海洋情報旬報 2013年9月11日~20日

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9月11日「『パワーの移行』期の米中関係―米専門家論評」(PacNet, No. 71, September 11, 2013, Pacific Forum, CSIS)

ホノルルのThe East-West Center のロイ (Denny Roy) 上席研究員は、Pacific Forumの9月11日付け、PacNetに、“The ‘Power Transition:’ A Spot Check ” と題する論説を掲載し、「パワーの移行」期の米中関係の行方について、要旨以下のように論じている。

(1) 国際関係学者が言う、「覇権の交代 (“hegemonic transition”)」あるいは「パワーの移行 (“power transition”)」は、歴史上定期的に起こっている。一握りの大国によるグローバルな階層構造の頂点は、長い時間をかけて入れ替わってきた。「パワーの移行」のシナリオは、最強のパワーが衰退し始め、一方で急速にチャレンジャーが台頭してくる時に現れる。地域あるいはグローバルなシステムにおけるトップの地位は、その占有国が自らの利益に適った国際関係のルールを設定できるが故に魅力的である。歴史は、台頭するチャレンジャーの力が衰退しつつある覇権国のそれを凌駕しかねないレベルに近づいた時に、両者の緊張が非常に高まることを示している。しかし、こうした緊張の激化を和らげ、軍事紛争に至るリスクを軽減する要素もある。これを現在の米中関係に当てはめれば、緊張を緩和する要素の1つは、米中両国とも核保有国であるということである。また、米中両国は、平和的かつ遵法行動が強く求められ、違法行動が抑制される、グローバルな貿易システムと制度の成員でもある。更に、米中両国は、相互に直接的な現実的脅威とはなっていないことである。

(2) ここ数代の米大統領は、北京が責任ある対応をとる限り、アメリカは強力で繁栄した中国を歓迎する、と述べてきた。中国の強圧的行動がなかったことから、アメリカは、通常の経済的、外交的抗争を超えて、中国の台頭を阻止する行動をとることはほとんどなかった。「パワーの移行」という視点からすれば、このことは、現行のルール―その大部分がアメリカ製で、中国が全面的に同意しているわけではない―の枠内で、覇権国がチャレンジャーに席を与えようとする意志を象徴するものであった。中国は当初、合意できない部分があるものの、アメリカ主導のシステムや規範に従う意志を示した。中国は、台頭するパワーがもたらす最大の危険、即ち、近隣諸国を対抗連合、言い換えれば敵対的包囲網の形成に走らす危険を十分認識していた。1990年代初め以来、中国の指導者は、中国の台頭が他国の脅威とならないことを、外部世界に繰り返し保証してきた。中国共産党指導部は2004年、「平和的台頭」というスローガンの使用を止め、「平和的発展」に替えた。鄧小平は1991年に、「パワーの移行」期の外交指針として、「二十四文字指示(冷静観察、站穏脚跟、沈着応付、韜光養晦、絶不当頭、有所作為)」を遺言した。

(3) しかしながら、最近、スムーズな「パワーの移行」過程が否定的な方向に変わってきたようである。ワシントンは、アジアにおける「再均衡化」を発表した。これは、中国の台頭への対応だけではないが、アジア太平洋地域の友好国政府に対するコミットメントを維持するという、アメリカの基本政策の継続であり強化であることに間違いない。もちろん、中国は、「再均衡化」を、域内問題に対する干渉であり、アメリカの「封じ込め」戦略の新たな現れと見なしてきた。「パワーの移行」シナリオという視点からすれば、アメリカのアジアに対する再均衡化は、覇権国が台頭するチャレンジャーによって自らの利益が護られるよりは、むしろ脅かされていると見、覇権国としての地位を護るために限られた資源をこれまで以上に投入するとともに、自らの影響力の相対的低下を受け入れるよりも、むしろ現秩序をできるだけ長く維持する必要を感じている、ことを示唆している。

(4) 一方、中国の指導者は、鄧小平の遺言を机の引き出しにしまったようである。例えば、2010年には、中国の軍、外交当局は、黄海での米韓演習に反対し、尖閣問題で対日強硬政策を展開した。更に、中国は、南シナ海問題に対して、フィリピンのEEZ内にあるスカボロー礁への対応に見られるように、高圧的な政策を展開し始めた。習近平政権は、ナショナリズムに火を付けた。指導部は、「核心利益」のリストを拡大しようと試みてきた。鄧小平の遺言から20年を経て、最近の中国のエリート層やコメンテイター達の間には、鄧小平の指針が依然有効か、それとも廃棄すべきかを巡って公然たる議論が見られる。中国の指導部の交代と習近平の権力強化は、中国の外交政策を、中国の新しい力を誇示する方向に変えてきたようである。

(5) 結局、平和的な「パワーの移行」は現時点では、否定的な方向に向かう趨勢にあるように見える。中国は、台頭するチャレンジャーが見せる古典的な過ち、即ち、未熟なオーバーリーチに向う兆候を示している。一方、アメリカは、自らのガードを固める決意を示しており、あまりに非寛容になることで、中国をして協力するより争う方がましとの結論に追いやるリスクを冒している。

