海洋安全保障情報週報 2012年3月15日〜3月21日、2012年3月22日〜3月31日合併号

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3月 19日「インドネシアの次期潜水艦取得先、トルコが再浮上か」 (Hurriyet News, March 19, 2012)

19日付けのトルコ紙、Hurriyet Newsが報じるところによれば、韓国がインドネシアの次期潜水艦取得価格を一方的に 3億米ドル増額したことから、同国の次期潜水艦として、ドイツ・トルコ共同開発の U209潜水艦が再浮上するかもしれないという。それによれば、韓国の大宇造船海洋 (DSME) は 2011年 12月 22日、U209潜水艦 3隻を 11億米ドルで建造する契約をインドネシアとの間で結んだが、DSMEは 2月初め、契約価格が低すぎるとして、一方的に 14億米ドルに増額した。トルコ調達庁高官によれば、ドイツ・トルコ共同企業体は 2月 7日、インドネシアに新たなオファーを提示し、現在返事待ちという。インドネシアの潜水艦建造については、DSMEとドイツ・トルコ共同企業体が最後まで競り合い、最終的に DSMEが勝ったが、その後で、 DSMEが契約価格を一方的に引き上げたわけである。インドネシア国軍のスハルトノ司令官 (Adm. Agus Suhartono)は 2月にトルコを訪問したが、訪問団はトルコ側に、 U209ではなく、より最新型の U214に関心があると語った。トルコは 2010年 7月、ドイツの HDW社との間で、U214潜水艦 6隻を 20億米ドルで共同生産する契約を締結している。トルコは、 U209の建造に関して第 3国と交渉する権限を HDW社から得ている。

3月 21~4月 1日「シンガポール・インド両国海軍、年次合同演習実施」 (MINDF, Singapore, April 2, 2012)

シンガポール・インド両国海軍は 21日〜4月 1日の間、ベンガル湾で年次合同演習、 SIMBEX (Singapore-India Maritime Bilateral Exercise)実施を実施した。SIMBEXは、両国海軍が 1994年から実施している年次演習で、今回が 19回目である。今回の海上演習は、アンダマン海とベンガル湾で実施された。シンガポール海軍からはフリゲート、ミサイル・コルベット各 1隻が、インド海軍からは、駆逐艦、コルベット、洋上給油艦、フリゲートおよび潜水艦各 1隻、高速攻撃艇 2隻が参加した。また、両国海軍の海上哨戒機、艦載ヘリも参加した。

3月 23日「民間警備会社、洋上武器庫を利用」 (AP, March 23, 2012)

23日付の AP通信が報じるところによれば、民間警備会社は、洋上武器庫を利用して、武器を保管している。海運業界によれば、これによって、民間武装警備員の雇用を望む船舶は、費用を節減できるとともに、武器の輸出入に関する各国の法の規制を逃れることができる。海運業界や法律専門家によれば、洋上武器庫は法的には「グレーアリア」にある。洋上武器庫は、2011年頃から海運業界がソマリアの海賊対処のために民間武装警備員の雇用を増やし始めた状況下で、ビジネスとして登場してきた。現在、常時 10隻から 12隻の船舶が洋上武器庫として運用されている。ある民間警備会社によれば、その内訳は、約半分が紅海沖にあり、3隻がアラブ首長国連邦沖、2隻がマダガスカル沖にある。洋上武器庫を利用する船舶は、海賊多発海域に入る前に、武器庫から武器を受領し、海賊多発海域を抜ければ、別の洋上武器庫に武器を返す。ソマリア周辺地域の国には、武器の傾向を規制している国が多く、サウジアラビア、エジプトおよびイエメンは、「アラブの春」が始まって以来、外国人の武器所持に特に神経を尖らせている。船舶にある武器の規制は国によって異なる。例えば、セイシェルでは、入港船舶に警察が乗船し、武器庫を封印する。モーリシャスでは、船舶が入港後、武器を降ろし、警察が保管する。しかし、公海では、船舶を規制できるのは当該船舶の旗国のみで、リビアやパナマなど、多くの旗国は比較的規制が緩やかである。各国の武器規制は、民間武装警備会社の急増に追いついていないのが現状である。2月以来、英国の全ての民間警備会社と従業員、あるいは英国船に武装警備員を派遣している会社は、新たな法規制を遵守しなければならない。しかし、この規制には、洋上武器庫に対する如何なる規制もない。

3月 23日「EU、ソマリア海賊の陸上拠点にも作戦拡大」 (Break Bulk, March 23, 2012)

