海洋情報旬報 2013年6月21日~30日

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6月21日「セカンド・トーマス礁、南シナ海における次のフラッシュポイントに―CSIS専門家論評」(China Brief, Vol. 13, The Jamestown Foundation, June 21, 2013)

米シンクタンク、The Center for Strategic and International Studies (CSIS)の上席研究員、Bonnie S. Glaserは、CSISインターンのAlison Szalwinskiと共に、6月21日付のWeb誌、China Briefに、“Second Thomas Shoal Likely the Next Flashpoint in the South China Sea” と題する論説を掲載し、セカンド・トーマス礁(Second Thomas Shoal、フィリピン名;Ayungin Shoal、中国名;仁愛礁)が南シナ海における次のフラッシュポイントになる可能性があるとして、要旨以下のように述べている。

(1) セカンド・トーマス礁は、長さ15キロ、幅5キロの環礁で、パラワン島から105カイリの位置にあり、フィリピンが石油・天然ガス開発を進めるリード・バンク(中国名;礼楽礁)への戦略的な出入り口にある。フィリピンは1999年に、第2次大戦当時の揚陸輸送艦、BRP Sierra Madreをセカンド・トーマス礁に座礁させ、該船はそれ以来、約10人の海兵隊員の基地となっている。しかし、該船は錆びて腐蝕しつつあり、アキノ大統領は、フィリピンのプレゼンス誇示のために、補修することを指示した。マニラは5月初め、中国の監視船が2隻と海軍のフリゲートが1隻、海兵隊員への補給を妨害するためにセカンド・トーマス礁周辺に展開していることに対して、中国に公式に抗議した。フィリピン外務省は、セカンド・トーマス礁を、フィリピンの不可分の領土と主張し、中国はこの海域から撤退すべし、と主張している。一方、中国は、同礁に対する議論の余地なき主権を主張し、主権維持のための哨戒活動を非難される謂われはない、と強調している。

(2) 中比両国は2012年4月、スカボロー礁を巡って対峙し、両国の合意に基づいてフィリピンが艦船を引き上げた後も、中国は、同礁周辺にプレゼンスを維持し、フィリピン漁民の接近を阻止している。スカボロー礁の奪取に成功した後、中国の専門家は、この作戦を、中国の主権と領土保全のための巧妙なパワーの行使と賞賛してきた。この教訓を取り入れて、中国の専門家は、セカンド・トーマス礁に対しても、「キャベツ」戦略を採るよう提案している。この戦略は、漁船を中に、その周りを政府公船と海軍艦艇が取り囲むことで、セカンド・トーマス礁周辺海域に何層もの中国船の環を形成しようとするものである。その狙いは、同礁の座礁船を基地とするフィリピン海兵隊員に対する補給を絶つことで、撤退を余儀なくさせようとすることにある。別の専門家は、この戦略が成功しなければ、BRP Sierra Madreを離礁させることを検討すべしと主張しているが、これはフィリピン海兵隊員が武装していることから、紛争を誘発する恐れがある。

(3) 中国は、セカンド・トーマス礁におけるマニラのプレゼンスを維持するために、アメリカが介入することはないであろう、と見ている。これは、恐らく正しい。ワシントンは武力による現状変更に強く反対するであろうが、米海軍艦艇は、南シナ海の島嶼や環礁を巡って、中国政府公船や海軍艦艇と直接対峙することないであろう。しかしながら、このことは、セカンド・トーマス礁を巡る現在の中比両国の対峙に、全くリスクがないということを意味しない。

(4) フィリピン海軍は、中国海軍とは比べようもなく劣勢で、中国がセカンド・トーマス礁のフィリピン海兵隊を排除しようと決意すれば、同礁のプレゼンスを維持する能力を持たない。それでも、マニラは、戦うかもしれない。以下のいずれかのシナリオでは、両国間に軍事的小競り合いが生起する可能性が高い。

a.中国がセカンド・トーマス礁のフィリピン海兵隊への補給を阻止すれば、マニラは、ヘリによる空中投下で補給しようとするかもしれない。中国がこの補給作戦を阻止すれば、銃火を交わす可能性があり、人命が失われる恐れもある。

b.一方、フィリピンがセカンド・トーマス礁に建造物を構築しようとすれば(中国はスカボロー礁でそうしているとの報道もあるが、フィリピンの専門家はこれを否定している)、中国は、フィリピンの挑発的行為を公に非難するとともに、「キャベツ」戦略を発動するか、あるいはBRP Sierra Madreを離礁させる好機と捉えるであろう。

いずれのシナリオでも、軍事紛争にエスカレートする可能性がある。例え紛争が避けられたとしても、緊張の激化は、中国とASEANの行動規範を巡る交渉の早期立ち上げに大きな打撃となろう。

(5) 南シナ海と東シナ海における中国有利への現状の変更を狙って、中国が政府公船を投入していることは、オバマ政権とその「再均衡化」戦略にとって深刻な挑戦となっている。この地域における平和と安定の保証者としてのアメリカの信頼性は、特にこの地域の条約上の同盟国である、日本とフィリピンにとって重要である。ワシントンは、中国の近隣諸国に対する威嚇的な態度と係争中の島嶼や環礁の現状を一方的に変更しようとする行為を抑止する、効果的な戦略を欠いている。

