海洋安全保障情報旬報 2021年1月11日-1月20日

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1月11日「米海軍水上艦部隊は組成を再調整すべしー米専門家論説」(Hudson Institute, January 11, 2021)

 1月11日付の米シンクタンクHudson Instituteのウエブサイトは同所The Center for Defense Concepts and Technologyセンター長兼上席研究員Bryan Clarkの“The Navy Surface Fleet Must Truly Rebalance Or Rick Irrelevance”と題する論説を掲載し、ここでClarkは米海軍の水上艦部隊は巡洋艦、駆逐艦の除籍を機にコンステレーション級フリゲート、将来小型水上艦(FSSC)、大型無人水上艦(LUSC)などの導入を促進する一方、沿海域戦闘艦は一部を除籍して他は限定的な任務に充当すべきとして要旨以下のように述べている。
(1) 中国との厳しさを増すせめぎ合い、新型コロナの世界的感染拡大の中、米海軍水上艦部隊は1月11日から15日の間、部隊の訓練、保守整備、指揮統率の改善という状況に即した主題についてThe Surface Navy Associationの年次シンポジウムをオンラインで実施した(抄訳者注:The Surface Navy Associationは対水上戦における共通の利益を共有する軍、ビジネス界、研究者の間の調整と意思疎通を促進するとともに水上艦部隊の行動を支援するため1985年に設立された協会)。しかし、水上艦部隊はもっと根本的な問題に直面している。水上艦部隊の指揮官達が同部隊の作戦概念、目的、兵力組成を再考しなければ同部隊はますます持続性を失い、中国の海上戦略が突きつけるせめぎ合いの各分野に対応できなくなる。
(2) 11月に議会に提出された2021会計年度の建艦計画は手頃な価格のものではないが、艦
隊の兵力組成はより小型で無人機化への再調整が反映されている。巡洋艦、駆逐艦の除籍とより小型で廉価な戦闘艦艇による代替によって、水上艦部隊は海軍・海兵隊・沿岸警備隊3軍種共通の海洋戦略に示された中国海軍、海警総隊、海上民兵混成のグレーゾーンでの行動に対応するため、それに釣り合った選択肢を獲得することになろう。重要なことは、より多く、分散した水上艦部隊は指揮官に部隊を管理する上でより大きな柔軟性を与えるだろう。大型水上戦闘艦艇と展開行動ができない沿海域戦闘艦からなる今日の艦隊では、海軍は作戦を実施し、地域における共同演習から中国に対する部隊の誇示まであらゆる任務を支援するために年間ほぼ8千万ドルを費やして駆逐艦を派出せざるを得ない。これに対し、フリゲートであれば年間約5千万ドルであろう。
(3) 不幸なことに水上艦部隊が計画する再調整は十分と言うにはほど遠い。2021会計年度の建艦計画は、現有に比較して水上戦闘艦艇が17隻追加されるに過ぎない。コンステレーション級フリゲートと次期ミサイル駆逐艦DDG-Nextの価格は12億ドルと25億ドルと開きがある。イージス戦闘システム、ミサイル垂直発射装置、高性能の対潜戦装備を有するコンステレーション級フリゲートは駆逐艦が有する能力のほぼ全てを有しており、多くの状況下で大型多目的戦闘艦の代替を務めることができる。長射程ミサイル、指向性エネルギー防御システムを装備したDDG-Nextは、中国周辺の厳しく対立する海域で紛争の初期に潜水艦の作戦を補完する妥当な解決策かもしれない。
(4) そこで疑問なのは、海軍がそれぞれの艦種を何隻購入することができるのか、そして購入しなければならないのかである。 海軍は現在、毎年調達する駆逐艦2隻分の予算でDDG-Nextを1隻、コンステレーション級フリゲートを1隻調達できる。インフレに見合った建艦予算は追加のフリゲート1ないし2隻を調達できるかもしれない。これは、多目的戦闘艦艇数を維持するかもしれないが、水上艦部隊を拡大したり、あるいはさらなる分散配備をすることはできない。
(5) 水上艦部隊の再調整の他の障害は、沿海域戦闘艦(以下、LCSと言う)計画である。LCSは戦争のレベル以下で中国の海洋進出に対処することのできるより小型で一部の任務に対応する艦艇として艦隊の駆逐艦やフリゲートを補完できなければならない。不幸なことに、LCSを1隻運用し、支援するために毎年5千万ドルが必要である。これは、コンステレーション級フリゲートにかかる経費と同じである。LCSは設計上の不具合、ミッション・パッケージ(抄訳者注:LCSに対機雷戦能力を付与するため、搭載予定の無人航空機、無人船、無人水中機などのシステム)の配備の遅れ、配員の問題で運用が阻害されている。米海軍作戦部長は、LCSの能力の限界がそれほど問題にならない戦域に配備する考えである。LCSの不十分な運用でも約5億ドルが必要である。海軍は4番艦までを除籍する考えであるが、重要な設計上、あるいは資材的問題のある艦全てを含めるよう計画を拡大すべきである。残りのLCSは日本、バーレーン、シンガポールに現在の海軍の計画に基づき前方展開、あるいは配備し、さらにその残りの艦は米本土周辺において本土安全保障任務に充当すべきである
(6) 小型戦闘艦艇の所要を満たすにはLCSは高価すぎ、信頼性がない。水上艦部隊はLCSの代わりに将来小型水上戦闘艦(以下、FSSCと言う)の開発を急ぐべきである。経費前倒しの影響を軽減するため、FSSCを最近の大型無人水上艦(以下、LUSVと言う)計画と統合し、ミサイル装備の小型戦闘艦を創出することができる。FSSCとLUSV計画の統合は多くの問題を解決しそうである。米海軍の水上部隊指導層は、必要とする部隊組成の再調整を達成するためにDDG建造の減速、LSUV計画の見直し、LCSの代替といった厳しい選択をする必要がある。そうでなければ、海軍は運用に余裕のない水上艦部隊を危険にさらすことになり、海軍は中国のような侵略者とのせめぎ合い、事態拡大の抑止に焦点を当てた新しい海洋戦略を実行できない。
記事参照:The Navy Surface Fleet Must Truly Rebalance Or Rick Irrelevance

1月12日「中国軍の海外拠点の問題点―米専門家論説」(China Brief, the Jamestown Foundation, January 12, 2021)