EU国防相会議は 23日、EU艦隊の海賊対処作戦、Operation Atalantaを、ソマリア海賊の陸上拠点にも拡大することに合意した。会議は、Operation Atalantaを、2014年 12月末まで更に 2年間延長することにも合意した。EU艦隊は、ソマリア暫定政府とその他の国内勢力による沿岸の海賊拠点に対する攻撃を支援するため、彼らと直接協力する。 EUは、2年間の作戦延長経費として、1,490万ユーロを支出する。他方、NATOも 19日、海賊対処作戦、Operation Ocean Shieldを 2014年末まで延長することに合意している。

3月 27日「米豪両国、インド洋の豪領諸島に無人哨戒機配備を検討」 (The Washington Post, March 27, 2012)

27日付の米紙、The Washington Postによれば、米豪両国は、インド洋のオーストラリア領ココス諸島 (The Cocos Islands) に高々度無人偵察機、Global Hawkの新たな拠点とする可能性を含め、両国の軍事協力の大幅な拡大に向けた協議を進めている。米国は、インド洋の英領ディエゴガルシアに海空統合基地を持つが、基地機能を拡充するための余積に乏しく、また 2016年の租借期限切れ以降が不確定であることから、ココス諸島が注目を集めている。米豪両国の当局者は、ココス諸島が有人機の拠点としてだけではなく、Global Hawkの拠点としても理想的な位置にある、と見ている。米海軍は、広域海洋偵察機 (The Broad Area Maritime Surveillance drone: BAMS) として知られる Global Hawkの新たな派生型を開発中で、2015年の実戦配備を目指している。ココス諸島は、南シナ海の偵察を行う上でも格好の拠点となろう。

【関連記事】「インドネシア、米国のココス諸島への無人機配備計画に抗議」 (Xinhua, March 29, 2012)

インドネシアのスヤント (Djoko Suyanto)調整相は 29日の記者会見で、米国がインドネシアのスマトラ島南方 3,000キロに位置するココス諸島への無人機配備を計画していることに対して、インドネシアの主権を侵害するものとする抗議書を米豪両国政府に対して送付したことを明らかにした。

3月 26日「ソマリアの海賊、イラン船をハイジャック」 (BBC News, March 26, 2012)

ソマリアの海賊は 26日、モルディブの Hoarafush 島北西沖でボリビア籍船でイランの船社所有のばら積み船、MV Eglantine (63,400DWT) をハイジャックした。該船の乗組員は 23人である。モルディブ国防当局によれば、この海域でのハイジャック事案は初めてである。モルディブは、ソマリア沿岸から 3,000キロ近く離れている。モルディブは、沿岸警備艇を現場海域に派遣し、乗組員救出についてインドの海軍と調整している。

3月 27日「EU艦隊、海賊襲撃グループを拘束」 (EU NAVFOR Public Affairs Office, Press Release, March 28, 2012)

EU艦隊所属のフランス海軍フリゲート、FS Aconitは 27日、ソマリア沿岸沖で 10人の海賊襲撃グループを拘束した。このグループは 26日に、マリア沿岸沖約 400カイリの海域で、香港籍船のタンカーを襲撃したと見られるグループで、同艦が、ルクセンブルグ派遣の海上哨戒機の支援を得て、追跡していた。哨戒機は、小型ボート 2隻を曳航する大型ボートを発見し、同艦に通報した。 27日に同艦の艦載ヘリが大型ボートを警告射撃で停船させた。同艦の臨検チームが大型ボートを臨検し、海賊容疑者 10人を拘束した。既に、このグループは、証拠隠滅のために、武器類、梯子や燃料と共に小型ボートを切り離し、沈めていた。以下はその時の様子である。

3月 26日「EU艦隊、海賊母船を拿捕」 (EU NAVFOR Public Affairs Office, Press Release, March 28, 2012)

EU艦隊旗艦でスペイン海軍フリゲート、ESPS Patinoは 26日、海賊行為を働いたと見られる、イエメン籍船のダウ船を拿捕した。このダウ船は、前日の 25日に 2隻の小型ボートで商船を襲撃したグループの母船と見られる。16人が乗っていたダウ船は、母船と確認された。16人の海賊容疑者の 14人は直ちに降伏した。2人の乗組員は解放された。以下は、その時の様子である。

3月 29日「インド・ケララ州高裁、イタリア船解放を命令」 (gCaptain, March 29, 2012)

インド・ケララ州高裁は 29日、イタリア船、 MV Enrica Lexieの解放を命じた。該船は、添乗のイタリア海軍武装警備員は 2月 15日にインド人漁民 2人を死亡させた事案で、以来、コーチ港に拘束されていた。該船を所有するイタリアの船社は、海軍武装警備員は乗組員ではなく、イタリア海軍によって任命された者であり、船舶は解放されるべきである、と主張してきた。一方、 2人のイタリア海軍の海兵隊員は、インド刑務所の勾留されており、殺人罪で起訴されている。(2月の本件事案については、OPRF海洋安全保障情報月報 2012年 2月号 1.1海洋治安参照)