海洋安全保障情報旬報 2021年3月11日-3月20日

Contents

3月11日「インド太平洋におけるフランスは調整勢力か?―仏専門家論説」(Breaking Defense, March 11, 2021)

 3月11日付の米国防関連デジタル誌Breaking Defenseは、仏国防問題専門家Murielle Delaporteの“France In The Indo-Pacific: A Mediating Power? ”と題する論説を掲載し、 Murielle Delaporteは、フランスの「インド太平洋におけるフランス国防戦略」がフランス自身をインド太平洋における安定勢力と位置付け、Macron政権は「包括的で、安定した調停勢力として行動する」ことを目指しているとして、要旨以下のように述べている。
(1)    米国は、中国との均衡を取ろうとしており、太平洋での存在感を高めつつある米国の最
も古い同盟国フランスに目を向けることは理にかなっている。Biden政権はその初期の行動と声明から、「安全で繁栄した」インド太平洋に対するワシントンの継続する方針についてアジアの同盟国を再保証してきている。より外交的な発言はTrumpの「自由で開かれたインド太平洋」と比較して個所によっては後退していると解されているが、世界経済の中核となるものにおいて北京が経済的及び軍事的に「空白を埋める」ことを阻止する必要性について米国では超党派の合意が存在する。
そのような合意は地域におけるワシントンの同盟国の間で共有されているだけでなく、ヨーロッパにおいてもますます共有されてきている。Biden大統領の和解的な口調と包括的な取り組みはヨーロッパの外交界では歓迎されており、同大統領はヨーロッパの指導者の支持と参加を計算することができるだろう。自身が200年以上にわたってインド太平洋国家であり、2019年にヨーロッパで最初に公式のインド太平洋に関する戦略を発表した国としてフランスはその意味でまたとない助けとなるかもしれない。
(2)    「インド太平洋におけるフランス国防戦略」に強調されているようにフランスは自らを
インド太平洋における「安定化勢力」と位置付けてきており、世界のこの地域における活動を徐々に強化してきている。ドイツのようなヨーロッパにおいて同格の国々の一部とともにフランスは、世界の公共財を守るために「そこにいる」ことの重要性をヨーロッパ諸国に納得させるための有力なスポークスマンであった。「インド太平洋戦略を最初に採用したヨーロッパの国であるフランスにとって、重要なことはインド洋における仏領土とともに異なる地域の提携国を等しく包摂することである」とこの地域に詳しい仏潜水艦将校は述べている。フランスは太平洋に広範な利益を有している。Macron政権の目的は「包括的で、安定した調停勢力として行動することであり、そのことは地域の全ての国々との協調を排他的な公約をせずに強化し、地域の危機の解決に協力に関わり、地域の多国間主義への支援を強化し、気候と生物多様性の保護、医療、教育といった公共財の促進を誓約することを意味する。これは我が国の主権と権益を守ることを意図したこの枠組みに含まれることである」とインド太平洋におけるフランスの公式の戦略で述べられている。
(3)    フランスにとっても、EUにとっても、中国は逆説的な存在であり、協調的な提携国、
経済面での競争者、組織面での対立者である。たとえば気候変動のような主要な国際的問題に対処する際の提携国、貿易、技術、工業問題における競争者、特に人権に対する姿勢に見られる組織としての対立者である。
(4)    仏領土の主権と常に増大する仏市民を守ることは常に前方配備された
資産と部隊によって構成される適切な軍を必要としている。1993年から印海軍とインド洋で実施しているヴァルナ演習、ニューカレドニアから実施された2年毎のクロワ・ドゥ・シュッド人道支援・災害救助演習で強調されているのは、仏本土から海路、空路の両面でより早く、より遠く部隊を投射できる仏軍の最近の能力である。1月20日から2月5日にかけて仏航空宇宙軍はジブチから5カ国にまたがる長距離機動訓練を実施し、6月にもインド太平洋方面で長距離機動訓練を実施している。「これらの訓練はインドのような国々との相互運用性を改善するのに役立つ」と仏航空宇宙軍の将校が強調している。同様のことは仏海軍が常に作戦を行う海洋領域でも行われている。たとえば、フリゲート「プレリアル」は最近、タヒチから派遣され、日本とともに北朝鮮の禁輸状況の監視に当たった。「マリアンヌ任務」は8ヶ月に及び、仏攻撃型原子力潜水艦「エムロード」にとって初めての西太平洋での行動であった。
(5)    仏政府の見解では、世界はますます緊密に相互に結びついてきており、地政学上の空間
が小さくなってきている。バルト海を北極に結びつけるという中国の目標がその事例である。目に見えている以上のものが、危うくなっており、それがパリがドイツのようなヨーロッパの提携国とともにヨーロッパのレベルでインド太平洋の課題を奨励しつつある理由である。2021年後半にはヨーロッパのインド太平洋戦略が承認されると考えられる。
記事参照:France In The Indo-Pacific: A Mediating Power? 

3月13日「イスラエル中心の海軍共同演習とその安全保障情勢―米専門家論説」(Defense News, March 13, 2021)

 3月13日付の米国防関連誌Defense Newsのウエブサイトは、米シンクタンクMiddle East Center for Reporting and Analysisの常務理事Seth Frantzmanの“For first time, France and Cyprus join Israel’s Noble Dina naval drill”と題する論説を掲載し、Seth Frantzmanは3月にイスラエルが、フランス及びキプロスとともに行った海軍共同演習について、要旨以下のように述べている。
(1)    イスラエル海軍が中心となって行なわれる海軍演習「ノーブル・ディナ」(Noble Dina)
に、フランスとキプロスが初めて参加した。この演習は毎年行われているが、2020年はコロナウイルスのため中止となった。2021年は3月7日から12日まで、キプロス西方海域で行われ、以前はテロ対策や港を守るための訓練が含まれていた。2021年も従来通り、対潜水艦戦の訓練が行われた。イスラエル国防軍の発表によると、これらの海軍は、捜索救助活動や艦船同士の戦闘を想定した訓練も行ったという。
(2) 2020年は、地中海でギリシャとトルコの間に緊張が走り、オマーン湾付近でイスラエル所有の船が攻撃された後、イスラエルとイランの間の緊張が高まった。 2月には、イスラエルの地中海沿岸に推定で千トン以上のタールが流れ込んで、環境に甚大な被害をもたらし、海岸の閉鎖を余儀なくされた。イスラエルの自然・公園局は、この事件をイスラエル最悪の環境災害の1つと呼び、イスラエルの環境保護大臣は、今回の原油流出事故をイランによる意図的な攻撃と説明している。
(3) ノーブル・ディナは、参加している海軍の協力関係を強化し、運用知識の蓄積を充実させることが目的であるとイスラエルは説明している。イスラエル海軍の演習責任者であるAmichai Rachamim少佐は、水上艦だけでなく、参加国からのヘリコプター部隊や空軍部隊も参加することの重要性を強調し、「我々と親しいキプロスとギリシャの海軍は、海を隔てた隣国である。地中海で活動するフランスや米国の海軍と同様に、彼らと演習を行うことが重要である」と述べている。イスラエルは最近、自国海軍の将兵とイスラエル軍のほとんどがコロナウイルスのワクチン接種を受けたことを発表したが、この進展が2021年の演習を可能にすることに役立った。イスラエル、ギリシャ及びキプロスの3カ国は2020年、東地中海にガスパイプラインを建設する契約を結び、新しい海底ケーブルも建設中である。Rachamim少佐は、これらの未来のエネルギー資産を守ることが今回の訓練の特別な部分であるかどうかについては言及しなかった。「イスラエルもキプロスも、国家資産を守ること、EEZ内の資産を守ることが重要であり、海軍の主要な任務である」と語っている。
(4)イスラエルは最近、地域諸国の中でもアラブ首長国連邦やエジプトとの外交関係を改善したが、2021年の海軍演習には両国とも参加しなかった。Rachamim少佐は、イスラエルはこれらの国について「提携国として、彼らと共に行動する機会があると考えている。将来的には参加すると思うが、今年は参加していない。将来的には、より多くの国とさらなる協力関係を築くことができると信じている」と述べている。
記事参照:For first time, France and Cyprus join Israel’s Noble Dina naval drill

