海洋安全保障情報旬報 2012年5月1日〜5月10日

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5月 1日「躍進するインド海軍」 (The Diplomat, May 1, 2012)

1日付の Web誌、The Diplomat は、最近のインド海軍の動向について、要旨以下のように述べている。

(1) インドの初代首相ネルーはかつて「陸を護るには海を制すべき」との認識を示したが、2012年 4月はまさにそのことを思い出させる月であった。インド海軍では 4月だけで、原潜、INS Chakra(ロシア製 Akula級のリース)の就役、国産原潜、INS Arihantの海上公試開始、Agni-V弾道ミサイルの発射実験成功、 RISAT1偵察衛星の打ち上げ、BrahMos巡航ミサイル搭載のフリゲート、INS Tegの就役、及び海軍の軽戦闘撃機(LCA)の飛行実験の成功などが見られた。

(2) LCA NP-1は、空軍の Tejas戦闘機の艦載機タイプの訓練機である。艦載機に必要な着艦フックとギアは米海軍の積極的な支援を受けた。LCAは、2013年就役予定の空母、INS Vikramaditya(旧ロシア、Admiral Gorshkov)、2014年就役予定の国産空母、INS Vikrantから運用可能である。

(3) インド海軍は、米海軍や日本の海上自衛隊とも協力関係を深めている。海上自衛隊は 2013年に再び、Malabar演習に参加する予定である。

(4) 21世紀のインドは本当に、ネルーの夢見た強力な海軍を実現しつつある。

5月 2日「フィリピン、米国に監視レーダー、監視船、航空機の提供を要請」 (Defense News, May 2, 2012)

フィリピン当局は 2日、中国との南沙諸島領有権問題が激化する中、米国に監視目的のためのレーダーシステム、監視船、航空機の提供を要請した、と語った。フィリピンのデルロサリオ外相は、「今、我々の周りで起こっている現実に直視する必要があり、自らの主権に基づき、いかなる外部からの侵入をも抑止しなければならない」と述べ、そのために米国の軍事的援助や他のパートナー諸国との協力の重要性を訴えた。特にフィリピンは現在、日本や韓国、オーストラリアとの間で海上安全保障、人道支援、災害支援における協力を緊密化させている。さらに同外相は、「軍事的同盟国である米国とより洗練された共同軍事演習を行うことは相互の利益に繋がり、そして米国はより信頼できる強い同盟国を求めていることからも、我々に軍事的投資をすることは米国にとっての戦略的な利益になる」とも述べた。

5月 2日「環境問題は国家安全保障上の懸念—パネッタ米国防長官」 (American Forces Press Service, May 3, 2012)

パネッタ米国防長官は 2日、環境防衛基金の会合において、気象変動と環境変化が国家安全保障上の脅威として浮上して来ており、国防省の新たな戦略において重きをなしつつある、語った。パネッタ長官は、「海面上昇、深刻な干ばつ、極冠の氷解、そしてより頻繁かつ破壊的な自然災害は、人道支援や災害救援の需要を高めている」と指摘した。しかしながら予算の制約が問題を悪化させており、長官によれば、 2011年に軍事作戦に要した燃料費は約 150億ドルに達したという。アフガニスタンだけで、毎月平均 5,000万ガロンの燃料を消費した。長官は、2012年には、燃料価格の高騰に伴い燃料費は 30億ドルを超える予算不足に直面している、と言う。長官は、国防省がクリーンエネルギーと環境にやさしい取り組みの最先端に立つことを約束した。その上で、長官は、「国防省は、次会計年度において、より効率的な航空機及び航空機エンジン、艦船のハイブリッド電気駆動、発電機の改良、そして小規模戦闘拠点及び戦闘プラットフォームのためのマイクログリッド(小規模なエネルギー・ネットワーク)など、エネルギー効率化計画に対して 10億ドル以上を投資する」と述べた。

5月 2日「英国、 ReCAAP加盟」(ReCAAP Joint Press Release, May 2, 2012)

