海洋安全保障情報旬報 2012年10月21日〜10月31日
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10月22日「比・豪年次合同海軍演習、開始」(PhilStar.com, October 22, 2012)
フィリピンとオーストラリアの年次合同海軍演習は22日、マニラ湾とその周辺海域で始まった。演習は、5日間にわたって実施される。今回の演習、Lumbas 2012は12回目となり、オーストラリア海軍から誘導ミサイルフリゲート、HMAS Sydneyが参加する。同艦は、オーストラリア海軍の4隻の誘導ミサイルフリゲートの1隻で、大々的な改修が施され、防空、監視、対潜戦及び対艦戦闘を任務とする。フィリピン海軍の報道官は、この演習は年次演習であり、西フィリピン海(南シナ海)の領有権問題とは関係がないとして上で、「この演習の目的は、両国海軍間の相互関係を強化するとともに、海軍戦闘と海洋安全保障維持能力を強化することにある」と語った。フィリピン海軍からは、沿岸戦闘艦、BRP Mariano AlvarezとBRP Beinvenido Salpingが参加する。
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Phl-Australia annual maritime exercise starts today
10月22日「フランスDCNS、浅海用小型潜水艦のデザイン公表」(Navy Recognition, October 22, 2012)
フランスの海軍艦艇を建造する造船局、DCNSは、パリで開催中のEuronaval 2012コンベンションで、浅海作戦用のユニークな小型潜水艦のデザインを公表した。この潜水艦、SMX-26″Caiman”は、長さ39.5メートルで、水深15メートル程度の浅海でも行動でき、収容可能な車輪で海底を移動できる。最大行動日数は30日間である。更に、SMX-26″Caiman”は、最大6人の特殊部隊ダイバーを乗せ、また対水上艦攻撃用の大型魚雷も搭載可能である。更に、周辺環境について三次元海図を作成できる装備も搭載できる。
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“DCNS unveils a new submarine concept at Euronaval 2012: The SMX-26”
10月24日「豪比首脳会談、開催」(Diplo New, October 24, 2012)
オーストラリアを訪問した、フィリピンのアキノ三世大統領は24日、オーストラリアのギラード首相と会談した。両首脳は、両国間の訪問軍人の地位に関する協定の発効、及び両国警察間の国境を越える犯罪対処と警察協力の強化に関する了解覚書の調印を歓迎した。南シナ海問題に関して、ギラード首相は、オーストラリアは領有権紛争に対してはいずれの側にも与しないが、国連海洋法条約を含む、関係国際法規に準拠して領有権問題に対処するよう関係当事国の求める、と語った。アキノ三世大統領は、全ての当事国が地域的安定と平和を望んでおり、国際法規に則った問題対処が重要である、と強調した。両首脳は、ASEANと中国による法的拘束力を持つ行動規範(COC)の早期締結への期待を表明した。
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The relationship between Australia and the Philippines holds great promise
10月24日「NATO海賊対処部隊、海賊ダウ船を銃撃」(NATO Maritime Command, News Release, Oct 24, 2012)
NATO海賊対処作戦、‘OCEAN SHIELD’の旗艦、オランダ海軍ドック型揚陸艦、HNLMS Rotterdamは24日、ソマリア沿岸沖での通常哨戒任務中、不審なダウ船から銃撃を受けた。同艦の臨検チームが沿岸近くにいたダウ船に近づいたところ、ダウ船と陸上から銃撃を受けた。同艦は、交戦規則に則って反撃したところ、ダウ船が炎上し、乗組員は海中に飛び込んだ。銃撃で1人が死亡したが、25人が同艦に救出された。救出行動中も陸上から銃撃され、同艦のRHIBの1隻が損傷を受けた。海賊は、ダウ船を母船に利用することが多くなっている。表紙の画像はその時の様子である。
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PIRATES FIRE ON NATO SHIP
10月30日「米国務省高官、商船への民間武装警備員雇用促進を期待」((Ports and Ships, October 30, 2012)
