海洋情報旬報 2013年4月1日〜4月10日
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4月 1日「中国海洋法令執行組織の改編、その地域安全保障への影響」 (RSIS Commentaries, No. 050, April 1, 2013)
シンガポールの S.ラジャラトナム国際関係学院(RSIS)の Li Mingjiang准教授と Zhang Hongzhou上級研究員は、 4月 1日付けの RSIS Commentariesに、“Restructuring China’s Maritime Law Enforcement: Impact on Regional Security ” と題する論説を掲載した。筆者らは、中国の海洋法令執行組織の改編は、近隣諸国の一部との領有権紛争に対して高圧的なアプローチで対応していくという、北京の意図を知らしめる動きであるとして、要旨以下のように論じている。
(1) 中国の最大 17機関にも及ぶ非軍事海事機関の改編は、この地域にとって重大な意味を持っている。改編の狙いは、統一された海洋法令執行の実施であり、中国の海洋権益の保護と海洋法令執行活動の効率性と有効性を強化することである。改編の主眼は、中国の海洋監視機関である、国家海洋局 (SOA) の再編である。改編の核心は、 4つの主要海洋法令執行機関、旧国家海洋局とその中国海監、公安部の辺防管理局海警、農業部の中国漁政、海関総署の海上密輸取締警察を整理統合して、新たな統合された中国沿岸警備隊を組織することにある。再編成された SOAは引き続き国土資源部の管理監督下に置かれ、新しい中国沿岸警備隊は SOAの一部局として留まるが、その運用は公安部によって監督されることになろう。更に、国家海洋委員会(NOC)が設置され、SOAの下に置かれる。 NOCは、中国の海洋開発戦略を策定するとともに、重要な海洋問題に関わる各機関との調整に当たると見られる。SOAは、大方の予想に反し、「部(省)」にはならなかった。これは、中央政府の部の数を減らすという全般的な政策に従ったものであり、また、消息筋によれば、強力な「海洋部」の誕生によって海洋紛争に対処する上での自らの役割の低下を恐れた、外交部の反対も一因であったという。
(2) これらの改編が迅速に実施されるかどうかは不明である。この一連の再編過程で、幾つかの問題点が浮き彫りになった。
第 1に、航行の安全や捜索・救助任務に責任を持つ、海事局 (MSA) は、新たに編成された中国沿岸警備隊に併合されなかった。
第 2に、SOAは、「部」に昇格されなかった。
第 3に、新しい中国沿岸警備隊は、 SOAと伝統的に中国の国境警備部隊を統括してきた公安部との二重の指揮下に置かれることである。この二重の指揮系統が新しい沿岸警備隊の運用にどのように影響するかは今後の注目点である。
第 4に、NOCの構成と機能が未だ不明である。
最後に、この地域にとって恐らく最も重要なのは、新たな中国の沿岸警備隊が重武装されるかどうかが不明なことである。新しい中国沿岸警備隊の全ての巡視船が武装されるかどうかは不明である。
(3) 中国の海事部門の改編は、中国が海洋大国に発展していく上で不可欠な海洋法令執行能力を強化していくという、中国指導部の願望を反映したものである。北京は、多くの専門家がこの数年間、高圧的と評してきた海洋安全保障政策から後退することはないと見られる。一方で、中国は、非軍事部門の海洋法令執行能力の活用によって海洋紛争を非軍事化するとともに、どの近隣国とも直接的な軍事対決を避けられる、と考えているようだ。このことは、中国の地域安全保障政策の本質が依然として直接対決には至らない瀬戸際の高圧的政策と評し得るものであり続けることを明示している。そうであるとすれば、少なくとも今後数年間、東アジア海域において緊張と紛争が継続する可能性が極めて高いとする見方は、信憑性を持つ。
記事参照:
Restructuring China’s Maritime Law Enforcement: Impact on Regional Security
4月 1日「米国の北極海戦略における 5つの障害 —ホルムズ論評」 (The Diplomat, April 1, 2013)
米海軍大学のホルムズ (James R. Holmes) 教授は、 4月 1日付の Web誌、The Diplomat に、 “Five Obstacles to U.S. Arctic Strategy”と題する論説を寄稿し、米国が北極海戦略を推進する上での障害要因として、以下の 5つを挙げている。
