海洋安全保障情報旬報 2022年7月1日-7月10日

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7月1日「英領インド洋地域と法に基づく秩序の行方―オーストラリア安全保障専門家・英法学者論説」(The Interpreter, July 1, 2022)

 7月1日付のオーストラリアシンクタンクLowy InstituteのウエブサイトThe Interpreter は、Australian National University のNational Security College研究員Samuel Bashfieldと英Newcastle Law School上席講師Elena Katselli Proukakiの“The British Indian Ocean Territory and the rules-based order”と題する論説を掲載し、そこで両名は英国のチャゴス諸島政策が国際法や法に基づく国際秩序に反しており、その政策を継続することによってインド太平洋の秩序が損なわれるとして、要旨以下のように述べている。
(1) 英国はチャゴス諸島を英領インド洋地域(以下、BIOTと言う)として領有権を主張しているが、それに対し本誌への寄稿者の多くは、英国の主張は法に基づく秩序に反しており、オーストラリアや米国が英国を支持することによって、インド太平洋地域の秩序が損ねられていると主張する。
(2) 英Foreign and Commonwealth Office(外務・英連邦・開発省)によれば、英国は諸外国と協働して法・規範・価値に基づく国際システムを支援することに国益を見出している。こうした西側主導の秩序は第2次世界大戦後に米国によって主導されたものだが、いまや、中国の台頭やナショナリズムに基づくポピュリズムによる脅威に直面しているという。法に基づく秩序は、リベラルで民主的な政体と経済、モノとカネの自由な移動、法の支配と人権などさまざまな要因によって構成されているが、なかでも国際法がその主柱である。それなしに「法に基づく」国際社会などありえない。
(3) そうした法に基づく秩序および国際法に対し、英国のチャゴス政策は3つの点で違反している。1つは、チャゴスおよびモーリシャスの人びとの「自決」に関わるものである。自決原則によれば、領土の変更は関係する人々の自由に表明された意思によってのみ行われ得る。しかし、英国はチャゴスとモーリシャスの人々の自決権を否定している。
(4) チャゴス諸島は、1965年にモーリシャスが独立したときにそこから分離され、BIOTとして英領土に編入された。その後、同諸島の住民は島外へと強制移住させられ、今なお帰還がかなっていない。また、1965年のチャゴスの分離それ自体が当時の国際慣習法に違反していた。チャゴス諸島は歴史的にモーリシャス植民地の一部として統治され続けてきたのであり、モーリシャスが独立するときにチャゴスは分離されるべきではなかったのである。
(5) 第2に、チャゴス諸島の島民たちの強制移住に関することである。2002年に発効した「国際刑事裁判所に関するローマ規程」にイギリスも署名しているが、それは強制移住を戦争犯罪および人道に反する罪として禁止している。強制移住が実施された1965年の規程ではないが、当時すでに強制移住の禁止は確立された考え方であった。いずれにしても、故郷への帰還を妨げることは国際法違反と言える。
(6) 第3に、英国が国際司法裁判所や条約など、国際法メカニズムを軽視しているという問題である。2019年、国際司法裁判所は英国によるチャゴス領有を違法と結論した。その後国連総会が、チャゴスからの退去に6ヵ月の猶予を与えるという決議をしたが、それを無視した。そのことは、外交政策の選択肢が法に基づく国際秩序という考え方によって成約することの拒否を意味したのである。また英国は、アフリカ非核兵器地帯条約(ペリンダバ条約)など多くの条約のBIOTへの適用を拒んでいる。英国は国際法や条約の適用を選択的に行っていることによって、法に基づく秩序への関与を弱めている。
(7) こうした英国の姿勢の帰結は、異なる国々に対する異なるルールの適用と、いくつもの秩序の形成ということであろう。それは英米豪が推進する諸国家の平和的な共存と協調、法に基づく秩序による団結に対して有害な影響をもたらす。英国がなすべきは、BIOTを解体し、チャゴス諸島の主権をモーリシャスに返還することである。そうでなければ、この問題は、すでに脅威にさらされている法に基づく秩序をさらに脆弱なものにするだろう。
記事参照:The British Indian Ocean Territory and the rules-based order

7月2日「米海軍遠征海上基地艦の太平洋での用途―米隔月刊誌報道」(The National Interest, July 2, 2022)

 7月2日付の米隔月刊誌The National Interest電子版は、“Power Projection: Expeditionary Sea Base Ships Are Built For One Mission”と題する記事を掲載し、太平洋における大国間の対立は、米海軍の海上からの戦力の投射能力とその維持能力に依存することになるが、米海軍はこのことを念頭に置いて、遠征海上基地(Expeditionary Sea Base:ESB)の設計と開発を行っているのかもしれないとして、要旨以下のように報じている。
(1) 米海軍の遠征海上基地(Expeditionary Sea Base:以下、ESBと言う)は、付加的な任務
を担っており、前方展開、ドローン指揮統制システム、ヘリコプター離陸能力、作戦準備活動を強化するためにこの型が建造されている。米海軍は現在、海上での作戦を実行する能力を拡大する明確な取り組みとして、8隻目のESBの建造に着手している。「ESBは飛行甲板上に4ヵ所のヘリコプター離着艦スポットと格納庫を備え、航空施設、係留、現場における装備支援、指揮統制という4つの中核的機能を中心に設計されている」と、National Steel and Shipbuilding Companyの最近の報告書に記されている。
(2) この報告書によれば、ESBの飛行甲板は、CH-53大型ヘリコプター、UH-60中型多用途
ヘリコプター及びV-22輸送機「オスプレイ」を支援することができる。さらに、ESBは小規模の高速攻撃部隊の派遣やドローンの発射に関して適切な立場にある指揮統制ハブや母艦として機能することができる。米海軍の兵器開発者たちは、ESBからドローンを発射し、操作することは、沿海域戦闘艦(以下、LCSと言う)のミッション・パッケージ(様々な任務に応じて兵装を換装できるようにモジュールした兵器システム:訳者注)をこの艦に統合することで可能になると述べている。米海軍は多くのLCSを退役させることを決定しており、それが、対潜水艦戦、水上攻撃、機雷掃討に焦点を当てたミッション・パッケージを含む、一部の技術の用途を拡大している理由の一部であるかもしれない。基本的に浮遊式海上基地として機能することが可能なESB は、対機雷、監視、攻撃任務の遂行後に無人水上艇を発進・回収する能力から、恩恵を受けることができるだろう。
(3) ESBは、潜水艦との情報・通信網構築、機雷の掃討、脅威の大きい海域の調査のために
無人潜水艇を発射することも可能かもしれない。米海軍の海上基地構想は、無人水上艦船隊隊の急速な拡大に支えられ、重要な海域、特に太平洋における海軍の戦力投射能力を大幅に拡大することができる。
記事参照:Power Projection: Expeditionary Sea Base Ships Are Built For One Mission

7月5日「海上自衛隊艦船に台湾海峡を通航させよ―日ジャーナリスト論説」(NIKKEI Asia, July 5, 2022)