記事参照:
The “Power Transition”: A Spot Check

9月12日「スウェーデン・韓国の船社、北方航路で合同運航」(Stena Bulk, Press Release, September 12, and Handy Shipping Guide, September 14,2013)

スウェーデンの船社、Stena Bulkは、韓国の船社、Hyundai Glovisと合同で、北方航路で精製品タンカーを運航する。Stena Bulk 社が運航するP-MAXタンカー (ice class 1A)、MT Stena Polaris (6万5,000DWT) は、3万7,000トンのナフサを積んで、9月15日にロシアのフィンランド湾のウスチルーガ港を出港し、北方航路経由で28日間かけて10月半ばに韓国の光陽港に到着する予定である。Stena Bulk 社のCEOは、「MT Stena Polarisの運航は、Hyundai Glovisとの長きにわたる合同運航の始まりを画するものである」と語っている。

Stena Bulk 社によれば、2013年9月半ばの時点で、総計270隻以上の船舶が北方航路の通航認可を得ているが、その全てが通航することはないと見られる。同社は、北極海経由の通航貨物量は2012年に比してほぼ5倍に増えるであろう、と見ている。2012年の通航貨物量は130万トン弱で、2011年より53%増であった。控えめな見積もりでも、2013年の通航貨物量は150万トンで、2021年までには1,500万トン程度まで増大するという。

記事参照:
Stena Bulk and South Korean Hyundai to collaborate in transportation
More Bulk Freight Traverses the Arctic Ocean as Shipping Line Confidence Builds
Photo: Products Tanker, MT Stena Polaris
Map: The North East Passage connects Europe with East Asia via the Barents Sea, the KaraSea, the Laptev Sea, the East Siberian Sea, the Bering Sea, the Sea of Okhotsk and the Sea of Japan.

9月12日「アメリカの対ASEAN政策―米専門家論評」(The National Interest, September 12, 2013)

米シンクタンク、The Heritage Foundationのローマン (Walter Lohman) アジア研究センター長は、9月12日付けの米誌、The National Interest電子版)に、“America’s Inadequate ASEAN Approach” と題する論説を寄稿し、要旨以下のように述べている。

(1) アメリカの「アジアへの軸足移動 (the “pivot to Asia”)」政策は、地政学的な尺度では、東南アジアを巡る米中間の大国間抗争という印象を与えることに成功している。問題は、この地政学的なゲームが単にワシントンの想像の産物に過ぎないかもしれないということである。一般的な見方では、東南アジア諸国とASEANを、中国との均衡を図る行動をとっているか、あるいは中国への「バンドワゴニング」的行動をとっているか、いずれかに類別したがる。しかし、実際には、多くの国はいずれの政策も追求していない。ASEANは、冷戦最盛期の1967年に創設され、以来40年以上の間、加盟国間の平和を維持しながら、経済機会の拡大を実現してきた。ASEANは、このような成功に基づく自信を背景に、アメリカのゲームでも、また中国のゲームでもない、ASEAN自身のゲームを展開しつつある。ASEAN は、アメリカとの関係において、それが自らの戦略的目的に適う限り、居心地の良さ (comfortable) を感じるが、もしアメリカがより深化した防衛協力を推進しようとすれば、居心地の悪さ (less comfortable) を感じてしまう。結局、ASEANは(米中いずれかを)選択しないことが利益であるかもしれないが、アメリカの利益にとっては、いずれは選択を求めなければならないのである。

(2) ASEANは、創設以来、最も微妙な時期にある。それは、南シナ海を巡る中国の挑戦に対応できない現状からも明らかである。この問題に関しては、この20年間堅持してきた中国への関与政策は失敗した。東南アジアにおけるアメリカの主要な利益は、地域の平和、安全そして繁栄を脅かす、中国の高圧的な主張と行動に対応し、最終的には抑制することにある。一部のASEAN諸国はアメリカの中国に対する懸念をある程度共有しているが、これら諸国も、アメリカの優先順位ではなく、ASEAN内部の優先順位に従って中国の懸念に対応しようとする。このため、ASEAN拡大国防相会議 (ADMM-Plus) やASEAN地域フォーラム (ARF) なども、アメリアの戦略的な目標を満たしているわけではない。

(3) では、ワシントンは、東南アジア諸国に何を期待すべきか。

a.第1に、中国の海洋における膨張主義と「海洋領域 (“blue soil”)」に対する不当な主張に対して、着実かつ一貫した圧力を加えることである。中国の懸念に対するアメリカの対応については、ASEANの外交サークル内では、必ずしも評価が一定せず上がり下がりがある。オバマ政権の東南アジア政策のハイライトは、当時のクリントン国務長官が2010 年7 月にハノイで行ったスピーチであった。しかし、これは、ASEAN にとっては、(居心地の良さのレベルから見て)過敏過ぎるものであった。

b.第2は、南シナ海の大部分をカバーする中国の「九段線」地図に対するフィリピンの法的主張を明確に支援することである。ASEANは過去20 年間、南シナ海の紛争を管理し、解決するための基礎として、国際法遵守を先頭だって主張してきた。それにもかかわらず、フィリピンが中国との領有権問題を国連海洋法条約 (UNCLOS) による仲裁裁判に持ち込んだ時、ASEAN諸国の一部は沈黙した。フィリピンも中国もUNCLOSの加盟国である。紛争当事国は、UNCLOSを活用すべきである。