英国は 2日、ReCAAPの 18番目の加盟国となった。英国は、アジアの域外国だが、この地域の海洋経済に大きな利害関係を持ち、ReCAAPの目的を強く支持してきた。英国の加盟は、グローバルな海賊被害に立ち向かい、重要な海上交易路を護り、船員の安全を確保し、そして海賊行為から利益を得ることを阻止する、同国政府の強いコミットメントを示すものである。

5月 3日「台湾国防部、南沙諸島へのミサイル配備を否定」 (The China Post, May 4, 2012)

台湾国防部は 3日、南沙諸島への短射程対空ミサイルの配備を否定した。趙世璋・国防副部長は、立法院の外交国防委員会での公聴会で、台湾によるこうした動きは政治的論議を巻き起こすとともに、この海域における台湾の定期的哨戒活動に影響を及ぶす、と述べた。また、同副部長は、台湾が支配する東沙諸島と大平島に駐留する防衛部隊に対する兵站支援にも影響を及ぼす、と指摘した。外交国防委員会は現在、東沙諸島と大平島に「天劍1」ミサイルを配備する提案を審議中である。国防部が纏めた報告書によれば、台湾はかつて東沙諸島に「天劍1」ミサイル・ランチャー2基を配備していたが、2001年に維持補修が困難であることを理由に撤去した。同報告書は、もし再配備されることになれば、再び同じ問題に直面すると指摘している。台湾は、他の領有権主張国との緊張を緩和するために、1999年に東沙諸島と大平島から海兵隊を撤退させ、海岸巡防署に防衛責任を委ねている。しかしながら、立法院は、この地域への軍事プレゼンスの強化を求めている。

5月 4日「インド裁判所、拘留イタリア籍船タンカーの出港許可」 (The Hindu, May 6, 2012)

インドのケララ州高裁は 4日、コーチ港に拘留されていた、イタリア籍船で同国船社所有のタンカー、MT Enrica Lexieの出港を許可した。該船は、添乗していた 2人のイタリア海兵隊員が 2月 15日、海賊と間違えてインド人漁民に発砲し、 2人を死亡させたことから、以来、コーチ港に拘留されていた。高裁は、出港許可に当たって、 3,000万ルピーの保証金を命じた。2人の海兵隊員はケララ州のインドの刑務所に引き続き拘留される。該船には 6人の海兵隊員が添乗しており、他の 4人も取り調べのためインド司法当局に召喚される可能性があるが、イタリア政府の声明は、これら 4人が召還を拒否する権利を持つとしている。

5月 4日「中ロ軍事演習—その意義」 (DiploWeek, May 4, 2012)

4月末に 6日間にわたって実施された中ロ両国による合同海軍演習について、4日付の Web誌、DiploWeekは、その意義などについて、要旨以下のように指摘している。

(1) 今回の合同海軍演習は、黄海の中国東海岸沖合で行われ、実弾射撃を含んでいた。この演習は、合同海上防空及び海上交通の防衛に焦点を置き、合同護衛、洋上における捜索・救難作戦、対潜戦術及びハイジャック対処戦術の訓練を含むものであった。今回の演習は、近年の中ロ合同軍事演習としては、最大規模であった。中国海軍から 5隻の誘導ミサイル駆逐艦、5隻の誘導ミサイル・フリゲート、 4隻のミサイル艇、支援艦艇及び病院船各 1隻を含む、合計 16隻の艦艇と 2隻の潜水艦、更に 13機の航空機と 5機の艦載ヘリが参加した。4,000人以上の中国海軍将兵がこの演習に参加した。ロシアからは7隻の艦艇が参加した。

