海洋安全保障情報旬報 2012年11月1日〜11月10日
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11月1日「中国の島嶼戦略、現状変更を目指す」(The Diplomat, November 1, 2012)
米MITのフラベル(M. Taylor Fravel)准教授は、1日付のWeb誌、The Diplomatに、“China’s Island Strategy:‘Redefine the Status Quo’”と題する論説を寄稿し、「海洋紛争に対する2012年の中国の対応に見る.も目立った特徴は、現状を変更しようとする努力であった」として、要旨以下のように述べている。
(1) フィリピンと日本との海洋紛争で、中国は、中国の領有権主張を強化するために紛争海域に新たな現実を作為することを狙いとして、非軍事の海洋法令執行機関によるプレゼンスを活用してきた。4月以来、フィリピンと対峙してきたスカボロー礁では、6月半ばに両国の船舶が台風接近を理由に引き上げたが、その後、中国船は再び引き返し、以来周辺海域で恒常的にプレゼンスを維持している。中国はまた、スカボロー礁の開口部をロープで閉鎖し、ラグーン内に入れないようにしている。4月からの対峙以前には、中国は、スカボロー礁周辺に恒常的なプレゼンスを維持していなかった。3ヵ月後、中国は、スカボロー礁とその周辺海域を実質的な管理下に置き、この紛争を中国有利に変更した。中国の国営メディア、環球時報の社説は、中国がスカボロー礁に対する強固な管轄権を掌握した、と主張した。
(2) 同様の動きが尖閣諸島を巡って東シナ海でも見られる。2012年9月の日本政府による尖閣国有化以前は、中国の政府公船は概ね、同諸島の12カイリ領海を侵入するのを避けていた。2010年9月の中国漁船の海保巡視船に対する衝突事案に対して、中国は同島周辺海域に監視船の数を増やしたが、その多くは領海外に留まっていた。中国は現実として、尖閣諸島とその周辺海域が事実上、日本の支配下にあることを受け入れていた。しかしながら、国有化以降、中国はこのアプローチを放棄した。中国はまず、政府声明で尖閣諸島周辺海域の領海を画定する基点を公表し*、その後、新たに主張する領海におけるほとんど日常的な巡視活動を開始し、以前には事実上受け入れていた日本の支配に対して直接的に挑戦し始めた。
(3) この巡視活動の狙いは2つある。1つは、国有化が同諸島に対する中国の主権に何ら影響を与えないことを誇示することである。2つは、同諸島を巡る領土問題は存在しないとする、日本の立場に挑戦することである。スカボロー礁の場合と異なり、中国は、尖閣諸島とその周辺海域を管轄下に置いているわけではないが、日本の支配下にあることを受け入れてもいない。中国外交部報道官は10月31日、新たな現状が創出されたとして、中国の新たな巡視活動が「恒常的」なものであり、「日本側は、釣魚島では根本的な変化が既に起こっている現実を厳粛に受け入れるべきである」と主張した。
(4) いずれの事例でも、中国は、中国の立場を強固にするとともに、さらなる挑戦を抑えるために、自らの領有権主張に対する挑戦に強力な物理的プレゼンスを以て対応した。こうした対応は、自国の領有権主張を推し進めるためには、一方的行動をも辞さないとする強い意志を示唆している。いずれの事例でも、以前の原状に戻ることはあるまい。
記事参照:
China’s Island Strategy: “Redefine the Status Quo”
11月1日「中国の軍事造船所、ワールド・クラスに—米海軍も注目」(The Diplomat, November 1, 2012)
