海洋安全保障情報旬報 2012年12月11日〜12月20日

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12月 11日「中国、最大の漁業監視船就役」 (CCTV.com, December 11, 2012)

中国で最大の漁業監視船、「漁政 206」の就役式が 11日、上海で行われた。同船は、排水量 5,800トンの最新鋭監視船で、東シナ海において哨戒活動を行う。

記事参照:
China’s biggest fishery vessel “China Yuzheng 206” makes maiden voyage

12月 11日「米海兵隊の現状と将来—アモス司令官」 (The Diplomat, December 11, 2012)

米海兵隊のジェームス F.アモス司令官は、11日付けの Web誌、The Diplomatで、キャンベラ大学国家安全保障研究所の DeSilva-Ranasinghe客員研究員のインタービューに答え、海兵隊の変革と近代化、イラク・アフガニスタンへの展開の影響、アジア太平洋における戦略的再編、更には将来の戦場様相などについて、要旨以下のように語った。

Q: 米海兵隊は、9.11以降、どのように再編され、近代化されてきたか?

A: 海兵隊は、米国の遠征危機対処戦力として、常に国家の求めに応えてきた。 2つとして同じ戦いはなく、従って我々は歴史的、精神的な柔軟性、適応性及び運用の迅速性を海兵隊の軍種文化として維持してきた。そして、我々は、前方プレゼンス、交戦及び迅速な危機対処に最適な能力を持つ戦力に再編する過程にある。我々は、あらゆる軍事作戦における柔軟性と有用性を高めるために内部組織を改編するとともに、米特殊作戦コマンドとサイバー・コマンドに対する支援を強化している。近代化については、我々はこの 10年間、 MV-22オスプレーと耐地雷待ち伏せ防護 (The Mine-Resistant Ambush Protected: MRAP) 車両を実戦配備するとともに、最初の F-35Bステルス戦闘飛行隊を編成した。我々は、 C-130輸送機、UH/AH-1ヘリを改良し、CH-53ヘリを K改良型に更新しつつある。また、 America級ヘリ搭載揚陸強襲艦の次期改良型を開発中である。我々はまた、過去の戦訓を取り入れ、教育・訓練プログラムに反映してきた。

Q: イラクとアフガニスタンへの長期間に及ぶ兵力展開によって、海兵隊は、本質的に地上部隊になってしまったとの指摘があるが、どう思うか。

A: 米国の遠征危機対処部隊として、我々は国家が要請する任務は何でもこなす、これが私の答えである。従って、イラクやアフガニスタンにおける我々の長期間にわたる地上戦闘への関与について、如何なる弁明もするつもりはなく、実際、それらの戦場で行ってきた我々の任務を大変誇りに思っている。米国の陸、海及び空軍はそれぞれの戦闘領域を持っているが、海兵隊にも危機対処という領分がある。我々は、国家の最高指導部に対して、適正な戦略的意思決定を行うための時間と空間を提供するために、迅速に対応する。即ちそれが米国のために海兵隊がなすべきことである

Q: 海兵隊は、世界的な戦略環境の変化にどのように適応しているか。海兵隊は、アジア太平洋地域においてどのように再偏されるのか、そして、このことがこの地域にどのような影響を及ぶすのか。

A: 我々は、この太平洋地域で多くの苦労の末に得た勝利の長い歴史を持っており、この地域は我々の組織の DNAの一部となっている。実際、太平洋地域において新たに見られつつある戦略的所用に対応するためには、水陸両用戦部隊以外に適切な戦力がない。米国の最も重要な相互防衛条約の内、5つの条約が太平洋地域の国々との間で結ばれている。海兵隊は、新たな国家戦略を支援するために、太平洋地域での配備を再編している。現在、海兵隊は、日本に約 1万 6,000人を前方展開させ、そしてハワイに 8,000人と南カリフォルニアに 6万 6,000人を配備している。海兵隊は 2012年から、オーストラリアのダーウィンに約 250人をローテーション配備し始め、今後数年間で、ローテーション配備戦力は 2,500人にまで増強される。我々はまた、最終的には相当な戦力の海兵隊をグアムに配置する計画だが、どれだけ多くの戦力になるか検討しているところである。国防長官が私に語ったところでは、太平洋地域への国家戦略の重点移行を支えるため、最終的には 2万 2,000人の海兵隊を日付変更線の西側に前方展開させたいということである。

