海洋安全保障情報旬報 2012年8月1日〜8月10日

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8月1日「マ・シ海峡横断海運、安全通航の障害に」(RSIS Commentaries, Aug 1, 2012)

マレーシアの大学講師、Dr. Mohd Hazmi bin Mohd Rusliは、1日付のRSIS Commentariesに、“The Cross-Strait Traffic in the Straits of Malacca and Singapore: An Impediment to Safe Navigation?”と題する論考を寄稿し、マ・シ海峡海峡を横断する海運の増大が海峡の安全通航の障害になっているとして、要旨以下のように述べている。

(1) マ・シ海峡の両岸、スマトラ島とマレー半島の幾つかの港の間で行われている横断海運に使われる船舶は大部分が300GRT以下であり、海峡の安全航行のための各種規則の遵守を義務づけられていない。これら船舶には、バーター貿易船、漁船あるいは客船フェリーが含まれている。これら船舶の大部分は、マレーシア側では、半島南西端のポートディクソン、マラッカ、ムアルそしてククップに寄港する。これらの港は、ベラワン、タンジュンバライ、ドゥマイ及びベンカリスを含む、対岸のインドネシアのスマトラ島の各港と結ばれている。更に、フェリーとバーター貿易船は、インドネシアのバタムとタンジュンピナン、シンガポールのタナメラとパサール・パンジャン、及びマレーシアのタンジュンペングリとスツラン・ラウトを結んで、シンガポール海峡を横断航行している。

(2) マラッカ海峡の横断航行船舶は2004年の2万5,000隻から2009年には1万隻に減少したと報告されている。しかし、横断航行量は2005年の6万2,621回から2010年には7万4,137回に増大している。他方、マラッカ海峡の通航量も年9%増大している。従って、横断海運のほとんどがマ・シ海峡の分離航行帯(TSS)を跨いでいることから、海峡通航船舶の安全性が脅かされかねない状況になっている。最も危険な海域は、横断海運が多い海峡南端のウンダン・ゾーン、セゲンティン・ゾーン及びピアイ・ゾーンである。

(3) 現在のところ、横断海運に関する規則はなく、また沿岸3国ともマ・シ海峡に横断海運のための航路帯を設定していない。従って、事故回避のために、まず、マレーシアとインドネシアがマラッカ海峡に横断海運のための適切な航路帯を設ける必要がある。また、航行安全措置として、通航船舶管理システム(The Vessel Traffic Management System)によって追跡できる、船舶自動識別システム(AIS)Bタイプ送受信機を横断船舶に搭載することで、横断船舶と海峡通航船舶間の通信能力を改善する必要がある。現在まで、横断船舶と海峡通航船舶との問で甚大な事故が起こっていないが、横断海運は、マ・シ海峡の安全通航を強化する上で考慮しなければならない障害である。

記事参照:
The Cross-Strait Traffic in the Straits of Malacca and Singapore: An Impediment to Safe Navigation?

8月2日「オーストラリア、米空母の母港化提案を拒否」(Military Times, AP, Aug 2, 2012)

米国のシンクタンク、The Center for Strategic and International Studies(CSIS)が7月27日付で公表した報告書、”U.S. Force Posture Strategy in the Asia Pacific Region: An Independent Assessment”は、アジア太平洋地域における米国の軍事プレゼンス強化措置として、1個空母打撃群を、米東岸からオーストラリアのパース南方の海軍基地に再配備すべきと提案した。これについて、オーストラリアのスミス国防相は2日、米豪両国は現在、オーストラリアのインド洋側の海軍基地、HMAS Stirlingへの米海軍のアクセスを増やすことについて交渉中だが、同基地が米海軍基地になることは絶対にない、と語った。同国防相は、「我々は最初から、国内に米軍基地を置かないことを明確にしてきた。我々は、その必要性を感じていない」と断言した。オーストラリア国防大学戦略防衛研究センターのホワイト(Hugh White)所長は、オーストラリアが米軍基地を自国内に認めないのは中国の反対が主たる理由である、と指摘している。ホワイトは、「政府は、米海兵隊のダーウィンへのローテーション配備に対する中国の反応に驚かされた。米国の西太平洋における軍事態勢が増強されればされるほど、米中関係が益々敵対的抗争関係になり、その結果、オーストラリアが米中間でいずれかに与するかの選択を迫られかねないとの懸念がある。これは、我々が避けたいと願っている好ましくない事態である」と述べている。

