海洋安全保障情報旬報 2024年2月11日-2月20日

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2月9日「中国、日本海へSSBN展開を企図か―日経済紙報道」(NIKKEI Asia, February 9, 2023)

 2月9日付の日英字経済紙NIKKEI Asia電子版は、“Is China seeking a submarine presence in the Sea of Japan?”と題する記事を掲載し、米国の対潜能力の向上やAUKUSによって、南シナ海が弾道ミサイル搭載原子力潜水艦を展開する海域として安全でなくなる可能性があり、中国はその代替海域として日本海を視野に入れており、日本は弾道ミサイル搭載原子力潜水艦と対峙する可能性があり、対潜能力の向上だけでなくAUKUS参加国の海軍との共同を進める必要があるとして、要旨以下のように報じている。
なお、本記事は本来であれば、2月上旬の旬報で取り上げられるべきものであるが、諸般の事情から本旬で取り上げた。
(1) 日本は新たな安全保障上の危険性に直面する可能性がある。中国は日本海での軍事的展開を継続的に維持しており、日本海が米国に向けた核兵器の発射地点となる可能性がある。「中国軍は最終的には次世代JL-3潜水艦発射弾道ミサイルを搭載したType096弾道ミサイル搭載原子力潜水艦を日本海に配備したいようだ」と元防衛省情報官は語っている。このような憶測は新しいものではないが、AUKUSの結成をきっかけに急速に広まっている。
(2) AUKUSの最大の目的は、センサーや武器を装備した多数の無人潜水艦とともに攻撃型原子力潜水艦で南シナ海の中国潜水艦を封じ込めることである。中国軍は南シナ海に人工島群を造成した。これら人工島は、米国にとって最も脅威となる潜水艦発射弾道ミサイルJL-2を搭載したType094弾道ミサイル搭載原子力潜水艦の残存性を確保するための中国の取り組みの一環である。しかし、AUKUSは先進技術を利用して海中監視能力の向上を目指す「透明な海」構想を採用した。こうした進歩により、中国潜水艦にとって南シナ海の安全性が低下する可能性がある。
(3) この状況から逃れるために、中国は弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(以下、SSBNと言う)の展開海域をより安全な海域に移動させる必要があり、その有力な候補が日本海である。 日本海から潜水艦発射弾道ミサイル(以下、SLBMと言う)が発射されれば、北極圏を通って米国まで到達する距離が短くなり、米政府の対応時間が短くなる。
(4) 「遠い将来、朝鮮半島で有事が発生した場合、中国軍は混乱に乗じて北朝鮮北部を占領し、中国東北部から日本海まで伸びる回廊を作る可能性がある」と元防衛省情報担当将校は語っている。「朝鮮半島の羅先港を中国軍が確保した場合、中国はその場所をSLBM部隊の母港として利用する可能性があり、羅先付近の海域はSSBNが潜むのに十分な深さがある」とこの元情報担当将校は付け加えている。日本海上空で繰り返される爆撃機の飛行は、SLBMを守るための航空即応態勢を確立する試みと考えられる。
(5) 北朝鮮は、おそらく中国の意図に対する警戒から、羅先や東海岸沿いのいかなる港にも中国艦艇の入港を認めない政策を維持している。しかし、北朝鮮がいつか中国に、韓国侵略の際の中国とロシアの支援と引き換えに、北方国境近くの土地の利用権を与えるかもしれないということは想像できないことではない。 米国が東欧や中東の紛争に気をとられている間にそれが実現すれば、北朝鮮が韓国全土、あるいはその北部を制圧する可能性はゼロではない。
(6) 習近平国家主席の下、中国は台湾との統一という目標を隠していない。 元情報将校によると、こうした野望を現実にするためには、中国は米国の介入を阻止する必要があるという。中国が米国を阻止するためには、「米中戦争が激化した後でも、最後の手段として米国本土を攻撃できるよう中国のSSBNを維持できる条件」が必要だ、とこの関係者は述べた。中国軍がその準備を整えるには弾道ミサイル搭載原子力潜水艦を日本海に配備する必要があり、そうなれば台湾で危機が勃発する前に中国軍が日本海に進出する可能性が高まる。
(7) SSBN部隊を含む中国軍が日本海での常駐を維持するという前例のない措置を採れば、日本政府は自らの安全保障態勢の見直しを余儀なくされるだろう。将来、中国のSSBNが実質的にAUKUSによって南シナ海から追い出された場合、自衛隊は日本海で中国のSSBNと対峙する必要があるだろう。自衛隊は対潜能力を向上させる必要があるだけでなく、AUKUSに参加の3ヵ国の軍との連携も深める必要があるだろう。
(8) 2023年6月、中国は165年ぶりにウラジオストク港の使用権を取り戻した。 中国は民間船舶に海上民兵を乗せていることで知られている。中国が日本海を航行する中国商船による軍事情報収集活動を強化する可能性が現実にある。一方、日本とオーストラリアの防衛省は先月、両国が配備する水中無人艇の相互運用性を目指した共同研究プロジェクトを開始することで正式に合意している。
記事参照:Is China seeking a submarine presence in the Sea of Japan?

2月12日「U.S. Navyを再建し、新冷戦に勝つためにすべきこと―米専門家論説」(The Heritage Foundation, February 12, 2024)

 2月12日付の米シンクタンクThe Heritage Foundationのウエブサイトは、同Foundationの上席研究員Brent Sadlerの“What It Takes To Reconstitute the Navy and Win the New Cold War”と題する論説を掲載し、Brent Sadlerは冷戦期にU.S. Navyを再建し、冷戦に勝利するための礎を築いたJ. William Middendorf II米海軍長官に今こそ学ぶべきとして、要旨以下のように述べている。
(1) 今日のU.S. Navyは、冷戦の暗黒期を彷彿とさせるような大きな課題に直面している。ひどい採用難、失敗続きの造船計画、少なすぎる艦艇数、これらすべてがますます攻撃的で自信に満ちた敵対国に対する我々の能力の優位性を損なっている。
(2) J. William Middendorf IIの海軍長官在任期間は、このような深刻な問題を克服するための教訓を提供する。Middendorf元海軍長官が海軍の舵を取ったのは1974年である。米国の歴史上、最悪の時期だった。国家はベトナム戦争後の沈滞に陥っていた。
(3) 弱体化した艦隊を再建するために、Middendorf元海軍長官は基本的なことに集中する必要があることを認識し、艦艇への配置に必要な十分な水兵や士官を確保することから始めた。候補者を増やすため、彼はU.S, Naval Academyへの入学を含め、女性が海軍で勤務する機会を拡大した。専門的な能力を取り戻すため、最優秀なエンジニアリング・チームを擁する艦艇に贈られる「ゴールデン・スナイプ」賞を制定した。また、当時の海軍作戦部長Elmo Zumwalt大将の支援を得て、配偶者への支援を充実させるとともに、全志願制の軍隊への移行期における全水兵の生活の質を向上させるなど、海軍の文化にも変化をもたらした。海軍人員の強化に加え、Middendorf元海軍長官と彼のチームは大規模な近代化計画に着手し、現在も活躍している次世代海軍システムと艦艇を前倒しで導入した。
(4) 半世紀近く経った今でも、中国が我が国の技術領域における首位を侵食していく中で更新が必要であるにもかかわらず、Middendorf元海軍長官時代の進歩は、我が国の安全保障に依然として妥当している。もちろん、これは安価ではなかった。他国の予算が縮小されたにもかかわらず、Middendorf元海軍長官が監督した海軍の予算は60%も増加した。Middendorf元海軍長官の成功には金がかかったが、脅威の本質を明確に理解し、その知識に基づいて行動する意志がなければ、このようなことはまったく起こらなかっただろう。彼は、長官としての精力的な任期を活発にする「力による平和」という指針を受け入れた。
(5) Middendorf元海軍長官はまた、海軍の競争に関する基本的な真理も理解していた。よく訓練された乗組員、艦艇の数、兵器の範囲は、より迅速なデータ処理と正確な感知が与えられれば、海での圧倒的な勝利を保証し、戦争を抑止する。それは、かつての冷戦の形勢を変えたものであり、今日の中国との新冷戦の形勢を変えるものでもある。
(6) 近年、米議会は海軍の強化によって抑止力を再活性化することを主張している。しかし、金を増やすだけでは任務は行えない。成功には賢明な決断と緊急の行動も必要である。この目的のために、Carlos Del Toro現米海軍長官は、Office of Strategic Assessment(戦略評価室)の創設を発表した。
(7) 冷戦後の「平和の配当」を享受してきた数十年間は、この国の中国との対立への備えをひどく不十分なままにした。現在我々は海軍復活の礎を築くJ. William Middendorf IIを必要としている。
記事参照:What It Takes To Reconstitute the Navy and Win the New Cold War