記事参照:
Second Thomas Shoal Likely the Next Flashpoint in the South China Sea
Chinese warship circling Second Thomas Shoal in Palawan; $1.8-billion Philippine military upgrade planned anew

【関連記事1「フィリピン軍、派遣海兵隊員に叙勲」(South China Mourning Post, June 19 and Philippines Daily Inquirer, June 30, 2013)

フィリピン国防省が6月19日に明らかにしたところによれば、フィリピンは、アユンギン礁(セカンド・トーマス礁)に新たな交代海兵隊員と補給物資を輸送した。カズミン国防相は、駐マニラ中国大使に派遣を通告した。その際、大使は、フィリピンがアユンギン礁に建造物の構築を計画していることに懸念を示した。カズミン国防相は、こうした計画はないと否定した。また、国防相は、大使と同礁における衝突回避について話し合ったが、同礁はフィリピンEEZ内にあり、従って、フィリピンは中国に通告することなく、あらゆる行動をとる自由を有する、と強調した。

フィリピン政府筋が明らかにしたところによれば、西部方面軍のグェレロ (Lt. Gen. Rustico Guerrero) 司令官は、このほどアユンギン礁から帰還した、長髪で、日焼けし、栄養失調気味の海兵隊員に、「ブロンズ・クロス勲章」を授与した。同章は、実戦ではないが命の危険に晒される任務遂行に対して授与される。グェレロ司令官は、派遣隊員を「アユンギン礁の防衛者であり、保護者である」と称えた。アユンギン礁分遣隊は、西部方面軍に情勢報告を挙げ、同方面軍はこれに基づいて、航空機や艦艇を派遣し、検証した上で、政府に報告書を提出する。派遣部隊指揮官の海兵隊曹長は、派遣部隊の士気は高く、彼らは政府が決して派遣部隊を見捨てないことを知っている、と語っている。彼らは、帰還後の恒例となっている、スウィーツ(アイスクリームとドーナツ)を振舞われた。曹長によれば、同礁での食事は毎日が魚で、部隊員が調理する。フィリピン政府筋によれば、軍医の話として、アユンギン礁のようなカラヤン諸島(南沙諸島)に長期派遣されている兵士の多くは、過酷な環境下で、栄養失調や体調不良になっているという。

記事参照:
Philippines sends fresh troops to shoal at centre of dispute with China
Marines posted in lonely, rusty ship on shoal awarded

【関連記事2「中国、フィリピンの仁愛礁占拠を非難」(China Daily, June 27, 2013)

中国外交部報道官は6月25日、フィリピンの仁愛礁不法占拠を決して受け入れない、と非難した。報道官の発言は、フィリピンのカズミン国防相が「仁愛礁はフィリピンEEZ内にあり、従って、フィリピンは中国に通告することなく、あらゆる行動をとる自由を有する」と発言したことに対するもの。報道官は、フィリピンの行動を行動宣言(DOC)に違反していると述べ、仁愛礁に座礁させた戦闘艦を違法と断じた。

記事参照:
China opposes to Philippines’ seizure of Ren’ai Reef

6月22日「中国海賊対処部隊、WFP輸送船護衛」(EUNAVFOR Somalia, June 27, 2013)

EU艦隊所属のイタリア海軍フリゲート、ITS Zeffiroは6月22日午後、南西モンスーンで波立つアデン湾で会同し、世界食糧計画 (WFP) の輸送船護衛任務を、中国海賊対処部隊のフリゲート、「綿陽」に引き継いだ。「綿陽」は、アデン湾からジブチまで輸送船を護衛する。EU艦隊のタラント(RADM Bob Tarrant) は、「EU艦隊と中国艦隊によるWFP輸送船の協調護衛は、洋上における各国海賊対処部隊間の最高レベルの協調行動であり、護衛任務だけでなく、相互に益する他の分野でも更なる協調を期待している」と語った。EU艦隊と中国海賊対処部隊は、2013年後期にアデン湾で海賊対処演習を計画している。

記事参照:
EU Naval Force and Chinese Navy Work Together To Ensure World Food Programme Aid Ship Remains Safe From Pirates At Sea

6月22日「ベトナム海軍哨戒艇、中国とのトンキン湾合同哨戒に向け出航」(China Daily, June 25, 2013)

ベトナム海軍哨戒艇、HQ 011とHQ 012の2隻は6月22日、ベトナム首相と国防相の承認を得て、中国との第15回トンキン湾合同哨戒のために、ダナン港を出港した。2隻には、200人以上の将兵が乗船しており、中国海軍艦艇との間で、捜索救難訓練や情報交換などを行う。2隻は、広東省湛江に寄港し、南海艦隊司令部などを訪問する。

記事参照:
Vietnam joins naval patrol with China

6月23日「インド沿岸警備隊、ソマリアの海賊に放棄された漁船救出」(The Times of India, June 23, 2013)