3月14日「中国海軍の規模は米国艦隊に近づいているが、人民解放軍は1か所しかない海外の基地で何ができるのか-香港紙報道」(South China Morning Post, 14 Mar, 2021)

 3月14日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、”Size of China’s navy may be closing gap on US fleet but what can the PLA do with just one overseas naval base?” と題する記事を掲載し、ここで拡大する中国海軍について数名のアナリストの分析を、要旨以下のように述べている。
(1) 中国の習近平国家主席は2015年に軍の近代化に着手し、装備品の研究開発に数百万ドルを注ぎ込んできた。艦船の建造が進み中国艦隊は増大した。2020年9月に発表された米国防総省の2020年度年次報告書によると、中国は130隻以上の主要水上戦闘艦艇を含む約350隻の水上艦船と潜水艦を持つ。2020年初頭の米海軍艦艇は293隻で、中国海軍の艦隊は米海軍を上回り世界最大となった。
(2) アナリストらは、中国艦隊の増大を北京が海外で基幹設備整備計画を進めている間、中国の海外権益の保護目的と捉えていたが、それが課題を生み出すことになったと述べている。また中国の野心を支えるには海外拠点が少なすぎると述べおり、米国は、イラクとアフガニスタンにある多くの基地を閉鎖したにもかかわらず、70を超える国と地域に800近くの軍事基地を維持しているのに対し、中国はジブチに1か所基地を保有するだけである。
(3) 2017年8月に中国のジブチ基地がアフリカの角付近の海域で作戦を開始したが、その2ヶ月前、中国の軍事顧問の金一南は、中国大陸から離れた海域の利益を保護するために、多くの海外基地を建設すべきと中国政府に促した。金一南は、以前は海外拠点を作る必要はないと言っていたが、今はそれを作るべきと言っている。米海軍の艦艇の総トン数は中国海軍よりもはるかに大きいが、中国の造船計画はその差を縮めてきている。米海軍の情報局は、中国の戦闘艦は2030年までに約425隻になると予測している。中国には確実で効率的な造船基盤があり、過去10年間で20以上の造船所が海軍の水上艦建造を支援しているほか、大きさと造船能力で米国最大の造船所を超える商船向けの造船所が数十か所ある。
(4) 米シンクタンクRand上級研究員Timothy Heathは、次のように述べている。
a.世界最大の艦隊を持つ中国は、その広範な利益を保護するために、海外で多くの軍事的な利用を必要としている。
b.中国は中東、アフリカ、ラテンアメリカなどの遠隔地の市場、エネルギー、天然資源に大きく依存しているため、海外拠点の欠如は問題である。一帯一路構想は被害に対して脆弱で、その混乱は、中国と世界の経済に多大な影響を与える可能性がある。
c.人民解放軍は強力な勢力に発展したが、海外基地が不足しているので、中国沿岸を越えて戦力を投射する能力に欠けている。
d.海外基地を持つには、他国と同盟を結ぶような関係が必要となるが、北京はそれに躊躇している。
e.中国は必ずしも米国のモデルに従う必要はなく、その代わりにアクセス協定、物流施設、その他の取極の形をとる方法がある。
(5 ) 豪Defence Strategy and Capability at Australian Strategic Policy Institute上級アナリストMalcolm Davisは、次のように述べている。
a.中国の基地増加は避けられない。中国は一帯一路構想に向かって取り組んでいる。 彼らは、商業的な性質を持ちながら、将来的に人民解放軍の作戦を支援する可能性のある港の利用もしくは管理を確保しようとしている。
b.中国は世界中の港を買収しており、その動きは多くの国を悩ませてきた。中国の先駆的企業であるCoscoは、2008年にギリシャのピレウスでコンテナ港の運営を開始し、その後中国は、Euromaxの株式35%を所有し、ハンブルグで新ターミナルを建設中などロッテルダム、アントワープ、ハンブルグの3つの主要な港に足場を築いた。
c.中国は、イスラエルのハイファとアシュドッドに新しい港を建設中で、 地元の学者たちはイスラエル政府に対し、中国が担保権を損なうことなく経済にどれだけ関与できるかを評価するよう求めている。スリランカのハンバントタ港も中国にリースされた。
d.オーストラリアでは、2015年にダーウィン港が中国企業Landbridge Groupにリースされたことから、豪政府は外国投資規則を強化するようになった。パプアニューギニアのダル島は、中国企業が産業用漁業公園を建設したいとの発表により、中国とオーストラリアの間の騒動の引火点となった。別の企業は、そこに都市を建設するために数十億ドルを費やすことを提案している。オーストラリアは、軍民共用施設への商業的投資を通じて基地にアクセスする手段として一帯一路構想を用いる中国に大きな懸念を持っている。
e.南シナ海での外国漁船に対する嫌がらせの実態からは、東シナ海付近での中国の活動が懸念される。
(6) 人民解放軍の元上級大佐で、現在、清華大学国際安全保障戦略センターの上級研究員周波は、次のように述べている
a.中国の国家的必要性は、艦隊の増強を正当化すること。
b.中国は、完全に統一されていない国内情勢にあって、南シナ海と東シナ海の両方で厄介な海洋問題に直面している世界で唯一の大国である。
c.中国は、主権と安全保障を完全とするために、海軍力を強化する必要がある。
d.中国は、自国の海外における利益を保護し、特にアデン湾の護衛任務を通じて国際社会に貢献するために、海軍の成長を必要としている。
e.中国の海外プロジェクトの多くは問題を抱えた地域にあり、海のシルクロードに沿った海路も危険なところがある。
(7) 中国軍事専門家周晨鳴は、次のように述べている。
a.中国の防衛政策は本質的に防御的で、海外に基地を建設する必要はない。
b.増大する中国海軍は、主に隣接する海からの脅威に対抗するために使用される。米国は多くの空母と軍用機を南シナ海に送り、時には中国本土に非常に近い台湾海峡を通過し、北京は脅威にさらされたと感じている。
記事参照:Size of China’s navy may be closing gap on US fleet but what can the PLA do with just one overseas naval base?

