海洋情報旬報 2013年2月11日〜2月20日

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2月 15日「世界最大の重量物運搬船、処女航海へ」 (gCaptain, Bloomberg, February 15, 2013)

オランダの Dockwise Ltd.によれば、同社所有の世界最大の重量物運搬船、 Dockwise Vanguardはこのほど、韓国巨済島の現代重工造船所近くの深水湾で、重量 5万 6,000トンの世界最大の半潜没型掘削プラットホーム、Jack/St. Malo platformを搭載した。ほぼ 2日間にわたる固定作業を経て、12日に米テキサス州イングルサイドに向けて処女航海に出発する。到着予定は 4月半ばである。Dockwise Ltd.によれば、Dockwise Vanguardの最大積載量は 11万トンである。

記事参照:
Dockwise Vanguard Loads Largest Offshore Platform on Maiden Voyage

2月 16日「中国第 14次ソマリア派遣艦隊、出航」 (Xinhuanet.com, February 20, 2013)

中国の誘導ミサイル駆逐艦、「哈爾浜」、フリゲート、「綿陽」、総合補給艦、「微山湖」、及び艦載ヘリ 2機、人員 730人からなる第 14次ソマリア派遣艦隊は 16日、出航した。「微山湖」は 20日、南シナ海で「哈爾浜」と「綿陽」に対して、燃料、飲料水及びその他の物資を洋上補給した。

記事参照:
China’s 14th escort fleet sails for Somali

2月 18日「中国、グワダル港の運営権取得」 (Global Times, February 19, 2013)

中国国営、Overseas Port Holdings Ltd、Gwadar Port Authorityおよび The Port of Singapore Authority (PSA) からの代表者は 18日、パキスタンのイスラマバードで、グワダル港の運営権の移管に関する協定に調印した。式典に出席した、パキスタンのザルダリ大統領は、運営権の移管協定は中国パキスタン関係の新たなスタートとなる、と述べた。中国への運営権の移管とグワダル港の地理的位置が、地域的さらには世界的関心を高めている。イラン海軍司令官は 17日、イランはグワダル港から西に約 30キロにあるパサバンダル (Pasabandar) に新たな海軍基地を建設することになろう、と語った。また、インドも懸念を強めており、運営権の移管を、アラビア海における潜在的な海軍基地を中国に与えるもの、と見ている。これに対して、パキスタン駐在の中国大使は、いかなる国も中国とパキスタンの協力関係を懸念するに及ばず、中国が同港を軍事目的に利用するとの憶測は全く根拠がない、とパキスタンのメディアに語っている。中国による同港の運営は中国の輸入石油の 80%以上が通峡するマラッカ海峡を迂回する重要な措置と、広く見なされている。第 12期 5カ年計画の下、中国は、グワダル港と新疆ウイグル自治区の喀什 (Kashi) とを結ぶ鉄道とハイウェーの建設を加速するとしている。喀什の地方当局は、「完成すれば、鉄道は、物資とエネルギー資源の輸送回廊となり、中パ関係を一層深化させることになろう。グワダルの運営権の取得と将来的な鉄道路線は、喀什を中央アジアの補給センターにするという戦略を実現する上で力となろう」と語っている。一方で、中国のエネルギー専門家の 1人は、中国のエネルギー供給におけるグワダル港の役割は過大評価されており、石油パイプラインの建設コストと鉄道による石油輸送コストは高く付くであろう、と見ている。この専門家は、エネルギー資源の代替輸送ルートとしてパキスタンから中国へのルートに依存することは最後の最後の手段で、ほとんどあり得ない世界戦争でもない限り、マラッカ海峡が封鎖されることはあり得ない、と指摘している。

記事参照:
China takes over Gwadar Port

【関連記事】「グワダル港と『真珠数珠繋ぎ』戦略—ホルムズ論評」 (The Diplomat, February 9, 2013)

米海大のホルムズ (James R. Holmes) 教授は、9日付の Web誌、The Diplomatで、中国がパキスタンからグワダル港の運営権を取得したことに対して、要旨以下の諸点を指摘している。