Q: 海兵隊は、将来の戦場様相と現代戦における進化の動向をどのように見ているか。

A: 次の戦争がどのようなものになるか、あるいはどこで起こるかについて、我々は歴史的に甚だお粗末な予測をしてきたし、私は、現代戦の動向を追い続けてきた者でもない。私が 40年間の経験から学んだことは、我々は予期しない事態に備える必要があるということに尽きる。結局、混沌とした状況の真只中に飛び込んで行き、事態を把握して、正しい決断ができる若い将校と下士官が必要であり、従って、我々は、海兵隊の訓練と教育を改善しつつある。我々はまた、特に地上戦闘戦術車両、航空機、ISR(情報、監視、偵察)プラットフォーム及び水陸両用戦艦艇の近代化に関して、今日適正な意思決定を行うことによって、将来の戦場における海兵隊を支援できるよう取り組んでいる。海兵隊はまた、サイバー・コマンド及び特殊作戦コマンドとの関係を深めており、これは海兵隊にとって好ましいことだと思っている。

Q: The Joint Operational Accessあるいは Air-Sea Battleコンセプトと海兵隊の関係如何。また、特にアジア太平洋地域において、海兵隊の将来にどのような影響を与えるか。

A: 海兵隊は、The Joint Operational Accessと Air-Sea Battleコンセプトにおいて重要な役割を担っており、我々は、それらのコンセプトとそれらを巡る議論に非常に関心がある。何よりも、海兵隊は米国の遠征危機対処戦力である。海兵隊は、他の姉妹軍種の中でもユニークであり、多用性があり、機敏でそして強襲能力を持つ、米国の先兵である。海兵隊は、短時間の事前準備で世界中の不測の事態に対処できる高い即応態勢を維持している。海兵隊は、国際的な紛争を抑止あるいは鎮圧するための、海軍作戦、地上戦闘及び航空攻撃を遂行できるバランスのとれた即応戦力である。海兵隊の究極的な任務は、海岸へのアクセスを確保することである。もし我々の選択した場所と時期に我々のパワーを投影する能力を軽視するなら、大きなリスクを負うことになろう。米国は、米国市民を保護し、危険な状況に介入するため、海兵隊に上陸を強いることもあるだろう。米国が歓迎されていない所で行動できる海兵隊の能力は、米軍の抑止力としての価値を支えるとともに、戦略的な意思決定者に選択肢を提供している。現代の水陸両用作戦は、防御された海岸線に沿って拠点を確保し、それを拡大する戦略的機動作戦を可能にする。米国が太平洋地域にその戦略的重点を移行したことから、我々の未来は非常に明るい。海兵隊にとって、太平洋地域は歴史的な裏庭である。第 2次世界大戦以降、相当数の海兵隊が前方展開を維持してきている。さらに重要なことは、我々が信頼の上に成り立っている友好国や同盟国との強力なパートナーシップを確立していることである。私は、アジア太平洋地域においては、機動性が高く、非常に多用性があり、そして持続的な自己充足能力を持つ水陸両用戦部隊より適した戦力はない、と確信している。

記事参照:
The U.S. Marine Corps Surges to the Asia-Pacific

12月 13日「インド、沿岸警備態勢強化計画決定」 (Defense News, December. 14, 2012)

インドの安全保障閣僚会議は 13日、哨戒艇の取得と監視レーダー網の改良を含む、総額 3億 9,000万米ドルの沿岸警備態勢強化計画を決定した。計画によれば、沿岸警備隊が新たに 5隻の沿岸警備艇を取得し、更に第 2段階では、1億 1,630万米ドルの経費で沿岸監視レーダー網が更新される。また、第 2段階では、38カ所に新たに監視レーダーが設置され、結局、最終的には、既に稼働している 40カ所の監視レーダーとともに、2013年半ばまでに全面稼働することになる。沿岸監視網は、これらの固定レーダーに加えて、沿岸域に設置された 84カ所の遠隔操作の電子光学センサーで構成され、不審船の動向を監視する。これらは、2011年 11月 26日のムンバイ・テロ事件以降の沿岸警備隊強化計画の一環である。沿岸警備隊はまた、20隻の高速哨戒艇、41隻の臨検用ボート、12機のドルニエ沿岸監視機及び 7隻の沿岸哨戒艇を取得しつつある。

