海洋安全保障情報旬報 2012年12月1日〜12月10日

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12月 1日「米海軍原子力空母 1番艦、退役」 (gCaptain, December 1, 2012)

米海軍の世界で初めての原子力空母、USS Enterprise (CVN 65) は 1日、バージニア州ノーフォークで 51年間にわたる任務を終え退役した。艦名は、次世代空母、 Ford級 2番艦、 CVN-80に引き継がれる。同艦は 1962年 10月、初めての国際危機対処任務として、キューバ・ミサイル危機に出動し、キューバ封鎖作戦に従事した。

記事参照:
After 1,000,000 Nautical Miles and 51 Years at Sea, USS Enterprise (CVN 65) is Decommissioned

12月 1日「インド・ロシア海軍、合同演習実施へ」 (Business Standard, December 1, 2012)

インド、ロシア両国海軍は 1日、翌 2日、3日の両日、インドのムンバイ沖合で合同演習、`Indra’を実施すると発表した。演習には、インド海軍から駆逐艦、 INS Mysoreと INS Tabarが、ロシア海軍から対潜駆逐艦、 Marshal Shaposhnikov、艦隊給油艦、IRKUT及び救難タグ、Alatauが参加する。

記事参照:
Joint Indo-Russian naval exercise off Mumbai coast

12月 1日「ソマリアの海賊、韓国人船員を解放」 (gCaptain, Reuters, December 3, 2012)

韓国外交通商部の発表によれば、ケニアからマレーシアに向けて航行中の 2011年 4月 30日にソマリアの海賊にハイジャックされたケミカルタンカー、MT Geminiの韓国人船員 4人が 1日に解放された。該船は既に、韓国人以外の乗組員 21人と共に、2011年 11月 30日に解放されている。該船は、シンガポール拠点の Glory Ship Managementの運航である。なお、身代金が支払われたどうかについては情報がない。

記事参照:
Somali Pirates Free Four Hostages After 19 Months in Captivity

12月 3日「ベトナム国営石油、中国に抗議—石油探査船ケーブル切断事件」 (The Wall Street Journal, December 3, 2012)

ベトナムの国営石油会社、Vietnam Oil & Gas Group (PetroVietnam)は 3日、南シナ海で石油開発のための地震探査を行っていた、探査船、MV Binh Minh 02の探査ケーブルが 2隻の中国漁船によって切断されたことを明らかにした。事件は 11月 30日、MV Binh Minh 02が沖合のコンコ島南西から約 43カイリの海域で地震探査を行っている時、2隻の中国漁船がケーブルを横切り、切断した。PetroVietnamは声明で、「PetroVietnamは、中国漁船の違法行為に強く抗議するとともに、ベトナムの海洋主権を尊重することを自国民に教育するよう中国側に要請することを、ベトナム政府に求めた」と述べている。PetroVietnamによれば、MV Binh Minh 02の探査ケーブルは修理され、12月 1日から探査活動を再開した。同船のケーブルが切断されるのは、2011年 5月以来である。

記事参照:
Vietnam Accuses Chinese Ships

【関連記事 1】「中国、ベトナムに石油開発の中止を要求」 (Rigzone.com, December 6, 2012)

中国は 6日、ベトナムに対して、両国の領有権主張が重複する海域における一方的な石油・天然ガスの開発中止を要求した。中国外交部報道官は、「我々は、ベトナム側の声明を受け入れられない。我々の当初の理解によれば、事件は、ベトナムと中国の主権的管轄海域が重複する、ベトナムと海南島との間の海域で発生した。中国漁船は通常の操業を行っていたが、ベトナム海軍艦艇に理由もなく追い払われた。ベトナムは、この海域での一方的な石油・天然ガスの開発を中止するとともに、中国漁船への妨害を中止すべきである」と主張した。

記事参照:
China Warns Vietnam on Oil Exploration

【関連記事 2】「ケーブル切断事件とトンキン湾の境界画定—ベトナム人専門家論評」 (CSIS, Asia Policy Blog, December 14, 2012)

南シナ海問題のベトナム人専門家、Huy Duong と Van Phamは、米シンクタンク、戦略国際問題研究所 (CSIS) のブログで、ケーブル切断事件について、要旨以下の諸点を指摘している。

