海洋情報旬報 2013年3月1日〜3月10日
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3月 3日「カナダ北極圏群島地域氷河、 2100年まで大幅に縮小—オランダ研究チーム予測」 (BBC News, March 3, 2013)
英 BBCが 3日に報じたところによれば、カナダ北極圏群島地域の氷河は、現在の地球温暖化予測が正しければ、今世紀中に最大 5分の 1にまで大幅に縮小し、その結果世界の海表面が 3.5センチ上昇するという。これは、オランダのユトレヒト大の研究チームが発表したものである。カナダ北極圏群島地域は約 3万 6,000の島からなる広大な地域である。現在のデータが示すところでは、この地域の氷河は急速に薄くなっており、 2003年以来年間の縮小量は約 700億トンで、更に加速している。研究チームが開発したコンピュータモデルを使った予測では、年間の氷河縮小量は約 1,450億トンに達し、最北のエルズミーア島とその周辺で最大の縮小が予測されるという。研究チームによれば、この地域の全体的な大気の温暖化が周辺のツンドラを覆うスノーカバーを溶かし、北極海の海氷の縮小が更に気温を上げることによって、氷河の縮小が加速されるという。研究チームの代表は、「我々が発見したことは、現在進行中のプロセスが更に加速され、その結果時間が経つにつれ解消量が大きくなるということである。我々のモデルでは、 2100年には、カナダ北極圏群島地域の氷河が約 20%縮小し、これは世界の海表面を 3.5センチ上昇させる量である」と指摘している。
記事参照:
Canadian glaciers face ‘big losses’
3月 5日「ロシア、ベトナムの潜水艦隊創設を支援」 (РИАНовости, March 5 and 6, 2013)
このほど、ベトナムを訪問したショイグ露国防相は、ハノイでタイン越国防相と会談を行った。会談後、ショイグ国防相は記者団に、「今年はベトナム海軍にとって新たな歴史の 1ページが開かれるだろう」と述べ、ベトナムの潜水艦隊創設を支援する意向を明らかにした。ショイグ国防相によれば、潜水艦と乗員の準備を同時並行で行うことが議論され、ロシア軍の教育機関に設置される専門家課程の拡大についても触れられたという。ショイグ国防相は会談で、「このような(ベトナムとの)信頼関係の維持は、ロシアの対外政策の優先事項の一つである」とし、「ベトナムは、古くからの信頼のおける戦略的パートナーである」と強調した。
記事参照:
Россияпоможет Вьетнамусоздать подводный флот, сообщил Шойгу
Вьетнамявляется однимиз внешнеполитических приоритетовРФ − Шойгу
3月 6日「インド海軍、空母の現状」 (The Times of India, March 6, 2013)
中国が初めての空母、「遼寧」を就役させたのと対照的に、インドは現在、稼働空母を持っていない。唯一の保有空母、艦齢 54年の INS Viraatは、更に 3〜4年の延命のため、大規模な改修中である。インド洋が印中両国の戦略的な抗争の場となりつつある状況下で、インドの政軍当局が長期的な計画立案とタイムリーな政策決定を怠ったことが、2個空母戦闘群(CBG)を保有するという海軍の長年の夢を打ち砕くことになった。
インド海軍の空母プロジェクトはいずれも予定より遅れている。ロシアで改修中の、 INS Vikramadityaは、早くて 2013年 12月までには回航が見込まれている。インドが初めてロシア海軍の Admiral Gorshkovに関心を示してからほぼ 20年が経った。改修経費は総額 23億 3,000万米ドルに達した。4万トン級の国産空母( IAC)については、コチン造船所で建造中だが、2018年までは引き渡しされないであろう。6万 5,000トン級の国産 2番艦(IAC-2)は構想段階に過ぎない。2万 8,000トンの INS Viraatは 1987年 5月に英国から HMS Hermesを購入したもので、改修完了まで少なくとも 8〜9カ月見込まれている。結局、インドは、 INS Vikramadityaと IACからなる 2個 CBGを保有するのは早くて 2018年以降になろう。
記事参照:
India without aircraft carrier as China takes huge strides
【関連記事】「空母、 INS Vikramadityaの現況」(Press Information Bureau, Government of India, March 11, 2013)
空母、INS Vikramadityaは、2012年 6月から 9月にかけて海上公試を実施した。108日間に及ぶ海上公試中、高速運転時にボイラーの防火壁に亀裂が生じたために、フルパワーでの航行試験を完了していない。現在のところ、インドに回航されて就役するのは、 2013年第 4四半期となろう。
記事参照:
Induction of INS Vikramaditya
3月 7日「コノコフィリップス社、アラスカ沖で試掘へ」 (gCaptain, March 8, 2013)
米国の石油開発大手、ConocoPhillipsは 7日、2014年からアラスカ沖で最大 2本の試掘井で試掘を開始する計画であることを明らかにした。この海域は 2012年に Royal Dutch Shellが多くの困難に直面したところである。計画によれば、アラスカ沖約 80カイリのチュクチ海の “Devil’s Paw” と呼ばれる浅海域(約 140フィート)で、2014年の解氷期に 1〜2本の試掘井で掘削する。試掘は、ジャッキアップリグ 1基とその他の支援船で行われる。試掘計画は現在、米内務省海洋エネルギー管理局 (BOEM: The Bureau of Ocean Energy Management) で審査中である。
記事参照:
Move Over Shell, ConocoPhillips Looking to Drill in the Chukchi Sea in 2014