(2) 中ロ両国は 2011年 9月、軍事協力を拡大することに合意した。ロシアのメドベージェフ大統領は 2011年 4月のテレビ・インタビューで、ロシアと中国の関係は両国の歴史の中で最高点にあると宣言し、未だその努力を緩める時ではないと強調した。この度の中ロ合同演習に合わせて、中国の李克強副首相は、4月 26日から 30日まで公式にロシアを訪問し、如何にして 2国間協力を改善し、経済開発を促進するかについて意見を交換した。中国はロシアの最大の貿易相手国になり、ロシアは中国の貿易相手国トップ 10の中にランクされている。2012年の 2国間の貿易は現在、2011年同期よりも 33%増となっている。両国間の貿易関係は、貿易構造の改善により強化されており、機械及び電気製品の分野などの貿易高が増加している。中国は、この分野での輸入を拡大するとしている。

5月 4日「ソーラー・パワー船、世界 1周航海達成」 (gCaptain, May 7, 2012)

世界最大のソーラー・パワー船、 MS Tûranor Planet Solarは 4日、モナコに入港し、 2010年 9月にモナコを 4人の乗組員で出航以来、史上初めて全行程ソーラー・パワーだけで世界 1周を達成した。全行程 3万 7,294カイリで、所要日数 585日、28カ国に寄港した。この間、該船は、大西洋と太平洋を横断し、パナマ・スエズ両運河を通航し、またアデン湾をも航行した。大西洋横断ではソーラー・ボートによる最速記録を達成した。また、ソーラー・ボートによる航行距離も最長記録となった。該船は、充電式リチウム電池を備えた、 537平米のソーラー・パネルを装備し、最大速力 14ノットの推進力を持つ。

この船はスイス人のラファエル・ドムヤン (Raphael Domjan) の独創になるもので、彼は 2004年春、(『80日間世界一周』などのフランスの小説家)ジュール・ヴェルヌ (Jules Verne) の小説に基づく遠征を思い立った。1年後、ドイツの造船所で建造が始まり、2010年 3月に完成した。9月には、航海記録とドキュメンタリー・フィルムが発表される予定である。

5月 5日「インド海軍 4隻、日本に向け出港」 (The Times of India, May 5, 2012)

インド海軍の 4隻、Rajput級駆逐艦、Shivalik級フリゲート艦、Kora級コルベット艦および給油艦各 1隻が 5日、東部艦隊司令官、クマール海軍少将に率いられ日本に向け出港した。2カ月間にわたる航海で、途中、マラッカ海峡を通り、南シナ海を抜け、来週日本に到着する。日印間では今年、共同演習やスタッフトークを実施する予定。日本の他にマレーシア、フィリピン、シンガポール、中国(上海)にも寄港するが、この上海への寄港は、インド海軍艦艇がベトナム沖で中国海軍の警告を受けたといわれる 2011年 7月以来になる。中国の練習艦、鄭和も 5月 9日から 13日の間インド・コーチンに寄港する。

5月 6日「AQAP系武装集団、海からの攻撃」 (Information Dissemination net, May 12,2012)

12日付のブログ、Information Dissemination netによれば、2000年の米海軍駆逐艦、USS Cole爆破テロ事件において主要な役割を果たしたとされる、AQAP(アラビア半島のアルカイダ)の幹部が殺害されたが、AQAPによる報復攻撃で 6日、アビヤン州都ジンジバラでイエメン当局のメンバー含め 30人以上が殺害された。この事件で特記すべきは、漁船によって襲撃が行われたということである。アルカイダの戦略の中で、「海上の重要性」は以前から議論されてきた。イエメンのアルカイダ系メンバーの中でも、 USS Cole爆破テロ事件を模範として、海上におけるテロの重要性は指摘されてはいたが、実際海上テロ攻撃に必要な能力構築、航行する船舶の防護強化、国際協力のもと行われる総合的なテロ対策の実施により、実際うまくは機能していない。しかし、9.11同時多発テロがアルカイダにとって最も成功したハイジャックテロで、それは AQAPが近年繰り返す航空テロ事件やテロ計画に強い影響を与えている。同様に、 USS Cole爆破テロ事件による影響も衰える様子は見えない。AQAPがイエメン南部を中心に勢力を拡大させ、アデン湾を挟んで対岸に位置するソマリアでもアルシャバブの台頭が顕著になってきており、両者の関連性も指摘されている。

