海洋安全保障情報旬報 2012年11月21日〜11月30日
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11月21日「EU艦隊、海賊容疑者9人拘束後、釈放」(EU NAVFOR Public Affairs Office, Press Release, November 21, 2012)
EU艦隊所属のルーマニア海軍フリゲート、ROS Regele Ferdinandは21日早朝、多国籍海賊対処部隊、CTF-151所属のトルコ海軍フリゲート、TCG Gemlikとの緊密な連携の下、ソマリアで、海賊容疑者9人を拘束した。EU艦隊の発表によれば、21日早朝、EU艦隊所属のスウェーデン海軍哨戒機がモガディシュ東方沖420カイリ海里で不審な小型ボートを発見し、付近を哨戒していた海軍部隊に通報した。現場海域近くにいた、TCG GemlikとROS Regele Ferdinandが急行し、EU艦隊所属のルクセンブルグ軍哨戒機が上空から監視した。1時間以上追跡した後、ROS Regele Ferdinandの乗りこみチームが海賊容疑者9人を拘束し、尋問のため同艦に収容した。ボートは破壊された。以下は、その時の様子である。
11月26日「ロシアで改修の空母、2013年末にインドに引き渡し」(Defense News, November26, 2012)
インドのアントニー国防相は26日、下院で、ロシアで改修中の空母、INS Vikramaditya(旧 Admiral Gorshkov)のインドへの引き渡しの最終日程が当初予定されていた2012年末から2013年第4四半期に決まった、と述べた。インド海軍は現在、稼働空母が1961年に配備された、INS Viraatのみで、近く退役予定である。一方、国産空母の建造が計画されている。INS Vikramadityaは、当初計画では2008年8月に、2004年の契約時の価格、9億7,840万米ドルで引き渡されることになっていた。その後、23億米ドルで2012年引き渡しに変更された。アントニー国防相は、引き渡しが2013年第4四半期に伸びても、価格は23億米ドルで変わらない、と下院で明言した。インドの兵器調達先の70%がロシアであったが、インドは現在、イスラエル、英国、フランス及び米国に調達先を多様化しつつある。
記事参照:
India To Get Soviet-era Aircraft Carrier in 2013
【関連記事】「インド国産空母、建造遅延による予算超過」(NDTV, November 20, 2012)
インドのNDTVが20日に報じたところによれば、現在Cochin Shipyardで建造中の国産空母、Indigenous Aircraft Carrier(IAC)—完成後、INS Vikrantと命名される予定—の第1段階の建造遅延による予算超過に対処するために、インド国防省は近く、200億ルピーの追加予算を政府に要求するという。アントニー国防相が以前に議会で明らかにしたところによれば、IACは、当初計画より少なくとも5年遅れており、海軍に引き渡されるのは当初の2014年から早くても2018年以降になると見られる。消息筋によれば、IACの第1段階の建造は、2003年に約320億ルピーの予算で開始された。IACは4万トン強で、インドがこれまで建造した艦船では最大である。建造遅延は幾つかの要因によるが、主たる要因は、ロシアから特殊鋼を調達できなかったここと、グジャラート州の企業がドイツと共同で生産している「変速機」に欠陥が見つかったことである。
空母の建造費は、船体だけで1,400億〜1,800億ルピーと見込まれている。アントニー国防相は、建造計画全体を見直した上で、20日、国防局長に対して、計画全体の進捗状況を常時監視するとともに、権限を付与された委員会を設置するよう指示した。また、国防省は、CochinShipyardに対して、引き渡し期日の確定を求めた。
空母は、インド洋沿岸域の支配的パワーを目指すインドにとって不可欠である。インドは常時1隻の空母を展開させるためには、少なくとも2隻の空母を必要としているが、現状では、艦齢50年の英国製空母、INS Viraatが未だ現役である。同艦は、2002年に退役するはずであった。
記事参照:
Indian aircraft carrier: More costly, already delayed
11月26日「米海軍、空母搭載無人機テストへ」(gCaptain, November 28, 2012)
