海洋安全保障情報旬報 2023年11月1日-11月10日

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11月2日「中国の強制に対抗するためにASEANは団結を―フィリピン国営紙報道」(The Manila Times, November 2, 2023)

 11月2日付のフィリピン国営日刊紙The Manila Times電子版は、“Asean should unite vs Chinese coercion”と題する記事を掲載し、米上院議員が中国に対抗するためにASEAN諸国の団結を訴えていることについて、要旨以下のように報じている。
(1) フィリピンと中国の海洋における紛争が深まる中、ASEANは中国が強める干渉と威圧に対抗するために団結すべきだとしてU.S. Senate Foreign Relations Committee(米上院外交委員会)の有力議員Jim Risch上院議員は、「ASEAN諸国は中国による内政干渉、強圧的な経済慣行、根拠のない領有権主張、ASEAN分断への取り組みに焦点を当てるべきである…これらは米国も直面している困難な課題である…ASEANの中心性はインド太平洋における米国の取り組みの重要な柱である。対照的に中国は、その中心性を弱めるために、ASEANによる合意への関与に付け込んでいる。それはこれからも変わらない。そのため、中国の強要と分裂の激化に直面して、ASEANが一致団結して立ち向かうことが非常に重要である。」と訪問先のASEANの記者団に述べている。
(2) 南シナ海問題については、Jim Risch議員は特に中国と対峙するフィリピンと米国の緊密な安全保障協力を引き合いに出して、「ASEANの権利主張国が外交的に中国を押し返そうとする意欲が非常に重要だ」と述べ、ASEAN諸国はまた、海洋状況把握の向上、共同哨戒、EEZの経済開発に焦点を当てるべきだと付け加えている。
(3) 2023年10月31日、中国はフィリピンがスカボロー礁に不法侵入したと非難して、中国軍南部戦区報道官の田軍里空軍上校は、中国の海軍と空軍がPhilippine Navyのコルベット「コンラッド・ヤップ」を「追跡、監視、警告、制限」したと述べ、フィリピンが「中国の主権と国際法、国際関係を支配する基本的規範を著しく侵害した。誤解と誤算を引き起こす可能性が高い」と述べている。
(4) これに先立ち、Jim Risch議員は、Roger Wicker、Marco Rubio両上院議員とともに、西フィリピン海(南シナ海)の係争海域で中国海警とPhilippine Coast Guardが衝突を繰り返した後、フィリピンを支援するよう促す書簡をJoe Biden米大統領に送っている。
記事参照:'Asean should unite vs Chinese coercion'

11月3日「スカボロー礁でのフィリピンの補給任務に他国の護衛は無用―フィリピン国営日刊紙報道」(The Manila Times, November 3, 2023)

 11月3日付のフィリピン国営日刊紙The Manila Times電子版は、“‘No need for PH allies to join resupply trips’”と題する記事を掲載し、中国から嫌がらせを受けているスカボロー礁へのArmed Forces of the Philippinesの補給任務には、他国の護衛は必要ないとArmed Forces of the Philippines報道官が語っているとして、要旨以下のように報じている。
(1) 中国とフィリピンの間で海洋における対立する事案数が増加する中、米国を含む同盟国が、セカンド・トーマス礁に駐留するフィリピン兵に食料を届けるフィリピン船舶を護衛する必要はないとArmed Forces of the Philippinesは述べた。「我々の兵員の交代と補給の任務(以下、RoRe任務と言う)は、我々が引き受けるものだ」と、Armed Forces of the Philippinesの報道官Medel Aguilar大佐は11月2日の記者会見で述べている。RoRe任務は、中国海警や中国の海上民兵船から絶え間ない嫌がらせを受け続けてきた。
(2) 米国、そして日本、オーストラリアなどの国々は、中国によるさらなる挑発行為を抑止するために、フィリピンと共同哨戒を行うことやセカンド・トーマス礁への補給任務に参加することを申し出ている。しかし、Medel Aguilar大佐は「そこにある資源から利益を得られるようにすることを確実にするために、主権的権利と管轄権を与えられている責任を果たすことが我が国のためになる」と述べており、米国が西フィリピン海でのフィリピンの行動に口を出すのは「侮辱的」であるとも述べている。
(3) Medel Aguilar大佐はまた、10月23日にスカボロー礁付近を航行したPhilippine Navyのコルベット「コンラド・ヤップ」を中国海軍および空軍が「追跡、監視、警告、制限」したという主張を否定した。「コンラッド・ヤップ」は西フィリピン海を定期的に哨戒中、スカボロー礁沖で中国海軍の艦艇を目撃したとMedel Aguilar大佐は述べている。「中国艦はその後、『コンラッド・ヤップ』を追尾してきた。それがすべてだ。それ以外に予期しなかった出来事は起きていない」とMedel Aguilar大佐は語っており、中国海軍の艦艇がフィリピン船に最も接近したのは約2.7海里だったという。「そのため、中国艦による制限はなかった。我々の船は任務を成功裏に遂行し、終えることができた」とMedel Aguilar大佐は述べている。
(4) Medel Aguilar大佐はまた、西フィリピン海の緊張がこれ以上拡大するのを避けるために、フィリピンは侵害と挑発を即座に止めるべきだという中国政府の声明を一蹴した。「恐らく、止めるべきは、我々の領海内での彼らの違法行為だろう。彼らはそこにいるべきではないし、我々の漁師に嫌がらせをするべきではない。彼らがやっていることを全て止めるべきである」と語っている。
記事参照:‘No need for PH allies to join resupply trips’

11月3日「中国・ロシア・イランの枢軸はアメリカへの明確な脅威である―米専門家論説」(The National Interest, November 3, 2023)