(1) 事件発生海域は、ベトナム沿岸から 54カイリ、沖合のコンコ島から約 43カイリ、そして中国海南島から 75カイリの海域(17.26’N, 108.02’E)で発生した(地図参照)。この海域は、両国が領有権を主張する西沙諸島から 210カイリも離れており、西沙諸島を巡る係争とは無関係である。両国は 2000年にトンキン湾の内側の水域についての境界画定に合意しているが、外側の水域については現在も交渉中である。国際法規あるいは海洋境界画定に関する国際的慣行に従うならば、交渉による境界画定が中国海南島からとベトナム本土沿岸及び沿岸沖島嶼からの等距離のラインになることは疑いない。もし海洋境界がベトナムに最も有利なライン(即ち、コンコ島と海南島の間の中間線)に画定された場合、事件発生海域は、このラインよりベトナム本土沿岸に 13.5カイリ近づく。反対に中国に最も有利なライン(即ち、ベトナム本土沿岸と海南島の間の中間線)に画定された場合でも、事件発生海域は、このラインよりベトナム本土沿岸に 10.5カイリ近づく。妥当な画定ラインはこれら 2つのラインの中間になるとして、その場合、事件発生海域は、このラインよりベトナム本土沿岸に 12カイリ近づく。

(2) 海南島から 75カイリそしてベトナム沿岸 54カイリ離れた海域が何故中国に属するのか、法的論拠を見出すのが困難である。明らかに、中国は、この海域を、中国に属する海域で紛争海域ではないとの立場をとっているようである。これには、3つの説明が考えられる。 1つは、始めに中間線を大きく越えた境界を主張しておく、交渉戦術である。 2つ目は、中国がこの海域の境界画定に当たって、中間線を受け入れていないということである。中国は、U字ラインによる領有権主張に当たって、「歴史的水域」と「歴史的権原」に言及してきた。中国は、この海域の境界画定に、この論法の適用を望んでいる可能性がある。3つ目は、中国は、例え領有権主張ができない海域でも、「領有権問題を棚上げにして、共同開発を行う」ことを主張して、結局のところ、この海域の境界画定を望んでいないのかもしれないということである。

(3) 両国の国力に懸隔があることから、境界画定の国際慣行である、中間線に基づく境界画定は、ベトナムの国益を護る上でベストの方法である。共同開発は、一時的な解決をもたらすかもしれないが、長期的な解決にはなり得ない。また両国の国力の懸隔の故に、もし中国が上記 3つの説明の内、1つあるいはその組み合わせによるアプローチをとるならば、ベトナムの選択肢が限られることになるかもしれない。

記事参照:
Trouble outside the Gulf of Tonkin

12月 3日「インド、権益擁護のため南シナ海に艦隊派遣の用意あり」 (The Indian Express, December 4, 2012)

インド海軍のジョシ司令官は 3日、南シナ海における、特にベトナムによって承認された石油資源開発に伴うインドの海洋利権を護るために、必要ならインド海軍を派遣する用意があることを明らかにした。ジョシ司令官は、「我々は、南シナ海への頻繁な艦隊派遣を想定しているわけではないが、例えば、ベトナムでの石油開発鉱区などの海洋利権に関わる事態が出来すれば、派遣する用意があり、準備もできている」と語った。同司令官はまた、中国の空母の就役について、洋上における航空機の運用に習熟するには時間がかかるとの見方を示すとともに、インド海軍は中国の「空母キラー」弾道ミサイルと同種の能力の開発を目指している、と語った。

記事参照:
Ready to protect Indian interests in South China Sea: Navy Chief

12月 4日「ケニア、武装警備員乗船船舶に対して事前申請を要請」 (Shiptalk, December 4, 2012)

ケニア海事局 (Kenya Maritime Authority: KMA) によれば、新たなガイドラインによって、武器あるいは武装警備員を乗船させている船舶は、旗国からの文書による事前申請がない限り、ケニア領海内に入ることが認められなくなる。 KMAは、旗国に対して、武装警備要員の選抜と雇用に当たっては高い倫理基準とプロ意識を保証する規制を求めている。新たなガイドラインは、ケニア領海に入域の都度、旗国による武装警備員乗船許可文書の提出が要求される。

記事参照:
Kenya On Armed Guards

12月 4日「米 GD、LNG燃料推進コンテナ船建造」 (gCaptain, December 4, 2012)