中国の軍事事情に詳しい米国の専門家、コリン(Gabe Collin)とエリクソン(Andrew Erickson)は、1日付けのWeb誌、The Diplomatに、″U.S. Navy Take Notice: China is Becoming a World-Class Military Shipbuilder″と題する論説を寄稿している。2人は、「今や中国の軍事造船所は、建造可能な艦艇のタイプや隻数で、西欧諸国、日本及び韓国の軍事造船所を凌駕している。もし北京が能力強化を続ければ、中国の軍事造船技術能力は、 2020年までに現在のロシアと同等の水準に達し、さらに2030年までには、現在の米国の造船技術水準に近づくであろう。中国は現在、シリーズ建造中の新型Type052C「旅洋Ⅱ」級とType052D「旅洋Ⅲ」級を含め、少なくとも6つのクラスの現代的なディーゼル−電気推進潜水艦と水上戦闘艦をシリーズ建造中である」と指摘している。
その上で、2人は、以下の8つの側面から、ワールド・クラスの軍事造船国家としての中国の台頭を分析している。中国で戦闘艦艇を建造している企業は、中国船舶工業集団公司(CSSC)と中国船舶重工集団公司(CSIC)である。
1.中国の建艦能力はこれまで艦艇の近代化と更新を支えてきたが、急激に拡大されてきたものではない
過去6年間、中国の戦闘艦艇の隻数は、2005年の172隻から2012年の推定221隻に徐々に増強されてきた。しかしながら、中国の艦隊は質的な面では、新しい艦艇や潜水艦に更新されてきたことで、大きく改善された。例えば、Type 052 C/D「旅洋」級シリーズの駆逐艦、Type 054A「江凱 II」級シリーズのフリゲート及びType 041「元」級ディーゼル−電気推進潜水艦が配備されるにつれ、「旅大」級駆逐艦や「明」級潜水艦などの旧式艦艇の退役が可能になっている。
2.中国の軍事造船所はロシアと米国の軍事造船所に追いつきつつある
中国の大規模な国家支援の軍事造船所は、戦闘艦艇の建造隻数でロシアと米国の軍事造船所に迫りつつある。中国の潜水艦と水上戦闘艦艇の建造能力は、1990年以来建造してきた戦闘艦艇の総隻数において、この10年間で米国に次いで2番目になったと見られる。更に重要なのは、近数年間における中国の大型戦闘艦の建造隻数から見て、中国海軍は、米海軍より多くの近代的な水上戦闘艦や潜水艦を毎年配備することになると見られることである。1990年以来の戦闘艦艇の配備隻数を見れば、中国は世界第3位で、第2位のロシアに急速に近づきつつある。1990年以降にロシアが配備した戦闘艦艇の大部分は、旧ソ連時代の建艦計画の完了を反映したものに過ぎない。
3.中国の軍事造船所はモジュラー大量生産技術を活用している
CSSCの江南造船所は、Type 052型シリーズの駆逐艦建造にモジュール建造法を用いている。モジュール建造法は、「ブロック」別に船舶を建造することで、生産性が増すとともに、設計変更や特注船舶にも自由に対応できる。モジュール建造法は、主要部分を造船所内で建造し、特定の構成部分の生産を外部委託し、それらを.終組立のために造船所に持ち込むことも可能である。
CSSCの滬東中華工場は、Type 071型 LPD(ドック型揚陸艦)の建造にモジュール技術を利用していると見られる。ここでは現在までに、Type 071型 LPDが4隻建造されており、その内の2隻が就役し、他の2隻は海上公試/艤装段階にある。ここでのType 071の船体建造は、1番艦と2番艦の間で4年近くの時間間隔があったが、2番艦と3番艦ではわずか10カ月、3番艦と4番艦では4カ月と、より早い組み立てが可能になった。
4.中国の軍事造船所は、企業系列を超えて、設計・建造情報を共有していると見られる
CSICは、これまで全ての中国製潜水艦を建造してきた。しかし、現在建造中の.新のディーゼル−電気推進潜水艦、Type 041「元」級の内、少なくとも2隻は、CSSCの江南造船所で建造中と見られる。このことは、潜水艦建造技術がCSIC以外でも成長しつつあることを示唆している。しかしながら、現在までCSSCが潜水艦の設計業務を行っているとの兆候は全くない。にもかかわらず、江南造船所でも建造しているということは、北京が、これらの企業とその設計部門でも、潜水艦の設計・建造に関する情報を共有できるようにしていることを示唆している。同様に、新型のType 056型コルベットがCSSCとCSICの両方で建造されていることは、標準化された設計と建造手法が両企業間で共有されていることを示唆している。
5.中国の軍事造船所は、空母を国産できるであろう