米国務省で海賊対処を担当する、ケリー国務次官補は、商船への民間武装警備員の雇用は海賊対処の転換点になるとして、「民間武装警備員の雇用に関しては、余り多くは語られないが、我々は、雇用が商船に対する襲撃事例の減少をもたらした主たる要因になっていることを学んできた」と語った。ケリー次官補によれば、コンテナ船とタンカーの80%が民間武装警備員を雇用しているが、ほとんど海賊に襲撃されていない。ケリー次官補は、民間武装警備員を雇用する船舶が100%になることを希望すると述べた。
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US official suggests all ships should be armed
10月31日「米国は尖閣問題で旗幟を鮮明にすべき—D.ブルメンソール」(Foreign Policy, Wednesday, October 31, 2012)
米シンクタンク、AEIのブルメンソール(Daniel Blumenthal)客員研究員は、31日付のForeign Policyに、”Why the Japan-China Senkaku dispute is the most explosive issue in Asia”と題する論説を寄稿し、米中関係には多くの問題があるが、現在進行中の尖閣諸島を巡る日中間の対峙には特別な注意が払われるべきとして、要旨以下のように述べている。
(1) ここ数年、ワシントンの関心の多くは、中国とベトナムそして中国とフィリピンの領有権紛争に向けられてきた。当然ながら、これらは重要である。マニラは条約上の同盟国であり、そしてベトナムは潜在的な戦略的パートナーである。いずれのケースにおいても、米国は、緊張を緩和するとともに、両国の権利と利益の防衛を支援することに関心がある。
(2) しかし、日本は別である。日本は、ワシントンにとって最も重要な同盟国である。米国のアジア戦略が成功するためには、日本との強力な同盟が不可欠である。日本の地理的位置は、アジアにおける軍事作戦の要である。その強さと活力は、日本を信頼できるパートナーとしている。利益と価値観の共有は、両国間の絆を強固なものとしている。そして日本は、非常に強力な軍事能力を持った国である。
(3) 中国による日本の領海や係争海域への間断のない侵入、そして尖閣諸島を巡る日本虐めや嫌がらせは、日本の一部の政治家の間にナショナリスティックな反発を生んだ。しかし、悪循環を作為したのは北京の方で、中国の挑発が日本のナショナリズムを誘発したのである。
(4) 米国は、尖閣諸島が日米安保条約の対象となることを確認したものの、尖閣諸島の領有権の所在については、日米間で意見が一致していない。この不一致は、1970年代にワシントンが不用意に中国との関係正常化を急いだことに遠因がある。日本は、孤立感を持っており、何故、ワシントンが尖閣諸島の領有権問題で中立の立場をとり続けるのか理解できないでいる。日本がそう思うのも当然かもしれない。何故なら、米国は長年にわたって、アジアにおける領土問題に対しては、それらが「平和的に解決される」限り、領土紛争の成り行きに関しては無関心であり、中立の立場を決め込んできたからである。こうした姿勢は、中国が弱体で、自らの主張を押し付けることができなかった時には、十分通用した。しかし、そうした時代は終わった。
(5) 米国は、東シナ海や南シナ海における領土紛争の成り行きに関して、本当に「我関せず」でいられるのか。もちろん、そんなことはない。米国は、軍事紛争を望んでもいなければ、重要なシーレーンに沿った海域を中国が支配することも望んでいない。ワシントンはまた、同盟国の側に立ちたいとも望んでいる。米国は重要海域における様々な領有権を巡る紛争がどのように解決されるべきであると望んでいるのか、判断すべき秋に来ている。そしてその判断は、友好国や同盟国を支持することの利益とともに、計算された戦略地政学的利益の両方に基づいてなされなければならない。
(6) 尖閣諸島を巡る日中間の紛争は、来るべき年において、米国にとってアジアにおける最も重要な試金石になるかもしれない。日中2国間の緊張関係は、弱まる兆しが見えない。日本は、尖閣諸島に対する領有権を引き下げることなはしないであろう。曖昧さも時には必要だが、米国はその立場を明確にする必要がある。アジアの平和を30年にわたって維持してきた既存の秩序体系に対して、中国が挑戦しつつある今、米国は、既存秩序の防衛の先頭に立たなければならない。このことは、米国が同盟国の側に立つことを意味する。そして恐らく非常に困難なことだが、このことはまた、中国と米国の友好国との間の領土紛争に対して、米国が望む結果を明確にすべき秋が来たということも意味するのである。
記事参照:
Why the Japan-China Senkaku dispute is the most explosive issue in Asia
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