インド沿岸警備隊巡視船、ICGS Varuna は6月23日、インド南西のラクシャドウィープ諸島西方沖250カイリ余の海域で、ソマリア海賊に放棄されたイランの漁船、FV Al Husaini の乗組員16人(イラン人13人とパキスタン人3人)を救出した。イランのチャーバハール港を出港した漁船は、5月16日にスコトラ島沖でソマリアの海賊にハイジャックされた。海賊は、漁船を25日間母船として使用した後、6月10日に燃料と食料を奪って下船し、漁船を放棄した。インド沿岸警備隊は21日に救援を要請され、ICGS Varuna が現場海域に向かった。また沿岸警備隊は、コーチンから航空機を発進させ、21日に漁船を発見した。ICGS Varunaは22日までに現場海域に到着し、乗組員を救出した後、コーチンまで漁船を護衛した。

記事参照:
Indian Coast Guard Ship Aruna rescues fishermen left stranded by Somali pirates

6月25日「マレーシア国営石油、韓国で洋上LNG施設建造開始」(PETRONAS, News Release, June 25, 2013)

マレーシア国営石油、PETRONASは6月25日、洋上でLNGを生産する、世界初のFloating Liquefied Natural Gas (FLNG) 施設の起工式を、韓国の大宇造船海洋玉浦造船所で挙行した。完成は2015年の予定。FLNG 施設は完成後、サラワク州沖合180キロの、Block SK306にあるKanowit ガス田に配置される。この施設は、年間120万トンのLNG生産能力を持つ。この施設の稼働によって、これまで陸上の施設でしかできなかった、LNGの液化、生産及び積み出しが、陸上から100キロ以上離れた洋上のガス田に隣接した海域で可能になる。また、この施設は、これまで採算が合わないと見られてきたマレーシアの沖合ガス田の開発に向けて、重要な役割を果たすことになろう。

記事参照:
PETRONAS HOLDS STEEL CUTTING CEREMONY FOR FLOATING LNG FACILITY
Kanowit gas field in Block SK306

6月25日「尖閣諸島を巡る日中関係決裂への懸念―キャンベル論評」(Financial Times, June 25, 2013)

キャンベル (Kurt Campbell) 元米国務省アジア・太平洋担当次官補は、6月25日付けの英紙、Financial Timesに、“Threats to peace are lurking in the East China Sea ” と題する論説を寄稿し、北京と東京の指導者がもっと慎重に対処しなければ、尖閣諸島を巡って日中関係が決裂する危険があるとして、要旨以下のように述べている。

(1) 尖閣諸島を巡る状況は、ほとんど理解されていないかもしれないが、深刻である。この問題は、北東アジアを揺るがし、世界経済に衝撃を与えかねない危機的状況を生起させる危険性を内包している。それには幾つかの理由がある。

(2) 第1に、1914年の第1次大戦前夜の欧州諸国のように、東京も北京も、いずれも自国の立場の正当性に確信を持っていることである。更に重要なことは、両国とも、もう少しの圧力で、相手が怯み、引き下がると考えていることである。その結果、双方とも容易にエスカレートしかねない行動をとる危険を冒しやすい。

(3) 第2に、双方とも、危機的状況における危険性を過小評価し、状況を何時でも「コントロール」できると見ていることである。しかしながら、現場では、誤算や不注意によるリスクが常にある。

(4) 第3に、双方の指導層は、相手側の行動に、ある種の固定観念を持ち、その結果、双方は、態度を硬化させ、不信感を募らせている。

(5) 第4に、アメリカの助言は、日中双方の行動に限定的にしか影響を与えていないことである。ワシントンは、水面下では、危機的状況において日米同盟条約の適用を明言しているが、一方でアメリカは創造的外交とアジアでは他にもっと重視すべきことがあるとの認識から、アメリカはそうした危機を回避しようとしていることも明らかにしてきた。

(6) アメリカは、主権問題については一方に与するような立場をとらないが、日中間の互恵的な関係が現代アジアの奇跡の基本的要件であるとの強い認識を持っている。こうした日中関係がなければ、この地域は、不安定で緊張に満ちた未来に急激に傾斜して行くであろう。残念ながら、こうした観念は、日中双方の政策決定者や戦略家よりも、アメリカや近隣諸国を突き動かしているようである。現在のところ、東京も北京も、尖閣諸島を巡って自国が優位に立ち、国内の愛国的心情に訴え、そしていかなる譲歩の気配も見せないようにしようと決心している。

記事参照:
Threats to peace are lurking in the East China Sea

6月26日「ノルウェー、船舶解撤に関する香港条約の最初の批准書寄託国に」(IMO Briefing, June 26, 2013)

ノルウェーは6月26日、「2009年の安全かつ環境上適正な船舶解撤のための香港条約 (The Hong Kong International Convention for the Safe and Environmentally Sound Recycling of Ships, 2009)」の最初の批准書寄託国になった。この日、駐ロンドンのノルウェー大使館から、IMO本部に批准書が寄託された。香港条約は、解撤される船舶が作業員の健康や安全、あるいは環境に不必要なリスクを及ぼさないようにすることを狙いとしている。同条約の発効要件は、15カ国以上が批准すること、締約国の商船船腹量の合計が全世界の40%を超えること(船主国条項)、及び締約国の直近10年における最大年間解撤船腹量の合計が締約国の商船船腹量の3%を超えること(解撤国条項)で、これら要件が満たされれば、その24カ月後に発効する。