第 1に、北極海の未来を予測することの難しさである。気象学者は北極海の融氷状況を予測することに力を入れ、一方、戦略専門家は、北極海の海洋権益を護ろうとする沿岸 5カ国と外部プレイヤーとの抗争を予測しようとしている。北極海がアイス・フリーになると予測される最も早い時期は 2035年とされる。今から 22年後である。どれほど多くのアジア専門家が 22年前の 1991年に、2013年までに中国が海軍大国になり、南シナ海の大部分の領有権を主張するようになると予測し得ただろうか。ロシアとその他の競合国の将来予測も、不確定要素に満ちている。
第 2に、北極海の物理的な状況は流動的である。北極海とは対照的に、南シナ海の状況はシンプルである。少なくとも、東南アジアの地政学的な状況と政治的環境はすでに熟知されているのに対して、北極海の地理・物理的な状況に対する探査は現在進行中である。しかも地球温暖化が絶えず北極海の環境に変化をもたらしている。
第 3に、北極海を巡る国家間抗争の中身がまだ不透明である。北極海の季節が変わる毎にどのような変化が起こるか。年間を通して空軍や潜水艦活動が継続する一方で、夏季には水上戦闘艦による演習が見られるか。そうなれば、北極海は、精密兵器を装備する大国が海を隔てて対峙する東シナ海に類似した様相となろう。平和時の、そして予想される低強度紛争に備えて、海軍と沿岸警備隊による活動は不可欠となろう。
第 4に、まだ形が見えない課題への備えに対して、有権者の支持を集めることは難しい。北極海での課題は未だ抽象的で、時間的にも将来のことである。直近の現実政治に目を向けている国民に北極海戦略の必要性を納得させることは易しくない。
従って第 5に、北極海戦略とそのための戦力を立案する上で、米国にとって、時間は有利にも、また不利にも働いている。北極海に脅威となり得る環境が現出するのは遠い先の話であるが故に、時は味方である。しかし、納税者や選出された政治家らが遠い将来の脅威に対する戦力を整備することは容易でないため、時は致命的な敵になる。
以上のように、まだ定かでない北極海の現状を認識し、その戦略的な問題に対する米国自身の課題を考察することが、最初のステップになるだろう。
記事参照:
Five Obstacles to U.S. Arctic Strategy
4月 2日「露軍艦、国外での修理を禁止−プーチン大統領」 (ИЗВЕСТИЯ, April 2, 2013)
イズベスチヤ紙の国防省筋によれば、ショイグ露国防相の、ロシア軍艦の修理を他国の造船所で行うという提案を、プーチン大統領は受け入れず、国外での修理を禁止した。大統領は、国防相の提案を固く拒否し、ロシア国内の造船所で修理を行うよう指示した。現在これは、ロゴジン副首相(軍需産業担当)が担当している。
ショイグ国防相によると、現在、1,000隻を越えるロシアの軍艦や補助船のうち 80%は老朽化しているにも係わらず、修理期を越えて稼動している。軍備に関する 2020年までの国家プログラムでは、65隻の軍艦と 12隻の特殊船、62隻の支援船の修理が計画されている。それと同時に、古くなった艦船の替わりとして 113隻の軍艦、8隻の特殊船、65隻の支援船の建造も予定されている。
その一方、軍関係者の評価では、ロシアの造船所は、全ての船舶の修理やメンテナンスを行うに不十分であるという。国防省のデータによると、実質的にロシアの船舶の修理や建造の全てを行う統一造船会社(United Shipbuilding Corporation)は 2012年、ロシア海軍艦船の 6隻の修理と、157隻のメンテナンスを期限までに完了できなかった。これに関して、ロゴジン副首相は、ノボロシスクの海事委員会で、ロシア海軍の艦船修理計画を半年以内に提出するよう、統一造船会社に指示を出している。統一造船会社の広報担当は、イズベスチヤ紙に対し、他国で建造した船舶の修理であっても、何ら問題はないとコメントしている。広報によると、「近代の造船で最も難しいのは、原子力潜水艦と空母の建造だ。統一造船会社は現在、これらに問題なく対応している。従って、これ以外の艦船の修理の習得に困難などない」と説明している。
