海洋情報旬報 2013年3月11日〜3月20日

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3月 11日「仲裁裁判所への提訴、フィリピンの狙い—セイヤー論評」 (USNI News, March 11, 2013)

オーストラリアのセイヤー (Carlyle A. Thayer) 名誉教授 (University of New South Wales) は 11日付の USNI Newsに、” China at Odds with U.N. Treaty ” と題する論評を寄稿し、フィリピンが 1月 22日に、国連海洋法条約( UNCLOS)の規定に従って、南シナ海の領有権問題を仲裁裁判所に提訴した狙いについて、以下の 3点を指摘している。

(1) 第 1に、フィリピンは、南シナ海におけるフィリピンと中国が主張する海洋管轄権は UNCLOSによって規定されるものであり、領海、接続水域及び EEZで構成されることが確認されることを求めている。その上で、フィリピンは、仲裁裁判所が中国の主張を UNCLOSと矛盾するもので、従って無効であると判定することを求めている。更に、フィリピンは、仲裁裁判所が中国の国内法規を UNCLOSに準拠したものとすることを中国に要求することを求めている。

(2) 第 2に、フィリピンは、仲裁裁判所に対して、中国とフィリピンが領有権を主張する南シナ海の島嶼、低潮高地そして環礁などの法的地位を規定し、これらの島嶼などが領海 12カイリより以遠の海洋管轄権を有し得るものかどうかを判定することを求めている。フィリピンは特に、ミスチーフ環礁(備考:中国名、美済礁、以下同じ)、マッケナン環礁(西門礁)、ガベン環礁(南薫礁)、スビー礁(渚碧礁)、ジョンソン礁(赤瓜礁)、カルテロン礁(華陽礁)およびフェアリークロス礁(永暑礁)をリストアップし、中国はこれらが島であることを前提として海洋管轄権を主張している、と述べている。フィリピンは、これらを、UNCLOSの規定では島としての要件を構成しない、水面下にあるバンク、リーフそして低潮高地であるが、フィリピンの大陸棚の一部かまた公海に属する、と主張している。

(3) 第 3に、フィリピンは、中国が UNCLOSに違反して、EEZ内あるいは EEZと大陸棚を超えた海域におけるフィリピンの合法的活動を妨害してきた、と主張している。フィリピンは、仲裁裁判所が中国に対して、①上記リストの環礁の占拠およびそこにおける活動、②スカボロー礁(黄岩島)およびジョンソン礁周辺海域において海洋生物資源を捕獲するフィリピン船舶に対する妨害、③フィリピンの EEZと大陸棚における生物および非生物資源の捕獲、開発、そして④フィリピン沿岸から 200カイリ内およびそれ以遠の海域における「航行の自由」に対する妨害、を止めるよう要求することを求めている。

フィリピン当局者によれば、仲裁裁判所の判決が出るまでは 3年から 4年かかるであろう。この間、中国は、フィリピンが管轄権を主張する海域におけるプレゼンスを一層強化すると思われる。

記事参照:
China at Odds with U.N. Treaty

3月 11日「マースクライン、パナマ運河の使用中止」 (gCaptain, March11, 2013)

世界最大のコンテナ船会社、Maersk Lineは今後、アジアから米国東岸向けのコンテナ輸送にパナマ運河を使用しないことを明らかにした。同社の CEOが 11日にシンガポールで明らかにしたところによれば、Maersk Lineは今後、4500TEUコンテナ船 2隻でパナマ運河を使用する代わりに、一度に最大 9000TEUを積載できるコンテナ船 1隻でスエズ運河を利用することになろう。同社のパナマ運河利用の最終船は 4月 7日で、スエズ運河利用の最初のコンテナ船はその 1週間後となる。同社によれば、所要船舶が半分になる方が経済的であり、またパナマ運河の通航料金の値上がりもその理由のひとつで、 4500TEUコンテナ船 1隻当たりのパナマ運河通航料金はこの 5年間で、45万米ドルと 3倍増となった。スエズ運河利用では、中国から米東岸までの距離がパナマ運河経由より約 4〜5%長くなるという。パナマ運河は現在、52億 5,000万米ドルで拡張中であり、当初予定より 6カ月遅れの 2015年 6月までに完了することになっている。