米サンディエゴの General Dynamics社 Nassco造船所は 4日、米拠点の船社、Totem Ocean Trailer Express, Inc. (TOTE) との間で、世界初の LNG燃料推進コンテナ船 (3,100 TEU) を 2隻建造する契約に調印した、と発表した。この契約には、更に 3隻の追加建造オプションが付いている。この船は、完成すれば、長さ 764フィートで、LNG燃料推進を主とする船としては世界最大となる。2隻は、韓国の大宇造船海洋 (DSME) によって設計され、Nassco造船所で建造される。この船は、ダブルハル構造で、原油燃料と LNG燃料のいずれでも運航可能で、また、バラスト水処理システムなど最新の海洋環境技術を採用している。最初の 1隻は 2014年第 1四半期に建造を開始し、2015年第 4四半期までに引き渡しが予定されている。もう 1隻は 2016年の第 1四半期までに引き渡しが予定されている。2隻は、フロリダ州ジャクソンビルとプエルトリコのサンファン間で運航される。

記事参照:
TOTE Orders World’s First LNG-Powered Containerships

12月 5日「米海軍軍事輸送コマンド、統合高速輸送艦 1番艦を受領」 (gCaptain, December 6, 2012)

米海軍軍事輸送コマンド (MSC) は 5日、アラバマ州オースチンの Austal造船所で、統合高速輸送艦 (JHSV) 1番艦、USNS Spearheadを受領した。JHSVは、9隻建造されることになっているが、海軍は 10隻目の建造オプションを留保している。長さ 338フィートのアルミ製双胴船体は、作戦戦域に迅速の部隊と装備を輸送できるように、浅海域でも高い運動性能を発揮できるように設計されている。同艦の乗組員は、MSCに所属する 22人の文官要員で運航される。JHSVは、兵員、車両及び補給品を合わせて約 600トンの輸送能力を有し、平均速度 35ノットで 1,200カイリの航続能力を持つ。また、同艦の飛行甲板は、 CH-53ヘリを含む各種航空機の運用を 24時間態勢で支援できる。同艦は、最大 42人の乗員と 104人の作戦要員を収容でき、また民航機スタイルの 312座席を設置している。

記事参照:
Military Sealift Command Accepts Delivery of First JHSV

12月 6日「インドの海軍力増強は太平洋における力の均衡を変えるか—インド人専門家論評」(Foreign Policy, December 6, 2012)

米シンクタンク、 The German Marshall Fund of the United Statesのフェロー、Dhruva Jaishankarは、6日付けの米誌、Foreign Policyに、“India’s Ocean: Could New Delhi’s growing naval force change the balance of power in the Pacific?”と題する論説を寄稿し、インドが、経済の急速な拡大、軍事技術の向上及びエネルギー需要の高まりによって、太平洋において恒常的な海軍力のプレゼンスを維持するようになる可能性が極めて高いとして、要旨以下のように述べている。

(1) インド海軍は、外洋で中国に対抗しようと決意しているのだろうか。インドの戦略家達はここ数年、中国の海軍力近代化がインドの政治的、経済的利益に対してどのような影響をもたらすかについて懸念を抱いてきた。インドで最も影響力のある戦略思想家の 1人、C. Raja Mohanの近著*は、ヒマラヤからインド洋そして太平洋にまで及ぶ中国とインドの抗争を展望し、この地域における米国、中国そしてインド間の海洋における影響力を巡る抗争の危険が高まっている、と見ている。また、インド海軍のジョシ司令官は 3日の記者会見で、インド海軍が南シナ海におけるベトナムとの共同石油探査活動を中国の妨害から護る用意がある、と語った。

(2) インドは、経済の急速な拡大、軍事技術の向上及びエネルギー需要の高まりによって、太平洋において恒常的な海軍力のプレゼンスを維持するようになる可能性が極めて高い。インド海軍は歴史的に、インド軍の 3軍種の中で最も小規模で資金不足であった。海軍の現役兵力は 6万人で、年間予算が 70億米ドルであり、中国海軍の兵力と予算に比べて約 4分の 1に過ぎない。その外洋展開能力は、空母 1隻、中古の両用輸送艦 1隻、14隻のドイツあるいはロシア設計のディーゼル推進潜水艦、そして約 20隻の駆逐艦とフリゲートからなる。しかし、この一見小さな艦隊は、今日のインド洋においては米海軍に次ぐ大きな海軍力プレゼンスとなっている。米中両国を除けば、この地域において日本、韓国及び恐らく台湾がインド海軍に匹敵する能力を持つが、これら諸国の海軍力はより狭い展開範囲に止まる。しかし、インド海軍は、南シナ海において中国と領土主権を争っている国々の海軍力とは比較にならないほど大きい。中国と対峙する、ベトナムとフィリピンは、わずか 3隻の稼働フリゲートを持つにすぎない。例え太平洋におけるインド海軍の小規模な艦隊の一時的なプレゼンスであっても、この地域における力の均衡に実質的に影響を及ぼす可能性がある。