2月14日「Indian Navyによる海賊対処―米オンライン誌報道」(Foreign Policy, February 14, 2024)

 2月14日付の米政策・外交関連オンライン誌Foreign Policyは、“How Pirates Kick-Started India’s Navy Into Action”と題する記事を掲載し、ここで、ソマリアの海賊復活に対応して、紅海での対処のために手の回らない米英に代わって、Indian Navyが艦艇を派出し、ソマリア沖の海軍力を増強させたことが、中国の憂慮材料になり得るなら、米国にとっては朗報であるとして、要旨以下のように報じている。
(1) アフリカ東海岸沖で海賊が劇的に復活したことで、Indian Navyはソマリア沖に過去最大規模の海軍艦艇の展開を行い、安全保障面で支配的な役割を果たすようになった。ソマリアのテロ組織アル・シャバブに所属する海賊は、船舶への海賊行為を10年近くの空白を経て再開した。すでに11月下旬以降、アデン湾の海域で20隻近い船舶が攻撃、シージャック、乗り込みなどを受けている。
(2) 元Indian Navyの将校で、現在はインドのシンクタンクObserver Research Foundationの海洋政策計画の責任者Abhijit Singhは、「海賊の増加はインドだけでなく世界中の国や海軍にとって不可解なこと」と語っている。それは、ソマリアの海賊だけがこの海域における安全保障上の頭痛の種ではないということである。ほぼ同時期から、イランが支援するイエメンの反政府勢力フーシ派が、反イスラエル運動の一環として、紅海の狭い海域で商船を攻撃し、混乱と迂回を引き起こしている。このため、コンテナの輸送費は倍に跳ね上がっている。
(3) 米英の海軍艦艇は、紅海でフーシ派の脅威に対処しているため、アデン湾に安全保障上の空白が生じた。このためIndian Navyは、ソマリア沖の海賊を取り締まり、多忙な米英を支援するため、大型の水上艦艇と航空機を派遣し、その規模は水上艦艇2隻から12隻に増強された。これについて、 National University of Singaporeのインド太平洋問題専門家Yogesh Joshiは次のように述べている。
a.西側諸国の作戦の焦点が紅海に集中しているので、ソマリア沖にはインドのような海軍大国が必要である。
b.Indian Navyにとっては最大規模の展開が行われている。
c.トップダウンによる方向性と明確な目的が、インドの安全保障に対する姿勢をインド洋全域に拡大する原動力となっている。
(4) インドが海賊の増加に対応できるのは、これまでフーシ派と紅海の問題に巻き込まれることを避けてきたからである。何年もの間、ソマリア沖で小規模な海賊対策を展開してきた中国が、フーシ派の攻撃を受けている船舶を保護することを拒否してきたのと同じである。インドも中国と同様、大きなエネルギー源である中東諸国を疎外することを警戒している。
(5) さらにAbhijit Singhは、次のようにも述べている。
a.海賊の攻撃によって、多くの貿易が打撃を受けている。
b.米国や他の国々は紅海で忙しく、インド洋はインドが補完しなければならない。
c.海賊とフーシ派の採る戦術は、無人偵察機とミサイル以外は基本的に同じである。
(6) 海賊との戦い以上に、Indian Navyの配備が重要なのは、Indian Navyの配備が米国主導のインド太平洋安全保障構想にどのように適合するか、そして米国主導のインド太平洋安全保障構想に挑戦する中国の動向にある。中国は長年にわたり、インド洋全域で政治的、経済的、そして軍事的影響力を拡大し、インド政府を悩ませてきた。中国政府はスリランカ、パキスタン、カンボジアと港湾取引を行い、潜水艦を寄港させ、海賊対策に参加し、ジブチに基地を設置し、より広範囲に目を向け、インド洋のすべての島国との外交的関与を強めてきた。
(7) Abhijit Singh はこうも語っている。
a.以前は東インド洋で活躍していたインドが、今では西インド洋に進出し、大型艦艇を5倍に増やしていることを中国は少し懸念している。
b.中国側は、我々がこれを口実にして、この地域での影響力を誇示しようとしているのではないかと考えている。
c.中国はインドの多大な貢献を無視している。中国海軍は、海賊やフーシ派の攻撃が増えているにもかかわらず、驚くほど静かな対応に留まっている。
(8) Indian Navyの参加が中国政府の憂慮材料になり得るなら、米政府にとっては朗報と言える。冷戦時代にインドがソ連に接近し、非同盟の外交政策に固執して以来、米国とインドは何十年もの間、微妙な関係にあった。しかし近年、両国の防衛協力、特に海軍間の協力は飛躍的に拡大し、兵站や技術の取引、合同演習の回数も増えている。Indian Navyの今回の増強は、米国がアジアやヨーロッパの提携国に長年求めてきた負担の分担の一例である。これに関連して、Yogesh Joshiは、「米印軍事関係の中で、海軍は最も成熟し、発展している。それは、インド太平洋における米国の大戦略に直結している」と述べている。
記事参照:How Pirates Kick-Started India’s Navy Into Action

2月14日「米、インド洋地域を重視し、如何に対処すべきか―米専門家論説」(PacNet Commentary, Pacific Forum, February 14, 2024)