記事参照:
Norway is first to accede to Hong Kong ship recycling treaty
Full Text; The Hong Kong International Convention for the Safe and Environmentally Sound Recycling of Ships, 2009, May 19, 2009

6月26日「ノルウェー船級協会、浮体式洋上風力発電風車に関する新基準公表」(Marine Log, June 26, 2013)

ノルウェー船級協会 (DNV) のエネルギー開発部門 (DNV KEMA) はこのほど、浮体式洋上風力発電用風車の浮体構造と関連システムに関する設計要求事項を定めた、2011年1月の基準に代わる新たな基準を公表した。新基準には、主要設計、設置場所、負荷及び抗力、また材質及び劣化防止、構造物設計、係留設備設計、安定性、位置の保持、制御及び機械構造、移動および設置、運転中の検査及び送電線の設計など、多岐にわたる内容を含まれている。新基準は、7月1日に発効する。DNVは、新基準は業界にとって、これまでの教訓を取り入れることで、建設経費、維持補修経費の軽減や安全性の強化につながる、と述べている。

新基準は、DNV KEMAを中心に、世界の様々な業界の10社との共同検討に基づき開発された。参加企業は、Statoil(ノルウェーのエネルギー開発会社)、新日鉄住金、佐世保重工、STX Offshore & Shipbuilding(韓国の造船会社)、Navantia(スペインの造船会社)、Gamesa(スペインの再生エネルギー会社)、Iberdrola(スペインの電力会社)、Alstom Wind(フランスの電力会社)、Glosten Associates(アメリカの造船会社)、Principle Power(アメリカの再生エネルギー会社)である。

記事参照:
DNV responds to offshore wind farm trends

【関連記事】「世界最大の浮体式風力発電所のコンポーネント公開-日本」(日本経済新聞電子版 and The Voice of Russia, June 25, 2013)

福島県沖に設置する洋上風力発電用の巨大な風車が完成し、三井造船千葉事業所(千葉県市原市)で6月25日に公開された。本体を海に浮かべて発電する浮体式の装置で、風車の直径は80メートル、設置時の海水面からの高さは106メートルになる。出力は2000キロワットで浮体式の洋上風力発電では国内最大規模となる。6月中に福島県沖20キロの洋上にまで曳航し、10月にも本格的に発電を始める。洋上は障害物がなく安定的に強い風が吹くため風力発電に適しているとされるが、陸上に比べて建設や送電にコストがかかる課題もある。

東日本大震災からの復興に向けた経済産業省による実証実験の一環で、三井造船のほか11者が共同で実施する。2014年には7000キロワットの風車も建設され、世界でも最大規模となる。

記事参照:
直径80メートルの洋上風車、福島沖で10月にも発電
日本 世界最大の浮体式風力発電所のコンポーネント公開

6月27日「深海掘削経費、2022年までに1,140億米ドルに―英コンサルティング会社見積」(RIGZONE, Dow Jones Newswires, June 28, 2013)

英国エジンバラのWood Mackenzie社(世界のエネルギー・金属業界の総合的調査・コンサルティング会社)は6月27日、世界の深海における掘削経費は、2012年の430億米ドルから、2022年までにほぼ3倍増の1,140億米ドルになるとの見積を明らかにした。それによれば、深海における掘削の進展によって、この10年間で、沿岸域や浅海域での掘削は、発見埋蔵量において全体の41%前後に、また金額にして3,510億米ドルにまで縮小してきた。一方で、深海における掘削は、今後10年間で年率9%の割合で伸びていくと見ている。同社は、2022年までの掘削油井の内、北極海での掘削油井は3%前後を占めると見ている。また、2012年に世界のトップ20社に認可された、深海域と北極海の鉱区面積は前年比39%増となった。同社によれば、試掘油井や査定、開発油井の数は年間500本から1,250本の割合で増えると見られ、その結果、2016年から2022年の間に95基の掘削リグが必要になり、その投資額は650億米ドルになろう。

記事参照:
Deepwater Drilling Spend to Rise to $114B by 2022

6月27日「フィリピン、米軍へのアクセスを認めるスービック湾海空軍基地建設計画を再開」(Reuters, June 27, 2013)

フィリピン海軍高官によれば、フィリピン軍はスービック湾に新しい海空軍基地を建設する計画を再開しようとしている。これは、中国の高圧的な姿勢に対抗して、ワシントンがアジア重視に移行するのと軌を一にしている。この基地ができれば、フィリピンは、2012年4月の対峙以来、中国の支配下にある、スカボロー礁からわずか124カイリしか離れていない場所に、軍艦や戦闘機を駐留させることができよう。フィリピン海軍は、100億ペソ(2億3,000万米ドル)の基地建設計画について、未だ正式にはアキノ大統領に提出していない。しかし、海軍高官によれば、アキノ大統領が軍事力強化を目指していることから、海軍は大統領の承認を得る絶好の機会とみている。フィリピン議会は2012年、18億米ドルの軍近代化予算を承認した。軍は、過去に基地建設計画を提案したことがあるが、今回は、中国との一連の海上における対峙を受けて、より緊急の課題として推進しようとしている。匿名希望の軍高官は、「この計画は、大統領が装備の近代化を強く推進していることから、日の目を見る可能性がある」と語った。