c.第3に、海洋に関する慣習国際法に対する東南アジア各国の姿勢を見直すことである。アメリカは、EEZを含む国際水域での軍事活動について、一部の東南アジア諸国と立場が異なっている。米海軍力のプレゼンスに対するこれら諸国の修辞上の支持は、これまでのところ、プレゼンス維持に必要な海軍艦艇による監視活動やその他の活動を実際に是認するところにまでには至っていない。これは、アメリカとその同盟国、パートナーそして友好国との間で、交渉すべき課題である。

d.最後に、中国の海洋における膨張主義や高圧的主張に対する懸念を、ASEAN諸国と共有しているのであれば、アメリカとASEAN諸国は、あらゆる機会を捉えて、もっと明確に表明しなければならない。南シナ海における行動規範 (COC) の締結は、歓迎されるべきである。中国もCOCを支持しているが、その締結をまだ急ぐ必要はないと見ていることにも留意すべきである。

(4) 東南アジアにおけるオバマ政権の活動は、全般的に歓迎すべき進展である。オバマ大統領の閣僚、就中、国防長官と国務長官は、この地域の多様な外交の場に積極的に参加すべきである。しかし、そこでの活動は、米国の戦略目標に明確に焦点を合わせたものでなければならない。

記事参照:
America’s Inadequate ASEAN Approach

9月14日「ロシア、北極海における軍事プレゼンス再建」(RT.com, September 14, 2013)

ロシア国防省は9月14日、ロシアは北極海沿岸域に軍事プレゼンスを再建する、と公式に発表した。この発表は、北方艦隊の10隻の戦闘艦と支援艦艇からなる任務部隊がノヴォシビルスク諸島のコチェリヌイ島 (Kotelny Island) の西岸に到着した時点で行われた。任務部隊は、ロシア海軍最強の水上戦闘艦で北方艦隊旗艦、誘導ミサイル原子力巡洋艦、Pyotr Velikyを旗艦とし、部隊には4隻の原子力砕氷船、YamalVaigachTaimyr及び50 Let Pobedyが随伴し、特に薄い氷海の通航を支援した。任務部隊は、セヴェロモルスク港を出航し、バレンツ海、カラ海及びラプテフ海を通航して、2,000カイリ以上を航行した。ロシア海軍のチルコフ総司令官は9月14日、北方艦隊の別の任務部隊は、フランツヨーゼフランド群島のルドリフ島 (Rudolf Island) に到着し、上陸した、と語った。その後、この部隊は、ノヴァヤゼムリア島に向かうことになっている。チルコフ総司令官は、「ロシア国防省は、北極海域の資源及び領域に対する正当なアクセスを確実にするために、北極海における恒久的な軍事プレセンスを維持する任務を遂行することになろう」と強調した。バーキン第1国防次官は、ロシアにとって、任務部隊の派遣は北方航路とその周辺海域の環境改善の第1歩であり、この任務は困難なものであるが、ロシアは北極圏における目標達成のための装備と訓練された人員を有している、と語った。

バーキン第1国防次官によれば、20年間放置されてきたコチェリヌイ島のテンプ軍用飛行場は10月には使用可能になり、An-72及びAn-74輸送機が空軍基地再開のための資材と補給物資を搬入することになっている。近い将来、滑走路が改修され、Il-76やAn-22 Anteyといった大型輸送機の離発着が可能となろう。この基地の整備によって、全天候、通年の航空機の定期的な離発着が可能になり、北極地域におけるロシアの軍事プレゼンスの再建が加速されることになろう。テンプ軍用飛行場は、全面的に改修され、ロシア空軍の北極地域の必要な兵站俸給のためのハブとなる。

記事参照:
Russian military resumes permanent Arctic presence
Photo: The flotilla led by the flagship of the Russian Northern Fleet, Pyotr Veliky
Map: The Russian Navy’s long-distance cruise in the Subarctic along the Northern Sea Route

9月15日「アジアの領有権紛争におけるアメリカの役割―メネンデス米上院外交委員長」(The Wall Street Journal, September 15, 2013)

米上院外交委員会のメネンデス (Robert Menendez) 委員長(民主党)は、9月15日付けの米紙、The Wall Street Journalに、“The American Role in Asia’s Territorial Disputes” と題する論説を寄稿し、東アジアの領有権紛争の解決に向けたアメリカの役割について、要旨以下のように述べている。

(1) アメリカは、領有権紛争に対しては特定の立場に与するものではないが、アジア太平洋国家として、地域的安定の維持に国家安全保障上の決定的な利害を有している。アメリカはまた、航行の自由、自由で妨害のない通商、国際法の遵守、そして紛争の平和的解決に利害と関心を持っている。東アジアの領有権を巡る対立は、域内の緊張を高める潜在的な紛争要因となっており、武力衝突の生起は容易に大規模紛争にエスカレートする可能性がある。