 2月14日付の米シンクタンクCenter for Strategic and International StudiesのPacific Forumが発行するPacNet Commentaryのウエブサイトは、 Pacific Forum会長David Santoroの “Don’t forget the “Indo” side of the Indo-Pacific: how the United States should approach the Indian Ocean Region”と題する論説を掲載し、David Santoroは米国がインド洋地域に如何に対処すべきかについて、要旨以下のように述べている。
(1) インド洋地域(以下、IORと言う)の戦略的重要性は大きく、しかもますます大きくなっている。IORは幾つかの地域と広大かつ多様な海洋から成り、域内人口は世界の人口の3分の1を超える27億人であり、平均年齢は30歳と若く、その上資源が豊富である。世界の海上石油輸送の80%がインド洋を経由している。一方で、IOR は海賊、密輸、テロといった非国家主体による脅威を含め、大きな課題に直面している。
(2) 米国は、平和で安全な、そして繁栄する IOR を維持する重要性を認識している。近年、米政府は、「アジア太平洋」に対比する用語、「インド太平洋」を受入れ、2018年にはU.S.  Pacific CommandをU.S. Indo-Pacific Commandに改称した。米国の戦略文書では IOR についてほとんど言及がないが、一部の米政府当局者は最近、米政府が新たな提携を通じてIORへの関与を強めていくことを強調している。しかしながら、いくつかの問題がある。米国の官僚機構は IORに対応するようにはなっていない。たとえば、U.S. Department of StateはBureau of African Affairs(アフリカ局)、Bureau of East Asia and Pacific Affairs(東アジア・太平洋局)、Bureau of Near Eastern Affairs(近東局)、Bureau of South and Central Asian Affairs(南・中央アジア局)という4つの異なった局が担当し、U.S. Department of DefenseでIORを担当するのは3つの統合軍―U.S. Indo-Pacific Command、U.S. Central CommandおよびU.S. Africa Commandの3つの統合軍である。こうした多くの担当部門は、米国が全体として、特に海洋に関してIORの動向を評価し、対処して行くことを難しくしている。もう1つの問題は米国が西インド洋あるいはアフリカ東岸を「インド太平洋」の概念に含めてないことである。このインド太平洋の定義は、インドで終わるU.S. Indo-Pacific Commandの担任区域と一致している。このことは、 IORに対する統一された戦略を策定する米国の能力を一層複雑にしている。こうした官僚機構や概念上の問題から、米国のこの地域に対する関与は限定され、今やIORの諸国に対する開発援助において中国の後塵を拝しつつある。米国は、緊急にIORへの新たな取り組みを採用すべきで、特に地域全体を俯瞰し、問題解決者で信頼できる提携国(a problem-solver and committed partner)として関与すべきである。
(3) 米国は、中国に対抗することを主眼に、あるいは中国に対抗するだけのためにIOR に関与する気になるかもしれない。米国が中国沿岸域におけるよりもIORでは中国よりも優位にあることから、米政府は IORにおける北京との競争を重視すべきと提唱する向きもある。この論議に従えば、IORにおける対中妨害が太平洋地域における中国政府の冒険主義的行動の抑止に役立つと言う。何故なら、それによって、中国に不利な遠隔地域への資源投入を中国政府に対して強要するとともに、この戦域における中国の存在感の増大に脅威を感じているIOR諸国、特にインドによる地域全体における釣り合いを取ろうとする行動の引き金になるからである。しかしながら、この取り組みは必要な速度で機能するか、全く機能しないかは不明である。IOR諸国による中国に対して釣り合いを取る行動も行われないであろう。何故なら、多くの国が中国に好意的な見方をしているか、あるいはそうでなくても対中行動に全力を投入する用意がないかのいずれかであるからである。したがって、むしろ「中国に対抗する(“countering China”)」よりも、IORへの米国の関与を系統立てる原則は、「問題を解決する(“fixing problems”)」であるべきである。米国は、自らを問題解決者、すなわちIOR諸国にとって直接的な関心事である非伝統的な安全保障上の脅威を含む諸問題への対処を支援できる国として振る舞うべきである。
(4) 米国は、太平洋から資源を転用するのではなく、この地域を重視したまま、IORへの関与を増やすことができ、またそうすべきである。米国は、IOR諸国との既存の関係を強化し、そしてより重要なことは、域内の指導国を支援することによって、今以上に多くのことができる。要するに、米国は、自らを問題解決者としてだけではなく、信頼できる提携国としても振る舞うべきである。その際、IORの大国、インドとの提携を最優先すべきである。米国は、インドとの間で締結した一連の協力協定を基盤として、IORにおけるインドの諸活動を最適の方法で支援すべきである。そうすることで、米国はインドを域内の主導的立場(the driver’s seat)に立てるようにすべきである。何故なら、米政府は太平洋を重視すべきであり、同時にIOR における米国の過度に積極的な展開はインド政府に「裏庭における懸念(“backyard anxieties”)」を抱かせる恐れがあるからである。
(5) もちろん、米国は、域内の他の指導的立場にある国とも協働すべきである。ここでは、インド太平洋における米国の「南の錨(“southern anchor”)」と評される信頼できる同盟国、オーストラリア、さらには、この地域で重要な役割を果たしている日本、フランスあるいは英国などの他の非 IOR諸国が思い浮かぶ。米国は、(帰属問題が)膠着状態にあるディエゴガルシアなどの、長年の諸問題の解決を含め、これら諸国の域内での役割強化に努めるべきである。また、米国はQUADなどの小国間枠国による機構も活用すべきである。
(6) 米国の有名な海軍戦略史家Alfred Thayer Mahanは1890年代後半に、「世界の運命はこの(インド洋)水域において決定されるであろう」と予言したとされる。この予言は今日においても依然、真実に聞こえる。であるが故に、米国にとって、太平洋を重視したままでも、インド太平洋の「インド」側に関心を向けるべきである。今が潮時と言える。
記事参照:Don’t forget the “Indo” side of the Indo-Pacific: how the United States should approach the Indian Ocean Region

2月15日「台湾海峡に対する中国の多面的取り組み:最近の動向の分析―台湾専門家論説」(The Prospect Foundation(台湾遠景基金會)、February 15, 2024)