 11月3日付、米隔月誌The National Interest電子版は、Atlantic Council非常勤上席研究員Ariel Cohenの‶The China-Russia-Iran Axis Is a Clear Threat to America″と題する論説を掲載し、ここでAriel Cohen は、米国はウクライナ支援と並行してHamasと戦うイスラエルに協力しつつ、イランの抑止に努め、中東への勢力拡大を企図するロシアと中国に強い意図を伝えるべきであるとして、以下の要旨のように述べている。
(1) ロシア、中国、イランの枢軸との世界的な対立において、超大国アメリカは同時に2つの事を行う必要がある。Ḥizb Allāh(ヒズボラ)議長Hasan Nasrallahが、より広範な戦争への脅威を増大させ、イスラエル北部への砲撃を続ける中、イスラエル政府も米国政府も、ますます危険な国際環境に直面している。イスラエル、ガザ、レバノンは、2022年2月にウクライナで始まった世界的対立のもう1つの前線となった。ロシアによるウクライナへの大規模侵攻前に、ロシアと中国が「無限の友好関係」を宣言して以来、ユーラシア大陸の2つの大国は、米国とその同盟国に最大限の圧力をかけるべく世界情勢を動かしている。イランはイスラエルとサウジアラビアの接近を頓挫させるため、中東における現在の戦闘拡大を先導した。ロシアの民間軍事会社WagnerがHamasに兵站訓練を実施したとの米情報筋の証言があるように、ロシアと中国はこの戦闘拡大を支援している。Wagnerはまた、ロシアのSA-22対空システムの配備を開始した。
(2) 現在の危機は、米国政府がロシア政府と中国政府に「撤退するか、イランを失うか」という明確な意図を送るまたとない機会である。米国は今、ロシア、中国、北朝鮮、イランの連合軍と対峙している。彼らは、30人以上の米国人を含む1,400人が殺され、拷問され、誘拐され、200人以上がガザで捕虜となった10月7日のハマスの大規模テロに乗じようとしている。イランのIslamic Revolutionary Guard Corpsは、HamasとパレスチナのPalestine Islamic Jihad Movement(イスラム聖戦、公安調査庁はパレスチナ・イスラミック・ジハードと呼称している:訳者注)を訓練し、装備を整え、資金を提供してきた。1980年代以降、イラン政府はイスラム共和国の完全な傘下にあるḤizb Allāh(ヒズボラ)を設立、訓練し、装備を整えた。イランはまた、ロシアに無人機を、中国に石油を供給する主要国でもある。さらに、中国との4億ドル、25年間という巨大な投資協定の受益者であり、BRICS+と上海協力機構のメンバーでもある。イランは、そのフーシ派の代理勢力がUAE、サウジアラビア、エジプト、米国の石油施設、軍事基地、船舶をロケットで攻撃した紅海から、イランがスンニ派を支配するためにシーア派民兵を武器化したイラク、シリア、レバノンに至るまで、中東における不安定化の主役である。米国は神権独裁政権にとって依然として「大悪魔」であり、イスラエルは同じく米国側の「小悪魔」として破壊の対象になっている。
(3) ロシアは、ペルシャ湾からホルムズ海峡を経由する石油船の30%以上という、世界への石油の安定供給を保証する中東の親米構造を不安定化することを狙った混乱から利益を得ている。もしホルムズ海峡が機雷で封鎖されたり、イランが以前のようにタンカーに発砲したりすれば、石油価格は高騰し、1バレル150ドルもの高値がつき、新たなインフレスパイラルが発生し、2024年の大統領選挙でJoe Bidenが敗北する可能性もある。Putinは、財政を潤しながら、Donald Trumpの当選を助けることができると考えており、相互にその気持ちを持っている。ロシア政治の第一人者である故Gleb Pavlovskyが言ったように、Putinの政治システムは常に危険性を高めている。ロシアは、米国が推進した2006年の国会に相当するPalestinian Legislative Council(パレスチナ立法評議会)選挙にイスラム主義運動が勝利して以来、Hamasに援護を提供してきた。Putinは世界の指導者の中で最初にハマスに祝辞を述べ、その指導者Khaled Mashalをモスクワに招いた。
(4) ロシアはまた、何十年もの間、イランをアメリカに対する破城槌として利用してきた。1990年代にイランにミサイル技術を提供し、核技術者を養成し、2013年にはBushehr原子炉の第1段階を建設し、2024年に第2段階を、2026年には第3段階を完成させる予定である。ロシアは現在、イランへの軍事技術移転と引き換えに、ウクライナで使用する無人偵察機シャヘドとムハジャル6を1,000機単位で購入している。イランへのミサイル技術供与に対する国連の制裁が期限切れを迎え、ロシアは制裁を延長しないと述べた。これは中東、ヨーロッパ、そして世界にとって潜在的な災難である。
(5) ロシアと中国は、中東政策でも連携している。Putin大統領と中国の張軍中東特使は、イスラエルを支援する米国を、中東における「リーダーシップの失敗」と非難した。さらに、中国の王毅外相が、イスラエルは「自衛権を超えている」と宣言した。台湾侵攻をあからさまに計画し、100万人ものウイグル人を強制労働収容所に投獄している国の発言である。紅海の入り口にある世界的な隘路、バブ・エル・マンデブ近くのジブチに軍事基地を持つ中国は、最近ペルシャ湾に艦艇6隻を展開した。最初はオマーンのマスカットに、現在はクウェートに配備している。中国は最近、米国から支援を得られないと感じていたサウジアラビアとイランの歴史的な和解を仲介した。石油資源の豊富な両国は、中国への主要な石油供給国である。しかし、中国共産党には、洗練された中東政策や、中国沿岸から何千キロも離れた場所への戦力投射に必要な背景や知識が欠けている。
(6) アフガニスタンからの不名誉な撤退の後、米国の政策立案者たちは中東のことを忘れ、競争相手であるロシアと中国に焦点を当てることを望んだ。しかし、中東にはブラックホールのような引力がある。ロシア、中国、イランという枢軸との世界的な対立の中で、超大国米国は同時に2つの事を行う必要がある。ウクライナを支援する一方で、イスラエルにハマスのテロリストを撲滅し、イランを抑止する機会を与える必要がある。中国もロシアも、中東の支配者としてアメリカを追い落とすだけの軍事力、特に海・空軍資産を持っていない。もしイランが米国政府の警告に耳を貸さず、Ḥizb Allāh(ヒズボラ)という戦争の犬を放ち、イスラエルの民間人に受け入れがたい損害を与えるようなことがあれば、イランを厳しく罰し、核開発計画や軍事態勢、場合によっては石油基地を破壊する必要がある。盗賊政権のようなシーア派のジハード独裁政権が生き残る可能性は低い。これは、ロシアと中国に無視できない意図の通達となるであろう。
記事参照:https://nationalinterest.org/feature/china-russia-iran-axis-clear-threat-america-207155

11月4日「2つの戦争が続くなか、米国は中国に対抗できるのか―フィリピン専門家論説」(South China Morning Post, November 4, 2023)

 11月4日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、University of the Philippines の上級研究員Richard Javad Heydarianによる“As war in Ukraine and Gaza rage on, can the US afford to take on China?”と題する論説を掲載し、そこでRichard Javad Heydarianはウクライナ戦争とガザ戦争によって米国が中国と対決する能力が低下しているとして、要旨以下のように述べている。
(1) 10月下旬、中国とフィリピンの船が衝突事故を起こした後、Biden大統領は「フィリピンの航空機、艦船、ないし部隊に対するいかなる攻撃も、フィリピンとの相互防衛条約を発動させる」と主張した。
(2) この発言は米国の強さを示し、同盟国を安心させる意図があったが、他方で東南アジアにおける米国の戦略的立場の不安定さを覆い隠そうとするものでもあった。東欧と中東が戦争状態にあるなか、米国が中国との対立をどう維持させられるかは不透明である。経済的にも、Biden政権はアジアにおける中国の巨大開発構想に対する代案を提示できていない。地政学的にも米国がその地域を放棄するのではないかという恐怖が高まっている。
(3) 世界が危機的状況にあるなか、Bidenは「米国のリーダーシップは世界を団結させる。米国の同盟は米国を安全にする」と宣言した。そして彼は議会に同盟国に対する軍事支援の倍増を要求した。対イスラエル追加支援が143億ドル、ウクライナ支援が614億ドルである。ウクライナはこれまですでに430億ドルを受け取っている。他方、中国に対抗するための支援としては70億ドルしか要求していない。この動きは、中国を米国にとって最大の脅威とみなす世論を反映していない。
(4) 米国がヨーロッパや中東など、伝統的な関与の対象に改めて関与を深めるという見通しは、アジアにとって3つの重大な含意がある。第1に、フィリピンなど条約に基づく同盟国の間に、米国がこの地域を放棄するのではないかという、これまで抱かれていた恐怖を強める可能性がある。米国はこの半世紀、フィリピンと隣国の間の海洋論争においてフィリピンを直接支援したことがない。2015年以降、フィリピンに対して支払われた米国の軍事支援の総額は10億ドル強にすぎない。
(5) 第2に、米国の財政赤字が悪化し、また海外への防衛に関わる関与を拡大させることで、中国と対決するための能力が低下している。中国の海外基幹施設投資がさまざまな問題に直面しているのも確かだが、Biden政権は有効な代案を示せていない。APEC首脳会談の前に提起されたインド太平洋枠組みも象徴的なものに過ぎない。また2024年、大統領選挙を控えるBiden政権は国内で保護感情が広がる中で、アジア諸国と自由貿易を推し進めていくかどうかについて、立場を明確にできていない。
(6) 最後に、中東などへの軍事的関与を深めると、イスラム教国家の間に反米感情が高まっていくだろう。彼らは米国によるイスラエル支援をずっと不満に思ってきた。そしてこのことは中国に絶好の機会を提供する。中国はこの機に中東における平和的仲介者の役割を担えるためである。実際に中国はイランとサウジアラビアの仲を取り持つ役割を果たした。
(7) ロシアも中国に対する依存を深めている。米国は中国を封じ込めるどころか、世界中に手強いライバルを増やしている。
記事参照:As war in Ukraine and Gaza rage on, can the US afford to take on China?