スービック湾は、水深が深く、ジャングルに覆われた山々に囲まれ、マニラから北に80キロの位置にある。1992年の米軍撤退後、ここは経済特区になった。しかし、撤退後も、米海軍艦艇や航空機は、フィリピンの基地に整備や給油のために立ち寄ることは認められてきた。米軍のフィリピンへのローテーション展開は、南シナ海での中国の活動が活発化するにつれ頻繁になっている。建設計画では、30ヘクタール(74エーカー)の土地が基地建設用に割り当てられており、完成すれば、戦闘機とアメリカから供与された、2隻のハミルトン級を含むフィリピン海軍最大の軍艦を配備することができる。この計画は、2012年4月に中国とのスカボロー礁を巡る対峙が起きて以来、急がれるようになった。中国の艦船は今やスカボロー礁を支配下に置き、フィリピン漁民をしばしば追い散らしている。

フィリピンは、アメリカに古い基地を再建させようとしているわけではない。しかしながら、新しいフィリピンの海空軍基地は、寄港する米海軍艦艇に、南シナ海やその他の東南アジア海域において軍事作戦を発動する上で、安全な拠点を提供することになろう。フィリピン上院で1999年に批准された地位協定 (Visiting Force Agreement) は、米軍に対して、フィリピン国内軍事基地への完全なアクセス権を認めている。

スービック湾自由港を管理する、Subic Bay Metropolitan Authority (SBMA) ガルシア議長は、計画用地にテーマパークを建設する計画を棚上げし、新しい基地建設計画を認め、「もし政府がこの自由港地域に海空軍基地を建設したいという意向であれば、何の問題もない」と語っている。公式データによれば、スービック湾に寄港した米海軍水上戦闘艦艇と潜水艦は、2013年だけで72回に上っている。因みに、2012年は88回、2011年は54回、そして2010年は51回であった。

フィリピン軍はまた、かつて米軍最大級の軍用航空機が運用されていた滑走路を復旧させることを望んでいる。スービック湾に隣接する山に造られた、かつてのキュービーポイント海軍航空基地は、米軍撤退後、FedEx社の貨物機用に使用されていたが、2009年にはスービック湾国際空港になった。2人の空軍高官によれば、軍は滑走路の一部を空軍基地に変換するよう、大統領に提案している。また別の海軍高官によれば、今後2~3週間でアメリカから2隻目のハミルトン級巡視船が回航されてくるので、海軍は大型戦闘艦を収容できる港を見つける必要に迫られている。

記事参照:
Manila plans air, naval bases at Subic with access for U.S., officials say

【関連記事】「フィリピン、スービック湾への日米のより多くのアクセスを期待―カズミン国防相」(INQUIRER.net, June 27, 2013)

フィリピンのカズミン国防相は6月27日、小野寺防衛相との会談の後の合同記者会見で、スービック湾に米軍が利用できる新たな海空軍基地の建設を計画しているとの報道に関連して、基地建設の代わりに、中国からの高まる安全保障上の脅威に対抗するため、フィリピンはアメリカと日本に対して国内基地へのより多くのアクセスを認めるつもりだ、と述べた。カズミン国防相は、日本のアクセスについて、戦略的パートナーであり、決められた手順に従って、これを歓迎する、と語った。

スービック湾は、1992年にフィリピン上院が12対11の僅差で新しい基地条約の批准を拒否するまで、1世紀近くにわたって米軍基地であった。その後、1999年に地位協定 (Visiting Force Agreement) が批准されたことで、米比合同演習などが実施できるようになり、またアメリカのアジア太平洋地域における再均衡化の一環として、米海軍艦艇のスービック湾寄港が増えている。

記事参照:
DND chief clarifies: PH not constructing air, naval bases in Subic

6月28日「姿を現しつつある海軍・海兵隊を中核とする太平洋地域の米軍戦力態勢―米専門家論評」(The Diplomat, June 28, 2013)

米軍事安全保障アナリスト、Dr. Robbin F. Laird は、6月28日付のWeb誌、The Diplomatに “America’s Pacific Force Structure Takes Shape” と題する論説を寄稿し、V-22オスプレイやF-35といった新しい戦力を通して、アメリカとその同盟国は21世紀の攻撃・防御能力を構築しつつあるとして、要旨以下のように論じている。

(1) 米海軍と海兵隊戦力は、21世紀の米軍事力の戦略的革新の中核であり、特に太平洋ではそうである。米軍の新装備の特徴は、これらが本当の意味で、作戦地域に適合し、ネットワーク中心の戦いに組み込まれたものであり、従って、統合されたアプローチの下、攻撃作戦にも、また防御行動にも対応することができることである。新しい多用途任務を遂行できるシステムの登場によって、1個の運用可能な現有能力で攻撃あるいは防御行動を遂行し得る、統合された能力のプレゼンスが鍵となる。こうした能力こそが、21世紀の攻撃と防御の戦力態勢である。

(2) この統合された現代的なシステムの戦略的衝撃力は、作戦地域において攻撃と防御を同時に遂行できる、シームレスな全体として行動可能な態勢を構築することで生まれる。これは、C5ISR (Command, Control, Communications, Computers, Combat Systems, Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance) の発展によって可能になったものである。プラットフォームとアセットをハニカム構造のように組み合わせたC5ISRシステムを構築することで、攻撃と防御能力を兼ね備えた戦力態勢は、敵を抑止したり、軍事作戦を成功させたりすることができる。