3月15日「インド太平洋における新しい『協調』の可能性―中国国際関係専門家論説」(The Interpreter, March 15, 2021)

 3月15日付の豪シンクタンクLowy InstituteのウエブサイトThe Interpreter は、南開大学などで教鞭をとってきた龐中英の“A new “concert” to govern the Indo-Pacific”と題する論説を掲載し、そこで龐中英は、QUADが最初の首脳会談を実施したことを受けて、それがインド太平洋の協調の実現に寄与する可能性について、要旨以下のように述べている。
(1) 3月12日、日米豪印4カ国安全保障対話(以下、QUADと言う)の首脳によるオンライン会談が開かれた。これはオンラインながら初の首脳会談であり、QUADの連携強化を示唆するものであるが、しかしインド太平洋における対立が深まっているシグナルというわけでもない。
(2) 首脳会談のあと、「QUADの精神」と題された共同声明が発せられた。その声明では、「包括的な(inclusive)」と「多様な(diverse)」という言葉が2度用いられた。QUADは多様な視点をもたらしたと言われ、自由で開かれたインド太平洋というビジョンを共有することで団結している。そして、インド太平洋は包括的な地域であり、民主主義的価値観で結束する自由で開かれた地域であるよう尽力すると声明では述べられている。ここで言われている「多様な」の使用について、ある種の違いや不一致がQUAD諸国の間に存在する。「包括的な」については従前から強調されており、それが持つ意味は大きいように思われる。
(3) 2018年6月のアジア安全保障会議で、インドのModi首相は「包括的」という考え方を提唱し、地域の対話過程においてそれが採択されることを求め、実際にそれは多くの成功を収めた。「自由で開かれたインド太平洋」という概念が提唱されるようになってからも、「包括的」という考え方は、とりわけ中国との関係についての対決色を弱めることに寄与してきた。
(4) この度の声明が、インド太平洋においてASEANが果たす役割の重要性を強調したことにも意味がある。共同声明はASEANの結束と中心性とともに2019年に採択された「ASEAN インド太平洋概観(The ASEAN Outlook on the Indo-Pacific)」を強力に支持することを再確認している。インド太平洋を議論するに当たって、ASEANは1990年代以降経済の開放と統合の原動力として機能してきたアジア太平洋という概念を放棄したわけではなく、代わって、インド太平洋というバージョンを並行して運営している。いずれにしてもQUADは、地域的協調の成功事例とも言えるASEANを強調しつつ「包括的」という考え方を提唱することで、将来的に「インド太平洋の協調」をより可能性のあるものとしている。
(5) 中国は、公式にはインド太平洋概念を採用していないが、実際上はインド太平洋戦略を無視してきたわけではない。中国はASEAN主導の地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の署名国であり、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定への参加にも前向きである。一帯一路構想もアジア太平洋にとどまるものではない。したがって、もはや中国はインド太平洋の勢力の1つと言える。QUADはこれまでのところ中国と対抗するもののように思われているが、もしそれが「包括的」という考え方に基づくならば、中国がインド太平洋概念を採用することに問題はないであろう。想起すべきは、中国をインド太平洋へ包摂すれば、それが紛争の抑止に大いに役立つということである。
(6) インド太平洋の平和は米国にとっても必要なことである。Biden政権は「中間層のための対外政策」を標榜し、国内世論を重視しており、国際的にも多くの難問に直面しているためである。それは鄧小平が、中国の経済発展のためには「平和的な国際環境」を必要としたのに似ている。中国がアジア太平洋に統合されたことは、冷戦後の平和に寄与した。
(7) 中国は早晩米国を抜き、世界最大の経済大国になると見られている。しかし、中国がハードパワーとソフトパワーの両面において米国を抜くことはないだろう。中国は高齢化問題を抱えており、対照的にインドやインドネシアは人口の点において優位な立場にある。米中対立が激化するなか、その両国こそが「インド太平洋の協調」を必要としているのであり、QUADの「包括的」という考え方に、その可能性がある。
記事参照:A new “concert” to govern the Indo-Pacific

3月15日「インド洋で存在感を増すロシア―豪国家安全保障・戦略学准教授論説」(The Interpreter, March 15, 2021)

 3月15日付の豪シンクタンクLowy InstituteのウエブサイトThe Interpreterは、豪Curtin University准教授Alexey D. Muravievの“Russia wants to be a power to be reckoned with in the Indian Ocean”と題する論説を掲載し、そこでMuravievは近年インド洋においてロシアがその存在感が増していることについて、要旨以下のように述べている。
(1) 今年2月は、インド洋におけるロシア海軍の活動が活発化したことを特徴づける月であった。バルト海艦隊および黒海艦隊の機動部隊がそれぞれイランとの共同海軍演習、そしてパキスタン主導の多国間演習AMAN 21に参加したのである。また、ロシアは早晩インド洋に恒久的な海軍補給施設を建設し、その存在感を高めていくであろう。
(2) ロシアは、公式にはインド洋戦略を策定してこなかったが、主要な戦略文書にはそのヒントを見ることができる。なかでも重要なのが2015年の「海洋ドクトリン」で、インド洋を大西洋や北極海、太平洋、カスピ海、南極海と並んでロシアにとって重要な海域と定め、インドとの関係強化やインド洋での海上活動の強化を目標として定めている。こうした目標は、世界で戦略的に重要で収益性の高い地域での長期にわたり、適した所での展開を確保する全体の目的によって動かされているようである。たとえばロシアの南アジア戦略で、その戦略においてロシアはインドやスリランカ、パキスタンとの関係強化を目指してきた。また他の戦略文書ではアフリカや中東などにも焦点が当てられてきた。
(3)ロシアの南アジア・インド洋戦略には3つのベクトルがある。第1に地政学的なもので、提携国との連携強化によって影響力を拡大し、米国や中国などのそれに対抗すること。第2に軍事的・戦略的なもので、組織犯罪や海賊、テロリズムなどとの戦いであり、そのための戦力投射能力を高めることである。第3に経済的なもので、インド洋およびアフリカなどにおける経済的利益の強化である。
(4)ロシアは、インド、エチオピア、マダガスカル、モザンビーク、セーシェル、スーダンなどとのソ連時代からの包括的な経済関係、パキスタンや南アフリカなどとの新しい提携関係を含む地域全般にわたる展開の確保を追求している。Putin大統領はアフリカ諸国との貿易を2025年までに倍増する計画を打ち出し、またソ連時代およびそれ以後の対外援助の清算と引き換えに貿易上の譲歩や特別なアクセス権を獲得している。それに伴いロシアの関心はアフリカ南岸や西岸のシーレーンにまで拡大するに至っている。
(5) インド洋西部におけるロシアの軍事的・準軍事的活動はますます活発になっている。アデン湾における海賊対処戦は2009年から続けられているし、2019年には中国および南アフリカと喜望峰沖で共同海軍演習を実施し、また中国およびイランとオマーン湾における共同演習を行い、2021年にはイランと同様の共同演習を実施している。アフリカやインド洋島嶼部には定期的な寄港も行っている。また、2017年以降にはインド洋沿岸諸国と二国間の防衛協定などを締結してきた。昨年11月にはスーダンとの間で新たな海軍補給施設を建設する契約を結んでいる。こうした活動の多くは、ソ連時代の反植民地闘争支援などの外交的遺産を活用したものである。
(6) ロシアはまた、アフリカ諸国の多くに民間軍事会社の要員を送り込み、それぞれの国の軍隊の訓練やロシア・ビジネスの保護などいわゆるグレーゾーン戦略を展開している。こうした民間軍事会社への依存をさらに深めていく可能性も指摘されている。
(7) ロシアが、インド洋において米国や中国の戦略的な対抗勢力といえるまで影響力を拡大することはできないし、そのつもりもないだろう。米国に対してはあくまで海軍の監視や追跡にその活動を留めるだろうし、中国に対してそこまで強硬に構えているわけでもない。あくまでロシアは、米中への対抗というよりは、周辺地域での種々の利益の確保のためにその影響力を拡大しているということだろう。またインド洋への展開を高めることは、南極海へのアクセスにも有益であろう。
記事参照:Russia wants to be a power to be reckoned with in the Indian Ocean

