海洋情報旬報 2013年9月1日~10日

Contents

9月「『再興中国』とアメリカとの関係―米専門家論評」(The Ripon Forum, Vol. 47, No.3, September 2013)

米シンクタンク、The Brookings Institutionのブッシュ (Richard Bush) 上席研究員は、 シンクタンク、The Ripon Society のThe Ripon Forumに、“China’s Challenge to the United States ” と題する長文の論説を寄稿し、要旨以下のように述べている。

(1) 最近の趨勢は、世界史におけるもう1つのpivot(軸足移動)の時代、即ち、バランスオブパワーの大きな変化が、既存の国際秩序を不安定にするばかりでなく、破壊さえしかねない時代が到来しつつあることを暗示している。第1次世界大戦前のドイツの台頭は、その先例としてしばしば引用される。1世紀を経て、現在の「台頭するパワー (The “rising power”)」は中国であり、一部の人々は、第2次世界大戦後から今日まで、アメリカが構築し、維持してきた東アジア秩序が将来脅かされるのではないか、と恐れている。もちろん歴史は、機械的に同じやり方をなぞっていくものではない。中国とアメリカが相互に受け入れ可能な妥協点を見出すためには、知恵と技能そして運が必要である。

(2) 今回のパワーの移動は、以下のような要因から、独特な事例となろう。

a.第1に、我々は、中国について、台頭というよりも「再興 (“revival”)」と表現すべきである。何故なら、数世紀前まで、中国は東アジアの支配的パワーであったからである。

b.第2に、中国は、既存の国際システムとの相互依存関係を受け入れることによって、失ったパワーを回復してきた。今や、中国は、既存の国際システムに組み込まれており、そこではアメリカとその同盟国は中国封じ込めの選択肢を持っていない。

c.第3に、中国のGDPが間もなく世界最大になると見られるが、このことは、中国がアメリカに代わって自動的に世界の支配的な政治的、軍事的パワーになるということを意味しない。中国の巨大なGDPは、膨大な人口の所産に過ぎないからである。

d.第4に、中国社会はこの30年間の急激な変革に伴って進化しており、中国指導部は、経済成長を維持できるか、社会的安定を保証できるか、そして薄れつつある共産党支配の正当性を回復できるかといった、一連の政治的課題に直面している。内圧に対する当面の対応は、外的環境を破壊するより、むしろ安定化することであった。このことは、アメリカに対する圧力を軽減させることになる。

e.最後に、中国の軍事力近代化の速度は漸進的で、相当な長期間、グローバルなレベルでアメリカに挑戦できるようなものではないであろう。中国軍は、米軍がこの数十年間にわたって実施してきたような軍事力の投射能力を持っていない。

(3) 実際、台頭するパワーは、グローバルに展開する前に、まず自国周辺を支配しようとする。しかしながら、東アジアに位置する中国にとって、これは言うは易く行うは難しである。アメリカは1950年以来、自国の国益を擁護する最善の方法が太平洋と(特に日本と韓国との同盟を通じて)東アジア沿岸地域に多面的な機能を持つパワーを展開させることであるとの考えに立った、この地域の支配的パワーであった。このような前方展開戦略は、アジア諸国に対して、経済的発展を重視し、戦争に至る緊張を緩和させることを促す、好ましい外的環境を創り出すことになった。中国自身も、1978年以降、毛沢東主義のイデオロギー的な軛を脱し、アメリカの政策の受益国となってきた。アメリカが支配的パワーとして東アジアに留まる限り、中国は、自国周辺地域において支配的な地位を確立することは難しい。(しかしながら、もし地域紛争が生起した場合は、中国軍は、「遠隔地の不利 (The “tyranny of distance”)」に苦しむことはないであろう。)従って、中国は、自らの増大する影響力を如何に行使するかについて、選択肢を持っている。即ち、アメリカが主導してきた覇権的な安定を壊そうと決心することもできるが、そうすることを運命付けられているわけでもない。中国の指導者は、経済的繁栄と社会の安定が依然として世界の他の地域との経済的結び付きに依存していることを理解している。

