海洋情報旬報 2013年2月21日〜2月28日

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2月 25日「在セイシェル海賊対処センター、業務開始」 (Oceanus Live, February 25, 2013)

セイシェルのバート外務大臣は 25日、同国に設置された海賊対処センター、The Regional Anti-Piracy Prosecution & Intelligence Coordination Centre (RAPPICC) を正式にオープンした。 RAPPICC は、海賊の首領や資金提供者に関する情報を共有するために世界各地からの専門家が集まる。バート外務大臣は開所式典で、「RAPPICC は、海賊対処活動の中核、即ち海賊活動を可能にしている海賊の首領や資金提供者をターゲットにした、重要な任務を遂行する。彼らをターゲットにすることで、 RAPPICCは、重要でユニークな機能を果たすとともに、ソマリア沖からインド洋に至る深刻な海洋組織犯罪に対処する域内諸国を支援する」と述べた。RAPPICCは、2012年のソマリアの海賊に関するロンドンでの会議で、英国首相とセイシェル大統領によって調印された覚書によって設置され、英国が 55万ポンドを提供した。RAPPICCには、現在、英国、セイシェル、米国、タンザニア、モーリシャス、オランダ、オーストラリア、INTERPOL及びソマリア派遣 EU艦隊から専門家が参加することになっている。

記事参照:
Anti-Piracy Centre Open for Business in Seychelles

2月 25日「中国軍、輸送能力強化—軍事力の投射範囲拡大」 (Reuters, February 25, 2013)

25日付の Reutersは、中国がこれまで重視してこなかった艦隊補給艦や大型輸送機の整備に力を入れており、領有権主張の強化や海外権益の防衛を支える上で必要な能力を強化しつつあるとして、要旨以下の諸点を指摘している。

(1) 防衛アナリストが指摘するように、艦隊補給艦や大型輸送機の整備は、高性能の戦闘機、長距離ミサイルあるいは最新の戦闘艦艇の増強と比べれば、それほど地域的緊張を高めることもないが、ここ約 30年間の人民解放軍の軍事力増強における極めて重要な要素である。時間の経過に伴い、海空補給支援能力の強化は、中国海軍をその地理的到達範囲において世界で 2番目の海軍とするとともに、もし北京が台湾侵攻を決意する場合における台湾を含め、本国から遠く離れた戦域における部隊を支援する中国軍の能力を強化することになろう。

(2) 中国軍事サイトやブログによれば、中国の国営造船所は 2012年に、2隻(太湖、巣湖)の 2万 3,000トン級 Type 903補給艦(福池級総合補給艦)を進水させた。これらは現在、海上公試中で、 2013年後半にも海軍に配備されるとみられる。一方、中国は 1月、解放軍が西安の閻良空軍基地で、大型輸送機、 Y-20の初の試験飛行を実施したことを確認した。中国の国営テレビは、この中国最大の 4発国産輸送機の離着陸の模様を紹介した。中国公式メディアの報道によれば、Y-20の製造は中航工業西安飛機製造公司が担当し、その積載能力は 66トンに達するという。こうした補給艦や輸送機の整備は世界的な軍事力の展開能力を構築しようとする中国の野心を裏付けるもので、このことは、陸上国境線を拡張あるいは防衛することを優先する伝統的な安全保障戦略との決別を意味する。

記事参照:
Chinese transport “workhorses” extending military’s reach

2月 28日「日比海洋安全保障関係— RSIS専門家論評」 (RSIS Commentaries, No. 037, February 28, 2013)

シンガポールの S. Rajaratnam School of International Studies (RSIS) の上席分析者、Julius Cesar I. Trajano は、28日付の RSIS Commentariesで、日比海洋安全保障関係について論評し、要旨以下のように述べている。

(1) 日本はフィリピン沿岸警備隊に 10隻の巡視艇を供与することを明らかにしているが、これは日比両国の戦略的パートナーシップを活性化する前例のない措置である。両国の外交官・海事専門家はまた、22日にマニラで、南シナ海における海洋協力、海洋安全保障、海賊対処、漁業問題及び海洋科学調査などについて話し合った。

(2) 両国の海洋協力の活性化の背景には、2つの要因がある。即ち、中国の拡張主義的脅威に対する認識の共有、そしてフィリピン政府の国内政治的経済的思惑である。安倍政権の再登場によって、日本は自らの東南アジア回帰を図りつつあり、フィリピンはこの動きの中で重要な役割を果たし得る。他方、フィリピンは、自国の防衛能力を強化するために、日本を含む域内の友好国との関係を活性化させつつある。両国の安全保障協力の活性化は、東・南シナ海における北京の高圧的な姿勢に対する対応である。

(3) 今後 18カ月以内に供与されると見られる巡視艇は、南シナ海の海軍バランスに影響を与えるものではないが、フィリピンの海洋監視能力を強化するとともに、東南アジアに対する日本の戦略的足がかりを強めることになろう。フィリピン沿岸警備隊は、南シナ海における中国の海洋活動をモニターすることで日本を支援できるし、また日本にとっても、南シナ海は尖閣諸島における中国の動向を占うテストケースである。更に、日本は、フィリピンが自国の領有権主張を強めることで、中国の海洋監視機関の関心と資源が東シナ海と南シナ海に分散されることを期待できる。また、フィリピンの能力強化は、日本にとって死活的に重要な南シナ海のシーレーンにおける航行の自由を護ることにも貢献する。両国の海洋協力の活性化は、より大きな文脈、即ち南シナ海問題の国際化というフィリピンの努力からも評価できる。フィリピンは、中国の高圧的姿勢に対処するために、広く友好国からの支援を求めてきた。マニラはまた、この問題を国際仲裁裁判に持ち込んだ。

(4) 両国関係における「中国ファクター」は重要だが、日本は、フィリピンの経済成長にとっても重要である。中国は、 ASEAN諸国の最大の経済パートナーだが、日本は、フィリピンの最大の貿易相手国で、2012年の総額は 130億米ドルを超えている。日本は、フィリピンの最大の輸出市場で、また 2012年のフィリピンへの対外投資額、15億米ドルの 35%前後を占めている。

記事参照:
Japan-Philippine Relations: New Dynamics in Strategic Partnership