 7月5日付のNIKKEI ASIA電子版は、安全保障問題を専門とするジャーナリスト高橋浩祐による“Japan should send its naval ships through the Taiwan Strait”と題する論説を掲載し、そこで高橋は今こそ日本政府は海上自衛隊に台湾海峡の通航を実施させるべきだとして、要旨以下のように述べている。
(1) 中国は自分たちの行動の正当化を繰り返しつつ、地域の安定と法に基づく国際秩序を脅かすような攻撃的姿勢を止めようとしない。最近では、6月13日に中国外交部が、台湾海峡における主権を中国が有しているとし、台湾海峡が国際水域であるという主張は正しくないと述べている。
(2) 1982年の国連海洋法条約によれば、各国は沿岸から12海里(約22km)までを領海として有し、また24海里(約44km)までが接続水域となる。台湾海峡の最も狭い部分は130km程度であるので、少なくとも約85kmは国際水域とみなされるべきなのである。
(3) こうした中国の主張が日本に無関係ということはない。1年に台湾海峡を通過する日本の船の数は2,500隻にのぼり、中国がこの海峡を支配するということになれば、日本、さらには台湾や韓国の貿易に重大な影響を及ぼすことになる。中国による単独行動主義的な姿勢に対し、日本は何をすべきか。今こそ、海上自衛隊の艦艇による台湾海峡の通航を認めるべきである。
(4) 岸田首相は、武力による現状変更の試みはなんであれ認めないという姿勢を打ち出した。したがって、日本がやるべきは言うべきことを言い、すべきことするということである。日本が台湾海峡の通航をためらう理由などない。最近では米国や英国、フランスの軍艦がそこを通航し、自由で開かれたインド太平洋という考えを促進している。フランス海軍のある司令官は、フランス艦艇の台湾海峡の通航が多いと中国に警告されたが、「われわれは今後も、必要な問に何度でもそこを通航する」と述べている。彼は正しい。
(5) 日本の海上自衛隊には、フランス海軍と同じことをする覚悟があるだろうか。2022年4月の記者会見で、新たに海上幕僚長に任命された酒井良は「台湾海峡の通航は合法ではあるが、海上自衛隊の艦艇にそこの通航を認めることは、政治的メッセージを送ることを意味する。したがって、どのようなメッセージをいつ送るかということは、政治的な決定だ」と述べた。政府にその意思はあるのか。岸田首相に直接質問すると、そのような計画を立てることはないとの返答があった。
(6) 逆に中国の軍艦は、いわゆる宮古水道、大隅海峡、対馬海峡、津軽海峡、宗谷海峡の日本の主要な5つの海峡を繰り返し通航している。2021年10月には中国とロシアの海軍が合同で、10隻の艦艇に津軽海峡を通航させている。またこうした行動は海に限られず、5月24日には中国とロシアの戦略爆撃機6機が日本周辺を飛行した。中国が日本周辺で航行の自由の権利を行使するなか、日本が同様の権利の行使を控える必要はないだろう。
記事参照:Japan should send its naval ships through the Taiwan Strait

7月5日「大国間対立の時代におけるアラスカの地政学的重要性―米専門家論説」(The Hill, July 5, 2022)

 7月5日付の米政治専門紙The Hill電子版は、米Wilson Center for International Scholars研究員、U.S. Air Force及びU.S. Space Forceに対する市民からのリーダー、コロラド大学の名誉学長Mark R. Kennedyの“Alaska’s geopolitical importance in the age of Great Power competition”と題する論説を掲載し、そこでKennedyはアラスカの大規模な訓練射撃エリアや高いミサイル早期警戒能力がなければ、米国は現在の大国間対立において弱い立場にあったことは間違いないことから、Putinのウクライナ攻撃は、かつてのロシア皇帝AlexanderⅡのアラスカの米国への売却と同じように歴史的にみてロシアの失敗、かつ米国の優位に終わるであろうとして要旨以下のように述べている。
(1) ロシアのVladimir Putin大統領のウクライナ攻撃は、恐ろしいだけでなく、世界的にロシアを弱体化させている戦略的大失敗でもある。Putinの残忍な行動に反対する米国主導の同盟が強化されている。Putinの戦略的過ちは、1867年にアラスカを米国に売却することで、ロシアを弱体化させ、米国を著しく強化したロシア皇帝Alexander 2世の伝統に従っている。筆者はJake Jacobson中将が率いるアラスカの基地をU.S. Air Force及びU.S. Space Forceに対する市民からのリーダーとして訪問したことによって、当時のWilliam Seward国務長官がアラスカを700万ドルで購入したことは当時愚かなことと言われていたが実際はそうではないことが明確にわかった。アラスカがライバルの大国との戦略的対立において重要性を増している理由は次の4つである。
(2) 第1の理由は、アラスカは米国の高地(high ground)であることである。自分の占位位置を最もよく守り、そこから容易に前進できる高地を獲得することは軍事戦略の基本である。アラスカの空軍司令官David Krumm中将は、1935年のBilly Mitchell准将の「アラスカは地球上で最も戦略的な場所である」という見解に同意しており、地球を上から見ると、北半球のすべての場所がアラスカに近いことが明らかになると強調し、アラスカはハワイよりも東京に近く、ワシントンよりもモスクワに近いと指摘している。今日、アラスカの位置の重要性は、アラスカに第5世代戦闘機の4個飛行隊、つまりアンカレッジのエルメンドルフ・リチャードソン統合基地にF-22戦闘機の2個飛行隊と、フェアバンクス近くのアイエルソン空軍基地にF-35戦闘機の2個飛行隊を置いていることからも明らかである。 
(3) 第2の理由は、北極圏の商業が拡大していることである。北極の氷が溶けていることは、環境だけでなく商業にも深刻な影響を与えている。北極圏において重複する各国の領有権の主張、この地域の資源を利用するか否か、そしてどのように利用するかといった北極圏が直面している問題に対処するための政府間フォーラムである北極評議会はアラスカがあることによって米国に議席を与えている。評議会の理事会はロシアのウクライナ侵攻によって混乱しているが、海氷が後退し、新たに開かれた北極海航路が拡大するにつれてこの地域の重要性は高まるであろう。北極圏の航路を使用することによる大幅な節約を考えてみよう。北極圏を通ってアジアからヨーロッパに貨物を輸送するとマラッカ海峡とスエズ運河を通る従来の航路と比較して約10日間、すなわち従来の航海日数の約50%を削減できる。北極圏におけるロシアの軍事力増強と中国の「氷上シルクロード」計画により、アラスカの地政学的重要性は大国との緊張を伴いながら増大している。
(4) 第3の理由は訓練射撃場が広いことである。アラスカ州はテキサス州の2倍以上の地理的規模である。アラスカは、他のどの射撃訓練場よりもはるかに大きい100万立方マイルの統合太平洋アラスカ射撃訓練場を提供している。これにより、レッドフラッグ・アラスカやノーザン・エッジなどの大規模な訓練演習が可能になっている。これらは、年に数回開催される数日間の実戦的な戦闘訓練である。それらは複数の軍種、複数の車両、航空機が参加し、NATOとアジアの同盟国を含む訓練チームは実戦的で総合的な脅威と戦うことができる。デジタル、マルチアレイレーダーへの投資は、パイロットは密度の高い、現実的な電子戦の脅威に直面することができる。新しい脅威がシステムに迅速にプログラムされ、パイロットが対応することにより直面する脅威が軽減されるという経験を得ることができる。この訓練射撃場が遠隔地にあることにより詮索好きな目が訓練や技術を観察することを困難にする。
(5) 第4の理由はミサイルの早期警戒/迎撃能力が高いことである。現在までにミサイルの早期警戒のためのレーダーサイトをアラスカに配置することにより、レーダーサイトは他のアラスカ以南の48州にある場合よりも早期に目標を認識し、行動が可能になる。クリア宇宙軍基地は「低周波レーダーの長距離電波放射能力と高解像度の高周波レーダーを融合させた」新しい巨大な長距離識別レーダーを備えており、高いミサイルの早期警戒能力を提供している。陸軍のフォートグリーリー基地の地上迎撃機は、飛来するミサイルを早期に阻止する任務を持っている。
(6) Putinのウクライナ攻撃が、アラスカの米国への売却がそうであったように、歴史的にロシアに不利に、米国に有利に作用するかどうかは、時が経てばわかるだろう。しかし、高地としてのアラスカ、北極評議会の議席、大規模な訓練射撃場、そしてミサイルの早期警戒能力がなければ、米国は今日の大国との対立においてはるかに弱い立場にあったことは疑う余地のないことである。アラスカを米国に売却したロシアの皇帝AlexanderⅡに感謝する。
記事参照:Alaska’s geopolitical importance in the age of Great Power competition