元海軍少将ウラジーミル・ザハーロフは、イズベスチヤ紙に対し、「ロシアの造船所は、修理すべき軍艦や補助船を抱え過ぎている」と指摘する。少将はまた、「ソ連時代は、補助船のみならず軍艦や哨戒艇もポーランドやブルガリアで修理を行っていた。例えば、ブルガリアは、大型揚陸艦 Project 775の修理をマスターしていた。つまり、ブルガリアは既にユニットの修理や交換に実証済みの技術を持っているということだ。一方、我々は、何をどのように修理するか、どのユニットを何と交換するかなど、全て初めから習得しなければならない。それは、 1年 2年でできるものではない」と指摘する。少将によると、「ロシアの修理工場は注文が込み合っている。新しい艦船の修理を習得するより、未完成のものを全て完成させるべき」と述べる。
1991年までに、現在のロシアの領土外で、軍艦を含め 60隻以上の艦船が建造されている。これには、ポーランドのグダニスクで建造された 14隻の大型揚陸艦 Project 775も含まれているが、現在これらの艦船がロシアの揚陸艦隊のベースになっている。これらのほとんどが、2015年までに修理が必要となる。ロシア国内で修理が可能な部分は、ディーゼルエンジンの修理や、照明装置や補助発電機などの補助的な機器の修理のみである。部品の交換にしても、現在のところ、ポーランドでしか行えない可能性もある。何故なら、そのような部品は、過去にロシアで一度も製造されたことがないからだ。
世界最大の海上救難タグボート、「フォティ・クリロフ (Fotiy Krylov)」と「ニコライ・チケル (Nikolay Chiker)」の 2隻も修理を必要としている。この 2隻は、1980年代終わりに、ソ連海軍の発注により、フィンランドで建造され、ギネスブックにも掲載された。現在、ロシア海軍の演習や外洋航海で最も使用頻度が高い補助船であるが、Project 775同様、修理の一部をロシアで行うことは可能であるかもしれないが、機器のメカニズムや動力装置に関しては、フィンランド側の協力が必要となる。
記事参照:Путин запретил ремонтировать российские боевые корабли за границей
4月 2日「ロシア、北極漂流観測基地開設」 (RIA Novosti, April 2, 2013)
ロシア地理学会によれば、ロシアの北極漂流観測基地、 The Barneo-2013は 4月 2日に開設された。この観測基地は 2002年以来、北極点から約 110キロの北緯 89度近辺に毎年開設されている。全ての装備、食糧や必要資材は 3月に航空機で運び込まれており、現在、 56人の要員が同基地で働いている。ロシア、フランス及び米国の科学者も観測に参加することになっており、また、 4月 25日に閉鎖されるまで、北極会議の関係者や 200人以上のツーリストも訪問することになっている。同基地はまた、ロシアの North Pole-40 Arcticステーションへの物資輸送の中継点ともなる。
記事参照:
Russia Opens Drifting Arctic Base
4月 2日「ロシア、 2014年までに旧ソ連時代最後の原潜スクラップ」 (RIA Novosti, April 2, 2013)
ロシアの Nerpa造船所が 4月 2日に明らかにしたところによれば、2014年までにロシア艦隊から退役した旧ソ連時代の最後の原潜をスクラップする。Project 949A (NATOコードネーム、Oscar II級) 型巡航ミサイル搭載原潜、Krasnodarは、1985年に進水し、2012年にロシア海軍から退役した。同艦は Nerpa造船所で解体される最後の原潜で、現在作業が進行中である。原子力船団を管理運営する、ロシア国営、 ROSATOMによれば、1980年代後半以来、ロシア北西部で 120隻、極東で 79隻、合計 199隻の原潜が退役した。ロシアの原潜解体企業は 3社で、アルハンゲリスク地区のセベロドビンスクにある、Zvyozdochka、ムルマンスク地区のスネツノゴロスクにある、Nerpa、そして極東のボリショイカメンにある、Zvezdaの各造船所である。Nerpa造船所は、1998年以来 50隻以上の原潜を解体し、 Zvyozdochkaは 2011年に解体計画を完了し、Zvezdaは現在、原潜解体契約を結んでいない。解体作業では、使用済み燃料棒は潜水艦の原子炉から撤去され、貯蔵庫に収納される。船体は 3つに切断され、船首と船尾部分は破壊され、原子炉収納部分は密封され、保管される。
記事参照:
Russia to Scrap Last Soviet-Era Nuclear Sub by 2014