記事参照:
Australia rejects proposal to base U.S. carrier
CSIS Report: U.S. Force Posture Strategy in the Asia Pacific Region: An Independent Assessment

8月3日「中国の南沙諸島における三沙市の制定—その戦略的意味」(PacNet, No 48, Pacific Forum, August 3, 2012)

米大西洋評議会のマニング(Robert A. Manning)上級研究員は、シンクタンク、CSIS(Pacific Forum)の3日付けPacNetに、”China’s New City: Is this Beijing’s Pivot?”と題する論説を発表している。マニングは、中国の挑発的な三沙市の新設は南シナ海における地政学的抗争に新たな段階を画し、こうした中国のエスカレートする強硬な姿勢は米国のアジア回帰あるいはアジアにおける力の再均衡に対する北京の対応の一環として大きな戦略的重要性を持つことになるかもしれないとして、要旨以下のように述べている。

(1) 南シナ海の長さ2キロの環礁(人口は約150人の漁師)に専任の市長、市議会及び軍警備区を有する新たな市を制定したことは、他の領有権主張国、フィリピンとベトナムとの外交的抗争を、新たな段階に押し上げることになった。中国はまた、三沙市を、南シナ海全域の管轄と監視のための中枢と見なしているようである。北京のこの措置は、ベトナムが6月に西沙諸島と南沙諸島の島嶼に対する領有権を主張する海洋境界法を成立させたこと、そしてASEAN首脳会議で南シナ海問題について共同声明の合意に至らなかったことに続くものである。

(2) 北京は長年、南シナ海の約80%を囲い込む9段線として知られる枠内全域が中国の主権が及ぶ領域である、と主張してきた。この主張は、200カイリの大陸棚までをEEZとする、国連海洋法条約(UNCLOS)に反している。北京は、これらの主張はUNCLOS以前からものである、と強調している。しかしながら、中国は、ベトナムとの海軍紛争が起きた1974年までは、Woody Island(永興島)を支配していなかった。中国は2010年に、これら南シナ海の係争中の島嶼を、台湾やチベットと同様に、交渉の余地のない領土主権の範疇であり、「核心利益」の一部であることを示唆した。その後、ASEANと米国による強い反応から、北京は、その考え方を後退させたように見えた。しかし、中国の今回の新たな措置は、核心利益をより抑制的に定義していることを裏付けるようなものではない。

(3) そこには、より大きな問題がある。米国防省が6月に2020年までに海軍戦力の60%を太平洋地域に配備するとともに、ワシントンがアジアにおける力の再均衡を目指すと発表して以来、中国は、これにどのように対応すべきかを熟慮してきた。米国は、領土紛争の平和的解決を主張しているが、南シナ海での領有権紛争に特定の立場をとっていない。米国の主たる国益は、妨害されない航行の自由を維持することにある。北京は、中国版モンロー主義の片鱗をワシントンに見せ付ける低コスト、低リスクの方法として、その強硬な主張を展開していると見るべきか。確かに、中国は、自らの強硬な主張が、東アジアで良く思われておらず、しかも力の劣る国が中国とのバランスをとるため米国になびく傾向にあることを十分承知している。しかし、北京は、この地域におけるより堅牢な米国の軍事態勢の中にあっても、中国が周囲に圧力をかけることができ、米国の対応が外交的警告に抑制されると計算しているようだ。北京は、南シナ海において中国とベトナムやフィリピンとの間に洋上での小競り合いが生起しても、米国は軍事介入しないことに賭けていると見られる。

記事参照:
China’s New City: Is this Beijing’s Pivot?