記事参照:
India Funds Coastal Security Upgrades

12月 14日「中国、東シナ海の大陸棚縁辺部延長申請を国連に提出」 (China Media.com, December 14, 2012)

中国は 14日、東シナ海の大陸棚縁辺部を中国沿岸から 200カイリを超えて延伸する申請を、国連に提出した。申請文書は、地形や地質の特徴は東シナ海の大陸棚が中国領の陸地の自然延長であることを証明しているとし、東シナ海における中国の大陸棚の自然延長は沖縄トラフまで伸びている、と述べている。

記事参照:
China reports to UN outer limits of continental shelf in East China Sea

【関連記事】「日本政府、中国による大陸棚延長申請に対する口上書の発出」(外務省 HP、2012年 12月 29日)

日本政府は 29日、「中国による大陸棚延長申請に対する我が国の立場を表明する口上書」を国連事務局宛に発出した。この口上書は、「中国による大陸棚延長申請に対する我が国の立場を表明しつつ,大陸棚限界委員会に対して当該申請を検討しないよう要請」したものである。外務省 HPによれば、口上書の概要は以下の通りである。

(1) 中国が大陸棚延長申請を行った海域は、日中それぞれの領海基線の間の距離が 400カイリ未満の海域である。かかる海域における大陸棚は、国連海洋法条約の関連規定に従って、日中間の合意により境界を画定する必要がある。したがって、中国は、かかる海域において、一方的に大陸棚の限界を設定することはできない。

(2) 上記の立場について、我が国は、2009年 7月、中国による暫定申請を受けて発出した国連代表部発国連事務局宛の口上書により既に表明している。

(3) 大陸棚限界委員会手続規則の関連規定によれば、同委員会は、大陸棚の延長申請について、海洋等に関する紛争が存在する場合、大陸棚の延長申請は、全ての関係国の事前の同意がなければ検討できないことになっている。我が国は、そのような事前の同意を与えておらず、大陸棚限界委員会に対して、中国による大陸棚延長申請を検討しないよう要請する。

(4) なお、尖閣諸島が、我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いはない。中国が大陸棚延長申請のために提出した文書に記載されている尖閣諸島への言及(中国が主張する尖閣諸島周辺の基線を含む。)は、国際法上根拠がないものであり、我が国として全く受け入れられない。

記事参照:
外務省 HP;中国による大陸棚延長申請に対する我が国の立場を表明する口上書の発出

12月 15日「スリランカ・インド・モルディブ、海洋協力覚書に近く調印」 (The Hindu, December 15, 2012)

15日付けのインド紙、The Hinduが報じるところによれば、スリランカの国防相は、コロンボで開催中の海洋安全保障セミナーで、スリランカ、モルディブ及びインドが海上監視、海賊対策、不法行為取締り及び海洋汚染などにおける 3カ国の海洋協力拡大のための覚書に近く調印することに合意した、と発表した。この協力態勢の主眼は、海洋環境識別能力を強化するための情報の共有である。ゴタバヤ国防相は、「既に、関係閣僚会議や専門家レベルでの検討は終わっており、3国間の覚書は近く調印されることになっている。この覚書は、3国の海軍部隊が直面している問題の多くに対処する上で極めて有効なものとなろう」と語った。一方、インドのドーワン海軍副司令官は、ソマリアの海賊による襲撃は同国沿岸から 700カイリも離れた海域で確認されており、3国間の海軍による効果的な哨戒と協力が不可欠となっている、と指摘した。これに伴って、インドは、協力関係を円滑に進めるために、モルディブに海軍大佐を武官として派遣した。同国への武官の派遣はインドが初めてで、大使館の設置国もインド、パキスタン、バングラデシュ及び中国の 5カ国だけで、他の諸国はコロンボかニューデリーの大使館が兼摂している。

記事参照:
India, Sri Lanka, Maldives to sign agreement on maritime cooperation

【関連記事】「ハンバントータ港、中国の『真珠』ではない—スリランカ国防相」 (The Hindu, December 14, 2012)