 1月12日付の米The Jamestown Foundationのデジタル誌China BriefのウエブサイトはThe Center for Strategic and Budgetary Assessments上席研究員Toshi Yoshihara の“Trouble Finding Partners: Barriers to China’s Overseas Basing”と題する論説を掲載し、ここでYoshiharaは中国軍の活動がグローバル化するにつれて海外の基地が必要となっているが、受け入れ国の経済社会状態は総じて悪く、それが中国軍の海外活動を制約する要因になる可能性があるとして要旨以下のように述べている。
(1) 中国軍がグローバル化するにつれて、自国から離れた地域での活動を維持するために、海外基地や軍民両方が使用できる施設がますます必要となっている。最近の米国の国防情報報告によると、中国軍は海外で寄港でき、後方支援を受けることができる場所を探している。国防総省によると、中国政府は「軍事物流施設」の受け入れができる12カ国について「検討」している可能性が高い。中国政府が選択肢を模索する中、中国のアナリストは潜在的な受け入れ国と中国軍のアクセスと使用に対する適合性に注意を払い始めている。本論説では中国が海外に軍事力を展開するための要件に関する文献を参考とする。中国の分析者は海外の基地や施設を手に入れる際の課題とコストについて現実的に考えている。
(2) 中国の政策決定者は、海外での補給支援は受け入れ国の政治的安定、経済の健全性、中国との2国間関係に大きく関係していることを認識している。2017年に設立されたジブチの中国軍初の海外拠点に対する彼らの評価は、そのことを示している。ジブチは世界で最も遅れた国の一つである。天然資源と十分な教育を受けた労働力が不足しており、農業生産や産業基盤が脆弱である。現地で資材を入手することができず、中国軍の支援基地は基本的な物資を輸入せざるを得なくなっており、その一部は中国本土で調達された同じ物の20倍の高値となっている。中国関係者はパキスタンについても同様の見解を持っている。パキスタンは政治的不安定、テロの脅威、分離主義運動、発達していない経済、弱い産業基盤、貧弱なインフラ、近代化に対する地元の抵抗を含む社会的、文化的妨害に苦しんでいる。これらの要因は、2007年の発足以来、グワダル港の機能が不十分であることと直接関係している。グワダルを「裸の港」と表現したこの研究は、その支援施設とインフラは中国のニーズを満たすには恐ろしく不十分であると述べている。これらの問題は、中国軍の将来の配備に悪影響を及ぼす。ジブチと米海軍への支援を行っているシンガポールを比較した研究は、中国軍のグローバルな活動にとって重要であると考えている受け入れ国の質についての手がかりを提供する。その研究の著者は、ジブチは1990年代後半から比較的政治的に安定を維持しているが、その経済的脆弱性は中国にとって大きな不利となることが証明されるかもしれないと認めている。彼らはまた、大多数のイスラム教徒の国が中国と協力する文化的妨害を引き起こす可能性があるとの懸念を表わしている。同時に中国政府の肯定的な国際的イメージが中国軍の存在の広範な社会的受け入れを得るのに役立つかもしれないことを期待している。彼らは、ジブチが自国で海軍施設の開発できないかもしれないことを認める。その代わりに、中国の金融大手は、アフリカ諸国の素晴らしい大水深港への投資を加速させる可能性がある。対照的に、シンガポールは安定した政治システムと効率的な政府を誇っている。シンガポールは模範的な受け入れ国として機能する良い資質を持っている。この研究は、詳細な比較評価を提供していないが、二つの受け入れ国の大きな違いを明確に示している。
(3) また、米軍と英国軍の重要な軍事施設があるイギリスの海外領土であるディエゴ・ガルシアに関するもう一つの研究は、米国と英国の特別な関係が、インド洋のこの基地に独特の価値を与えていることを示している。両国の比類のない緊密な関係は柔軟な運用環境を可能にしながら米国のアクセスの長期的な持続可能性を確保している。米国は原子力潜水艦や長距離爆撃機を含む戦略兵器をディエゴ・ガルシアに定期的に配備している。ジブチやその他の中国軍のアクセスポイントの能力は、米軍が利用できるシンガポールのチャンギ海軍基地やディエゴ・ガルシアなどの基地とはかけ離れており、横須賀の海軍基地や沖縄の嘉手納基地などの主要な前方基地ともかけ離れている。その教訓は、信頼できる海外へのアクセスを得るためには質の高い戦略的提携国が不可欠だということである。
(4) 中国の関係論文は、海外の基地の使用を取り巻く複雑な政治的、外交的、文化的、宗教的感受性に対する意識の高まりと警戒感を示している。ある研究では、海外拠点の運営管理は単に軍事問題ではないことを示している。それはむしろ同様に受け入れ国の政治的、外交的、文化的、宗教的な分野の問題を含んでいる。したがって、中国政府が党国家装置、法執行機関、治安機関、情報機関、自治体を巻き込む機関の間の連係が必要となる。中国は、受け入れ国が必要とすることを予想しなければならない。たとえば、①中国軍の存在のための法的および管轄権の基礎を引き受ける合意、②地域社会の保護、③汚染、騒音、犯罪を軽減するための取り組み、④地元市民の死亡や負傷から防護するための措置などである。ある著者は、米国が21カ国と結ぶ条約や協定と比較している。それらは、すべて受け入れ国の状況に個別に合わせたものである。中国政府は基地へのアクセスを得るためにかなりの外交資本を使用する必要がある。中国の監視団は、受け入れ国との将来の紛争が中国の外交上の問題を増大させる可能性があることを認めている。不公平または強制的と見なされる取り決めは、地域社会との間で怒りを起こさせ、最終的には彼らの領土の中国軍の存在への反抗を起こさせる可能性がある。2人の著者は、政治の社会的ダイナミクスを活火山のダイナミクスになぞらえている。火山の休眠は一時的なものに過ぎないが、噴火は永久的な損害を与える可能性がある。ある学者は、海外での基地のリスクに過度にさらされるようになった米国の過ちを繰り返さないように中国政府に助言する。中国は権力政治や介入政策を避けるべきである。その代わりに、主に経済的、文化的関与により、その野心を果たすべきである。中国の相対的な政治的外交的未熟さを考えると、中国政府が他国の乱雑な国内政治にうまく対応できるのかは不明である。中国の学者は、海外の基地の法的問題に注意を払い始めている。彼らは、中国政府が管轄権紛争やその他の問題が受け入れ国と解決される法的根拠を調査するために、より多くのことを行う必要があることを認めている。彼らは、受け入れ国の主権と領土の権利に関する十分に裁定された決定は、中国の海外での地位に深刻かつ永続的な結果をもたらす可能性があることを認識している。2人の専門家によると、疑わしい法的基盤に基づく取り決めは「中国の脅威理論」を増大させ、敵対心を高め、海外での妨害行動を引き起こす可能性がある。中国政府が自国の主権独立を主張し、他国の内政における外部からの干渉に反対してきた長い歴史を十分振り返ってみて、海外基地に関する必要性と受け入れ国の政治的感受性とのバランスを取る必要がある。
(5) 中国政府が遠方に戦力を投射するという中国軍の要求を果たすために、信頼できるパートナー国を見つけるのに苦労するであろう。受け入れ国の経済発展と政治的安定だけでなく、中国政府と相手国との関係は中国軍の海外配備の信頼性にとって極めて重要である。米国の経験は緊密な絆が一晩で実現しないことを示している。米国とその同盟国は信頼、価値観の共有、制度化された相互作用、平和と戦争中の緊密な協力の歴史などによって結び付けられている。中国政府が、主として貿易上の海外関係を大国との競争の緊張や戦争に耐えられる関係に変えることができるかどうかは不確実である。本論説は堅牢なアクセスネットワークに付随するコミットメントに関する懸念を明らかにする。中国の政策決定者は、新しい基地とその受け入れ国が独自の政治的、外交的、経済的、法的要求、運用上の要求を行なってくると認識している。中国軍の将来の海外アクセスにかつての取り決めが中国のコストに見合う重大な問題として浮上してくるかどうかはまだ分からない。受け入れ国の質の低さと受け入れ国にアクセスするためにコストの高さは、中国軍の海外進出を制約し、複雑にする可能性がある。
記事参照:Trouble Finding Partners: Barriers to China’s Overseas Basing