11月7日「2つの戦争が勃発する中、アジアで米国が試されている―シンガポール専門家論説」(Foreign Policy, November 7, 2023)

 11月7日付の米ニュース誌Foreign Policyのウエブサイトは、International Institute for Strategic Studies-Asia前所長James Crabtreeの” With Two Wars Raging, China Tests America in Asia”と題する論説を掲載し、ここでJames Crabtreeは米国のアジアにおける同盟国への支援が少なすぎると信頼性と抑止力が損なわれ、やり過ぎれば中国にとって脅威を与える勢力と見なされ、このバランスを調整するのは複雑であり、米国は複数の同盟関係において試されているとして、要旨以下のように述べている。
(1) 中国政府は、米政府が第3の地政学的危機に対応できないことを知っている。すでにウクライナと中東で戦争に直面しているJoe Biden米大統領にとって、第3の地政学的危機は許容できない。しかし、10月下旬、中国政府が一連の危険な海洋における事件を起こして、南シナ海の緊張を拡大させたため、 Biden大統領は中国にフィリピンを攻撃しないよう警告せざるを得なくなった。最近、Bidenは重要な同盟関係を活性化している。ヨーロッパでは、ロシアのウクライナ侵攻への対応を通じてNATOがより強力になった。アジア・太平洋地域では、オーストラリア、日本、フィリピン、韓国との同盟関係が深まっている。
(2) 米政府が、より強固な同盟関係を必要としているのは、米国が直面する多くの世界規模の問題を単独では管理できないからである。特に中国の台頭がそうである。フィリピンのような脆弱な同盟国は、これまで以上の安心感を米国に依存しようとしている。また、米国の敵対勢力は、中国がフィリピンに対して現在行っているように、同盟を試す機会を増して、米国の信頼性に対する疑念を植え付けるだろう。
(3) 南シナ海における緊張の高まりは、1999年にセカンド・トーマス礁で意図的に座礁させられた第2次世界大戦時の揚陸艦「シエラ・マドレ」へのフィリピンの補給に焦点を当てている。セカンド・トーマス礁周辺海域は国際的に承認されたフィリピンのEEZの一部であるが、中国は歴史的に中国の領域であると主張しており、フィリピン政府はこの海域に対する主権を強調するため、錆びついたこの船に海兵隊を駐留させている。中国は9月にスカボロー礁に浮体式防波堤を設置、その後Philippine Coast Guardがこれを撤去するなど、別の海域でも事件が起きている。Philippine Coast Guardは、中国の攻撃的な行動に関する説得力のある画像やビデオを作成するなど、広報活動に長けている。
(4) Ferdinand Marcos Jr.フィリピン大統領が、前任のRodrigo Duterteによる親中国政策を事実上放棄して米国に接近しようとする動きに対する不満を中国政府の行動に反映している。2月、Marcos Jr.大統領はフィリピンにある4つの軍事基地利用を米国に与えることを承認し、4月に米比両国は過去最大規模の共同演習を行った。そして中国の習近平国家主席は「米国が、中国の封じ込め・包囲・弾圧政策を進めている」と非難している。
(5) 米国によるフィリピンとの関係強化は、インド太平洋全域で関係を強化しようという幅広い動きの一環である。Donald Trump前大統領の下で、米国はしばしば同盟国に地域の安全保障の負担を増やすよう求めた。Biden大統領は、同盟国に対し、より多くの負担を求めると同時に、より一層の支援をしようとしている。この同盟の重みが増すほど、米国の敵対国が同盟を試す動機は増し、地政学的緊張が高まる際に安心感を得ようとする要求も大きくなる。Marcos Jr.大統領は5月にワシントンを訪れ、米国の具体的な関与を強調した共同声明を引き出した。それは、「南シナ海を含む太平洋におけるフィリピンの軍隊、公船、航空機に対する武力攻撃は、米国の相互防衛の約束を呼び起こすだろう」という声明で、フィリピン政府からの働きかけに従ったものであった。
(6) 中国の行動はフィリピンに不快感を与えると同時に、フィリピンの軍隊に犠牲を強いている。南シナ海における中国政府の強硬路線は、台湾を巻き込んだ不測の事態を計画している米政府をこれ以上支援するなというMarcos Jr.大統領への警告にもなっている。しかし、中国政府の最も戦略的な狙いは、同盟そのものを試すことにある。セカンド・トーマス礁
の座礁船「シエラ・マドレ」は米国に防衛義務があることが明らかな公船である。事実上、中国政府は「本当に必要なときに米政府が助けてくれると確信しているのか」という質問をフィリピン政府に投げかけているのである。
(7) アジアにおける同盟国への支援が少なすぎると、信頼性と抑止力が損なわれる。やり過ぎれば、中国政府は米政府をこの地域の不安定化させ、脅威を与える勢力と見なすことになる。この釣り合いを調整するのは複雑であり、特に欧州や中東で米国の複数の同盟関係が試されている現在ではなおさらである。この傾向は、今後ますます激しくなるだろう。Biden大統領がこれまでのところうまく均衡を取っているとしても、米国の同盟国の間で疑念が消えるわけではない。それどころか、世界秩序が揺らぎ続ける中で、疑念はますます大きくなる可能性が高い。多極化が進む世界では、米国はより狭い範囲の提携国に関与を集中せざるを得なくなり、米国が同盟国に必要な安心感を提供できるかどうかは、究極の試練でもある。
記事参照:With Two Wars Raging, China Tests America in Asia

11月7日「中国の対比グレーゾーン戦術と米比同盟の抑止力―米専門家論説」(War on the Rocks, November 7, 2023)