2012年9月25日に就役した中国初の空母、「遼寧」は、空の船体としてスタートし、起工から空母を効果的に建造する貴重な経験をCSICに与えた。中国には、空母の船体(300メートルかそれ以上)を組み立てるに充分な長さの船台を持つ全部で7カ所の造船所があり、それらはCSSCとCSICにほぼ均等に分散されている。これらの造船所は、大連(CSIC)、青島(CSIC)、葫蘆島(CSIC)、上海(CSSC)及び広州(CSSC)に所在する。葫蘆島に近いCSICの渤海造船重工業複合体(原子力潜水艦を建造している)が、その広さから(空母国産の)建造所としてトップである。ここでは、空母の構成部分をモジュール方式で組み立てることができ、しかも衛星監視の視野に入らない建造物で覆われている。同社によれば、中国で「.大の7階建ての屋内建造施設」という。この施設は、CSSCの新しい大規模な長興島造船所とCSICの大連造船所(「遼寧」の艤装が行われた)と共に、中国の3つの主要な国産空母建造の候補地である。
6.中国の軍事造船所はコスト・パフォーマンスで優位を保持するであろう
少なくとも今後5年間、中国の造船業界は、その競争相手である韓国、日本及び米国の業界に対して、労働賃金の面で大きな優位を保持すると予測される。CSSCの江南造船所は、韓国の現代重工業が建造するKDX-Ⅲ型駆逐艦より24%低いコストでType 052C型駆逐艦を引き渡すことができる。同様に、2011年7月発刊の『艦載兵器』の記事によれば、武昌造船所は、韓国の大宇造船海洋が建造するType 209型潜水艦よりおおよそ47%低いコストでType 041型のような.新のディーゼル−電気推進潜水艦を建造できるという。中国の低い労働賃金が、こうしたコスト・パフォーマンスの主たる要因である。このことは、高性能な潜水艦が水上戦闘艦艇の建造より相当多くのマン・アワーを要するので、潜水艦の建造では中国のコスト・パフォーマンスの優位性が大きいことを示している。
7.中国の隣国は、中国の戦闘艦艇建造への対応措置として、自国の海軍力の増強を余儀なくされている
韓国は、2020年までにKSS-III型3,000トン級の潜水艦9隻、そして2018年までに1,800トン級潜水艦9隻を含む、最新のディーゼル電気推進潜水艦の調達を拡大することを決めた。韓国はまた、次の10年間にイージス駆逐艦の調達を倍増することも決めている。
ベトナムは、6隻のKilo級ディーゼル潜水艦をロシアに発注し、2012年末までに1番艦が引き渡されると見られる。ハノイはまた、最新のロシア製対艦ミサイルとステルス性能を持つGepard級ミサイル哨戒艇を配備しつつある。
8.中国は今や、ディーゼル潜水艦と小型水上戦闘艦艇の重要な輸出国になる潜在能力を持っている
中国の造船業界は、彼らが建造できる戦闘艦艇の戦闘能力対コスト比率の面で益々競争力を高めつつある。例えば、2011年7月発刊の『艦載兵器』によれば、中国は、パキスタンに対して、空気独立式推進装置(AIP)を装備している可能性のある潜水艦6隻を、欧州諸国が提供できる同等の潜水艦単価のわずか3分の1程度の価格で提供するという。Type 041「元」級ディーゼル潜水艦とType 056型コルベットの出現で、中国は今や、シリーズ生産が可能で、今後数年内に単価を大幅に低減できる可能性のある2つのプラットフォームを持つに至った。ロシアの Steregushiy級コルベットの輸出バージョン、Tigerは現在、1艦当たり1億5,000万米ドル前後の価格である。中国のType 056型は増産態勢にあり、1艦当たりの単価は.終的に1億1,000〜2,000万米ドルの範囲になっても驚くに当たらない。Type 056型は、Tiger及びその他のロシアの小型戦闘艦艇の強力な輸出の競争相手になるであろう。
結論—今後の課題
中国の海軍向け造船能力は、多くの主要戦闘艦向けに幾つかのコンポーネントを輸入しているにもかかわらず、近代的なディーゼル潜水艦、ドック型揚陸艦(LPD)、フリゲート、コルベット及び高速攻撃艇をシリーズ建造することができるようになっている。Type 041型潜水艦、Type 071型 LPD、Type 052型駆逐艦及びType 056型コルベットのシリーズ生産が進行中であることは、中国の海軍造船業界がモジュール建造のような技術革新を急速に消化吸収してきたことを示している。