(3) 21世紀の海軍を取り巻く戦略環境では、米海軍は、分散独立型の作戦遂行能力を求められる。海兵隊と米海軍航空隊の能力強化は、この要求に応える鍵である。V-22オスプレイは、海兵隊と海軍チームに、速度、作戦可能範囲そして陸上と海上における作戦能力の革新的な増強をもたらしている。太平洋海兵隊 (MARFORCPAC) 司令官のロブリン (Terry G. Robling) 中将は、The Diplomat とのインタビューで、「速度、作戦可能範囲そしてプレゼンスは、我々が太平洋地域で参加する作戦で決定的な要素である。V-22オスプレイは、我々が遂行する任務に完全に合致したシステムである」と指摘した。その上で、同中将は、「仮定の話であるが、もし同盟国であるフィリピンと共に、例えばセカンド・トーマス礁の防衛を強化するといった、南シナ海での挑戦に対処する任務を遂行する場合、アメリカには、空軍のB-2爆撃機やグアムのB-52爆撃機、あるいは南シナ海を哨戒中の海軍艦艇など、幾つかの選択肢があるが、全ての選択肢が効果的で、適時に投入可能とはいえない。しかし、V-22オスプレイを使うことによって、沖縄からよく訓練された海兵隊か特殊作戦部隊1個小隊を空輸すれば、海上から接近が難しい場所にも展開させることができ、想定される必要なあらゆる任務を適時効率的に遂行することができる」と語っている。

(4) 更に、F-35BとF-35Cといった、より革命的なアセットが間もなく配備される。F-35を装備する米空軍と同盟軍のグローバルなネットワーク化によって、分散配備された戦力を劇的に強化することができる。また、P-8対潜哨戒機、新型Hawkeye早期警戒機、EA-18 Growler 電子戦機、あるいは各種の無人機といった、ISRとC2のための数多くの新しい戦力が加われば、分散配備された艦隊の戦力が大幅に強化される。更に、これらのアセットは、空母、USS Ford、強襲揚陸艦、USS AmericanとUSS San Antonio、統合高速輸送艦、機動揚陸プラットフォームなどの、新型戦闘艦、戦闘支援艦と共に、長期にわたる分散行動が可能である。

(5) 米海兵隊の分散型行動能力は、自らの能力の革新的強化に加えて、オーストラリアや日本といった、重要な同盟国との相互作用に依存するようになる。オーストラリアと日本の軍事力も現在改革の最中で、その能力は最近行われた2回の演習で誇示された。

最初の演習はBold Alligator演習で、米東岸で、オーストラリアとニュージーランドを含む、多くの同盟国軍が参加して実施された。この演習の目的は、海岸から内陸深くまで侵攻する作戦遂行のために、より柔軟な部隊構成の在り方を演練することにあった。この演習で海兵隊遠征部隊司令官を務めた、ラヴ (Michael Love) 准将は、「我々の戦力の特徴は沖合の艦艇から海岸に移動すること適したユニークな部隊構成にあり、従って柔軟性が高い。V-22オスプレイとエアクッション揚陸艇 (LCAC) は、その柔軟性を実現する重要な装備である。これらは、状況に合わせて、沖合に部隊を集結させ、その後、海岸に分散侵攻させることができる」と語っている。

2つ目の演習はDawn Blitz演習で、同じことを、太平洋で実施した。しかも2013年は、日本も参加した。日本の護衛艦からのV-22オスプレイの運用実験は、(洋上基地として行動する)同盟国の戦闘艦を含めた、より柔軟な移動能力を確保することになり、まさに21世紀の軍事作戦の基盤である。これこそが、域内におけるミサイルの脅威に対処し、太平洋地域における広域作戦を遂行し、そして戦力の逐次投入型態勢に替えて、分散配備した戦力を活用する、まさに21世紀の能力である。

(6) この点について、前出のロブリン中将は、米海軍・海兵隊チームは21世紀の地上戦闘力への新しいアプローチであると指摘し、「太平洋地域の安全保障にとって全ての米軍部隊が重要であることは言うまでもないが、就中、米海軍・海兵隊チームは、他のどの部隊よりも戦略的に重要である。世界の十大陸軍国の内、7カ国が太平洋地域にある。その多くは、当該国の国境地帯に集中配備されている。領域防衛ラインの多くは海やシーレーンに面しているため、これら諸国は、沿岸国境の防衛能力を必要としている。そのため、これら諸国は、能力的に不足している部分を補完してもらうために、あるいはまた自らの防衛能力を強化するための訓練や装備を提供してもらうために、米海軍と海兵隊の支援に期待している」と語っている。これら諸国の中でも、特に日本とオーストラリアは、将来の地上戦闘力の在り方が、機動部隊としての作戦が可能な強化された遠征能力の構築にあることを理解している。

記事参照:
America’s Pacific Force Structure Takes Shape

6月29日「中国が促す日米比連携―米専門家論評」(The Diplomat, June 29, 2013)

