海洋安全保障情報旬報 2022年6月1日-6月10日

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6月1日「少数国間枠組みがオーストラリアにとっていかなる重要性を持つか―オーストラリア安全保障問題専門家論説」(The Strategist, June 1, 2022)

 6月1日付のAustralian Strategic Policy InstituteのウエブサイトThe Strategist は、同Institute上席研究員Thomas Wilkinsの “The Quad and AUKUS strengthen Australia’s hand in a contested Indo-Pacific”と題する論説を掲載し、そこでWilkinsはQUADやAUKUSなどの少数国間枠組みが、インド太平洋におけるオーストラリアの立場を強化するために重要な意味を持つとして、要旨以下のように述べている。
(1) オーストラリアの新首相Anthony Albaneseが、5月下旬に開催されたQUADの首脳会談に出席した。選挙の勝利からわずか数時間後にその会談に向けて彼が出発したことは、オーストラリアがその少数国間枠組みに、前任者同様に重きを置いていることを意味している。
(2) 少数国間枠組みの定義は難しいが、本質的には、大体3ヵ国から6ヵ国の「志を同じくする」国による、共通の政策課題に対する解決に向けたまとまりと言えるだろう。より包括的な多国間枠組みと異なるのは、これが諸国間の対話に焦点を当て、しばしば合意に至ることすら困難であるのに対し、少数国間枠組みは共通の目的を持ち、包括的な議題を共有する場合もあるが、経済や安全保障など特定の争点に焦点を当てる傾向がある。安全保障に焦点を当てる場合でも、近年は経済、環境、公衆衛生など非伝統的な安全保障の問題に焦点が当てられる傾向がある。また、比較的非公式の制度であることが多く、柔軟性があり、軍事同盟のような拘束力を持たない場合が多い。したがって協力の幅を広げたり、構成国が増えたりすることもあるが、無思慮な拡大が進めばそれは事実上の多国間協力になってしまうだろう。
(3) 少数国間枠組みは、ASEANプラスのような多国間安全保障機構とは異なる特徴を持つが、他方で、そうした機構との間の緊張関係のなかに存在する。たとえばQUADは公にはASEANの「中心性」に対して敬意を払っている。他方でAUKUSはASEANに言及していないため、ASEANからは懐疑的に見られている。
(4) オーストラリアがこれまで少数国間枠組みの形成に熱心であったことは簡単に説明できる。地政学的に中流国家と位置づけられるオーストラリアはインド太平洋における対立の影響を強く受けるが、自国だけで安全保障を維持できる基盤を欠いている。このため、同盟や提携、少数国間枠組みが、自国の国益を守るために必要なのである。また、QUADやAUKUSなどは、インド太平洋における米国の「ハブ&スポーク」網に組み込まれており、オーストラリアはその大きな枠組みにも依存している。
(5) QUADやAUKUSなどへのオーストラリアの貢献は、提携国によって肯定的に評価されている。オーストラリアは地理戦略的位置(特にノーザン・テリトリーの訓練施設など)や特に太平洋南部における外交的影響力を提供し、その代わりにオーストラリアは大国との交流を深化させ、先進的な防衛技術を利用できるようになる。それによってオーストラリアの提携国としての魅力が高まり、「好循環」が生まれる。
(6) オーストラリアがかかわる少数国間枠組みについては、QUADとAUKUSが最近の議論の中心であるが、他にもなお重要なものがある。その1つに、日米豪3ヵ国の戦略対話(Trilateral Strategic Dialogue :TSD)は高い潜在性を有している。ただしこれは、2019年に最後の会合が行われてから、再開が先延ばしになっている。これは日米豪の3ヵ国をより緊密なつながりにするものであり、特に伝統的な軍事的脅威への対処においてそうなる。また、QUADと異なり、ウクライナ侵攻に対するインドの態度などのように戦略的な発信に関するあいまいさをあまり持たない。他にもいくつかの少数国間枠組みはあるが、これらすべてがQUADやAUKUSほどに注目を集めたわけでも、有効性を持つわけでもない。
(7) もちろん、6ヵ国協議や日中韓協力事務局など、消滅ないし勢いを失った少数国間枠組みもあり、どの枠組みにもそうした可能性がある。ただし、QUADやAUKUSの展望については楽観的に見てよいだろう。オーストラリアは、これら主要な少数国間枠組みを統合し、米国の同盟関係などより大きな枠組みとの貴重な結節点を生み出すことに大きな利点を有する。オーストラリアにとって、これら少数国間枠組みはその外交・戦略に強力な手段を提供するのである。
記事参照:The Quad and AUKUS strengthen Australia’s hand in a contested Indo-Pacific

6月1日「米中対立の渦中で開催されるRIMPAC―香港紙報道」(South China Morning Post, June 1, 2022)

 6月1日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、“US to be joined by other Quad members, South China Sea nations for Rimpac war games”と題する記事を掲載し、6月29日から8月4日まで行われる、26ヵ国が参加するRIMPAC(環太平洋合同演習)について、要旨以下のように報じている。
(1) 6月末に行われる世界最大の海軍軍事演習には、米軍以外に、他のQUAD構成国や東南アジア5ヵ国を含む25ヵ国の部隊、総勢2万5千人が参加する予定である。参加部隊には9ヵ国の地上部隊も含まれている。1971年に初めて開催されたこの訓練は、ハワイ諸島と南カリフォルニア周辺で行われる予定である。
(2) 係争中の南シナ海に面したシンガポール、タイ、インドネシア、ブルネイ及びフィリピンの5ヵ国もRIMPACに参加する予定であり、中国が関与を強めている地域の太平洋島嶼国トンガも含まれている。米海軍の声明によると、これらがRIMPACに参加することは、災害救援や海洋安全保障活動から複雑な戦闘に至るまで、「幅広い能力の訓練を行い、海洋戦力に本来備わっている柔軟性を示す」ものである。「RIMPACの期間中、有能で適応力のある提携国とのネットワークは、集団による戦力を強化し、自由で開かれたインド太平洋を促進するために、共に訓練し、作戦行動を取る」と声明は述べている。
(3) 中国軍は2014年に初めてRIMPAC演習に参加したが、U.S. Department of Defenseが南シナ海の係争中の島々で急速に軍事力を増強していると考えていることを理由に、2018年の中国の招待は取り消された。米国、英国、オーストラリアは2021年9月、AUKUSと呼ばれる新たな安全保障同盟を発表したが、これは中国の影響力に対抗することが明確な取り組みである。5月、東京で開催された首脳会議で、QUADは、違法漁業を監視するための追跡システムに衛星技術を利用するという構想を発表した。3月には、U.S. National Security Councilのインド太平洋調整官Kurt Campbellと中国担当部長Laura Rosenbergerが、米中間の火種となっている台湾について、英国当局者たちと会談を行ったと報じられている。
(4) 上海政法大学の倪楽雄教授は、「中国はウクライナでの戦争でロシアに味方していると見られることが多くなっている。・・・中国は現在、難しい立場にある」と述べている。米政府は、日本などとの2国間同盟、AUKUSのような3国間同盟、4ヵ国が参加するQUADなど中国に対して「重層的な封じ込め」網を強化しようとしていると倪教授は語っており、「すぐに戦争が起こるとは言わないが、米国と違って、中国はそれほど多くの国を集めることは無理だろう」と彼は述べている。
記事参照:US to be joined by other Quad members, South China Sea nations for Rimpac war games