 11月7日付の米University of Texasのデジタル出版物War on the Rocks は、米シンクタンクRAND Corporation上席防衛問題専門家Derek Grossmanの “CHINA’S GRAY-ZONE TACTICS SHOW THE U.S.-PHILIPPINE ALLIANCE IS WORKING”と題する論説を掲載し、ここでDerek Grossmanは中国が南シナ海でフィリピンに対してグレーゾーン戦術による嫌がらせ行為を繰り返しているが、再活性化された米比同盟が中国の戦術の拡大を抑止しているとして、要旨以下のように述べている。
(1) 中国政府はここ数カ月、南シナ海でフィリピンが実効支配するセカンド・トーマス礁に座礁させた旧揚陸艦「シエラ・マドレ」に駐留する兵員への補給任務に当たるフィリピン補給船を妨害するため、威圧的なグレーゾーン戦術を着実に強化してきた。マニラは1999年以来、フィリピン主権を誇示するために「シエラ・マドレ」に兵員を駐留させ、恒久的な軍事的存在感を維持してきているが、それ以来、フィリピンの補給活動に対する中国による嫌がらせ行為が常態化している。特に、2023年になってから嫌がらせ行為は明らかに激化してきており、最近では10月22日に中国の海警船がフィリピン船に意図的に体当たりする事案があった。この最も深刻な事案を受けて、フィリピン政府は2023年になってから中国に対する55回目の外交的抗議を行った。この海域で中国の軍事的威嚇行為が多発しているのは、主として中国軍が過去数年間とは異なり、特に南沙諸島のミスチーフ礁、スービ礁およびファイアリークロス礁などにおける人工島造成とその軍事化に支えられて、領有権紛争相手国の艦船に対して嫌がらせ行為を仕掛ける戦力と能力の両方を持つようになってきたためである。
(2) 中国に立ち向かうフィリピン政府にとって幸運なことに味方がいる。長年に亘る米国との安全保障同盟関係は、フィリピン政府に必要な自信を与えている。特に、米比相互防衛条約第5条は、「いずれか一方の締約国に対する武力攻撃は、いずれか一方の締約国の本国領域または太平洋地域にある同国の管轄下にある島または太平洋地域における同国の軍隊、公船もしくは航空機に対する武力攻撃を含むものとみなされる」と規定している。したがって、もし防衛条約が犯された場合、米軍は、セカンド・トーマス礁を巡る紛争、あるいは中国が実効支配するスカボロー礁や、フィリピン人が居住し、最近ますます脅威に晒されているパグアサ島など南シナ海の他の海洋自然地形を巡る紛争に介入する可能性が非常に高い。今後、この地域における中国のグレーゾーン活動に対抗するために、米国は中国政府に対して米比相互防衛条約第5条に違反すべきでないことを留意させ、警告し続けながら、一方でフィリピンに軍事支援と訓練を提供して行くべきであろう。
(3) 実際、セカンド・トーマス礁を巡る紛争に関連して、米政府は一貫して米比相互防衛条約第5条の規定に言及してきた。たとえば、Biden大統領は10月に、「フィリピンに対する米国の防衛上の誓約は鉄壁であり、フィリピンの航空機、艦船あるいは部隊に対する如何なる攻撃も米比相互防衛条約の発動を招くことになる」と明言している。さらに、先述の10月22日の事案直後、Sullivan国家安全保障担当補佐官は、フィリピンのAño大統領補佐官との会談で、米比相互防衛条約は南シナ海におけるPhilippine Coast Guardの作戦に対する武力攻撃にも適用されると言明した。米比同盟関係は現在、1951年の発足以来、最も健全な状態にある。米比防衛協力強化協定(EDCA)による米軍が利用可能で、装備の事前集積も認められる基地が5ヵ所から9ヵ所に拡大された。また、米比合同哨戒活動が近く開始される予定であり、米国、オーストラリアおよび日本との間の多国間哨戒活動も既に実施されている。Teodoroフィリピン国防相は最近、10月22日の事案は「より多くの同志国を我々の戦いに関与させることになろう」と述べている。こうした傾向は、中国に対して、少なくとも意図的に米比相互防衛条約を発動させることを躊躇させる効果があろう。
(4) 南シナ海で可能性が高いシナリオとしては、中国はグレーゾーン戦術を拡大させるが、これらの戦術は米比相互防衛条約の発動を誘発する敷居をわずかに下回る程度に留めるというものであろう。中国政府は既にセカンド・トーマス礁周辺で嫌がらせ行為を常態化しているが、たとえば、セカンド・トーマス礁周辺を人工的な防波堤や中国海警船や海上民兵船で全面的に封鎖すれば、フィリピン政府と米政府によって戦争行為と見なされるのが妥当であろう。あるいは、中国海警船が補給任務を阻止するために実弾による威嚇射撃を行う可能性もある。さらには、中国海警総隊の隊員が補給船に乗り込み、乗組員を拘留することも考えられるが、そのような行為は武力攻撃に等しい敵対行為と見なされる可能性が高く、特にフィリピン政府や軍関係者が巻き込まれた場合、米比相互防衛条約が発動される可能性がある。いずれにせよ、今後数週間から数カ月の間に、中国はセカンド・トーマス礁の主権を維持しているという主張を通すために、新しく創造的なグレーゾーン戦術を展開する可能性が高い。そうなれば、米比同盟の強化によって抑止力が実際に機能していることを再確認するだけである。別の言い方をすれば、抑止力が維持されているが故に、中国政府は将来の補給任務を阻止するための、武力攻撃に至らない新たな威嚇的グレーゾーン戦術を見つけ出さなければならない。フィリピン政府と米政府は、このような動きに、失望するよりも勝利と見なすべきであろう。
(5) とは言え、中国のグレーゾーン活動は、誤算や拡大そして武力紛争につながる海上事故を通じて、意図せずに米比相互防衛条約の発動を誘発することになりかねない。このことは、米比両国の政策・戦略立案者にとって悪夢のシナリオと言える。セカンド・トーマス礁の「シエラ・マドレ」を撤去し、米比両国海兵隊を含む合同前方作戦拠点に置き換えるべしとの意見*もあるが、そうすることは報復を招き、米軍の人員や資産を不必要かつ直接的に危険に晒すことにもなり兼ねない。あるいは、米国はセカンド・トーマス礁や、さらにはスカボロー礁やパグアサ島を含む南シナ海の他の係争中の海洋自然地形が攻撃された場合、米比相互防衛条約の適用対象であると明言することもあり得よう。米政府は以前にもこうした言質を与えたことがある。たとえば、2012年に当時のPanetta米国防長官は、日本の尖閣諸島を日米相互防衛条約第5条の適用対象であると明言したが、問題は東シナ海における中国の干渉が衰えることなく続いていることである。最良の解決策は、現に米国がしていること、即ち、米政府が中国政府に対して米比相互防衛条約第5条に違反すべきでないことを警告し続けるとともに、一方でフィリピンに軍事援助と訓練を提供し続けることで、フィリピン政府がますます自力で中国に対抗できるようにすべきである。これは最も危険性の低い選択肢であり、同時に成功の可能性も最大である。
記事参照:CHINA’S GRAY-ZONE TACTICS SHOW THE U.S.-PHILIPPINE ALLIANCE IS WORKING
*:BLAKE HERZINGER, “IT’S TIME TO BUILD COMBINED FORWARD OPERATING BASE SIERRA MADRE,”War on the Rocks.com, September 11, 2023