米海軍は、初めての空母搭載無人機の発着艦テストの準備を進めている。ノースロップ・グラマン社製の無人戦闘機システム、X-47B Unmanned Combat Air Systemが26日、メリーランド州の海軍航空ステーションから艀で空母、USS Harry S. Truman (CVN 75)に積み込まれた。同空母は、無人機のテストを行う最初の空母となる。テスト担当官は、「X-47Bの積み込みは、艦載無人機計画の大きな一歩である。これまで数年間にわたって、無人機をテストしてきたが、空母でのテストが成功すれば、無人機の将来の可能性が大きく開かれることになろう」と語った。X-47Bは、ウイング・スパンが62フィートを超え(F/A-18 Super Hornetより大きい)、携行型コントロール・ディスプレイによってリモートコントロールされる。海軍は、停泊中及び航行中の同空母甲板で、X-47Bのテストを3週間以上にわたって行うことになっている。
記事参照:
U.S. Navy Testing Carrier-Based Unmanned Aircraft
11月27日「『空母スタイル!』、中国空母初の艦載機の発着艦—米専門家論評」(The Wall Street Journal, November 27, 2012)
中国の軍事事情に詳しい米国の専門家、エリクソン(Andrew Erickson)とコリン(Gabe Collin)は、27日付けの米紙、The Wall Street Journalに、〝China Aircraft Carrier Style!″と題する記事を寄稿し、中国初の空母、「遼寧」におけるJ-15戦闘機の最初の発着艦成功を論評している。11月第4週の週末、中国中央電視台(CCTV)が、J-15戦闘機が「遼寧」に着艦し、再び発艦した様子を初めて放映した。エリクソンとコリンは、この最初の発着艦について、「空母の実用化は、異例の速さで進んでおり、多くの海外専門家達の予測を超えるものである」として、要旨以下のように述べている。
(1) 中国民衆が抱く空母のイメージは、艦載機が空母を発艦する際の甲板上のシーンである。米映画、「トップ・ガン」で有名になった印象的な「シューター(起飛)」の身振りは、中国の国家的成功を表象している。韓国で流行っているビデオ・スタイルに擬え、中国のネット・ユーザーが「空母スタイル」と名付けたこの身振りがネット上に溢れている。米海軍航空関係者は、この「起飛」の身振りだけでなく、ハードウェアや操作手順が米海軍の標準航空訓練・作戦手順(NATOPS)によく似ており、また着艦信号士官用プラットフォーム、光学着艦システム、滑り止め飛行甲板及び色分けされた作業服など、全てが驚くほど米海軍とロシア海軍の同様装備に類似していることに注目している。中国は明らかに、組織的にかつ慎重に時間をかけて適正なアプローチをとっているようである。「遼寧」とその乗組員は、J-15を着発艦させるという新しいステップの準備を十分に整えていた。全てが上手くいき、天候も理想的であった。
(2) 中国が将来、空母能力を維持していくためには、米軍が持つドクトリン、組織、訓練、資材、リーダーシップと教育、更には人事と設備といった、包括的な支援基盤を確立しなければならない。中国は、訓練、兵站補給及び維持整備のサイクルを開発しなければならない。また、指揮・管制を含む運用基盤も整備しなければならない。主としてハードウェアとソフトウェアを含むこれらの全ての分野において、中国は今後も、その多くを米国やロシアのアプローチを見習うことができる。
(3) 中国が自らのアプローチを開発しなければならない分野は、空母の運用理論である。即ち、空母運用の目的は何か、何隻必要なのか、そしてそうした運用を可能にする訓練と運用手順を確立しなければならない。ここにおいて、中国は、より困難な課題に直面する可能性がある。
空母運用の1つの明らかな狙いは、空母保有国という排他的な国際クラブに入会することで、中国の政治的威信を高めることである。「遼寧」の艦載航空団が整備され、そしてある程度の自信を持って運用できるようになり次第、「遼寧」は、中国版、〝Great White Feet″(注:1907年12月から1909年2月にかけて世界一周航海を行って威力を誇示した米大西洋艦隊の名称)として、ショウ・ザ・フラッグを目的に中国の領海を出て一連の巡航に向かうと見られる。