 2月15日付の台湾のシンクタンクThe Prospect Foundation(台湾遠景基金會)のウエブサイトは、台湾中山大學中國與亞太區域研究所副教授黎寶文博士の‶China’s Multifaceted Approach to the Taiwan Strait: An Analysis of Recent Developments ″と題する論説を掲載し、ここで黎寶文は中国が台湾に対しグレーゾーン行動等で圧力をかけ続けるものの、今年は米国大統領選の行方を見ることから緊張は抑制されたものになると思われ、国際社会は台湾海峡での事態拡大防止に努めるべきであるとして、要旨以下のように述べている。
(1) 1月13日に行われた台湾総統選挙は、2024年、世界で最初の選挙となった。1月15日には、ナウル共和国が台湾との国交断絶を発表し、中国との関係回復を選択した。続いて1月30日、中国は台湾との事前協議や通告なしで、中国と台湾の中間線付近の西を通るM503ルートに北行き・南行き両方の航空路を開設する意向を表明した。これらは、法的および安全保障面で台湾に圧力をかけ、現状を変更しようとする中国政府の戦略を浮き彫りにしており、これが2024年の中国の支配的な戦略であるように見える。台湾の国家としての国際的地位を排除し、台湾海峡での一連のあいまいな行動を通じて圧力と強制を常態化するという二重の目的がある。
(2) しかしながら中国の圧力戦略には限界がある。第1に、台湾国民と国際社会の双方から反発を買うことなく台湾を罰することは困難である。これは、台湾海峡の現状維持と台湾の民主主義体制および政治的自治を維持しようとする台湾人の決意を示した台湾総統選挙の結果からも明らかである。第2に、米国では、他の問題では二極化しているにもかかわらず、中国との戦略的対立に関しては超党派の合意が得られており、中国の軍事侵略を次期米大統領選の焦点にすることは、賢明ではない。その結果、中国による多少の事態拡大や強制は予想されるものの、2024年は緊張が抑制される可能性が高い。
(3) 2024年の米大統領選挙は、中国の行動を抑制すると同時に、強制や侵略に直面した場合の台湾の脆弱性も懸念され、予測不可能である。第一に、大統領選挙の熱気は、政策決定者に国内政治と選挙の勝利を最優先事項とさせている。こうした国内重視の姿勢は、台湾海峡における中国の行動等の対外課題への米国の対応を遅らせるなど影響を与える可能性がある。第2に、中国の軍事侵略の脅威は、選挙期間中の米国の政策決定者にジレンマを突き付ける。侵略行為があれば、米国の主要政治陣営が、団結して中国を罰する可能性が高い。この統一戦線は、緊張緩和と紛争予防を重視する従来の外交の枠を超えるかも知れない。第3に、米国の大統領にTrump前大統領が再選される可能性があるとの見通しは、現在の対中国戦略の継続と有効性に同調する国々や台湾を悲観的にさせている。米国の外交政策の将来が不確実なため、地域の力学がより複雑になり、台湾とその同盟国の戦略策定に影響を与えている。こうした不確実性を踏まえ、中国は台湾への圧力を維持しつつ、米大統領選の結果が明らかになるまで慎重を期す戦略的取り組みを採用している。中国はこの過渡期の脆弱性を利用し、米国の新政権が誕生する前に戦略的優位を固める可能性もある。
(4) 最近、中国との国交を再開した国々には、顕著な傾向が現れている。2021年のニカラグアや2019年のソロモン諸島等は、中国政府の「一つの中国」の原則を認めただけでなく、国連決議第2758号への支持を表明したが、しばしば決議の意義を誤って伝えている。この動きは、中国が国際法の曖昧さや抜け穴を利用し、台湾統一の目標を正当化するための国際的支持を得ようとしていることを示している。国連決議第2758号を強調することで、中国は「一つの中国」原則を制度化し、2国間の合意からより高い多国間の合意による正当化に移行しようとしている。国連決議第2758号の再解釈は、中国が1971年以降の現状を容認せず、将来の軍事介入に向け法的根拠を確立したい願望を示している。国連決議第2758号を根拠とする中国の法的戦法は、台湾の怒りを買い、米大統領選の争点になることを避けて、慎重に運用されている。中国の法的取り組みは今後も続くと予想され、台湾に同調する国々は、中国の主張に異議を唱えるべく、対抗策を練っている。
(5) 有効な国境線は民主主義国家にとって極めて重要で、市民権や管轄権の識別に役立ち、また、台湾とその同盟国に中国の軍事侵略に対応する時間の確保を可能にする。中国は台湾の防空識別圏(ADIZ)と台湾海峡の中央線を侵犯し続けており、現状に対する直接的な侵害と認められている。中国は、台湾の民進党政権等に脅威を与える一方で、米国との戦争の閾値を下回るよう慎重に調整されたグレーゾーンの各種行動を採用している。最終的目標は、台湾の権威を物理的・法的に否定するか、台湾に「一つの中国」原則を受け入れさせ、台湾海峡を中国の内海とすることである。とはいえ、頼清徳新総統は5月20日の就任演説で、台湾国民の合意として、台湾に対する中国の領有権主張を拒否すると思われ、中国が強制的に台湾から国家としての立場を奪う可能性は低い。実現可能な代替戦略として、グレーゾーン行動を通じて台湾との国境線を曖昧にし続けることが予想される。さらに中国は、2国間貿易の武器化、軍事力の展開の強化、米国に対する懐疑論の操作など台湾の防衛能力と意欲を阻害する手段に訴えるかもしれない。
(6) 台湾海峡は地政学的な焦点として浮上しており、最近の動向は中国の多面的戦略を浮き彫りにしている。外交や法的駆け引き、グレーゾーンでの行動などが複雑に絡み合っていることは、現状を徐々に変えようとする中国の意図を表している。とはいえ、台湾総統選の結果や米大統領選をめぐる不確実性は、台湾海峡における中国の目的追求に制約を与えている。事態拡大や強要の可能性はあるものの、今年は緊張が抑制される可能性が高く、国際社会は事態拡大を防ぎ、この地域の安定を維持するための外交努力を行う必要がある。
記事参照:China’s Multifaceted Approach to the Taiwan Strait: An Analysis of Recent Developments

2月15日「日本による東南アジアへの武器移転の意義―シンガポール東南アジア問題専門家論説」(FULCRUM, February 15, 2024)

 2月15日付のシンガポールのシンクタンクThe ISEAS -Yusof Ishak Instituteが発行するウエブサイトFULCRUM は、同Institute上席研究員William Choongの“Japan’s Arms Transfers to Southeast Asia: Upping the Ante?”と題する論説を掲載し、そこでWilliam Choongは、日本政府が2023年に「政府安全保障能力強化支援」を開始したことを受け、その背景と意義について、要旨以下のように述べている。
(1) 2023年、日本政府は平和主義的な制約を乗り越え、近隣諸国への兵器輸出を解禁した。それに加えて、防衛基幹施設などの安全保障能力の提供も今後行われるようになるかもしれない。これは、2022年の国家安全保障戦略で初めて構想され、2023年4月に提出された「政府安全保障能力強化支援」(以下、OSAと言う)に基づくものである。これは、中国の台頭を念頭に、地域の国々の安全保障能力を強化し、抑止力を改善することを目指すものである。
(2) OSAは、法の支配に基づく平和と安定の確保、人道的活動、国際平和維持活動という3つの分野で活用される。2023年11月と12月に、バングラデシュ、フィジー、マレーシア、フィリピンの4ヵ国に約20億円を提供した。フィリピンには沿岸レーダーシステム(6億円)が提供され、2024年度には50億円が支出される見込みである。
(3) OSAの計画が構想されるまでには長い年月がかかった。日本の平和主義と近隣諸国の軍事力強化の間には常に緊張関係があったのである。政府開発援助(以下、ODAと言う)は、原則的に他国に軍事物資を移転するのには利用はできない。しかし日本政府はODAを通じて東南アジア諸国に海上保安庁の巡視船をひな型とする44m巡視船を供与し、フリゲートの売却を交渉しつつある。ただし、兵器輸出は禁止されているために「共同開発」という名目のもとである。こうした「ごまかし」によって、日本は近隣諸国の行動能力の強化を進めてきた。
(4) OSAは、より直接的に、東南アジア諸国に防衛装備や関連基幹施設を提供する方法である。ただしそれは、近隣諸国の抑止力強化という目的に対しては控えめで、救助、運輸、警戒、哨戒、機雷掃海の分野に限られている。攻撃能力を持つ哨戒艦などの輸出に関しては国内で議論があった。また、OSAは防衛省による運用ではなく、外務省の部局による運用であり、その意味で手続き上の障壁もある。
(5) 2023年度の20億円という予算は、日本のそれまでのODA支出と比べるとかなり控えめである。たとえばフィリピンに巡視船10隻を供与でした時の総額は127億円であったし、2020年にベトナムに6隻の船舶を提供したときの総額は366億円であった。他方、OSAによって、たとえばフィリピンなどに、軍民両用の空港や港湾開発の支援を行うことができるのは明るい材料である。これによって自衛隊の利用がより容易になる。
(6) そのための条件も整えられている。2023年2月には日本とフィリピンは合意を結び、自衛隊の水陸機動団が人道支援・災害救援活動のためにフィリピンの複数の場所を利用することが認められた。2014年にフィリピンと米国は防衛協力強化協定を結んでいるが、それと同様、中国の抑止力ともなり得る。フィリピンへの水陸機動団の派遣が実現すれば、それは歴史的なことであり、日本が地域の安定に貢献する積極的役割を果たすことができるという証明になる。
記事参照:Japan’s Arms Transfers to Southeast Asia: Upping the Ante?