11月7日「南シナ海緊張緩和のためには科学的協力を促進せよ―米南シナ海問題専門家論説」(East Asia Forum, November 7, 2023)

 11月7日付のAustralian National UniversityのCrawford School of Public Policy のデジタル出版物East Asia Forumは、南シナ海問題を中心に報道するネットメディアであるSouth China Sea News Wire編集長David Hessenの“Scientific collaboration could ease tensions in the South China Sea”と題する論説を掲載し、そこでDavid Hessenは南シナ海の緊張緩和のためには、関係各国による2国間の科学的協力網を構築することが重要であるとして、要旨以下のように述べている。
(1) 南シナ海は長らく緊張が張り詰めている。それに対し、その地域の国々は、科学に関する協力、および科学的思考に基づく協力関係の構築といった科学的な協力によって、2国間関係を強化するべきである。
(2) 最近では台湾問題が国際的な関心を集めているが、南シナ海問題も世界の安定に影響を及ぼす可能性がある。2023年8月に中国海警船がフィリピンの補給活動を妨害したとき、南シナ海の緊張緩和の重要性が改めて明らかになった。南シナ海に対する専門的・科学的調査は、緊張緩和の道を提供するであろう。2国間の科学的協力を増やして環境問題に対処することを促進すべきである。
(3) インタビューを受けた東南アジアの専門家のほとんどが、南シナ海をめぐる主権論争を主要な懸念事項としつつも、調査参加者の圧倒的多数は紛争を悪化させる経済的、環境的懸念があることに同意している。そこは世界最大規模の漁場であり、石油・ガスなど天然資源の宝庫である。またそこは重要な貿易路であり、全世界の船舶の3分の1がこの海域を通過する。
(4) 中国は最大の排他的経済水域侵害国であり、またこの地域の軍事化を最も推進している国でもある。ただし中国がその唯一の国ではなく、たとえばベトナムは南シナ海の既存の軍事施設を要塞化する計画だと報じられている。これは、科学協力の必要性をこれほどないまでに高めるものである。
(5) 2国間による科学協力外交は地域の安定に寄与するだろう。乱獲やさまざまな環境汚染は、国家間の協力によってのみ対処できることを、地政学的な対立は明らかにしている。こうした考え方は決して新しいものではない。フィリピンとベトナムは1994年に科学調査に関する合意を結んでいる。中国ですら、漁業や炭化水素資源の掘削、海洋安全保障における協力を定めた2004年のトンキン湾合意に従っている。
(6) ただし、こうした種々の2国間の合意が、南シナ海における紛争解決のための包括的な多国間枠組みの構築に至る可能性は低い。専門家の多くは、南極条約のような地域枠組みを拒絶している。南シナ海は多くの国々と接し、天然資源が豊富であるため、多国間合意を通じた緊張緩和の可能性は小さいだろう。
(7) また、2国間外交にも欠点はある。たとえば中国はASEAN諸国との2国間交渉を提唱しているが、それは、ASEANを分断することで、領土係争に関してASEANを団結させないためのものでもある。2国間の科学的協力網が南シナ海の領土紛争を解決することはないだろうが、地域の意思疎通を活発にし、緊張を緩和する潜在的な方法ではある。そして科学協力は地域の自然環境を改善させる可能性がある。
記事参照:Scientific collaboration could ease tensions in the South China Sea

11月8日「Royal Canadian Navy司令官、カナダの太平洋戦略を概説―U.S. Naval Institute 報道」(USNI News, November 8, 2023)

 11月8日付のU.S. Naval InstituteのウエブサイトUSNI Newsは、“Head of Royal Canadian Navy Outlines Ottawa’s Pacific Strategy”と題する記事を掲載し、Royal Canadian Navy司令官が「距離の暴虐」は認識したうえで、カナダの太平洋戦略は「カナダは軍事力の展開の重点を太平洋に移し、・・・台湾海峡、東シナ海、南シナ海において現状維持に脅威を及ぼすような一方的な如何なる行動も阻止するようカナダは提携国と対応し続ける」と述べたとして,要旨以下のように報じている
(1) Royal Canadian Navy司令官Angus Topshee中将は11月3日に、カナダはその新戦略の一部として、毎年、3隻のフィリゲートと補給艦1隻を西太平洋に派遣していると指摘し、西太平洋への関与に関わる「距離の暴虐」は認識しているとした上で、「カナダは太平洋国家であり、カナダは軍事力の展開の重点を太平洋に移した」と述べている。
カナダの軍事力の役割と任務の重点について、「カナダには安全保障上の利益や部隊を集中する地域はない。3方を大海に囲まれ、南には米国がいる。・・・米国はカナダのもっとも近しい同盟国である」とAngus Topshee司令官は述べている。Canadian ArmyはNATOの一員として欧州での地上戦に集中しており、Royal Canadian Air ForceはNorth American Aerospace Defense Command(北米航空宇宙防衛司令部)において米国と密接に提携している。Royal Canadian Navyは太平洋に目を向けている。
(2) 「カナダはインド太平洋を海という領域を捉えて」、そこは交易の動きの場であり、エネルギー、重要鉱物、海産物を潜在的に供給する源とあると考えている。Angus Topshee司令官は、太平洋に関する最近発表された政策文書に基づき、「台湾海峡、東シナ海、南シナ海において現状維持に脅威を及ぼすような一方的な如何なる行動も阻止するようカナダは提携国と対応し続ける」と述べている。この意味で、Angus Topshee司令官は新型のハリー・デウルフ級哨戒艦を島嶼国の沿岸警備隊と当該国の漁業保護と海洋状況把握の向上という新任務に対応する重要な艦艇と見ている。
(3) ハリー・デウルフ級哨戒艦は極北で砕氷艦としても行動可能である。Angus Topshee司令官は北極において、あるいは北極をめぐる戦争があるとは考えていないと言う。Angus Topshee司令官は大西洋と太平洋を結ぶ重要な海上交通路として北極海航路はより利用し易い。しかし、ロシアに接近し過ぎている。ロシアのGDPの22%は北極の鉱物資源採掘とエネルギー開発によってもたらされており、さらにロシア政府が地上部隊と航空部隊の施設を建設し、砕氷船隊を拡充し続けている地域でもあると指摘する。
(4) 対照的に北極圏にはカナダ国民はわずか20万人しかいない。開発という点では、カナダの北極圏地域では大規模な鉄鉱石鉱山と多少のダイヤモンド鉱山が稼働中である。
(5) Canadian Armed Forces(カナダ国防軍)にとって、北極は遠征に相当する作戦が必要な戦域であり、艦船が燃料を補給し、補給品を受け取ることのできるシンガポールのような深水港はなく、我々は北で必要なもの全てを持って行かなければならないとAngus Topshee司令官は言う。このような環境の下で、基地が問題であり、Royal Canadian Navyは独自の基地を建設するよりも軍民両用の施設に注目しているとAngus Topshee司令官と述べている。
記事参照:Head of Royal Canadian Navy Outlines Ottawa’s Pacific Strategy