8月3日「米国務省、南シナ海の最近の動向に憂慮表明」(U.S. Department of State, Office of Press Relations, August 3, 2012)

米国務省副報道官は3日、南シナ海における最近の動向を憂慮し、要旨以下のような声明を発表した。

(1) 米国は、太平洋国家として、そしてレジデント・パワーとして、南シナ海における平和と安定の維持、国際法規の遵守、航行の自由及び妨害なき通商を国益としている。我々は、南シナ海における島嶼に対する領有権紛争に対してはいずれにも与せず、また南シナ海における領土的野心も持っていない。しかしながら、我々は、域内の関係国が、武力による威嚇や脅威に訴えることなく、また武力を行使することなく、領有権紛争を合同で外交的に解決すべく努めるべきである、と考える。

(2) 我々は、南シナ海における緊張の激化を懸念しており、資源開発に関する対立、威嚇的な経済活動あるいはスカボロー礁を巡る対峙など、最近の動向を注視している。特に、中国の三沙市の制定と南シナ海の紛争海域をカバーする警備区の設置は、紛争解決に向けての合同努力を阻害するもので、域内の緊張を激化させる危険がある。

(3) 米国は、全ての紛争当事国に対して、1992年の南シナ海に関するASEAN宣言と2002年の中国・ASEANの行動宣言(DOC)の理念を念頭に、緊張緩和のための措置を取ることを要請する。我々は、ASEANと中国に対して、法的拘束力を持つ行動規範(COC)の実現に向けて実質的な進展を図るよう慫慂する。

(4) 我々は、全ての紛争当事国に対して、国連海洋法条約に準拠して、領有権と海洋境界画定問題の解決を図るよう要請する。我々はまた、南シナ海における資源開発に関する新たな協調的措置を追求するよう、関係当事国に要請する。

(5) 全てのアジア太平洋地域諸国は、協調と対話を通じて域内の安定を追求する責任を有している。このため、米国は、地域機構としてのASEANの団結とリーダーシップを強く支持するとともに、ASEANやその他の諸国との協議を続けていく。

記事参照:
Press Statement on South China Sea

【関連記事】「中国、米国務省声明に反発」(Xinhua, August 4, 2012)

中国外務省報道官は4日、米国務省声明に対して、「声明は、事実関係を完全に無視し、誤ったシグナルを発信するもので、南シナ海の平和と安定を図る努力に水をかけるものである」と反発した。同報道官は、中国は南沙諸島とその周辺海域に対して議論の余地なき主権を有しており、十分な歴史的証拠も持っている、と強調した。更に同報道官は、要旨以下の諸点を指摘した。

(1) 三沙市の制定は、中国政府による現在の行政機構の必要な改編であり、完全に中国の主権に基づくものである。

(2) 一部の国はDOCを遵守しておらず、挑発的なやり方で度々DOCの理念を踏みにじっており、COCの交渉を困難にしている。中国は、COCの実現に向けた条件と環境を整えるために、関係国にDOCの厳格な遵守を要請する。

(3) 何故、米国は、一部の国による石油開発鉱区の設定や中国領の島嶼や海域を不法に囲い込む国内法の制定などに、目を瞑るのか。何故、米国は、一部の国による中国漁船に対する海軍戦闘艦艇による威嚇や中国領の島嶼に対する不当な主権的権利の要求について、討議しようとしないのか。米国のかかる態度は、領有権問題では「如何なる国にも与しない」そして南シナ海問題に対して「介入しない」とする、従来の主張に反するものである。米国は、この地域の現在の比較的安定した情勢を支持し、平和と安定そして経済発展を促進する域内各国の共通の願いを尊重し、中国の中堅と領土保全を尊重し、もってアジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献すべきである。