(4) 東アジアには、もし処理を誤れば、中国とアメリカの緊張を高め、両国を永続的な敵対関係とし、その結果、東アジアの秩序を破壊しかねない、幾つかの摩擦要因がある。

a.まず第1の要因は、国家的栄光の再興は国家的統合を欠いては不可能である、との北京の信念に由来するもので、ここでの鍵は台湾である。北京と台北との間には多くの相違点があるが、現在のところ、中台関係は安定しており、従って、中国が統一達成を先延ばしする時ではないと結論付ける新たな理由を見つけない限りにおいて、こうした状態が継続しそうである。

b.2つ目の要因は、ワシントンと北京のそれぞれの同盟国である韓国と北朝鮮に対するコミットメントに由来する米中間の緊張の高まりである。中国は、北朝鮮の核兵器開発計画が危険であり、地域の不安定化を招くという点ではアメリカと基本的に一致している。しかしながら、北京は、金一族支配体制を全面的に見放す意志も、また緩衝国家を取り除く意志も持っていない。現在の危険は、北朝鮮による韓国への通常戦力による限定的な攻撃がエスカレートし、中国とアメリカをそれぞれの同盟国側から軍事紛争に巻き込むことである。北朝鮮の崩壊も同じような結果を招く可能性がある。しかしながら、北京は、北朝鮮の危険性を認識しており、アメリカと韓国との協調が必要と考えているようである。

c.そして第3の要因は、中国がこの15年以上にわたり、その戦略的な防衛線を東と南の方向に徐々に押し出そうとしてきたことである。中国が台湾の独立への動きを阻止するためには、中国は、少なくともアメリカに介入を躊躇させる必要があろう。北京は、東シナ海と南シナ海を天然資源の宝庫と見ており、これらの海の島嶼に対する領有権を主張している。そしてその主張を確実なものにするために、海・空軍能力や海洋法令執行機関の能力を強化している。問題は、アメリカの同盟諸国もこれら海域の島嶼の一部に対する領有権をしていることに加えて、米海軍や日本の海上自衛隊が伝統的に優位を維持してきた海域で、中国海軍の活動が活発になってきていることである。しかも、中国は、領有権の主張に当たって高圧的な行動をとり、それがこの地域の緊張を高めている。紛争を回避し、リスクを軽減する措置はあるが、北京は未だ、そうした措置をとる政治的意思を示していない。

(5) 米中間の軍事紛争が生起する可能性はゼロではないし、もし生起すれば、その影響は広範に及ぶ。永久的な敵対関係は、安全保障問題に止まらず、経済関係にも及ぶ。もし両国間の抗争を回避しようとするなら、幾つかの措置が必要である。何よりも、アメリカと中国の指導者は、協力関係の重要性と特に東アジアにおける摩擦要因をコントロールする必要性について、理解を共有しなければならない。そして、もしアメリカが中国との和解を促進するのであれば、まずこの数十年で低下してきた自らの国家のパワーを再建しなければならない。それなしには、中国は、アメリカと和解しようという動機を持たず、むしろ挑戦しようとするであろう。要するに、アメリカの未来と再興した中国との関係は、アメリカ自身の行動にかかっているのである。

記事参照:
China’s Challenge to the United States

9月「アメリカの東南アジア戦略に必須の要件―米専門家論評」(Foreign Policy Research Institute, E-Notes, September, 2013)

米シンクタンク、Foreign Policy Research InstituteのE-Notes 9月版に、Woodrow Wilson International Center for ScholarsのMarvin C. Ott上席研究員が、“The Imperative for an American Strategy for Southeast Asia” と題する長文の論説を寄稿し、アメリカの東南アジア戦略に必須の要件について、要旨以下のように述べている。

(1) 地政学的に見れば、ベトナム戦後の東南アジアは、例外的な地域的安定を享受してきた。それには、幾つかの要因があった。

a.第1に、域内各国各政府の最優先課題は経済成長と社会の近代化であるという、コンセンサスがあったこと。

b.第2に、日本は、投資、貿易及び金融面で大きな経済的役割を果たしたが、その経済力を戦略的な影響力に転化しようとしなかったこと。

c.第3に、東南アジアは、1967年のASEAN創設を皮切りに、ASEAN諸国間そしてASEAN諸国とアジア太平洋諸国間との、経済、外交、文化、政治、技術及び安全保障分野での結び付きを促進する地域機構のアーキテクチャを形成してきたこと。

d.第4に、毛沢東の死後、北京は遅まきながら、地域機構に参加し始めたこと。中国は、潜在的な不安定化要因でありながらも、地域全体の成長に不可欠な存在として、建設的なパートナーとなった。

e.第5に、アメリカは、こうした地域環境の醸成に重要な役割を果たしてきたこと。ワシントンの戦略的な無関心にもかかわらず、米太平洋軍は、南シナ海からマラッカ海峡を経てインド洋に至る地域に海、空軍力のプレゼンスを維持してきた。