2月16日「台湾の抑止力を高める同盟関係―台湾立法委員論説」(China Brief, The Jamestown Foundation, February 16, 2024)

 2月16日付の米シンクタンクThe Jamestown FoundationのウエブサイトChina Briefは、台湾の民主進歩党所属で、立法委員である王定宇の“Fortifying Taiwan: Security Challenges in the Indo-Pacific Era”と題する論説を掲載し、米国が台湾への武器売却をケース・バイ・ケースで行うように変更したことと、抑止力として台湾と民主主義国家の同盟を強化することの重要性について、要旨以下のように述べている。
(1) 米国はTrump、Biden両政権において、台湾への武器売却を従来の一括形式から個別的に決定する方式に変更した。これにより、台湾の防衛所要や地域の安全保障上の課題に即時に対応できるようになった。この積極的かつ重要な転換は、台湾が十分な防衛能力を持つだけではなく、他の米国の同盟国と同様の待遇を与えられることを保証するものである。
(2) 最近の武器売却の遅れは、ウクライナ戦争と感染症の世界的拡大によるサプライチェーンの滞りによるものである。この戦争は世界各国に安全保障戦略の見直しを促している。非対称の軍事力を構築することは極めて重要であり、台湾の戦略目標に合致する。台湾を防衛するということは、兵器の調達だけでなく、それを国内で製造する能力も含む重要な責任である。それには、防衛だけでなく抑止力としても十分な戦力を確保するための潜水艦や長距離精密打撃兵器を国産化することも含まれる。
(3) 強固な抑止力はまた、強固な同盟関係にも依拠している。したがって、台湾と民主主義の同盟国との関係は揺るぎないものでなければならない。しかし、具体的な有事計画を策定し、検証し、演習を通じて調整しなければならない。協力関係は公式であっても、非公式であってもよいが、少なくとも目に見える形でなければならない。将来に備え、台湾と米国のような志を同じくする提携国は、指揮、制御、通信、コンピューター、情報、監視、偵察(C4ISR)の分野でより広範囲に協力すべきである。習近平国家主席の下で、中国体制内の意見の多様性は徐々に失われつつある。このことは、中国以外の国々に問題を示すと同時に、機会でもある。民主主義同盟内での協力を通じて、台湾は中国政府に明確な意図を伝えることができ、戦略的あいまいさから生じ得る誤った判断を避けることができる。特にC4ISRの領域では、高官級の協力が迅速かつ正確なメッセージの伝達を促進し、地域の平和と安定を維持する。
(4) 台湾は1年間の兵役義務復活を決定した。この政策は、国防力を強化すること、そして、米軍やNATOの取り組みから影響を受けて、現実的な戦闘訓練を強化することを目的としている。兵士の福祉を向上させ、名誉を重んじる意識を強化することは、より強力な軍隊の構築に貢献するだろう。
記事参照:Fortifying Taiwan: Security Challenges in the Indo-Pacific Era

2月17日「NATOの使命は終わっていた―米専門家論説」(Real Clear Defense, February 17, 2024)

 2月17日付の米国防関係ウエブサイトReal Clear Defenseは、米Wilkes Universityの政治学非常勤教授で弁護士Francis P. Sempaの” A World Without NATO”と題する論説を掲載し、ここでFrancis P. SempaはNATOが恒久的な同盟を意味するものではなく、1991年のソ連崩壊によりその役目は終わっており、米国は西太平洋に目を向けるべきであるとして、要旨以下のように述べている。
(1) 1848年3月1日、英国の外務大臣で後に首相となったPalmerston卿として知られるHenry John Templeは、「英国にとって永遠の同盟国も永遠の敵もない。我々の利益は永遠にして永久であり、その利益に従うことが我々の義務である」と演説した。その52年前、George Washington米大統領は、「外国のいかなる部分とも永久同盟を結ばないことが、我々の真の政策である。米国が立派な防衛態勢を維持するならば、緊急事態のための一時的な同盟関係は安全で信頼できる」と演説している。これは1991年にソ連が崩壊するまで、英米の外交政策の指針となっていた。
(2) NATOは、恒久的な同盟を意図したものではなかった。NATOは第2次世界大戦によるヨーロッパの荒廃を受け、ユーラシア大陸を横断するソ連・共産主義の拡大の脅威に直面して1949年に結成された。当初はフランス、イタリア、ベルギー、ルクセンブルク、デンマーク、ノルウェー、オランダ、ポルトガル、英国、アイスランド、カナダに、核兵器を含む米国の安全保障の傘を拡大し、3年後にトルコとギリシャが加盟、1955年に西ドイツ、1982年にスペインが加盟した。この同盟の目的は、ソ連が西ヨーロッパを軍事的に制圧するのを防ぐことであり、1991年にソ連が崩壊したことで、本来の使命は終わっていた。
(3) 巨大な官僚機構がそうであるように、NATOはその存在を継続し、拡大する別の理由を求めた。米国はClinton政権時代にバルカン半島に介入し、2001年9月11日の米国同時多発テロ後にはアフガニスタンに介入した。さらに2011年にリビアに介入し、Qaddafi政権を打倒し、イラクではイラク治安部隊を訓練している。そして現在NATOは、西太平洋と台湾に対する中国の脅威にまでその範囲を広げようとしている。
(4) 新たな任務と活動と並行して、NATOは倍以上に拡大した。ソ連崩壊後も新たに16ヵ国が加盟し、NATOはロシアのヨーロッパ国境に近づいていった。これをGeorge F. Kennanは「冷戦後の全時代における米国政策の最も致命的な誤り」と評した。それは思い上がりと無謀な外交である。George F. Kennan は、NATOの拡大がロシアのナショナリズムと帝国主義の最悪の側面を復活させることを予見していた。そしてそのとおりになった。ウクライナ戦争の悲劇は、NATOの野放図な拡張に根ざしている。新規加盟国と任務の拡大に伴い、NATOの予算も拡大し、2024年の民間予算は約5億7,000万米ドル、軍事予算は約26億米ドルになっている。NATOは、当初の同盟をはるかに超えたものに変貌している。
(5) 2022年にロシアがウクライナに侵攻したことから、NATOは西ヨーロッパ諸国を防衛するためにまだ必要と主張する人は多い。しかし、1949年の西ヨーロッパは第2次世界大戦の荒廃から立ち直りつつある時代で、ソ連軍はドイツの東半分を含む東ヨーロッパと中央ヨーロッパに進駐していた。そして、中央ヨーロッパと東ヨーロッパを共産化し、冷戦期にはヨーロッパにおける通常戦力の優位を享受していた。それは米国の核の傘によって相殺されていたが、ヨーロッパを制圧するというソ連の脅威は現実のものだった。
(6) 1991年以降、ソ連、そして後にロシアによるヨーロッパ制圧の脅威は後退し、やがて消滅した。ウクライナ東部の数州を維持するのに苦労しているロシア軍が西ヨーロッパに脅威を与えるという考え方は、ロシアの核兵器を除けば、馬鹿げている。今日、NATOに加盟しているヨーロッパの国々の経済力と人的資源を合わせると、ロシアのそれを凌駕する。英国とフランスが保有する550発の核兵器は、ロシアよりはるかに少ないが、取るに足らない抑止力ではない。米国を除いた30ヵ国、間もなく31ヵ国で構成される欧州NATOは、ロシアに匹敵する抑止力を増強する余裕がある。
(7) 何十年もの間、NATO加盟国は自国の安全保障を米国の軍事力に依存しながら、広大な福祉国家を作り上げてきた。ソ連の支配という脅威が1991年に終わった時、NATOの存在理由も終わった。ロシアのウクライナ侵攻は、米国の重要な国家安全保障上の利益には影響しない。一方、西太平洋では嵐が吹き荒れ、米国の国家安全保障上の重大な利益に影響を及ぼしている。今日、米国の最も重要な同盟関係は日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、台湾、そしてできればインドとのものであり、インド太平洋にある。すでにNATOはその使命を果たしたのであって、恒久的な、あるいは永遠の同盟を意味するものではなかった。Palmerston卿とGeorge Washingtonは正しかったのである。
記事参照:A World Without NATO

