海洋安全保障情報旬報 2020年11月1日-11月10日

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11月1日「米中は兵器の近代化、拡充を推進:太平洋における海上優勢の争い―香港紙報道」(South China Morning Post, 1 Nov, 2020)

 11月1日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は“US and China push to modernise and expand weapons in race for naval dominance in the Pacific”と題する記事を掲載し、米国は中ロに遅れを取っている極超音速ミサイルの分野で両国に追い付くため、駆逐艦に極超音速ミサイルを搭載する計画を立ち上げているが、そのミサイルに関しては実験用すら存在せず、搭載する駆逐艦の改造予定や効果的に運用するための情報、監視、偵察システム、さらには予算など越えなければならないハードルは数多くあるとして要旨以下のように報じている。
(1) ワシントンが中国の超音速対艦ミサイルの配備を上回るペースで駆逐艦に極超音速ミサイルを搭載する計画をしたことで、より実力のある海軍を建造しようとする米中の競争はさらに加熱すると思われる
(2) 10月初めにMark Esper国防長官が次の10年間に中国に対して海洋における優勢を確実にするためには500隻以上の艦艇が必要であると述べた後に、この極めて先進的な兵器の搭載への動きに関する米安全保障担当特別補佐官Robert O’Brienの発言を掲載した米軍事関係ウエブサイトDefense Newsによれば、太平洋における中国の脅威の高まりを抑えるために米国は攻撃型潜水艦と駆逐艦に極超音速ミサイルを搭載することになるという。60隻以上の駆逐艦がマッハ5以上で飛翔する武器を後日装備することになる。「海軍の『通常兵器による迅速な打撃』計画は極超音速ミサイルにより遠距離から目標を捕捉する能力を与えることになろう」とO’Brien補佐官は言う。
(3) その間、中国はその海軍を近代化しており、様々な艦艇、航空機と対艦弾道ミサイルや巡航ミサイルなどの兵器を調達しつつある。10月に発表された議会調査局の報告書は、中国海軍は既に「中国近海では手強い海軍」になっており、「冷戦終結後、米海軍が直面する初めての問題」であると述べている。
(4) 米シンクタンクRand Corporationの安全保障問題専門家Timothy Heathは、米艦艇への極超音速ミサイルの装備は米艦艇の残存性と敵艦船及び地上目標への致命的な攻撃力を著しく向上させると述べている。最大の利点は、現在であれば地上配備型の対艦弾道ミサイルあるいは巡航ミサイルによって撃沈されるかもしれない米海軍艦艇が中国沿岸近くを行動する中国艦船を紛争時には目標とすることができることであるとHeathは述べている。
(5) 香港を拠点とする軍事問題専門家宋忠平は、米海軍が駆逐艦に極超音速兵器を搭載すれば、中国海軍は大きな脅威に直面し、中国は既にType 730近接支援火器システムと超音速のYJ-18巡航ミサイルの派生型を各種艦艇に装備しているが、向かってくる目標を阻止する艦対空ミサイルの改良というさらなる対応を間違いなく強いられるだろうと述べている。中国はまた、極超音速滑空体を搭載したDF-17弾頭ミサイルを保有し、世界で初めて初期運用可能状態となったが、艦艇からの発射は不可能である。
(6) Jane’s Fighting Shipsの米国編集者Michael Fabeyは、極超音速ミサイルを駆逐艦に搭載する計画は時期尚早であり、運用可能となるまでに多くのことをしなければならないと指摘し「艦艇に搭載する海軍用極超音速ミサイルはないし、実験用すらない。海軍は駆逐艦に搭載するのにどのような改良が必要かも、価格の設定も、その作業の実現可能性評価も実施していない。もし、海軍がこの計画を実行したいのであれば、ミサイル、実験、艦艇の改良などの経費はどこから来るのか」と指摘している。豪シンクタンクThe Australian Strategic Policy Instituteで国防戦略、国防能力の分析を行っている上席分析官Malcolm Davisは、米国の計画は極超音速兵器で遅れを取っていると認識していることを示しており、中ロに追い付こうともがいているようであるとし、もし追い付ければ中ロの有意に対抗できるかもしれないが、計画を完全に効果的に運用するためには先進的な、おそらくは宇宙規模の情報、監視、偵察能力が必要であり、中ロはその計画を加速するだろうと述べている。