しかしながら、この3年、中国は、軍事力の急激な増強などを背景に、強硬な対外政策を取り始めた。

(2) 東南アジアとその周辺におけるアメリカの軍事力については、ベトナム戦後からつい最近まで、「戦略なき政策 (“policy without strategy”)」の時代と特徴付けることができる。米太平洋軍は、域内全域におけるプレゼンスの維持に積極的であった。それ自体、戦略的に意味があったものの、全体的な戦略によって導かれたものではなかった。アメリカはつい最近まで、中国の海洋進出に対して戦略的な方針を定めることができなかった。ようやく2009年~2010年になって、アメリカは、中国に対する戦略地政学的な対応を取り始めた。アメリカは、「軸足移動 (“pivot”)」、あるいは「再均衡化 (“rebalance”)」戦略を掲げ、軍事力を東南アジアに指向し始めた。実際、アメリカの「軸足移動」は、東南アジアにおいて明確な優位を求める中国の野心を牽制するアメリカの意図の宣言である。この宣言を効果的なものにするためには、堅牢な戦略が必要である。米中両国の軍事力が益々同じ海域でひしめき合うようになり、状況は極めて危険になってきている。賢明で多面的なアメリカの戦略策定が喫緊の課題になっている。

(3) 安全保障戦略の策定は、関連する国益の理解から始まる。アメリカの戦略思考において、中国は中心的要素を占めている。アメリカの観点からすれば、東南アジアと中国に対するアメリカの国益は、両立できるのが理想的である。強力で健全な米中2国関係は東南アジアにとっても有益であることは間違いない。しかしながら、もし中国が東南アジアを自らの指示に従う影響圏として、また南シナ海を公海ではなく自国の主権が及ぶ管轄海域と見なし、そしてアメリカがこうした中国の野心を黙認するつもりがないとすれば、アメリカの戦略立案者が直面する課題は、極めて大きくかつ困難なものとなる。

(4) 東南アジアに関するアメリカの国益は、東南アジア諸国の自立と自決が維持されることであり、当該地域の安定と自由貿易の維持を可能とする航行の自由を確保することである。従って、東南アジアの現状から見て、アメリカの国益は現状維持である。中国に関しては、アメリカの戦略的な関心は中国との協力関係を確立することであり、ワシントンは、中国を地域大国として、そして将来の超大国として認める用意がある。アメリカの観点からすれば、両国間には重要な国益に関して固有の対立要因はない。経済的な相互依存が深化した米中関係は、1950年代のソ連封じ込め戦略とは全面的に様相を異にしている。最近行われたオバマ大統領と習近平主席との会談にて提起された「新しい大国関係」は、両国間の協力が可能なだけでなく、必要であるとの確信の現れである。しかしながら、中国が東南アジアに対する政策展開に当たって、(アメリカの対応を牽制するために)米中関係を人質にとっているとの認識が、ここ2~3年の間、ワシントンで出始めている。

(5) アメリカが中国の野心に効果的に対応するためには、以下のような慎重に考慮された戦略が必要であろう。

a.米国の国益にとって、この地域の複雑性をどのように活用すべきか十分検討すべきである。東南アジアにおいて、中国の野心に対する最も効果的ブレーキは、自らの国益を護る意志のある複数のアクターの存在である。中国の戦略立案者にとって、南シナ海における中国と米国の2国間対峙は、一部のASEAN諸国と東南アジア域外国を巻き込む対峙よりも、遙かにコントロールし易い事態である。プレーヤーの数が多く、事態が複雑で、相互関係が入り組んでいればいるほど、中国が結果を左右できる可能性は小さくなろう。アメリカの戦略の中心的な課題は、そうした複雑性を深め、そして活用することである。

b.主要な海洋国家や東南アジア沿岸諸国と共有するシーレーンは、アメリカの不可欠の、あるいは「核心的」国益として、明確に位置付けられるべきである。シーレーンが「グローバル・コモンズ」であるとする、アメリカの主張は、関係各国に広く認識されなければならない。