中国の海軍造船業界が今後、更に前進するには幾つかの課題に直面している。就中、以下の6つ課題が重要である。
(1) 北京は、海軍力近代化のために、今後とも大幅に増大しつつある資源を投入し続ける政治的意志を持っているか。
(2) 中国は、武器システム、推進装置及び軍用電子機器に必要な技術的進歩を達成できるか。
(3) 中国は、米国やロシアの戦闘艦艇艦との戦闘で生き残り可能な原子力潜水艦の建造に必要な技術をマスターできるか。
(4) 中国は、艦載機になると見られるJ-15戦闘機の攻撃能力と空中戦闘能力を.大限に発揮させることができる、カタパルト装備の空母を建造できるか。
(5) 中国指導部は、海軍の高度で実戦的な訓練を支えるとともに、インド洋地域のような重要な地域における施設への持続的なアクセスを確立するための外交的支援を提供するため、政治的及び財政上の投資を行う意志がある。
(6) 北京は、世界的な船舶市場における継続的な脆弱性の故に、軍事造船のペースを一層加速するために、造船所のスペースの有効活用を図るであろうか。
こうした中国の近代的な戦闘艦艇建造能力を見れば、米国のアジア太平洋地域における戦略的リバランスは、その信頼性を維持するためには、レトリック以上のものが必要になる。米国防省は、それへの対応として、海軍建艦計画の見直しを検討すべきである。中国海軍の戦闘艦艇の能力が向上するにつれ、中国海軍と米海軍の戦闘艦艇数の比率が益々重要になる。建艦は多年のリードタイムを要することを考えると、今こそワシントンは戦略的な備えを始める時である。
記事参照:
U.S. Navy Take Notice: China is Becoming a World-Class Military Shipbuilder
11月1日「ベトナムの潜水艦、接近阻止戦略における戦略的意義—ホームズ論評」(The Diplomat, November 1, 2012)
米海軍大学のホームズ(James R. Holmes)は1日付のWeb誌、The Diplomatに、”Vietnam’s Undersea Anti-Access Fleet”と題する論説を寄稿し、ベトナムの6隻のKilo級潜水艦がもつ接近阻止戦略における戦略的意義について、要旨以下のように述べている。
(1) 接近阻止(anti-access)戦略は各国様々だが、ベトナムは、ロシアで建造中の6隻のKilo級潜水艦によって接近阻止戦略を追求しようとしている。8月のベトナムからの報道によれば、既に1番艦が進水し、2016年までには6隻全てが引き渡されることになっている。探知されにくいKilo級潜水艦は、非常に威力のある接近阻止戦力になろう。中国海軍も同級潜水艦を運用しているが、何故か対潜水艦戦用のハードウェアと技術をないがしろにしてきた。そのため、中国海軍はベトナム海軍より圧倒的優位にあるにも関わらず、南シナ海は相当期間、中国の司令官たちにとって不透明な海域となるであろう。
(2) ベトナムの接近阻止戦力は、全ての接近阻止戦力がそうであるように、敵対する相手の戦力に対して非対称的である。しかも、ベトナムの接近阻止戦力は、ほぼ潜水艦のみの一元的阻止戦力である。接近阻止戦略を遂行するプラットフォームの選択肢が1つしかなかったとしたら、ハノイは非常に良い選択をした。潜水艦は、そのコストに見合った大きな威力を持っている上に、生き残り能力も高い。しかしながら、中国が対潜能力を高めれば、中国海軍の接近を阻止しようとするベトナムの努力を無力化できよう。他方、ベトナムの接近阻止戦力は、防衛的性格に加えて、攻勢的に運用することもできる。例えば、ベトナムのKilo級潜水艦は、探知されずに海南島三亜の中国海軍基地に接近し、敵に対してその所在を晒す、脆弱な状態にある出港時や帰港時の中国海軍潜水艦に対して、リスクを強いることもできる。