Web誌、The Diplomatの編集次長、Zachary Keckは、6月29日付のThe Diplomatに、“Made in China: A US-Japan-Philippines Axis?” と題する論説を掲載し、中国の最近の高圧的行動が日米比の戦略的連携を促しているとして、要旨以下のように述べている。

(1) 現実主義の国際政治学者らは、安全保障上の脅威に直面した国家には2つの均衡策が存在すると指摘する。1つは、自らの能力を強化する内的均衡策(internal balancing)である。彼らによれば、これは、もう1つの同盟国の善意に依存し、他国の紛争に巻き込まれるリスクを内包する外的均衡策より、好まれる均衡メカニズムである。とはいえ、台頭しつつある国家とその相手国間に存在する力の不均衡は、独自の内的均衡策だけでは対応できない状況を生み出す。その際、当該国家は、脅威観を共有する第三国との連携を図ることもあり得る。

(2) この数カ月間、東アジアの情勢は、この説明が相応しい状況が続いた。近年中国と海洋を巡る軋轢が続いて来た日本とフィリピンが、その代表的な例である。2012年にスカボロー礁問題で中国と対立したフィリピンは、装備の強化に重点をおいた、18億ドル規模の軍事力近代化計画を発表した。日本では2012年12月に就任した安倍晋三首相が、2002年度以降増額されることがなかった防衛予算の増額を求めた。それと同時に、安倍政権は、自衛隊が同盟国を支援できるようにしようとしている。しかしながら、両国、特にフィリピンは、長期的に単独で中国の軍事力と渡り合うことには限界がある。それ故、マニラが自国の軍事力増強を、ASEANやアメリカ、国連仲裁裁判所、そしてロシアや日本との連携で補おうとしていることは、驚くには当たらない。日本は現在のところ中国から尖閣諸島を自力で防衛できそうだが、長期的な趨勢は東京にとっても楽観できない。日本は、こうした現実を受け入れ、東南アジア諸国、アメリカに加えて、ロシア、台湾、インド、更には中東諸国にまで、関係強化を漸進させてきた。

(3) 日本はフィリピンに巡視艇の供与を決めたが、これまでは、マニラと東京は、中国との海洋紛争対処に当たって、別々の方策を追求してきた。こうした状況は、小野寺防衛相の6月末のフィリピン訪問で終わった。フィリピンを訪問した小野寺防衛相は、フィリピンのカズミン国防相との会談後、両国が南シナ海と東シナ海で同じような状況に直面しており、南シナ海で起きていることが東シナ海に影響を及ぼすことを懸念していると述べ、それ故に、海洋権益の擁護とともに、離島防衛、領土・領海防衛の面で協力を進めていくことに合意した、と強調した。また、国連仲裁裁判所へのフィリピンの提訴に対しても、支持を表明した。小野寺防衛相の訪比は、スカボロー礁周辺海域で実施された大規模な米比合同軍事演習と重なった。また興味深いことに、小野寺防衛相の訪比に続いて、フィリピンのカズミン国防相は、スービック湾の旧米軍基地に新しい海・空軍基地の建設を検討していることを明らかにし、アメリカにこれらの基地への装備の配備を含むより大きなアクセスが与えられることになろうと語った。カズミン国防相はまた、日本を名指した上で、他の諸国も、これらの基地へのアクセスに関心を示すであろう、と指摘した。

(4) こうした日米比3国間の連携への模索は中国が促した、と言っても誤りではない。もちろん、この地域における海洋紛争は全て中国だけの責任とは言えないが、中国の国力は、近隣諸国を遥かに上回る成長を続けている。 中国をリヴァイアサンと見なす近隣諸国は、ますます団結して中国に対抗しようとするであろう。そして、このことが常に中国のアキレス腱である。伝統的に、中国の指導者たちは、戦略的な包囲網の可能性に対して、「夷を以て夷を制す」ことで対処してきた。近年生じた一連の出来事の中で、中国政府は、ほぼ全ての近隣諸国との間でしばしば不必要とも思える軋轢を引き起こしており、この分断と支配の戦略を完全に放棄したかに見える。その結果、中国の周辺諸国間の連携が加速され、それは時としてアメリカ抜きの協力ともなっている。日台漁業協定や日本とフィリピンの防衛分野の協力強化は、こうしたアメリカ抜きの直近の事例である。

(5) 不幸なことに、中国の指導者達は、自らの行動が近隣諸国の連携という事態を引き起こしていることに気付いておらず、むしろ、こうした事態をワシントンが企むより大きな謀略の一環と確信している。しかし、ジョセフ・ナイが指摘しているように、クリントン政権から始まる冷戦後15年間の歴代アメリカ政府は、中国に対する封じ込め戦略を拒否してきた。ナイは、その理由につて、「第2次大戦後のソ連のように、中国が他国に威嚇的戦術を採らない限り、中国包囲網に加わるよう他国を説得することは難しい。中国だけが、自らの行動によって他国による中国封じ込めを組織することが可能なのである」と指摘している。言い換えれば、中国の対外政策は、ワシントンの仕事を楽にしているのである。

記事参照:
Made in China: A US-Japan-Philippines Axis?