記事参照:
Maersk Line Ships Will No Longer Transit Panama Canal

3月 11日「日米、宇宙利用し海洋監視」(時事通信、 2013年 3月 11日)

日米両政府は 11日、東京都内で「宇宙に関する包括的日米対話」の初会合を開き、宇宙空間を利用した海洋監視を推進することなどで合意した。これは、海洋進出を図る中国を念頭に置いたものである。宇宙利用を進める中国に対して、日米が連携して対抗する狙いもあるとみられる。初会合では共同声明をまとめ、米国の全地球測位システム (GPS) と日本の準天頂衛星システムのデータ交換などによる連携や、宇宙ごみの監視に関する議論を進めることで一致した。

記事参照:
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201303/2013031100883

3月 11日「中国、海洋法令執行機関統合— A. エリクソン論評」 (The Wall Street Journal, March 11, 2013)

中国の馬凱国務委員は 10日、第 12期全国人民代表会議(全人代)において、国家の海洋権益を守り、海洋法令執行機関を統合し、海洋法執行機能を強化するため、旧国家海洋局とその中国海監、公安部の辺防管理局海警、農業部の中国漁政、海関総署の海上密輸取締警察を整理統合して、国家海洋局の名で海上権益維持・海洋法令執行活動を行う機構改革計画を発表した。

米海軍大学のエリクソン (Andrew Erickson) 准教授は、HP「China SignPost™ 洞察中国」の共同設立者、コリンズ (Gabe Collins) と連名で、11日付の米紙、The Wall Street Journalに、“New Fleet on the Block: China’s Coast Guard Comes Together” と題する論説を寄稿し、この機構改革の狙いとその戦略的意義などについて、要旨以下の諸点を指摘している。

(1) 我々自身を含めて多くの分析者は、中国の急激な海軍力の増強に多大の関心を持ってきた。しかしながら、近い将来、中国の近隣海域における活動がもたらす最も深刻な影響は、その海軍力ばかりでなく、中国がアジア最大の沿岸警備隊の創設を目指す進行中の機構改革変革からももたらされることになろう。中国の非軍事海洋勢力は、最先端の機能には及ばないが、現在では、この地域で最も大きく最も能力の高い日本の海上保安庁とほぼ同規模の大型巡視船を保有している。馬凱国務委員は全人代で、5つに分かれている海洋法令執行機関は中国の海洋法令に関する所要を満たし、海洋主権を護り、そして 2015年までには国家経済の 10%を賄うと見られる海洋経済を含む海洋管轄権や権益を護るには不十分であり、従ってこれを是正するために統合が必要である、と指摘した。中国の主な非軍事海洋機関は、それぞれ異なる上部組織の下にあって、「海で競い合う 5頭の龍」に例えられてきた。その内、以下の4頭の龍は、国家海洋局 (SOA) の下に統合されることになる。a. 中国海洋監視局 (CMS):既に SOAの下にある。b.辺防管理局 (BCD):以前は公安部。c.漁政局 (FLEC):以前は農業部。d. 海関総署:以前は国務院。5頭目の龍、交通運輸部海事局 (MSA) は、統合に関する公式声明の中では全く言及されていない。この統合計画は、中国の近隣諸国がその沿岸警備能力を改善してきた方法を綿密に研究した結果に基づくものであるとされる。その 1つが 2007年に公表された寧波海上警察学校の研究で、この研究では、韓国が如何にして異なる海洋法令執行機関を1つに統合し、強力な国家海洋警察の創設に成功したかについて言及されている。