c.アメリカの戦略は、国連海洋法条約 (UNCLOS) と密接に関連したものでなければならない。UNCLOSは、中国も加盟国であることから、中国の行動に対する重要な潜在的牽制力である。この点で、中国の主張の法的有効性について、フィリピンがUNCLOSのプロセスに従って仲介裁判所に提訴したことは、興味深くかつ重要である。

d.ASEANと「ASEANプラス」のメカニズムは、この地域に対する戦略にとって、複雑性と更なる牽制要因を加えるものである。東南アジアの多国間メカニズムが中国の戦略に益するか、害するかどうかについて、中国の見方は定まらなかった。米国にとって、これが有益であることは明白である。アメリカの戦略は、これらのメカニズムをアメリカのパートナーにするようなものでなければならない。

e.中国の急速な海軍力と海洋法令執行能力の増強と展開を考えれば、米太平洋軍隷下の軍事力は、アメリカの戦略の中核要素であることは明白である。結局のところ、南シナ海における領有権主張を押し進める中国の決心に対する唯一の実際的牽制力は、米海軍力と空軍力である。しかし、より過熱した地域安全保障環境においては、アメリカの力と影響力を支えるプレゼンスを維持し、そして同盟国に対する再保証と能力構築支援を提供するために、これらの軍事力を如何に活用していくかが重要な課題となろう。

f. 戦略は、域内各国政府との間の深い相互理解の上に構築しなければ、成功しない。そのためには、ASEAN諸国との間で、多くのレベルにおける実質的な戦略的交流が必要となろう。こうした戦略的交流の重要な目的は、中国とその戦略的意図に関する認識、そして特に、誤算による紛争回避を狙いとした、南シナ海における紛争対処計画を共有することであろう。

こうしたことが、「軸足移動 (“pivot”)」という宣言戦略に実質的な中身を加える効果を持つことになろう。

記事参照:
The Imperative for an American Strategy for Southeast Asia

9月1日「ベトナム、沿岸防衛能力強化」(The Wall Street Journal, September 1, 2013)

ベトナムはこのほど、沿岸防衛能力強化のために、哨戒艇3隻を導入した。同時に、ベトナムは、海洋警察局をベトナム沿岸警備隊に改称し、3,200キロに及ぶ沿岸域の主権防衛任務を強化する。沿岸警備隊は、国防省の管理下に入り、哨戒艦隊と3機のCasa-212-400哨戒機を運用する。また、ベトナムは、9月第1週にホーチミン市で、西沙諸島及び南沙諸島に対するベトナム主権を歴史的に証明する、16世紀から1933年にかけてベトナム、中国及び西欧諸国で刊行された、200点の地図と文書を展示する。

記事参照:
Vietnam Strengthens Coast Guard Amid South China Sea Tensions

9月3日「ロシア北洋艦隊任務部隊、北極海東部海域へ」(RIA Novosti, September 3, 2013)

ロシア北方艦隊広報官が9月3日に明らかにしたところによれば、北洋艦隊の任務部隊は北極海東部海域に向けて航行中である。この航海は、ロシアの北極政策に基づく国防省の計画の一環で、北極海の主導的大国としてのロシアのステータスを高め、安全保障を強化し、そして国益を護ることを狙いとしている。誘導ミサイル原子力巡洋艦、Pyotr Velikyを旗艦とする任務部隊には、大型強襲揚陸艦、Olenegorsky GornyakKondopogaに加えて、各種の支援艦艇から構成されている。広報官によれば、任務部隊は現在、セヴェロモルスクを出航し、バレンツ海を航行中である。任務部隊は、ノヴォシビルスク諸島まで北方航路を航行し、その間、戦略的に重要な海域におけるロシア海軍のプレゼンスを再建するための計画の一環として、各種の訓練を実施する。広報官によれば、これは、北洋艦隊による過去2年間で2回目の大規模な航海である。

記事参照:
Russian Naval Task Force Sets Sail for East Arctic
Photo: Nuclear-powered missile cruiser, Pyotr Veliky

9月3日「川崎汽船、次世代自動車専用船4隻建造」(Marine Log, September 3, 2013, and 川崎汽船、ニュースリリース、201393日)