(3) インドは、海軍力の展開範囲を大きく拡げることになる国産原子力潜水艦の海上公試を実施中である。更にインドは今後 2年間に、2隻目の空母と最新のフランス製潜水艦を導入する。年度国防支出に占める海軍の割合は、2000年度の 15%未満から 2012年度には 19%に増え、国防支出全体の増額ペースを上回っている。また、 2009年には米国から最新の海上哨戒機、 P-8を購入する協定を結んだ。そして、重要なことは、インドが域内の他の諸国海軍と共同できることである。インド海軍と米太平洋軍との連携は、 2000年代初頭における基本的な演習を皮切りに、複雑な戦争ゲームの演練にまで進化した。インドは 2004年には、壊滅的なインド洋津波に際しての東南アジアにおける人道支援活動を通じて、米国、日本及びオーストラリアとの連携による地域的な危機対処能力を実証した。更に、日本、オーストラリア及びシンガポールも参加する、インドと米国との年次海軍演習、 Malabarは、遠海域においてパートナー諸国の海軍と緊密に協力するインド海軍の能力を強化してきた。対照的に、中国は、東南アジア諸国や日本との島嶼をめぐる係争が中国の軍事的意図に対する疑惑を一層増長させている。

(4) インドの着実な海軍力の増強と環太平洋地域における商業的利益の深化は、インドが今や、シーレーンの安全を確保するため、この地域において安全を提供する能力を持つに至ったことを意味している。米国だけでなく、この地域に経済的利害を有する多くの国々にとって、このことは歓迎されることである。中国にとっても、このことは、ニューデリーとの関係を改善する新たな機会となるものであるが、しかしそのためには、太平洋国家として役割を果たすインドの能力を受け入れる必要があろう。

記事参照:
India’s Ocean−Could New Delhi’s growing naval force change the balance of power in the Pacific?

備考*:C. Raja Mohan, Samudra Manthan: Sino-Indian Rivalry in the Indo-Pacific, Carnegie Endowment for International Peace, 2012.

12月 9日「インド、潜水艦戦力増強へ」 (Examier.com, December 9, 2012)

インド政府はこのほど、海軍の潜水艦戦力を増強するために、100億米ドルの経費を承認した。ロシア設計の Kilo級 10隻、ドイツ製の Type 209改級 4隻、及びロシアからリースしている Akula級原潜 2隻からなる現有戦力を増強するために、この計画では、次世代ディーゼル電気推進潜水艦の建造が計画されている。現在、インドは、フランス・スペイン合同設計の Scorpene級 6隻を国内で建造中である。新たに建造される潜水艦の隻数は決定されていないが、新型潜水艦は、Scorpene級より大型で、対地攻撃ミサイル搭載型を含み、更にスウェーデンの海軍技術者が開発した、非空気依存推進 (AIP) システムを装備することになろう。AIPシステムを搭載することで、3週間以上の連続潜航が可能になり、原潜並みのステルス性を確保できる。

記事参照:
India expanding submarine force to meet China threat

【関連記事】「ロシアからのリース原潜、重要部品に問題—インド海軍」 (The Times of India, December 24, 2012)

24日付のインド紙、The Times of Indiaがインド海軍筋の話として報じたところによれば、ロシアからリースしたインド海軍唯一の原潜、INS Chakraが運用に支障を来しかねない重要部品に問題が生じているという。インド海軍は、取り替える必要のあるこの問題部品の提供をロシアに要請した。しかし、この海軍筋は、問題部品については、具体的に言及していない。INS Chakraは、旧ロシア海軍の Akula-II級攻撃型原潜、Nerpa で、2012年 4月に、改名してインド海軍に配属され、ヴィシャカパトナムの東部艦隊に配備されている。旧 Nerpaは、2008年に日本海で海上公試中に事故を起こし、約 20人の乗組員が死亡した。この原潜は、1993年から 94年にかけて進水したが、その後、資金不足のため建造作業が中断していた。しかし、インドとの 10年間のリース契約が 2004年に合意され、建造が再開された。インドは、 INS Chakraと建造中の国産原潜、INS Arihantとの 2隻態勢での運用を計画している。INS Chakraは、最大潜航速度 30ノット、潜航深度 600メートル、乗組員 73人で、100日間の連続航行が可能である。兵装は 533ミリ魚雷 4本、650ミリ魚雷 4本だが、核弾頭は搭載できない。