(2) この統合計画の狙いは、各機関が持つ固有の効率性を維持しながら、国家の権力手段としてより統制された方法で、中国の海洋法令執行能力を駆使しようとすることにある。より強力な中央統制によって、意図しない海洋紛争の拡大をもたらしかねない個々の指揮官の性急な行動を抑えながら、新たに統合された沿岸警備隊が国家目標をより良く追求できるようなろう。非軍事海事部門の統合は、これまで海洋法令執行機関同士の競合によって蒙ったリスクを軽減することになろう。とはいえ、北京の危機におけるリアルタイムでの意思決定と管理は依然、難しい課題に直面している。統合計画はこの深刻な課題への対応ではあるが、国家海洋局 (SOA) が傘下に加わった新たな龍達を機構上そして運用面で如何に融合させていくかは今後の課題である。

(3) 統合された非軍事海洋法令執行能力の構築は、中国の核心的戦略的利益に資する。東・南シナ海の中国近海の外側では、海賊などの非伝統的な要因がもたらす多くの安全保障上の脅威に直面している。更に指揮系統の統合も、中国の海洋法令執行機関の運用上の効率を大きく改善することになる。例えば、これまで交通運輸部海事局 (MSA) の上海救難調整センターは、MSA船舶の位置をリアルタイムで表示する船舶追尾システムを所管していたが、他の4頭の龍の船舶が何処にいるかを表示できなかった。高級レベルでの監督・指揮の一元化は、中国がこうした、あるいはその他の非効率を解消するのに役立つ。

(4) 統合された中国の沿岸警備隊は、運用面でもまた地理的にも次第にその任務を拡大していくかもしれない。それはまた、灰色の船体(軍艦)に代えて白い船体(非軍事船舶)による抑制されたメッセージと行動で対応(この問題の第1人者、ゴールドスタイン (Lyle Goldstein)の用語を借りれば、「非軍事の段階的拡大 (“non-military escalation”)」)する北京の能力を強化することにもなる。沿岸警備隊が海軍部隊の実際の展開によって危機を煽ることなく影響力を発揮できるという事実は、近海そして遠海においてもその権益を護る上で、世界的な海洋大国にとって極めて有益なツールとなっている。ここで特記すべきは、米国の沿岸警備隊は世界的に運用されているということである。中国の海洋権益はますます世界的に拡大し続けており、しかも中国は自国の法律を国境を越えた活動にも適用しようとしており、従って、中国の新しい統合海洋法令執行機関のリーダー達は、現在果たしているよりも広範な任務を遂行できるような組織を目指すことになるかもしれない。

(5) より一元化された中国沿岸警備隊の指揮系統は、他の国との協力促進を可能にする。中国と日本、韓国、米国及びインドのような地域的、世界的な海洋大国は、漁業管理に加えて、海賊、テロ及びその他の破壊的な非伝統的脅威から重要なシーレーンや港湾を護るという、共通利益を共有している。この点で、一元化された折衝相手を中国に持つことは、共通する利益分野での緊密な協力促進を可能にする。官僚機構上の統合と協調の課題が超克されれば、新たな艦隊は、中国に運用上の大きな可能性をもたらすであろう。小さな龍達を雑多に集めて「海を奪い合う」代わりに、より大きな一頭の龍は、彼らの本来の責務をより効果的に果たすことができるようになろう。例え中国が海軍艦艇を派遣した場合よりも遥かに事態が拡大しないやり方だとしても、より大きな一頭の龍は、中国領域内でのその任務責任を超えて、近隣諸国の沿岸警備隊や海軍部隊との間でより厳しい軋轢を生むことになるかもしれない。中国の新しい沿岸警備隊が取る方針、その発展する規模そして担う役割は、沿岸から離れた海に対する北京の狙いを知る重要な兆候となろう。

記事参照:
New Fleet on the Block: China’s Coast Guard Comes Together
Photo: China’s Type 054A frigates hold live ammunition drill
Global Times, Xinhua, March 12, 2013