6月2日「ウクライナ戦争によって戦略的重要性がさらに高まる北極圏―北極圏専門メディア報道」(Arctic Today, June 2, 2022)

 6月2日付の環北極メディア協力組織Arctic Todayのウエブサイトは、“A changing Arctic could bring ‘potential conflict,’ Biden says”と題する記事を掲載し、ロシアのウクライナ侵攻に伴って、北極圏の戦略的重要性がさらに高まっているとして、要旨以下のように報じている。
(1) 気候変動が北極圏に前例のない環境の激変をもたらす中、この地域が紛争の可能性にさらされると、Joe Biden米大統領は6月1日、U.S. Coast Guard司令官交代式で演説した。気候変動が「より異常な天候と増加する移民の流れ」をもたらす中、U.S. Coast Guardは海洋安全保障と法に基づく国際秩序を維持し、海上交通路を開かれたものにして保護する上でより大きな役割を担うことになるだろうとBidenは述べている。
(2) U.S. Coast Guardは、北極圏において水上で常駐する唯一の米国の機関であり、その指導者たちは、老朽化した砕氷船隊への迅速な資本の増強を主張しているが、この過程は非常に遅れている。Bidenは、気候変動に関する議論では頻繁に北極圏を引き合いに出すが、この地域における紛争の可能性など、他の文脈では滅多に言及しない。「Bidenが公の場で北極圏について発言するのは最近のことである」と、元米国防次官補代理(欧州・NATO担当)でCenter for a New American Security研究員Jim Townsendは語っている。
(3) 北極圏の変化は、特にロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学上の劇的な変化を踏まえ、その注目が高まっている。隣接するスウェーデンやフィンランドがNATO加盟を申請し、北極評議会の他の7ヵ国が共同作業を一時中断するという前代未聞の事態になった。この作業が再開されれば、北極評議会のロシアを除く全ての加盟国がNATO加盟国となり、北極圏の国々はNATOの中で存在感を増し、北方に対するこの同盟のあり方に影響を及ぼす可能性がある。
(4) Townsendは、「海氷が溶けることで、自然による気候の問題や激変だけでなく、これらの地域が世界の火種になり始めている」と述べている。また、資源の確保や採取を誰が行うかなど、よりソフトな安全保障をめぐって紛争が起こる可能性もある。経済制裁の後、「ロシア自身が、北極圏にさらに資源を求め、経済の回復を試みるだろう」とTownsendは言う。その中には中国からのより大きな投資も含まれる可能性があり、この地域の地政学的な均衡にさらに影響を及ぼすことになる。
(5) かつて第2次世界大戦や冷戦時代には、主に他の場所で起きている行動を支援するために、北極圏は軍事的に重要だったのであり、必ずしも軍事活動そのものを行う場所ではなかった。しかし、今回のBidenの発言はこの状況が変わりつつあることを示唆している。「気候変動によってロシアの北にある北極海航路が開かれ、ノルウェーの北の北方艦隊の地域にあるロシアの戦略核能力の一部が脆弱になる可能性があり、それが現在北極圏をさらに戦略的に重要にし、不安定にしている」とTownsendは述べている。ウクライナにおける戦争は、軍事的に依然として優位に立てる場所としてロシアを北極圏に目を向けさせている。つまり、ロシアは、戦力投射能力を持続させるための北方への展開と能力を強化する可能性があることを意味する、とTownsendは語った。
(6) 北極圏は長い間、平和と協調の地帯と見なされており、紛争の可能性を誇張しないことが重要だとTownsendは語っている。同時に、物理的・政治的環境が急速に変化している地域を注視していくことが不可欠である。
記事参照:A changing Arctic could bring ‘potential conflict,’ Biden says

6月2日「中国外交部部長が太平洋諸島を歴訪しているとき、U.S. Coast Guardはすでにパトロールに就いている―米ニュースチャンネル報道」(CNN, June 2, 2022)

 6月2日付の米ニュースチャンネルCNNのウエブサイトは、“While China makes Pacific islands tour, US Coast Guard is already on patrol”と題する記事を掲載し、中国の王毅外交部部長が 経済・安全保障協力を促進するため太平洋島嶼国を歴訪している間にも、U.S. Coast Guardの巡視船がこの地域に対する米国の長年の関与を強化するため活動していることからもわかるように、U.S. Coast Guardが太平洋島嶼国と築いてきた関係はとても深く重要であるとして、要旨以下のように報じている。
(1) 中国外交部部長が 中国との経済・安全保障協力を促進するため太平洋島嶼国を歴訪している間にも、米国の軍隊の中で最も小さい軍種すなわちU.S. Coast Guardが、この地域に対する米国の長年の関与を強化するためすでに現場で活動している。
(2) ソロモン諸島の警察の船舶が修理を必要としたため、ソロモン諸島からの要請に応えて、U.S. Coast Guardは、巡視船「マートル・ハザード」をソロモンの排他的経済水域に派遣し、哨戒を実施した。ソロモン諸島は、中国の王毅外交部部長の10日間の太平洋地域外交歴訪の最初の訪問地である。U.S. Coast Guardの記者発表は、巡視船は「ソロモン諸島北部における違法・無報告・無規制漁業(IUU漁業)を阻止するために海上監視を実施することによって運用上の必要な展開を埋めるのに役立った」と述べている。巡視船「マートル・ハザード」は、ブルー・パシフィック作戦(Operation Blue Pacific)の一部として地域で活動している。ブルー・パシフィック作戦とは、U.S. Coast Guardによる「包括的で多様なミッションであり、オセアニアの安全保障、安全、主権、経済的繁栄を促進し関係を強化する」ものである。ソロモン諸島は、キリバス、サモア、フィジー、トンガ、パプア・ニューギニアなどと並んで、ブルー・パシフィック作戦の下で米国が支援しているいくつかの太平洋島嶼国の1つであり、これらすべての国を中国外交部部長は今回のツアーで訪問する。
(3) CNNが調べた文書によると、中国は多くの太平洋島嶼国に包括的な地域安全保障・経済協定を提案していた。教育や保健を含む幅広い分野に触れたこの協定は、2022年5月30日にフィジーで行われた太平洋島嶼国10ヵ国の国王と外相との会合を目標にしていた。中国では何が起こっているのか、そしてそれは世界の他の国々にとって何を意味するのか?会議は提案された合意書に署名することなく終了したが、王毅外交部部長は代わりにこれらの国々と5つの「合意のポイント」に到達したと指摘した。これらの分野は戦略的パートナーシップの強化や共通の発展の追求など、主に一般的な声明であり、安全保障関連事項は含まれていなかった。もし、この協定が受け入れられていたならば、インド太平洋で地政学的に重要な意味を持つこの地域との中国のつながりに大きな前進を示すものとなったであろう。王毅外交部部長は、5月30日にフィジーで行われた記者会見において中国が太平洋島嶼国を「積極的に支援」している理由についての質問に「中国と他のすべての発展途上国の共通の発展と繁栄は全世界の偉大な調和、より大きな正義、より大きな進歩を意味するだけなので、あまり心配しないでほしい、神経質にならないでほしい」と答えて、自国の意図を弁護している。
(4) 中国が押し寄せる中、この地域におけるU.S. Coast Guardの努力はあまり注目されていない。しかし、それは重要なものであり、Biden政権のインド太平洋戦略の一環である。米戦略行動計画は、「我々は、助言、訓練、配備、能力構築に焦点を当てて、東南アジア、南アジア、太平洋島嶼国におけるU.S. Coast Guardのプレゼンスと協力を拡大する」と述べている。U.S. Coast Guardのウエブサイトは、巡視船が過去2年間に何百日もかけて、太平洋島嶼国を支援するために何千海里も航海したことを示している。U.S. Coast Guardの出版物によると、この地域における米国の影響力の重要な部分の1つはクック諸島、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロメシア、パラオ、ナウル、サモア、トンガ、ツバルとバヌアツを含む11の太平洋諸国との「シップライダー協定(shiprider agreements) 」によるものである。この協定に基づき、提携国の軍及び法執行機関の要員は、島嶼国の排他的経済水域において自国の法律を執行するために米国の巡視船に乗り込んでいる。
(5) シンガポールのThe S. Rajaratnam School of International Studies(RSIS)の研究員Collin Kohは、U.S. Coast Guardが太平洋島嶼国と築いてきた関係はとても深いと述べている。Kohは、その「防衛と安全保障関係の制度化されたネットワーク」は中国が同じものを作り上げるには苦労するだろう、また「米国を含む地政学的なライバルが何十年もこの地域で培ってきたパートナーシップネットワークの規模を中国は十分に享受していない」と述べている。魚類が島嶼国の主要な食料源であり、漁業が主要な経済的推進力であるので、ブルー・パシフィック作戦の重点は違法・無報告・無規制漁業を阻止することであるとU.S. Coast Guardは述べている。それは中国に大きく関係している。米シンクタンクBrookings Instituteの2021年の報告書によると、中国の漁船団は世界最大の漁船団であり「漁獲を求めて世界中を飛び回り、他国、特に発展途上国の排他的経済水域内での漁業で悪名高い」と言われている。Kohは、中国の漁業活動の範囲はこの地域で肯定的な力となっているという中国の主張は役に立たない、「中国の漁船は必ずしも好意的に見られているわけではなく、巨大な遠洋の漁船団であり、地元の漁船を追い抜いたり、追い払ったりして操業できる大型で装備の整った漁船を持っている」と述べている。
(6) 退役した米海軍大佐でUS Pacific Command's Joint Intelligence Center(米太平洋軍統合情報センター)の元作戦部長Carl Schusterは、U.S. Coast Guardは「太平洋島嶼国との関係構築に関してはほぼ完璧である。U.S. Coast Guardの巡視船は他国の船舶を脅かしているわけではなく、他国の船舶と同じくらい人々を救助している。中部太平洋と西部太平洋の関係にとって、U.S. Coast Guardの重要性を過小評価してはいけない」と述べている。一部の専門家は、中国には米国がこの地域で行っていることを行うことができる装備の整った沿岸警備隊があると指摘しているが、Kohは少なくとも短期的には、中国がU.S. Coast Guardと同じことを行えるとは見ていない。Kohは、南シナ海や東シナ海のような中国近海での中国と他国のいざこざを指摘し、漁業権と領土領海の主張をめぐる他国との紛争が中国海警総隊を忙しくさせており、そのことはまた、公正な仲介者としての中国の信頼性を疑問視させ、U.S. Coast Guardに優位を与えていると述べ、「中国が米国の現在行っていることと似たようなことを推進するための十分な政治的な資産を持っているとは思われない」と指摘している。
記事参照:While China makes Pacific islands tour, US Coast Guard is already on patrol