5月 7日「米中国防相会談、開催」 (American Forces Press Service, May 7, 2012)

パネッタ米国防長官は 7日、訪米した梁光烈・中国国防相と会談した。パネッタ長官は会談後の記者会見で、要旨以下のように述べた。(1) 米中両国は共に、太平洋国家である。両国関係は世界で最も重要な関係の 1つである。(2) 梁国防相との会談で、米国は、中国との健全で、安定し、信頼でき、かつ持続可能な軍事的関係を維持していくことを約束する。(3) 両国は、アジア太平洋地域とその他の地域において、人道的支援からテロと大量破壊兵器拡散に対する懸念、更には麻薬の密輸や海賊対処まで、多くの利害を共有している。

一方、梁国防相は会見で、要旨以下のように述べた。(1)今回の訪米の目的は、両国間の国家関係と軍事関係を発展させていくとの胡錦濤主席とオバマ大統領との重要な合意を促進するためである。(2)両国の軍部は、現在進行中の、防衛協議、防衛政策調整協議、軍事海洋協議協定 (MMCA)、及びワシントンと北京間の防衛ホットラインを引き続き活用していく。(3) 中米 2国間関係は現在、平等、協力及び相互利益を基盤とした新しい軍事関係を構築するための、新たな歴史的なスタートラインに立っている。

Transcript of Joint Press Briefing with Secretary Panetta and Gen. Liang is available at; http://www.defense.gov/transcripts/transcript.aspx?transcriptid=5027

5月 7日「イラン報道官、イランの領土主権に関わる交渉には一切応じない」 (Sahar English TV, May 8,2012)

イラン外務省報道官は7日、「我々イランの固有の領土であるペルシャ湾のアブームーサ島、大小トンブ島の領有権問題において、他国と交渉することはない。他国が外交的圧力を掛けてくる中でも、自らの領土や資源などの国益を守ることは最優先課題である」とする声明を発表した。この問題では最近、アラブ首長国連邦 (UAE) の領有権主張も日に日に強くなり、またイランのアフマディネジャド大統領も 4月にアブームーサ島を訪問していることより、情勢は緊迫化の一途を辿っている。米国や湾岸諸国は UAEの領有権主張を支持するスタンスをとっており、イラン情勢の動向次第ではホルムズ海峡の封鎖など、日本のエネルギー安全保障にも多大な影響を与えかねない問題である。

5月 9 日「米海軍、 2013年からシンガポールに LCSをローテーション配備」 (Chicago Tribune, Reuters, May 10, 2012)

米海軍水上戦闘担当部長、ローデン少将 (RADM Thomas Rowden) が 9日に明らかにしたところによれば、米海軍は 2013年春から、ほぼ 10カ月間のローテーションで、新型の沿岸戦闘艦 (LCS)、USS Freedomを配備する。シンガポールはマラッカ海峡に面した戦略的要衝であり、マラッカ海峡はインド洋と太平洋を結ぶ主要な海峡であり、世界貿易の約 40%がここを経由している。米国とシンガポールは、最大 4隻までの LCSを、シンガポールの海軍施設にローテーション配備することで協議してきた。両国は、基地協定を伴わない、戦力展開としている。

LCSは、全く新しい概念の戦闘艦である。 40ノット以上の速力が出せ、機雷掃海、対潜戦及び対水上戦任務のそれぞれに対応して即展開、戦闘が可能なモジュール設計となっている。LCSは 2つのタイプがあり、1つは USS Freedomを含むロッキード・マーチン社の設計で、もう1つはジェネラル・エレクトリック社の設計である(トリマラン船体の USS Independence (LCS-2) が 1番艦)。米海軍は LCSを最大 55隻調達することを望んでおり、現在まで、2つのタイプを各 6隻、計 12隻が予算化されている。

