海洋安全保障情報旬報 2012年9月11日〜9月20日

Contents

9月13日「ベトナム海洋法、国家主権擁護の強力な根拠」(The National Boundary Commission, Ministry of Foreign Affairs, Vietnam, September 17, 2012)

ベトナムの海洋法(The Law on Viet Nam’s Sea)は6月21日、国会で承認された。海洋法について、ベトナムの国会法務委員会立法調査研究所所長(Director of the Legislative Research Institute)、ディン・スアン・タオ博士(Dr. Dinh Xuan Thao)は、ベトナムの海洋法は東海(南シナ海)における国家主権を擁護する上で強力な根拠となるとして、要旨以下のように述べた。

(1) 東海における海域や島嶼に対する国家主権を擁護し、漁民の操業を護る上で、海洋法はどのような役割を果たすのか。
海洋法は、2国間対話や国際的な仲裁などによる平和的手段によって海洋紛争を解決する上で、ベトナムにとって重要な法的根拠となるものである。海洋紛争は、国家の大小に関係なく、衡平と相互利益の原則に、そして関係当事国によって提出される確かな根拠に基づいて解決されなければならない。ベトナムは海洋法によって、自国の海洋領域と島嶼に対する主権と主権的権利を世界に向けて公式に宣言した。海洋法は、西沙諸島と南沙諸島を、ベトナムの主権下にある2つの群島であることを、明確に規定している。海洋法によって、ベトナム国民は、海洋において自国の主権と主権的権利が及ぶ境界を認知できる。一方、外国船舶がベトナム領海を通過する時には、海洋法の遵守が求められる。もし違反すれば、当該外国船舶は、海洋法に規定に従って処罰される。

(2) 海洋法の制定によって、将来における海洋経済の開発を促進するために、国はどのような政策をとるべきか。
海洋法は、海運、海洋観光、及び石油、天然ガス、鉱物資源、その他の天然資源そして水産資源の調査、探査、生産といった、海洋経済に関する章を規定している。国は、海洋経済活動を可能にするための有利な投資環境を整備してきた。長期的には、海洋資源を.大限に活用するために、海洋経済部門に対する特別な政策を導入するとともに、適切な投資ができるようにする必要がある。海洋経済活動は国家安全保障と密接に関わるものであり、国家の防壁であるとともに、対外発展へのゲートウェーとして、自国の海洋を護っていくためには、政府の統一したガイドラインと政策の遂行が必要である。

(3) 海洋法の制定後にも、中国は、東海におけるベトナムの主権を侵害する一連の行動を取ってきた。こうした行為を止めさせ、海洋法を遵守させるために、ベトナムは如何なる措置をとるべきか。

ベトナムは2000年以降、トンキン湾の境界を画定するために、中国と交渉を続けてきた。トンキン湾の陸上国境と海洋境界に関する境界画定が完了すれば、両国間の合意に基づいて、東海におけるトンキン湾外の海洋境界の画定について交渉することになっている。両国は、政府間と専門家レベルで交渉を続けており、幾つかの原則的な合意に達している。中国の.近の行動は、一方的なものであり、ベトナムの主権と合法的な利益を侵害している。中国の東海における領有権主張は、域内の他の諸国の利益を侵すものであり、国連海洋法条約と当該各国の国内法に反するものである。我々は、法的かつ道徳的側面から中国のかかる行動に対抗するとともに、三沙市の制定を含む中国の理不尽な行動に反対するベトナムへの世界の世論の支持を糾合しなければならない。ベトナムは、東海における主権の主張に十分な歴史的証拠と法的根拠を有している。

記事参照:
Law on Viet Nam’s Sea −strong foundation to protect national sovereignty

9月16日「インド、自国籍船に武装警備要員配備へ」(The Times of India, September 16, 2012)