7月6日「ロシアによる海上封鎖を破る米国主導の海上護衛は危険性が高い-米専門家論説」(Responsible Statecraft, July 6, 2022)

 7月6日付の米シンクタンクQuincy Institute for Responsible Statecraftのウエブサイトは、同InstituteのSam Fraserの”US-led naval escort to break Russian blockade could risk wider war.”と題する論説を掲載し、ここでFraserはロシアのウクライナ侵攻によって悪化した世界的な食糧危機を緩和するための真剣な取り組みが検討されなければならないが、軍事的手段によって達成しようとするのはリスクが高いとして、要旨以下のように述べている。
(1) 2月に生起したロシアによるウクライナ侵攻に対して欧米では、米国がロシアに対して直接戦争を仕掛けることを求める声は少ない。その理由は、ロシアは核保有国で、かつ米国が軍事介入の対象と想定する国よりもはるかに強固な軍隊を持つからである。しかし、多くの論者や政治家は米国の軍事介入について裏技のような提案を出してきた。その最も顕著なものは、戦争初期に米国とNATOがウクライナ上空に飛行禁止区域を設定するよう求める声である。その無害で合法的な名称にもかかわらず、Biden政権はむしろロシアの航空機を撃墜することになり、ひいては戦争の拡大につながるとして、これを拒否した。最近では、ウクライナとロシアからの穀物輸出が途絶え、世界的な食糧危機の危険が高まる中、米国とその同盟国はウクライナの穀物が安全に黒海を通過できるように海軍力を行使すべきだという新たな要求が浮上している。飛行禁止区域の提案と同様に、これらの提案は人道的な言葉で包まれているが、実際には、非常に危険性の高い米国主導の軍事行動を求めているに等しい。
(2) この提案は、リトアニア外相、数名の退役した米軍高官、米民主党代表Elissa Slotkin 及びボストン・グローブ紙やウォール・ストリート・ジャーナル紙の社説が提唱している。いずれの提案も細部に違いはあるが、人道的介入という表現を持ち出して、行動を正当化するものである。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米国主導の海軍による護衛が人道的活動として計画され、実施されるように求めている。そして「人道的穀物作戦」もしくは「人道的護衛」と呼んでいる。ボストン・グローブ紙は「人権任務」と呼び、リトアニア外相は「非軍事的人道主義任務」と呼んだ。イラク侵略に比べれば、これらの提案の方が人道的な目的をより強く主張している。西側諸国による制裁とロシアによる海上封鎖によって悪化した世界的な食糧危機は、特に中東と北アフリカで飢饉やその他の悲惨な事態を引き起こすおそれがある。ロシアの海上封鎖によって閉じ込められたウクライナの穀物を解放することに成功すれば、この危機を緩和できる。
(3) 海軍による護衛は、機雷除去作業とロシアからの攻撃に対する報復措置を保持する必要もあるので、かなりの軍事力を必要とする。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、この点について、潜水艦と航空機による支援を伴う大小の水上艦艇からなる機動部隊が必要と明確に述べている。どのような連合軍がこの作戦のために編成されるにせよ、米国がこれらの大部分を提供しなければならない可能性は高い。
(4) 過去の人道的介入の試みと同様、この提案の軍事的手段と人道的目的を切り離すことは不可能である。破綻国家への介入や、報復能力の限られたはるかに弱い国への介入では、このことによる緊張を無視することができたかもしれないが、今回の場合ははるかにに危険である。海上封鎖とそれが引き起こす苦痛はロシアの戦争戦略の本質的な部分である。ロシアが無干渉で封鎖を解除することは、大きな影響力を放棄することであり、ロシアから見れば、他の紛争地域への米国やNATOの介入をさらに助長するという危険性がある。このような状況下で、ロシアは米国主導の作戦に異議を唱えないことはありえない。
(5) さらに、これまでのロシアの行動を考えると、このような作戦が人道的行動の枠組みで行われることをロシアの指導者が配慮することはない。ロシア政府の戦争戦略に対抗するという明確な目的のために、西側諸国の海軍艦隊が近海に存在することは、間違いなく軍事的脅威と受け止められる。ロシアが直接、意図的に連合軍艦船を攻撃しなくても、1988年に米国がペルシャ湾の石油輸送を守るために同様の作戦を展開中にイランの民間旅客機を撃墜したように、偶発的に事態が拡大する危険性は高い。このような状況下で、米国とその同盟国が戦火を交えずにロシアによる海上封鎖を破れるという主張は疑わしい。
(6) 封鎖を回避するもっと良い方法があるかもしれない。もちろん、戦争そのものを交渉で終わらせることができれば、それは達成される。しかし、そうでなくても、もっとリスクの少ない穀物輸出の方法が提案されている。例えば、ルーマニアの港まで陸路で輸送する、ロシアと穀物輸出について限定的な合意をする、ウクライナの小麦に最も依存している非欧米諸国を中心とした海軍の護衛を支援する、などである。最後に述べた非欧米諸国海軍の作戦については、実行可能かどうか不明だが、信頼できる多国間作戦であると同時に、戦争に強く関与した国々の軍事的役割を最小限に抑えることで、事態が拡大する可能性は低いという利点がある。
(7) ロシアのウクライナ侵攻によって悪化した世界的な食糧危機は、世界の政治的安定と人類の福祉に悲惨な結果をもたらすおそれがある。精力的な外交を含め、この危機を緩和するための真剣な取り組みが検討されなければならない。しかし、軍事的手段によって人道的目的を達成しようとするならば、それは軍事作戦であり、そのために伴うあらゆる危険を伴う。この動きを支持する人たちは、バラ色の言葉を使ってそうでないふりをするべきではない。
記事参照:US-led naval escort to break Russian blockade could risk wider war