11月8日「ウクライナ戦争は終焉に向かうか―米専門家論説」(Responsible Statecraft, November 8, 2023)

 11月8日付の米シンクタンクQuincy Instituteのオンライン誌Responsible Statecraftは、Antiwar.comとThe Libertarian Instituteの米国外交政策と歴史に関するコラムニストTed Sniderの” Is this the beginning of the end of the war in Ukraine?”と題する論説を掲載し、ここでTed SniderはZelensky大統領の「ウクライナがロシアに最終的に勝利する」という信念に反して、戦場がウクライナに不利になりつつある今、Zelensky大統領に向けられた内外からの圧力は外交戦略に転じ、終戦を模索する方向に高まっているとして、要旨以下のように述べている。
(1) 「戦争が膠着状態だとは思わない」とウクライナVolodymyr Zelensky大統領は11月5日にNBCニュースで語り、「ロシアは我々を牽制するつもりだったが、そうはならなかった」と彼は主張したが、これに軍指導部は不同意で、彼の側近は妄想とまで考えている。Zelensky大統領は、国内は政治的、軍事的指導部から、国外は主要な支援国からの圧力に直面している。
(2) Zelensky大統領の側近の中には、彼の強引さがウクライナの戦場で変化への適応を妨げ、ロシアとの和解交渉が禁忌になっていることを懸念する者もいる。さらに軍指導部からも批判は出ている。Zelensky大統領は、反攻作戦の実施やバフムートとアブディフカを何としても守れという要求をめぐって将官と対立しているとされるが、軍指導部はこれを戦略的な過ちとみなしており、すでに兵士や装備の面でウクライナは大きな打撃を受けている。あるウクライナ軍幹部は、大統領府からの命令は時として戦場の現実から遊離していると述べている。
(3) 11月3日にZelensky大統領がСили спеціальних операцій(ウクライナ特殊作戦軍)のViktor Khorenko司令官を解任したことで、将軍たちとの闘争は激化した。この解任はЗбройні сили України(ウクライナ軍)総司令官Valery Zaluzhnyが要求したものではなかった。そして、Khorenko元司令官と緊密で効果的な協力関係を築いていた米軍将校たちをも驚かせた。Khorenko元司令官が率いる特殊作戦部隊は、ロシア戦線の後方での長距離攻撃や破壊工作など一定の成功を収めていたが、軍部はこれを「政治的に誘導された戦略決定」と受け止めていた。
(4) Zelensky大統領と将軍たちとの緊張は、11月1日のZaluzhny総司令官の『エコノミスト』誌とのインタビュー記事で頂点に達した。彼は戦争が膠着状態に達したと主張し、「深く美しい突破口はおそらくない」と認めた。さらにZaluzhny総司令官は、戦争が長引けば、ウクライナはミサイルや弾薬を使い果たすが、ロシアは制裁にもかかわらず生産能力を高めていると述べ、たとえ武器弾薬が尽きなかったとしても、人手が足りなくなると付け加えている。米国がウクライナに必要な武器をすべて与えたとしても、ウクライナにはそれを使うだけの兵力がないとZelensky大統領の側近は語っている。これに対して大統領府は、この発言はロシアの仕事を容易にするものであり、ウクライナの西側の提携国の間に混乱をかき立てるとしてZaluzhny総司令官を非難している。
(5) Zelensky大統領には国際的な支援国からも外交的圧力がかかっている。11月3日付のNBCニュースは、「米国と欧州の当局者は、戦争を終結させるためにロシアとどのような和平交渉が可能かについて、ウクライナ政府と静かに話し合いを始めている」と報じた。そして、この協議に詳しい現職と元職の米政府高官の言葉を引用して、「協議には、ウクライナが取引に達するために何をあきらめなければならないかについての概要が含まれている」と述べている。これは、ウクライナが戦場では目標を達成できないかもしれないこと、戦闘が長引くにつれてウクライナの願望の実現がおぼつかなくなる可能性があること、そして何らかの譲歩が必要かもしれないことについて、アメリカやヨーロッパの同盟国がZaluzhny総司令官と合意していることを示唆している。
(6) 米欧の高官が使った言葉と、Zaluzhny総司令官とZelensky大統領の側近が使った言葉には、驚くべき収束が見られる。NBCは、「この会話は戦争が膠着状態に陥ったという米欧当局者の懸念の中で始まった」と報じ、さらに、「一部の米軍関係者はウクライナでの現在の戦いを表現するのに、膠着状態という言葉を使い始めている」と報じている。Zaluzhny総司令官やZelensky大統領の側近と同様、Biden政権高官もウクライナの戦力不足を懸念している。NBCは、「Joe Biden大統領は、ウクライナの兵力が枯渇していることに強い関心を寄せている」と報じている。
(7) 米政府高官は「ウクライナが和平交渉について緊急の話し合いを始めることができるのは、おそらく年末かその直後までだろう」と内々に認めているとNBCは報じた。Zelensky大統領が「ウクライナがロシアに最終的に勝利するという信念」に固執しているにもかかわらず、戦場がウクライナに不利になりつつある今、Zelensky大統領に向けられた圧力は内外から、外交戦線に転じ、終戦の始まりに直面するよう高まっている。
記事参照:Is this the beginning of the end of the war in Ukraine?

11月10日「インドは南シナ海紛争への関与を拡大している―香港専門家論説」(The Diplomat, November 10, 2023)