(3) 従って、戦略的には防衛的態勢である接近拒否も、紛争のエスカレーションにつながる危険を内包している。その上、ベトナムの潜水艦艦隊の導入によって、既に混雑している南シナ海は一層混雑を極めることになり、味方と敵と局外者とを識別することが困難になるであろう。中国だけでなく、ベトナムもKilo級潜水艦を運用するようになり、インドも南シナ海に自国のKilo級潜水艦を派遣する可能性さえ想定される。加えて、シンガポール、マレーシアやその他の域内各国も、異なったタイプの潜水艦を運用している。各国の接近阻止戦略が具体化されるに伴って、誤算や事故が起きる可能性が高まるばかりであろう。
記事参照:
Vietnam’s Undersea Anti-Access Fleet
11月1〜8日「東アフリカ海洋阻止演習、アデン湾・インド洋で実施」(The Maritime Executive, November 8, 2012)
8カ国の海軍部隊と海事専門家が参加する、多国間演習、Exercise Cutlass Express 2012-2 (CE12-2)が1日から8日まで、ジブチ、モーリシャスのポートルイス及びタンザニアのダルエスサラームの周辺海域において、地域海洋運用センター(regional maritime operation centers)間の調整の下に実施された。演習参加国は、ジブチ、モーリシャス、モザンビーク、オランダ、セイシェル、タンザニア、ウガンダ及び米国である。この演習は2011年秋に次いで2度目で、海賊対処、薬物対処、不法操業対処に重点に、情報共有と各国海軍部隊間の協調的対応を演練する、東アフリカ海洋阻止演習である。CE12演習は、米アフリカ軍が主宰する演習で、東アフリカ各国海軍間の情報共有と協調的運用を演練することで、共通の海洋治安問題に対処することを狙いとしたものである。
1週間の演習を通じて、参加各国は、訪問・乗り込み・捜索・拿捕(VBSS)手順を含む海洋阻止作戦技能などを演練した。演習参加には、特別機動船(RHIB)からNATO海賊対処部隊旗艦、オランダ海軍揚陸艦、HNLMS Rotterdamまで、大小の艦艇が参加した。海上演習では、ジブチ、タンザニア及びモーリシャスの地域海洋運用センターとの調整の下、不審船に対するVBSSを含む海洋阻止演習が行われた。以下は、その時の様子である。
記事参照:
Eight Navies Complete East African Exercise Cutlass Express 2012
11月5日「台湾、米からフリゲート2隻購入計画」(Channelnewsasia.com, AFP, November 5, 2012)
台湾の高華柱国防部長は5日、海軍力近代化計画の一環として、米国からフリゲート2隻を購入する計画であることを明らかにした。高国防部長は立法院での質疑で、現在米海軍で就役中のフリゲート、Oliver Hazard Perry級2隻が2015年までに台湾海軍に引き渡されると述べた。2隻の購入価格は70億台湾ドル(2億4,000万米ドル)で、1990年代初めに取得し、今や旧式化しつつある、Knox級フリゲート8隻の内、2隻を代替する。
記事参照:
Taiwan to buy two frigates from US: defence minister
11月5日「ソマリアの海賊、セイシェル漁民2人解放」(The Maritime Executive, November 5, 2012)
セイシェル大統領府は5日、ソマリアの海賊に拉致されていた、セイシェル漁民2人が解放されたことを確認した。2人は、2011年11月2日、セイシェルのマヘ島沖合65カイリの海域でソマリアの海賊にハイジャックされた漁船、FV Arideに乗っていた。該船のハイジャックは、ソマリア沿岸で拘束されている空中偵察機による写真で確認された。2009年2月に初めてセイシェルの漁船がソマリアの海賊に襲撃されて以来、これまで5隻の漁船が拘束され、11人の漁民が拉致されたが、その身代金を支払って解放されている。今回の解放に先立って、2012年8月にセイシェル政府関係者がソマリア暫定政府大統領と会談し、人質解放に向けて介入するよう圧力をかけていた。2人の解放に当たって、身代金300万米ドルが支払われたという情報もあるが、実際に支払われたかどうかについては確認されていない。