記事参照:
China strongly opposes U.S. State Department’s statement on South China Sea: FM spokesman

8月3日「南シナ海問題における中国の最近の強硬姿勢の背景—ストレイ」(China Brief , August 3, 2012)

シンガポールの東南アジア研究所のストレイ(Ian Storey)研究員は、米シンクタンク、The Jamestown Foundationの3日付けChina Briefに、”China Pushes on the South China Sea, ASEAN Unity Collapses”と題する論説を寄稿し、要旨以下のように論じている。

(1) 北京は20年以上にわたって、南シナ海で2つの要素からなる政策を一貫して追及してきた、即ち1つは領有権と管轄権に対する自国の主張を徐々に強めていくことであり、2つは同時に、中国の平和的意図を東南アジア諸国に周知させるべく努力することである。しかしながら、最近の中国の動向はその平和的意図を後景に退け、ASEAN内の分裂に付け込んで、自国の強硬な主張を推し進めようとしている。

(2) 中国国営メディアでの南シナ海問題に関する論評は、融和的トーンを著しく欠くものになってきた。そこでは、幾つかの新しいテーマが強調されている。1つは、南シナ海と東シナ海における中国の海洋における権利や利益だけでなく、領土や主権に対する、東南アジア諸国と日本の挑戦が益々強まっているということである。2つは、中国が自制を示している間に、フィリピンやベトナムなどは、中国が自国のものと見なしている海洋資源を「略奪」し、入札にかけるという挑発的で違法な行為を行っているということである。そして3つは、マニラとハノイは米国が南シナ海問題に「手を出す」よう慫慂し続け、一方、米国はこの問題をアジアへの軍事力の「回帰」の口実としているということである。

(3) こうした不利な形勢を逆転させるために、中国のコメンテーター達は、領有権と海洋境界を巡る紛争に対して、もっと毅然とした措置を取るよう政府に求めている。確かに、中国当局によって取られた、三沙市の制定と警備区の設定などの最近の措置は、より強硬な立場を示唆している。しかも不気味なことに、こうした措置の中には強い軍事的要素が含まれており、中国は、硬球でプレーする用意があることを他の紛争当事国に警告する意味合いがあるとみられる。

記事参照:
China Pushes on the South China Sea, ASEAN Unity Collapses

8月3日「インド、沿岸監視システム運用開始」(Defense News, August 3, 2012)

インドは3日、沿岸監視システム、National Automatic Identification System(NAIS)の運用を開始した。NAISは、スウェーデンのSaabとインドの防衛産業大手、Elcome Marine Servicesによって、2,200万米ドル余で建設された。NAISは、インドの沿岸に沿って建設されている灯台に装備された74基のセンサーに接続されており、沿岸から50キロ沖の船舶を追跡することができる。NAISはリアルタイムのデータを提供し、利用者はインターネットを通じてアクセスできる。74カ所のステーションが灯台に設置され、6カ所の地域管制センター、2カ所の沿岸管制センター及び1カ所の中央管制センターが建設された。

記事参照:
India Unveils Coastal Surveillance System

8月5日「中国海軍、外洋海軍への5つの課題—J.ホルムズ」(The Diplomat, August 5, 2012)

米海軍大学のホルムズ(James R. Holmes)准教授は、5日付けの国際時事Web誌、The Diplomatに、”Top 5 Things China’s Navy Needs…To Be a Blue-water Navy”と題する論説を寄稿した。ホルムズは、中国海軍が真の外洋海軍になるために必要な上位5つの課題を挙げ、各課題について、要旨以下のように述べている。(順位は原文通り)