 11月10日付のデジタル誌The Diplomatは、香港亜州研究中心(Hong Kong Research Centre for Asian Studies)主任の彭念の“India’s Growing Involvement in the South China Sea Disputes”と題する論説を掲載し、彭念はここでインドは今後南シナ海への関与を拡大する可能性が高く、そのことは中国に警戒感を抱かせるであろうが、米国とは異なりインドは南シナ海における強力な同盟関係と軍事的展開を欠いているため、この地域の紛争におけるインドの直接的な関与には限界があるとして、要旨以下のように述べている。
(1) インドは、中国の領有権に反対する国々に軍事援助を行い、支援的な言葉を発信しているが、紛争への関与には明らかな限界がある。Narendra Modi首相の下でインドが南シナ海への関与を強めていることフィリピンと中国の間の緊張が高まる中、インドがPhilippine Coast Guard(以下、PCGと言う)にヘリコプターを提供すると申し出たことは、中国の懸念を高めている。事実、インドはフィリピンやベトナムなどの領有権主張国への軍事的・外交的関与を強化しており、インドは南シナ海での存在感をさらに拡大し、中国への圧力を強める可能性が高い。しかし、インドが短い期間で南シナ海紛争の主要な行為者になるとは考えにくい。
(2) インドは、中国の領有権に反対する国々との防衛協力を拡大し、2016年の南シナ海に関する仲裁裁判所の裁定に対する従来の「中立」の立場を変更することで、Modi政権下での紛争への関与を大幅に深めている。2019年5月、Indian Navyは南シナ海で初めてU.S. Navy、海上自衛隊、Philippine Navyと共同演習を実施し、2021年8月にはベトナム、フィリピン、マレーシア、オーストラリア、インドネシアの海軍と軍事演習を実施している。2023年5月、インドは南シナ海でASEAN7ヵ国の海軍と2日間の共同演習に参加するため、初めて艦艇を派遣した。インドは、フィリピンとベトナムへの軍事輸出と支援を大幅に増やしており、2022年1月には、インドはフィリピンに超音速対艦ミサイル「ブラーモス」100発を輸出することで合意している。2023年6月、ベトナムはインドから完全に運用可能な小型のミサイルフリゲートを受領した最初の国となった。
(3) 2023年11月、南シナ海での対立をめぐって中国とフィリピンの間で緊張が高まる中、インドはフィリピンに少なくとも7機のヘリコプターを提供し、自然災害時のPCGが救難と人道支援活動に使用すると発表した。フィリピンのFerdinand Marcos Jr.大統領は、捜索救難能力の強化に主眼が置かれているが、ヘリコプターは「PCGの海上作戦に大きく貢献する」と述べている。2023年6月末のインド・フィリピン外相会談では、それまでの慎重な姿勢を転換し、インドとフィリピンは共同声明の中で、紛争の平和的解決と国際法、特に国連海洋法条約と仲裁裁定の遵守の必要性を強調した。インドが同条約の遵守を提案したのはこれが初めてであり、南シナ海紛争に対するインドの「中立」姿勢の大きな転換を示している。
(4) 戦略的利益、航行の自由、石油・ガス資源の3つの要因が、南シナ海へのインドの関与拡大を決定づけている。南シナ海での緊張が高まっていることについて、インドは緊張が戦争に発展し、インド洋でのインドの優位を脅かすのではないかと懸念している。そのため、インドは南シナ海での存在感を高め、インド洋に緊張が波及するのを防ごうとしている。さらに、インドは南シナ海をModi首相の「アクト・イースト政策」を進めるための足がかりと捉えており、インド洋における中国の拡大と中印国境沿いでの攻勢の均衡をとるためにテコ入れをしている。
(5) 南シナ海での紛争は、インドと東南アジア諸国との貿易関係と経済安全保障を危険にさらす可能性がある。これに加えて、インドが南シナ海問題に介入したもう1つの理由は、中国やASEAN諸国との海洋紛争とは別に、インドそのものにある。インドは2000年代初頭から南シナ海でベトナムと石油・ガスの探査を行ってきたが、中国からは批判されている。インドが南シナ海で石油・ガスを探査する動機は2つあり、第1の動機は石油輸入源の多様化、第2はエネルギー協力の名の下に南シナ海での軍事的展開を強化することである。対外的には、米国はインドが南シナ海紛争に関与することを奨励する「引き入れ要因(pull facter)」である。インドと米国には多くの共通の利益があり、両国は中国の台頭を封じ込めることを目的としたQUADの柱である。両国は南シナ海における中国の優位を懸念しており、南シナ海紛争についても同様の立場を採っている。さらに、米中の戦略的対立と中印の国境での緊張は、インドと米国のより緊密な関係にとって重要な機会を提供している。したがって、南シナ海におけるインドとの協力を促進するための米国の努力は、相互に有益であると見なすことができる。2023年6月、米国のDaniel Kritenbrink東アジア・太平洋担当国務次官補は、米国とインドが南シナ海問題でより大きな提携を構築するだろうと述べている。
(6) 近い将来、南シナ海におけるインドの存在感は3つの方法でさらに拡大されるだろう。第1に、貿易・投資関係の急成長とASEAN諸国との防衛協力により、インドは南シナ海問題を通じて地域の野心を大胆に実現する強い動機を持つだろう。これは南シナ海紛争を複雑にし、問題を「国際化」させるだろう。第2に、インドは南シナ海問題を操作することで、中印国境における中国の優位性を相殺し続けるだろう。中印国境の平和が脆弱で、2国間関係が冷え込んでいることから、インドは南シナ海問題を利用して、国境における中国の力を抑制する可能性が高い。第3に、インドは南シナ海紛争に介入するために米国から支援を受けることになるだろう。今後数年間は、米中の対立が続き、中国とインドの関係が冷え込むため、インドは、南シナ海問題で米国と協力することで米国から利益を得ると同時に、中国の台頭を阻止する機会を逃さないだろう。
(7) 結論として、インドは南シナ海への関与を強める可能性が高く、中国に警戒感を抱かせるだろう。しかし、紛争におけるインドの影響力には限界がある。米国とは異なり、インドは南シナ海における強力な同盟関係と軍事的展開を欠いており、必然的に直接的な関与が限定されることになる。さらに、インドの指導者の最優先事項は、南シナ海で中国に取って代わることではなく、インド洋での支配を維持することである。インドは南シナ海紛争でフィリピンや米国と肩を並べる姿勢を強めているが、中国を挑発することはほとんど避けている。南シナ海問題に関するインドと米国との協力強化は、インドの伝統的な非同盟姿勢と高い戦略的自律性によって制限されるだろう。
記事参照:India’s Growing Involvement in the South China Sea Disputes

11月10日「世界の新秩序をめぐる争い―インド戦略研究教授論説」(Project Syndicate, November 10, 2023)

 11月10日付の国際NPO、Project Syndicateのウエブサイトは、インドのシンクタンクCenter for Policy Research戦略研究教授Brahma Chellaneyの“The Wars of the New World Order”と題する論説を掲載し、そこでBrahma Chellaneyは2つの戦争および今後起こりうる台湾での戦争は、今後、国際的な秩序の再形成を促しうるとして、要旨以下のように述べている。
(1) 昨今の立て続けに起きている危機や紛争は、この数年間で地政学的情勢が大きく変化したことを示している。今後、新たな世界秩序への移行を含め、地政学的な大変動が起きる可能性がある。
(2) ウクライナとガザでの戦争は、台湾での戦争のリスクを高めている。米国が大量の武器、弾薬をウクライナやイスラエルに供給しているためであり、中国にとって2つの戦争が長引くほど良いことである。Biden大統領はそれを理解しており、中国との緊張緩和を模索している。サンフランシスコでAPEC首脳会議が行われる時に、米中首脳会談が計画されている(抄訳者注:実際に実施された)。Biden大統領とG7の提携国が強調しているのは、中国とのデカップリングではなくデリスクである。
(3) この過程は、世界的な金融秩序の再形成とも呼べるものである。すでに貿易と投資の流れは変化している。たとえば中国はいまや西側諸国相手よりも、グローバルサウス相手の貿易量のほうが多いのである。そうした変化の責任の一端は米国にある。米国は40年もの間、中国の経済成長を助けてきたのである。中国は世界最大の海軍を誇り、世界金融システムにおける西側支配に公然と挑戦している。
(4) 現行のシステムは「法に基づく世界秩序」など、中立的な用語で表現されることがあるが、中心にいるのは米国であり、米国が「法」の大部分を創っている。さらに米国は、自分達はそうした法が適用されない例外だと考えている節がある。これに対する新たな世界秩序の構築には、現在の紛争が多い状況は中国に有利に働くかもしれない。既存の秩序形成を促進したのも戦争であったのである。凋落が止まらない国連について、このことが当てはまる。ガザ戦争において安保理は役割を果たせず、総会が決議を発したのである。しかし総会決議に法的拘束力はない。
(5) 米国主導の国際機関の影響力が衰えているが、それは世界における米国についても同じことが言える。米国から支援を受けているウクライナやイスラエルでさえ、米国の助言を退けてきたのである。
(6) 米中対立が世界的な秩序の再形成を進めている一方、重要な地域的な移行も起こる可能性がある。ガザでの戦争は中東全域での地政学的再編成の舞台を整えるかもしれない。たとえば、ガスが豊富なカタールの地政学的役割がこの戦争で高まっている。カタールはハマスなどのイスラム聖戦主義者に資金提供をしている国である。もし紛争がガザを超えれば地政学的な意味はより大きくなるだろう。いずれにしても、戦争が長引けば、最大の敗北者はウクライナになるであろう。
(7) ロシア経済の軍国主義化、中国の成長鈍化、グローバルサウスの経済的重要性の高まりなど、国際秩序を根本的に変える可能性を秘めている傾向は加速している。詳細は定かではないが、世界の地政学的均衡の取り直しはもはや避けられないものである。
記事参照:The Wars of the New World Order