3月16日「『グローバル・ブリテン』の国家安全保障及び国際政策-英内閣府政策文書」(UK Cabinet Office, March 16, 2021)

 3月16日、英内閣府は、“Global Britain in a Competitive Age: the Integrated Review of Security, Defence, Development and Foreign Policy”と題する政策文書を発表し、今後10年間の世界における英国の役割についての政府の展望と、2025年までに取るべき行動について、要旨以下のように述べている。
(1)この総合的見直(Integrated Review)は、英国の国家安全保障及び国際政策を包括的に明示したものである。これは、主権、安全保障及び繁栄という英国民を結びつける3つの基本的な国益に加え、民主主義、普遍的人権への関与、法による支配、言論や信仰の自由、そして、平等といった英国の価値観を概説している。
(2)その内容は以下の通りである。
a.繁栄の源である開放性を重視すること
b.安全保障と抗堪性に対するより強固な姿勢
c.この世界での善行のための力としての英国への新たな責任
d.気候変動のような課題に対する多国間での解決策を模索する決意を強めること
そして、また、より迅速かつ俊敏に行動し、世界中の同盟国や提携国との関係を深めることの重要性も強調している
(3)このような背景から、この総合的外観では4つの包括的な目標を掲げている。
a. 科学技術による戦略的優位性の維持:世界的な科学技術及び責任あるサイバー大国としての英国の地位を確固たるものにするための国家安全保障及び国際政策を不可欠な要素として具体化する。
b. 未来の開かれた国際秩序の形成:英国のように繁栄する社会や経済の開放を可能にする国際機関、法律及び規範を同盟国及び提携国と協力して再活性化させる。
c. 国内外における安全保障と防衛の強化:開放性の恩恵を最大化し、拡大する様々な脅威から、現実の世界においても、オンライン上の世界でも国民を守るために、同盟国やパートナーと協力する。
d. 国内外における抗堪性の構築:異常気象からサイバー攻撃まで、様々なリスクに対する予測、予防、準備及び対応する能力を向上させる。
(4)この総合的見直しは、すべての政府省庁の今後の政策立案に反映される。また、今後の歳出見直し(Spending Reviews)にも反映され、長期的な意欲に資源を合わせるためのさらなる機会を提供する。

Full Report
Global Britain in a competitive age
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/969402/The_Integrated_Review_of_Security__Defence__Development_and_Foreign_Policy.pdf

記事参照:Global Britain in a Competitive Age: the Integrated Review of Security, Defence, Development and Foreign Policy

3月17日「アジア版NATOへの道のりはなお遠い―比専門家論説」(South China Morning Post.com, March 17, 2021)

 3月17日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、比Polytechnic University研究者Richard Javad Heydarianの“Why Biden’s plans to turn the Quad into an anti-China Asian Nato are far from assured”と題する論説を掲載し、そこでHeydarianは、Biden政権が始動してからQUADがアジア版NATOへの変容を加速させていることについて、その背景と意義を要旨以下のように述べている。
(1) フランスの著述家Jean-Baptiste Alphonse Karrはかつて「物事が変化すればするほど、彼らは同じままでいようとする」と述べたが、米国の対アジア、とりわけ対中政策についてはまさにこれが当てはまる。Biden新政権は多くの点においてTrump前政権からの方向転換を図っているが、中国との対立についてはその限りではない。その方向性においてBidenが標榜する多国間協調主義や同盟重視の姿勢は、日米豪印4カ国安全保障対話(以下、QUADと言う)を中心としたアジア版NATOの結成を加速させる可能性がある。
(2) アジア版NATOが結成されるとしたら、それは中国に対する抑止の強化を目的としたものであろう。しかしそれがうまくいくかどうかはまったく確実ではない。QUADは、2004年のスマトラ島沖大地震および大津波への対応にはじまり、最近では同盟のようなものにまで発展している。2017年から20年にかけて、非公式首脳会談や公式の外相会談などハイレベルの会合が開かれた。2020年の外相会合の直後には日米豪印4ヵ国海軍による共同演習まで実施されるに至った。
(3) しかし、Trump政権のあまりに保護主義すぎる傾向や戦略的一貫性のなさが、そうした協力の基盤を脆弱なものにしてしまっていた。たとえばASEAN諸国は2019年に独自の「ASEAN インド太平洋概観(The ASEAN Outlook on the Indo-Pacific)」を発表し、中国を地域問題の解決において代替不能な存在と理解し、QUADの意義を否定したのである。
(4) Biden政権になってそれに変化が期待されている。また、ヨーロッパ諸国がインド太平洋へのコミットメントを強めるなかで、QUADがより幅広い環大陸連合に拡大していく兆候もある。それと同時に、Biden政権は米国の弱さ、特にコロナウイルスの世界的感染拡大によって加速された弱さを理解している。米国主導のリベラルな国際秩序の維持のために、米国が強力な同盟を求めているのはこのためである。
(5) アジア版NATOが求められている背景のもう1つは、反中国感情の高まりである。世論調査によれば、米国では9割の国民が中国をライバルと見ている。すなわち、中国に対する強硬政策には超党派的一致が形成されている。中国に対する警戒心は、インドやオーストラリアでも高まっている。ヨーロッパもまた、最大の貿易相手国でもある中国を「全体に対する競争相手(systemic rival)」と評し、ドイツ、フランスは独自のインド太平洋戦略を立案し、イギリスもまた関与を強めようとしているのだ。
(6) Biden政権の対外政策におけるイデオロギー的色彩の強さも、アジア版NATO結成と対中強硬政策を推し進める背景であろう。Bidenは人権を強調し、志向を同じくする国々によって、中国が強大になりすぎる前に封じ込めるべきだと考えている。イデオロギー重視の外交はまるで新冷戦を初めたReaganのようである。
(7) 以上のように、Biden政権に移行してアジア版NATOが結成される可能性は高まっている。しかし、アジアの秩序が今後どうなるかは不明瞭である。Biden政権や彼の方針が短命に終わる可能性もある。あるいは、中国に対抗して米国が大規模な経済的構想によって関係諸国の協力をとりつけることが果たしてできるのか、疑問が残る。QUADをアジア版NATOに変容させようというBiden政権の計画は、なお実現にはほど遠いだろう。
記事参照:Why Biden’s plans to turn the Quad into an anti-China Asian Nato are far from assured

