海洋安全保障情報旬報 2012年5月21日〜5月31日

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5月 21日「米の前方展開戦力、ローテーション配備拡大—米太平洋軍司令官」 (American Forces Press Service, May 21, 2012)

21日付のAmerican Forces Press Serviceは、米太平洋軍のロックリア司令官 (ADM Samuel J. Locklear Jr.) とのインタビューを報じている。ロックリア司令官の発言要旨は以下の通り。

(1)米軍のこの地域におけるプレゼンスは、新たな恒久的基地の必要がない、ローテーション配備によって拡充していく。将来的には、陸軍部隊も含まれる可能性がある。オーストラリアのダーウィンへの海兵隊の 6カ月期間のローテーション配備は、当面小規模だが、将来的には約 2,500人までに拡大していく。この配備は、新たな国防指針の主要目標である、アジア太平洋地域における米国の関与を強化するものである。

(2) 米海軍の沿岸戦闘艦 (LCS)、USS Freedomは、2013年春に.初の 10カ月間のローテーションでシンガポールに配備される。シンガポールが同意すれば、更に配備隻数が増強されることになっている。シンガポールはインド洋と太平洋を結ぶマラッカ海峡に面した強力で信頼できるパートナーであり、沿岸戦闘艦の配備によって、世界.大のチョークポイントの 1つにおける海洋安全保障にとって、ユニークで信頼できる戦闘能力が得られる。

(3)アジア太平洋地域に恒久的に配備される戦力については、変化はないが、域内全域に展開できるように再編中で、日本、グアム及び韓国で基地の再編が進行中あるいは計画中である。日米両国は 4月に、沖縄から約 9,000人の海兵隊を再配備する計画に合意した。約 5,000人がグアムに、残りが域内の他の場所に再配備される。 2万 8,500人の在韓米軍については、今後数年間で、そのほとんどがソウル以南に再配備される。

5月 21日「米海軍、アラビア湾に沿岸戦闘艦 8隻配備を視野に—海軍次官」 (Defense News, May 21, 2012)

米海軍のワーク次官 (Bob Work) は 21日、シンクタンク、The Cato Instituteでの講演で、現在アラビア湾(米国はイランとの関係から、「ペルシャ湾」を使用していない)に計画中の沿岸戦闘艦 (LCS) 配備が計画通り進めば、米海軍は.終的には、バーレーンから 8隻の LCSを運用できよう、と語った。それによれば、現在、バーレーンには 4隻の掃海部隊が配備されているが、米西岸から更に 4隻の掃海艦が 6月に到着し、8隻態勢となる。同基地の大型哨戒艦は.終的には 10隻態勢となるが、これら全てが将来的には LCSに代替されることになるという。ワーク次官は、 LCS配備の時間表を示さなかったが、2010年代後半までには、アラビア湾に 8隻の LCS前方展開態勢が可能になると語った。もっとも、ワーク次官によれば、この計画の実現には、国防省、議会及び受け入れ国の同意が必要である。

LCSは現在、2隻が就役している。3隻目が 2012年秋に就役予定で、4隻目は 2013年以降である。USS Freedom (LCS-1) は 2013年にシンガポールに配備され、10カ月間のローテーション配備期間を経て、2013年後半か 2014年春には帰還する。シンガポールに常時 LCSが所在するようになるのは、USS Freedom級の 2番艦、 USS Fort Worth (LCS-3) からになると見られる。LCSには 2つのタイプがあるが(もう 1つは、USS Independence (LCS-2) が 1番艦)、海軍はシンガポールに 2つのタイプの LCSを配備するのを望んでおらず、USS Freedom級だけで.終的に 4隻配備するためには、早くて 2016年になると見られる。しかし、ワーク次官は、USS Freedom級はアラビア湾に配備する方が適している、と語っている。もしシンガポール配備の 4隻がアラビア湾に配備替えされ、USS Independence (LCS-2)級に代替されるとしても、USS Freedom級がアラビア湾で運用できるようになるのは、少なくとも 2018年になろう。

5月 23日「EU、船舶燃料の硫黄分削減に関して暫定合意」 (gCaptain, May 24, 2012)