1月12日「米3軍共通の新海洋戦略、その行間を読む―米海大名誉教授論説」(Center for International Maritime Security, January 12, 2021)

 1月12日付の米シンクタンクシCenter for International Maritime Securityのウエブサイトは、米海軍大学名誉教授、Robert C. Rubel退役海軍大佐の“The Tri-Service Maritime Strategy: Reading Between the Lines”と題する論説を掲載し、Rubelは米海軍・海兵隊・沿岸警備隊の海洋3軍種が12月17日に公表した“Advantage at Sea; Prevailing with Integrated All-Domain Naval Power”*と題する3軍種共通の海洋戦略について、この文書を批判することではなく(少しはあるが)、海軍が発行した戦略文書の真の性質を理解し、その背後にある意図を読み解くことにあるとして要旨以下のように述べている。
(1) 海軍は、軍種最高レベルの政策声明と指針となる文書を日常的に公開している。一部の人々は、これらの文書を海軍部隊が国家目標を達成するための方法を記述したものとして、海洋戦略と言うこともある。しかし実際には、海軍はそうした方法を決定する権限を持っていないので、これは事実ではない。それは、統合参謀本部と各軍種を迂回して、大統領から国防長官を通じて直接に統合戦闘軍司令官に至る統合指揮系統の管轄に属する。では、海軍が戦略策定過程に参画する権限を持っていないのに、何故、そのような文書を発行するのか。その最新版はAdvantage at Seaと題され、一般的にThe Tri-Service Maritime Strategy (以下、TSMSと言う)と称される。
(2) 広く受け入れられている戦略策定の3段階は、目的、方法そして手段である。目的―国家安全保障目標―を達成するための手段である軍隊が使用できる方法を開発するのは統合指揮系統の任務である。各軍種は手段を提供する任務を負っているので海軍が発行する如何なるトップダウン文書も何らかの形でその責任に繋がるものでなければならない。このような文書が発行される背景には一般的に資源不足という事情があり、したがって、文書は、何らかの形で当該軍種がその不足に対処する方法を概説するか、あるいはより多くの資源を嘆願するか、いずれかになる。これらの文書は、特に内部向けの場合には当該軍種を現状に適応させるための単なる指針となり勝ちである。他方、外部向けの場合、当該軍種の実際的な戦略は、外部の関係者―すなわち、議会、国民、潜在的敵対国あるいは友好国など―に影響を与えることを期待して、「戦略」文書を公開することで、望むものを得ようとするのである。公文書を通じて影響力を及ぼしたいとするこうした期待がTSMS発行の背景事情として見られることから、我々は基になる方法を推測するためには、その行間を読むことが必要となる。
(3) TSMSには海洋領域における中国とロシアの「修正主義的アプローチ」が米国の利益を脅かし、同盟関係を損ない、そして世界秩序を脅かしているという正式な問題声明が含まれている。更に、中ロ両国の攻撃的な海軍力の増強と近代化は、米国の軍事的優位を侵食している。これを放置しておけば、海洋3軍種は海洋における米国の優位を確保できない状況に置かれるであろう。これを解決するには幾つかの方法がある。一つは海洋3軍種がグレーゾーン活動を抑制しなければならないということであるが、既述したように、このことは軍種の権限外である。第2に、中国とロシアの海軍力の増強は、少なくとも相対的には、抑制されなければならないということである。おそらく、これが解決されなければならない真の問題であり、故にTSMSの問題声明には、システムと武器のコストや開発期間の増大及び継続的な予算抑制圧力など、追加的能力構築に当たっての課題―要するに、資源不足がリストアップされているのである。
(4) 以上のことから、我々はTSMSの背後にある基本的な戦略が、国防長官によって策定されたBattle Force 2045 plan**(抄訳者注:2045年までの海軍の戦力目標―有人艦艇382~446隻、無人艦艇143~242隻)に示されたより大きな艦隊を構築するための気運を盛り上げることを狙った戦略文書の公刊であると推測できる。したがって、この文書の嘆願目的を効果的にする重要な要素は、説得力のある有用な議論を明確にすること―すなわち、何故、国家は海洋3軍種により多くの投資をしなければならないか―であり、TSMSにはそうした文言が溢れている。とは言え、この文書には海洋3軍種はそれぞれの活動をより密接に統合するというより斬新で劇的な要素も含まれている。資源不足に直面しても、効率性と相乗効果を見出すことは理にかなっており、これが問題解決の背後にある動機の一つである限り、評価できる動きである。
(5) しかしながら、TSMSを精読すれば、やや問題のある動機や戦略があることが分かる。この文書は、中国とロシアのグレーゾーン活動に対して、海洋3軍種がより大きなリスク・コストを背負ってもより攻撃的に対抗していくと主張することによって、軍種権限の範囲を逸脱している。また、敵対者を脅かす攻撃的で危険ともいえる前方海軍作戦は1980年代の海洋戦略の中核的要素で、しかもTSMSがそれに共鳴しているように思われるが、時代と敵対者が異なっており、こうした前線での攻撃戦略が現在の状況において適切であるかどうか疑問に思う。とはいえ、米軍部隊が極超音速兵器を保有しているか、あるいは間もなく保有であろうことを示唆していることを含め、この文書は米海軍が如何に敵と対決し、打ち勝つことができるかを明確に記述している(抄訳者注:原文3~14頁参照)ので、この文書自体はそのような威嚇の手段として意図されているかもしれない。
(6) 更に、TSMSには同盟国との関係も重要な要素となっている。この文書は多くの場所で、特に紛争のスペクトルにおける上位レベルにおいて、他国海軍との協力強化を求めている。これは2015年のA Cooperative Strategy for 21st Century Seapowerの概念を受け継いでいるが、それを達成するための何らかの基本的な戦略がなければ、陳腐な文章に過ぎない。TSMSはBiden新政権による、Trump政権とは違ったより国際主義的な政策とアプローチを期待しているように見られるが、特に戦闘行動においてより多くの協力を求めるだけではそれを確保するための実際的な戦略ではない。この文書は演習の増加を想定する以外に、それがどのように達成されるかについて、ほとんど何も示していない。
記事参照:The Tri-Service Maritime Strategy: Reading Between the Lines
備考*:Advantage at Sea; Prevailing with Integrated All-Domain Naval Power
備考**:以下を参照
Navy Force Structure and Shipbuilding Plans: Background and Issues for Congress

1月13日「米沿岸警備隊司令官が原子力砕氷船の建造を否定―米海軍協会報道」(USNI News, January 13, 2021)