3月 8、10日「ソマリアの海賊、ハイジャック船 2隻解放」 (EUNAVFOR, Somalia, March 9, and March 11, 2013)
EU艦隊旗艦のスペイン海軍フリゲート、ESPS Méndez Núnezは 8日早朝、ソマリア北部沿岸 20カイリ沖を哨戒活動中、MV Royal Grace (6,813DWT) が速度 4ノットで航行しているのを視認した。その直後、 MV Royal Graceの船長から、該船がソマリアの海賊から解放され、21人の乗組員が無事であるとの通報があり、食糧、水および医療支援の要請があった。同艦から医療チームが派遣されるとともに、食糧、水が与えられた。アラブ首長国連邦のドバイ拠点の Oyster Cargo & Shipping社所有、パナマ籍船のケミカルタンカー、MV Royal Graceは 2012年 3月 2日にオマーン湾でハイジャックされた。解放に当たっては、金額が不明ながら身代金が支払われた。
一方、ギリシャの Dynacom Tankers Management Ltd.社所有、リベリア籍船のスエズマックス・タンカー、 MT Smyrni (57,000DWT) は、10日に解放された。解放に当たっては身代金が支払われたと見られ、 1,200万米ドルを超える身代金が支払われたとの未確認情報もある。該船の乗組員は 26人である。該船は、 13万 5,000MTの原油を輸送中、2012年 5月 11日にオマーン沖でハイジャックされた。
記事参照:
EU Naval Force Flagship ESPS Me´ndez Nu´nez Provides Assistance To Tanker MV Royal Grace After Freedom From Somali Pirates
EU Naval Force Flagship ESPS Me´ndez Nu´nez Assists Another Tanker After Release From Armed Somali Pirates
3月 9日「南シナ海における中国の戦略原潜—その戦略的意味」 (Carnegie Endowmennt.org, March 9, 2013)
米シンクタンク、 Carnegie Endowmentのレーマン (Iskander Rehman, Associate Nuclear Policy Program) は 9日付の“Dragon in a Bathtub: Chinese Nuclear Submarines and the South China Sea ”と題する論説で、中国が南シナ海における外国の軍事活動に対して強硬な姿勢を取っている背景には、南シナ海が中国の戦略原潜の展開海域になっていることにあるとして、要旨以下の諸点を指摘している。
(1) 南シナ海は世界で最も通航量の多いシーレーンのひとつであるが、この海域はまた、海南島の三亜を基地とする、整備されつつある中国の弾道ミサイル搭載原潜の展開海域でもある。米国は、この地域全域に各種の最先端の対潜水艦兵器や海洋調査船を展開させており、中国の核戦略基地を常時覗き込んでいるという好ましくない印象を北京に与えている。中国の海軍戦略家が自国の海洋環境について語る時、彼らが絶えず包囲されているとの感情を抱いていることが窺える。彼らは、米国がインド洋・太平洋地域に広がる同盟のネットワークを持っているのに対して、中国が相対的に孤立していると見、中国海軍が日本からインドネシア群島に延びる第 1列島線の内側に閉じ込められるのではないかと懸念している。彼らは、紛争の極めて初期の段階、即ち第 1列島線を通り抜けない内に、米海軍が中国の初歩的な段階にある海洋戦略抑止力の位置を特定し、無力化しかねないことに焦燥感を持っている。
(2) 南シナ海での外国の軍事活動に対して中国がますます過敏になってきているのは、中国側のこうした懸念が背景にある。2001年 4月の EP-3事案や 2009年 3月の「インペカブル」事案など、米中両軍が関わった深刻な事案の幾つかは、海南島に極めて近接した海域で生起している。表向きは、外国の軍事活動に対する中国の抗議は中国の管轄海域内の問題として表明される。しかしながら、中国の為政者たちは、内輪では、核抑止力が問題の核心にあることを十分認識している。本稿の筆者(レーマン)が中国の元高官と議論した際、彼は「領土問題も重要だが、我々の主たる関心は将来の海洋抑止力の生き残りにある」と語った。しかしながら、冷戦期のソ連の戦略原潜の行動が比較的孤立したバレンツ海やオホーツク海に限定されていたのに対して、中国は、世界で最も通航量の多い南シナ海に戦略原潜の基地を設けた。
(3) 言うまでもなく、南シナ海は理想的な海域ではない。バスタブで竜がもがくように、中国海軍の野心は、南シナ海という地理的に制約された海域から見て、大き過ぎ、また壮大に過ぎる。南シナ海の領有紛争に対して北京がますます頑なになってきた理由の 1つは、この戦略的縦深を欠くという認識であろう。中国は、海南島周辺海域に監視網を張り巡らせ、聖域化することを狙っている。中国が海南島に近接した西沙諸島に加えて、より遠隔の南沙諸島までの絶対的な制海権を確立すれば、この基本的に防衛的な態勢がほぼ出来上がるであろう。
(4) つい最近までは、中国の戦略原潜は深刻な脅威ではなかった。米中経済安全保障調査委員会が議会に提出した最近の報告によれば、中国が間もなく、約 4,600カイリの射程を持つ JL-2 SSBMを搭載する新型の「普」級潜水艦を配備すると見られる。報告書は、北京はこれによって「ほぼ常続的な海洋戦略抑止力」を展開できるようになろう、と指摘している。これらの戦略原潜が海南島に基地を置くことはほぼ間違いないであろう。従って、第 2期オバマ政権は、複数の国の領有権主張が重複しているばかりでなく、世界で最も危険な核のホットスポットの1つに急速に変貌しつつある海域における緊張に対処するという、有り難くない課題に直面することになろう。
記事参照:
Dragon in a Bathtub: Chinese Nuclear Submarines and the South China Sea
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