16日付のインド紙、The Times of Indiaが報じるところによれば、インドは、アデン湾の海賊多発海域を航行する自国籍船を護衛するために、当初計画で100人規模の武装警備要員チームを養成している。インドが武装警備要員を自国籍船に配備するのは、これが初めてである。商船護衛に責任を持つThe Central Industrial Security Force (CISF)は、特殊戦闘要員100人を、インド海軍の海兵特殊部隊と共同で訓練している。

記事参照:
Indian commandos to protect merchant vessels against piracy in Gulf of Aden

9月17日「米中両国海軍、合同海賊対処演習実施」(Defense News, AFP, September 18, 2012)

米中両国海軍部隊は17日、アデン湾で初めての合同海賊対処演習を実施した。米第5艦隊によれば、4時間にわたる演習には、中国側から誘導ミサイルフリゲート、「益陽」、米側から誘導ミサイル駆逐艦、USS Winston S. Churchillが参加し、米艦が海賊によってハイサックされた船となり、米中合同の臨検チームが同艦に乗船し、乗組員を「救出する」訓練を行った。訪中中のパネッタ米国防長官は、この演習を、米中間の軍事関係が進展している証拠と、賞賛した。パネッタ長官は、2014年のRim of the Pacific(RIMPAC)演習に中国海軍を招請した。一方、新華社は、この演習を、両国海軍艦の相互理解と信頼関係を促進するもの、と述べた。

記事参照:
Chinese, U.S. Ships Conduct Joint Anti-Piracy Drill

9月17日「米海軍、グアムに新型無人海洋哨戒機配備計画」(Defense Update, September 17, 2012)

米海軍は、ノースロップ・グラマン社製の無人海洋哨戒機、MQ-4C Triton Broad-Area Maritime Surveillance(BAMS)を、2014年度からグアムのアンダーセン基地に配備する計画を進めている。MQ-4C Tritonは、.近導入されたばかりの大型無人機で、海軍のP-3C Orion、P-8A Poseidonと共同して海洋哨戒能力を強化する。アンダーセン基地には現在、ノースロップ・グラマン社製の無人機、RQ-4 Global Hawkが3機配備されているが、本来、陸上偵察用で、長時間の海洋哨戒能力を持たない。

海軍は、アジア太平洋地域への「回帰」の一環として、アジア太平洋地域における海洋哨戒能力の強化に力を入れている。現行計画では、2013年からP-3C Orionに替えて、新型のP-8A Poseidon海上哨戒・対潜機を配備する。P-8A Poseidonは、通商破壊や電子情報収集を含む対潜戦においてMQ-4C Tritonと共同する。現行計画では、68機のMQ-4C Tritonと117機のP-8A Poseidonの取得が計画されている。海軍は、アジア太平洋地域においてMQ-4C TritonとP-8A Poseidonを組み合わせることで、P-3C Orionでは不可能であった広域で長時間の継続的な海洋哨戒を実施できることになる。

記事参照:
US Navy to Boost Pacific Airborne Maritime Capabilities with New Drones and ASW Aircraft

9月18日「ロシアで改装中のインド空母、回航予定大幅遅れ」(The Times of India, September 18, 2012)

18日付のインド紙、The Times of Indiaが報じるところによれば、ロシアで改装中のインド空母、INS Vikramadityaは、海上公試中に生じたエンジン・トラブルのため、インドへの回航予定が更に数カ月間遅れると見られる。当初予定では、2008年中にインドに回航される予定であったが、現行予定では2012年12月4日までにインド海軍に引き渡されることになっていた。しかしながら、ロシアからの報道によれば、8基のボイラーの内、3基がトラブルに見舞われ、フルパワーが出ず、回航は2013年10月以降になるという。回航の遅れは、東西両岸に各1個空母打撃群を配備するという、インド海軍の計画に影響を与える。現在、4万トン級の国産空母をコーチで建造中であり、2015年までに2個空母打撃群を配備する計画であった。インド海軍は、回航の遅れによって、国産空母の配備も少なくとも3年遅れ、就役は2018年以降になる、と予測している。

記事参照:
Delivery of Admiral Gorshkov delayed, may arrive only by 2013-end