3月17日「積極的なシー・コントロールは印海軍の選択肢でない-印専門家論評」(The Interpreter, 17 Mar 2021)

 3月17日付の豪シンクタンクLowy InstituteのウエブサイトThe Interpreterは、印シンクタンクThe Observer Research Foundation上席研究員Abhijit Singhの“Aggressive sea control isn’t an option for India’s navy”と題する論評を掲載し、Abhijit Singhはインド洋をめぐる海洋戦略について、2月9日にThe Interpreter に掲載されたArzan Tarapore の“India should prioritise a denial strategy in the Indian Ocean”と題する論説と3月10日付でThe Interpreter に掲載されたJames Goldrick AOとSudarshan Y. Shrikhandeの“Sea denial is not enough: An Australian and Indian perspective”と題する反論を取り上げ、それぞれの主張には一理ある一方、見落としもあるとした上で、Goldrickらが主張する潜水艦の運用に着目し、潜水艦のシー・コントロールのために運用することは敵の警戒心を高め、戦争への発展の危険があるとして、印海軍は、中国海軍から学んで、沿海域あるいは近海においては積極的なシー・コントロールを追求し、遠隔の海域においては攻撃的な戦力の投射は避けるべきであるとして、要旨以下のように述べている。
(1)    海洋戦略に関する興味深い論争がThe Interpreter上で行われた。Arzan Taraporeは、インドはインド洋において防壁を補給するためにシー・ディナイアルを優先すべきと主張し、2名の元印海軍将官James GoldrickとSudarshan Y Shrikhandeは対照的な認識を提示し、効果的な海洋安全保障の鍵は政府の選択肢を最大化するように海洋戦略のための装備等を結合することであると主張し、これにはシー・コントロールのために潜水艦を運用することも含まれるとしている。中国に対抗して「近海」における「拒否」戦略はインドにとって論理的であると思われる。そのような計画はより現実的に達成可能な目標を設定することで印海軍の兵力組成にかかる負担を軽減するだろう。他方、GoldrickとShrikhandeが陸上を支配するメカニズムを全面的に海洋に適用することはできず、「拒否の戦略」は海洋の「支配」をめぐる戦いの一部でるとの指摘も正しい。
(2)    それぞれの議論には見落としている点がある。始めに、シー・ディナイアルは確かにシー・コントロールの一部分ではあるが、しばしば、その対抗概念でもある。専門家の認識から、拒否の戦略は戦術的取り組みと戦略的意図とが異なっている。シー・コントロールは軍事の力と戦略的空間の譲歩を許容しない支配的思考の産物である。対照的に、シー・ディナイアルは中核的利益を防護することを目的としており、弱者の側が内線の利を生かして、いかなる海域においても敵の運動を拒否するものである。
(3)    平時の状況はより複雑である。シー・コントロールは「戦略」と言うより「姿勢」の問題であり、潜水艦のような攻撃的なシー・ディナイアルのための兵種の運用は利用できる選択肢ではない。潜水艦は典型的な戦争のための艦艇であり、非常に強力であるだけでなく、非常に挑発的でもある。平時に(戦力の)投射の役割を持つ空母と異なり、潜水艦は微妙なメッセージを発信することはできない。潜水艦が戦争以下の段階で態勢を取るとき、潜水艦は警報を発し、敵が極めて厳しい対応を採る引き金となる。シー・コントロールでの役割において潜水艦を運用するというGoldrickとShrikhandeの議論は、海中で攻勢的姿勢を採ると紛争を引き起こすことになるかもしれない平時に中印の対立が展開していることを過小評価している。
(4)    これは、インドがインド洋において純粋にシー・ディナイアルを支援することを提言するものではない。戦略目標達成のための手法におけるのと同じように重要な手法であるが、シー・ディナイアルはしばしば防衛的すぎると理解されている。シー・ディナイアルは、弱さを発信し、力の序列においてシー・ディナイアルの実践者を格下げし、権益の領域での支配を引き渡すことがありうる。そのようなシー・ディナイアルは、インド洋における印海軍の卓越した態勢を崩すことになるかもしれない。また、微妙な(情勢にある)沿海域の重要なチョークポイントに対するインドの掌握を弱体化し、戦術的構想で中国に遅れを取ることになるかもしれない。印海軍にとって最も適切な取り組みは、中国の核心的利益の海域である南シナ海での展開を維持しつつ、近海で積極的姿勢を取ることである。軍事行動の要素、警察行動、外交をもってアンダマン海で平時のシー・コントロール戦略を採ることがインド洋地域で中国の冒険主義を阻止するためには最適の方策である。遠隔の戦域では戦略的利得のため穏健な部隊の展開を活用することによって中国の戦略を手本とすべきである。中国がインド洋におけるインドの特権的な地位を拒否しているように、インドも南シナ海を「中国の湖」として受け入れてはならない。地域におけるインドの対抗の具体策は、ますます拡大する戦略を行う南アジアにおける北京の軍事的、非軍事的行動を見習うべきである。
(5)    インドの海軍戦略家は、海洋戦略の理論が平時の海軍力の役割に追随していないことに直面している。多くの研究者や実践者は、平時の任務は同じような戦時の任務がより暴力的でなくなったものと見続けている。しかし、支配的なパラダイムは現代の危機を理解し、対応できないことを証明しつつある。印海軍指導部が重視する領域は、正統性の重要性、すなわち部隊そして攻撃的な姿勢が遠隔の沿海域において正当化できる程度である。常に戦争法規が適応される戦時と異なり、平時の行動は行動に関わる権限のレジームに頼ることはできない。海洋戦略の実行手段と意図する運用が何であれ、適用の攻撃的な形態は戦争を招くものと見なされやすい。印海軍は、インドの沿海部において中国の脆弱性を利用しようと合理的に努めているが、印作戦部隊の指揮官は南沙諸島や西沙諸島のような南シナ海の係争海域周辺で攻撃的な戦力の投射は避けるよう留意する必要がある。東南アジアの海上交通路に対するシー・コントロールも印海軍にとっては限度を超えているだろう。中国海軍もインド洋で同じような対応を採る傾向があるからである。長期的には、確固として一貫性のある取り組みは、インドの決意を中国に伝えるより効果的な手法であろう。
記事参照:Aggressive sea control isn’t an option for India’s navy
関連記事:
2月9日「インドはインド洋において拒否戦略を採用すべきである―米南アジア専門家論説」(The Interpreter, February 9, 2021)
India should prioritise a denial strategy in the Indian Ocean
3月10日「シー・ディナイアルは十分ではない:豪印の認識-豪印専門家論評」(The Interpreter, 10 Mar 2021)
Sea denial is not enough: An Australian and Indian perspective

3月18日「東シナ海、南シナ海における米中の戦略的対立―米Congressional Research Service報告」(Congressional Research Service, Updated March 18, 2021)

