海洋安全保障情報旬報 2013年1月11日〜1月20日

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1月 11日「台湾、南シナ海の大平島の埠頭拡張を計画」 (The China Post, January 12, 2013)

11日付けの台湾の漢字紙、『聯合晩報』によれば、台湾は、南シナ海の大平島の埠頭を、大型船が接岸できるように拡張することを計画している。それによれば、外洋における島嶼防衛に責任を持つ、台湾海岸巡防署 (CGA) は、埠頭拡張に 1,900万台湾ドルを充て、 500トン以上の船舶が接岸できるようにする計画である。この計画は、南シナ海における軍事プレゼンスを強化する、CGAの計画の一環である。台湾が占拠する大平島は南シナ海最大の島だが、現在の埠頭には小型高速艇が接岸できるだけである。2013年度の CGA予算では、同島の防衛能力を 2カ年計画で強化するために総額 1億 4,300万台湾ドルが計上されており、その内、 1,900万台湾ドルで埠頭を拡張する。台湾は 2012年 9月、40ミリ自走対空砲 8門と 120ミリ迫撃砲数門を配備しており、現在、 100人以上の CGA要員が駐留している。埠頭の拡張以外にも、同島には、レーダー基地、気象観測所及び発電所などの施設があり、2008年には漁民の避難所が建設された。

記事参照:
Taiwan to expand Taiping wharf: report

1月 11日「中国、南シナ海島嶼地図作製」 (Xinhua, January 11, 2013)

中国の国家測絵地理信息局 (The National Administration of Surveying, Mapping and Geoinformation: NASMG) は 11日、南シナ海島嶼について中国大陸と同縮尺の公式地図を初めて作製した。NASMGによれば、垂直形式のこの地図には、これまでの地図にはなかった、南シナ海の 130以上の島嶼が書き込まれている。従来の水平形式の地図では、西沙諸島、中沙諸島及び南沙諸島などの群島のみが、中国大陸とは半分の縮尺で右隅に囲みで掲載されていた。新地図は、中国地図出版社 (SinoMaps press) から出版されるが、一般には 1月末から市販される。中国地図出版社は、この地図が、中国国民の国土に対する認識を高め、中国の海洋権益を護り、そして中国の政治的、外交的立場を強化する上で、極めて重要なものである、と強調している。新地図には、左隅に釣魚島(尖閣諸島)とその位置関係、及び中国と台湾に所属する諸島が拡大表示されている。

記事参照:
China publishes new maps; South China Sea islands highlighted

1月 11日「ソマリアの海賊、 3人のシリア人人質を解放」 (Qurbejoog.com, AP, January 12, and The Maritime Executive, January 14, 2013)

ソマリア政府の 11日の発表によれば、2010年 12月以来ソマリアの海賊に拘束されていた、3人のシリア人人質が身代金なしに解放された。3人は、2010年 12月 20日にセイシェル北東沖 400カイリの海域でハイジャックされた、パナマ籍船でアラブ首長国連邦の船社所有のばら積み船、MV Orna(27,915DWT)の 19人の乗組員の 1部である。該船は、 2012年 10月 19日に 40万米ドルの身代金支払い後に解放されたが、乗組員 19人中 6人は拘束されたままとなっていた。残りの乗組員 3人は依然拘束されている。2012年 8月には、身代金支払いが遅れていることを理由に乗組員 1人が海賊により射殺されている。

記事参照:
Somali pirates free 3 Syrian hostages from MV Orna after more than 2 years in captivity
Somali Pirates Release Syrian Hostages After Two Years

1月 12日「フィリピン沿岸警備隊、日本から 10隻の哨戒艇を調達へ」 (Asian Defense, January 12, 2013)

フィリピン沿岸警備隊の広報官が 12日に明らかにしたところによれば、沿岸警備隊は、約 300人の人員を増強する。彼らは、日本から調達する 10隻の哨戒艇の運用要員として優先的に割り当てられる。広報官によれば、沿岸警備隊は、機関士や航海士に加えて、技術専門家も必要としている。1月 10日にマニラで行われた、岸田外相とデルロサリオ外相との日比外相会談で、両外相は、沿岸警備隊用に 10隻の多用途哨戒艇を調達するための円借款に合意した。2014年になると見られる哨戒艇のフィリピン到着によって、西フィリピン海の哨戒能力は大幅に強化されることになる。