(2) アメリカは、地域の平和と安定を維持するとともに、関係当事国による海洋紛争の管理、解決を支援するために、何ができるか。

a.第1に、全ての関係当事国による自制が肝要である。領有権主張を押し通すための威嚇、武力による脅迫あるいは実際の武力行使は許されず、放棄されるべきである。この原則は、2002 年の行動宣言で確認された。アメリカは、解決に向けての規範や意見の不一致に対処する明確な手続きを確立する新たな包括的な行動規範の成立に向けての、ASEANの努力を引き続き支援していかなければならない。

b.第2に、アメリカのリーダーシップは、アジアにおいて極めて重要である。従って、この地域における軍隊や準軍隊による意図しない衝突がコントロール不能な事態に発展しないようにするための適切な危機管理メカニズムの構築に向けた関係当事国の努力を、アメリカは支援すべきである。最近の中国とベトナムとの間に「ホットライン」が開設されたが、これは正しい方向への歓迎すべき一歩である。

c.第3に、アメリカは、国際法の諸原則に則った協調的外交プロセスを通じた紛争解決を可能にする機能的な問題解決の仕組みを創るために、アジア太平洋諸国との協働努力を一層強化すべきである。アメリカは、ASEANと中国による協議の当事国ではないが、こうした協働努力の一環として、海洋紛争の管理のための協調的外交メカニズムの構築に向けた、ASEANと中国の努力を支援できるし、また支援すべきである。

d.第4に、アメリカは、海洋空間識別を含め、海洋安全保障に関する地域の能力向上に大きな役割を果たすことができる。アメリカがパートナーシップの一環として提供できるものには、共通の調整メカニズム、運用手順、海洋空間識別、海事警察の能力の構築などがある。

e.第5に、アメリカは、今後も同盟国を支援するとともに、条約上のコミットメントを遵守するとの立場を、引き続き明確にしていくべきである。そしてアメリカは、この地域への永続的コミットメントを行動で示していかなければならない。上院は、これらの問題に関する上院の立場を明確にした、決議167を可決した。この決議で約束したことは今日も完全に有効であり、そうしたコミットメントは将来まで及ぶと考えている。

(3) アメリカは、アジア太平洋国家として、アジア太平洋地域において法に基づく秩序を構築し、制度化し、そして維持していくために、この地域の全ての国と協働することに重大な関心を持っている。海洋紛争を管理する効果的なメカニズムを構築し、アジア太平洋地域の海洋における紛争の平和的解決を支援し、慫慂することが、その第1歩となる。法的拘束力を持つASEANと中国間の行動規範は、域内の全ての国が望み、必要としている、安定し平和で繁栄するアジア太平洋地域を構築するための正しい方向に向けた重要な措置となろう。

記事参照:
The American Role in Asia’s Territorial Disputes

9月15日「ASEAN・中国、初のCOC協議終了」(Channel News Asia, AFP, September 16, 2013)

ASEANと中国による「「行動規範 (COC)」締結に向けた中国江蘇省蘇州での初めての協議が9月15日、2日間の日程を終えた。ASEANは、10年以上前から、中国との間で法的拘束力を持つCOCの締結を求めてきた。中国外交部は、「全ての協議参加国は、合意できる分野を徐々に増やし、不一致部分を徐々に減らしていくとともに、COCの内容について協議を続けていくことで合意した」と発表した。

記事参照:
Beijing open to code of conduct in South China Sea, but not now

9月16日「インドの港湾整備計画、コロンボ新港の脅威に」(Cargonews Asia, September 16, 2013)

インド政府は、2012年から12カ年計画で、113億米ドルを投じて、主要港の開発改修計画を進めている。計画では、2つの新港が建設される。1つは西ベンガルのコルカタの南方80キロのサガール島 (Sagar Island) に、もう1つはアンドラプラデーシュ州に建設され、建設費はそれぞれ12億8,000万ドルである。インドの港湾設備への慢性的な投資不足のために、現在、インドのコンテナ貨物の13%強がコロンボ港を経由している。香港拠点の中国国営企業、招商局國際有限公司は、コロンボ港のコンテナターミナル新港の建設経費の85%を投資し、Colombo International Container Terminal (CICT) を運営する。インドの港湾建設計画は、コロンボとその他の港湾を含む、スリランカの海運バブとしての地位にとって、大きな脅威となる。スリランカのシンクタンク、Pathfinder Foundationによれば、コロンボ港は、インド仕向け貨物の損失を補うために、中継貨物の取扱料を値下げせざるを得ないであろうという。コロンボ港の2012年のコンテナ取扱量は419万TEUで、スリランカと中国間の貿易量が対前年比19%も増加したにもかかわらず、2011年の426万TEUに比して減少している。中継貨物の取扱量が対前年比2%減少したのが主な原因で、インドと中国間の貿易量が312万TEUから310万TEUに減少した。招商局國際有限公司は、同港は南アジアで最先端の国際海運の中継ハブであり、世界最大の1万8,000TEU級のコンテナ船の受入が可能であることから、CICTはこうした事態を上手く乗り切れる、と語っている。同公司は、コロンボ港の取り扱い貨物の約70%が国際中継貨物であり、同港は特にインド亜大陸と東アフリカの市場にとって、中継ハブ港としての立地に恵まれている、と指摘している。