7月6日「尖閣諸島に対する中国の主権主張のためにロシアが協力?―香港紙報道」(South China Morning Post, July 6, 2022)

 7月6日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、“‘Not a joint drill’: Chinese frigate ‘sent to monitor Russian warship’ near Diaoyus”と題する記事を掲載し、ロシアの軍艦が尖閣諸島の海域に侵入して、それを中国の軍艦が追跡したことについて、要旨以下のように報じている。
(1) 東シナ海で中国海軍の艦艇がロシアの艦艇を監視していたが、それは合同演習に参加し
たものではなかった、そして、日本からの抗議を引き起こしたと防衛専門家が述べている。共同通信は7月4日、中国とロシアの艦艇が、尖閣諸島(中国名:釣魚島)の近くで目撃されたと報じた。日本はこの無人島を管理しているが、中国も領有権を主張している。この事件は、中国とロシアが、5月に戦略爆撃機を日本海で共同哨戒を行うなど、日米の圧力に直面して共同戦線を示そうとしているときに起こったものである。日本は中国に対抗するために米国との関係を更新しており、ウクライナへの侵攻をめぐってロシアを批判している。しかし共同通信は、日本の防衛省関係者の話として、今回中国のフリゲートはロシアの艦艇を追跡するために展開されたと引用した。同省は、中国がこの区域でのロシアの艦艇の動きを「追尾し、監視する」ことによって、「中国政府が日本政府の管理する小島に主権を有することを他者に示すという試みと見られる」と述べている。
(2) 北京を拠点とする軍事専門家周晨鳴は、7月4日の事件は中ロ協力とは「何の関係も
ない」ということを認め、「ロシア艦艇は釣魚島の海域に侵入した外国艦船であるため、中国のフリゲートがこれを妨げ、監視する必要があった。中国海軍はすべての外国船に対処する際に同じ方法を取っている」とし、この妨害は誤解と誤判断を防ぐ目的で行われたと述べている。
(3) 共同通信によれば、ロシアのフリゲートは台風を避けるために隣接する海域に入った
ようであり、この国は諸島の領有権を主張していないため、日本政府はモスクワに抗議する手前で止めたという。早稲田大学の張望准教授は、ロシア艦艇の尖閣諸島の海域への侵入は、この区域をめぐる紛争をさらに複雑化させるだろうとした上で、「この2カ月間、中国とロシアの間で一連の共同軍事演習が行われていた。・・・ロシアの動きは、中国がロシアと結託して釣魚島問題で日本に圧力をかけているのではないかという懸念を日本国内に抱かせるだろう」と張は述べている。上海政法大学の倪楽雄教授は、「ロシア艦艇が意図的に釣魚島の海域に侵入したかどうかは別として、すでに日本政府に『お前は今や中国とロシアの共通の敵である』というメッセージを送っている」と述べている。しかし、周も張も、中国政府は領土問題に第三者を介入させることはないと語っている。
記事参照:‘Not a joint drill’: Chinese frigate ‘sent to monitor Russian warship’ near Diaoyus

7月6日「中国人民解放軍、総合戦略における役割強化へ―インド専門家論説」(Observer Research Foundation, July 6, 2022)

 7月6日付のインドシンクタンクObserver Research Foundationのウエブサイトは、同Foundation 研究員Kalpit A. Mankikarnoの“PLA may get a larger role in China’s grand strategy”と題する論説を掲載し、ここでKalpit A. Mankikarnoは中国が総合戦略における人民解放軍の役割を再定義することで大国としての地位を強化しようとしていると見、要旨以下のように述べている。
(1) 中国共産党(以下、CCPと言う)習近平総書記は最近、非戦争軍事作戦大綱に署名したが、この大綱は人民解放軍(以下、PLAと言う)に災害救援作戦を遂行させ、さらに重要なことは中国の主権、安全保障及び発展利益を守るに当たっての法的根拠を付与することになろう。このことは、CCPの諸目標を達成するために、国家の政治的、軍事的及び外交的資産を如何に総動員するかというCCP の世界規模の総合戦略におけるPLAの地位向上の可能性を示唆している。
(2) 中国の総合戦略におけるCCPの役割を再評価する上で転換点になったと思われるのは、2020年であった。この年のCCP第19期中央委員会第5回全体会議(以下、五中全会と言う)は、「戦略的機会を生む」「この100年で前例のない変化」があったとしたが、その意味するところは、コロナ禍の中で西側の混乱に乗じ、大国に移行する機会を捉える必要があるということである。要するに、CCP最高幹部の思考過程は、もし中国が世界大国の最前列に並ばなければならないとするなら、PLAの機能を補強する必要があるということであった。今まで、CCP最高幹部は、PLAを強制執行力と見なしてきた。たとえば、1989年の天安門事件の際、PLA は蜂起を鎮圧し、CCP支配を強化するために使われた。最近では、胡錦濤前総書記はPLAの任務をCCP が権力を固め、国内治安を維持する上での支えと述べていた。五中全会の主要な「発展目標」の1つは、「富裕国」と「強軍」を実現するための国防戦略の近代化であった。CCP は、近代化によって国家主権、安全保障そして発展利益を守る PLA の能力が強化されると考えたのである。
(3) 最近、海外の中国人に対する襲撃事案が増えてきたが、こうした襲撃事案の真の狙いは当該地域における中国の権益であった。たとえば、2020年4月に、カラチの孔子学院の3人の中国人教育者がパキスタン・バルチスタン州分離主義者グループの自爆攻撃で死亡したが、このグループは中国の支援による同州のグワダル港とその他の大規模な基幹施設計画に関わっている中国人に対するいくつかの襲撃事案にも関与していたと言われている。2021年11月にはソロモン諸島で、Sogavare首相が中国マネーを使って議会での投票を左右しているとの抗議に続いて、中国人が多く住む地域で放火と暴動が発生した。これらの事案は、中国が新たな領域に進出すれば、中国が当該現地の政治的潮流に巻き込まれるのを避けられず、そして中国の権益が他の利害関係者のそれと衝突する可能性を示唆している。このことは、中国が当該現地での権益を保護するためには、その国の政府の保証だけに頼ることができないことを意味している。
(4) したがって、たとえばカンボジアでは、中国がカンボジアのエネルギー産業において絶大な影響力を保持しているが、その一方で、中国はタイ湾に面した戦略要地リアム海軍基地の改修を通じて戦略拠点を確保することによって、その経済上の権益を保護しようとしている。同様に、中国外交部はソロモン諸島が「一帯一路構想」とそれに伴う経済特区の新たな重点となるであろうと言明している。このことは、最近中国がソロモン諸島との間に締結した安全保障協定の論拠と見られる。この協定によって、CCPは同国の国内治安維持能力を改善するという口実の下、自国の治安要員を駐留させることが可能になる。オーストラリアの政府高官は、中国がコロナ禍に乗じて小国をその影響下に引き込むために経済的、軍事的そして外交的優位を活用していると見、中国とソロモン諸島との安全保障協定が自国の裏庭における中国の軍事プレゼンスの拡大に繋がりかねないと警告している。
(5) まず何よりも、西欧勢力と大日本帝国が19世紀に清帝国を侵食したという事実が証拠立てているように、台頭する国を他の大国が妨害しているという認識はCCPの心理構造に深く根付いている。清帝国が強固な経済を持っていながら、その軍事力を近代化できなかったということは、他の大国が中国を威嚇することに成功したことを意味する。したがって、中国は、その総合戦略においてPLAをこれまで以上に重視することによって、歴史の誤算を精算しようとしているように思われる。M. PillsburyのThe Hundred Year Marathon*は、既にPLAがCCPの権力構造の中に組み込まれていることを明らかにしている。PLA は、中国の意志決定機関である中央政治局と中央委員会に代表を送り込んでいる。即ち、25人の政治局委員の内、2人がPLA代表であり、中央委員会では205人の中央委員と171人の同候補委員の内、軍代表はほぼ20%を占めている。
(6) 世界の歴史は帝国の興亡の歴史で、これは台頭する中国にとって手本となる。大日本帝国は「富国強兵」を掲げて近代化した。その結果、軍部の力と大企業の影響力を背景とした政治勢力は、帝国の海外進出を押し進め、最終的に第2次世界大戦での破滅を招いた。 賢明な帝国は他の愚行から学ぶべきである。
記事参照:PLA may get a larger role in China’s grand strategy
備考*:邦訳版『China 2049 秘密裏に遂行される「世界制覇100年戦略」』(日経BP社刊、2015年)