2月19日「モルディブをめぐるインド・中国の対立―インド安全保障専門家論説」(Commentary, RSIS, February 19, 2024)

 2月19日付のシンガポールのThe S. Rajaratnam School of International Studies(RSIS)のウエブサイトRSIS Commentaries は、ムンバイを拠点とするBusiness India 編集長Sarosh Banaの“India, China Feud over Maldives”と題する論説を掲載し、そこでSarosh Banaはモルディブにおいて親中国派の大統領が就任して以降、同国をめぐるインドと中国の緊張が高まっているとして、要旨以下のように述べている。
(1) インド洋の小さくも、戦略的に重要な島嶼国モルディブをめぐり、インド・中国情勢が変転している。2023年11月にモルディブで大統領選挙が行われ、中国の支援を受けたMohamed Muizzuが大統領に就任したのである。モルディブは重要なシーレーンの上に位置し、インドの海外貿易全体の約5割、エネルギー輸入に関しては約8割がそこを通過する。またインドの最南端部から623kmしか離れていない。
(2) 中国にとってモルディブは、インドを包囲する民間・軍用港湾網戦略である「真珠の数珠」において決定的な位置を占める。モルディブは、中国人民解放軍海軍の基地が建設されたパキスタンのグワダルや、債務不履行に陥ったスリランカが中国に99年間貸し出すことになったハンバントタと連携することができるのである。
(3) Mohamed Muizzuは大統領就任の翌日に、それまでの「インド第一」政策を放棄し、自国からインドの軍人を撤退させるよう要請した。この10年間でインドはモルディブに対し、インド製のヘリコプターや航空機を寄付し、何百もの医療的避難や人道支援作戦を展開し、また警察関連施設なども建造した。交渉の後、インド軍人の全面的な撤退は回避された。他方、Mohamed Muizzuは大統領就任後最初の外遊先として、伝統的に最初であったインドではなく、中国を選択した。訪中の間、Mohamed Muizzuは投資や基幹施設などに関する20にものぼる合意を結んでいる。Mohamed Muizzuによる中国接近姿勢に対して、モルディブ国内でも批判が多く、野党は不信任決議を突き付けることを決めている。
(4) インドは、モルディブの首都マレから近く、中国企業に50年間貸与されている無人島のフェイドゥ・フィノルフ島が2.5倍近く拡張されることを懸念している。そこが中国の恒久的な軍事基地になり、原子力潜水艦が停泊することになるかもしれない。また、中国は一帯一路構想を打ち出してからモルディブへ多額の投資を行っており、やはりマレに近いフルフレ島の国際空港の拡張などが試みられている。インドは上記以外にもモルディブにさまざまな援助を行っており、たとえば「グレーター・マレ・コネクティビティ」計画に5億ドル投じ、マレと近隣の島々をつなぐ橋梁や舗装道路を建造した。
(5) 中国はインド洋において定期的に調査船や水中無人機(UUV)を派遣し、海中・海底地図を作成することで、インドに対する優越を確立しようとしている。そのなかで中国の調査船がモルディブに停泊することにインドは腹をたててきた。それに対しモルディブは、その調査船はモルディブ周辺で調査を行っていないと主張している。
(6) 防衛と安全保障はインドとモルディブをつなぎ止めてきた要素である。インド外相のSubrahmanyam Jaishankarは、インドが近隣諸国に対して強い立場にあるため、地域の紛争に巻き込まれる可能性はあるが、すべての関係各国は「成熟した形では話し合う」べきであると述べている。
記事参照:India, China Feud over Maldives

2月20日「フーシ派の攻撃に対抗することがインド海軍の戦略的役割である―インド専門家論説」(Commentary, RSIS, February 20, 2024)