記事参照:
India port plan threat to new Chinese terminal
Map: China’s string of pearls encircling the Indian sub-continent – Chittagong in Bangladesh, Kyaukpyu in Myanmar, Colombo and Hambantota in Sri Lanka, Gwadar in Pakistan and Bagamoyo in Tanzania

917日「南シナ海問題、協力が先か信頼が先か―ベイトマン論評」(RSIS Commentaries, No. 167, September 17, 2013)

シンガポールのS.ラジャラトナム国際関係学院(RSIS)のベイトマン (Sam Bateman) 上席研究員は、9月17日付けのRSIS Commentariesに、“Cooperation or Trust: What comes first in the South China Sea?” と題する論説を掲載し、南シナ海問題について明らかに2つの相反する考え方―即ち1つは協力が信頼醸成を促すというもの、もう1つは信頼がなければ協力は不可能とするもの―があり、いずれが先か、「鶏と卵」の状況が生まれているとして、要旨以下のように論じている。

(1) 海洋信頼醸成措置 (a maritime confidence-building measure: MCBM) としての協力が先か、あるいは戦略的信頼が先か、南シナ海問題に「鶏と卵」の状況が生まれている。1つの考え方は、資源管理、海洋科学調査そして海洋環境保護といった問題についての機能別の協力体制がMCBMであり、信頼醸成措置であるとする。一方、もう1つの考え方は、このような機能的な協力体制は戦略的信頼なしには進展しないというものである。この問題の核心は、中国にある。一部の解説者は、まず始めに戦略的信頼がなければ、南シナ海ではMCBMは不可能であるというのが中国の立場である、と主張する。しかし、別の解説者の見解は異なる。中国がASEAN・中国海洋協力基金や、海洋科学調査、環境保護、捜索救難及び海洋における国境を超える犯罪などに関する専門家委員会の設置を提案しているが、これらは事実上、MCBMの提案である、と彼らは見ている。

(2) 過去10年間の法的拘束力を持つ南シナ海の行動規範 (COC) に関する交渉に明らかなように、この交渉では、協力と信頼の順序が逆転している。即ち、南シナ海の行動宣言 (DOC) の第6項は、航行、通商の自由とともに、前述の中国の提案にある専門家委員会の検討課題となる諸活動を規定している。DOCは、領有権紛争の包括的かつ恒久的な解決が見られるまで、関係当事国の協力を求めている。2004年に設置された、DOCの履行に関するASEANと中国の合同作業部会 (JWG) は、協力を促進するための措置を検討してきた。しかし、2011年に合意されたDOCの履行に関するガイドラインは、海洋の管理に関する協力には特に言及していない。むしろ、ガイドラインは、MCBMとしてDOCに規定された諸活動を確認しているが、それらの諸活動の内容には触れていない。現在、関係当事国間の交渉の力点は、COCの合意実現にある。報道によれば、COCの草案は、協力の重要性について特に強調されておらず、また可能なMCBMについて明記されてもいないという。こうした「鶏と卵」の状況が存在しているため、南シナ海の海洋生物の保護、漁業資源の管理、海洋における国境を越える犯罪の防止、あるいは海洋とその資源を効果的に管理するために必要な研究などについて、ほとんど何も実施されていない。南シナ海の沿岸国は1982年の国連海洋法条約 (UNCLOS) の加盟国であり、その第123条は、こうした諸活動に関して協力することを義務付けている。

(3) 協力には、義務と必要性が伴う。そして信頼は、協力の前提と見なされるべきではない。協力なしでは、漁業資源は乱獲され、海洋生物は生存を脅かされ、そして南シナ海の大部分の海域は未調査のままとなろう。その結果、沿岸国は、隣接した海域において主権的権利を効果的に行使するために必要な科学的な知識を欠くことになる。海洋の利用に関する諸問題に対する知識の欠如と海洋における主権的権利の行使の主張は、海洋における協力の妨げになる。沿岸国の管轄権の主張が重複する海域では、海洋管理と資源保護は、各国の国家管轄権だけに基づいては管理できない。海洋秩序の維持と効果的な海洋管理のためには、隣接する国家間の協力が不可欠である。

(4) このジレンマから抜け出す方法はある。海洋における協力は、信頼と信頼醸成の構築を促すMCBMである。例え、政治レベルでの交渉が合意に至らず、領有権問題が未解決のままでも、南シナ海とその資源を管理するための協力は促進されなければならない。南シナ海とその資源を管理するための協力を促進する上で重要なことは、軍事的信頼醸成措置 (CBM) と戦略的信頼とは切り離さなければならないということである。我々は、MCBMとしての海洋における協力と、海洋における事故防止などの軍事的CBMとは、別物として考えなければならない。これらの2つ課題は、異なるフォーラムを通じて前進させることができる。「拡大ASEAN海洋フォーラム (Expanded ASEAN Maritime Forum: EAMF)」は、海洋における協力の方法を検討するのに適している。一方、「ASEAN拡大国防相会議 (ADMM-Plus)」は、軍事的活動に関するMCBMを論議することができる。

記事参照:
Cooperation or Trust: What comes first in the South China Sea?