スリランカのゴタバヤ国防相は、The Galle Dialogueで、中国の援助によって同国南部で建設中の深水港、ハンバントータ港について、インドを取り囲む中国の「真珠数珠繋ぎ (‘string of pearls’)」戦略の一部ではない、と語った。同港は第 1期工事が完了したばかりで、期待されたほど多くの船舶を受け入れるに至っていない。ゴタバヤ国防相は、「ハンバントータ港を中国の『真珠数珠繋ぎ』戦略の一部と見るのは正しくない。スリランカの認識は、同港に対する中国の投資は純粋に経済的なものであることを明確にしておきたい」と述べ、同港の利用を予定している海運会社の大部分はインドの会社であると付言した。中国のいわゆる「真珠数珠繋ぎ」戦略における港湾(真珠)には、パキスタンのグワダル、モルディブのマラオ、スリランカのハンバントータ、バングラデシュのチッタゴンそしてミャンマーのシットウェが含まれるとされる。ゴタバヤ国防相は、これらの港湾建設を正当化するに当たって、中国の観点からすれば、同国経済の急速な発展に伴って、経済的影響圏が拡大するのは自然の成り行きであるというものであっても、インドから観れば、同国を囲い込むものと受け取るのは十分理解できる、と語った。

記事参照:
Not in ‘string of pearls’: Sri Lanka

12月 15日「ソマリアの海賊、武装警備員乗船前の船舶を襲撃」 (Shiptalk, December 18, 2012)

目標船舶が武装警備員を乗船させるために何処かの港に向かっていることを、もし海賊が知っていれば、彼らは武装警備員が乗船する前にこの船舶を攻撃するかもしれない。デンマーク船、MV Torm Kristinaが 15日に海賊に襲撃された時、このことが現実となった。該船は、「補給のための一時的な寄港」という名目で、オマーンのマスカットに向けて航行中に、港に到着する前に、海賊が乗った 2隻の小型ボートに襲撃された。該船の乗組員は直ちに、「安全区画 (the citadel)」に避難するとともに、救難信号を発信した。幸い付近に NATO艦隊の戦闘艦が哨戒中で、直ちに現場海域に向かった。3時間後の到着した時は、海賊は逃亡した後だった。襲撃された時、該船は、ペルシャ湾からジャワ島のトゥバンに向けて航行中で、武装警備員が乗船していなかったが、途中で乗船させる予定であった。場所は明らかにしていなかったが、「補給のための一時的な寄港」がその名目であった。

記事参照:
Pirates Hit Ship Before Guards Embarked

【関連記事】「ソマリアの海賊の最近の戦術、『ソフト・アプローチ』— NATO警告」(NATO Shipping Centre, December 29, 2012)

NATOは最近、ソマリアの海賊が「ソフト・アプローチ (“soft-approaches”)」戦術をとっている、と警告している。それによれば、海賊の小型ボートがまず 1隻で目標船舶に接近し、(乗船していれば)武装警備要員からの反応を確かめることが多い。そして目標船舶から反応がない場合、目標船舶に対する襲撃を続けるために再び近寄ってくるが、その場合もう1隻の小型ボートを伴っていることが多い。この戦術は、成功の見込みが低い襲撃で、不必要に弾薬等を費消したり、人的被害を出したりすることを回避することに狙いがあると見られる。

一方、紅海南部、バブエルマンデブ海峡そしてインド西岸 50カイリ沖合までの海域では、多数の漁船が操業している。漁船は、漁網などを護るために、商船に近寄ることもある。また、インドの漁民は、4〜6人乗りの船外機付きの小型漁船で延縄を使って操業している。そのため、これらの海域を航行する船舶の船長は、漁船と海賊不審船とを確実に区別することが求められる。また、漁民が小火器を携行していることもある。

記事参照:
Daily Piracy Update

12月 15日「アブダビ、新港オープン」 (Gulf Base, December 15, 2012)

アブダビの The Abu Dhabi Ports Company (ADPC) は 15日、ハリファ (Khalifa)港を正式にオープンした。同港の開港によって、隣接する広大な工業特区、キザード (Kizad) と共に、アラブ首長国連邦の石油依存からの経済の多様化が加速される。ハリファ港とキザード工業特区は、今後 30年以内に、アブダビの石油以外の GDPを最大 15%まで延ばすと期待されている。同港のコンテナ・ターミナルは 9月 1日から運用を始めているが、第 1期建設計画が完了すれば、1週間でコンテナ 5万個、毎月 100万トンの貨物を処理する能力を持つ。同港の運営は、画期的な港湾運営技術を導入した、最近の管制センターから小人数の熟練オペレーターによって行われる。