 3月18日付の米Congressional Research Serviceのウエブサイトは、“U.S.-China Strategic Competition in South and East China Seas: Background and Issues for Congress ”と題する報告書を掲載し、南シナ海における米中対立の背景と、そこにおいて米国が目指すべき戦略目標について、要旨以下のように述べている。
(1) 南シナ海および東シナ海、とりわけ南シナ海は米中間の戦略的対立の舞台である。中国への対決姿勢は、Trump政権の「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを促進するための主要な取り組みであった。
(2) 南シナ海は米国やその同盟国にとって戦略的、経済的に重要な海域である。近年中国は、南シナ海で占拠した島々の埋め立てと基地建設、領土的主張を争うフィリピンやベトナムを牽制するための海上戦力の活動などを通して、南シナ海の支配を獲得しつつある。東シナ海における中国の活動の活発化も合わせて、それは米国で中国を観察している人々の懸念を高めている。
(3) 南シナ海や東シナ海における米中戦略的対立について、米国の全体的な目標は以下のようにまとめられる。第1に、日本やフィリピンなどとの条約の履行を通じて、太平洋西部において米国が太平洋西部の安全保障にコミットすること。第2に、地域における勢力の均衡を米国にとって有利なように維持すること。第3に、紛争の平和的解決という原則を維持すること。第4に、海の自由の原則を保護すること。第5に、中国が東アジアの覇権国となることを防ぐこと。最後に、こうした目標をより幅広い対中政策に位置づけることである。
(4) 以上の全体的目標を達成するための個別目標は以下のように定められる。第1に、中国が基地建設や防空識別圏の設定など、南シナ海の軍事化を進めないように説得すること。第2に、尖閣諸島周辺での活動を減らし、またフィリピンへの圧力行動を減らすように説得し、スカボロー礁周辺海域へのフィリピン漁船の出入りを確保し、2016年の南シナ海裁定を受け入れさせることである。
(5) 議会の関心は、南シナ海および東シナ海における米中の戦略的対立について、Biden政権の方針が前政権から大きく修正されるのかどうか、されるとしたらどうされるのか、そしてそれが適切なのか、政策実行のための資源配分が適切なのかどうか、ということである。
記事参照:U.S.-China Strategic Competition in South and East China Seas: Background and Issues for Congress 

3月19日「モザンビーク海峡は次なる紛争地帯―豪専門家論説」(The Interpreter, 19 Mar 2021)

 3月19日付の豪シンクタンクLowy InstituteのウエブサイトThe Interpreterは、The Australia India Institut特別研究員でThe National Security College at the Australian National UniversityのDavid Brewsterによる“The Mozambique Channel is the next security hotspot”と題する論説を掲載し、David Brewsterはモザンビーク沖は世界的に重要な航路であり、QUAD諸国とヨーロッパ各国は、海賊などの勢力がこの地域の真空状態に足を踏み入れる前に問題を封じ込める手助けをしなければないとして、要旨以下のように述べている。
(1) モザンビーク沖は、インド洋の主要な新たな紛争地帯になりつつある。モザンビーク北部でのイスラム主義者の反乱は、モザンビーク政府がこれを抑圧する力がないように見えることから、世界的に重要な航路であるモザンビーク海峡をますます混乱させている。4カ国安全保障対話(以下、QUADと言う)の参加国とヨーロッパ各国は、海賊などの勢力がこの地域の真空状態に足を踏み入れる前に、問題を封じ込める手助けをしなければない。
(2) モザンビークの反乱はアフリカ南部を不安定化する可能性があり、この地域のイスラム主義者を大胆にしている。モザンビーク海峡は、マダガスカルとアフリカ東部の間の1,800Kmの水路で、世界のタンカーの約30%が通航しており、反乱はタンカーの安全を脅かしている。また、ここは世界最大のガス埋蔵量の一部がある地域でもある。反乱は、いわゆる「スワヒリ海岸」のイスラム教徒集団の出身のグループによって2017年に開始された。現在、モザンビーク北部全域で800件以上の攻撃が行われ、少なくとも2600人が死亡し、60万人以上が避難している。国連事務総長から安全保障理事会への報告では、ソマリアに拠点を置くイスラム主義者がプンタランドにおいてモザンビークの反政府勢力の「指揮センター」として機能しているように反乱は国境を越えたものとなっていると指摘している。しかし、他の分析者は、イスラム国との深い関係は否定している。2020年には武力衝突がエスカレートし、国境を越えて、政府がイスラム過激派と対決しているタンザニアにも波及した。海洋インフラへの攻撃も増えている。2020年8月、モザンビークの反政府勢力は、北部の主要港を政府軍から奪取した。アフリカの角で起こったように、これは反乱軍が海賊行為に挑戦する第一歩であるという懸念が高まった。海上における麻薬密輸が反乱軍にとって重要な資金源である。いわゆる「スマック・トラック(Smack Track)」は、長い間、アフガニスタンで栽培されたヘロインを東アフリカ沿岸に持ち込み、かなりの部分がモザンビーク北部に上陸し、ヨーロッパなどに運ばれる。もう一つの大きな要因は、モザンビーク北部沖のモザンビーク海峡における沿岸のガス産業の発展である。これには主要な陸上のガス液化プラントを含む推定1,00兆立方フィートのガスを抽出するために、約500億米ドルの投資が計画されている。フランスのTotal社と米国のExxonMobil社が主要な投資家である。2021年1月、拡大する一連の攻撃の後、Total社はモザンビーク北部からフランスが管理するMayotte島に安全のため物流事業の拠点の一部を移動し始めた。深刻な債務問題に直面しているモザンビーク政府は、反乱に対して効果的な行動を取ることができず、傭兵に依存している。しかし、国際援助を受け入れることには消極的である。
(3) ロシアは、モザンビークの沿岸ガス埋蔵量のシェアを見て、Gazprom 社と Rosneft社のために提携国になろうとしている。ロシアは、アフリカの多くの国で民間の安全保障請負業者を使用している。2019年9月には、ロシアのWagner group社から最大200人の傭兵が、ロシア空軍とロシア海軍から装備と後方支援を受けてモザンビークに配備された。しかし、請負業者は大きな犠牲者を出し、数ヶ月で作戦から撤退した。フランスや他のヨーロッパの提携国は現在、この問題を封じ込める取り組みを強化している。フランスは歴史的に南西インド洋の主要な海上治安機関の役割を果たしており、フランスは2隻のフリゲートと哨戒艇を保有している。しかし、フランスは地域に拠点を置く海上哨戒機を欠いている。モザンビークの旧宗主国であるポルトガルは、1,400人以上の軍隊を訓練として派遣することに合意した。スペインは軍事支援を提供している。米国は、テロ対策支援の申し出を最終決定している。南アフリカ海軍は2011年からモザンビーク海峡で断続的な海賊対処の哨戒を実施しており、現在は反乱に対応して南アフリカ北部のリチャーズ湾に新しい前方展開用の基地を設けている。しかし、モザンビーク自身はアフリカの提携国を巻き込むことに消極的のように見える。インドは、長い間、掛け値なしの南西インド洋の安全保障を提供する者として、そしてモザンビークの安全保障上の提携国として自国を位置付けてきた。2020年以来、印海軍のP8I海上哨戒機は、モザンビーク海峡でフランス海軍との共同哨戒を行っている。インドは、海峡の北端に近いモーリシャスのアガレガ島に海軍の航空施設を建設中で、この地域を哨戒する能力を向上させようとしている。オーストラリアは、西インド洋における新たな状況を警戒している。豪海軍は長年にわたってインド洋方面に配備されており、スマック・トラックの密輸業者を阻止してきた。しかし、防衛の焦点を太平洋を含む自国に近い海域に当ててからは、その存在感は少なくなっている。オーストラリアは、どのような非軍事援助を提供できるかを検討する必要があるかもしれない。10年前、ソマリアに拠点を置く海賊行為は、「アフリカの角」沖の海域の国際的な軍事化の引き金であった。アフリカ南部でも同様のことを避けるには十分な理由がある。
(4) このモザンビークの危機的状況は、フランスやインドなどの国々が地域の安全保障上の提携国としての価値を示す機会と考えられるべきである。地政学的対立の中で、ますます不安定となっているアフリカ南部の諸国との協力を構築する機会となるかもしれず、この紛争を封じ込めなければ、海賊などの他の勢力がこの地域の真空状態を埋めてしまうかもしれない。
記事参照:The Mozambique Channel is the next security hotspot