記事参照:US and China push to modernise and expand weapons in race for naval dominance in the Pacific

11月2日「米国はパラオ共和国の提案を受け入れるべきだ―米専門家論説」(Asia Times, November 2, 2020)

 11月2日付の香港のデジタル紙Asia Times は退役米海兵隊将校で現在Japan Forum for Strategic Studies 等の上席研究員Grant Newshamの“Palau makes US a military offer it shouldn’t refuse”と題する論説を掲載し、ここでNewshamはパラオ共和国が米国との安全保障関係の強化を模索していることについて、米国は積極的に受け入れていくべきだとして要旨以下のように述べている。
(1) 最近の米国は太平洋に浮かぶパラオ共和国への接近を深めており、それはまたパラオにとっても望むところのようである。2020年8月にMark Esper国防長官(当時)が、そして10月にKenneth Braithwaite海軍長官がパラオを訪問したとき、パラオのTommy Remengesau大統領は両長官に書簡を手交した。そこで大統領は、米国軍がパラオに両国共同利用施設を建設し、それを米国軍が定期的に利用することを求めたのである。
(2) パラオは人口2万人ほどの小さな国であるが、その地理的位置を考慮したときそれが持つ戦略的価値はかなりのものだ。フィリピンから約950マイル東に位置し、現在あまり使われていない港湾や飛行場も有する。
(3) パラオは米国との間で自由連合盟約(Compact)を締結している。それは米国からパラオへの財政・経済的援助等と引き換えに米国がパラオの安全保障に責任を負い、軍事的アクセス権を確保するという内容である。米国は同様の条約をミクロネシア連邦とマーシャル諸島共和国とも締結している。しかし、Remengesauが正しく指摘しているように、米国は、パラオに軍事施設を建設できるというその権利を十分に行使してこなかった。
(4) Remengesau大統領の提案に対する米国側の反応は好意的であったが、米国は必ずしも新たな恒久的基地を必要としていないという直近の国防総省のコメントは、パラオに若干の懸念を引き起こしている。このコメントは冷戦終結以降の「基地ではなく場所(Places not Bases)」戦略を想起させるものだが、それは妥当な戦略ではない。小規模であれ恒久的な基地がなければ、それは実際にはプレゼンスの欠如を意味する。
(5) 大規模な基地は必要ない。実際パラオには100人程度の米国人が駐留するだけで十分だろう。軍人だけでなく沿岸警備隊やFBIの活動も想定できるし、またそのパラオの基地を日本の自衛隊や海上保安庁が利用してもよい。台湾軍による使用もありうる。
(6) パラオによるこうしたオファーは中国による圧力というリスクを伴う。2015年以降の中国政府の政策によりパラオを訪れる観光客の半数程度が中国人になったし、かなりの程度の中国マネーが投下された。しかし2017年、中国は台湾承認に関してパラオに圧力をかけ、パラオへの観光を禁止し、経済的打撃を与えた。日本や台湾からの観光客誘致によってある程度補えたが、COVID-19の流行は再びパラオ経済を危険にさらした。中国マネーの国内の浸透もまた社会の分断というリスクをはらんでいる。
(7) 米中対立を背景にTrump政権はこれまででは例外的なほど太平洋島嶼部に関心を払ってきた。数ヶ月前にはMike Pompeo国務長官がミクロネシアを訪問し、Compct締約国の指導者たちと会合を開いた。史上初のことである。これまでの政権は、行おうと思えばそうできたであろうが、行ってこなかった。1945年以降の中央太平洋に対する米国の姿勢は「穏やかな無視」と表現されるものだった。