5月 9日「スカボロー礁を巡る中比対峙の米中関係への影響—カーライル・セイヤー論評」 (China & US Focus, May 9, 2012)

オーストラリアの The University of New South Walesのカーライル・セイヤー(Carlyle A. Thayer) 名誉教授は 9日、4月から続く南シナ海のスカボロー礁を巡る中比対峙が米中関係に及ぼす影響について、要旨以下のように論評している。

(1)スカボロー礁事案は明らかに、その周辺海域における漁業に対する主権的管轄権を巡る紛争である。フィリピンは、漁業の取締りに海軍戦闘艦を派遣することで戦術的に誤ったかもしれない。フィリピン沿岸警備隊司令官は、海軍戦闘艦は海洋法令執行任務についていないと述べ、その後、海軍戦闘艦を沿岸警備隊の巡視船に代えた。一方、中国が同海域に派遣した船は、海軍戦闘艦ではなく、海監や漁政といった海洋監視船であった。

(2) この事案は、単なる漁業を巡る主権的管轄権を超えた、少なくとも 3つの重要な意味を持っている。

(a) 1つは、この対峙によって、自国の EEZを管轄するフィリピンの能力の欠如が露呈され、「自国の主権を護る」とのフィリピンの声明の信頼性が失われたことである。

(b) 2つ目は、この事案が、フィリピン国内に同盟国である米国の役割に対する大いなる非難を巻き起こしたことである。フィリピン国内における反応は、米比同盟条約に対するフィリピンの非現実的な期待を示している。この条約は、「締約国の何れか一方の領土保全、政治的独立あるいは安全が太平洋地域における外部からの武力攻撃によって脅かされた」場合に、協議すると規定している。現在までのところ、中国は、軍事力行使を徹底して避けている。また、フィリピンのエリート層は、政治的支援を表明しない ASEANに対しても批判的であった。

(c) そして 3つ目に、米比両国が 4月 16日〜27日の間、第 28回 Balikatan演習を実施したことである。この演習は、スカボロー礁事案以前から計画されていたものであった。中国メディアの報道は、他国との軍事演習は地域の平和と安定に貢献するものでなければならないと述べ、比較的抑制的であった。中国自身も同時期に黄海でロシアと演習しており、平仄を合わせなければならなかったようである。

(3) スカボロー礁事案が提起した法的、戦略的問題は、現在の対峙状態が解消されても、長引きそうである。中国は、 2国間ベースでの解決を指向している。一方、フィリピンは、多国間によるアプローチを望んでおり、また紛争解決を国際海洋法裁判所 (ITOLS) に委ねるよう求めたが、中国は拒否した。戦略的問題は、フィリピン沿岸警備隊の海洋法令執行能力強化を最優先課題とすることで対処できよう。米国、日本、韓国、オーストラリアなどが、フィリピンの能力構築と訓練支援を強化すべきである。長期的には、フィリピンは、領土防衛のための軍事力強化というアキノ政権の政策を追求していかなければならない。そして戦力近代化の目標は、通常戦力による海からの脅威に対する最小限抑止力を構築するものでなければならない。

(4) 今後 5年間が重要である。南シナ海での中国とフィリピンの軍事衝突の可能性が高まるにつれ、米国の介入を誘発する可能性が高まる。米国と同盟国は、武力行使とその威嚇を抑制するよう、中国に外交的圧力をかけ続けていかなければならない。

5月 9日「中国海洋石油、南シナ海の深海で掘削開始」 (Xinhua, May 9, and Global Times, May 9, 2012)