 2月20日付のシンガポールThe S. Rajaratnam School of International Studies(RSIS)のウエブサイトRSIS Commentaryは、海軍問題、海洋安全保障問題等に豊富な研究実績を持つ地政学および安全保障問題専門家Saloni Salil の“Countering Houthi Attacks: The Indian Navy’s Strategic Role”と題する論説を掲載し、ここでSaloni Salilはフーシ派と紅海の国際海運との間で進行中の敵対行為は地域を超えて事態が拡大する可能性があるため、Indian Navyは重要な海上交通路とチョークポイントを保護し、地域の安定に貢献するという戦略的役割を担っているとして、要旨以下のように述べている。
(1) イランが支援するイエメンの反政府勢力フーシ派は自分たちのことを「イスラエル、米国、そしてより広範な西側諸国に対するイラン主導の抵抗枢軸の一部である」と宣言しており、紅海に大混乱をもたらし、世界貿易を混乱させ、地域の海上安全保障を脅かしてきた。2023年11月19日、フーシ派の特殊部隊は貨物船を奪取し、乗組員は拘束された。フーシ派による攻撃は30件以上に拡大し、そのうち約13件はミサイルや無人機によるものである。最近では2024年2月12日に米国の貨物船が攻撃され、軽微な損傷を受けた。これらの事件は、世界貿易に重大な混乱をもたらし、世界のサプライチェーンを脅かし、エネルギー、食料、その他の商品の価格を上昇させ、紅海に大規模な軍事危機を引き起こすという二重の影響をもたらした。
(2) イエメンの通信事業者が紅海の海底ケーブルを妨害するテロリスト集団の計画を警告するなど、国際的なインターネット網と金融データ送信に対するフーシ派の脅威が高まっている。2024年2月4日、あるイエメンの総合電気通信会社は「世界のインターネット網の約17%が紅海を通っているが、フーシ派はその国際海底ケーブルを標的にするという脅迫を行っている」と非難した。紅海における海洋安全保障は極めて重要であり、その欠如は沿岸国のみならず世界的にも甚大な結果をもたらす。貨物分析会社Vortexaによると、スエズ運河は2023年上半期に1日あたり約900万バレルの石油を輸送した。米格付け会社S&Pの報告によると、ヨーロッパ、中東、北アフリカに輸入される製品の約15%は、アジアと湾岸諸国から海路で運ばれていた。この数字には、精製油の21.5%、原油の13%以上が含まれている。紅海は世界貿易にとって重要である。紅海は、欧州とインド洋、インド太平洋地域を結ぶ重要な海路として機能している。世界で最も忙しい航路の1つであるスエズ運河もある。紛争や封鎖など、紅海の交通の混乱は世界貿易に大きな影響を与える可能性がある。(3) 紅海の現在の地政学的環境に対する国際社会の反応はまちまちである。2023年12月、米国は紅海の航行の自由を守ることを目的とした多国籍海上連合「プロスペリティ・ガーディアン作戦」を宣言した。英国やシンガポールなど20カ国以上が参加しており、中東からの参加国はバーレーンのみである。英国は同海域に3隻の艦艇を配備している。EUは、明確な海洋作戦を開始する。2024年1月10日、国連安全保障理事会は決議第2722号を採択して、フーシ派の攻撃を非難し、攻撃をやめるよう要求し、航行の自由の権利を認め、フーシ派に対する武器禁輸を強調した。中国とロシアは棄権し、米国の対応はイスラエルとハマスの紛争を悪化させる危険性があり、停戦によって解決すべきだと主張した。英国と米国の代表はこの決議を支持した。2024年1月11日、米国と英国はイエメンのフーシ派拠点に空爆と海軍による攻撃を開始し、1月22日にもさらなる攻撃を行ったおり、2024年1月11日以来、米国はフーシ派に対し8回の攻撃を行っている。
(4) インドにとって、アデン湾を経由する貿易に支障をきたさないことは極めて重要である。Indian Navyは、相次ぐ海賊の襲撃に積極的かつ効果的に対応しており、人質救出の頻度は例年に比べて増加している。インドは、フーシ派による攻撃に重点を置いた米国主導の紅海における任務部隊には参加しなかったが、海賊に対処するため紅海東部に少なくとも12隻の艦艇を配備し、これはこの海域における過去最大規模の配備であり、250隻以上の船舶を臨検した。2023年12月、Indian Navyはブラモス対地巡航ミサイル、対空ミサイル、対潜ヘリコプター、シーガーディアン・ドローンを装備した艦艇を少なくとも4隻およびP8I哨戒機を展開した。2024年1月、Indian Navy の哨戒艦「スミトラ」は、ソマリア東海岸沖で海賊に襲われた船からパキスタン人乗組員19人を救助するなど最近の商船への攻撃を受けて、Indian Navyはアラビア海とアデン湾の最前線に駆逐艦とフリゲート艦を配備し、監視装置を大幅に強化した。 長距離海上哨戒機と遠隔操縦航空機による空中監視が強化され、完全な海洋状況把握が提供されるようになった。Indian Navyは、地域の安全保障提供者としての役割において、自国の利益を守るだけでなく、地域の責任を引き受ける能力と用意があることを表明することで、近隣の利害関係者に信頼を植え付ける能力を徐々に示している。Indian Navyは、その戦略的展開、外交的地位、地域安全保障への関与により、インド洋地域において引き続き重要な役割を果たしている。
(5) イスレエルとハマスの間で、そしてフーシ派と紅海の国際海運との間で進行中の敵対行為は、地域を超えて事態が拡大する可能性がある。そうなれば、この地域の海洋安全保障と世界経済への影響と影響は広範囲に及ぶだろう。このことは、当面の多面的な課題に取り組むために、持続的な国際的関心と協力的な努力が必要であることを強調している。この点において、Indian Navyは重要な海上交通路とチョークポイントを保護し、地域の安定に貢献する重要な役割を担っている。
記事参照:Countering Houthi Attacks: The Indian Navy’s Strategic Role

2月20日「米軍優越後の時代における部隊設計の再検討―米国防問題専門家論説」(Hudson Institute, February 20, 2024)

 2月20日付の米保守系シンクタンクHudson Instituteのウエブサイトは、同Institute上席研究員Bryan ClarkおよびDan Pattの“Hedging Bets: Rethinking Force Design for a Post-Dominance Era”と題する論考の概要を掲載し、両名は米軍の軍事的な優越が終わりを迎えつつある中、U.S. Department of Defenseは抑止力を維持し、台湾侵攻などの有事に対処するため、従来の戦力に加えて危険性を分散するヘッジ戦力を整えるべきであるとして、要旨以下のように述べている。
(1) 第2次世界大戦以降の米国は、強力な同盟網と確固たる研究開発の基盤を元に、潜在的かつ実際の敵対国に対して圧倒的な軍事力の優越を誇ってきた。ベトナムやイラク、アフガニスタンでは米軍は成功したと言えないが、専門家は概してその失敗の原因を、米軍の行動能力における不足ではなく戦略の欠如に見いだしてきた。
(2) 米軍の優越の時代は早晩終わると予想されている。現在、さまざまな国家ないし非国家主体が、冷戦期のU.S. Department of Defenseが先陣を切っていたセンサー、精密兵器、ネットワークを活用するようになった。特に中国があらゆる領域で精密攻撃のネットワークを展開している。そのため米軍は、大抵のシナリオにおいて相手よりも優位を保つことが想定されているが、中国による突然の台湾侵攻など、特定の事態においては不利な状況に置かれ、受け入れ可能な犠牲の範囲内で成功することが難しくなると予想されている。
(3) 本研究が検討するのは、台湾侵攻などに対処する際にU.S. Department of Defenseが直面する諸課題である。それを検討したうえで、U.S. Armed Forcesの抑止力を維持するための戦略的、作戦上の取り組みを提案する。最初に、U.S. Department of Defenseがこれまで、軍事的優越を取り戻すために活用した特殊兵器や戦力について説明する。たとえば冷戦初期、中欧においてソ連の数的優位が確立していた時代に、米軍はソ連のヨーロッパ侵攻に対抗するヘッジ(リスク分散)戦力として核兵器に依存した。
(4) 第2章では、こうした歴史的事例に基づき、ヘッジ戦力について定義し、それらがいかに、起こりそうにはないが重大な結果をもたらしうるシナリオにおけるリスクを減らすかを論じる。現在の方向性において、U.S. Department of Defenseは台湾侵攻などの有事に対処する際、中東における航路の防護やロシアによるNATO侵攻への対処のための戦力を犠牲にすることになるであろう。ヘッジ戦力はそうしたリスクを回避し、米軍の柔軟性を高めるためのものである。第3章は、突然の台湾侵攻に対処するためのヘッジ戦力について論じ、第4章でその効果を評価する。ヘッジ戦力は既存の戦力に取って代わるのではなく、それを補完するものである。無人システムが中心となるであろう。
(5) U.S. Department of Defenseの優越が失われつつあるなか、優越を取り戻して紛争を抑止するために、U.S. Department of Defenseは順応性を高める必要がある。ヘッジ戦力はU.S. Armed Forcesの損失を減らし、中国などの侵略者のリスクを高められる。ヘッジ戦力の発展と展開には課題が伴う。たとえば台湾に対応するヘッジ戦力の拠点はワシントンから遠く離れており、支援部隊を持たないため、U.S. Department of Defenseの幹部は継続的に注意を払う必要がある。最近の調達と予算編成をめぐる改革は、ヘッジ戦力に関する創造的な取り組みを追求する機会を提供している。この機会を活用できなければ、U.S. Department of Defense は多極化する安全保障競争に取り残されるだろう。
記事参照:Hedging Bets: Rethinking Force Design for a Post-Dominance Era