(8) Remengesau大統領のオファーは、彼の言うとおり米軍に良い機会を提供する。最近米海兵隊などは、インド太平洋戦略の一環として「分散海上作戦」を構想している。しかし現状、「玄関マット」を広げて米国を歓迎しようとする国がない。10年前、東南アジア諸国によるパラオ同様の提案が実現しなかったとき、その優先順位は当時の米軍にとっては高くなかった。しかし現状は異なる。今米国がやるべきはRemengesau大統領の提案を有効活用し、中国が推し進めようとするものに対する代案を提示すべきである。そうすれば他の国々からの同様の招待を受けることになるであろう。
記事参照:Palau makes US a military offer it shouldn’t refuse

11月3日「インド太平洋の安全保障問題に関与するドイツ―The Diplomat編集者論説」(The Diplomat, November 03, 2020)

 11月3日付のデジタル誌The Diplomatは同誌安全保障・国防問題担当編集者Abhijnan Rejの“Germany to Deploy a Frigate to Patrol the Indo-Pacific”と題する論説を掲載し、ここでRejはドイツによるインド太平洋へのフリゲートの派遣などの同地域への最近のアプローチについて要旨以下のように述べている。
(1)ドイツのAnnegret Kramp-Karrenbauer国防相は11月2日、The Sydney Morning Herald紙とのインタビューにおいて2021年からインド太平洋の哨戒にフリゲートを派遣することを表明した。ドイツは2国間レベルでも多国間レベルでも広大な海洋地域における安全保障上の課題の増大に直面している地域大国と協力体制を強化していく意向であるということに言及した。国防相の発言は、ドイツがEU加盟国としては2番目にインド太平洋に関するガイドラインを発表した2 カ月後のことである。フランス外務省は、2018年初めにEmmanuel Macron大統領がオーストラリアで行った重要な政策演説を受けて、2019年にインド太平洋に関する安全保障戦略を発表した。ドイツのガイドラインはEUの役割に明確に焦点を当て、政府全体の取り組みを反映している。独政府はインド太平洋に関するガイドラインが「将来のEU戦略の基礎として使用できる」ことを望んでいるとKarrenbauer国防相はThe Sydney Morning Herald紙に語っており、ここではドイツが地域のアクターたちとの防衛関係を構築するために「NATO内で取り組んでいる」と述べられている。
(2) Karrenbauer国防相のコメントは、ヨーロッパでは、安全保障上の懸念だけでなく、中国の技術や地経学的(geoeconomic)な推進力によって突き動かされた欧州のインド太平洋に対する関心が高まっている最中のものである。従来の米国のハブアンドスポーク(hub and spoke)型の同盟モデルを超えた、この地域の新たな安全保障構造を考えると、ヨーロッパの大国はネットワーク的な手法でこの地域に取り組んでいる。例えば、フランスは、インドやオーストラリアのようなアクターたちとの2国間関係を強化しただけでなく、現在この3国は3国間対話にも参加している。
(3) 一方、ドイツのインド太平洋ガイドラインでは、太平洋諸島フォーラム、ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブ(BIMSTEC)、環インド洋地域協力連合のような組織への関与を模索しているが、10カ国で構成されるASEANとASEANの提携国としてのEUの役割を中心に据えている。興味深いことに、独政府はこの地域のルールに基づく秩序を守る手段として、国連安全保障理事会の改革も求めている。ドイツは、ブラジル、インド、日本及び南アフリカとともに、国連安保理の常任理事国入りを強く主張している。
(4) ヨーロッパにおける中国の最大の貿易相手国であるにもかかわらず、ベルリンのAngela Merkel首相率いる連立政権は最近、中国に対して厳しい路線を採っている。最近の国連総会第3委員会では、ドイツは38カ国の支持を得て、中国による新疆でのウイグル民族の扱いや、2020年夏の北京による香港への国家安全維持法の押し付けを強く非難した。アナリストたちはまた、地域の安全保障に関する懸念を超えて、中国の5G機器(とその国家安全保障への意味合い)、北京のインフラ融資業務(搾取的と広く表現されている)、現在進行中のCOVID-19パンデミックもまた、EU内での中国への懐疑心の高まりを助長していると指摘している。