記事参照:
Nuclear submarine INS Chakra facing problems with critical components: Navy

12月 9日「インド、その戦略思考における海軍の位置づけを高めることが必要」 (The Hindu, December 9, 2012)

インドのフリー・ジャーナリスト、Ninad D. Shethは、9日付けのインド紙、The Hinduで、圧倒的に内陸的なインドの戦略的思考における海軍の位置づけを高める必要があるとして、要旨以下のように述べている。

(1) インド国防省によれば、海軍は過去 3年間で、ロシアからリースされた Akula II級原子力潜水艦1隻を含む、約 15隻の艦艇を就役させてきた。また、ロシアで改修中の空母、 INS Vikramadityaが間もなく引き渡される。他の艦艇としては、 3隻の Shivalik級ステルス・フリゲート、艦隊給油艦及び高速攻撃艇が含まれる。計画では、今後 5年間、毎年 5隻の艦艇が引き渡されることになっている。更に、海軍は、ハープーン・ミサイルを搭載した、米国製の P-8海上哨戒機の購入によって、海上監視能力を強化する。空母戦闘群と原子力潜水艦は今後、インド洋海域でのインドの海上における優位を復活させ得る。インドが英国から継承した帝国海軍は、アデンからシンガポールまでの海域を制していた。この海域の制海は、3つの重要なチョーク・ポイント、ペルシャ湾のバンダルアッパース、スリランカの南の海峡、そしてシンガポール沿岸のマラッカ海峡を含み、インド海軍の手に余る能力を必要とするものであった。

(2) インド海軍は、艦艇の増強に加えて、推定 30億米ドルの経費で、2カ所の重要基地施設を建設してきた。西岸地域では、ラクシャドウィープ諸島の INS Dweeprakshakは、海上監視の拠点となり、大型艦艇の基地となる。インドは、この基地によって、より強力な制海機能を確保することになろう。東岸地域では、新たな海軍航空基地、 Baazが開設された。この基地は、アンダマン・ニコバル諸島のキャンベル湾にある統合コマンドの管轄下に置かれる。この基地はインドよりマラッカ海峡により近いことに意味がある。これら 2カ所の拠点は、 P-8海上哨戒機の基地となる、インド最長の滑走路を持つタミルナドゥ州の INS Rajaliによって補完される。海軍は、全艦艇がデジタル化されており、指揮・統制機構にリンクされつつある。原子力潜水艦は、長期間、無給油で水中に留まる能力をもつ優れた兵器である。原潜は、事実上探知することが不可能であり、しかも作戦行動に対応して幾つかの核兵器を搭載することができる。原潜はまた、遠方海域でも行動することができる。海軍力は、国境の制約を超えて投影できる能力を持つ、特異な戦力である。陸軍も空軍も、こうした利点を持たない。空母戦闘群と連携した潜水艦は、インドに決定的な優位をもたらす。しかしながら、インドの戦略思考が内陸的であるのが難点である。インドの戦略立案者達は、ラジャスタンとヒマラヤの茶色と白の内陸部から無限の大洋へ、その戦略思考の完全な方向転換が必要である。海軍が真に戦略的な戦力になるためには、インドの戦略思考における 2つの重要な変化が必要である。第 1に、インドは、100万人を超える陸軍を優先することから脱却し、その戦略思考に占める海軍の位置づけを高めるとともに、資金配分を増額しなければならない。

(3) 第 2に、国防省と海軍は、その統制下にある多くの公共防衛産業部門を集約する必要がある。インド製の艦艇の価格は欧米や日本の同クラスの艦艇の価格の 4分の 1に過ぎないが、建造時間の超過は非常に高いものになる。建造計画は、信じ難いほど遅れている。このため、例えば、常時展開している潜水艦はわずか 6隻に制約されている。インド海軍は、断固とした監督と、艦艇建造に民営企業の参画を認める、大胆な決断を必要としている。民営企業の参画は既に始まっており、近く海上公試が予定されている国産の原子力潜水艦、INS Arihantの船体は、民間企業である L&Tにより建造された。もしインドが造船部門への外国資本の投資を認め、潜在的な防衛能力の欠落を補完しようとするなら、こうした民間企業の参画が促進されよう。外国資本との提携は、今後の課題である。インドの国営造船所は、技術と資金が不足しているため注文を満たすことができず、成長のジレンマに陥っている。