7月7日「湾岸地域を越えて:中東・北アフリカ地域における米国の海上における安全保障-米専門家論説」(Center for International Maritime Security, July 7, 2022)

 7月7日付の米シンクタンクCenter for International Maritime Securityのウエブサイトは、U.S. Department of Defenseの研究機関Near East South Asia Center for Strategic Studies准教授Jeffrey Payneの“BEYOND THE GULF: U.S. MARITIME SECURITY OPERATIONS IN THE MENA REGION”と題する論説を掲載し、Jeffrey Payneは米国が中東から撤退するという認識は誤っており、米国は海上作戦と安全保障協力を湾岸地域から紅海とアラビア海に多様化し、対象をより広い中東・北アフリカへの優先事項の移行を更新しなければならないとして、要旨以下のように述べている。
(1) 逆の噂にもかかわらず、米国は中東から手を引きたいとは考えていない。インド太平洋
は米国の対外政策において新しい焦点となっているが、中東は依然、米国の重要な利益のままであるが、今日の現実は米国の優先順位が世界的に異なっており、米国の中東地域における展開を過去のままの形態に固定すべきではない。米国の中東からの撤退に対する理解は、地域における米国の正確な優先順位が欠落していることがその一因である。湾岸地域における米海軍の展開は米国の利益だけでなく、地域の提携国の利益にとっても重要である。しかし、紅海及びアラビア海の安全保障環境はますます能力が試されるものとなってきており、インド洋地域は紅海及びアラビア海が中東・北アフリカ(以下、MENAと言う)地域における米海上作戦と安全保障協力の焦点となるべきである論理的根拠を提供している。
(2) 中東海域は世界でも重要な海上のチョークポイントの内の2つによって特徴付けられる。ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡である。両チョークポイントの安全は世界の商取引にとって緊要である。そして、米国が両海峡の安全の主要な提供者である。しかし、米国の議員の間ではホルムズ海峡が優先されてきた。その結果、米海軍の展開も前方基地も同海峡に焦点を当てている米国の湾岸地域での展開は主として経済的理由から発展してきた。国内消費を中東の天然資源に依存してきたことが、米国を可能な限り湾岸地域の安定を確実にする方に向かわせた。より広い地域に影響力を拡大し、不安定化しようとするイランの対外政策の非対称的な要素は、湾岸地域における米国の展開の必要性を補強している。
(3) 今日、異なる変数が存在する。湾岸地域の天然資源に対する米国の依存度は低下し、最も重要なことは紅海及びアラビア海における安全保障上の問題が拡大してきたことである。バブ・エル・マンデブ海峡を取り巻く海域において増大する非合法的な非国家主体の数と複雑さ、そして地域における対立に明らかに関与している件数の増加は、米国が他の地域の懸念よりも湾岸地域を優先してはならないことを意味している。湾岸地域の安全保障は米国の対外政策の優先事項であることに変わりは無く、ホルムズ海峡からの海上交通路の継続は依然重要なままである。しかし、米海軍の関心を集中させるべき先はさらに南西方向へ紅海そしてアラビア海に移されるべきである。バブ・エル・マンデブ海峡はこれら2つの海域を繋ぐ航路であり、より一層の注意を必要としている。
(4) 我々の大洋と海洋空間の規模の大きさ、民間船、艦船両方の行動を支配する規則、規範、国際法のため、十分な影響力、力、展望を持って海洋における安全保障を単独で提供できる行為者は存在しない。バブ・エル・マンデブ地域で行動する対立者の数は増加しつつある。過去15年間で中国のアフリカにおける経済的利益はその規模と深さが爆発的に増加し、そのことが人民解放軍海軍艦艇のアラビア海への展開を促進してきた。14年間、中国艦艇はインド洋を航行する中国籍船を保護し、地域の海域に慣熟し、既存の国際協力を回避してきた。ジブチの軍民両用である中国初の海外基地はこの海域における中国の関心を示している。中国に加え、ロシアは紅海における海軍の展開を拡大しないまでも維持しようとしている。サウジアラビア、UAE、イラン、トルコのような地域の国も紅海及びアラビア海に習熟してきている。(5) 海賊行為は、国境を越えた不法行為が地域の海域で拡大していった時機に始まった。バブ・エル・マンデブ海峡はますます通航量が増大し、海賊、不法行為者は混雑した船舶の中に紛れ込んでいる。紅海とアラビア海は密輸と違法行為が世界で最も入り組んだ海域である。紅海両岸の不安定な状況が海賊等の活動を可能にしてきた。この点が、なぜU.S. Naval Forces Central Command(以下、NAVCENTと言う)が紅海及びアラビア海により注意を向けなければならないかを強調している。そして、このことは現地に展開するU.S. Coast Guardの船舶、航空機も同様である。事態の潮流は、これら海域が数年の内にはるかに重要になることを示している。U.S. 5th Fleetは地域の海軍あるいは沿岸警備隊との提携から学んだ現地の知見を得ており、これを前線に提供することができる。米海軍の技術的専門知識と海軍間の提携を構築する実地の経験は、敵性国家から犯罪組織まで全てに対応するために必要な連携組織構築に関して沿岸国を支援することができる。湾岸地域自体から焦点を動かすことは、政治的困難を加えるかもしれないが、外交的支援は湾岸地域の飛躍を支援するだろう。NAVCENTはU.S. Naval Forces Europe-Africaとさらなる調整をすることになるだろうが、初動における官僚的な摩擦にもかかわらず、長期的には有利であることを証明するだろう。バブ・エル・マンデブ海峡やアラビア海のおける一連の問題はそのような考え方に従っていない。従わせるために、米国は地域における関与と安全保障協力の新章を始めなければならない。
(6) 米国が中東から撤退するという認識は誤っている。そのように認識される理由に一部は、米国のこの地域に対する関与が対テロ戦争や湾岸地域の安全保障の強調を超えて目に見える形で進展していないことにある。米国は、海上作戦と安全保障協力を湾岸地域から紅海とアラビア海に多様化し、対象をより広いMENAへその優先事項を移行しなければならない。バブ・エル・マンデブ海峡近傍海域はもっとも複雑な海洋問題の一部であり、米海軍はその問題に正面から向き合わなければならない。
記事参照:BEYOND THE GULF: U.S. MARITIME SECURITY OPERATIONS IN THE MENA REGION

