Military Diplomacy” と題する論説を掲載し、インドはルック・イースト政策の一環として東アジア全域で軍事的な協力関係を強化してきているとして、インドの東アジアにおける軍事外交攻勢について、要旨以下のように述べている。

(1) 中国との長い国境紛争のため、インドの政策決定者たちは、「大陸的」思考になりがちで、陸上から中国に対抗することを目指してきた。しかしながら、この「大陸型」思考は、変わりつつある。20年に及ぶルック・イースト政策の一環として、インドは、東アジア諸国やASEAN諸国との関係を強化してきた。これら諸国は、決して明言することはないが、ニューデリーに、この地域において強まる中国の存在感に対する対抗勢力になることを期待している。フィリピン、タイ、インドネシア、そして特にベトナムとミャンマーは、軍事訓練と武器供与の両面で支援するよう、インドに再三要請してきた。この1年の間に、インドの陸、海、空軍のすべての参謀総長がミャンマーを訪問するなど、ミャンマーは、インドの東南アジアと東アジア諸国との軍事外交の象徴となっている。東南アジアでは、どの国よりもベトナムが、インドに対して支援と関与を求めてきた。インドは現在、装備品購入のための1億米ドルの融資、南シナ海における油田の共同開発など、より積極的に支援しようとしている。

(2) 更に東へ行けば、インドと日本の戦略的な関係も、北京を視野に入れたものである。インドのシン首相は、中国の李克強首相との首脳会談から1週間後、東京を訪問し、日印関係をかつてないほど強い関係にした。事実、インドのサラン前外務次官は、「2005年7月のシン首相の訪米時の核合意がインド外交におけるゲームチェンジャーであるとするならば、2013年5月の訪日も同じくらい重要な意味をもつかもしれない」と述べている。

(3) ニューデリーが関心を持っているのは、日本だけではない。オーストラリアは、インド亜大陸からは少し離れているが、インドの軍事外交の好ましい対象となっている。アントニー国防相は、6月に訪豪した初めてのインドの国防相になった。国防相は訪豪の途次、タイとシンガポールも訪問した。インドとオーストラリアの間では、新しい国防協力が模索され、両国関係は、アジア太平洋とインド洋地域における懸念事項に対応する上で、2国間の場でも多国間の場でも益々重要な役割を果たしつつある。両国は共に、東アジアサミット、ASEAN地域フォーラム (ARF)、ASEAN拡大国防相会議、インド洋海軍シンポジウム (IONS)、そして環インド洋地域協力連合 (IOR-ARC) のメンバーである。

(4) インドの国防機関は、一般的に他の政府機関とは独立して行動しているが、伝統的に影響力を持ってきた地域以外の諸国と、独自に長期的な関係を構築し始めている。もしニューデリーがこの新しい機運を持続させることができれば、インドの軍事外交は、東アジアや東南アジアにおいて益々重要な役割を果たすことになると見られる。しかしながら、ニューデリーは、中国の怒りを買わないように、こうした外交攻勢を喧伝することなく慎重に行動している。

記事参照:
India’s Growing Military Diplomacy

8月16日「マースクTriple-Eシリーズ・コンテナ船1番船、ロッテルダム到着」(The Loadstar, August 21, 2013)

マースク・ラインの最新コンテナ船、Triple-Eシリーズの1番船、MV Mærsk McKinney -Møllerは8月16日、2,858個のコンテナを積んで、欧州最大のロッテルダム港に到着し、ヨーロッパに初お目見えした。該船は、全長400メートル、1万8,270TEUで、現時点では世界最大で、これまで建造されたコンテナ船としても世界最大である。

記事参照:
First Triple-E arrives in Europe: Picture special on the world’s largest boxship