記事参照:
Philippine Coast Guard to receive 10 patrol boats from Japan

1月 14日「海軍・沿岸警備隊用艦艇、アジア市場好況」 (Defense News, January 14, 2013)

米欧各国の国防予算が削減される中、海軍・沿岸警備隊用艦艇を求めるアジア市場が好況である。それが証拠に、海軍艦艇シンガポールで 5月に開催される The International Maritime Defence Exhibition (2013 IMDEX Asia) の運営責任者、ジミー・ラウによれば、既に展示スペースの 8割方が予約済みという。ラウによれば、今年の IMDEX Asiaでは、この地域の海軍の需要増を見込んで、外洋哨戒艦 (OPV) や小型哨戒艇を建造する造船業者の出展が多い。

米国の海軍動向分析会社、AMI Internationalによれば、アジア太平洋地域では、沿岸域での行動に適した、3,000トンあるいはそれ以下の水上艦艇、1,500〜2,000トン級の潜水艦の需要が多い。この地域の海軍は、次の 20年間で米国を除けば、他のどの地域よりも多い潜水艦を取得することになろう。2031年までに 282隻の潜水艦の建造が見込まれるが、この地域は全体の 40%を超え、また建造資金も世界全体の 27%強を占めると見られる。インド、韓国、台湾、日本及び中国の 6カ国で、この地域の建造資金のほぼ 90%を占める。中国については、今後 5年間で 16隻の新造潜水艦が配備されると見られる。

AMI Internationalの予測では、アジアとオーストラリアで 2032年までに 116隻の潜水艦が建造され、更に 128隻の両用艦艇、12隻のコルベット、2隻の巡洋艦、235隻の高速艇、 82隻の OPV及び 255隻の哨戒艇の建造が見込まれるという。

記事参照:
Open Asian Market Vessels, UAVs Sought for Coastal Security

1月 16日「インドネシア、英からフリゲート調達」 (News Track India, January 16, 2013)

インドネシア国防相は 16日、海軍近代化の一環として、英国から 3隻のフリゲートを調達することを明らかにした。ユスジアントロ国防相は、英国防相との会談で調達の意図を伝えた。同国防相は、「購入協定は、将来インドネシアで同型艦を建造できるように、技術移転を含むものになる」と語った。艦の所要項目を検討するために、インドネシアから検討チームが英国に派遣される。

記事参照:
Indonesia to buy frigates from Britain

1月 17日「米海軍掃海艦、フィリピンのサンゴ礁で座礁」 (The Washington Post, AP, January 17, 12013)

米海軍掃海艦、USS Guardianは 17日、フィリピンのマニラ西方の元米海軍基地、スービック湾への寄港後、マニラ南東 640キロのスールー海にある世界遺産、トゥバタハ国立海洋公園内のサンゴ礁で座礁した。乗組員は無事であった。フィリピン政府の保護海域管理委員会会長は、同艦からの油漏れはないが、艦首の約 15%がサンゴ礁に突っ込んでおり、サンゴ礁がどの程度の損傷を受けているか不明であるが、損傷したサンゴ礁の損害賠償として、平米当たり約 300米ドルの罰金を科す、と語った。

記事参照:
US Navy ship runs aground on coral reef in Philippines; crew safe

【関連記事】「米海軍掃海艦、現場で解体へ」 (Defense News, January 28, 2013)