6月5日「台湾に対する米国の新たな戦略―米専門家論説」(19FortyFive, June 5, 2020)

 6月5日付の米安全保障関連シンクタンク19FortyFiveのウエブサイトは、Donald J. Trump米大統領の下で国家安全保障担当特別補佐官であったJohn R. Boltonの” Beyond Weapons: Time For A New U.S. Strategy On Taiwan”と題する論説を掲載し、そこでBoltonは台湾が拡大した連合国への軍事的役割を適切に提供するには、有志連合の国々に責任を負わせ、それに応じて装備することが必要であると、要旨以下のように述べている。
(1) ロシアのウクライナ侵攻は、台湾が中国の攻撃に対して脆弱であることを浮き彫りにした。また、欧米のウクライナへの支援、特に情報の共有はその防衛に大きく貢献したが、根底にある抑止力の失敗は悲劇を生んだ。ロシアによる攻撃開始以前に、米国とその同盟国は、信頼性、結束、そして地政学的問題に対する十分な理解を欠いていた。その結果は日々明らかになっている。中国と台湾はこれを注視しており、台湾政府が中国政府に対する抑止力と防衛力を最大限に発揮するために必要な軍事力をめぐる議論が加速している。残念ながら、ウクライナと同様、この議論は広範囲の政治的・軍事的基盤を欠いている。また、台湾は中国の軍事力に脅威を感じている。Biden政権の近視眼は、台湾だけでなく、インド太平洋全体の中国の好戦性に対する抵抗力を強化する重要な機会を逸している。
(2) 米国にとって、台湾に対する効果的な抑止力の導入が、「守る」あるいは適切な兵器を保有するかどうかというのは政治的・軍事的な枠組みとしてはあまりに狭い。台湾は孤立した問題ではなく、インド太平洋地域、さらには世界の対中戦略にとって重要な要素である。台湾はもはや国共内戦の「敗者側」ではなく、機能的に独立した国家であり、今後もそうあり続けるつもりである。台湾の経済成長は米国や世界にとって重要である。その台湾の強固な民主主義は中国との対立を望んでいない。
(3) 1949年以降、社会、政治、経済が劇的に変化した台湾では、「戦略的曖昧性」と同様、「一つの中国」という概念も終わりと見て間違いない。Biden大統領は、もし台湾が攻撃されたならば米国は台湾を守ると3回発言し、3回とも政権幹部はそうでないふりをしようとした。もし米国が、「戦略的曖昧性からの転換」を進めていないのであれば、それを明言すべきで、「戦略的曖昧性」を捨て台北を同盟国として見ているのであれば、それを明確に打ち出さなければならない。そうすることで、両国、そして中国の脅威を同様に評価するインド太平洋地域のすべての人々に利益をもたらすことができる。
(4) インド太平洋地域全体で台湾政府との軍事協力を拡大することは、台湾を政治的に隔離しようとする北京の強硬な姿勢を崩す最も効果的な方法となり得る。米国が台湾に提供すべき航空機、ミサイル、火砲、戦闘車両等を決定することは重要であるが、より大きな理想、それは中国の脅威に対処するために形成されつつある同盟や連合に台湾を取り込んでいることが必要である。それが真の「統合防衛」となる。その理由は、中国と太平洋の間にある「第一列島線」という台湾の重要な地理的位置により説明できる。台湾は、東シナ海以外にも、南シナ海の領有権を継承している。台湾の海空軍の艦艇、航空機は、他国の海軍とともに、航行の自由を確保し、この海域における中国政府の根拠のない主権主張をはねつける役割を果たすことができる。
(5) 先ごろ東京で行われたインド、日本、オーストラリア、米国の4ヵ国首脳会議で、「海洋状況把握のためのインド太平洋パートナーシップ」(以下、IPMDAと言う)が発足した。このIPMDAは、関係国の海域におけるほぼリアルタイムの活動を、早く、広く、そして正確に把握することを目的としており、台湾を含む他国との即時協議を想定している。したがって、IPMDAと同じ日に発表された「インド太平洋経済枠組み」(以下、IPEFと言う)に台湾を含めなかったのは、大きな失望であり、大きな誤りである。台湾はWTO加盟国である。米国が台湾との2国間経済関係を強化し続けることを、IPEF参加に置き換えるのは明らかに不十分である。もし他のIPEF加盟国が台湾を含めることに対する中国政府の反応を恐れたとしたら、それは中国の脅威をまだ過小評価していると言える。そして近い将来、他の必要かつ適切な措置をとることを恐れることになる。このような臆病な姿勢は、IPEFの将来にとってよいことではない。
(6) 台湾の広範囲で適切な地域的役割は、Biden大統領の顧問らが強く求めている中国の潜在的水陸両用攻撃に対する防衛兵器だけでは果たすことができない。その視点は、あまりにも狭すぎる。事実、IPMDA や IPEF も含め、米国の効果的な地域戦略は損なわれている。台湾に対して連合を基礎として、拡大する軍事的役割を適切に提供するには、有志連合参加国の責任を評価し、それに応じて参加国の装備を整えていくことが必要である。そうすれば、台湾だけでなく、中国政府の好戦性に対抗する多くの地域諸国を支援できる特定の兵器システムを評価するという現実的な背景を得ることができる。
記事参照:Beyond Weapons: Time For A New U.S. Strategy On Taiwan