中国の国営石油大手、「中国海洋石油総公司」(CNOOC) が 9日に明らかにしたところによれば、CNOOC 981は 9日から、香港南西 320キロの南シナ海の水深 1,500メートルの深海で掘削を開始する。CNOOCによれば、 CNOOC 981は国産の第 6世代の半没式深海掘削リグで、中国の深海底石油産業にとって画期をなすものである。掘削開始によって、中国は、南シナ海の深海底の石油・天然ガス資源を掘削する最初の国になった。CNOOCは、大型の深海掘削リグは動く領土であり、中国の海洋石油産業発展にとって戦略兵器であり、掘削開始は中国のエネルギー安全保障と領海に対する主権的管轄権の強化に資する、と強調している。今回の掘削海域は 25平方キロに及ぶ深海域で、推定 300億立米との天然ガスがあると見られる、水深 2,335メートルまで掘削する。

国際的には、水深 300メートル以上が深海とされ、1,500メートル以上が超深海とされる。南シナ海には、230億〜300億トンの石油資源、16兆立米の天然ガスがあると推定されるが、これは中国の石油・天然ガス総埋蔵量の 3分の 1に当たると見られる。南シナ海の石油・天然ガス資源の約 70%が 154万平方キロに及ぶ深海域にあると見られている。中国の専門家によれば、南シナ海は、メキシコ湾、ブラジル沖および西アフリカ沖に次ぐ、世界で 4番目の深海掘削海域になる可能性を秘めている。

中国の現在の海洋石油開発のほとんどは、深海掘削技術がなかったために、水深 300メートル以下の海域で行われてきた。CNOOC 981は、中国船舶工業集団公司 (CSSC) によって、総額 60億元(9億 5,200万米ドル)、3年以上の歳月をかけて建造された。 CNOOC 981は、全長 114メートル、全幅 90メートル、高さ 137.8メートル、総重量 3万 1,000トンである。CSSCによれば、デッキは標準的なサッカー場 1面ほどの広さがあり、掘削可能深度は 1万 2,000メートルで、操業可能最大深度は 3,000メートルである。CNOOC 981は、第 3世代の GPSを装備し、「2世紀に 1度クラスの嵐」による波浪にも耐えられる。また、石油漏洩事故に効果的に対処できる装置も備えている。

5月 10日「ソマリア海賊、タンカーをハイジャック」 (World Tribune, May 13, 2012)

ソマリアの海賊は 10日、オマーン沖 630キロのアラビア海で、リベリア船籍でギリシャの船社所有のタンカー、MT Smyrniをハイジャックした。該船は、13万 5,000トンの原油を積んでおり、乗組員は 15人で、ほとんどがインド人である。該船は、 2011年に就航し、今回が 2度目の航海だった。2011年 2月以来、オマーン沖でのタンカーのハイジャック事案はこれが初めてである。IMBによれば、自動火器で武装し、近くの母船から発進した 2隻の skiffに分乗した10人の海賊が 2度にわたって該船を襲撃し、2度目に乗り込みの成功し、該船と乗組員を制圧した。海事産業筋によれば、最近、ソマリアの海賊はオマーン沖での襲撃を活発化させているという。(備考:ソマリアの海賊は 2011年 2月 9日、ギリシャ籍船で同国船社所有の VLCC、MT Irene SL (319,247DWT) を、オマーン沿岸東方約 220カイリの海域でハイジャックした。OPRF海洋安全保障情報月報 2011年 2月号 1.1海洋治安参照)

5月 10日「中国解放軍報、フィリピンに警告」 (Xinhua, May 10, 2012)

10日付の中国の解放軍報は、「黄岩島(スカボロー礁)に対する中国の主権を侵す如何なる試みも、中国政府、人民そして軍は許さない」と述べ、黄岩島を巡るフィリピンの動向に警告した。更に同紙は、中国は黄岩島を巡る対峙で自制してきたが、もしこれを中国の弱さ、あるいは一部の部外者が言うように、中国を「張り子の虎」を見なすなら、それは大いなる誤りである、と強調した。

以下の画像は、新華社が 10日に配信した、黄岩島(スカボロー礁)の岩礁(満潮時には海面下となる低潮高地)で中国国旗を掲げる中国人ジャーナリストである。