4月 2日「カナダ、春季北極主権演習開始」 (Nunatsiaq Online, April 5, 2013)
カナダ軍は 2日、北極における主権を誇示する演習、Operation Nunalivut 2013を開始した。4月 24日まで行われる。この演習では、コーンウォリス島のレゾリュート湾から極北諸島にパトロール隊が発出される。この演習には、カナディアン・レンジャー約 35人を含む、120人以上の将兵が参加する。演習本部から 4個パトロール隊が発出されるが、その内、3個は、極北諸島の北西部を目指す。エルフリングネース島西岸の北極気象観測所があるアイザクセンは、2個隊が目指す最北地となる。もう1個は極北諸島の西端、ムーア湾まで、CC-138 Twin Otterで移動し、同地域のインフラの状況を調査する。4個目のパトロール隊は、レゾリュート湾をパトロールし、コーンウォリス島を巡回した後、東側のデヴォン島に移動する。カナディアン・レンジャーは、ガイドと教官を兼ね、各隊に少なくとも 8人が配属される。
4月 3日「ドイツ海軍フリゲート、米空母打撃軍に配属」 (America’s Navy, April 3, 2013)
4月 3日付の America’s Navyが報じるところによれば、ドイツ海軍フリゲート、FGS Hamburgが同国艦としては初めて米空母打撃群に配属されている。配属先はアラビア海北部に展開している米空母、USS Dwight D. Eisenhower (CVN 69) を中核とする第 8空母打撃群 (CSG 8) で、3月末から 2週目に入り、同群の第 5艦隊担当海域への配備終了時まで配属される。ドイツ海軍戦闘艦は、海賊対処作戦などで常時米海軍艦艇と共同作戦を行ってきたが、空母打撃群の一翼を担って行動するのは今回が初めてで、 FGS Hamburgは CSG 8の対空及び対艦防御を担当している。ドイツ側司令官は、今回の配属が Sachsen級フィリゲートの今後 2年間の米空母打撃群へのローテーション配属へのよいスタートとなることを希望すると述べた。
記事参照:
Hamburg First German Ship to Deploy in U.S. Carrier Strike Group
4月 3日「北極海の 2月の海氷面積、冬季では過去 5番目に小さい記録」 (NASA, April 3, 2013)
NASAの分析によると、2013年 2月 28日に観測された北極海の海氷面積は 1,509万平方キロと、冬季では最大値に達し、過去 35年間観測されてきた中で冬季では 5番目に小さく、平均値より 37万 4,000平方キロ少ない値を記録した。NASAゴダード宇宙飛行センターのジョイー・コミソ氏は、冬季における海氷の減少は、温室効果ガスの増加の影響の表れであると指摘する。NASAが 1970年代後半から受信してきた衛星データからも、海氷面積が年々減少してきていることが分かる。この減少は、冬季よりも夏季に速く進んでおり、数十年後には夏の北極海に氷がない状態が起こるという予測すらある。過去 2年の間に溶け残った多年氷は、1980年代初頭と比較すると半分よりも少なく、コミソ氏は、その量は今後も減っていく一方であると指摘する。負に転じた北極振動指数により、最北端の地域における今冬の気温は平均値よりも高く、2月と 3月に発生した嵐によりボーフォート海を覆う氷に大きな切れ目ができた。これらの切れ目はすぐに凍結したが、北極海に太陽の光が届くようになった今、新たにできた薄い氷の層が溶け、氷嚢を小さな浮氷に分けてしまう可能性もある。NASAゴダード宇宙飛行センターのネイサン・クルツ氏は、この現象が氷の溶解に及ぼす影響の可能性を指摘する。なお、NASAゴダード宇宙飛行センターにおける分析は、NASAの人工衛星 Nimbus7と米国防総省の気象衛星プログラムのデータをもとに行われている。
記事参照:
2013 Wintertime Arctic Sea Ice Maximum Fifth Lowest on Record
4月 4日「ベトナム、 2013年末までにロシアから潜水艦受領」 (Naval-Technology.com, April 4, 2013)