6月6日「韓国、原子力潜水艦をしっかりと視野に―ロシア専門家論説」(Asia Times, June 6, 2022)

South Korea has nuclear subs firmly in its sights
https://asiatimes.com/2022/06/south-korea-has-nuclear-subs-firmly-in-its-sights/
Asia Times, June 6, 2022
By Gabriel Honrada, a Moscow-based Russian government scholar
 6月6日付の香港のデジタル紙Asia Timesは、ロシアの政府系研究者Gabriel Honradaの“South Korea has nuclear subs firmly in its sights”と題する論説を掲載し、Gabriel Honradaは5月に米韓が小型モジュール炉技術の共有について合意したことは、韓国が原子力潜水艦の国内開発を行う道を開くものであるとした上で、韓国の原子力潜水艦計画は北朝鮮が海上配備の核戦力の一部として同様の潜水艦を建造しようとしていることや紛争の際に米国が韓国の後ろ盾になってくれないかもしれないという不安に後押しされてかもしれないが、韓国が原子力潜水艦を国際開発する軍事的、政治的根拠は不明確であり、さらに建造施設、廃棄施設、要員養成の準備など多くの問題に直面すると指摘して、要旨以下のように述べている。
(1) 5月、米韓は小型モジュール炉技術(以下、SMRと言う)の共有について合意した。この動きは韓国政府が原子力潜水艦の国内開発を開く可能性がある。公表された合意は、長年にわたり米国が韓国に対して制限してきた核技術の共有に関する政策の変化を示している。最近の米韓首脳会談において、韓国は米国が主導する小型モジュール炉技術の責任ある利用のための基盤(Responsible Use of Small Modular Reactor Technology:FIRST)に正式に加盟した。
(2) メディアが報じた匿名の情報筋によれば、韓国Defines Acquisition Program Administration(防衛事業庁)、韓国海軍、Daewoo Shipbuilding & Marine Engineering(大宇造船海洋)、原子力潜水艦建造に関する技能を有する外国企業の代表が出席した技術会議が行われている。「軍は、韓国の安全舗装環境、技術と予算の制約など多くの項目を検討し、決定する」と国防部は5月30日の週に発表した声明で述べている。
(3) 韓国が秘密裏に原子力潜水艦開発計画を発動したのは2003年に遡る。Moon Jae-in(文在寅)が2017年大統領選に勝利した際、「我々が原子力潜水艦を取得するときである」と宣明している。大統領就任直後、Moon Jae-inは韓国の原子力産業育成の支援を得るべく米国に接近した。
(4) 最近、韓国の原子力潜水艦計画は北朝鮮が海上配備の核戦力の一部として同様の潜水艦を建造しようとしていることで後押しされている。2021年1月、北朝鮮指導者Kim Jong Un(金正恩)は原子力潜水艦開発の研究が終了し、設計は最終見直し段階にあると発言している。北朝鮮は、北朝鮮に対してタカ派の姿勢を採る新韓国大統領Yoon Sok-yeol(尹錫悦)に対する警告として潜水艦発射弾道ミサイルの実験を積極的に実施してきた。
(5) 米国は、北朝鮮の核兵器、予測不可能な敵対的行動と声明を見て、北朝鮮に対する確固たる姿勢を採ることに消極的かもしれない。米国は紛争の際に後ろ盾とならないかもしれないという長い間の認識が、韓国が原子力潜水艦取得を推進する一因かもしれない。
(6) 北朝鮮に対する卓越した対潜能力、優勢な通常型潜水艦部隊、複雑な対中関係を考えると、韓国が原子力潜水艦を取得しようとする軍事的、政治的な根本的理由は完全には明らかではない。北朝鮮の大仰な声明にもかかわらず、原子力潜水艦を建造できるのか、特に現下の厳しい経済状況下で可能なのかは全く不明瞭である。北朝鮮の主張が現実よりずっと仰々しいものであるのであれば、韓国の原子力潜水艦取得は不必要なものかもしれない。
もし、北朝鮮が原子力潜水艦を開発すれば、韓国の原子力潜水艦は北朝鮮の縦深部にある目標を攻撃する通常弾頭装備の弾道ミサイルあるいは巡航ミサイルを装備することになるだろう。このような任務に原子力潜水艦を投入することはやり過ぎだろう。韓国は同様の任務をより安く遂行できる大規模な通常型潜水艦部隊を保有している。原子力潜水艦のほぼ無限に近い航続距離は、朝鮮半島とその周辺海域に焦点を当てる韓国の軍事力を向上させることにはならないだろう。
(7) 北朝鮮との交渉の場で必要な中国を封じ込めようとする米国主導の試みは、韓国の戦略的利益に完全には一致しないが、韓国は東シナ海、南シナ海のおいて起こるかもしれない紛争において米軍を支援して原子力潜水艦を運用するかもしれない。韓国は、南シナ海に領有権にかかわる主張を行っていないため、南シナ海の係争には腰の引けた姿勢を採っている。韓国はまた、自国の領海及び領空への中国の侵犯に対して目立った対応を採っていない。
(8) 原子力潜水艦取得に関して、韓国の軍事的、政治的な理論的根強に対する疑問は別にして、原子力潜水艦を国内建造するためには実行する上で後方支援上の、そして技術的な様々な問題に直面するだろう。問題の1つは、韓国は原子力潜水艦の設計、建造に必要な専任の工員、施設を保有していない。加えて、韓国のSMRは、信頼性、耐久性、運動性能、滞洋性、音響特性といった基本設計基準に合格した原子力潜水艦に搭載して運用できるように十分に小型で、出力があり、信頼性が高く、安全である必要がある。韓国が放射性物質、核燃料の濃縮、核を取り扱う高度な特殊技能を求められる乗組員、技術者の訓練をどのようにするのかは明らかではない。原子力潜水艦の廃棄も重要な問題であり、指定された廃棄施設が必要であるが、現在、韓国にはそのような施設はない。
(9) 今日米国は、核拡散への懸念から韓国に核燃料を提供し、あるいは韓国が保有するウラニウムの濃縮を許可することに消極的である。これは韓国が原子力推進潜水艦計画を推進するのであれば、自国のウラニウムを濃縮することを意味し、朝鮮半島非核化の努力に逆行することになる。韓国のこのような動きは、北朝鮮が核兵器計画と残存性の高い発射システムの構築努力を加速する可能性がある。
(10) 韓国が原子力潜水艦を取得する軍事的、政治的根拠がほとんどないことから、韓国の原子力潜水艦を取得したいという希望はもっと他の要因によって突き動かされているかもしれない。原子力潜水艦取得に反対する議論にもかかわらず、Yoon Sok-yeol(尹錫悦)大統領は米国との同盟関係の強化、QUAD作業部会への参加など前政権よりも積極的な対外政策を提起している。その方向性の中で、多くの艦種、機種からなる外洋海軍を保有することは理にかなっている。韓国が原子力潜水艦を取得すれば、米国、フランス、英国、ロシア、中国、そしてインドのように原子力潜水艦を運用するエリートクラブに入ることになる。原子力潜水艦を運用するという威信は、技術ナショナリズムを振りかざし、伝統的な競争者であり、歴史的に対抗心を燃やす日本に対して韓国を優位に立たせるものになる。
記事参照:South Korea has nuclear subs firmly in its sights