3月 12日「日本、メタンハイドレートからのガス採取成功−世界初」 (日本経済新聞電子版、 2013年 3月 12日)

日本政府は 12日、渥美半島から志摩半島の沖合で、海底にあるメタンハイドレートからガスの採取に成功したと発表した。天然ガス成分を多く含み、「燃える氷」とも呼ばれるメタンハイドレートを海底で分解し、ガスを産出したのは世界でも初である。水深約 1,000メートルの海底から約 300メートル掘り進めたところに分布するメタンハイドレートは、高圧で存在し、圧力を下げることでガスが分離する。同海域には日本の天然ガス消費量の 10年分以上のメタンハイドレートがあると推定されており、1月から試掘準備を進めていた。

記事参照:
メタンハイドレートからのガス採取成功世界初

【関連記事】「日本の成功、ロシアも大きな関心」 (TV Дождь, March 13, 2013)

日本政府の発表は、エネルギー大国のロシアでも「海底のガス−ガスプロム社の新たな脅威」として、 12日夜の TV番組「 ЗДЕСЬ и СЕЙЧАС」で報じられた。ロシアの政府系天然ガス最大手ガスプロムが、「将来アジアは、ロシア産ガスの主要な輸出先になる」との見通しを明らかにした矢先に、日本が自前のガス調達の可能性に成功した。経済評論家のレフ・パルホメンコは、「日本がメタンハイドレートからガスを産出することに初めて成功した。これは、掘削技術におけるブレークスルーでもあり、ガスプロムを脅かすことにもなるだろう」と指摘している。

日本の成功が今後ロシアに及ぼす影響について、ロシアの VNIIO研究所 (The All-Russia Scientific Research Institute for Geology and Mineral Resources of the Ocean) の副所長は以下のように指摘している。

(1) 日本が公表した、ハイドレートからのメタンガス産出は、今日の技術開発の先端にある。日本はエネルギー資源を持っていない。そこで日本は、自国の EEZ内に莫大な量のハイドレートがあると知るやいなや、その調査に莫大な資金を投じた。メタンハイドレートは、日本だけではなく、米国の西海岸や南米、大西洋にもある。ロシアもまた、バイカル湖、黒海、カスピ海、オホーツク海でメタンハイドレートが発見されている。今後、ロシアもハイドレートからガスを産出することになれば、真っ先にオホーツク海からになるだろう。

(2) メタンガスを工業的規模で適用できる程度までガス産出技術を進歩させるには、少なくとも 10年、あるいは 20年、30年とかかるかもしれないが、いつかその時が来ることは明らかだ。日本では既に、100年先まで賄えるだけのハイドレートが見つかっているという。2000年初頭、ガスプロムの関係者は、ロシア産ガス販売の主な市場は米国になると発言していた。そのためヤマル半島に、 LNGターミナルの建設を含む、大規模な資源開発を計画した。しかしこのようなプロジェクトは、未だ始動せず、米国へのガス輸出など論外である。シェールガス革命は、この先数年内にも、米国自身がエネルギー輸出国となることを可能にした。このことが明らかになった時、ガスプロムは「(ロシア産ガスを)東アジアへ」と発表したのである。アジアは、世界の経済成長の中心であり、エネルギー需要が益々拡大しているのだから、全く妥当であろう。アジアの中でも、主なガス輸入国の 1つが日本である。ガスプロムも日本を狙っていた。ここにきて、今回のサプライズだ。10年後、日本は既にロシア産ガスを必要としないかもしれない。それは、日本やアジアだけを指しているのではない。米国のシェールガス同様、ガスハイドレートは、エネルギー資源市場を完全にひっくり返す可能性も孕んでいるのだ。