(5) しかし同時に、ヨーロッパの中堅国はインド太平洋に対する一方的な取り組みを慎重に避けることで、この地域の安全保障上の困難な課題に対処するための彼らの能力に限界があることを行動で示し、中国の海洋膨張主義を抑制するための困難な課題については、その責任を他者に押し付けることを選択してきたのである。純粋な「航行の自由」作戦は、中国が造成したり権利を主張したりしている地勢の 12 カイリ以内を航行することであるが、これは過去に米海軍だけが試みた任務であり、あまり多くはない。これに加えて明白なことは、ドイツのフリゲートが単独でこの地域で活動しても、強力な軍事的シグナルを発信できないだろう。
(6) しかしおそらく、これは全て的外れである。ドイツのようなヨーロッパの大国はアジアの多くの人々から中国に長年甘いと思われてきたが、北京への懸念を強め、同時にインド太平洋を関心がある一体化した舞台であるという考え方を採用するようになったことは、それ自体が大きな変化である。
(7) 9月の報道によると、ドイツは中国企業の華為(ファーウェイ)がヨーロッパ最大のドイツの電気通信市場を支配することを非常に困難にする法律の可決を検討している。
記事参照:Germany to Deploy a Frigate to Patrol the Indo-Pacific

11月3日「デジタルオーシャン立ち上げのためのグローバル・アクセラレータ・ネットワーク-米専門家論説」(Center for International Maritime Security, NOVEMBER 3, 2020)

 11月3日付の米シンクタンクCenter for International Maritime Securityのウエブサイトは海洋ドローンのベンチャー企業Open Ocean Robotics社CEOのJulie Angus、同社の共同出資者でNATOの Maritime Unmanned Systems Innovation & Coordination(MUSI)プロェクト責任者Michael D. Brasseurの“Creating a Global Accelerator Network to Launch the Digital Ocean”と題する論説を掲載し、ここで両名は海洋関連技術のIot化などにより構築される「デジタルオーシャン」の実現には、その原動力となるブルーテック企業を支援するアクセラレーターのグローバルネットワーク化が必要であり、NATOのMUSIはそのモデルとなり得る取り組みであるとして要旨以下のように述べている。
(1) 海洋は30億人以上の生活を支え、地球上の3分の1に主要なタンパク質源を提供し、国際貿易の90%以上の輸送回廊となっている。世界のブルーエコノミーは、2030年までに3兆ドル規模に成長すると予想されており、この爆発的成長は海洋の可能性を最大限に引き出す新たなテクノロジーを生み出すブルーテック(抄訳者注:海洋関連技術を指す用語)の新興企業によって促進されている。海洋の重要で未開発の分野の可能性を認識し、持続可能な開発のための「国連海洋科学の10年」が来年から開始される。
(2) デジタルオーシャン(抄訳者注:後述する海洋のIot化を含め、ネットワーク化された海洋関連技術を指すと思われる)の進展は、地球上で最も人間が行きづらい場所へのアクセスを提供し、ブルーエコノミーと海洋環境の保護を大きく前進させるだろう。この海洋におけるIot(モノのインターネット)は、数百万平方マイルに亘って海底から海面までのネットワークを形成する。人工知能、通信、ロボット工学の進歩を活用して海中、海上、海面上空に展開するドローンのシステムは太陽光、風力、波力を動力源として海洋環境の継続的なパトロールが可能である。これらのシステムがリアルタイムに送信する高度なセンサーによる画像、音響などのデータは、油流出などのリスクに対する早期警戒や違法漁業への対応を促進する、不法行動を行う船舶や潜水艦などの検出も可能である。これらのブレークスルー達成にはブルーテック企業の参入が不可欠であるが、資金調達、人材獲得、市場への適合といった課題のため、関心を有する企業も初期段階では非常に脆弱である。しかし、グローバルに革新的なシステムを統合することでブレークスルーを共有し、海洋における共有リソースを保護、活用できる可能性がある。