7月8日「パグアサ島周辺砂州があらたな紛争の火種か―フィリピンメディア報道」(Philippine Daily Inquirer, July 8, 2022)

 7月8日付の比日刊英字紙Philippine Daily Inquirer電子版は、“Pag-asa sandbars next WPS flashpoint”と題する記事を掲載し、南沙諸島の一部であるパグアサ島で6月末に起きた事件に言及し、同島周辺が中国・フィリピン間の領土係争の焦点になりつつあるとして、要旨以下のように報じている。
(1) 西フィリピン海(南シナ海)の南沙諸島の一部で、フィリピンが領有するパグアサ島(英語名:ティトゥ島)周辺の砂州が、中国とフィリピンの間の領土係争における新たな火種となりつつある。砂州の一群は、パグアサ島のフィリピン領海内に位置しているにもかかわらず、中国は長年にわたりその周辺に軍事的展開を維持している。
(2) 6月末、パグアサ島周辺のフィリピン軍による哨戒を、中国海警船が妨害しようとした。それによって中国はパグアサ島民の活動を制約しようとしているのである。同様のやり方は同じく南沙諸島の一部セカンド・トーマス礁でも見られる。
(3) 6月27日の事件では、中国海警船第5201号が、パグアサ島とザモラ礁(英語名:スビ礁)の間で、フィリピンの巡視船2隻を追い出そうとした。後者は中国の人工島がある。そこから中国はZ8輸送ヘリも派遣し、高度30mという低高度で砂州周辺を飛行させた。海警船は、フィリピン巡視船に対し中国の主権を侵害し、中国・フィリピン間の関係を毀損していると呼びかけた。それに対しフィリピン巡視船は、パグアサ島のフィリピン領海内での作戦を実施中であり、邪魔をしないようにと返答した。小規模な事件ではあったが、これは中国が望むときに攻撃を行い、緊張を拡大させることができることを示した。
(5) 海警船に加えて、パグアサ島の南東には20隻近くの中国海上民兵の船舶が存在していた。彼らは表向き漁船ということになっているが、実際には海警や海軍の活動を支援する部隊である。民兵船団は、フィリピン政府が同島の開発や施設改修を始めた2018年頃からその周辺で活動している。「彼らはそこにいるだけで、直接われわれの生活に影響を与えるわけではない。しかし彼らはわれわれの漁師たちと遭遇することがある」とパグアサ島民は述べている。
(6) パグアサ周辺の砂州のひとつ第1砂州(Cay 1)は、漁師たちにとっての休憩所などとして機能しており、それがあることで漁師たちは、パグアサから11~14km離れた海域で操業できるのである。また別の砂州は、パグアサの滑走路の西側進入路に沿って位置しており、中国船の存在は島への空からの接近を脅かしうる。
(7) フィリピン海軍は西フィリピン海での戦力強化を進めており、7月4日の週、U.S. Coast Guardから譲り受けた巡視船を保守整備の後に復帰させた。フィリピン軍西部司令部の司令官Alberto Carlosは、その復帰によって西フィリピン海における行動能力が拡大すると請け合っている。また、西フィリピン海には新型のフリゲート2隻、貨物船数隻、小型巡視船数隻が配備されている。
記事参照:Pag-asa sandbars next WPS flashpoint

7月8日「ロシア海軍は絶望的か?―米専門家論説」(19FortyFive, July 8, 2022)

 7月8日付の米安全保障関連シンクタンク19FortyFiveのウエブサイトは、米Patterson Schoolの安全保障、外交問題専門家Dr. Robert Farleyの“Is The Russian Navy Doomed?”と題する論説を掲載し、Robert Farleyはロシア海軍が直面する存立にかかわる問題について、要旨以下のように述べている。
(1) ロシア海軍は、ウクライナ戦争で重要な役割を果たしたが、その評価はまちまちである。ロシア海軍はウクライナの港湾を封鎖し、ウクライナ全土の標的にミサイル攻撃を行った。一方、黒海艦隊の旗艦に加え、揚陸艦の1隻を失い、蛇島の支配に失敗した。また、ウクライナ沿岸で勝敗を左右するような水陸両用作戦を遂行することはできなかった。
(2) ロシア軍は今後、大きな予算上の制約に直面する。ロシア経済は予想以上に制裁に耐えてきたが、米国によるウクライナへの支援が継続されれば、ロシア経済は維持できなくなる。海軍の建て直しはおろか兵力の維持も危ぶまれる。
(3) ロシア海軍の戦略環境は、ここ数ヵ月で大きく変化した。フィンランドとスウェーデンのNATO 加盟により、バルト海はロシアにとって自由に行動できない海域となった。潜水艦を含めロシアの艦艇がバルト海を行動する際は、常に攻撃を受ける危険を伴うこととなる。フィンランドが加盟した結果、NATOによる北極圏のロシア海軍主要基地に対する監視が強化される。太平洋においても、日本の防衛力強化及び日本政府とロシア政府の関係悪化のため、強硬な行動を取ることは困難である。
(4) 黒海もロシアにとっては危険な海域になっている。ウクライナに現政権が続けば、対艦攻撃兵器を充実させて、ロシア海軍を脅かすことになる。トルコは、他のNATO諸国との関係が良いとは言えないが、今や黒海におけるシーパワーの鍵を握っている。
(5) ロシアの水上艦隊は、それを支える産業基盤に問題を抱えている。性能上の問題によりProject22610哨戒艦の追加調達を取りやめたと伝えられるほか、アドミラル・ゴルシコフ級フリゲートの平均建造期間は10年以上で、2006年に1隻目が起工されて以来、現在まで3隻しか引き渡されていない。海外から軍艦を調達できるが、考えられる相手は中国だけで、外貨を必要とすることに加えてロシアの造船能力の不足を認めることになる。
(6) ロシアの空母「クズネツォフ」は過去15年間、海軍力の象徴的地位を占めているが、故障や火災等が続いたため2017年以降出港しておらず、ロシアの海軍航空士官には、もはや戦力外と見なされている。ロシア政府が、同艦を改装して延命するするとは考えにくい。
(7) 現存する2隻のキーロフ級巡洋戦艦、「ピョートル・ヴェリキー」と「アドミラル・ナヒーモフ」について、前者はウクライナ戦争において重要な役割を担っておらず、また後者は過去20年間にわたり改装中である。失った「モスクワ」とその姉妹艦同様に、地上攻撃能力はほとんどなく、逆にウクライナ軍の格好の標的になる恐れがある。キーロフ級もスラバ級も非常に古く、今後のロシア海軍の主役にはなれない。
(8) 両用戦部隊は、ウクライナ軍を一時的にオデーサに釘付けにしたが、同地に対し強襲上陸作戦を展開することも、蛇島への補給を維持することもできず、能力に大きな欠落があることを示している。フランスの「ミストラル」のような大型揚陸艦は、紛争初期には効果的であったかもしれないが、ウクライナが相当数の対艦ミサイルを獲得した現在は、攻撃目標として危険に晒されている。ロシアは、「ミストラル」と同規模の強襲揚陸艦を 2 隻建造中であるが、政府がその費用を負担できるか、ロシア造船界が完工させられるかどうか不透明である。
(9) 潜水艦はロシア海軍力の中核をなしている。ソ連崩壊後、ロシアの軍用造船業は衰退したが、潜水艦の建造については急速に回復した。ロシアの通常型および原子力潜水艦は、海外の潜水艦との競争力を維持している。対ウクライナ戦争では、潜水艦が港湾の封鎖を強化する一方、ウクライナ国内の目標に戦略ミサイル攻撃を実施している。しかし、潜水艦には水上艦部隊のすべての機能を代替することはできない。(10) ロシアの海軍力活用の歴史は、ひいき目に見ても未熟であり、短・中期的には哨戒艦艇や潜水艦部隊以上の海軍兵力は放棄すべきだという強硬な意見もある。ロシア政府は、ロシア海軍の水上艦部隊では、他の大国との戦闘に勝利することは困難であり、また、強力な水上艦部隊を建造・維持する余裕もないことを受け入れざるを得ない。一方、プーチン大統領は、大型で強力な水上艦部隊を保有することで権威を強化し、影響力を維持したいと考えている。ロシアが水上艦部隊による戦力投射能力を維持するために必要な投資を行うかどうかは、不透明である。
記事参照:Is The Russian Navy Doomed?