3月19日「活性化するスリランカ・ハンバントタ港、インド洋における中国の立場強化?―在シンガポール専門家論説」(India Today, March 19, 2021)

 3月19日付の印英語ニュース誌India Todayのウエブサイトは、在シンガポールの公開情報による情報分析者、Saikiran Kannanの “Revival of Hambantota port in Sri Lanka may strengthen China’s position in Indian Ocean”と題する長文の論説と多数の画像を掲載し、Saikiran Kannanは、スリランカ・ハンバントタ港の活性化がインド洋における中国の立場を強化するかもしれないとして、要旨以下のように述べている。
(1)スリランカのハンバントタ港は、負債返済利率の高率故に強い批判に晒されてきた、中国の「一帯一路構想」(以下、BRIと言う)の象徴的存在となってきた。スリランカ政府は2017年に、負債返済不能を理由に、同港と周辺の1,235エーカーの土地を中国国有企業、招商局港口控股有限公司(以下、CMPortと言う)に99年間のリース契約で引き渡した。政治活動家や評論家は、CMPortとSri Lanka Ports Authority(スリランカ港湾庁:以下、SLPAと言う)との契約を、しばしば不当な取引として攻撃してきたが、CMPortの現有株式保有率は全体の80%で、SLPA が20%を保有している事実は注目されていい。ハンバントタ港は中国の BRIを通じた「債権の罠」外交の犠牲とされてきたが、今や、その前途に明るい兆しが見え始めているようである。
(2)ハンバントタ港はスリランカ政府の管轄下にあった当時、運用投資資金の不足と、大型港湾の運用能力の欠如のために、ほとんど稼働していなかった。したがって、同港はいずれ包括的な投資資金を持つ運営提携相手を必要としていた。CMPortは、官民連携による同港再生のために、約12億2,000万ドルを投資したが、同港を完全な稼働レベルに引き上げるために、更なる追加投資を必要とした。CMPortがハンバントタ国際港として運用を始めてから1年後、同港は、ロールオン/ロールオフ(RO-RO)貨物事業を中心とし、RO-RO船の貨物取扱量を136%増加させた。その後、同港はコンテナ貨物、一般貨物、客船業務及び燃料給油など、他の港湾と同様の業務を含む、業務の多様化を図ってきた。
(3)ハンバントタ港の地理的位置は、アジアとヨーロッパを結ぶマラッカ海峡とスエズ運河の間の世界で最も通航船舶の多いルートから、わずか6~10海里(約19キロ)にあり、泊地や最終仕向地への積み替え港として、海運業界だけではなく、輸出入業界全般にも有益である。ハンバントタ港の深水ターミナル施設は大型船舶の停泊が可能であり、また競争力のある労務経費、フリーポート施設、十分なスペースの燃料貯蔵施設、更には年間を通じた乾燥した気候などの同港の利点は、同港が競争力のある地域的海運と物流のハブとして発展し得る有利な要因となっている。加えて、「IMO2020低硫黄(SOx)燃料規制」(抄訳者注:2020年1月1日から全ての船舶の燃料油に含まれる硫黄酸化物を85%削減することが義務付けられた)に伴う、今後数十年間の海運業界の対応を考えれば、ハンバントタ港は、世界の商船隊を支援する大きな能力を持つ、燃料貯蔵タンク、製油所そして液化天然ガス(LNG)燃料補給施設に投資するには、理想的な場所にある。ハンバントタ港再生のもう1つの鍵は、年間6,000万トン以上の燃料を補給する、シンガポールとアラブ首長国連邦のフジャイラにある世界最大の2つの燃料補給市場に割り込む意図にかかっている。

(4)ハンバントタ港はRO-RO船の積み替えハブ港となってきている。同港は2019年に、RO-RO船、ばら積み貨物、及び液体貨物の3部門の荷役量で、年間100万トンに達した。コロナ禍の2020年には、RO-RO船の積み替えハブ港として車両などの自走式貨物が急増し、2019年比25.9%増となり、またばら積み貨物も44%増となった。インド、韓国、日本及び中国からの車両がハンバントタ港で積み替えられ、中東、南アフリカ及び南米に仕向けられた。同港は、積極的な市場開発キャンペーンを行い、RO-RO船輸送モデルを変えた。
(5)スリランカ閣議は、産業相による 'Smart One Stop Shop' ―ハンバントタ港に付属する工業地帯と南部州の産業への投資に関心を有する、地元と外国からの投資を促す全ての関連組織の代表から構成―設立提案を承認した。スリランカ投資評議会(BOI)は、ハンバントタ港の戦略的立地を利用し、この地域でLNGを取引することを主な目的として、ハンバントタ港に浮体式貯蔵LNG取引施設、「ハンバントタLNGハブ」を立ち上げる協定を、Pearl Energy(Pvt)社との間で締結した。このプロジェクトの総投資額は9,720万ドルで、LNGハブは、南アジアの主要燃料としての天然ガスへのより広範なアクセスへの道を拓く、この地域における画期的なインフラ開発となるであろう。
(6)さらに、中国との間で3億ドル相当のタイヤ工場が建設される計画があり、3年以内に操業が開始され、第1期計画ではコンテナ4万5,000個分に当たる900万本のタイヤがハンバントタ港から輸出されることになろう。また、ハンバントタ港はこの地域のばら積み貨物市場におけるスリランカのシェアを拡大する狙いから、Sinopec Fuels of Lanka(以下SOFLと言う)との間で戦略パートナーシップを結成し、スリランカ船籍のタンカーに500万ドル以上を投資した。現在、SOFLの最初のバイヤーとして、地元のばら積み貨物業者、Lanka Marine Services (LMS)に超低硫黄燃料油(VLSFO)を供給している。
(7)インド、日本及びスリランカが関わるThe East Container Terminal(以下、ECTと言う)プロジェクトを取り巻く諸問題も看過できない。推定5~7億ドル相当のこのプロジェクトは、中国のプロジェクトが最も目立つスリランカで、同国へのインフラ投資の目玉となるものであった。ハンバントタ港における積み替え貨物の3分の2以上がインド向けで、同港はインドとの重要な貿易連結点となっている。ECTプロジェクトは、インドと日本が投資する合弁事業として、インド太平洋のパートナーであり、「4カ国安全保障対話枠組み」(以下、Quadと言う)のメンバーでもある両国が、資金調達と開発のための実行可能で透明性のある持続可能な代替手段を南アジアに提供し得るかを示す、見本として期待されてきた。
(8)ハンバントタ港の再活性化の見通しはまた、同港がBRIプロジェクトの一環であるが故に、中国とそのパートナー諸国に大いなる刺激と信頼を与える可能性がある。パキスタンのグワダル港とミャンマーのチャウピュー港は、ハンバントタ港の再活性化によって力付けられるかもしれない。
(9)最後に、日米豪印のQuad諸国や、その他の諸国はこの中国製プロッジェクトを死に体と見なすべきでないことを認識すべきである。ハンバントタ港はこの2年間で再活性化された。加えて、スリランカはまた、タミル・ナードゥ沿岸からわずか50キロのジャフナ半島沖の3つの島に「ハイブリッド再生可能エネルギーシステム(“hybrid renewable energy systems”)」を設置する、中国も参画するエネルギー・プロジェクトを推進してきた。
(10)ハンバントタ港の今後の見通しは良好である。インドと他のQuad諸国は、わずか2年前には死に体と見なされていた資産―ハンバントタ港の将来を見直す必要がある。
記事参照:Revival of Hambantota port in Sri Lanka may strengthen China’s position in Indian Ocean