川崎汽船は9月3日、次世代自動車専用船4隻を建造すると発表した。同社によれば、新来島どっく及びジャパンマリンユナイテッドで各2隻建造され、2015年度に竣工予定である。新型船は、受け入れの港湾能力を考慮して、全長を200メートル以内に抑えられる一方で、全幅は37~38メートルまで拡張されており、これまでの自動車専用船としては最大幅となっている。乗用車換算約7,500台の積載能力を持つ。また、新型船は、風圧抵抗減衰技術や省エネ機器を採用しており、船外ランプや艙内の荷役設備も工夫され、自動車に加えて、その他のRORO貨物も積載できる。

記事参照:
“K” Line orders widest car carriers ever built
川崎汽船、ニュースリリース

9月3日「中国艦隊、南米訪問へ」(Xinhua, September 3, 2013)

中国海軍の2隻の戦闘艦は9月3日、南米訪問のために、海南省三亜の港を出港した。2隻は南海艦隊所属の誘導ミサイル駆逐艦「蘭州」とフリゲート「柳州」で、東海艦隊の補給艦「鄱陽湖」を加えて、3隻編成の艦隊となる。「鄱陽湖」は9月8日に出港し、その後2隻の戦闘艦と合流する。全行程は約2万8,000キロで、太平洋を横断し、パナマ運河を通って南大西洋からマゼラン海峡を経由して帰国する。この間、中国海軍としては、初めてアルゼンチンを訪問する。

記事参照:
Chinese navy fleets set off on South American visit

9月5日「ベトナム海軍、海洋哨戒飛行隊編成」(Xinhua, September 6, 2013)

ベトナムのニュース・ウェブサイトが9月6日に報じたところによれば、ベトナム海軍は9月5日、DHC-6海洋哨戒飛行隊を編成した。報道によれば、編成式典は、ミン (VADM Pham Ngoc Minh) 海軍総参謀長臨席の下、ハイフォン市で行われた。ミン総参謀長は、DHC-6飛行隊は、2011年12月25日に編成されたEC-225ヘリ飛行隊と共に、近代的な海軍力を増強し、そしてベトナムの領海と島嶼の防衛任務を遂行する上で、重要な措置である、と強調した。8人のベトナム人パイロットは既に7月10日、カナダでのDHC-6 Twin Otter Series 400 (Guardian 400) の教習課程を修了している。ベトナム海軍は2010年5月に、カナダのViking Air社から6機のDHC-6購入契約を結んでおり、同社によれば、同機には、輸送、海洋哨戒監視、補給及び捜索救難用の装備が備えられており、更に特別仕様の海洋哨戒、沿岸監視用の装備も搭載されている。

記事参照:
Vietnam establishes seaplane squadron

9月5日「ロシア、北方航路の管理強化」(Business INSIDER, September 5, 2013)

米のニュース・ウエブサイト、Business INSIDERは9月5日付けで、ロシアは、北方航路 (NSR) の管理を強化しようとしているとして、要旨以下のように述べている。

(1) 北方航路路 (NSR) に対するクレムリンの戦略は、世界最強の原子力砕氷船団の建造に資金を投入するとともに、ロシアが将来的に原子力砕氷船の先導によるNSRの航行管理を確実にしようとすることである。しかしながら、原子力砕氷船の建造と運用コストは非常に高く、原子力砕氷船による先導経費を考えれば、NSRが代替ルートとしてスエズ運河ルートと競合するのは難しい。

(2) メドベージェフ前大統領とプーチン大統領は、サンクトペテルスブルグの氷山局の設計に基づいて、3隻の新型原子力砕氷船建造のための資金供与を命じた。最初の砕氷船は、既にサンクトペテルスブルグの造船所において建造中で、2017年までに配備される。2隻目と3隻目は2020年までに配備されることになっている。連邦財務省は、建造費として1,000億ルーブル(31億ドル)を投入する計画である。現在、原子力砕氷船の分野では、ロシアの独占状態である。新型原子力砕氷船は、現在NSRで利用されている5隻の砕氷船を代替する。NSR管理局は、2013年3月にモスクワに開設された。管理局の新しい規則は、NSR航行船舶に対して、ロシアの砕氷船による航行支援の申請を義務付けている。