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書

(1) Taiwan Should Follow the Philippines’ Model for Revealing China’s Gray Zone Tactics
https://thediplomat.com/2023/11/taiwan-should-follow-the-philippines-model-for-revealing-chinas-gray-zone-tactics/
The Diplomat, November 3, 2023
By Thomas J. Shattuck, a senior program manager at the University of Pennsylvania’s Perry World House, and a Non-Resident Fellow at the Global Taiwan Institute
Benjamin Lewis, an independent defense analyst based in Washington D.C.
Kenneth Allen, a retired U.S. Air Force major who served as the research director of the USAF’s China Aerospace Studies Institute (CASI) from 2017 through 2019, and currently an independent China Military Analyst
2023年11月3日、University of Pennsylvania’s Perry World Houseの上席計画管理者Thomas J. Shattuck、ワシントンD.C.を拠点とする防衛問題専門家Benjamin Lewis、米空軍退役少佐で軍事問題専門家Kenneth Allenは、デジタル誌The Diplomatに、“Taiwan Should Follow the Philippines’ Model for Revealing China’s Gray Zone Tactics”と題する論説を寄稿した。その中で、①中国軍によるADIZ侵入と中間線横断による軍事的圧力は2020年以降増加しているが、台湾国防部はその公開報告の性質を変えている。②中国軍機が台湾のADIZに侵入するたびに、台湾国防部は翌日、出撃した航空機の飛行経路や種類に関する報告書を速やかに公表しているが、出撃のたびに対応するのは経費がかかり過ぎるため、対応方針が変更された結果、作戦を行う中国軍機の画像や尾翼にある機体番号を公表できなくなった。③2023年になり、報道が変わり、多くの変更点は報告書の価値と有用性を低下させている。④最新かつ関連性のある例は、Armed Forces of the Philippinesがセカンド・トーマス礁付近で中国の強制と侵略を示すために、どのように情報を公開し、戦略的に伝達したかである。⑤2023年8月初旬、フィリピンが借り上げた補給船が前哨基地に向け航行中に、中国海警船が放水砲を発射し、フィリピンの補給船を引き返させたが、この事件はフィリピン船舶によって撮影され、中国の攻撃的な行動の明確な証拠となった。⑥放水砲事件を撮影し、政府高官をこのために派遣し、発生した情報を即座に公開することで、フィリピン政府は中国が事件に関する談話に対抗する一つの方法を示した。⑦台湾は同様の問題に対する国際的な制度的支援を欠いているが、国民と共有する情報の量と性質を増やすことを真剣に検討すべきである。⑧中国の明らかに行き過ぎた行動を撮影することで、台湾はより多くの国際的な支持と同情を得ることができるといった主張を述べている。


(2) China’s Cold War with America Has Already Gone Hot
https://nationalinterest.org/feature/china%E2%80%99s-cold-war-america-has-already-gone-hot-207157
The National Interest, November 4, 2023
By Anne R. Pierce. Ph.D. an appointed member of Princeton University’s James Madison Society 
2023年11月4日、米Princeton UniversityのJames Madison Society 委員Anne R. Pierceは、米隔月刊誌The National Interest電子版に"China’s Cold War with America Has Already Gone Hot "と題する論説を寄稿した。その中でAnne R. Pierceは、米国が中国と冷戦状態にあるのか、あるいはあるべきなのかという問いを超えて、実際には、すでに米中冷戦は進行中だとした上で、今日の中国は拡張主義者であり、猛烈な反民主主義者であり、第2次世界大戦後の米国中心の世界秩序を破壊することを決意しており、その目的のために、考えうるあらゆるグレーゾーンの手段を展開する一方で、大規模な軍事施設を建設し、戦争計画を練り、台湾を奪取するために軍を動員しているとの現状認識を示している。そしてAnne R. Pierceは、米国は自由を求める声を再び見つめ直し、商業と開発において再び提携国として選ばれるようになり、そして、平和は力によってもたらされるという第2次世界大戦後の理解を思い起こさなければならないとした上で、Mike Gallagher米議会下院中国特別委員会委員長は「中国は我々の主権と価値観に対する脅威である」と指摘するが、我々はまさにそれに従って行動すべきだと主張している。

(3) TAIWAN’S MOST PRESSING CHALLENGE IS STRANGULATION, NOT INVASION
https://warontherocks.com/2023/11/taiwans-most-pressing-challenge-is-strangulation-not-invasion/
War on the Rocks, November 9, 2023
By Jude Blanchette, the Freeman Chair in China Studies at the Center for Strategic and International Studies
Bonnie Glaser, the managing director of the German Marshall Fund’s Indo-Pacific Program
2023年11月9日、米シンクタンクCenter for Strategic and International StudiesのFreeman Chair in China StudiesのJude Blanchetteと米シンクタンクGerman Marshall Fund’s Indo-Pacific Programの最高責任者Bonnie Glaserは、米University of Texasのデジタル出版物War on the Rockに"TAIWAN’S MOST PRESSING CHALLENGE IS STRANGULATION, NOT INVASION "と題する論説を寄稿した。その中で両名は、「台湾海峡の平和と安定にとって最大の脅威とは何か?」との問いに対する答えは簡単であり、それは「人民解放軍による台湾への侵攻や封鎖」だと指摘した上で、台湾と米国が中国軍を抑止し、打ち負かす能力を確保することを含め、侵攻や封鎖の可能性に備えることは、依然として不可欠であるとし、実際、台湾海峡の平和と安定を維持するための効果的な取り組みの基盤は、米国が中国の軍事攻撃に対応する手段と決意を持っていると中国共産党が評価することから始まると主張している。そして両名は、台湾海峡を挟んだ力の不均衡と北京の進化し続ける様々な手段を考えれば、台湾が中国のグレーゾーン戦術に完全に対抗できると期待するのは非現実的であるが、しかし台北は、外部の提携国とともに、中国が圧力をかけてくる行動を鈍らせる能力を構築することを優先すべきであると述べた上で、米国は中国の水陸両用侵攻を抑止し、撃退する能力を開発すべきだが、そのシナリオの可能性は依然として低いと指摘している。