6月7日「南太平洋で失速する中国―ニュージーランド・ジャーナリスト論説」(NIKKEI ASIA, June 7, 2022)

 6月7日付の日経英文メディアNIKKEI ASIA電子版は、太平洋問題を専門とするジャーナリストMichael Fieldの“China loses its way in the South Pacific”と題する論説を掲載し、そこでFieldは中国の王毅外交部部長の太平洋島嶼諸国歴訪が全体としてうまくいかなかったとして、要旨以下のように述べている。
(1) 1976年、中華人民共和国とサモアが外交関係を樹立した。それに関する公の式典は行われなかったが、中国は重慶から雑技団を派遣し、当時15万だった人口の3分の2がそれを見に行ったとされる。中国のソフトパワーが勝利した。それから40年、中国の王毅外交部部長が太平洋島嶼諸国8ヵ国への外遊を終えたが、この外遊で王毅は太平洋島嶼の国々を苛立たせてしまった。
(2) 王毅は、「大国も小国も平等」という習近平の考えを、太平洋島嶼諸国も共有していると考えていた。しかし彼は、「中国と太平洋島嶼諸国」という文書を売り込みつつ、自分が訪問している国々が個別のものであるという意識をほとんど持っていなかった。この地域の主要な政治的集合体である太平洋フォーラムではミクロネシアとポリネシアの間で対立があり、サモアとソロモン諸島も別々の利害を持つ国なのである。
(3) 中国は、フィジーのVoreqe Bainimarama首相が太平洋諸島フォーラム議長として周辺諸国から合意を得ていると思いこんでいたが、実際にはCovid-19の制約により消去法で選ばれたにすぎなかった。彼はクーデタによって政権を奪取してからの10年間はフォーラムへの出席を拒否し、またオーストラリアとニュージーランドの排除を目論んでもいた。またサモアのFiame Naomi Mata'afa首相は、王毅が提示した文書に対して検討する時間がなかったことを理由に受け入れなかった。
(4) 「中国と太平洋島嶼諸国」は、法執行を含む治外法権を各国に求めていた(フィジーではすでに同様の協定がある)。また中国は「企業間の協力のためのより友好的な政策環境」と「中国人の特別な法的扱い」を求めたが、それは、過去の植民地時代に西洋列強が推し進めた方法に倣ったものである。この20年間で中国漁船による活動がこの地域で爆発的に増えたことも、各国に警戒心を抱かせており、中国漁業の拡大を模索した政策を太平洋島嶼諸国が受け入れる見込みはなかったのである。さらに王毅は訪問した各国で地元のジャーナリストの質問を受け付けなかったことで、多くの反感を買ってしまった。
(5) オーストラリアの総選挙も中国は考慮に入れていなかった。5月末、太平洋島嶼諸国に対して寛大な方針を打ち出した新政権が誕生したのである。新外相Penny Wongの太平洋島嶼諸国訪問は、王毅の訪問よりも大きな成果を上げている。
(6) 習近平が2014年に太平洋島嶼国を訪問した時、彼はトンガに借款を供与した。その債務は同国にとって重荷であり続けているが、中国はトンガからの救済の要請を無視している。今回王毅は、国王Tupou VIに謁見したが、労働者を派遣し王室の陵墓を清掃させることしか約束できなかった。
(7) 王毅はいくつかの2国間経済開発協定という成果をもって帰国したが、大きな協定はなかった。太平洋島嶼諸国には再度話し合うと言われたが、彼らの本音は「ノー」であろう。王毅の「中国と太平洋島嶼諸国」は、数人の雑技団の訪問を受け入れるよう太平洋島嶼諸国に要請したが、1977年の良い記憶ゆえのことであろう。
記事参照:China loses its way in the South Pacific

6月8日「QUADにとって北朝鮮問題が持つ意味―インド博士課程院生論説」(The Interpreter, June 8, 2022)

 6月8日付の豪シンクタンクLowy InstituteのウエブサイトThe Interpreter は、インドUniversity of Delhiの博士課程院生Cherry Hitkariの“The Pyongyang problem for the Quad”と題する論説を掲載し、そこでHitkariはQUADにとって北朝鮮問題がどのような意味を持つかについて、要旨以下のように述べている。
(1) 北朝鮮は、Biden大統領がアジアを訪問している間はミサイル発射を控えており、他方米国は大統領のアジア訪問の間に北朝鮮が武力の示威を行うかどうかに備えていた。東京で行われたQUAD首脳会談において、北朝鮮問題は各国首脳の念頭にあった。共同声明では北朝鮮によるミサイル発射を非難し、朝鮮半島の非核化のための対話に参加するよう要求し、日本の拉致問題の速やかな解決の必要性を強調した。またBidenはソウルを訪問し、QUADへの参加を前向きに考えている新大統領Yoon Suk-yeol(尹錫悦)と会談して、北朝鮮抑止について話し合っている。
(2) しかしQUADの焦点は明らかに中国である。この首脳会談ではいくつかの野心的な段階が踏まれた。たとえば南シナ海などで「論争の的になっている」環礁や岩などの軍事化に対する非難、海洋状況把握に関する協力の推進、インド太平洋13ヵ国にまたがる経済枠組み形成などである。またBiden大統領は、中国の台湾軍事侵攻に対して米国が軍事力を行使する可能性を残しておくと述べている。
(3) このようにQUADの焦点はたしかに中国であるが、北朝鮮問題はなおQUADにとって重要な問題である。中国は北朝鮮との関係を揺るぎないものとし、北朝鮮の金正恩は中国の習近平に対し、米国とその同盟国による脅威をともに「妨害する」と誓っている。中国はこれまで長い間、北朝鮮の経済的依存度の高さを利用して、地域における米国の存在感を不安定化させようとしてきた。中国にとって北朝鮮の支援は、QUADの計画を頓挫させる効果的な方法である。
(4) しかしこうした状況に対して、QUADは自分たちの有利になるように事を進めることができるはずである。原則として、「米国主導」の構想は「米国支配」のそれになってはならず、各国間の対等性は絶対に維持されねばならない。また海洋汚染など非伝統的な安全保障上の問題について協力を進めるべきであろう。北朝鮮に重点を置くと、QUADの焦点がぼやけてしまう。
(5) 最後に、中国と北朝鮮の2国間関係の弱さを認識すべきである。最近の北朝鮮は中国への依存度を低めようとしているようにも見える。北朝鮮の経済、食糧問題が逼迫しているなか、QUADは協力と引き換えに援助を申し出ることもできよう。
記事参照:The Pyongyang problem for the Quad