 1月13日付のU.S.Naval InstituteのウエブサイトUSNI Newsは“Schultz: Nuclear Icebreakers Are Not An Option for Coast Guard”と題する記事を掲載し、米沿岸警備隊司令官が考える砕氷船の建造方針について要旨以下のように報じている。
(1) 以前ホワイトハウスから原子力砕氷船の可能性の評価の要求があったのに対し、原子力砕氷船を追求しないと米沿岸警備隊トップが1月13日に述べている。米沿岸警備隊のKarl Schultz司令官はSurface Navy Associationの年次シンポジウムで講演し、沿岸警備隊と海軍は海洋の軍隊がどのような種類の砕氷能力を必要とするかを議論しているが、運用する能力がなく要求を満たすものを建造することができないため、米国が原子力砕氷船を保有する可能性はないと述べた。
(2) Trump政権から原子力砕氷船建造の将来性を検討するように要求されたことは、米国防総省がロシアや中国のような国との高度な紛争を強調する国家防衛戦略(National Defense Strategy)への転換を進めていることと同期していた。海軍当局者たちは近年、北極海域におけるロシアと中国のプレゼンスの高まりに警鐘を鳴らしている。CBSニュースが2020年9月に報じたところによると、ロシアは、北極圏で航行可能な原子力砕氷船を保有している。報道は中国は自国船隊のために原子力砕氷船を建造することを計画している可能性があると示唆している。
(3) Schultzは砕氷船に関して、彼が「6-3-1戦略」(six-three-one strategy)と呼ぶものに焦点を合わせていると述べている。「6-3-1とは、最低でも我々は6隻の砕氷船が必要だということである。その6隻の内、3隻は大型のもの、つまり我々がPolar Security Cutterと呼んでいるものが必要である。そして我々には、今、新しい1隻が必要である」と彼は述べている。最初のPolar Security Cutterの建造は、2021年に始まる予定である。Polar Security Cutterは大型砕氷船だが、沿岸警備隊は中型砕氷船に関する要求に取り組んでおり、これをArctic Security Cutterと呼んでいるとSchultzは述べている。
(4) 「我々が、実際に将来の可能性として検討したのは、6隻のPolar Security Cutterと、おそらく3隻のArctic Security Cutters、つまり米国籍の9隻の砕氷船の船隊である。当面の間、我々は橋渡し戦略(bridging strategy)として、リースの選択肢を検討している。それは、代わりではなく付加的なもので、不足を補うためのものである」とSchultzは述べている。Offshore Patrol Cutterのような他の船艇の船体強化について質問されたSchultzは、可能性はあるが、今のところ沿岸警備隊が建造している砕氷船に力を入れていると述べた。
記事参照:Schultz: Nuclear Icebreakers Are Not An Option for Coast Guard

1月14日「アゾフ海におけるロシアの戦略とウクライナへの圧力にどう対応すべきか―元ウクライナ海軍参謀総長論説」(Eurasia Dairy Monitor, The Jamestown Foundation, January 14, 2021)

 1月14日付の米シンクタンクThe Jamestown Fondationが発行するEurasia Daily Monitorのウエブサイトはウクライナ海軍参謀総長、ウクライナ国防第1次官を歴任した退役海軍大将Ihor Kabanenkoの“Russia’s Strategy in the Sea of Azov: The Kerch Bridge, Artificial Shipping Delays and Continued Harm to Ukraine”と題する論説を掲載し、ここでKabanenkoは黒海とアゾフ海を結ぶケルチ海峡の通航に対してロシアが課している制限を事例に、そこにロシアのウクライナおよび西側諸国への対応の変化の動向が現れているとして要旨以下のとおり述べている。
(1) 2018年5月、ロシアは黒海とアゾフ海を結ぶケルチ海峡の間にかかるケルチ海峡大橋を完成させた。それ以後ロシアはアゾフ海と黒海の通航、具体的にはウクライナのアゾフ海岸に位置するベルジャンシクやマリウポリなどの港湾を行き来する船舶の通行に対する制約を強めている。もともとRussian Federal Security Service沿岸警備隊による、それら船舶への立入検査による「アクセス拒否」活動を行っていたが、それを強化した形である。橋がかかったことにより、海峡を通航できる船舶に高さの制限が課され、アゾフ海を通航できる船舶の数が減り「1年間でウクライナからアメリカへの金属の輸出が100万トン」減少することになった。
(2) 上述したロシアによる「アクセス拒否」は国際情勢に応じ強まったり、弱まったりしてきた。それは2018年にケルチ海峡大橋が完成してから劇的に強まっている。2018年8月の段階で1船舶あたり平均73-88時間の待機時間が課せられたが、それは同年5月の10-12倍に相当する。11月にはそれがピークに達し124.2時間にのぼった。こうした「アクセス拒否」戦術によって2018年にウクライナが被った損失は3億6000万米ドルにのぼっている。
(3) 2018年末から19年にかけて、西側によるさらなる制裁の恐れが強まると、ロシアのアクセス拒否活動は弱まり、2019年1月には平均待機時間が32.1時間だったのが、7月には19.8時間に減少した。しかし、それは8月と9月に再び増え、とりわけアゾフ海から黒海へ向かう船舶に対する制限が顕著であり、平均待機時間78.5時間である。このことはロシアの狙いのひとつがウクライナの輸出船の妨害であることを示唆している。10月に待機時間は再び16-27時間に減少したが、それは、ウクライナがロシアを提訴した国際海洋法裁判所における裁判の第1回公聴会の時期と一致している。
(4) 2020年前半までに平均待機時間はさらに短くなったが、7月から9月にかけて再び増加した。これは、ロシアがクリミア半島にあるオプク訓練場における軍事演習を開催したことと関連している。10月になると再び規制は弱まったが、11月、クリミア半島での飲料水不足が決定的に悪化した11月には29.4-35時間と倍増した。クリミア半島の飲料水不足は、2014年のロシアによるクリミア半島の併合以降、ウクライナが報復措置として同半島への水供給を止めたことに由来するものである。ロシアはこれに対する対抗措置として、2003年の協定によって禁止されているアゾフ海の単独開発や、もともとクリミア半島に水を供給していた北クリミア運河の掌握に出る可能性が指摘されている。ケルチ海峡のアクセス拒否の強まりは、それを背景にしたロシアの威嚇行為ということだろう。
(5) 以上のように2018年から現在にかけて、ロシアによるアゾフ海における「ハイブリッド」戦略は、必要に応じて強まったり弱まったりを繰り返してきた。つまりロシアがウクライナに圧力をかけようとするときにはそれを強め、西側諸国に親善の姿勢を見せたいときには弱まるのである。ウクライナはこうした脅威にどう対応すべきだろうか。ひとつの対応策はウクライナ海軍によるアゾフ海や黒海の哨戒活動の強化である。また米国、その他NATO諸国の艦艇の寄港をより頻繁にしたり、あるいは近傍での共同軍事演習などを実施することなども有効であろう。
記事参照:Russia’s Strategy in the Sea of Azov: The Kerch Bridge, Artificial Shipping Delays and Continued Harm to Ukraine

1月14日「米国のインド太平洋戦略文書2種に見る三つの違い―デジタル誌編集委員論説」(The Diplomat, January 14, 2021)