(3) アクセラレーター(抄訳者注:ビジネス用語として使用する場合には起業あるいは新規事業への参入に際し、以下のような手法によって当該企業を支援する枠組みを指す)は、ビジネスガイダンス、資本へのアクセス、コミュニティへのコンタクト、リソースの共有及び初期段階のテクノロジー企業を成長させるためのメンターネットワークのサポートを提供することによって新興企業を育成し、より確実な経営の段階へと導くことができる。アクセラレーターの数は2008年から2014年の間に米国で10倍に増加し、現在、世界中に7,000を超えるアクセラレーターとインキュベーター(抄訳者注:ビジネス用語としてアクセラレーターと同義に解される場合もあるが、こちらは主としてオフィスなどのインフラを提供する役割を担うものとされている)が存在する。
(4) アクセラレーターによる技術的イノベーションの解放や資本創出は効果的ではあるが、ブルーテックセクターを統合し、これらの企業をデジタルオーシャンの形成に集中させるにはグローバルなアクセラレーターのネットワークを構築するのがより望ましいであろう。そのためには国家を一つにまとめ、共通の目標に集中できる原動力が必要であるが、30の同盟国と年間1兆ドルを超える防衛予算を擁するNATOは、この新たなグローバルアクセラレーターのネットワークをデジタルオーシャン構築という共通の目標に向けて導くのに適した立場にある。海洋はNATOにとって重要である。24の加盟国が海洋国家であり他の加盟国も海洋に依存している。これらの諸国は国民の安全、経済的繁栄、食糧供給の確保など海洋の保護という共通の必要性を持っている。
(5) 実際、NATOの海洋水中無人機システム構想(以下、MUSIと言う)は、14のNATO連合国を結集し、システムの開発と連合国海軍への導入を加速するものでありデジタルオーシャンの構築をリードする可能性がある。我々の海がどれほど広大であり、艦船、潜水艦、航空機がどれほど高価になったかを考慮すれば、デジタルオーシャン実現のドローンが重要になることは明らかであろう。海洋ドローンは多くがブルーテックの新興企業によって製作され、風力、太陽光、波力エネルギーを動力源としておりネットワーク構築も運用も比較的安価である。これらのドローンはデジタルネットワークを介して統合されることにより、種々の海洋問題に対する理解、関心を深めるのみならず、潜在的な敵潜水艦の行動の把握や違法漁業に対する強力な抑止力提供など、海洋領域の全般の安全性を高めることも可能である。
(6) NATO主導のMUSIチームは、この共有目標と取得、把握しているリソースを使用して、加盟国にアクセラレーターのネットワークを構築して共通の目標に向かって取り組むようリードできる。各国のアクセラレーターは国の学術的リソース、ビジネスエリート、テクノロジーにおける先行企業、ベンチャーキャピタルを活用し、デジタルオーシャンの構築を推進する。この研究、ビジネス、ベンチャーの融合により各国がイノベーションを推進し、海洋の可能性を最大限に活用する新たなビジネスを生み出すために必要なシステムが創成される。各アクセラレーターはNATOアクセラレーターのネットワークにリンクすることで国境を越えてこれを活用し、新たなテクノロジー開発のため必要な従来とは異なるリソースのプールを作成できる。
(7) 70年の経験と比類のないリソースを備えたNATOのサポートとガイダンスにより、各国アクセラレーター間でペースの速いイノベーションシステムを統合することは、解決困難とされる海洋問題に取り組むこれまでの常識を覆すような技術を解き放つ原動力となるだろう。 NATOの共通のビジョンの下にあるグローバル・アクセラレータ・ネットワークは、その比較優位性、創造性、資本を活かし、新たなテクノロジーを創造し、それらを実現する競争に勝ち残るだろう。それは海洋における国境を越えた課題に焦点を当て、安全保障と経済的ニーズの双方を満たし、ブルーエコノミーをより発展させ海洋経済を成長させ、持続可能な開発を促進するだろう。
記事参照:Creating a Global Accelerator Network to Launch the Digital Ocean