6月8日「インド太平洋海洋状況把握に関する協力が内包する多くの問題点―中国南海研究院専門家論説」(South China Morning Post, June 8, 2022)

 6月8日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、中国南海研究院の非常勤上席研究員Mark J. Valenciaの“Quad’s Indo-Pacific maritime initiative raises more questions than answers”と題する論説を掲載し、そこでValenciaは、5月に実施されたQUAD首脳会談において海洋状況把握に関する協力の推進が打ち出されたことに言及し、それが多くの問題を抱えているとして、要旨以下のように述べている。
(1) 今年5月に東京でQUADの首脳会談が行われ、「海洋状況把握に関するインド太平洋パートナーシップ」が打ち出された。QUADの支持者には、それは提携国間の協力の深化であるとして歓迎されたが、多くの疑問を提起するものでもある。
(2) 基本的な問題として、この構想の正確な内実が明確ではないことが挙げられる。匿名の米国政府関係者の証言によれば、その構想は商業的な衛星追跡サービスに資金提供を行い、それが提供する海洋に関する情報がインド太平洋諸国で共有されるというものである。そのデータは、インド、シンガポール、バヌアツ、ソロモン諸島にある監視センターのネットワークに提供され、そのセンターでは別の情報源からのデータとそれらを統合することになるということである。
(3) その構想の地理的な焦点とはどこになるのか。米ホワイトハウスのファクトシートによれば、「太平洋島嶼諸国、東南アジア、インド洋地域の能力を再編成し、その国々の沖合を監視できるように」するとある。「その国々の沖合」とは具体的にどこまでを指すのか。排他的経済水域内のことか、係争海域を含むのか。
(4) この構想の主要な目的は何であろうか。首脳らの声明によれば、それは「地域の提携国と協働して人道的支援・自然災害救援に対応し、違法漁業と戦うため」のものだという。違法漁業の保護が本当に主要目的なのか、それともそれは「トロイの木馬」なのか。ファクトシートは「その構想が前進するにつれ、QUADは将来有望な技術を特定し、地域全体の平和と安定を促進する」だろうと述べている。またある米海軍専門家によれば、それは「悪人」の抑止を含むだろうとのことだ。
(5) これはかなり不吉な観測である。その構想は主に中国の違法漁業を追跡するシステムを提供するとのことだが、軍事情報収集のためにも活用され得るだろう。そしてそのデータは、各国の軍部によって活用され得るものである。また、多くの太平洋島嶼諸国には法執行能力が欠けているため、その業務が米国とその提携国に委ねられ、太平洋島嶼諸国の海域に米国などの沿岸警備隊や海軍が存在することを正当化することにもつながるかもしれない。
(6) 集められたデータは様々な用途に使われることになるが、すべての関係者にとって有益なものとは限らない。そのデータが漏洩し、密輸業者などが取り締まり活動を回避するように行動する可能性もある。
(7) この構想は、自動認識システムをオフにした船舶の追跡が可能になるとのことである。その対象には違法漁船だけではなく、中国の海上民兵や諜報機関なども含まれるであろう。また、一部の軍艦や軍用機は識別システムをオフにする場合もあるが、米国とその提携国はそうした船舶や航空機も追跡の対象とするのか。それともあくまで対象は潜在的敵国だけなのだろうか。後者であるというのであれば、それはかなり挑発的で不公正なものである。
(8) 中国は、違法漁業の主要な担い手であるとされているが、それは中国だけでなく、ロシアや韓国、台湾なども世界の「悪者」リストに名を連ねている。南シナ海で最悪の違法漁業国は中国ではなくベトナムである。EUは違法漁業を黙認している国に対してイエローカードを出しており、ベトナムにはイエローカードが出されているが中国は一度も出されたことはない。
(9) この構想は、実施において実際的な多くの問題に直面している。また、上述したような多くの問題を抱えている。完全な実施の前にきわめて慎重な検討が必要であろう。
記事参照:Quad’s Indo-Pacific maritime initiative raises more questions than answers

6月9日「フィンランドとスウェーデンの次は東南アジアか―マレーシア専門家論説」(Think China, June 9, 2022)