(4) 海洋は、1国が占有する活動領域としては広大すぎる。インドは、民主主義諸国—その全ての国は強力な海軍を保有している—と海洋にける利益を共有しており、米国、日本、インドネシア、シンガポール及びオーストラリアの民主主義諸国と協働することは、インドにとって有利である。そのためには、外交的な革新と戦略思考の変革を必要とする。それがなければ、海に浮かぶアセットは、多額の資金を投入したものであって、ほとんど価値がないに等しい。

記事参照:
Indian Navy needs a wider berth

【関連記事】「インド海軍、東岸の海軍専用基地を 2013年に開設へ」 (The Telegraph, December 5, 2012)

5日付け英紙、The Telegraphは、インドが東岸に建設している海軍専用基地について、要旨以下のように述べている。

(1) インド海軍が東岸に秘密裏に建設している戦略基地は、2013年に部分的に開設される。この基地は、東南アジア、南シナ海、更には太平洋に展開するインド海軍戦闘艦艇の母港となる。この基地は、インド海軍東部艦隊司令部が所在する、ヴィシャカパトナムの南方約 50キロに位置する寒村、ラクコンダ (Ramkonda)に建設されており、建設が最終的に完了すればインド海軍最大の基地となる。この基地建設計画、 “Project Varsha” は広さが 20平方キロで、西岸のカルワル(カルナータカ州)での基地建設計画、 “Project Seabird”と同規模である。 “Project Seabird” が空母を受け入れるとともに、ムンバイ港の混雑回避を狙いとしているのと同様に、“Project Varsha”もヴィザグ (Vizag) 港の混雑緩和を狙いとして、2005年に建設が開始された。ヴィザグ港には海軍工廠があり、また潜水艦基地がある。また、ラクコンダは、大規模施設である、 Bhabha Atomic Research Centre (BARC) に近い場所にある。

(2) Project Varshaの建設が始まった 2005年当時、東部艦隊の主要戦闘艦は 15隻だったが、現在では、ロシアからのリース原潜、 INS Chakraを含め、46隻に増大している。インドの国産原潜、INS Arihantはヴィザグの造修所で建造中であり、2013年始めには海上公試が開始される。さらに、3隻の同級国産原潜がヴィザグの海軍工廠で建造されることになっている。Project Varshaは、工廠の中に水上戦闘艦艇と潜水艦の係留施設を抱え込むように設計されており、十分な水深があり、艦艇の係留が容易なことから、この場所が選ばれた。 Project Varshaは、ベンガル湾で最大で、唯一の海軍専用基地となる。

記事参照:
Secret warship base comes up on east coast

12月 10日「プントランド海洋警察部隊、 MV Iceberg 1の乗組員救出作戦に失敗」 (Garowe Online, December 11, 2012)

ソマリアのプントランド海洋警察部隊 (PMPF) は 10日夜、このほぼ 3年間にわたって海賊に拘留されている、MV Iceberg 1で人質となっている乗組員の救出作戦を行った。作戦は失敗したが、PMPFは 11日、該船に武器、弾薬を運び込もうとしている海賊を付近で発見し、海賊 3人を殺害し、3人を逮捕した。PMPFは、プントランド沿岸で拘束されている MV Iceberg 1を包囲してきた。該船は、ドバイの船社所有のパナマ籍船で、 2010年 3月 29日、アデン湾のイエメン沖約 10カイリの海域でハイジャックされた。ドバイの船社は、ハイジャック後、該船を放棄した。ハイジャック時、該船の乗組員は 24人だったが、その後、2010年 10月には 1人が海に飛び込んで自殺し、もう 1人(船長とみられる)は 2011年に海賊に殺害されたといわれる。プントランド治安当局によれば、 PMPFは、救出策戦を実施するまでに、長い間海賊と該船の解放について交渉していた。PMPFは、引き続き該船を包囲しており、海賊に降伏するよう呼びかけている。

記事参照:Somalia: Puntland forces kill 3 pirates in hostage rescue attempt

【関連記事】「ソマリアの海賊、 MV Iceberg 1の乗組員解放」 (gCaptain, December 23, 2012)

ソマリアのプントランド自治政府が 23日付の声明で明らかにしたところによれば、ソマリアの海賊は、MV Iceberg 1の乗組員 22人を解放した。自治政府の声明は、「人質となっていた乗組員は、2年 9カ月間に及ぶ勾留で、拷問を受けた後があり、病んでいる。彼らは現在、医療ケアを受けている」と述べている。解放に当たって、身代金が支払われたかどうかは不明である。