9月17日「国際情勢の変動とアメリカの『軸足移動』政策―インド人専門家論評」(The Diplomat, September 17, 2013)

インドのシンクタンク、The Institute for Defence Studies and AnalysesのAbhijit Singh研究員は、9月17日付けのWeb誌、The Diplomatに、“Rebalancing the Maritime Pivot to Asia” と題する長文の論説を掲載し、① シリア危機の直中で、アメリカのアジアの海洋への「軸足移動 (“pivot”)」政策が死んだと噂され、ワシントンが既に東アジアに対するコミットメントの再検討を始めたとの憶測も高まった、② しかし、「軸足移動」政策の死亡記事を出すのは時期尚早であるとして、要旨以下のように論じている。

(1) アメリカの「軸足移動」を巡る最近の動きは、中東でどのような挑戦に直面しても、それへの対処能力を落とすことなく、東アジアにおいてアメリカが有利な立場から行動できるようにすることに狙いがあるようである。戦力の運用面からみれば、海洋戦力における新たなイニシアチブは戦術的な対抗戦略の一環と見られ、そこでは、東太平洋への「軸足移動」に基づく戦力配備のテンポを一時的に落とすことによって、地中海における海軍力のプレゼンスを強化するとともに、一方で、米海軍は、中国海軍に対してむしろ宥和的な姿勢をとっているように見られる。

(2) 最近の米中間の動向は、こうした方向を示している。例えば、9月6日には中国海軍の艦艇と米海軍がハワイ沖で合同演習を行った。このことは前例がなくはないが、稀なことで、両国海軍の相互運用面における関係改善を示している。更に、中国の常万全国防部長がハワイの太平洋軍司令部とコロラドの北方軍司令部を訪れてからわずか3週間後に、中国海軍の呉勝利司令員が訪米に招請された。ヘーゲル米国防長官との会談で、常万全国防部長は、米中海洋関係の強化に向けて中国がとる幾つかの措置を提議したと見られる。 こうした相互交流は一過性の出来事ではない。むしろ、米中間で発展しつつある海洋を舞台にした関係発展の一部である。8月下旬には、米中両国海軍はアデン湾で、合同演習を実施した。米海軍は、中国海軍との最近の交流を、太平洋における偶発的事故を防ぐことを狙いとした、戦略的な「信頼と透明性」を向上させるものと見なしている。中国海軍も、アメリカの再均衡化に懸念を示しているにもかかわらず、こうした動きを歓迎している。中国海軍は、海洋空間識別における協力を目指しているだけでなく、2014年のRIMPAC演習参加への意志も示している。実際、こうした米中両国海軍の穏やかな関係は、海洋問題の専門家達を驚かせた。彼らは、数カ月前まで、両国海軍が太平洋において「目には目を」の対決シナリオに向かっていると見ていたからである。

(3) しかしながら、全体を俯瞰すれば、こうした関係は、全体の半分にしか過ぎないことが分かる。子細に見れば、米中両国海軍は、「戦略的調整 (“strategic accommodation”)」を図っているようである。「戦略的調整」とは、両国の戦略的利益がぶつからない分野でのみ協力しようとするものである。しかしながら、東アジアに表れつつある新たな動態における最も重要な部分は、米中両国が協力できない海域についての暗黙の認識である。これは、中国と米国の同盟国の戦略的利益と影響力にとって核心となる海域、即ち、西太平洋と東太平洋の抗争海域である。米海軍は、新たな配備計画に従って、西太平洋におけるプレゼンスを強化しつつある。アジアにおける再均衡化戦略の下、米海軍の最優先課題は、死活的な地域である、西太平洋にその資源を投入することである。

(4) 「軸足移動」の成功にとって重要なことは、米軍部隊や海軍艦艇のための基地施設の整備である。ワシントンは、マニラとの間で、20年程度の期間を想定した長期的な米軍基地施設の提供に関して協議してきた。フィリピンは、南シナ海の紛争海域への迅速なアクセスを狙いとして、主要な空、海軍基地を以前の米海軍基地であったスービック湾に移転させることを計画している。マニラはスービック湾へのアメリカのアクセスを認めるための法的措置を検討している段階といわれるが、アメリカは、マニラが受け入れやすい形式、即ち、本格的な軍事基地よりも、ローテーション配備による「半恒久的な」アクセス協定を求めている。一方、日本は、「軸足移動」の停滞を熱心に補完しようとしている。安倍首相は8月のマニラ訪問で、フィリピンに巡視船10隻を供与することを表明したが、これは高圧的主張を強める中国への牽制と見られる。日本は、海洋における領有権問題と海洋政策について、ベトナムやタイを含む関係各国と積極的に政策調整を行っている。

(5) アメリカの長期な狙いは、ASEAN諸国が一致して、南シナ海における行動規範に調印するよう中国に圧力をかけるように仕向けることである。「軸足移動」を成功させるためには、ワシントンは、東南アジア海域における軍事プレゼンスを維持することが必要であることを認識しなければならない。再均衡化戦略は、軍事プレゼンスの維持を狙いとしたものであり、増大する中国パワーに対するアメリカによる安全の保証を弱めないようにすることである。しかしながら、アメリカは、中国のあからさまな反発を招かないように注意しなければならない。中東やその他の地域での危機対処に当たって、中国の協力が不可欠な場合があるかもしれないからである。「軸足移動」政策は常に、不安定な国際秩序の予測し得ない変動に弄ばれる危険に晒されている。従って、現実的で実際的な目的を追求することが賢明であろう。柔軟性が融通無碍な外交政策の特徴であるとすれば、「軸足移動」政策は結果的には、厳密な軍事的対応策より、政治的、外交的な均衡化措置としての色合いがより強くなっていくかもしれない。