(1) パキスタンのグワダル港の運営権が、シンガポールの PSA Internationalから中国国営、Overseas Port Holdings Ltd.に移管されることになった。この移管は特に驚くべきことではない。しかし、インド政府関係者は、インド亜大陸の西端に中国が進出してくることに懸念を表明している。グワダルのコンテナー港を改良すれば、軍艦の入港も可能になるので、インドを海上から取り囲む中国の海軍基地ネットワーク、「真珠数珠繋ぎ」戦略の一環になるのではないかと、インドの多くの専門家は懸念している。インド・太平洋地域では、一種の連鎖反応( a sort of cascade effect)が起きている。即ち、西太平洋では、中国が包囲されることを懸念し、一方南アジアでは、中国が包囲する意図を持ったパワーと見られている。また、西太平洋では、中国が海洋覇権国である米国に対抗する台頭する海軍パワーと見られており、他方南アジアでは、インドは中国を将来の海洋覇権国と見ている。しかし、現時点では、インドは心配のし過ぎである。

(2) 海軍基地についてのマハンの評価基準によれば、第 1の基準は地図上の位置であり、重要なシーレーンやチョーク・ポイントに近いかどうかである。第 2の基準は基地の抗堪性であり、自然の要塞かあるいは要塞化が可能かどうかである。第 3の基準は資源であり、周辺地区からの補給または船舶による補給が可能かどうかである。この基準に従えば、グワダル港は、インドの西にありホルムズ海峡に近接しており問題ないが、抗堪性はなく、補給も困難である。同港は、パキスタンの沿岸から突き出た狭い土地にあり、航空機やミサイルによる攻撃の絶好の標的となる。補給は、反乱に悩まされているバルチスタン経由でなければならない。従って、マハンなら、中国にグワダル港を推薦しないであろう。

(4) マハンの 3つの基準にもう 1つ加えるとすれば、同盟関係への配慮ということになろう。イスラマバードが平時に中国海軍による同港へのアクセスを認めるとしても、有事において同港の利用を認めるとは思われない。同港の潜在的な経済的価値が極めて大きく、パキスタンの政権が危機的状況になることでもない限り、「真珠数珠繋ぎ」戦略に便宜を図ることを避けると見られる。その代償が余りにも大きいからである。中国がインド洋への海軍力の進出に関心を持っていることは疑いないが、当面は、将来のオプションを確保しようとしているだけである。インドは警戒すべきではあるが、怖れ過ぎることはない。天が落ちて来ることがあるとしても、今ではない。

記事参照:
Gwadar and the “String of Pearls”

2月 19日「中国、比の仲裁裁判提訴を拒否」 (The New York Times, AP, February 20, 2013)

中国は 19日、南シナ海領有権問題を仲裁裁判所に提訴する、フィリピンの仲裁手続きを拒否した。中国外交部は、提訴は歴史的かつ法的に誤った措置であり、中国に対して受け入れがたい告発を含んでいる、と述べた。フィリピン外務省は 19日、中国の拒否は仲裁手続きを妨げることにはならない、と主張した。仲裁裁判が中国に不利な結果になっても、中国は判決を無視するとみられる。

記事参照:
China Rejects U.N. Arbitration of Maritime Dispute

2月 19日「オランダ海軍戦闘艦、海賊容疑者拘束」 (EUNAVFOR, February 19, 2013)

オランダ海軍戦闘艦は 19日、ソマリア沖エイル東方約 120カイリの海域で海賊容疑者 9人を拘束した。EU艦隊所属のオランダ海軍フリゲート、HNLMS De Ruyterは 19日早朝、パナマ籍船から海賊の襲撃を受けているとの救難信号を受信し、艦載ヘリを発進させ、 2隻の小型高速ボートを視認した。ヘリが接近すると、2隻のボートは、積み込んだ装備類を海中に投棄し、逃亡を試みた。最初のボートが HNLMS De Ruyterの臨検チームに阻止され、2隻目が EU艦隊旗艦、スペイン海軍フリゲート、SPS Mendez Nunezからの艦載ヘリに発見され、阻止された。拘束された 9人の海賊容疑者は全て、尋問と証拠調べのためにオランダ艦に収容された。2隻のボートは拿捕された。

記事参照:Dutch EU Naval Force Frigate HNLMS De Ruyter Apprehends Nine Suspected Pirates

【関連記事】「オランダ海軍戦闘艦、海賊容疑者をセイシェルに引き渡し」 (EUNAVFOR, February 28, 2013)

EU艦隊所属のオランダ海軍フリゲート、HNLMS De Ruyterは 25日、拘束した 9人の海賊容疑者を、起訴するためセイシェルに引き渡した。 EU艦隊が拘束した海賊容疑者を起訴のため域内諸国に引き渡すのは、1月 25日にモーリシャスに 12人の海賊容疑者を引き渡して以来、2013年になって 2度目である。

記事参照:
Nine Suspected Pirates Transferred To Seychelles By Dutch EU Naval Force Frigate De Ruyter