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書
(1) Implementing National Maritime Strategy With a Shrunken Fleet
https://cimsec.org/implementing-national-maritime-strategy-with-a-shrunken-fleet/
Center for International Maritime Security, MARCH 11, 2021
By Robert C. Rubel, a retired Navy captain and professor emeritus of the Naval War College
 2021年3月11日、米Naval War College名誉教授Robert C. Rubel海軍大佐(退役)は、米シンクタンクCenter for International Maritime Security(CIMSEC)のウエブサイトに、" Implementing National Maritime Strategy With a Shrunken Fleet "と題する論説を発表した。その中でRubelは、空母「ドワイト・D・アイゼンハワー」が間もなくヴァージニア州ノーフォーク海軍基地を出港するが、これは前回の6ないし7ヶ月間の作戦行動から帰還した後に半年間しか間を置かずに再度航海に出るものであり、こうした運用は乗組員やその家族にも負担になるものだと指摘した上で、しかし、Mark Esper元国防長官は米艦隊の拡張計画を発表したが、コロナウイルスに係る救援活動やワクチン開発などに対する巨額の政府支出のため、その実施の見通しははっきりしなくなっているとし、海軍は、無人船舶の配備や小型船舶の建造など、予想される予算内での需要を満たす方法を模索しているが、これらの対策は近視眼的であり戦略的な要素を見落としているなどと主張している。そしてRubelは、現在の統合参謀本部の構造は、国家大戦略とその海上部門の遂行に非効率的なアプローチをとっているが、これは米国が強固な戦力構成を享受していたときにはこの非効率性は容認され得るが、資源が不足している現在の環境では艦隊やその他の部隊の世界規模の機動性を制限することになり、必要以上の戦略的リスクが生じてしまうため、グローバルかつ海洋の視点を持った新しい統一司令部の創設が実行可能で真に必要な解決策であると主張している。

(2) BEYOND COLOSSUS OR COLLAPSE: FIVE MYTHS DRIVING AMERICAN DEBATES ABOUT CHINA 
https://warontherocks.com/2021/03/beyond-colossus-or-collapse-five-myths-driving-american-debates-about-china/
War on the Rockes.com, March 19, 2021
Evan S. Medeiros, professor and Penner Family chair in Asian studies at Georgetown University’s School of Foreign Service and a senior adviser with The Asia Group
Jude Blanchette, the Freeman Chair in China studies at the Center for Strategic and International Studies
 2021年3月19日、米Georgetown University’s School of Foreign ServiceのEvan S. Medeiros教授と米シンクタンクCSIS の中国専門家Jude Blanchetteは、米University of Texasのデジタル出版物War on the Rockに、" BEYOND COLOSSUS OR COLLAPSE: FIVE MYTHS DRIVING AMERICAN DEBATES ABOUT CHINA "と題する論説を発表した。その中でMedeirosとBlanchetteは、今度アラスカで行われる米中の安全保障担当者によるハイレベル会合は極めて重要であるが、それは今回の会談が、Biden米大統領就任後初となる高官同士の会合という位置づけだけでなく、一貫して続く両国間の摩擦、不安定性、そして不信感によって規定される米中関係の新時代の到来を告げるものかもしれないからだと指摘した上で、Biden政権が直面する対中戦略の困難性を考察し、結果として、Biden政権が対中戦略を精緻化するなかで米国で一般的になった5つの神話、すなわち、①中国経済は崩壊の危機に瀕している、あるいは逆に巨大な力を持っている、②中国は数十年先の国家の将来を効果的に計画することができる、③習近平は台湾への侵攻を準備している、④中国は国内の危機から目をそらすために軍事的冒険主義をとるだろう、⑤米国の関与政策は完全な失敗だった、に対して懸念を示している。

(3) Beware the bear in the Pacific
https://www.aspistrategist.org.au/beware-the-bear-in-the-pacific/
The Strategist, 19 Mar 2021
By Steve Raaymakers is a veteran practitioner in international development with a focus on environmental security, small island states, oceans governance and integrated marine resource management in the Asia–Pacific
 3月19日、オーストラリアの国際開発の専門家Steve Raaymakersは、Australian
Strategic Policy InstituteのウエブサイトThe Strategistに“Beware the bear in the Pacific”と題する論説を寄稿し、オーストラリアは、太平洋のロシア軍の動向を注視すべきと述べている。その中では、ロシアの太平洋岸は、オーストラリア東部と同じ経度・時差帯の範囲にあり、そこには、ある意味では豪国防軍を凌駕する軍事力を有している、ロシアの22隻の潜水艦は、オーストラリアの真北に位置し、そして日本に隣接しており、その水上艦は、巡洋艦「ヴァリャーグ」、6隻の大型駆逐艦、4隻の最新型多用途フリゲート、8隻の対潜水艦コルベット、数隻のパトロール・コルベット、4隻の大型揚陸艦がある、そして、長距離爆撃機を含む強力な空軍と、十分な地上軍も配備されている、ロシア軍は、日本海、東シナ海及び南シナ海で中国軍と演習を行っている、2017年、ロシアの戦略爆撃機2機と輸送機2機が、インドネシアのビアク島を訪れた、近年、ロシアのミクルーホ=マクレイ財団(Miklouho-Maclay Foundation)はパプアニューギニアでの活動を活発化させ、そして、ロシアは他のいくつかの太平洋島嶼国とも外交を活発化させている、豪政府は、ロシアの能力の増大に対応するための外交・防衛政策を早急に策定する必要がある、ロシア極東との貿易・協力関係を強化する可能性も模索すべきである、ロシアが、再び提携国や同盟国になることは想像を超えるものではないが、それには、ロシアが太平洋の行為者であることを認識する必要がある、といった主張を展開している。