(3) ロシアの統計によれば、2012年には、46隻の船舶がNSRを通航し、運搬貨物量は約200万トンであった。貨物の多くは、石油精製品であった。他方、スエズ運河を通航した船舶は、2012年には1万7,225隻ので、運搬貨物は9億2,850万トンであった。2013年8月23日現在、NSR通航船舶はわずか16隻で、運搬貨物は43万3,000トンで、2012年同時期より大幅に下回っている。一方、NSR通航許可申請件数は現在、547件で、467件が認可され、不許可率は15%に達している。NovatekのLNG精練所が2017年にヤマル半島で操業を開始すれば、LNGは、ヤマル半島で建設されている新港、サベッタから16隻の新造LNGタンカーによって、東方向けと西方向けにLNGが積み出されることになろう。各LNGタンカーの搭載量は15万トンで、年間1,600万トン以上のLNGを積み出すことができるかどうかは、ロシアの砕氷船の能力にかかっている。

記事参照:
Russia Intensifies Control Over Northern Sea Route Shipping, But Suez May Still Win
Map: Arctic Shipping Routes

9月6日「地球最大の火山発見、太平洋の海底」(gCaptain, September 6, 2013)

米ヒューストン大の研究チームはこのほど、日本の東方約1,600キロの太平洋の海底、約1億3,000~1億4,500万年前に形成されたシャツキー海台 (Shatsky Rise) に、単独の火山活動で形成されたものでは地球最大の火山があるのを発見した。この火山はTamu Massifと命名され、その面積は米ニューメキシコ州にほぼ相当する約20万平キロで、太陽系最大とされる火星の火山に匹敵する規模である。水深約6,400メートルの海底から2,000メートル程度盛り上がった状態になっている。この火山は数百万年間、活動が止まっており、噴火の心配はないという。この火山の発見は厳密には最初ではなく、約20年前から存在が知られていたが、単独の火山か、あるいは一連の火山活動によって形成されたものかは不明であった。

記事参照:
Research Vessel Aids in Discovery of World’s Largest Volcano
Photo: 3D plot of the topography of Tamu Massif

9月7日「ロシア、新型SSBNの公試を一時停止」(Barents Observer, September 9, 2013)

ロシアは9月7日、新型弾道ミサイル原潜 (SSBN) 2隻からのBulava SLBMの発射実験が失敗したことから、新型SSBNの公試を一時停止した。ロシア国防省筋によれば、発射実験は9月6日、白海で公試中の新型SSBN、Alexander Nevskyからカムチャツカ半島のクラ実験場に向けて行われたが、数秒後にシステムの誤動作によって北極海に墜落したという。Bulavaの発射実験は2004年以来、19回か20回行われたが、公式発表によれば、内、8回は失敗に終わった。しかしながら、一部の専門家は、失敗回数はもっと多いと見ている。チルコフ海軍総参謀長が主宰する委員会が、失敗の原因を調査中である。ショイグ国防相は9月7日、Borey級SSBN、Alexander NevskyVladimir Monomakhの公試を一時停止することを命じた。両艦からは、更に5回のSLBM発射実験が計画されていた。この5回の発射実験は、艦齢40年近い、世界最大のSSBN、Typhoon級のDmitry Donskoyによって実施されると報じられている。同艦は2004年以来、Bulava SLBMの発射実験用に改修され、Borey級のYury Dolgorukyが2011年6月に最初のBulava SLBMの発射実験を行うまで、実験艦として運用されてきた。Alexander Nevskyは11月15日に、Vladimir Monomakhは12月半ばに海軍に引き渡されることになっていた。しかしながら、両艦の就役は、Bulava SLBMの発射実験の成否にかかっており、今のところ就役時期は未定である。

記事参照:
Russia puts submarine trials on hold after Bulava failure

9月10日「中国船、北方航路経由でロッテルダムに到着」(gCaptain, Reuters, September 11, 2013)

8月8日に大連港を出航した、中国遠洋運輸公司 (COSCO) 所有の一般貨物船(香港籍船)、「永盛」(1万9,150DWT) は、北方航路経由で、9月10日、33日間の航海でオランダのロッテルダム港に到着した。これは、中国の商船による初めての北方航路経由の航海であった。北方航路経由で、スエズ運河経由より約2週間、航海期間を短縮できた。

記事参照:
Port of Rotterdam Sees Arrival of First Commercial Ship via Northern Sea Route
Graphic: The track of the MV Yong Sheng
Photo: 「永盛(Yong Sheng)」