 6月9日付のシンガポールの中国問題英字オンライン誌Think Chinaは、National University of MalaysiaのCentre for Asian Studies, Institute of Malaysian and International Studies長Kuik Cheng-Chwee、クアラルンプールの政治シンクタンクBait Al Amanahの創設者Abdul Razak Ahmad及びUniversiti Malaysia Sabah のPromotion of Knowledge and Language長Lai Yew Mengの” Finland and Sweden today, Southeast Asia tomorrow?“と題する論説を掲載し、そこで3名はフィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟を申請していることを受けて、アジアでは東南アジア諸国がこれに続いて志を同じくする国々による同盟を模索するのではないか、という声が上がっているが、そのようなことはありえないとして、その理由を要旨以下のように述べている。
(1) ロシアのウクライナ侵攻を受けてフィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟を申請したことから、東南アジアの諸国はいずれ「同じ志を持つ」国との同盟に参加するだろうという見方がある。その背景には、中国は独裁的なロシアのように振る舞うだろうから、アジアの弱小国は手遅れになる前に自国の安全を確保し、地域の安定を保つため、すぐに行動しなければならないという仮説がある。
(2) 5月下旬にBiden米大統領がインド太平洋戦略を後押しするために日本と韓国を訪問した後、この仮説はさらに深まった。Bidenは、明らかに中国を念頭に置きながら、民主主義国と独裁主義国の対立の中で、同じ志を持つ国同士のより強い結びつきが必要であると強調した。また、Antony Blinken米国務長官はワシントンDCで行った講演で、中国を法的な秩序に対する最も深刻な長期的な問題であると述べ、この問題に対応するため、米国自身の強点に投資し、同盟国や提携国と連携し、中国の非自由主義的秩序と対峙して、米国の利益を守り、米国の将来の未来像を構築する必要があると強調している。
(3) こうした見解は一見健全に見えるが、当面、東南アジアやアジアの多くの地域では、そうしたことは起こりそうにない。ヨーロッパの小国は、ロシアの脅威がより深刻で直接的であるために、再編成が進められている。また、米国が主導するNATOからの支援もすぐに利用でき、信頼性が高く、確実である。この2つの条件、すなわち直接的な脅威と信頼性の高い同盟国の支援は、アジアには十分に存在しない。すなわち、東南アジア諸国は中国を明確な脅威とは認識しておらず、また、同盟国からの支援も確実とは言い難い。
(4) ASEAN諸国と中国との関係は複雑なままである。中国の行動は、特に南シナ海の紛争において、安全保障と領土に関する懸念を増大させる要因となっている。しかし、その一方で、東南アジア諸国がCovid-19からの復興に取り組む中で、差し迫った国内問題や非伝統的な安全保障問題に、中国は不可欠な経済的・外交的な提携国とも言われている。こうした両義的な認識は、欧州諸国がロシアの脅威を明確に認識しているのとは大きく異なる。
(5) 同様に重要なことは、欧州諸国と異なり、東南アジア諸国は予測される同盟国の支援が都合よく利用でき、高い信頼性があるとは考えていないことである。ASEAN諸国は、同盟を自分たちの数々の対外的な課題に対処するための主要で画一的な手段とは考えていない。半民主主義や権威主義の政権が数多く存在するこの地域において、東南アジア諸国は、価値観に基づくイデオロギー主導の「民主主義対独裁主義」の対立にも違和感を抱いている。
数世紀にわたる西欧による植民地支配と数十年にわたる冷戦を経験してきた東南アジア諸国は、現在の米ロ、米中の対立をイデオロギー論争というより大国間対立と見ている。
(6) 東南アジア諸国は、地域の分極化を進め、ASEANを疎外し、大国間の紛争に巻き込まれる可能性のある事象に強い警戒心を抱いている。米中の対立が深まり、QUADの協力が拡大し、豪英米安全保障協定AUKUSが形成されるにつれ、大国間の紛争に巻き込まれる危険性は高まっている。すでにインドネシアとマレーシアは、AUKUSが地域における軍拡競争と力の作用・反作用の引き金となることに懸念を表明している。シンガポールのLee Hsien Loong首相は中国の孤立化を警戒し、アジアの安全保障体制は各国が陣営に分かれてアジア版NATOを形成するよりも、現在の体制のままが望ましいと発言している。ASEAN諸国は、中国を標的とする排他的な同盟をあからさまに形成することで、中国のさらなる攻撃的な反発が大きな脅威に変わる可能性を懸念している。
(7) しかし、アジアでの再編が不可能であると言っているわけではない。同盟の決定には庇護国の信頼性と脅威の認知度が関わってくる。この2つの要素は流動的であり、進化している。現在、多くのASEAN諸国では、米国を主要な庇護国と認識しているが、米国のアジア戦略の見通しについて不安を募らせる国も出てきている。特に、米国のインド太平洋戦略のズレを懸念する声が多い。それは、軍事的な提携を強調する一方で、経済的・機能的協力への投資が少ないこと、ASEANの一部の加盟国を他国よりも優先していること、そして2022年の中間選挙後のBiden政権の弱体化と2024年の大統領選挙後のDonald Trump復活の可能性である。それゆえ、東南アジア諸国は、2022年5月の米・ASEAN首脳会議への参加に見られるようにワシントンとの関係を強化し、超大国以外の大国との戦略・開発の提携を多様化する一方で、中国政府との多面的な関係を強化することを主張している。
(8) 脅威の認識も決定要因の一つである。現在、東南アジアの国々は、ますます多くの連携を進めている。AUKUSに懸念を表明したインドネシアとマレーシアは、戦略的多様化を静かに強めている。インドネシアは欧米やアジアの複数の大国と外交・防衛閣僚協議を立ち上げ、マレーシアは以前にも増して多くの防衛関連合意を締結している。両国とも、中国との協力関係を拡大させながら、このような活動を続けている。
(9) 今のところ、このような包括的な重層的提携は、特定の脅威に対抗するというよりも、複数の不確実な危険の低減を目的としているが、中国がより攻撃的になり、それに対抗する信頼できる勢力が存在するようになれば、この状況は変わるかもしれない。そうでない限り、明確な同盟関係を持たないあいまいで重層的な提携という現在の構造は、アジアで存続すると思われる。米国とその民主的同盟国は、アジアの小国がたとえ中国政府を恐れている国であっても、排他的で価値に基づく同盟と提携として結集することを期待すべきではない。不確実性の下では、あいまいさが必要である。
記事参照:Finland and Sweden today, Southeast Asia tomorrow?

6月10日「カンボジア、中国の軍事的展開受入は益ならず―カンボジア専門家論説」(The Diplomat, June 10, 2022)

 6月10日付のデジタル誌The Diplomatは、カンボジアの外交問題フォーラムThe Thinker Cambodia 共同創設者Sokvy Rimは、 “Cambodia Has Little to Gain From Hosting a Chinese Military Presence”と題する論説を掲載し、ここでSokvy Rimはカンボジア人の視点から、リアム海軍基地に中国軍の展開を容認することはカンボジアにとって益するところではないとして、要旨以下のように述べている。
(1) 6月6日付の米紙The Washington Postは、カンボジアのリアム海軍基地の一部が中国軍の排他的使用に供されたと報じた*。この報道は、匿名の西側と中国の当局者へのインタビューに基づいたものである。カンボジアにおける中国の軍事的展開を巡る憶測につては、近隣諸国や他の大国からも注目を集めている。たとえば、ベトナムは2021年6月、カンボジア沿岸から200km離れたキエンザン省に民兵中隊を創設した。この部隊は哨戒と偵察を任務としており、将来のリアム基地の中国軍事基地化に関する情報収集を狙いとしていると見られている。2021年後半には、Sherman米国務副長官がカンボジアを含む東南アジア数ヵ国を訪問した。その主な目的は、中国が海軍基地の排他的利用を許可されたという噂に対処することであった。カンボジアのSokhonn外相は6月7日、オーストラリアのWong外相と電話会談を行ったが、リアム基地が主な議題であった。
(2) 前出の米紙の報道は、カンボジアにおける中国の軍事資産に関する明確な証拠を提供しているわけではない。それどころか、この報道は現在のカンボジアの外交政策の取り組みと矛盾している。カンボジアが自国の憲法に違反してまで外国の軍事資産や人員を受入れる用意があるかどうかを評価するためには、カンボジアと近隣諸国、特にタイとベトナムとの現在の関係を見る必要がある。また、カンボジアが2022年のASEAN議長国として、地域的、国際的な課題に対して採ってきた取り組みも考慮する必要がある。現在のカンボジア政府は、近隣諸国、特にベトナムやタイとの良好な関係を築いている。カンボジアと近隣諸国との関係は、協力と相互理解によって特徴付けられる。こうした環境下にあって、カンボジアにおける中国の軍事基地や部隊の展開を受け入れることは、東南アジアにおける米国の同盟国であり、依然として米国の軍事技術に依存しているタイや、南シナ海問題で中国と対立するベトナムとの関係悪化につながりかねない。カンボジアにおける中国軍人の存在が意味するところはただ1つ、即ちカンボジアがベトナムとの直接対決を目指していると言うことであろう。現在の人民党政府がより強力な隣国と敵対することは、利益になるであろうか。答えはノーである。興味深いことに、2019年に発表されたベトナムの国防白書も、「カンボジアとの関係への(外部からの)干渉を警告している。」このことは、ベトナムがカンボジアによる中国の軍事基地受入を容認しないことを意味している。
(3) より根本的には、カンボジアにおける中国軍基地の受入は、ASEAN議長国としての積極的な役割は言うまでもなく、米国との関係改善を進めるカンボジアの最近の努力を危険に晒すことになろう。ASEAN議長国としてのカンボジアは、全ての超大国、特に米国と中国と関わることによって、ASEANの中立性を促進しようとしてきた。5月のワシントンでの米ASEAN特別首脳会議で、カンボジアは米国とASEANの関係を包括的な戦略的パートナーシップのレベルに引き上げることへの支持を表明した。この行動は、ASEANの協力の枠組みに全ての関係超大国を包摂するというカンボジアの立場を象徴している。もし中国がカンボジアに軍事的展開を確保するようなことになれば、カンボジアの最近の米国との関係改善努力は無に帰そう。米ASEAN特別首脳会議の開催中に、カンボジアは最新の国防白書を公表し、この中でリアム海軍基地の改修に言及し、「この近代化は地域の特定の国を脅かすものではなく、カンボジアは、自国の主権領域内に如何なる外国軍事基地をも許可しない」と言明している。
(4) 白書はまた、カンボジアの中立と独立を強調している。この取り組みは、中国との密接な関係を理由にカンボジア政府に対する米政府の最近の圧力と制裁を緩和することを狙いとしている。米政府に対するカンボジアの取り組みの背景には、カンボジアは中国だけに依存することはできないとの信念が存在している。米国と西側諸国からの経済的支援は、カンボジアの経済発展にとって依然として重要である。
(5) 要するに、カンボジアに中国の軍事資産があるという主張は、最近の報道でも匿名の西側と中国の当局者からの主張以外に、具体的な証拠を提示しておらず、疑わしいままである。さらに重要なことは、この報道がカンボジアの現在の外交政策への取り組みと矛盾していると見られることである。カンボジアに中国軍を受け入れることは、カンボジアにとって益するよりも害するだけでなく、現政権与党にとっても不利な国内の反発を引き起こすだけであろう。
記事参照:Cambodia Has Little to Gain From Hosting a Chinese Military Presence
備考*:WP紙の報道は以下を参照。
https://www.washingtonpost.com/national-security/2022/06/06/cambodia-china-navy-base-ream/