 1月14日付のデジタル誌The Diplomatは同誌安全保障・防衛問題担当編集委員のAbhijnan Rejによる“The US Strategic Framework for the Indo-Pacific: 3 Curiosities”と題する論説を掲載し、ここでRejは米国のインド太平洋戦略に関する、最近になって公開された2018年の文書と、2019年にすでに公開されていた文書の比較を行い、その相違点について要旨以下のとおり述べている。
(1) 米国のTrump政権は、退陣間近になって外交的攻勢を強めている。その典型的な例が、1月9日に行われた、米国が台湾への関与について「自らに課してきた制約」をすべて取り払うとした声明である。それに加えてホワイトハウスは、本来の秘密指定解除は2042年12月31日であった戦略文書について1月5日に秘区分を解除したと発表した。政権末期にあってTrump政権は中国とイランが米国にとって主要な安全保障上の脅威であることを強調してきたが、今回発表された文書はそのパターンに合致するものだった。
(2) その文書は「インド太平洋における米国の戦略的枠組み」(以下、SFIPと言う)であり、国家安全保障会議が作成し、2018年2月に承認されたものである。一方で2019年6月、国防総省が発表した「インド太平洋戦略報告」(以下、IPSRと言う)という文書がある。この二つの文書の内容はどの程度合致し、どのような違いあるのか、以下その概略を示す。
(3) 第1の差が、ロシアの扱いである。IPSRは米国にとって四つの脅威としてロシア、中国、北朝鮮、そして「国家横断的な挑戦」を挙げ、ロシアについて「復活した有害な行為者」と名指しした。それによればロシアが軍の近代化を進めているのは、インド太平洋におけるそのプレゼンスを再確立するためのものだと言う。しかしながらSFIPは「ロシアは、米国や中国、インドと比べれば周縁的」な存在であり続けるだろうとはっきり述べている。つまり公の文書ではロシアは脅威とされ、機密文書においてはそうではないということになる。
(4) 今一つの違いはインドの位置づけである。IPSRでは韓国のような条約上の同盟国が全面に押し出され、インドはあくまで提携国の一つとして東南アジアの小国と並べられただけであった。他方、SFIPはインドの役割をより大きなものと位置づけている。そして、中国との間の国境紛争などの対処を外交的、軍事的に支援する必要性を訴えている。こうした主張はインドの関係者を喜ばせるものであろうが、他方で、「インド太平洋における米国の戦略的優越」の維持の強調は「多極的世界における多極的アジア」を志向するインドの戦略とはズレもある。Narendra Modi首相がこれに諸手を挙げて受け入れる可能性は小さい。
(5) 最後にモンゴルについて指摘しておこう。2019年のIPSRで同国について221語も費やされ、「モンゴルの国際機関への地域的協力と支援はインド太平洋における平和と安定、繁栄に貢献し地域における安定的影響力として貢献している」とさえ書かれている。しかしSFIPにおいてモンゴルはネパールより多少良い扱いを受けているだけで、ほとんど言及されていないのと同じであった。
記事参照;The US Strategic Framework for the Indo-Pacific: 3 Curiosities
(参考:1月5日付で秘密指定解除された「インド太平洋における米国の戦略的枠組み」文書)
The United States Strategic Framework for the Indo-Pacific
https://trumpwhitehouse.archives.gov/wp-content/uploads/2021/01/IPS-Final-Declass.pdf
Declassification of secret document reveals US strategy in the Indo-Pacific
※Statement A Free and Open Indo-Pacific
https://trumpwhitehouse.archives.gov/wp-content/uploads/2021/01/OBrien-Expanded-Statement.pdf
Robert C. O’Brien Assistant to the President for National Security Affairs January 5, 2021
1月12日、Trump政権下のホワイトハウスは2018年2月に同政権が策定し2042年12月まで秘密とされていた“The United States Strategic Framework for the Indo-Pacific”(「インド太平洋における戦略的枠組み」)について、1月5日付で一部を除き秘密指定解除し公開した。ここではこれが中国に対する優位(primacy)を確保するための戦略であることが明記され、そのため同盟国及びパートナー諸国との連携を重視し、特に日米豪印4カ国枠組み(Quad)はその要であり、中でもインドの役割に期待していることなどが示されている。また、同文書公開に関するRobert C. O’Brien米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)のステートメントでは、この戦略が安倍晋三前首相の提唱した日本の「自由で開かれたインド太平洋」構想と軌を一にするものであることについて言及されている。
なお、上記2件の文書についてはBiden政権発足に伴いホワイトハウスのアーカイブズに移管されており、発表当時のURLからはアクセスが出来なくなっているため、上記のURLからアクセスされたい。

1月15日「山火事の大気冷却効果は従来の想定より大きい―米シンクタンク報道」(Eurasia Review, January 15, 2021)

 1月15日付の米国の独立系ジャーナル・シンクタンクEurasia ReviewのウエブサイトEurasia Reviewは“Wildfire Smoke Is More Cooling On Climate Than Computer Models Assume”と題する記事を掲載し、最近科学系学術誌に発表された山火事の大気冷却効果に関する論文の内容について、その効果は従来のモデルによって計算されていたものより高いという結論が出たとして要旨以下のとおり報じている。
(1) 科学系学術誌Nature Communicationsの2021年1月号に“Biomass Burning Aerosols in Most Climate Models Are Too Absorbing”と題された学術論文が掲載された。それはUniversity of Wyomingで2020年9月に博士号を取得したばかりのHunter Brownを筆頭著者とし、同大准教授Shane Murphyをはじめ、米国内外のさまざまな共著者の手による、山火事・野火によって生まれるバイオマス燃焼エアロゾルが大気にどのような影響を与えるかに関する論文である。その結論は、山火事の煙による大気の冷却効果は従来の種々のコンピューターによるモデルが計算するよりも高かったとするものであった。
(2) 大気中の燃焼エアロゾルの特徴、すなわちそれがどのように大気に影響を与えるかなどについては燃料の種類やその地域の気候によって決定される。一般的にアフリカやオーストラリアなど温暖で乾燥した草原におけるバイオマス燃焼エアロゾルは暗い、すなわち光をより吸収しやすいという特徴を持ち、他方で北米やアジア北部など寒冷で湿気の高い地域のそれは、明るく、したがって光をあまり吸収せず、反射させる特徴を持つ。後者は宇宙からの太陽光を反射させてしまうため、より冷却効果が高いということになる。
(3) Brownらの研究は北米だけでなくアフリカ、南米、東南アジアなどさまざまな地域における山火事の実際の観測データを利用し、それとバイオマス燃焼エアロゾルの大気への影響に関する種々のモデルを比較した。その結果、多くのモデルにおいて、実際に観測されたエアロゾルよりも暗い、すなわち光の吸収力が強く、したがって冷却効果が相対的に低いエアロゾルが仮定されていることが明らかになった。
(4) 大気中のエアロゾルが気温に与える影響は地球温暖化問題にとってきわめて重要な争点であり、それと同時にきわめて不確実性の高いことが指摘されている。著者によればこの研究は、さまざまなモデルにおけるバイオマス燃焼エアロゾルの冷却効果に関する不確実性を低減することに貢献するかもしれない。
記事参照:Wildfire Smoke Is More Cooling On Climate Than Computer Models Assume

1月16日「中国調査船によるインドネシア周辺海域での情報収集―米専門家論説」(USNI News.com, January 16, 2021)