11月3日「フィリピンによる南シナ海エネルギー開発再開の意味―比国際関係学部教授論説」(Asia Maritime Transparency Initiative, CSIS, November 3, 2020)

 11月3日付のCSISのウエブサイトAsia Maritime Transparency Initiativeは比De La Salle Universityの国際関係学部教授Renato Cruz De Castroの“A Philippine-China Deal on Joint Development in the Making?”と題する論説を掲載し、ここでCastroはフィリピンが南シナ海におけるエネルギー開発の再開を決めたことに関し、その背景とそれが持つ影響について要旨以下のように述べている。
(1) 10月15日、フィリピンのDuterte大統領は南シナ海に位置するリード堆における石油・ガス開発について6年間続けられたモラトリアムを停止することを発表した。これは南シナ海におけるフィリピン及び中国とフィリピン共同のエネルギー開発に道を開くものであり、南シナ海における秩序にも影響を及ぼしうる方針だ。
(2) このモラトリアムはフィリピンのエネルギー企業によるエネルギー開発活動を妨害する中国の行動に対応する形で、前任のBenigno Aquino大統領時代に定められたものである。周知のとおり、Duterte大統領は前任の対中強硬姿勢、とりわけ南シナ海おけるそれを転換したのであり、2018年には南シナ海の係争海域における共同のエネルギー開発および利用の可能性について交渉を行った。
(3) エネルギー省長官Alfonso Cusiによれば、あくまで今回の決定はフィリピン単独の決定である。中国がもしこれに抗議するのであれば「フィリピンはその権利を守るために立ち上がる」という彼の発言は、リード堆におけるフィリピンの主権を主張するものだという印象を与えるものであった。ただし、この決定は上述した中比2国間の交渉の延長線上に位置づけられるべきものかもしれない。
(4) この決定に対して中国は、中比両国による係争海域における共同のエネルギー開発を期待するとして好意的な反応を見せた。実際、フィリピンのPXP Energy Corporationの子会社Forumと中国海洋石油総公司(以下、CNOOCと言う)は、なお合意には至っていないもののこの問題について交渉中だという。中比2国共同のエネルギー開発にCNOOCが関わることは、2018年に中比間で取り交わされた覚書において約束されたことであり、モラトリアムの停止もまたこの覚書で定められていたことであった。なお、この覚書によれば共同開発における純利益の4割をCNOOCが得ることになっている。
(5) ただしCNOOCは、比政府がライセンスを与えたフィリピン企業との提携において関わることができるとも定められている。これが意味するのは、フィリピンが南シナ海における排他的経済水域において主権を有するということ、CNOOCの事業への関わりがフィリピンの法律によって統制されることになるということである。これは、南シナ海の主権をめぐる論争において中国がこれまで認めてこなかったことであり、したがって中国の重大な政策転換となる。もし、中国が同様の協定をマレーシアやベトナム、ブルネイとも締結できれば、南シナ海をめぐる論争は解決に向けて大きく前進するであろう。なお、中国の方針転換の背景には、定期的な自由の航行作戦の実施や最近の国務長官声明など米国による圧力があるとの見方もできる。
(6) 中国はフィリピンの排他的経済水域圏内の主権を認めることで、世界に対し、南シナ海論争を外部からの干渉なしに解決できることを示そうとするだろう。中国は自国を「域内国家(intra-regional country)」と位置づけ、対して米国や日本を外部から口を出す厄介な「域外妨害国家(extra-regional interfering country)」と位置づけることで、その地域における自国の立場の正当性を訴える方針に切り替えるのかもしれない。この方針に基づき、中国は2022年までの南シナ海における行動規範(COC)の調印を目指すことになるであろう。
記事参照:A Philippine-China Deal on Joint Development in the Making?