【関連記事1「日比防衛協力―ロシア専門家の見方」(The Voice of Russia, June 28, 2013)

フィリピンを訪問中の小野寺防衛相は6月27日、マニラで開かれた記者会見で、フィリピンのガズミン国防相との会談で「離島防衛」に関する協力について合意した旨明らかにした。小野寺国防相は、フィリピンと中国が領有権を争う南沙諸島の領海および海洋資源の保護においてフィリピンを支持する意向を表明した。小野寺防衛相は、日本も東シナ海で同じような状況に直面しているため、南シナ海の南沙諸島を巡る問題に無関心ではいられないとの立場を示した。

モスクワ国際関係大学のストレリツォフ教授は、The Voice of Russiaのインタビューに対し、「小野寺防衛相は中国との対立回避を目指す意向を表したものの、防衛相のフィリピンでの行動や、自衛隊、政治家たちの最近数カ月の行動を見る限り、日本は領有権問題によって中国との対立を先鋭化させる心構えがあるように思われる」との見解を示し、要旨以下のように語っている。

(1) 小野寺防衛相のフィリピン訪問は、日本が同盟国だと考えている東南アジア諸国と日本の連携を証明している。この方針は随分前から取られており、安倍首相の就任ではなく、東アジアの地政学的現状と関連したものだ。中国が地域リーダーとして台頭し、米国へ脅威を与えるための長期的戦略を持っている。中国のこの戦略に、隣国は大きな懸念を抱いている。

(2) 日本についていえば、日本は2010年、中国の漁船が海上保安庁の巡視船に衝突するという非常に大きな牽制を受けた。この事件が日本人の意識に変化を起こし、日本人は、中国と現実的に軍事対立し、中国が敵になる可能性があることを理解した。たとえ日本が中国との全面戦争に向けて準備を開始しなくても、日本人は地域紛争が起こる危険性を非常に強く感じている。

(3) 日本は2010年の漁船衝突事件を受け、その対抗措置として米国との防衛協力を強化し、防衛政策に関する新たな原則を準備した。その一部はすでに、多くの専門家たちが「中国が念頭に置かれている」と指摘する動的防衛政策となった。

(4) 安倍首相やその閣僚は東南アジア諸国を訪問し、法の支配と航行の自由などが盛り込まれた「ASEAN外交5原則」を発表し、中国を牽制した。しかし、東南アジア諸国を対中同盟へ引き込もうとする安倍首相の試みは、冷ややかに迎えられた。

(5) それは、東南アジア諸国が中国を扇動することを望んでいないことに加え、アジアには20世紀前半の日本の侵略に関する記憶が生きていることにある。そのため日本は、再軍備を目指しているのではなく、国際機関や国際法を基盤にした外交政策の構築を目標にしていると証明する必要がある。

ストレリツォフ氏は、恐らく安倍首相は中国との地域紛争が実際に勃発する可能性があることを理解していると指摘し、安倍首相は、対立を緩和するための対策を講じる必要があるとの考えを示した。

記事参照:
中国からフィリピンを守る日本

【関連記事2「フィリピン、スカボロー礁周辺海域で米軍と合同演習実施」(Taipei Times, AFP, June 28, 2013)

フィリピン軍は6月27日、スカボロー礁周辺海域で、米海軍との年次演習、The Cooperation Afloat Readiness and Training (CARAT) を開始した。演習は6日間の予定。今年の演習の特徴は、ルソン島西岸のスカボロー礁に近い海域で実施されることである。スカボロー礁はルソン島から230キロ、中国本土から1,200キロの海域にある環礁だが、フィリピン政府によれば、この1年以上、中国の事実上の支配下にあって、中国の巡視船が周辺海域を定期的に哨戒しており、この豊かな漁場からフィリピン漁民を閉め出している。フィリピン海軍広報官は、演習の一部はスカボロー礁東方108キロのフィリピン領域内のシーレーンで実施されるが、「演習の狙いはインターオペラビリティーの強化にあり、中国を対象としたものではない」と語った。広報官によれば、この演習には、米海軍誘導ミサイル駆逐艦、USS Fitzgerald以下の3隻、人員約500人、フィリピンからは海軍艦隊旗艦、Gregorio del Pilar以下、海軍と沿岸警備隊の艦艇、人員500人が参加している。

記事参照:
US destroyer joins Philippine war games

6月30日「中国、COC協議に合意」(Reuters, June 30, 2013)

中国は6月30日、南シナ海における軍事的な対立を緩和するため、ASEAN諸国と正式な対話に臨むことに同意した。中国とASEAN諸国は、9月に中国で開かれるASEAN諸国との会議において、「行動規範 (Code of Conduct: COC)」に関する正式協議を行う。中国の王毅・外交部長は、ブルネイでの記者会見で、「我々は、中国周辺の海を、平和、友好そして協力の海にするために、海洋における協力について話し合うことに合意した」と述べたが、一方で、新たな枠組みの合意に関するいかなる進展も2002年の「行動宣言 (DOC)」に基づく信頼醸成の進展如何であると強調し、フィリピンがDOCに違反したことを批難した。これに対して、フィリピンのデルロサリオ外相は、ブルネイでの記者会見で、セカンド・トーマス礁とスカボロー礁周辺海域に中国海軍戦闘艦と政府公船が展開していることを指摘し、域内の脅威となっていることを非難した。

記事参照:
China agrees South China Sea talks amid new row with Manila