ロシアの RIA Novostiがマレーシアのランカウイで開催されている、 Langkawi International Maritime and Aerospace (LIMA-2013)に参加しているロシアの Rubin Central Maritime設計局長の話として伝えるところによれば、ロシアは、2013年末までに Project 636M Varshavyanka級ディーゼル電気推進潜水艦 6隻の内、最初の 1隻をベトナムに引き渡す。1番艦は現在、ロシアで海上公試中である。ベトナムが受領する、 Project 636M型潜水艦は Kilo級の改造型で、南シナ海におけるベトナムの地域拒否戦力構築の一翼を担う。ベトナムは 2009年 12月、総額 20億米ドルでロシアから 6隻の潜水艦を購入する契約を結んだ。ロシアは、 2016年までに潜水艦を引き渡すとともに、ベトナムの潜水艦要員の訓練も行う。Varshavyanka級は、最新のステルス技術とともに、対地、対艦及び対潜攻撃能力、戦闘行動期間が強化されている。
記事参照:
Vietnamese Navy to receive first Varshavyanka-class submarine by end of 2013
4月 5日「フィリピン、米軍の基地展開を容認」 (ИТАР-ТАСС, April 5, 2013)
フィリピン共和国のデルロサリオ外相は 4月 5日、マニラの軍事基地で記者団を前に、北朝鮮からの脅威の可能性に対する防衛のため、米国を支援する旨、明らかにした。また、フィリピン国内に米軍の新たな軍事基地を設置する可能性も排除しなかった。米軍はかつて、フィリピン領内に軍事基地を持っていただけではなく、イラクやアフガニスタンでの戦争時には、戦闘機や軍艦の補給や修理も行っていた。現在、米軍の軍艦数隻がスービック湾にあるが、ここは以前、第 7艦隊が展開していた。この他にも、クラーク空軍基地には、米軍の戦闘機が置かれていた。
外相はまた、「フィリピンと米国は同盟国として、どちらかの国に対する攻撃の脅威が生じた場合、相互に支援すべきと考える」と述べた。フィリピン政府は 1951年、米国との同盟条約(米比相互防衛条約)を締結している。この条約は、米国が日本、韓国、シンガポール、タイ、オーストラリアと結ぶ同盟条約とともに、アジア太平洋地域における米国の活動の鍵ともなっている。
記事参照:
Филиппиныразрешат США развернуть военные базы насвоей территории -глава МИД
4月 5日「インドネシア、潜水艦基地開設」 (The Jakarta Post, April 6, 2013)
インドネシア海軍のマルセティオ (ADM Marsetio) 司令官は 5日、インドネシア東部海域の安全保障強化の一環として、スラウェシ島中部のパルにパル海軍基地を開設した。同司令官は式典で、パル湾に面した基地は理想的な戦略的位置にあり、水深も深く、インドネシアにはこうした基地はこれまでなかった、と語った。同基地は潜水艦基地でもあり、韓国から購入する 3隻の潜水艦が配備される。パル湾は幅 10キロで、海岸線は 68キロに及び、最深部は 400メートルに達する。この基地は将来的には、海軍の主要基地のひとつとなる。
記事参照:
Navy opens new base prepared for submarines
4月 7日「中国の原子力潜水艦、インド洋でも活動活発化」 (Hindustan Times, India, April 7, 2013)
4月 7日付けのインド紙、Hindustan Timesは、インド国防省の機密文書、「インド海軍:海中抑止力と準備のために認識すべき脅威 (‘Indian Navy: Perceived Threats to Subsurface Deterrent Capability and Preparedness’)」の内容として、中国軍の潜水艦の活動について報じた。それによると、米印両軍の情報共有の結果、この 1年間で少なくとも 22回、中国海軍の攻撃型潜水艦が、中国の領海外で、潜航中に行った通信が確認された。このことから中国海軍は、インド海軍の活動地域内(主にインド洋)で活発に活動しているとみられる。
その上で上記文書は、重要なシーレーンとなっているインド洋において、中国海軍がインド海軍の優位を崩そうとする暗黙の目的をもっていることを指摘している。また、文書によれば、中国海軍は、原子力潜水艦と対艦弾道ミサイルなどの地域拒否戦力をもって、インド洋への展開に焦点を当てた遠征海軍としての能力を向上させつつある。この文書は、戦力計画と能力構築に関して政府に助言することなどを任務とする、統合国防スタッフによって作成されたもので、今後 3年間で、中国海軍がその戦略的活動を増大させるにつれ、インド海軍との抗争が激化するであろう、と予測している。