 1月16日付のU.S.Naval InstituteのウエブサイトUSNI Newsは海軍関連アナリストH I Suttonの“Chinese Survey Ship Caught ‘Running Dark’ Give Clues to Underwater Drone Operations”と題する論説を掲載し、ここでSuttonは最近の中国調査船によるインドネシアの周辺海域での不審な情報収集活動について要旨以下のように述べている。    
(1) 中国政府の調査船が船舶自動識別装置(抄訳者注:原文ではAISはAutomated Information Systemとされているが、文脈からAutomatic Identification Systemを指していると考えられる。以下AIS) でその位置を送信することなく航行していることをインドネシア当局に察知された。この事件は中国の無人潜水器(UUV)がインドネシアの領海内で確認された現在進行中の海洋問題の最中に最近起こった意外な展開である。調査船「向陽紅03」は1月6日朝、中国海南島の三亜の基地を出港し、1月11日の週にスンダ海峡付近でインドネシア沿岸警備隊に拿捕された。報道によると、戦略的に重要な海峡を通過するすべての船舶はAIS を装備することを要求されているが、インドネシア当局の問い合わせを受けた際、向陽紅03の乗組員はAIS が故障していたと主張した。
(2) Asia Timesは「インドネシアは、世界で唯一の群島海域の海上交通路を通過する全ての船に対して機能するAISを搭載することを要求し、そして、それらが海洋学的調査を行うことを禁止している」、「インドネシア沿岸警備隊は南シナ海南端のナツナ諸島や、その後のブリトゥン島北東のカリマタ海峡を通過している間、向陽紅03がその応答装置を計2度止めたと述べたことを察知した」と報道した。この事案は、中国製のシー・ウィング(Sea Wing) 無人潜水機が12月下旬にインドネシア海域で発見された後に起こった。最近のこの海域で発見されたシー・ウィング・グライダー無人潜水機は少なくとも4器あった。
(3) 同水中無人機は海流、音響及び海洋環境に関するデータを収集するために一般的に使用されている。これらは可変浮力推進(variable-buoyancy propulsion)と呼ばれる方法で、潜行浮上を繰り返すことで生じる前進推進力を利用している。グライダーで収集したデータは、合法的な科学研究に利用できる。しかし、それはまた、潜水艦作戦の計画立案のためになるものを含めた海軍の諜報活動にも利用できる。サイドスキャンソナーや遠隔操作型無人潜水機(ROV)のような、その艦船独自のセンサーで収集されたデータも同様に当てはまる。
(4) 今回の発見により、中国がインドネシアの海域で情報収集を行っているのではないかとの見方が出てきている。これは、中国海軍の潜水艦の活動に関連している可能性がある。スンダ海峡はロンボク海峡とマラッカ海峡とともに、南シナ海とインド洋の間にある戦略的なチョークポイントである。向陽紅03は定期的な訪問者でありAISのデータは過去2年間でインド洋へのいくつかの航海を示している。向陽紅03の活動が潜水艦の活動、その他の海軍諜報活動または合法的な科学研究に直接関係しているかどうかは証明が難しいが、この地域における中国の意図について疑問を呈している。
記事参照:Chinese Survey Ship Caught ‘Running Dark’ Give Clues to Underwater Drone Operations

1月18日「米海軍作戦部長は中国に対抗するNavigation Planを持っている―米専門家論説」(19fortyfive.com, January 18, 2021)

