海洋安全保障情報旬報 2012年12月21日〜12月31日

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12月 21日「ロシア、フランス製揚陸艦の自国建造延期」 (The Voice of Russia, December 21, 2012)

ロシアの The Voice of Russiaが 21日に報じたところによれば、ロシア国防省は、フランスから購入した、Mistral級ヘリ搭載揚陸艦の自国建造を、当初の 2013年から 2016年に延期したという。ロシア海軍向けの Mistral級 1番艦は 2011年後半にフランスで建造が開始され、2番艦までフランスで建造されることになっている。ロシア国防省の担当官は、「我々は、ロシアでの Mistral級建造の可能性を評価し、この揚陸艦がロシア海軍でどのような任務を遂行すべきかを検討し、更にこの揚陸艦の運用を演練する時間を必要としており、従って自国での Mistral級の建造を延期する」と語った。当初の契約によれば、フランスが総額 10億ユーロを超える経費で最初の国内で 2隻建造し、ロシアは残りの 2隻を自国で建造することになっていた。しかし、その後、ロシア海軍における Mistral級揚陸艦の運用構想が疑問視されるようになり、また建造経費と維持運用費の負担が大きすぎると指摘されるようになった。フランスは既に、ロシア向け Mistral級揚陸艦 2隻を建造中であり、1番艦が 2014年に、2番艦が 2015年にロシアに引き渡されることになっており、2隻ともウラジオストクに配備されることになっている。

記事参照:
Russia postpones construction of its own “Mistrals”

12月 24日「インド沿岸警備隊、北アンダマン島に基地開設」 (Press Information Bureau, Government of India, December 24, 2012)

インド沿岸警備隊の北アンダマン島における初めての基地、CG Station Mayabunderが 24日、開設された。この基地は、アンダマン・ニコバル諸島における沿岸警備隊の海洋安全保障強化措置の一環である。

記事参照:
Commissioning of ICGS Mayabunder

12月 25日「中国、南シナ海島嶼のインフラ整備に巨額投資」 (Taipei Times, December 26, 2012)

中国は 25日、南シナ海の島嶼のインフラ整備と海洋法令執行能力強化のために 100億元(16億米ドル)以上の資金を投入する、と発表した。広東省の新聞、『21世紀経済報道』は、蒋定之・海南省長の発言を引用して、中国は、7月に制定された海南省地級市、三沙市が管轄する島嶼に、空港、桟橋及びその他の重要インフラを建設する、と報じた。同紙は、建設工事が既に一部で始まっていると報じているが、具体的な言及はない。三沙市は、海南島の 350キロ沖合にある、西沙諸島で最大の島、永興島に市役所を置き、西沙諸島、南沙諸島及び中沙諸島の 200を越える島嶼、砂州、リーフ及びそれらの周辺海域を管轄している。海南省当局によれば、三沙市の設置は多くの投資家の注目を集めた。中国メディアの報道によれば、三沙市の担当者は、租税回避地 (a tax haven)やカジノ・リゾートを含む、各種の商業開発計画を評価、検討しているという。更に、『21世紀経済報道』によれば、蒋定之省長は、インフラ整備計画に加えて、海洋法令執行のため船舶や補給船の建造にも資金が投資されると語っている。2013年 1月から施行される新たな法律では、海南省警備当局は、中国の領海に「不法に」侵入した外国船舶に対する乗り込み、拿捕の権限を付与されることになっている。但し、こうした権限が、海南島沿岸海域だけか、それとも三沙市が管轄する全ての海域にまで適用されるかどうかは、不明である。

記事参照:
China to invest US$1.6bn in disputed islands

12月 26日「韓国、東シナ海の大陸棚縁辺部延長申請を国連に提出」 (Yonhap News, December 27, 2012)

韓国外交通商部によれば、韓国は 26日、東シナ海における韓国の大陸棚縁辺部を 200カイリの EEZを超えて延伸する申請を、国連の大陸棚限界委員会 (The Commission on the Limits of the Continental Shelf: CLCS) に提出した。韓国の申請文書は、東シナ海における朝鮮半島の大陸棚縁辺部が沖縄トラフまで自然延長している、と主張している。韓国外交通商部の担当者によれば、今回の申請は 2009年の予備情報に比べ最大で 125キロ日本側に拡張しており、今回の申請で主張する大陸棚の面積は 2009年の予備情報で申請した面積に比べ倍以上拡大している。

記事参照:
S. Korea submits formal claim on East China Sea shelf to U.N.

12月 27日「台湾、南シナ海で資源開発へ」 (The China Post, December 28, 2012)

台湾経済部は 27日、2013年から南シナ海の大平島(台湾が占拠)周辺海域で石油、天然ガス資源を探査するために、探査船を派遣することを明らかにした。経済部の歐嘉瑞・能源局長は、この計画推進のため既に 1,700万台湾ドルが経済部礦務局に割り当てられている、と語った。礦務局がこの計画の推進に責任を持つことになっている。歐嘉瑞局長によれば、開発計画は 2013年 1月から開始される。台湾はエネルギー需要の 98%以上を輸入に頼っており、従って、大平島周辺海域で新たなエネルギー資源を開発することは台湾にとって最優先課題となっている。礦務局は、国営石油精製会社、台灣中油 (CPC Corp., Taiwan)と共同で、大平島周辺海域における石油・天然ガス資源の探査を実施する。探査期間は 1年間で、南シナ海におけるエネルギー資源開発の明確な将来図の提示が期待されている。太平島は、台湾南部の高雄から南西に約 1,600カイリの南シナ海にある周囲 0.49キロ平米の島で、南沙諸島最大の島である。現在、台湾の海岸巡防署(台湾の海上保安庁)の要員 100人余が駐留している。

記事参照:
Gov’t to explore oil, gas in South China Sea next year: MOEA

12月 31日「シンガポールの潜水艦、スウェーデンから回航」 (MINDF, Singapore, December 31, 2012)

シンガポールがスウェーデンから購入した、RSS Archer級潜水艦の 2番艦、RSS Swordsmanが 31日、チャンギ海軍基地に回航されてきた。同艦は、2005年にシンガポールが購入した、旧スウェーデン海軍の Västergötland級潜水艦 2隻の内の 1隻で、2010年 10月 20日にスウェーデンのカールスクルーナで進水し、シンガポール海軍の作戦環境に適した改装が行われていた。同艦の乗組員は、 2008年からスウェーデンで訓練を受けてきた。RSS Archerは、シンガポール海軍の Archer級潜水艦の 1番艦である。

記事参照:
Second Archer-class Submarine Returns to Singapore