文書はまた、パキスタン・グワダル港は、インド洋における中国海軍のプレゼンスを支える指揮統制能力の拠点となろう、と警告している。中国は近年、バングラデシュのチッタゴン、ミャンマーのシットウェーとココ諸島、スリランカのハンバントータに港湾施設のネットーワークを構築するとともに、セイシェルに寄港地を確保するなど、いわゆる「真珠数珠繋ぎ (‘String of Pearls’)」戦略といわれるものを推進してきた。しかしながら、インドの一部の専門家は、この戦略は誇張されたもので、インドのこの地域における影響力を削ぐようなものではない、としている。例えば、メノン (Raja Menon)退役海軍少将は、「これらの港湾施設を海軍基地に転用するのは、極めてハードルが高い。中国にそれができるとは思わない。どの国も、インドを敵に回す危険を冒して、中国に転用を認めるとは思わない」と述べている。また、バスカール (Uday Bhaskar) 退役海軍准将も、「中国がこの戦略によってインドを締め上げようとしているとの見方は、誇張されすぎている」と指摘している。
記事参照:
China’s submarines in Indian Ocean worry Indian Navy
【関連記事】「インド洋にはためく中国海軍旗、潜水艦活動活発化」 (The Diplomat, April 9, 2013)
台北在住のジャーナリスト、マイケル・コール (J. Michael Cole)は 4月 9日付の Web誌、The Diplomatに、“Red Star Over the Indian Ocean?” と題する論説を寄稿し、インド国防省の機密文書、「インド海軍:海中抑止力と準備のために認識すべき脅威 (‘Indian Navy: Perceived Threats to Subsurface Deterrent Capability and Preparedness’) 」が、インド洋における中国海軍の原子力潜水艦の活動の活発化がインドの国益に対して「大きな脅威」になり得ると指摘したことに関して、要旨以下の諸点を指摘している。
(1) この文書は、インド洋でこの 1年間少なくとも 22回の潜水艦による通信があり、直近では 2月にあったと指摘し、インド海軍は、米海軍との情報の共有に基づいて、この潜水艦が中国海軍のものである可能性が極めて高いと結論付けている。インドのメディアは、この文書は中国の原潜がインド洋にしばしば進出していることを証明した、と報じている。
(2) Indian Today紙の報道によれば、この 22回の内訳は、1回がアンダマン・ニコバル諸島から 90キロの海域、6回がマラッカ海峡北西海域、13回がスリランカ南方海域、2回がアラビア海であった。潜水艦は海南島の基地を置く南海艦隊所属と見られる。中国は 2012年 5月に、南シナ海における長期戦略の一環として、海南島三亜の楡林に 094型戦略原潜を配備したことを公表した。この SSBNは、JL-2 SLBM を搭載することになろう。
(3) このような中国海軍潜水艦の通信数は 4年前から増加傾向にある。米情報機関は、 2008年に中国の 50隻以上の潜水艦が 12回の領海外の「拡大パトロール」を行ったことを明らかにした。これは 2007年の 6回から増加したものであった。この発表では、「拡大パトロール」の位置までは示していないが、いくつかはインド洋周辺海域で起きたものと見られる。
(4) 更に、インド国防省の文書は、中国海軍の「暗黙の意図」として、「高度に敏感なシーレーン」に対するインド海軍の管理能力を切り崩すことを挙げている。そして当面、中国は、インド海軍の水中把握能力を削ぐことに力を注ぐとの見方を示している。また、文書は、中国海軍の拡大されたパトロールの範囲はインド海軍の活動範囲と完全に一致するかもしれないと指摘し、中国は将来的にパキスタンのグワダル港を利用してインド洋で活動するための「強力な指揮統制能力」を得、原潜や DF-21D対艦弾道ミサイルのような兵器を使ってインドに脅威を与えるかもしれないと警告している。ただ、インドの分析者の中には、中東やアフリカからエネルギー輸入を増大させつつある中国にとって、通過点となるインド洋を重要視するのは当然で、過剰反応すべきでないとの指摘もある。
記事参照:
Red Star Over the Indian Ocean?