記事参照:
Японский газизводы − новая угроза 《Газпрому》

備考:日本政府の「海洋基本計画(原案)」
政府が 4月 1日に公表した、今後 5年間の海洋政策の指針となる「海洋基本計画」の原案では、「日本周辺海域に相当量の腑存が期待されるメタンハイドレートを将来のエネルギー資源として利用可能とするため、海洋産出試験の結果等を踏まえ、平成 30年度を目処に、商業化の実現に向けた技術の整備を行う」としている。
「海洋基本計画(原案)」については以下を参照;
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/public/kihonkeikaku_genan.pdf

3月 14日「中国、北方航路の商業利用へ」 (Barents Observer, March 14, 2013)

中国の海運会社は 2013年の夏、北方航路を経由する同国初の商業航行を計画している。 2020年までに、中国の海運による国際貿易の最大 15%が北極海経由になる可能性がある。北極海における海氷の溶解が進むにつれ、中国は北極に足がかりを持つことに熱意を示してきた。中国は、 8カ国よりなる北極会議 (The Arctic Council) の常任メンバーの地位を得るために、ロビー活動をしてきた。中国の砕氷船、「雪龍」による 2012年の北方航路の航行は、中国の海運業界にとって大いなる追い風となった。上海・ハンブルグ間は、スエズ運河経由より、5,200キロも短い。主としてコンテナ船による中国の海運による国際貿易の 5〜15%が北方航路を利用することになろう。北方航路の通航船舶は、2011年の 34隻、2010年の 4隻に比して、2012年は 46隻であった。2012年の輸送貨物量は 126万 1,545トンで、 2011年の 82万 789トンに比して、53%増であった。

記事参照:
China starts commercial use of Northern Sea Route

3月 14日「台湾閣議、民間武装警備員添乗認可法案を承認」 (Focus Taiwan, March 14, 2013)

台湾政府は 14日、ソマリア海賊対策のため民間武装警備員を自国船籍の遠洋漁船と商船に添乗させることを認可する法案(漁業法と海運法の修正)を閣議決定した。台湾は、自国籍船に民間武装警備員を添乗させることを認可した国としては、米英を含め 13番目となった。この法案によれば、台湾籍船に民間武装警備員を添乗させるためには、船主は、政府から認可を得る必要があり、また銃器を船外に持ち出してはならない。違反した場合には、漁船に対して 6万〜30万台湾ドル、船会社に対して 50万〜300万台湾ドルの罰金が科される。この法案は、立法院で審議される。

記事参照:
Taiwan aiming to allow armed guards on civilian ships
Photo: Ex-USS Guardian Wreck Removal Continues
The U.S. Navy-contracted vessels Jascon 25 and the tugboat Archon Tide are positioned next to the Avenger-class mine countermeasures ship ex-Guardian (MCM 5) during salvage operations.
gCaptain, March 15, 2013
(米海軍によれば、ex-Guardian (MCM 5)の解体、撤去作業は 3月 30日に完了した。地元メディアによると、損傷したサンゴ礁は約 4,000平米に及ぶことが確認されており、今後、フィリピン政府が海洋生物の専門家を交え被害の詳細を調べ、米側への賠償請求額を決めることになっている。)

3月 19日「中国海軍南海艦隊任務部隊、南シナ海、西太平洋での演習に向け出航」 (People’s Daily Online, March 25, and South China Morning Post, March 27, 2013, and other sources)

中国海軍の揚陸艦、「井崗山」、ミサイル駆逐艦、「蘭州」、ミサイルフリゲート、「玉林」、「衝水」から構成される 4隻の南海艦隊任務部隊は 19日、南シナ海と西太平洋での演習に向け海南省三亜の基地を出航した。南海艦隊の蒋偉烈・司令員は出航に当たって、「この演習は実戦環境に即した演習で、情報システムに依拠した海軍の防衛能力の向上と海洋主権を護る能力の強化とを狙いとするものである」と語った。中国は南シナ海での攻勢的な哨戒活動を強化しているが、この演習は、中国海軍の年次演習計画に基づく定期的演習で、 2012年にも同様の演習が 7回実施されている。(The Economic Times, March 21)