 1月18日付の米安全保障関連シンクタンク 19fortyfiveのウェブサイトはU.S. Naval War CollegeのJames Holmesの“The Chief Of Naval Operations Has A Navigation Plan For China.”と題する論説を掲載し、ここでHolmesは米海軍作戦部長(CNO)が発表したNavigation Planの注目すべき点についてSurface Navy AssociationシンポジウムにおけるCNOの発言を交えて要旨以下のように述べている。
(1) 米海軍作戦部長(以下、CNOと言う)のMike Gilday大将は2021年1月11日「航海計画(Navigation Plan:以下、CNO NAVPLANと言う)を発表した。これは、2020年12月に米海軍、海兵隊及び沿岸警備隊が協同で発表したTriservice Maritime Strategyをさらに具体化した文書である。そこには海洋戦略を進めるために海軍が何をすべきかが示されている。そしてCNOは、1月11日から15日にかけて行われたSurface Navy Association のシンポジウムにおいて、もし海軍が頭を失い、コースを外れ、焦点から目を離すと、今世紀には回復できない事態になる。それは、中国海軍の軍事力が急速に増強されたためで、このままでは、米国が今の地位を失うのに10年はかからないと宣言し、緊急に対処すべきことを要求している。そのCNO NAVPLAN の注目点をシンポジウムでのCNOの発言を交えて述べる。
(2) このCNO NAVPLAN はリスクの高い賭けである。海洋における軍の行動は将来へ波及する。海軍はライバルの大国と競争するために改革を加速する必要がある。沿海域戦闘艦、フォード級空母、ズムウォルト級駆逐艦などの軍艦建造プログラムを変更する余裕はないが、現在進行中の新型フリゲート艦プロジェクトから、建造を是正する必要がある。そして、CNOは、この10年間の我々の行動が今世紀の海洋でのバランスを決定することになると述べている。
(3) CNO NAVPLAN は優先順位を明確かつ簡潔に設定している。中国は米国最大の競争相手であり、米海軍は他の課題に取り組む前にグローバルな軍の要求を管理し、中国に対する優位性の向上に投資を集中させる必要がある。優先順序一つを上げることは、他の何かの優先順序を下げることを意味する。現在から将来にわたって、すべての領域において海洋を支配し、戦力投射できる海軍を提供するには、現在の運用上の要求、近代化の必要性、および将来的な戦備の要求のバランスをとる必要がある。現在のノンストップオペレーションは、優先度にかかわらず、海軍戦略を適用する艦隊を更新するために必要な資源を浪費する。逆に将来の能力のために今日の運用テンポを遅くしすぎると将来の戦略的環境を形成する能力を浪費する。それが作戦を米海軍の展開を最も必要としている地域に限定する理由である。
(4)  CNO NAVPLANは米海軍が将来を見据えたとしても、従来の中核機能である制海権と戦力投射に戻ることを再確認している。冷戦をきっかけに、米海軍の指導者たちは、海軍は2度と敵に直面することはないので、海上戦闘の戦備を削減できると判断した。米海軍と海兵隊は友好国海軍が安全な海から遠方の海岸での戦いを掌握できると想定していた。しかし現実は、その戦いを得るためにもう一度戦わなければならなくなった。これをCNOは「海は争いの最中」と宣言した。Triservice Maritime Strategyが指摘しているように、海に生きる者は戦争の勃発時には敵の海軍による支配を否定し、制海権を確保しながらその企みを打ち砕からければならない。そして、重要な海域の制海権を確保した場合のみ、戦力の投射が可能となる。海上戦闘の基本に立ち返るアプローチはまさに復活しつつある。
(5) CNO NAVPLANは、あらゆる海軍戦略の中心となる。「敵対行為が終わった後も、持続的な前方関与を通じて米国の長期的な利益を維持するために前進し続ける」と CNOは、戦闘が終わった後の平和の構築をいかに支援するかを述べている。海洋で大勝利を収めても永遠の平和にはならない。戦略的競争は、遅かれ早かれ、その後再開される。CNO NAVPLAN とTriservice Maritime Strategyで言及された最大の競争相手である中国は、台湾や尖閣諸島に対するその主張を止めないであろう。したがって、海軍は戦争で勝った後、休むことなく平和を保証するために次の戦争の準備をしなければならない。そのために、彼らは戦いという文化を維持し、新しい武器、戦術、及び作戦を絶えず検証する必要がある。海軍の指導者は、彼らが戦う準備をするのと同じくらい熱心に平和への準備をするべきである。 
(5) CNOは、統合した海洋戦力の時代であり、すべての米軍が沿海域戦闘で武力を発揮することになると再確認した。分散型の海上作戦、複合的な環境下での沿海域作戦及び遠征した基地からの作戦などにおいて、米軍は、分散した艦船、航空機及び地上部隊から海上及び陸上に対して大量の火力を発揮する。協同には、米海軍の軍艦や航空機だけでなく、海兵隊の水陸両用部隊、空軍の爆撃機や戦闘機、さらにはミサイルで武装した陸軍部隊も活用される。すべての軍種は、海洋に影響できる兵器と能力を保持し、それらは沿海域戦闘で用いられる。すなわち、国防総省全体に海洋志向を植え付けることが緊急の課題である。
(6) 同盟については、米国が単独で戦争を行うことはほとんどないとしている。世界中に同盟国軍の範囲と強さを拡大するため、主要な同盟国と互換性のある作戦を続けなければならない。その互換性とは、技術的および人間的な境界を越えて協力できる単なる相互運用性を超えた真の多国籍軍を暗示している。より頻繁に、そして密接に関連する軍種が連携するほど、それらはより良く共に戦うことになる。
(7) 海軍の指導者たちは、艦隊をより小さく、より安価な戦闘艦と揚陸艦に分解し、敵対的なミサイルの弾幕に立ち向かい、対抗する能力の強化を望んでいる。しかし、後方支援を削減することはなく、逆に増やす方向にある。十分な兵站と輸送能力がなければ、海洋へ展開する軍は、必要なものを自ら積み込むことになる。それは西太平洋での活動を、敵の行動に直面して、弾力的で強固なものでなく、壊れやすく一時的なものにしてしまう。
(8) CNO NAVPLANは米海軍への願いであり、米国民に今日の敵対者を打ち負かすことができる軍隊を目指すこれからの海軍の基準を示している。
記事参照:The Chief Of Naval Operations Has A Navigation Plan For China.
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1月11日「米海軍作戦部長、航海計画(Navigation Plan)を発表―米海軍」(U.S. Navy, Press Release, 11 January 2021)
 1月11日、米海軍作戦部長Mike Gilday大将は、今後10年間の米海軍の進むべき方向を示すCNO Navigation Planを明らかにした。それは、米海軍という船をどこに向けて、どのように進めるのかというまさに航海計画(Navigation Plan)と名前にふさわしいものである。
本記事は米海軍はGilday作戦部長の発言要旨とCNO Navigation Planの骨子を示した報道向け発表資料を訳出したものである。
(1) 1月11日、オンラインで実施された米海軍のThe Surface Navy Association(抄訳者注:The Surface Navy Associationは、対水上戦における共通の利益を共有する軍、ビジネス界、研究者の間の調整と意思疎通を促進するとともに水上艦部隊の行動を支援するため1985年に設立された協会)で海軍作戦部長Mike Gilday大将は部隊に対する航海計画(Navigation Plan:以下、NAVPLANと言う)を発表した。「米国は海洋国家であり、我々の安全と安定は海洋に依存している。米海軍は米国の遠征チームであり同盟国、パートナー国とともにある。我々は自由を守り、経済的繁栄を維持し、海洋が開かれ、自由に航行できることを保持している。今日、我々は長期にわたる競争に関わっている。中国とロシアは長きにわたって多くの人々に利益をもたらしてきた国際的秩序に挑戦するためそれぞれの軍事力を急速に近代化しつつある。我が国と世界にまたがるその利益を守るためシー・コントロールと戦力投射という海軍の時代を越えた役割を完璧に果たす準備をしなければならない。海兵隊、沿岸警備隊との協同によって我々は全領域にわたる決定的な海軍力を生み出すだろう。無駄にする時間は無い。この10年における我々の行動は世紀の残りの期間における海洋での勢力均衡を形作るだろう」と作戦部長は述べている。
(2) このNAVPLANは最近発表された海軍・海兵隊・沿岸警備隊海洋3軍種共通の海洋戦略に基づいており、海軍が全ての領域において海洋を支配し、戦略を投射する海軍力に成長するかの概要を示している。NAVPLANは、FRAGO(抄訳者注:Fragmentary Orderの略。ここではGilday作戦部長が2019年12月に発出した「海上優勢を維持するための構想に関する個別命令」を指す)の下で策定された発展を作り直し、戦い、勝利するために米国が必要とする海軍力を実現するためにこの10年になさなければならないことを示している。NAVPLANは以下の四つの重要な領域に焦点を当てている。
a. 即応:より即応性の高い部隊の実現
(到達目標)日常的なせめぎ合いにおいて、危機において、紛争において前方に展開し、勝利するために人員を配員し、訓練し、装備する海軍。我々は一貫して時間どおりの完全な保守整備を提供し、我々にとって重要な即応性のための基幹設備を改修し、全領域における海軍の運用を習得し、我々の集団的力を強化するため志を同じくする海軍との訓練を実施するだろう。
b. 能力:より破壊力があり、より連接性の高い部隊の実現
(到達目標)全ての領域で破壊効果と破壊を伴わない効果を同調させて投射できる海軍
我々はこの10年の半ばまでに多くの対C5ISRT能力、射程を延伸し、速度を増大させた武器、対艦巡航ミサイルを撃破可能な指向性エネルギーシステムといった海軍の作戦基盤を配備する。
c. 規模:より大規模でハイブリッドな部隊の実現
(到達目標)我々の部隊の戦略上、作戦上の所要に適合する有事、無人の艦艇・航空機からなるより大規模でハイブリッドの艦隊。我々はコロンビア級(弾道ミサイル搭載原子力潜水艦)計画を予定どおりに実現し、無人システムを艦隊に導入し、海中における優位を拡大し、分散海上作戦に必要な艦艇・航空機を配備する。
(3)「245年間、平穏なときも、交点の時も我々海軍は本土の防衛、海洋の自由の維持、我々の生活様式の擁護のために存在し続けてきた。この10年に行う意思決定と投資は世紀の残りの期間における海洋での勢力均衡を形作る。我々は成功以外のものを受け入れない。私は、諸君が全ての職域で受け入れ、全速力で行うことで我々が行くべき所に我々を到達させてくれること期待している」とGilday作戦部長は述べている
記事参照:CNO Releases Navigation Plan 2021
CNO Navigation Planの全文は以下を参照:
CNO NAVPLAN 2021
https://media.defense.gov/2021/Jan/11/2002562551/-1/-1/1/CNO%20NAVPLAN%202021%20-%20FINAL.PDF

1月19日「ロシアの南極政策とその課題―米ユーラシア専門家論説」(Eurasia Dairy Monitor, The Jamestown Foundation, January 19, 2021)

