海洋安全保障情報旬報 2012年10月11日〜10月20日
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10月8日「フィリピン、スービック湾の重要性を再認識」(Defense News, October 8,2012)
米国がアジア太平洋におけるプレゼンスを強化する中で、フィリピンは、南シナ海に面した旧米軍港、スービック湾基地が米海軍艦艇のハブ基地として主要な役割を果たすことができる、と期待している。かつて米軍最大の在外基地であった、この基地は、マニラの北東約80キロに位置し、1992年に閉鎖されて以来、今日では自由港として、また観光港になっている。フィリピン政府の地位協定委員会のアダン委員長(退役将官)は、米国が2020年までに海軍力の過半を太平洋地域に集中しつつあることから、水上艦艇と潜水艦の係留地としてこの天然の深水湾を必要とするようになろう、と指摘している。アダン委員長は、「海軍艦艇や空母を収容できる港湾はあまりなく、その少ない1つがスービック湾である。スービック湾は、太平洋地域で米軍のプレゼンス維持に貢献できる重要な施設の1つであるが故に、重要な役割を果たすことになろう」と述べた。
フィリピンは、1999年に米国との間で地位協定を批准し、米軍との大規模な演習が再開されるようになった。以来、米軍はフィリピン軍との間で、各種の年次演習を実施している。アダン委員長は、フィリピンにおける米軍のプレゼンスが周辺海域の防衛に資することになるとして、「フィリピンのそして域内諸国の関心は航行の自由にあり、フィリピンは(それを護る上で)戦略的に重要な地理的位置にある」と強調した。
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Philippines Sees Naval Port As Vital To U.S. Presence in Philippines
10月11日「ソマリアの海賊、ギリシャ船を解放」(AP, October 12, 2012)
ソマリアの海賊は11日、リベリア籍船でギリシャの船社運航の、ばら積船、MV Free Goddess (22,051DWT)を解放した。ソマリアの海賊は12日、230万米ドルの身代金を受け取ったと語った。しかし、船主側は、身代金の支払いについてはコメントしていない。該船は2月7日、エジプトのアダビアからシンガポールに鋼線を積んで航行中、アラビア海でハイジャックされた。該船の乗組員は、21人のフィリピン人である。
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Somali pirates release Greek-owned ship for ransom
10月11日「スエズ運河コンテナターミナル、大型船の接岸可能に—ポートサイド」(gCaptain, October11, 2012)
スエズ運河の地中海側入り口にあるポートサイドは、アジア、欧州そしてアフリカ貿易における重要な中継港である。同港のスエズ運河コンテナターミナル(Suez Canal Container Terminal: SCCT)ではこのほど、2度にわたって大型船の試験的接岸が行われ、成功した。最初に接岸したのが1万5,500TEUのMV Eleonora Maersk(吃水14.9メートル)で、5日には1万3,500TEUのMV Edith Maersk(吃水14.8メートル)が接岸した。長さ397メートルの該船は、3隻のタグボートに支援されて旋回水面で180度旋回した後、接岸した。このサイズの大型コンテナ船の入港はエジプトの港では初めてである。SCCTのロウセンCEOは、「これはエジプト海運史上における重要な出来事である」と語った。SCCTの現有能力は、前方可動範囲22メートルのガントリークレーン18基、長さ2,400メートルの埠頭、吃水15メートル以下で、スエズ運河との海面高低差はゼロである。2011年の取扱量は320万TEUで、荷役効率は35個/時間である。現在、拡張計画が進行中で、完了すれば540万TEUとなる。
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Suez Canal Container Terminal Now Ready to Support World’s Largest Container Ships
10月12日「米空母2個打撃群、アンダマン海で合同訓練実施」(Military News, October12, 2012)
米空母、USS George Washington(CVN73)打撃群とUSS John C. Stennis(CVN74)打撃群は、9月からアジア太平洋地域で前方展開と各国港湾へ友好訪問を実施してきたが、12日にアンダマン海で、9月末のグアム周辺海域での訓練に続いて、合同訓練を実施した。アンダマン海に米海軍の2個空母打撃群が展開するのは初めてという。USS George Washingtonのフェントン艦長は、「合同訓練は、相互運用性の向上に加え、人道支援から戦闘任務に至るあらゆる軍事行動に対する即応態勢に不可欠だ」と強調した。