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書
(1)A Fault Line in the Pacific
https://www.foreignaffairs.com/articles/china/2022-06-03/fault-line-pacific?utm
Foreign Affairs, June 3, 2022
By Charles Edel, Australia Chair and a Senior Adviser at the Center for Strategic and International Studies
 6月3日、米シンクタンクCSISの上席顧問Charles Edelは、米Council on Foreign Relationsが発行する外交・国際政治専門の隔月発行誌Foreign Affairsのウエブサイトに、“A Fault Line in the Pacific”と題する論説を寄稿した。その中で、①ガダルカナル周辺の戦略地域は第2次世界大戦を戦い、勝利するための鍵であったが、過去数十年間は米国に軽視されてきた。②4月、ソロモン諸島政府は中国との間で暫定的な安全保障条約を締結したと発表したが、将来的に他の太平洋島嶼国とも締結する可能性のある協定は、中国軍の行動範囲を拡大し、海洋のチョークポイントへの出入りを与え、太平洋諸島を世界規模の地政学的競争の渦中に追いやる可能性がある。③米国は、太平洋諸島における外交的展開を拡大し、この地域の多国間主義および開発構想を支援し、気候変動に対する懸念を受け止めなければならない。④中国がこの地域に展開を確立することは、中国の海上交通路の確保、連合軍に対する情報収集の強化、オーストラリアとニュージーランドの動きを封じること、米国がこの地域に軍を移動させる計画を困難にするといった戦略的目標を一度に達成することができる。⑤より良い地域の提携国となるためには、米国とその提携国からのより大きな資源、労働許可の拡大を可能にする複数の国の国内法の改正、そして、この地域とのより持続的な関与が必要となる。⑥米国は、太平洋島嶼国で大使がいない国や太平洋島嶼フォーラムで大使を任命したり、自由連合盟約を更新したりする必要がある。⑦長期的な政策調整も短期的な官僚的調整も、中国からの投資の流入とこの地域における中国の軍事力の展開の確立の可能性がもたらす、差し迫った課題への答えにはならない。⑧前者への対応として、腐敗防止と透明性のための構想を支援し、太平洋諸島の独立メディアに資金を提供すべきであり、後者への対応としては、理論上の合意ではあっても実践的な合意にはならないように、北京とホニアラの密約を制限するための外交努力を優先させるべきであるなどの主張を述べている。

(2)Countering the Hydra: A proposal for an Indo-Pacific hybrid threat centre
https://www.aspi.org.au/report/countering-hydra
Australian Strategic Policy Institute Policy Brief, June7, 2022
By Dr Lesley Seebeck, an Independent Consultant
Emily Williams is the administration officer and research assistant for the International Cyber Policy Centre. 
Dr Jake Wallis is the Head of Program, Information Operations and Disinformation with ASPI's International Cyber Policy Centre.
 2022年6月7日、独立系コンサルタントのLesley Seebeck、オーストラリアシンクタンクAustralian Strategic Policy Institute International Cyber Policy Centre研究助手Emily Williams、そして同シンクタンクの研究プログラム責任者Jake Wallisは、同シンクタンクのAustralian Strategic Policy Institute Policy Briefに" Countering the Hydra: A proposal for an Indo-Pacific hybrid threat centre "と題する論説を寄稿した。その中でSeebeck、Williams、Wallisの3名は、デジタル技術の発展により、地政学的競争に拍車がかかっているが、インド太平洋におけるハイブリッドな脅威は、その範囲だけでなく激しさも増しているが、ここでのハイブリッドな脅威とは、国家および非国家主体による軍事、非軍事、公然、非公然といった様々な活動が混在し、通常の戦争よりも下位な存在であると指摘している。その上で、インド太平洋には多種多様な政治体制と利害関係があり、複数の影響力や緊張、そしてますます好戦的になる権威主義的な大国が存在しており、この地域には、継続的な安全保障と安定を確保するための地域的な制度や実践的な行動が欠けていると状況説明を行った上で、ハイブリッドな脅威は進化し、しばしば通常のビジネスの中に組み込まれたり、隠れたりしているほか、多くの場合、ハイブリッドな脅威に関する活動は、国家の能力と信頼の低下、政府の意思決定の混乱に照準を合わせており、地域の安定や安全を損なうものであると指摘している。

(3)Is Biden Serious about Defending Taiwan from the Chinese Threat?
https://www.vifindia.org/article/2022/june/07/is-biden-serious-about-defending-taiwan-from-the-chinese-threat
Vivekananda International Foundation, June 7, 2022
By Prof. Rajaram Panda is currently Senior Fellow at the Nehru Memorial Museum and Library, New Delhi.
 2022年6月7日、インドシンクタンクNehru Memorial Museum and LibraryのRajaram Panda主任研究員は、インドシンクタンクVivekananda International Foundationのウエブサイトに" Is Biden Serious about Defending Taiwan from the Chinese Threat? "と題する論説を寄稿した。その中でPandaは、ロシアのウクライナに対する特別軍事作戦は、世界の地政学を劇的に変化させたが、特に注目すべきは、中国がこの流動的な状況に乗じて、大陸に統合されるべきと考えている台湾に強引に侵攻してきたらどうするかということであり、それは中国政府が本当にそのような冒険的な手段を選んだ場合、米政府は台湾政府を助けるだろうかという問題でもあると指摘している、その上でPandaは、米国の台湾関係法は、台湾が自国を防衛するために必要な資源を確保し、中国政府による台湾の一方的な地位の変更を防止するためのものであるが、米国の軍事介入は義務付けられていなかったと指摘し、Biden米大統領の発言はこれまでのあいまいな立場を覆すものだと評価する一方で、台湾をめぐって対立する大国間の戦争が迫っていることを意味するのだろうかという問いに対しては、答えは「Yes」であり「No」であると述べ、理由として、米中両国が硬直した姿勢をとり、一歩も譲ろうとしないためYesの可能性は否定できないが、戦争が起きると経済的な損害が大きいため、両者とも冒険主義的な行動をとらないのでNoだと主張している。