4月 8日「マルタ、自国籍船船主に対する PMSC雇用に当たっての注意事項通達」 (Marinelink.com, April 8, 2013)
4月 8日付けの Marinelink.comによれば、マルタ当局はこのほど、マルタ船籍船主に対する民間武装警備要員 (Privately Contracted Armed Security Personnel: PCASP) の雇用に当たっての注意事項、Shipping Notice 106を通達した。それによれば、 PMSCを乗船させるための全ての申請書類には、PMSC乗船中の乗組員リストと航海計画を添付するよう勧告している。更に申請に当たっては、船主は以下の事項を確認するよう求めている。
(1) 船舶保安計画は、ハイリスク海域を航行することを考慮して作成し、船舶保安評価を更新すること。
(2) これまでの回章及び通達の規定も併せて考慮し、適用すること。
(3) 船長が船舶の警備及び安全全般にわたる責任を持つこと。
(4) 追加の乗船者は、安全設備と船室の要件に沿ったものとすること。
(5) PCASPが下船する場合、全ての武器及び弾薬も船舶から積み下ろすこと。
(6) 全ての武器及び弾薬は、ハイリスク海域外の海域に配置された保管場所から搭載しないこと。
(7) 沿岸国、寄港国の武器関係規則を遵守すること。
(8) PCASPは、以下の資格を保持していること。a.任務に適した資格、b.乗船時に携行する武器を使用する資格、c.Personal survival techniques (STCW A-VI/1-1)、Fire fighting and fire prevention (STCW A-VI/1-2)、Elementary first aid (STCW A-VI/1-3)、及び Personal safety and social responsibility (STCW A-VI/1-4)の 4つの分野の基礎的訓練の資格。
(9) マルタ当局に要請された場合、必要な細部情報や書類を直ちに提出できるよう用意しておくこと。
マルタ船籍船主は、事前申請による許可がないマルタ籍船での武器の使用がマルタとマルタ海運業界の利益に反する行為と見なされ、船籍登録が取り消される可能性もあると忠告されている。
記事参照:
Armed Private Security Guards: Malta-flag Issues Advisory
4月 8日「中国漁船、比スールー海サンゴ礁で座礁」 (South China Morning Post, AFP, April 9, 2013)
フィリピン沿岸警備隊広報官によれば、12人乗り組み中国漁船が 4月 8日深夜にフィリピンのスールー海にある世界遺産、トゥバタハ国立海洋公園内のサンゴ礁で座礁したことが、9日に判明した。現場海域は、中国海南島から南西へ約 1,600キロ離れており、中国が主張する 9段線には含まれていない。フィリピン海軍当局者は、この漁船は南シナ海を南下し、パラワン島南端の狭いパラバク海峡を通って現場海域に入った、と見ている。トゥバタハ国立海洋公園では、1月に米海軍掃海艦が座礁し、3月末に撤去作業が完了したばかりである。この座礁で、少なくとも 2,345平米のサンゴ礁が損傷を受け、フィリピン当局は、米側に 140万米ドルの賠償を要求している。
記事参照:
Chinese fishing boat runs aground in Philippines reef
Photo
【関連記事 1】「フィリピン、乗組員起訴へ、スパイ船疑惑も」 (The Philippine Star, April 11, 2013)
12人の乗組員はパラワン島のプエルト・プリンセサに到着した。トゥバタハ国立海洋公園管理局 (TMO) は、彼らが関係各機関の取り調べを受け、フィリピン国内法に基づいて外国人による密漁、海洋公園内への無許可侵入、サンゴ礁の損傷などの罪で起訴される、と語った。アキノ三世大統領は、彼らを国内法で裁くと言明している。 TMOによれば、海洋公園内で中国漁船が拘束されるのは 2002年以来、今回が 7回目である。大統領は、より多くのブイの設置と座礁事故や不法侵入を防ぐための海洋公園周辺のバッファーゾーンの拡大を計画している、と語った。
記事参照:
Poaching, bribery raps set vs Chinese
【関連記事 2】「絶滅危惧種動物を発見、中国漁船」 (The Philippine Star, April 15, 2013)
フィリピン沿岸警備隊は 4月 15日、座礁した中国漁船から絶滅危惧種、センザンコウが冷凍されて入った箱 400個を発見した。1箱につき冷凍されたセンザンコウが 25から 30匹入っていた。中国ではセンザンコウの肉と外皮は薬効があるとされており、キロ当たり 114米ドルで取引できるという。フィリピンでは、センザンコウは絶滅危惧種で、パラワン島が生息地とされる。沿岸警備隊広報官は、これらがフィリピン領内で捕獲されたものかどうかを調査すると語った。乗組員は現在、パラワン省拘置所に収容されている。