5.MIW(機雷戦)能力の開発
中国海軍には、外洋海軍を指向しながらも、なお沿岸防衛海軍としての遺産が見られる。攻勢的機雷戦能力は、当時の中核的な遺産の1つである。敵によって敷設された機雷除去能力は全く別の問題である。中国海軍が他国の沿岸海域で作戦行動を始めるようになれば、当該現地国家は中国の作戦行動の自由を阻害するため、沖合に機雷を敷設するかもしれない。北京は、対機雷戦の技能とハードウェアを開発する必要がある。MIW対策は、即製することができない。これは時間を要し、骨の折れる、高度に技術的な仕事である。

4.ASW(対潜水艦戦)能力の開発
ASWは、人間の知恵と忍耐力との戦いであり、双方向の神経戦である。中国のアクセス拒否戦略は、南シナ海、東シナ海及び西太平洋における前哨線として行動するディーゼル潜水艦に大きく依存している。しかしながら中国海軍における対潜戦能力の構築は、依然優先順位が低い。彼らは、優先順位を再考するか、あるいは沿岸海軍に留まるかを考える必要がある。

3.補助艦艇の建造
中国海軍は、後方戦闘支援能力の構築に余り力を入れてこなかったが、世界の大洋を跨いで行動するためには、そうした能力が必要になる。母艦、即ち機械ショップ、溶接ショップ及びその他が装備された洋上修理設備は、中国海軍の遠隔海域における作戦行動を支援することができる。中国は、母艦を前方展開させることで、機動的で、しかも政治的問題を引き起こさない、一種の「真珠の数珠つなぎ」態勢を構築する能力を得ることになろう。中国海軍は、これらの母艦を、北京が資金援助した商業港に派遣することで、恒久的な—そして恐らく厄介なインフラを整備する代わりに、即製の海軍基地として活用できる。

2.慣海性の育成
中国の艦隊がどの海域で活動しようが、海軍将兵にとって、日常的に海に出て行くことが必要である。船員は、岸壁に留まったままでは、技能を磨くことも、団結心を涵養することもできない。彼らは、荒れ狂う海に慣熟しなければならない。中国海軍は、間断なく海に出る必要がある。さもなければ、将来の対戦相手に、重要な人的要素で劣ることになろう。

1.外洋艦隊のように考える
読者は、私が挙げる上位2つの課題が、船乗りと海上戦闘における人的要素に関するものであることに気付くであろう。人的要素は、社会や組織の核心である。中国海軍は、外洋海軍である米海軍と並び立つためには、沿岸防衛海軍としての毛沢東主義の遺産を超越しなければならない。アクセス拒否戦略はそれ自体、優れた戦略である。また、中国海軍は、対艦弾道ミサイルやその他の短距離兵器の覆域下で、南シナ海や東シナ海、更には西太平洋の大部分そしてインド洋の一部海域で、行動することができる。しかし、中国の海軍将兵は最終的には、彼らの防御的な「要塞艦隊」思考を払拭しなければならない。中国海軍は、攻勢的な海軍になるであろう。そうだとすれば、攻勢的な海軍思考に、その文化を根本的に改めなければならない。

外洋海軍には、多様な類型がある。中国海軍は、最終的にどのような海軍を目指そうとも、私がここで指摘した、技能、文化的特性そしてハードウェアが必要になろう。

記事参照:
Top 5 Things China’s Navy Needs…To Be a Blue-water Navy

8月8日「インド、数カ月以内に国産原潜公試へ」(Defence Talk, AFP, August 9, 2012)

インド海軍のバーマ司令官が8日明らかにしたところによれば、インド海軍が建造中の国産原潜、INS Arihant(6,000トン)は就役に向けての準備が進んでおり、今後数カ月以内に海上公試が始められるという。国防省筋によれば、同艦は、出力85メガワットの原子炉1基を搭載し、水中速度時速24ノット、乗員は95人である。インド海軍は2012年4月にロシアからリースした原潜を就役させており、中国、フランス、米国、英国及びロシアに次ぐ原潜運用国になっている。