任務部隊は 26日午前、中国の「9段線」の最南端に近い曾母暗沙 (James Shoal)に到着した。曾母暗沙は、マレーシア・サバ州沿岸から約 80キロ、ブルネイから 200キロ足らず、そして中国本土沿岸から約 1,800キロ離れた位置にあり、海面下に多くの岩礁群が存在している。中国は 2010年に、曾母暗沙を中国領と宣言したモニュメントを設置した。任務部隊の将兵は、「井崗山」甲板上で宣誓式を行い、「南シナ海を防衛し、海洋主権と権益を護り、海洋強国の建設に向かって邁進することを誓った。蒋偉烈司令員は宣誓式で、「南海艦隊は国家の領土を保全し、海洋権益を護衛し、南海情勢を安定させる重要な戦略的軍事力であり、国家の領海主権と海洋権益を断固として護っていく」と強調した。 (South China Morning Post, March 27)南シナ海では、赤瓜礁 (Johnson Reef)やその他の解放軍が駐留する島嶼、岩礁周辺で実施された演習では、「井崗山」搭載のホバークラフト揚陸艇、艦載ヘリ、両用戦車両に加え、陸上基地戦闘機、爆撃機、早期警戒機などが参加した。 (The Washington Post, AP, March 27)

任務部隊はその後、バシー海峡を通峡して、西太平洋海域で実戦環境に即した一連の戦闘演習を実施する。この公海での海軍演習は、国際法規と国際慣行に準拠して実施される。世界の主要海軍国は例外なく、公海での演習を常態化している。公海での演習は、戦闘能力を強化するために不可欠である。中国海軍も、他の主要海軍国と同様に、戦略的抑止能力と中国の海洋権益の防衛能力とともに、実戦能力を強化するために公海演習を常態化すべきである。今回の演習は、実戦環境に近い多様なシナリオに基づいて、各種の戦闘能力が演練される。南海艦隊任務部隊による今回の公海演習は、 2013年に「第 1列島線」を超える海域での定期的な演習を計画している中国海軍にとって、2度目の演習である。今回の参加戦闘艦は、長射程対空、対艦ミサイル、短射程の近接防空砲、そして艦載ヘリを装備しており、強力なエリアあるいは拠点防空から対潜戦、対水上艦戦に至る広範な戦闘能力を持っている。(People’s Daily Online, March 25)

なお、南海艦隊任務部隊は 4月 3日、16日間にわたった演習を終え、海南省三亜の基地に帰投した。(CRI Online, April 3)

記事参照:
Chinese navy conducts drills in disputed South China Sea
Naval expert interprets high-sea training of joint maneuver taskforce of South China Sea Fleet
PLA Navy amphibious task force reaches Malaysia ‘to defend South China sea’
China’s navy conducts island landing exercises deep in disputed territory of South China Sea
Photo: Chinese Navy’s amphibious landing ship Jinggangshan is seen during a training with a hovercraft in waters near Hainan Province on March 20, 2013.
http://www.scmp.com/news/asia/article/1200564/pla-navy-amphibious-task-force-reaches-james-shoal-near-malaysia
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2013-03/22/content_28329419.htm
YouTube: http://www.youtube.com/watch?v=wfkWYWch88o

3月 20日「米海軍沿岸戦闘艦、西太平洋海域に」 (TIME, March 21, 2013)

米海軍沿岸戦闘艦 (LCS)、USS Freedomは 20日、シンガポールを目指して、西太平洋海域に入った。同艦は、シンガポール到着後、チャンギ海軍基地を拠点に、8カ月間にわたって活動する。これはアジアにおける再均衡化の重要な戦力強化措置である。 LCSは、対機雷戦、水上戦闘あるいは対潜戦用の異なった「モジュール」を所要に応じて搭載できる。海軍は、1隻当たり約 4億 2,000万ドルの予算で最大 55の建造を計画しており、その大部分がアジア太平洋地域に配備される予定である。

記事参照:
New Warship Gives U.S. Pivot Some Punch