11月3日「マラバール演習にオーストラリアが参加―印ニュース誌報道」(India Today, November 3, 2020)

 11月3日付の印英語ニュース誌India Todayのウエブサイトは、“Malabar exercise in Bay of Bengal: Why Quad naval drill makes China nervous”と題する記事を掲載し、日米豪印の4カ国安全保障対話参加国で行われたマラバール演習とその背景について要旨以下のように述べている。
(1) 4カ国安全保障対話(以下、QUADと言う)参加国、日米豪印の海軍は現在、ベンガル湾で毎年恒例の共同演習であるマラバール演習を行っている。このQUADの復活は、インド太平洋地域での中国の拡大主義を抑制するための多国間の取り組みとしてのグループ化と見なされているため、中国を少し神経質にさせている。
(2) 日米豪印4カ国の連合は、ベンガル湾で11月3日に開始されたマラバール演習のフェーズ1でついに結実した。マラバール演習は、インド太平洋地域における陸海両面での中国の拡大主義に対する懸念の高まりを背景に行われる。これはインド、米国、日本及びオーストラリアで構成されているQUADによる連合を活性化させようとする新たな試みの後に行われた最初のマラバール演習である。4カ国は10月6日に日本で外相級会議を開催、その後、10月26から27日にかけてニューデリーで印米2+2(外相・国防相)対話を開催した。
(3) 13 年ぶりにオーストラリアがマラバール海軍演習に参加するという事実はインド、米国、日本及びオーストラリアの間で、特に中国の拡大主義を抑えることを目的とした、戦略的利益に関する問題で、コンセンサスが高まっていることを如実に反映している。インドにとって、中国が国境でインドを脅そうとしている時にマラバール演習は地政戦略的に重要な意味をもつようになった。インドと中国は、ラダック東部の実効支配線に沿って軍事的な膠着状態にある。インドと中国の関係は最悪の状態にある。しかし、インドにとって都合が良かったのは中国が米国、日本、さらにはオーストラリアとの関係をひどく緊張させており、中国の脅威に対抗するための軍事的な見直し計画の発表を余儀なくされたことだ。マラバール演習へのオーストラリアの参加は、大きな転換点となった。インドは過去数年間、オーストラリアを引き込むことに消極的だった。オーストラリアが中国を優先することを明確に示す一方で、インドも中国との関係強化を望んでいたため、積極的なQUADの推進を望まなかったのである。10月、ついにインドは2007年以来初となるマラバール演習へのオーストラリアの参加を発表した。
(4) COVID-19 のパンデミックの間に実施されている2020年のマラバール演習は、インド、米国、日本及びオーストラリアの海軍間の高いレベルでの相乗効果及び協調を示すための「海上だけで行われる、非接触の」訓練である。マラバール演習のフェーズ1では、水上打撃戦、対潜戦、対空戦を含む複雑で高度な海軍の演習に加え、搭載航空機を他国艦艇に離発着艦させるクロスデッキ訓練、戦術運動訓練及び実弾射撃訓練が行われると印海軍は述べている。
(5) 中国は経済成長に伴い、世界的な拡大主義者へと変化している。中国は、あらゆる地域的又は世界的な戦略的グループ化を、その拡大計画に対する挑戦と見なしている。中国は、マラバール演習を常に疑念をもって見てきた。中国は、主に東シナ海と南シナ海を中心に、インド太平洋地域で日本や米国と直接対立するようになり、力を誇示してきた。このことが、日米両国を、習近平政権下で勢いを増した中国の拡大計画を封じ込めるためにインド太平洋地域の海洋安全保障インフラを構築する方法を模索するように促した。このため、QUADは習近平の中国に対する大きな障害となっている。中国の自己主張の高まりは、東京での外相会議の後、インドがマラバール演習に参加するための招待状をオーストラリアに送るという最終的な承諾に重要な役割を果たした。オーストラリアのLinda Reynolds国防相は、マラバール演習は共通の安全保障上の利益のために協力するというインド太平洋の4大民主主義国家の共有する意志を示すものであると述べている。