7月9日「米国主導の東南アジア戦略は南シナ海問題を複雑化させる:中国専門家警告―香港紙報道」(South China Morning Post, July 9, 2022)

 7月9日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、“South China Sea: US-led Southeast Asian strategy to contain Beijing would ‘complicate’ disputes, Chinese experts warn”と題する記事を掲載し、米国が東南アジア諸国と協働して新たな海洋法執行機関の創設を検討していることについて、その内容と背景、それに対して中国専門家の警告について、要旨以下のように報じている。
(1) U.S. Naval Instituteは米政府にある提案をした。それは、南シナ海において領有権を主張する中国海警や海上民兵の活動を抑制するために、同じく領有権を主張する関係各国が米国と合同で沿岸警備隊や漁業機関を統合し、新たな「海の騒擾対策戦略」を立案すべきだというものであった。それに対し、中国の専門家は、南シナ海における領土係争をより複雑にするとして警告している。
(2) 中国は南シナ海のほぼ全域について領有権を主張し、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾と争っている。匿名の中国国際法学者は、そこにU.S. Coast Guardが参入すれば問題はより複雑になると批判した。また南シナ海専門家曁南大学副教授張明亮によれば、中国海警と海上民兵は地域において優位な立場にあるが、そうした米国主導の海洋法執行機関によって脅威に直面することになるだろう。
(3) 東南アジア、南アジア、太平洋島嶼部におけるU.S. Coast Guardの展開およびその地域との協力を推進することは、「自由で開かれたインド太平洋」の維持を模索するBiden政権の主要な方針の1つである。その焦点は、訓練や能力構築に関する「地域内外における……持続的で創造的な協調」に当てられてきた。
(4) そうしたなか、U.S. Naval Instituteは、「海の騒擾対策」に関する構想を提示してきた。米国の海事専門家によれば、「海の騒擾」とは、中国海警や海上民兵によって引き起こされるものであり、それに対抗するために、米海軍、海兵隊、沿岸警備隊の海洋3軍種とアジアの提携国および同盟国の海事機関が協働し、運用可能な戦略を立案すべきだということである。
(5)彼らによれば、中国海警や民兵は、「グレーゾーン」において活動する。その活動に対し、米国その他の国々の海軍に適用されるRules of Engagementは厳しい対応を禁じている。中国の狙いは、大国との全面的な武力衝突を回避しつつ、生きるために南シナ海の利用に依存する370万人以上の人びとを屈服させることである。さらにその先にある戦略目標は、U.S. Naval War CollegeのHunter Stiresによれば、公海の自由という長期間にわたって確立されてきた原則をひっくり返すことだという。
(6) シンガポールNanyang Technological UniversityのInstitute of Defence and Strategic StudiesのCollin Kohは、中国民兵などの南シナ海におけるグレーゾーン活動は、政府によってさまざまな助成を受けた活動であり、それは地域の漁業に対して直接・間接的なさまざまな影響を与えていると述べている。民兵への助成はエネルギー支援などが主だったものであり、世界的なエネルギー危機のなかで東南アジアの漁業従事者たちの活動が制約されるなか、きわめて大きな意味を持っている。東南アジア諸国とU.S. Coast Guardとの協働は、そうした動きに対する断固とした対抗につながりうる。とはいえ、米国との連携の度合いは、その国々の事情によって幅があるだろう。中国との関係維持を重視する国もあるためである。
(7) 前述の国際法学者によれば、米国は中国に対抗するために準軍事的措置に関する研究を続けているという。米国にとって中国のグレーゾーン活動に対抗する最良の方法は、それを模倣することだと彼は主張する。しかしそれに対し、中国は東南アジア諸国との間に密接な経済関係を維持しているという地理的な優位を有する。
(8)マカオの軍事評論家黄東は、南シナ海における中国による武力の誇示が、東南アジア諸国に米国の保護を求めさせていると主張する。曁南大学の張明亮は、南シナ海の平和と安定を維持するために中国がすべきことは、何年も前に約束した基幹施設などの提供を進めることだという。中国政府は10年前に南沙諸島近辺で人工島を建設したとき、基幹施設提供などを関係各国に約束している。中国が約束を守らなければ、近隣諸国は中国との付き合いに不安を感じ、米国のような大国に支援を求めることになると張明亮は警告している。
記事参照:South China Sea: US-led Southeast Asian strategy to contain Beijing would ‘complicate’ disputes, Chinese experts warn

2022年7月「海上暴動対策計画始動-米専門家論説」(Proceedings, July, 2022)