記事参照:
Rebalancing the Maritime Pivot to Asia

9月17日「ロシアのアジアへの戦略的な『軸足移動』宣言と対中関係―インド人専門家論評」(South Asia Analysis Group, September 17, 2013)

インドのシンクタンク、South Asia Analysis Groupの顧問、Dr. Subhash Kapilaは、9月17日付けの、“Russia’s Strategic Choices in the Asia Pacific” と題する論説で、ロシアのアジアへの戦略的な「軸足移動」宣言が信頼できるものになるためには、対中関係を見直す必要があるとして、要旨以下のように論じている。

(1) プーチン大統領は2012年9月、ウラジオストクでのAPEC首脳会議で、ロシアのアジアへの戦略的な「軸足移動 (pivot)」を宣言した。筆者は2013年4月、「ロシアのアジアへの戦略的な『軸足移動』は、そのタイミングからも、その裏にある意図から見ても、戦略的なゲームチェンジャーとなるであろう」と指摘したが、宣言から1年、ロシアがアジア太平洋地域のゲームチェンジャーとして台頭してきた兆候は見当たらない。このことは、ロシアのアジア太平洋地域における戦略的選択とロシアがこの不安定な地域で追求しようとする戦略的方向性に対する疑問を提起する。即ち、2008年~2009年以降の南シナ海での中国とベトナム、フィリピンとの軍事的なエスカレーション、また最近の東シナ海における日本と中国の軋轢によって、中国の戦略的イメージが大きく損なわれたという事実に、ロシアが気付かなかったはずがない。中国がもはやアジア太平洋地域の平和と安全の責任ある利害関係者として認識されなくなり、一方で、アジア各国の首都では、「中国の脅威」が現実になりつつあるという認識が強まり、このことが域内各国の戦略計画における重要な要素になっている。

(2) このような環境下で行われた、最近の中国とロシアの合同海軍演習は、初めて実際の運用ドクトリンに基づいて実施された。この演習は、ロシアが向かおうとしている方向について、アジア太平洋地域の戦略的関心を喚起するものとなった。アジア各国の首都で関心を高めたのは、ロシアがこの高度な中ロ合同演習を通じて、領有権紛争における軍事的威嚇と侵略の主役である中国海軍の戦闘能力の向上に手を貸した、ということである。このことは、ロシアがアジア太平洋地域におけるパワープレイで、アメリカと戦略的に対等であったかつての地位に、そしてそれを回復するための今の地位に相応しい、独自の姿勢と態勢に固執してきた戦略的思考に反するものである。

(3) 国際関係とパワープレイにおいては、パーセプションが重要である。アジア太平洋諸国が「中国の脅威」を認識する環境下で、ロシアは、中国と同盟関係を強化していくことができるであろうか。ロシアが中国と戦略的な提携を強めることは、中国と領有権問題を抱えているアジア太平洋地域の主要国、インド、日本及びベトナムとの関係においても大きな犠牲を払うことになりかねない。ロシアは、その立ち位置が中国との戦略的な提携によって強く影響されているということを無視できるであろうか。

(4) ロシアの外交政策にとって、中国との関係強化だけでは、アジア太平洋地域への戦略的「軸足移動」を遂行できないであろう。ロシアは、インドとベトナムとの長年の戦略的連携をテコにする必要があろう。ロシアは、ロシアの「中国コネクション」のために停滞したインドとベトナムとの連携を復活させる必要がある。同じように、ロシアは、日本との新たな関係を構築しなければならない。ロシアがアジア太平洋地域において独立した大国として戦略的な責任を果たすためには、東シナ海と南シナ海における領有権紛争に対する明確な態度を示す必要がある。アジア太平洋地域の海洋主権をめぐる紛争に対するロシアの沈黙は、中国を支持することを意味する。ロシアは、こうした対外的な印象を放置できるであろうか。

(5) 結局、ロシアのアジアへの戦略的な「軸足移動」宣言は、アジア太平洋地域への迅速な戦力投射能力を持った軍事力を極東地域に展開しない限り、無意味なものであろう。ロシアがアジア太平洋地域における対抗勢力 (countervailing power) として登場したとき、初めてこの宣言が信頼できるものとなろう。そして、アジア太平洋地域諸国の安全保障の観点からすれば、ロシアのパワーが中国を牽制することに使われない限り、ロシアのアジアへの戦略的な「軸足移動」は無意味なものとなろう。この点におけるロシアの戦略的ジレンマは大きいが、中国に対するアジア諸国のパーセプションも考慮することが必要である。これら諸国にとって、「中国の脅威」は現実のものである。従って、ロシアが大規模な軍事演習を通じて中国との軍事的関係を強化することは、例えその狙いが対米考慮にあったとしても、アジア太平洋地域におけるロシアのイメージと立ち位置を改善することにならないであろう。