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Carrier Strike Groups Operate in Andaman Sea
10月16日「インド、インドネシア、防衛協力強化の合意」(DiploNews.com, October 16, 2012)
インドのアントニー国防相とインドネシアのユスジアントロ国防相は16日、ジャカルタのインドネシア国防省で会談し、両国間の防衛協力を強化することに合意した。両国国防相同士の会談は今回が初めてで、地域及びグローバルな安全保障問題、2国間軍事演習、装備・弾薬の共同生産、及び軍高官の相互訪問など、広範な問題について意見交換を行った。両国間の防衛対話については、2011年1月にインドネシアのユドヨノ大統領が訪印した際、合意されていた。両国海軍は現在、協調海洋哨戒活動を定期的に実施している。アントニー国防相は会談で、両国海軍間で公式の海洋監視情報共有体制の設置を提案した。
アントニー国防相は会談後の会見で、南シナ海問題について、全ての当事国は自制心を持って国際法規の諸原則に準拠した対話による問題解決を図るべきであり、インドは国際法規の諸原則に準拠した航行の自由と海洋資源へのアクセスを支持する、と強調した。
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India and Indonesia agree to significantly step up Defense Cooperation
10月18日「韓国海軍、次世代潜水艦・駆逐艦を導入」(The Korean Times, October 22, 2012)
韓国海軍戦力計画局長が18日に明らかにしたところによれば、海軍は、抑止力を向上させるために、新たな潜水艦や駆逐艦の建造を進めるとともに、既存の潜水艦や駆逐艦等の増強も計画している。それによれば、海軍は、シーレーンの安全確保と対潜戦能力を強化するために、3,000トン級の次世代潜水艦を新たに9隻建造するとともに、1,800トン級潜水艦を現有の3隻から2018年までに9隻に増強する。海軍はまた、7,600トンのイージスシステム搭載艦を2020年までに現有3隻から6隻に倍増する。これによって、通常、イージス艦2隻、駆逐艦4隻、指揮艦1隻及び潜水艦5隻で構成される、戦闘艦隊が現在の1個から3個に増強される。その他の戦力増強計画には、5,000トン級次世代駆逐艦6〜9隻、2,300トン級フリゲート20隻、3,000トン級機雷敷設艦1隻、760トン級掃海艇3隻の建造が含まれている。これらの戦力計画を実現するためには、2030年までに約8.4兆ウォン、毎年約4,960万ウォンが必要となる。国会国防委員会のメンバーは、海軍力増強のための多額の経費の必要性に同意しているという。
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S. Korea to add submarines, Aegis destroyers.
10月19日「米印、潜水艦演習開始」(Military.com, October 19, 2012)
米印両国海軍は19日から11月13日まで、ムンバイ沿岸沖で合同演習、INDIAEX 2012を実施する。この演習は、米国の潜水艦救難システムとインド海軍潜水艦との協調行動を目的としている。演習には、インド海軍の4隻の潜水艦が参加し、米海軍のUndersea Rescue Command(URC)と共に、URCのSubmarine Rescue Diving and Recompression System(SRDRS)を使用して潜水艦救難シナリオを演練する。10月30日から11月6日までは、洋上での訓練が実施される。SRDRSは、インドの潜水艦と接続し、潜水艦乗組員を救難艦に移送する訓練が実施される。これは、初めての訓練となる。URCは、水深の深い外洋で潜水艦救難作戦を行う米海軍で唯一の部隊で、約120人の現役、予備役及び民間雇員から構成される混成組織である。
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US, Indian Navies to Conduct Submarine Exercise
10月19日「ロシア海軍ミサイル着弾監視船、任務復帰」(RIA Novosti, October 20, 2012)
ロシア海軍唯一のミサイル着弾監視船、Marshal Krylovは19日、ウラジオストクでの1年間にわたる改修を終え、任務遂行のため出港した。同艦の任務は、アンテナや電子機器を搭載し、弾道ミサイルの発射から着弾までを観測することである。ロシアは19日に、ICBM、Topolの発射実験を実施し、太平洋の設定目標海域に高い精度で着弾したと発表した。旧ソ連海軍は8隻のミサイル着弾監視船を保有していたが、ソ連崩壊後、7隻をスクラップとして売却した。Marshal Krylovは、1987年建造開始で、89年に就役した。
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