記事参照:
India’s first nuclear submarine set for trials

8月8日「ソマリア海賊による7月のハイジャック事案、5年ぶりにゼロ」(The Christian Science Monitor, August 8, 2012)

民間武装警備員の雇用、各国海軍部隊による哨戒活動、更には荒れた海がソマリアの海賊によるハイジャック事案を阻止し、7月は2007年以来、5年ぶりにゼロとなった。ソマリアの海賊は6月19日以来、船舶のハイジャックに成功しておらず、6月26日以来、襲撃さえ停止している。IMBの担当者は、「例年7月と8月のモンスーン期は比較的事案の少ない時期だが、それでも常に何件かの事案があった。しかしながら、今年は、6月26日以来、紅海南部、アデン湾、アラビア湾そしてソマリア沿岸において襲撃事案が起こっていない」と指摘している。2012年上半期では、前年同期に比較して襲撃事案が163件から69件に、60%減少しているが、それでもソマリアの海賊は依然として、191人前後の人質と14隻の商船や漁船を勾留している。現在、40隻弱の各国海軍戦闘艦などが、米国大陸部とほぼ同じ広さの、250万平方カイリを哨戒している。また、ヘリによる陸上拠点への攻撃が実施されており、その主な目標は海賊襲撃グループである。更に、アデン湾とインド洋北西部を航行する多くの商船は民間武装警備員を雇用しており、彼らはまず、警告射撃で、次いで船体に対する直接射撃で海賊の襲撃から船舶を護衛する。ノルウェーのソマリア海賊問題専門家によれば、海賊が恐れているのは民間武装警備員で、現在では、タンカーや貨物船など、見返りの多い船舶のほとんどが民間武装警備員を雇用しており、彼らは漁船などを襲撃目標とせざるを得なくなっている。従って、投資に対する見返りは非常に低くなっている。しかし、海賊の脅威がなくなったわけではなく、専門家の多くは、モンスーンの季節が終われば、海賊は再び、海に戻るだろうと見ている。

記事参照:
For Somali pirates, July was a very bad month

8月8日「南シナ海の領有権主張国、UNCLOSの規定に準拠すべき—R.ベックマン」(Eurasia review, August 8, 2012)

シンガポール国立大学のベックマン(Robert Beckman)准教授は、8日付けのWeb誌、Eurasia reviewに、“The South China Sea Disputes: How Countries Can Clarify Their Maritime Claims − Analysis”と題する論説を寄稿している。ベックマンは、南シナ海における領有権主張国の論拠は曖昧であると指摘し、領有権主張国がその主張を国連海洋法条約(UNCLOS)の規定に準拠して明確にすべきであるとして、要旨以下のように述べている。

(1) UNCLOSは、以下の3つの理由から南シナ海の領有権問題において基本的に重要である。

  1. UNCLOSは、海洋の利用に関して各国の権利と義務を規定した詳細な法的枠組みである。南シナ海の全ての領有権主張国(中国、ブルネイ、マレーシア、フィリピンとベトナム)は、UNCLOS加盟国であり、その規定に拘束される。
  2. UNCLOSの規定では、沿岸国は、自国の主権が及ぶ陸上領土を基点として海洋領域を主張できる。例えば、沿岸国は、自国の主権が及ぶ沿岸から12カイリの領海を設定できる。また、沿岸国は、自国沿岸から200カイリまでのEEZを設定できる。
  3. UNCLOSの規定では、沿岸国は、沖合の島嶼を基点に海洋領域を設定できる。

(2) 南シナ海における領有権紛争の主たる要因は、領有権主張国の論拠が曖昧か、あるいはUNCLOSの規定に完全に準拠していないことにある。もし領有権主張国がUNCLOSの権利と義務に完全に合致した海洋領域を主張することになれば、南シナ海における領有権紛争の実態を明確化する上で有益であろう。領有権主張国がとるべき措置は、以下の3つである。