2番目に重要な使命は、中国が島嶼の領有権と海洋境界を巡って係争している近隣諸国に対する威力の誇示であり、必要ならそれを行使することであろう。南シナ海におけるような島嶼、岩礁あるいはリーフに対する両用強襲作戦を援護するために空母艦載機による航空支援能力を持つことで、北京は、戦争状態にエスカレートさせることなく係争する小国に圧力をかける手段を得る。しかしながら、このアプローチは、政治的のみならず、運用面でもリスクを孕んでいる。一般的に、空母は、ミサイル及びその他の攻撃手段に対して極めて脆弱であることから、狭い海域における制海作戦では非効果的なプラットフォームである。ベトナムのように、遥かに弱小な軍事力を持つ国でさえ、初歩的な「アクセス拒否」能力を開発する能力を有している。
中国の指導者達が空母を国威発揚の有用な手段と見なすとしても、中国の空母開発計画が国家の海軍戦略に占める位置づけはどの程度のものか、そして中国海軍の指導者達が何隻の空母を必要とすると認識しているのかという、疑問が残る。中国が建造する空母の最終的な隻数は不明確だが、「遼寧」の開発に関わったある中国筋は、中国が複数の空母を求めていることを示唆している。複数の空母を求める背景には、比較的明快な運用上の理由がある。例えば、1〜2隻の空母を常時運用するには、中国海軍は、少なくとも3〜4隻の空母を必要としよう。
(4) 空母における航空機の運用は、本質的に危険な仕事である。映画、「トップ・ガン」の「グース」こと、ニック・ブラッドショウは訓練中の事故で死んだ。実際、米国の空母計画は、戦時における厳しい試練の中で進められ、そこでは深刻な損耗が許容されただけでなく予想もされていた。航空機とパイロットが極端な比率で失われたが、海軍は、その過程で非常に貴重な経験を得た。冷戦時代の初期を通じて高い損耗率が続いた。多くの改善にもかかわらず、今日でも航空機、パイロットあるいは飛行甲板での要員の損失は珍しいことではない。
(5) 対照的に、中国の空母航空技術は、大幅な損耗が正当化されない、技術的に進んだ平時の環境下で開発されている。空母はその使用に当たって許容されるリスクが予測される高価値のユニットであるが、今日の航空機はより高価であり、パイロットは相対的な意味でより不足しており、損耗を生じることが遥かに許容し難いものになっている。北京は、国家的威信を発揚し、完璧なイメージで始まった空母開発を、国外でそして特に国内で維持していきたいと望んでいる。とすれば、中国の空母計画を推し進めてきた民衆の高い関心と支持は、意思決定者達に極端なリスクを回避させる圧力となるかもしれない。
(6) このことはジレンマを生む。リスクを回避する飛行態勢を採り、高度な航空機運用を回避すれば、事故を最小限に抑えられるが、事故を完全に防ぐこともできない。ある米海軍の専門家は、我々に、米海軍機が空母の着艦拘束ワイヤーをキャッチしたが、減速が十分でなかったためにワイヤーが破断した悲劇的な事故を語ってくれた。タイムリーに停止できなければ、艦載機は飛行甲板前方に突き進み、海中に落下して航空機とパイロットを失う。中国が細心の注意を払って運用しても、こうした事故は防げない。その一方で、「限界に挑む」ことより、常に「幼児のよちよち歩きのステップ」を踏んでいては、北京がなし得る進展を大きく阻むことになる。この点で、中国の政策策定者達は、重要な決断を迫られる。彼らがどのように決断するかは、1つには、「遼寧」を夜間の、全天候下で、そして荒れた海で如何に積極的に運用するかによって判断されよう。恐らく、民衆の興奮が次第に薄れていくとすれば、北京にとって、「遼寧」の運用も楽になるであろう。
記事参照:
China Aircraft Carrier Style! Assessing the First Takeoff and Landing
11月28日「ロシア最新SSN、巡航ミサイルの潜航中発射に成功」(RIA Novosti, November 28, 2012)
ロシアのThe United Shipbuilding Corporationの消息筋が28日に明らかにしたところによれば、最新のYasen級SSN、Severodvinskは28日、巡航ミサイルの潜航中発射に成功した。それによれば、同艦は、白海での海上公試で、潜航中に超音速巡航ミサイルを発射し、陸上目標の破壊に成功した。26日には、浮上状態で、巡航ミサイルの発射実験を行った。Severodvinskは、1993年に起工された、8隻のYasen級SSNの1番艦で、改良されたProject 885M Yasen-M計画の下で現在2番艦、Kazanが建造中である。Severodvinskは、水中排水量1万3,800トン、長さ119メートル、速力31ノット、最大潜航深度600メートルで、乗員は士官32人を含む90人である。主要兵装は、SS-N-26 Oniks及びSS-N-27 Kalibr巡航ミサイル、自走魚雷、機雷である。
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