 1月19日付の米シンクタンクThe Jamestown Fondationが発行するEurasia Daily Monitorのウエブサイトはユーラシア地域の専門家で米大学院The Institute of World Politics教員Paul Gobleの“Moscow’s Problems in Gearing Up for Geopolitical Competition in Antarctic”と題する論説を掲載し、ここで Gobleは近年ロシアが北極圏だけでなく南極にも触手を伸ばしており、多くの難題に直面しながらも今後もそれを試みていくだろうとして要旨以下のように述べている。
(1) 北極海におけるロシアの存在の拡大の試みと、そのための行動能力の増大は多くの国の関心を集め、また懸念を強めてきた。しかしながらロシアがその野心的計画を遂行するにあたって直面している諸問題、たとえば北極海で活動可能な艦隊の建造計画の停滞などについてはあまり注目されていない。そしてまた同様のことが地球の裏側、南極においても起きているのである。
(2) ロシアはこれまで南極における役割の増大を北極圏同様に試みてきた。ロシアは南極の天然資源開発に関心を持っており、自国にとって不利と思われる南極に関連する秩序や規則の修正を目指している。ロシアの評論家や政府関係者によれば、ロシアは南極が200年前にロシア人船員によって探検されていたという事実を反映する立場を確立せねばならないという(抄訳者注:1820年頃のFabian Gottlieb von Bellingshausenによる探検を指すと思われる。ただし彼は南極大陸に上陸したわけではなく、南極海周航中に沿岸から約450キロ離れたピョートル1世島を発見した)。
(3) ロシアは今後南極におけるプレゼンス増大を試みていくだろうが、北極圏においてよりも多くの課題が待ち受けているようである。たとえば、ロシアは2015年に南極観測基地の改修を決定したが、それを行うだけの予算的余裕はなく、大富豪のLeonid Mikhelsonにその業務を委託した。ただし彼が請け負ったのは南極基地のためのモジュール建設であり、その南極への運搬はロシアが行うことになった。しかしロシア政府はそれを実行できていないのである。製造されたモジュールは一旦はロシアの原子力砕氷艦Sevmorputに積み込まれ、南極に向かったのだが、アフリカ沖でスクリューなどが故障したことで帰国を余儀なくされている。そしてCOVID-19のパンデミックも重なり、同艦の修理が大幅に遅れており、ロシア報道機関によれば1年以内に任務を再開することはできないという見通しである。
(4) これはロシアが南極の観測能力を失っていることを意味し、したがって同海域周辺における漁業活動などの停滞をも招くことになるだろう。それゆえロシアは中国との緊密な提携によって、南極からロシアを締め出そうという西側の試みへの抵抗を模索している。もう一つ考えられるロシアの方策は、1991年10月に締結され、1998年に発効した南極の天然資源開発を禁止する南極条約議定書(マドリード議定書)を破棄することである。もし、ロシアが破棄すればマドリード議定書は失効することになる。
(5) また、あるロシアの評論家は、ロシアはインド洋に軍事基地を開設し南極への軍事力投射能力を確立する必要があると言う。別の評論家は、西側はもし成功すれば北極でも適用できる戦術を南極で使用しており、北極はモスクワにとって重要であるが、そこでのインフラ整備には時間がかかり、北極での利益を守る準備ができるまで少なくとも南極における西側の行動を遅らせる必要があると言う。共通の安全保障上の利益として北極と南極が連動していることは、ロシアが北極、南極双方で直面する問題にためにその支持者が言うようには成功しないかもしれないにもかかわらず、明らかにモスクワは南極に力を投入し続けることを意味し、西側諸国の多くはそのことを恐れている。
記事参照:Moscow’s Problems in Gearing Up for Geopolitical Competition in Antarctic

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書
(1) After lifting restrictions on US-Taiwan relations, what comes next?
https://www.brookings.edu/blog/order-from-chaos/2021/01/11/after-lifting-restrictions-on-us-taiwan-relations-what-comes-next/
Brookings, January 11, 2021
Ryan Hass, Senior Fellow at Brookings
 1月11日、米シンクタンクThe Brookings Instituteの上級研究員Ryan Hassは同所ウエブサイトBrookingsに“After lifting restrictions on US-Taiwan relations, what comes next?”と題する論説を寄稿した。ここでHassは、①Mike Pompeo米国務長官が1月9日、米政府が台湾関係者との接触に関する制限を撤廃すると発表したことは波紋を呼んだ、②このガイドラインの見直しはTrunp政権の終焉期と重なった、③台湾政府関係者の最初の反応は沸き立っていたが蔡英文総統や総統府からの声明はなく、そのバランスのとれた統治スタイルに沿ったものである、④北京は米国に正面から対抗する決意を明確に示す必要があると主張しているが、次期Biden政権への対策を講じる機会があるまでは事態が拡大するような対応は控えるだろう、⑤Biden政権の選択肢には、第1にPompeoの発表を公に撤回する、第2にPompeoの決定を支持する、第3に米国務省に台湾関係者との接触の審査と承認を再開するよう指示する、第4にPompeoの声明を契機に台湾政策の見直しを始め、台湾関係者との接触のための最新のガイドラインを作成する、というものがあるが、3ないし4を行う可能性が高い、⑥Biden政権は北京が台湾に圧力をかければかけるほど台湾への関与と支持を強化すべきである、⑦Biden政権移行チームの声明は、北京を安心させると同時に台湾の人々の幸福のためのアプローチを再確認するものである、といった主張を述べている。

(2) WHY OVERSEAS MILITARY BASES CONTINUE TO MAKE SENSE FOR THE
UNITED STATES
https://warontherocks.com/2021/01/why-overseas-military-bases-continue-to-make-sense-for-the-united-states/
War on the Rocks.com, January 14, 2021
Raphael S. Cohen, a senior political scientist at the nonprofit, nonpartisan RAND Corporation
 1月14日、米シンクタンクRAND Corporationの上席政治学者Raphael S. Cohenは米University of Texasのデジタル出版物War on the Rockに“WHY OVERSEAS MILITARY BASES CONTINUE TO MAKE SENSE FOR THE UNITED STATES ”と題する論説を発表した。ここでCohenはBill Clinton 、George W. Bush、Barack ObamaそしてDonald Trumpといった冷戦後の各大統領は、米軍の戦略見直しや軍事予算の削減などを背景に、欧州を中心とした海外の米軍基地の閉鎖を模索してきたと指摘した上で、こうした模索の根底には海外基地は地政学を前提とした時代遅れの戦略思考と旧式の戦争形態とを前提にした時代錯誤的なものであるという考えがあるが、米国の海外基地は第2次世界大戦後から現在まで続く、特に陸上部隊を海外に駐留させることによる抑止力と安心の提供は、21世紀においても依然として有効な理由付けであると主張している。

(3) FOCUSING THE MILITARY SERVICES’ ARCTIC STRATEGIES
https://warontherocks.com/2021/01/focusing-the-military-services-arctic-strategies/
War on the Rocks.com, January 20, 2021
Dr. Joshua Tallis, a maritime and polar analyst at the Center for Naval Analyses
 1月20日、米シンクタンクThe Center for Naval Analysesの分析官Joshua Tallisは米University of Texasのデジタル出版物War on the Rockに“FOCUSING THE MILITARY SERVICES’ ARCTIC STRATEGIES”と題する論説を発表した。ここでTallisは「米国の陸軍、海軍、空軍は今、なぜ北極戦略を発表するために競合しているのだろうか?」と疑問を呈し、久しぶりにホワイトハウスに戻ってきたBiden政権の安全保障チームの面々は、このような奇妙な状態に直面することになると指摘した上で、これは非常に複雑な問題であるが、通常、軍は戦略の実施に責任を負い、北極戦略を特定し、設定する最初の情報源としての役割は果たさず、その役割は文民の政策立案者と作戦指揮官にあるのに米国3軍は各々が北極戦略に関する文書を発表しているという点が問題の一つに挙げられると主張している。そしてTallisは、この問題を解きほぐすためにはBiden新政権がホワイトハウスと外交戦略を再活性化し、国防総省による調整を強化し、北極防衛に関する議論を短期的かつ重要なポイントに絞り込むことが重要であると述べている。