記事参照:
Endangered anteaters found in Chinese fishing vessel
備考:センザンコウは体がうろこに覆われた有鱗目の哺乳類。国際法で保護の対象になっており、うち 2種は国際自然保護連合 (International Union for the Conservation of Nature: IUCN) の「レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)」に掲載されている。肉や皮、うろこの需要が高いことからアジアの広い地域で密猟が横行しているという。
【関連記事 3】「中国漁船、離礁」 (gCaptain, April 22, 2013)
フィリピン沿岸警備隊は 4月 19日、座礁した中国漁船をタグボートで離礁させることに成功した、と発表した。沿岸警備隊のダイバーによる船底調査で損傷がなければ、該船をパラワン島のプエルト・プリンセサに曳航し、拘留の上、特に 400箱の冷凍センザンコウについて調査する。
記事参照:
Chinese Fishing Vessel Pulled from Tubbataha Reef
4月 8日「中国最大の巡視船、海上公試開始」 (人民網日本語版、 2013年 4月 8日)
4月 8日付け、人民網日本語版によれば、中国の新型巡視船、「海巡 01」はこのほど塗装作業を終え、海上公試を開始した。「海巡 01」は 5,000トン級で、中国海事部門の巡視船としては最大で、最先端の装備を誇り、哨戒に加え、捜索救助機能を兼ね備えた海洋法令執行船で、中国海事局に配備される。「海巡 01」は武昌船舶重工有限責任公司が 2年あまりをかけて建造したもので、今回の海上公試では、主に速度測定、自動船位保持装置、オートパイロットなどのテストを行う。また、船体の構造、設備、システムなどの安定性を検査し、船および主要装備・システムの性能指標を測定するほか、ヘリコプターとの共同作業などをテストする。
「海巡 01」は全長 128.6メートル、全幅 16メートル、排水量 5,418トン、航続距離は 1万カイリ以上で、中国が管轄する海域内において、パトロール、安全監督管理、人命救助・捜索、船舶事故の証拠取得・調査、船舶からの原油流出のモニタリング、突発的事件の応急処置指揮などの任務を遂行する。
記事参照:http://j.people.com.cn/94474/8198561.html
Photo: http://j.people.com.cn/94474/8198561.html
4月 10日「南ア海軍、モザンビーク海峡哨戒を 2014年 3月まで継続」 (Defence Web, April 10, 2013)
南アフリカ海軍は、少なくとも 2014年 3月まで、モザンビーク海峡の哨戒活動を継続する。ズマ大統領が国軍最高司令官布告で明らかにした。南アフリカの海賊哨戒活動は、モザンビークとタンザニアと了解覚書に基づいて、モザンビーク北部のペンバを根拠地として、空軍と陸軍の支援を得て実施しされてきた。
記事参照:
Navy to stay in Mozambique Channel until March 2014
お知らせ『中国の海洋進出−混迷の東アジア海洋圏と各国対応』発行
海洋政策研究財団では、2010年度から 2012年度までの 3年間をかけて、東アジア海域における安全保障環境に関する研究事業を実施してまいりました。研究では、国内外から海洋、外交・安全保障、中国の政治・軍事、国際法等に関わる研究者を招聘しして、西太平洋、東シナ海、南シナ海、インド洋東部と繋がる“アジア海洋圏”の安全保障環境を分析するとともに、中国の海洋進出の行動原理、我が国が採るべき政策等について考察し、その成果として、成山堂書店から『中国の海洋進出−混迷の東アジア海洋圏と各国対応−』(2013年 4月 28日)を発行致しました。
同書の目次体系は以下のとおりです。
第 1章「いま、東アジア海洋圏で何が起きているか」
第 2章「東アジア海洋圏の戦略構造−その地政学的考察−」
第 3章「東アジア海洋圏をめぐるパワーゲーム」
第 4章「海洋をめぐる中国の戦略的構造−“天下に抱かれる海洋”−」
第 5章「東アジア海洋圏の安全保障環境安定化のための羅針盤」
附 章「古典地政学の理論と東アジア海洋圏の安全保障構造」
尖閣諸島や南シナ海の島嶼をめぐる紛争によって不安定化する東アジア海洋圏の安全保障環境と各国の対応を読み解く時宜を得た書籍となっております。
本書 (成山堂書店:税込価格 2,520円) は書店で販売いたします。
ISBN978-4-425-53151-6
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