米海軍によれば、鋸の歯のようなサンゴ礁の間につかまり、フィリピンで環境と政治上の懸念となっている、掃海艦、 USS Guardianは、細かく切断され、一片一片取り外されることになる。米太平洋艦隊広報官によれば、艦を曳航して離礁させるにはあまりにも損傷がひどすぎるため、この方法がサンゴ礁への更なる損傷を最小限に抑えるための唯一の選択肢であるという。現在、2基の船載の重荷重リフト・クレーンが座礁現場に向かっており、27日に到着した。解体作業には 1カ月以上を要すると見られる。米第 7艦隊が 28日に発表したところによれば、同艦の燃料は全て抜き取られ、現在、その他の装備の撤去が行われている。79人の乗組員は、座礁数時間後の 17日遅くに離艦した。太平洋艦隊広報官は、あらゆるレベルでフィリピン沿岸警備隊、海軍及び政府当局と緊密に協力していく、と強調した。

フィリピン政府は、同艦が何故、通常の船舶航行が禁止されている保護海域の UNESCO世界遺産海域を航行していたのか、また同艦がこのサンゴ礁に向かっているとの地方当局の警告を無視したといわれるが何故か、ということを問題視している。米海軍は 18日、同艦の使っていたデジタル海図がこのサンゴ礁の正確な位置を約 8カイリ間違って記載していたことを明らかにした。米海軍とこのデジタル海図の製造者である米国家地球空間情報局 (The National Geospatial-Intelligence Agency) は、トゥバタハ岩礁を含む 3,700枚以上のデジタル海図を再調査し、トゥバタハ岩礁に加え、チリ沖で別の間違いを発見した。これらの誤りが修正されたので、米海軍の航海担当責任者は、このデジタル海図の精度を信頼することを宣言した。

USS Guardianは、複合材で建造された対機雷戦艦で、満載排水量 1,312トン、全長 224フィート、幅 39フィートの米海軍の規格では小艦艇である。同艦は、Avenger級 14隻中の 5番艦で、1989年に就役した。同艦は、その経歴のほとんどが第 7艦隊所属であり、現在は日本の佐世保に配備されている。米海軍によれば、同艦の船体は、サンゴ礁で穴を開けられ、幾つかの居住区画は浸水している。また左舷のほとんどのグラスファイバーが剥離しており、その下の木製船体が剥き出しになっている。

USS Guardianの損失は、海軍の対機雷戦艦隊にとって深刻な打撃となる。現在、14隻の対機雷戦艦の内、USS Guardianを含む 12隻が極東とペルシャ湾地域に前方展開しているか、あるいはその他の海域で任務に就いている。1980年代後半から 1990年代初めにかけて建造された Avenger級は、新たに配備される沿岸戦闘艦 (LCS) に代替されることになっていたが、LCSの配備の大幅な遅れで相当な費用が Avenger級の改良に投入されてきた。

今回の事故は、ここ数年着実に強化されてきた米比軍事関係を損なうことになった。アキノ三世大統領は今回の事件に抗議し、フィリピン政府はこの事件を独自に調査している。フィリピン当局は、約 1,000平米のサンゴ礁が破損したと主張している。第 7艦隊のスィフト司令官は 20日、この事件を謝罪する声明を出し、「海を保護する者として、また自身船乗りとして、この事件がトゥバタハ岩礁に引き起こした損害を誠に遺憾に思う。我々は、トゥバタハ岩礁自然公園の意義と世界遺産としてのその重要性を承知している。その保護は重要であり、我々は、海洋環境を保護し、保全する真摯な義務を負っている」と述べた。

記事参照:
Trapped U.S. Navy Minesweeper To Be Broken Up

1月 21日「インド海軍、最新外洋哨戒艦就役」 (The Times of India, January 22, 2013)

インド海軍の最新外洋哨戒艦、INS Saryuは 21日、就役した。同艦は、Goa Shipyard Limited (GSL)の設計、建造で、 4隻建造される同型艦の 1番艦で、アンダマン・ニコバル司令部に配属され、500以上の島嶼(その大部分が無人島)が散在する戦略的に重要な、この海域の哨戒任務に就く。INS Saryuは全長 100メートルで、ディーゼル・エンジン 2基を搭載し、最新の航法システム、通信及びレーダを装備している。兵装には、 76ミリ速射砲 1門、30ミリ近接防空システム 2基、及びチャフ散布装置が含まれる。

記事参照:
INS Saryu commissioned into Indian Navy