 2022年7月付、The U.S. Naval Instituteが発行する月刊誌Proceedingsのウエブサイトは、U.S. Naval War CollegeのJohn B. Hattendorf Center for Maritime Historical Research研究員でThe Navy League of the United StatesのCenter for Maritime Strategy非常勤研究員Hunter Stiresの” The Maritime Counterinsurgency Project Begins”と題する論説を掲載し、ここでStiresは中国の暴動を阻止するために開始された海上暴動対策計画には、海上戦略分野の第一人者が集まり、米国とその同盟国が効果的に実施する方法を探っているとして、要旨以下のように述べている。
(1) 中国は東南アジア諸国が自国の排他的経済水域(EEZ)でエネルギー開発を進めた場合は攻撃すると脅し、中国海警総隊と海上民兵が漁船へは漁獲物を盗み、無線機や航海用機器を没収して岸に戻るよう強制し、さらに民間船舶を銃撃、衝突、撃沈し、乗組員を海中に放置して溺死させるなどの行為をしている。その目的は明確で米国の国益の基礎である海洋の自由という国際法のルールを覆すことである。一方、北京は自国の強権的、利己的、階層的な海洋主権の考えを押し付け、弱い沿岸国から海洋での基本権を奪っている。これを実現するため、中国はグレーゾーンで行動している。
(2) 中国の行動は暴動(insurgency)と称される。暴動とは交戦国が統治しようとする民間人に対して、新しい法律を累積的かつ強制的に施行し、既存の体制や法秩序を転覆させることであり、南シナ海などで中国が行っている。過去 10 年間、米国は単なる形だけの作戦と見なし、放置してきた。このグレーゾーンの脅威を阻止できなければ、米国の本格的な紛争への備えは無駄になる。
(3) 中国の海洋での暴動の成功は、米国と世界中を自由に航行する国に重大な結果をもたらす。民間船員が北京の命令に従わざるを得なくなり、南シナ海の90%に対する中国の主権が慣習国際法の事実や前例となり、海の自由が軍事力を持つ大陸国家の恣意的な意思に取って代わられる。これの回避には米海軍とその提携国、同盟国が知的資本を結集し、海洋暴動の流れを変えることが肝要である。
(4) そこでThe U.S. Naval Instituteの海上暴動対策計画が登場し、海上戦略分野の第一人者が集結し、米国とその同盟国が効果的に実施する方法を探っている。2019年5月の記事に始まり、今後も発表される。
記事参照:The Maritime Counterinsurgency Project Begins

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書
(1) How to Equip Ukraine to Break the Black Sea Blockade
https://foreignpolicy.com/2022/07/06/ukraine-war-russia-blockade-grain-exports-black-sea-odesa-shipping-uav-gray-eagle-mq-1/
Foreign Policy, July 6, 2022
By Bryan Clark is a senior fellow and director of the Center for Defense Concepts and Technology at Hudson Institute.
Peter Rough is a senior fellow at Hudson Institute in Washington, D.C.
 7月6日、Hudson Instituteの上席研究員Bryan ClarkとPeter Roughは、米ニュース誌Foeign Policyのウエブサイトに、“How to Equip Ukraine to Break the Black Sea Blockade”と題する論説を寄稿した。その中で、①ロシアによるウクライナ侵攻以来、西側諸国は戦争をウクライナの国境と近隣の黒海に限定し、ロシアとの軍事的対立と解釈されるようなことがないよう、注意を払ってきた。②そのため、米国とNATOは、ロシア軍が使用しているものとほぼ同等の短射程ミサイル、火砲、小型無人機をウクライナに提供した。③欧米の紛争封じ込め戦略の欠点は、ウクライナを果てしない戦争に追いやることであり、もう1つは、ロシアによるウクライナの黒海航路封鎖によって、穀物がウクライナの貯蔵庫に閉じ込められてしまい、世界経済を危機にさらしていることである。④事態の拡大を恐れ、米政府とNATOは、ロシアの黒海封鎖を破ることに消極的である。⑤Biden政権は、自国の航路を守るために必要な軍の装備、特に無人航空機(以下、UAVと言う)をウクライナに提供するべきである。⑥Biden政権が直近のウクライナ支援策の一環として発表した4機のMQ-1Cグレイ・イーグルUAVは、ロシアの封鎖を破る可能性がある。⑦Biden政権は、グレイ・イーグルの高性能のレーダーや監視のための構成機器がロシアの手に渡る可能性があるため、ウクライナへの売却を禁止している。⑧また、グレイ・イーグルの航続距離が長いため、ロシア国内を攻撃できることも懸念材料である。⑨黒海の航行の自由を維持することで世界的な惨事を防ぐ必要性は、ロシアが米国の技術を手に入れる危険性よりも大きいといった主張を行っている。

(2) Why Xi Jinping Might Not Really Want a ‘Hot War’ in Taiwan
https://www.nationalreview.com/2022/07/why-xi-jinping-might-not-really-want-a-hot-war-in-taiwan/?utm
National Review, July 9, 2022
By Therese Shaheen, a businesswoman and CEO of US Asia International. She was the chairman of the State Department’s American Institute in Taiwan from 2002 to 2004.
 2022年7月9日、American Institute in Taiwan(米国在台湾協会)元理事長のTherese Shaheenは、米隔週誌National Review電子版に" Why Xi Jinping Might Not Really Want a ‘Hot War’ in Taiwan "と題する論説を寄稿した。その中でShaheenは、現在のロシアとウクライナの戦争が、中国政府に多くの教訓を与えていることは事実であり、もし中国の軍事戦略家が、台湾は攻撃されれば急速に崩壊するという前提で侵攻を計画していたのなら、今こそその前提を見直すべきだろうとした上で、今回の紛争から学ぶことができるのは、なにも中国政府だけではないと指摘している。具体的にShaheenは、台湾はウクライナの国民とその指導者の決意と勇気が世界の多くの人々を統合へと向かわせ、ウクライナがロシアに対して激しい抵抗を行うことを可能にしたことを目の当たりにしていると指摘し、米国を含む台湾の友人たちは同盟国の連帯、協調した行動、戦略的な情報開示、物資の支援、迅速な意思決定の価値を学んでいると述べ、中国が台湾を武力で攻撃することは習近平にとってあまりに危険な賭けであると主張している。

(3) Securing US territorial rights in the Arctic: New actions to protect America’s
continental shelf
https://www.brookings.edu/wp-content/uploads/2022/07/FP_20220707_protecting_us_ecs_rights_bloom_greenwood_v2.pdf
Brookings, July 2022
By Evan T. Bloom, Senior Fellow, Polar Institute - Wilson Center
Jeremy Greenwood, Federal Executive Fellow - The Brookings Institution
 2022年7月7日、米シンクタンクWilson CenterのEvan T. Bloom主任研究員と米シンクタンクThe Brookings Institute でNavy Federal Executive Fellowshipに基づく研究員を務めるJeremy Greenwoodは、The Brookings Instituteのウエブサイトに" Securing US territorial rights in the Arctic: New actions to protect America’s continental shelf "と題する論説を寄稿した。その中でBloomとGreenwoodは、米国の延長大陸棚(以下、ECSと言う)問題を取り上げ、過去20年間、米国政府は北極海、大西洋、太平洋など、米国本土から遠い沖合に位置するECSの外延を確定するために、丹念に調査とデータ収集を行ってきたが、米国の様々な政権にまたがる長年の準備の後、国連海洋法条約(UNCLOS)に記載された法的枠組みと手続きを踏まえ、このデータをようやく世界に提示する準備が整ったと指摘している。その上でBloomとGreenwoodは、米国の政策立案者は、これらの地域における米国の権益を確保するための選択肢を慎重に検討する必要があるが、特に、早期かつ積極的な外交的働きかけ、議会との協議などが、米国政府が今後実施するECSに関する発表に対する幅広い支持を確保する鍵となるであろうと主張している。