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書

(1) UNDERSTANDING THE DETERRENCE GAP IN THE TAIWAN STRAIT
https://warontherocks.com/2024/02/understanding-the-deterrence-gap-in-the-taiwan-strait/
War on the Rocks, February 12, 2024
By Dr. Jared M. McKinney, an assistant professor of international security at the Air War College at Air University, Maxwell Air Force Base, Alabama
Dr. Peter Harris, an associate professor of political science at Colorado State University and a non-resident fellow with Defense Priorities
Together, they are the author of Deterrence Gap: Avoiding War in the Taiwan Strait (Strategic Studies Institute, U.S. Army War College, January 2024)
2024年2月12日、米Air War College at Air UniversityのJared M. McKinney助教授と米Colorado State University のPeter Harris准教授は、米University of Texasのデジタル出版物War on the Rockに" UNDERSTANDING THE DETERRENCE GAP IN THE TAIWAN STRAIT "と題する論説を寄稿した。その中で両名は、かつて、北京が台湾統一を強制するために武力を行使することはないと過信されていたが、しかし今日、軍事的な勢力均衡は決定的に変化し、遠くない将来、能力の観点から言えば、水陸両面による侵攻が可能になっており、中国の侵攻の可能性が高くなったというのは、もはや常識のようなものだと述べた上で、もちろん、台湾をめぐる戦争がいつ、なぜ引き起こされるかを確実に言い当てることのできる専門家はいないが、しかし、台湾をめぐる地政学的状況の変化は無視できないと指摘している。そして両名は、台湾の政治的地位をめぐる過去の危機が侵略を引き起こすことなく展開できたのは、台湾海峡を挟んだ抑止力が強かったからにほかならないが、抑止力が弱まった今、現在あるいは将来の危機が拡大して本格的な戦争に発展するのを防ぐ保護手段はほとんどないと悲観的に評した上で、台湾が安全保障を取り戻すためには、抑止力の間隙を埋め、危機が発生する確率を下げる必要があると主張している。

(2) China’s Shipyards Are Ready for a Protracted War. America’s Aren’t.
https://www.wsj.com/world/china/chinas-shipyards-are-ready-for-a-protracted-war-americas-arent-d6f004dd
Wall Street Journal, February 13, 2023
2024年2月13日付けの米日刊紙Wall Street Journal電子版は、“China’s Shipyards Are Ready for a Protracted War. America’s Aren’t.”と題する記事を掲載した。その中で、①中国は、世界の造船所となることによって、その影響力と軍事力を拡大しようとしている。②2023年、世界の商業造船生産量の半分以上が中国によるもので、大きな差をつけて世界首位の造船所となった。③欧米の造船所は縮小し、ヨーロッパは世界の生産量のわずか5%を占めるにすぎず、米国はほとんど貢献していない。④この造船帝国は、中国が内向きな大陸国家から海洋国家へと歴史的な変貌を遂げたことの象徴である。⑤中国の巨大造船会社は、しばしば中国海軍の艦艇を建造しており、中国はそのすべてを活用し、保有数で世界最大の海軍を築き上げた。⑥戦時の割合で建造できる規模であれば、生産を迅速に加速させ、失われた艦船を交換し、損傷した艦船を修理することができるだろう。⑦今日、米国の造船所は平時の需要に追いつくのに苦労しており、潜水艦は保守整備の遅れで立ち往生し、新造船は予定より遅れている。⑧戦争が長期化する可能性がある中、米国の兵器工場は、ウクライナの戦場に追いつくのに苦労しており、軍需品製造企業や造船所も、中国との戦争には準備ができていない。⑨中国海軍は、370隻の戦闘艦を保有しているが、その数は2030年までに435隻に増えると予想され、世界最大の海警総隊や漁船団、大規模な商船隊も建造されている。⑩U.S. Navyは今後数年間で、現在の292隻から同じ規模に留まるか、あるいは縮小すると予想されており、軍を支援する兵站支援・海上輸送船団も老朽化している。⑪Carlos Del Toro米海軍長官は、米国の造船問題の原因究明を指示し、「目立った商業海洋大国であることなくして、偉大な海軍大国が存在したことはない」と語っているといったことが述べられている。

(3) The Taiwan Catastrophe
https://www.foreignaffairs.com/united-states/taiwan-catastrophe
Foreign Affairs, February 16, 2024
By ANDREW S. ERICKSON is Professor of Strategy in the Naval War College’s China Maritime Studies Institute 
GABRIEL B. COLLINS is a Fellow at Rice University’s Baker Institute for Public Policy, Center for Energy Studies
MATT POTTINGER served as U.S. Deputy National Security Adviser from 2019 to 2021
2024年2月16日、米Naval War Collegeの China Maritime Studies Institute 教授ANDREW S. ERICKSON、米Rice Universityの Baker Institute for Public Policy研究員GABRIEL B. COLLINS、そして2019年から2021年までU.S. Deputy National Security Adviser を務めたMATT POTTINGERは、米Council on Foreign Relationsが発行する外交・国際政治専門の隔月発行誌Foreign Affairsのウエブサイトに" The Taiwan Catastrophe "と題する論説を寄稿した。その中で3名は、ワシントンとその同盟国は今後10年間、多くの地政学的大惨事に直面する可能性があるが、中国が台湾を併合または侵略した場合に起こるであろう事態に比べれば、ほとんどすべては大したことではないとした上で、具体的な事柄として、①台湾が中国に服従することは、地域の民主主義の恩恵を破壊する。②台湾は高度なマイクロチップの主要生産国であるため、世界の他の地域にとって経済的に極めて重要なことから、台湾をめぐる戦争は、世界恐慌を引き起こしかねない。③インド太平洋全域に広がる米国の同盟国、すなわち米国の支援に安全保障を依存している国々の幅広いネットワークが存在しており、中国が台湾を占領すれば、米国の安全保障が信用を失い、各国が独自の核兵器開発を競い合うことになりかねないなどを挙げている。そして3名は、近年、中国の習近平国家主席は、台湾の地位問題を解決しようとする強い決意を示しており、実際、急激な軍備増強を命じ、2027年までに台湾統一のためのあらゆる選択肢を提供できるよう中国軍に指示していると指摘した上で、間違えてはならないことは、アジアにおける民主主義の未来に関心があろうとなかろうと、あるいは現実政治における冷徹な算段のみに思いを馳せようとそうでなかろうと、台湾の運命は非常に重要だと主張している。