記事参照:
Abu Dhabi opens $7.2bn Khalifa Port

12月 15日「EU艦隊、海賊容疑者 5人拘束」(EU NAVFOR Public Affairs Office, Press Release, December 17, 2012)

EU艦隊所属のベルギー海軍フリゲート、BNS Louise-Marieは 15日午後、小型ボート 1隻に乗った 5人の海賊容疑者を拘束した。EU艦隊所属のスウェーデン海軍哨戒機は 12日、哨戒活動に向かう途中でこのボートを発見し、同艦が海上から捜索していた。哨戒機が 15日にこのボートを再び発見し、3時間以内に同艦のヘリが現場海域に到着し、その後、同艦の乗り込みチームが到着した。ボートは梯子や乗り込み用のフックなどを積んでおり、証拠収集と尋問のために乗っていた 5人の海賊容疑者とともに同艦に収容された。以下は、その時の様子である。

記事参照:
EU Naval Force Belgian Frigate BNS Louise-Marie Apprehends Five Suspected Pirates

12月 18日「中国艦隊、シドニー訪問」 (The Wall Street Journal, December 18, 2012)

中国海軍フリゲート、「益陽」、「常州」及び補給艦、「福地」からなる艦隊は 18日、アデン湾での海賊対処活動を終えて帰国の途次、オーストラリアのシドニーを 4日間の予定で訪問した。オーストラリア国防相によれば、5年前に中国海軍艦艇が初めて同国に寄港して以来、今回の訪問は最大規模である。

記事参照:
Sydney Hosts Rare Chinese Naval Visit

12月 19日「インド海軍、長距離海上哨戒機 1番機受領」 (The Times of India, December 20, 2012)

インド海軍は 19日、長距離海上哨戒機、 P-8Iの 1番機を、米シアトルのボーイング工場で受領した。インド海軍は 2009年、総額 21億米ドルで P-8Iを計 8機購入する契約を締結している。インド海軍チームは、2番機と 3番機を受領した後、2013年 5月から 6月頃に 3機で帰国する。残りの 5機は 2015年までに順次引き渡されることになっている。インドは現在、更に 4機の追加購入を交渉している。同機の航続距離は約 1,200カイリである。インドは、航続距離約 350カイリ程度の中距離海上哨戒機の導入も検討している。インドは、5,422キロの海岸線、1,197の島嶼、そして 201万平方キロに及ぶ EEZを有し、ペルシャ湾からマラッカ海峡に至る海洋権益を護るため、戦闘艦艇に加えて、海軍航空戦力を増強中である。

記事参照:
Navy gets first long-range maritime reconnaissance aircraft

12月 20日「ASEAN、インドとの海洋安全保障協力強化へ」 (Reuters, December 20, 2012)

ASEANとインドは、20日にニューデリーで開催された首脳会談で、海洋安全保障協力を強化する、新たな「戦略的パートナーシップ」に合意した。共同声明では、航行の自由の必要性が強調されているが、中国についての言及はない。会議では、ベトナムとフィリピンが南シナ海問題に言及したが、インドは、この問題に直接関わることを避けた。インド外相は記者会見で、「主権に関わる問題は、当事国間で解決する必要がある」と述べた。インドは、南シナ海における領有権問題の当事国ではないが、中国の主張と重複する海域でベトナムと合同で石油・天然ガスの開発を進めており、更に将来的にはロシアからマラッカ海峡経由で LNGの輸入も想定されている。インド海軍司令官は既に、必要なら、海洋利権を護るため南シナ海への艦隊派遣の用意ありと表明している。インドネシアのユドヨノ大統領は会議で、世界の原油輸送の 70%が中東からインド洋を経由して東アジアに輸送されていることから、インドとの緊密な海洋安全保障協力が必要であるとして、「世界経済の中心が東方に移りつつあり、インド洋と太平洋は、海運に不可欠のシーレーンとしてその重要性を一層増していくであろう」と強調した。

今回の首脳会議は、インドの増大する役割を印象づけた。中国と ASEANの貿易関係と結びつきはインドとのそれより深いが、シンガポールの東南アジア研究所のイアン・ストーレイ上席研究員が指摘するように、「東南アジアにおけるインドのプレゼンスは、ASEANにとって、もう 1つの対中ヘッジのオプションとなろう。」

記事参照:
In China’s shadow, ASEAN leaders look to India for maritime security