(6) アジア太平洋地域においてロシアを待ち受ける厳しい戦略的な選択は、ロシアが中国に対する政策を変えることができるかどうかである。ロシアは、最近の歴史に見られたように、中国がロシアを狙いとしてアメリカとの友好的な関係を目指す「戦略的な転換」を行う可能性を無視できない。また、ロシアは、エリツィン時代の外相が宣言したように、ロシアを西欧の「自然の同盟国」とした、自らの大西洋主義への転換の歴史も無視できない。信頼できない中国との連携によっても、また西欧への転換によっても、ロシアの戦略的な未来は保証されない。この相克を克服するのは、「独立したパワー・センター」としてのロシアの外交政策宣言である。ロシアの外交政策の将来は、ロシアがインド、ベトナム両国との戦略的連携を再構築するとともに、日本との新たな戦略的関係を拓くことを選択して、初めて信頼できるものとなろう。そのためには、「中国という重荷 (‘China Baggage’)」を捨てなければならない。ロシアにその用意があるであろうか。

記事参照:
Russia’s Strategic Choices in the Asia Pacific

9月17日「気候変動、海洋生物に影響」(The Ecologist, September 17, 2013)

地球温暖化の影響により、生存が脅かされている生物が増えている。最近は、従来まで注目されていなかった海洋生物においても一般的でかつ広範囲の種が直面している脅威が明らかになりつつなる。地球の表面積の71%を占めるにもかかわらず、海洋における気候変動の影響に関する知識は、陸域生態系に比べて制限されたものであった。

オーストラリア、イギリス、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ及び南アフリカの科学者が参加した研究チームは、気候変動がもたらした海洋生物の変化を追跡する研究を実施し、その調査結果を発表した。先行研究の多くは、特定の場所または分類群を特定したものであったが、今回の研究チームは、世界中の海洋生物の多数の種を対象とする調査を実施した。研究チームは、地域や地球規模の気候変動が主な原因であると考えられた先行研究の文献(857種に対する208の研究)から1,735の海洋生物学的な反応に関するデータベースを集積した。平均40年間の永続的な観測から得られた世界の海洋からのデータは、分布と生物季節学の変化(例えば繁殖行動のタイミング)を推定するために分析された。その結果、世界の海洋で観察された生物の83%が気候変動の影響が予想される傾向が見られた。研究チームによれば、温度上昇と温室効果ガスが明確にリンクされている同じ期間において、グローバルな変化の一貫性が見られたのは、気候変動がもたらした海洋生態系の変化を説明する強力な証拠であるという。

海洋生物の分布においては、予想以上の急速な変化が見られた。植物プランクトン、硬骨魚と無脊椎動物の動物プランクトンなどの遊動遠洋生物について、最も迅速な拡散が発見された。多くの海洋生物は、浮遊する卵や幼虫の状態で急速に分散させることができる。また海洋生態系における第一次生産者である植物プランクトンは、非常に短い世代時間(数時間また、数週間)を持っているため、その集団は環境条件の変化に速やかに反応するという。

海洋は、気候変動による温度上昇の80%以上を吸収し、地表水や地上の空気より3倍遅く温めている。このような海洋の特徴が、海洋生物が気候変動により敏感に反応する原因となっているかに思われる。

このような海洋生態系の変化は、人間にも影響をもたらす。温室効果ガスを削減する必要と同時に、避けられない変化に対応するための準備も求められる。今回の研究から得られた発見は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2014年に公開する予定であり、また国連のための第5次評価報告書の一部に盛り込まれる予定である。

記事参照:
Climate change impacts on marine life

9月17日「インド海軍空母、ロシアでの海上公試完了、11月半ば就役」(The Times of India, September 17, 2013)

インド国防省筋が9月17日に明らかにしたところによれば、空母、INS Vikramadityaは、ロシアの白海とバレンツ海における一連の「全速航行と艦載機の発着艦訓練」を成功裏に完了した。国防省筋は、「空母は現在、セヴェロドヴィンスクの港に帰還しており、今後、11月15日の就役に向けての準備が行われる。2014年初めまでには、インド海軍の乗組員によって、インドに回航されることになろう」と語った。結局、インドは、同空母の改修経費として、23億3,000万米ドルを支払ったが、2004年1月(2008年8月引き渡し)の当初契約は9億7,400万ドルであった。更に、インドは、同空母と現在建造中の国産空母、INS Vikrantの艦載機として、ロシア製のMiG-29Kを20億ドルの経費で45機導入する。INS Vikrantの建造は遅れており、引き渡しは早くて2018年末頃と見込まれている。

インド海軍は、2つの空母建造計画の遅れのために、艦齢54年の空母、INS Viraatを2018年まで引き続き運用する。同艦は、11機のSea Harrierを搭載している。空母計画の遅れは、2個の空母戦闘群を運用するという、インド海軍の長年の夢の実現を遅らせることにもなった。

記事参照:
Aircraft carrier INS Vikramaditya finishes trials in Russia, delivery to India in mid-November
Photo: INS Vikramaditya