記事参照:
Seychellois Hostages Freed After Year Held By Pirates
11月5日「海洋をめぐる米中印の新たな三角外交—インド専門家論評」(The Diplomat, November 5, 2012)
ニューデリーのThe Observer Research Foundationのフェロー、ラジャ・モハン(C. Raja Mohan)は、5日付けのWeb誌、The Diplomatに、”he New Triangular Diplomacy: India, China and America at Sea”と題する論説を寄稿し、インドと中国の海軍力が強化されるに伴って、印中両国と米国の相互関係が将来のインド洋・太平洋地域の情勢を決めるとして、要旨以下のように論じている。
(1) 中印両国の海洋における利害が拡大し、両国海軍の活動海域が重複するようになるにつれ、太平洋とインド洋において中印両国の間に新たな摩擦が生じ始めている。中国の台頭と海洋大国としてのインドの出現によって、太平洋とインド洋という2つの大洋がもはや別々の領域ではなく、インド・太平洋という単一の戦略的領域として捉えられるべきであるとの認識が広まってきている。
(2) 中国の主たる関心は、西太平洋において、台湾を再統合し、島嶼領有権を防衛し、そして米海軍力の優位を抑え込むことにある。しかし、一方で、中国は、インド洋方面から大量のエネルギー資源、鉱物資源を輸入しており、ここでも海洋における存在感を強めつつあり、このことがデリーに深刻な懸念をもたらしつつある。他方、インドは、インド洋沿岸域におけるインドの優位を維持することに主たる関心があるものの、インド海軍はしばしば西太平洋にも進出している。インドは、中国との領有権紛争を抱えるベトナムとの2国間海軍交流を深め、南シナ海における航行の自由の原則を支持するとともに、日本や米国との合同海軍演習を度々実施しており、北京を憂慮させている。
(3) 中印両国が共に海軍力を増強し、インド・太平洋において存在感を強めつつあるとはいえ、いずれも、インド洋と太平洋における支配的な海洋大国として、米国に取って代われるような存在ではない。米国のアジアにおける軍事力の再均衡化は、中国の増大するパワーへの強い警戒感と、インドとのパートナーシップ強化へ熱意とを特徴としている。そしてこのことが、インド・太平洋地域におけるダイナミックな三角外交の相互作用を引き起こしている。
(4) アジアのどの国もそうであるように、インドも、中国の経済成長の恩恵に与りたいと願っているが、さりとて、北京が支配するアジアの将来を望んではいない。中国の方がはるかに速く台頭しているため、中印間の戦略的ギャップが拡大しており、デリーは、このギャップを埋めるためには、国内外で中国とのバランスをとるしかない。従って、デリーにとって、ワシントンとの同盟が当然の選択肢となろう。しかし、インドは、米国の対中政策における一貫性の欠如や、アジア回帰政策の財政的、政治的持続性に懸念を抱いている。その上、デリーは、インドを置き去りにしかねない米中関係改善の危険性を十分認識している。そのため、インドは、北京を不必要に挑発することを避けながら、米国との安全保障協力を拡大しようとしている。
(5) こうした米印中のダイナミックな三角外交において、中国は明らかに優位にある。中国は、米印戦略的パートナーシップの深化を抑えるために、デリーかワシントンのいずれかに秋波を送ることができるからである。このような現在のワシントン、北京そしてデリーにおける動向の曖昧さを考えれば、米中印三角外交の力学が今後どの方向に向かうかは多分に不確実である。ただ1つだけ確かなことは、中印の海洋大国としての出現と、これら両国の海洋政策と米国のそれとの相互作用が、今後数十年にわたってインド・太平洋の安全保障関係を左右するであろうということである。
記事参照:
The New Triangular Diplomacy: India, China and America at Sea
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