EUは 23日、船舶燃料の硫黄分削減に関して暫定合意に達したと発表した。それによれば、船舶起因の有害物資削減努力の一環として、 EU海域を航行する全ての船舶は、船舶燃料に含まれる硫黄成分の削減が求められる。具体的には、バルト海、北海及び英仏海峡を含む、EUの「硫黄排出規制海域」を航行する船舶は、暫定合意と MARPOL Convention附属書 VI(船舶からの大気汚染防止のための規則)に従って、船舶燃料の硫黄成分を 2015年までに 1%から 0.1% に削減することを求められる。他方、他の EU海域を航行する船舶は、それを 2020年までに 0.5% に削減することを求められる。EUは、この新規制に対処するための海運業界の負担額を、26億から 110億ユーロ( 33億から 140億米ドル)と見積もっている。

5月 23日「フィリピン、スカボロー礁への漁船派遣で中国非難」 (The Wall Street Journal, May 23, 2012)

フィリピン外務省は 23日、漁業禁止期間にもかかわらず、.近数日間で多数の中国漁船がスカボロー礁海域に展開していることに対して、在マニラ中国大使館に「強い憂慮」を伝えた。外務省によれば、 22日までに、76隻の多用途ボートの存在が認められた。多用途ボートは、浅海域で二枚貝やサンゴを採るために大型漁船に積まれて運ばれる。外務省声明はまた、中国がこの海域で不法な浚渫作業を行っており、海洋環境を脅かしている、と非難している。外務省声明は、「両国が緊張緩和を模索しているこの時期における、かかる行動は誠に遺憾である」と強調している。外務省報道官によれば、中国がこの海域で 8月 1日までの漁業禁止期間を宣言した5月16日以降も、中国漁民はこの海域で操業している、と述べている。中国外務省の報道官は 23日の会見で、この海域に 20隻余の中国漁船がいることを明らかにした。

5月 25日「国際海運会議所、パナマ運河通航料値上げに反対」 (The Maritime Executive, May 25, 2012)

国際海運会議所 (ICS) は 25日、パナマ運河庁 (ACP) が通航料を.大 15%引き上げるとしていることに対して、「受け入れられない」とする書簡を ACPに送付した。ICSは、値上げ計画の撤回を求めるとともに、将来値上げする場合、海運業界が値上げに適切に対応し、その影響を評価できるようにするために、少なくとも 6カ月間の事前通告を求めている。ICSの加盟社は世界の商船隊の 80%以上をしめる。ACPは 4月に値上げを発表し、 7月 1日から実施するとしていた。ICSの事務局長は、運河収入は現在、極めて順調であり、値上げする切迫した理由はない、と指摘している。事務局長は、パナマ運河はパナマの重要な国家資産だが、同時に、グローバルなサプライ・チェインに不可欠な国際公共インフラの 1つであり、料金設定に当たってはこのことを考慮すべきである、と強調している。

View the full text of the letter following URL;
http://maritime-executive.com/files/CAN(12)09-Annex%20ICS%20Comments%20on%20Panama %20Canal%20Toll%20Proposal.pdf

5月 28日「韓国現代重工、半没式掘削ドリル受注」 (Marine Log, May 28, 2012)

韓国の現代重工は 28日、Fred Olsen Energy(ノルウェーの沖合石油掘削大手)から半没式掘削ドリルの建造を受注した。現代重工は、ターンキー契約(完成品引き渡し方式)で、設計から完成まで包括的に請け負う。契約には同クラスのドリル 1基の追加オプションがついている。リグは、 2010年に完成した群山造船所で、北海の厳しい気象環境に対応する NORSOK 規格に従って建造される。リグは全長 123メートル、幅 96メートルで、実用掘削深度は70〜3,000メートルまでであるが、1万2,000メートルまで掘削が可能である。 2015年 3月に完成すれば、世界.大の半没式掘削ドリルとなる。

5月 28日「中国国防相、フィリピンに自制を要求」 (Asia One, China Daily, May 30, 2012)

中国の梁光烈国防相は 28日、カンボジアのプノンペンでフィリピンのガズミン国防相と会談し、スカボロー礁(黄岩島)を巡る問題で、ガズミン国防相に対して「言葉と行動の自制」を求めた。両国防相は、 ASEAN国防相会議出席のためカンボジアを訪れた。今回の会談は、4月に問題が発生して以来、初めての国防相同士の会談であり、同時に両国間の.高レベルの会談でもあった。梁光烈国防相は、黄岩島が中国固有の領土であることを繰り返した上で、「今回の事案は、フィリピン軍艦による中国漁民に対する威嚇が発端であり、更にその後のフィリピンの行動が事態を複雑化した」と述べ、フィリピンに中国の主権を尊重することを求めた。フィリピンのガズミン国防相は会談終了後、この問題について話し合ったことを評価し、問題の平和的解決を図るために対話のパイプを維持していく、と述べた。