  1. 200カイリのEEZを主張している領有権主張国は、UNCLOSの規定に従って、地図または地理座標リストを公表することで、自国のEEZの外縁を公示すべきである。更に、これら諸国が自国沿岸の直線基線から12カイリの領海と200カイリのEEZを測定したのであれば、UNCLOSの規定に従って、地図または地理座標リストを公表することで、直線基線を公示すべきである。
  2. 領有権主張国は、自国が主権を主張する島嶼の名前とその位置を特定すべきである。このことは重要である。何故なら、島の定義に合致した沖合の島嶼に対してのみ自国の主権を主張することができ、そして島だけが領海とその他の海洋境界を設定できるからである。UNCLOSでは、島とは、「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう」と定義される。南シナ海の地理的特徴は、大部分がリーフ、環礁、岩礁あるいは低潮高地である。ある調査によれば、南沙諸島のおよそ170の島嶼や岩礁などの内、島の定義に合致するのは25%以下という。
  3. 領有権主張国が自らの主張する島嶼がEEZと大陸棚を有すると考えているのであれば、これら諸国は、そのような島嶼を特定するとともに、UNCLOSの規定に従って、公式地図や地理座標のリストを公表することで、当該島嶼からのEEZを公示しなければならない。このことは重要である。何故なら、南シナ海の島嶼の大部分が小さい、居住に適さない岩礁であるからである。UNCLOSの規定では、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩」は、EEZや大陸棚を有しない。

(3) 領有権主張国が上記のような措置をとれば、その領有権主張がUNCLOSの準拠したものになり、同時に主張が重複する海域が確認できるであろう。重複する海域が確認されれば、UNCLOSは、海洋境界の画定に最終的に合意するまで、関係当事国に対して実際的な性質を有する暫定的な取極を締結するよう規定している。このような暫定取極には、漁業や海底資源の共同開発に関する合意を含めることができる。更に、関係当事国は過渡的期間において、海洋境界画定の最終合意への到達を危うくし、あるいは妨げるような、一方的措置をとってはならない。また、暫定的な取極は、最終的な海洋境界画定に影響を及ぼすものではない、と規定されている。

(4) 領有権主張国がUNCLOSに準拠したこうした措置をとれば、共同開発の合意を含む、暫定的な取極に到達するための関係当事国間の交渉の場を創り出すことになろう。かつて.小平が言ったように、南シナ海における領土主権を巡る厄介な紛争に対処する唯一の現実的な方法は、紛争を棚上げして、海洋資源の共同開発を図ることである。

記事参照:
The South China Sea Disputes: How Countries Can Clarify Their Maritime Claims − Analysis

8月10日「インドネシア、スラウェッシ島に潜水艦基地建設へ」(The Jakarta Post, August 10, 2012)

インドネシアのスラウェッシ島中部にある、海軍パル基地のウトモ司令官は10日、海軍は間もなくパル基地のあるパル湾に潜水艦基地を建設する、と語った。同司令官は停泊中のドック型揚陸艦、KRIMakassar艦上で、「我々は、潜水艦基地建設地としてパル湾を選んだ。湾の水深は400メートルに達し、インドネシアで最も深い。海軍は間もなく、湾内の徹底的な調査を開始する」と語った。KRI Makassarは、全長122メートル、全幅22メートル、深さ17メートルで、戦闘車両35両を搭載するが、同基地に問題なく停泊できた。同司令官によれば、同艦は、インドネシアの2つ目の群島水域シーレーン(ALKI II)とアンバラット水域の哨戒活動に従事する。中部スラウェッシ知事によれば、州政府は、基地建設用に3ヘクタールの用地を提供しており、また現存のドックと兵舎も拡張される。(注:ALKI IIはマカッサル海峡、アンバラット水域はマレーシアとの係争海域)

記事参照:
TNI to build submarine base in C. Sulawesi