(6) 6 月に、中国とオーストラリアの関係が中国での COVID-19 への「対処の誤り」をめぐって悪化したため、インドとオーストラリアは彼らの関係を「包括的な戦略的パートナーシップ」のレベルに格上げした。Narendra Modi首相とオーストラリアのScott Morrison首相はオンライン首脳会談を開催し、相互後方支援協定(MLSA)に署名し、両国の軍隊が、修理、補給及び防衛協力の規模を拡大するために基地を使用することが可能になった。
記事参照:Malabar exercise in Bay of Bengal: Why Quad naval drill makes China nervous

11月3日「台湾問題に豪州はどう対応すべきか―豪戦略研究専門家および中国問題専門家論説」(The Interpreter, November 3, 2020)

 11月3日付の豪シンクタンクLowy InstituteのウエブサイトThe Interpreterは豪Deakin Universityの戦略研究学講師Jade GuanとAustralian National UniversityのAustralian Centre on China in the World客員研究員Wen-Ti Sungの “Taiwan: Rising stakes for Australia”と題する論説を掲載し、ここで両名は米中対立の焦点の一つである台湾問題において、紛争を未然に防ぐためにオーストラリアが周辺諸国との間に多国間協調主義を推進することを目指すべきとして要旨以下のように述べている。
(1) 台湾海峡は現在、激化しつつある米中対立における最重要地点の一つである。中国は台湾を主権と領土的保全の「核心的利益」と位置づけ、他方、米国は台湾との緊密な経済的、政治的、安全保障関係の維持を模索している。最近では米国が従来とりつづけてきた台湾に対する「戦略的あいまいさ」が論争の的となっているが、この文脈においてオーストラリアはどのように行動すべきだろうか。
(2) 2020年は米中台関係が大きく変容しつつある年であった。米国は台湾との関係深化を象徴するものとして、台湾との高官の往来について従来の制限を取り払い、台湾に国務次官レベルの官僚が訪問できるようにした。それに対し中国は、不承認を示すかのように、台湾上陸を想定した軍事演習を実施したり、台湾海峡の「中間線」を越えて台湾側に戦闘機を侵入させたりした。こうした緊張の高まりのなかで、誤算などから紛争が生起する可能性が高まっている。
(3) 争点の一つは、米国が従来とりつづけてきた台湾に対する「戦略的あいまいさ」を終わらせるべきかどうかである。これは、台湾の安全保障に対する米国のコミットメントをはっきりさせないことによって、台湾が中国に対し独立に向けた強硬路線をとることと、中国が台湾に全面的侵攻を実施することの双方を抑止するために構想されたものだ。しかし中国のパワーが増大し、米中の非対称性が小さくなる中、この方針で中台、特に中国を抑止しうるかということが問題となっている。米国のあいまいなコミットメントはむしろ不安材料となっている。近年、米国は明確に親台湾姿勢をとるようになっており、今後「戦略的あいまいさ」は放棄されることになるかもしれない。
(4) こうした文脈において、オーストラリアがどう行動すべきかという問題がある。もし、台湾をめぐって米中紛争が生起すれば、ANZUS条約に基づき米国はオーストラリアに協力を要請するだろう。他方、オーストラリアは紛争の生起に先立ち、それを可能な限り抑止するために米国に影響力を行使することもできる立場にいる。
(5) 最近の動向としては、オーストラリアは中国に対する警戒心をはっきりと強めている。実際に2020年に刷新された防衛戦略では、その防衛能力の強化の重要性が強調されている。しかし、オーストラリアが地域の安全保障のために果たしうる役割は別にもあろう。すなわちそれはインド太平洋における危機に集合的に対応するための多国間協調主義を強化することである。そのためにはまず、ASEAN地域フォーラムや東アジア・サミットなどの既存の多国間プラットフォームを利用し、地域の提携国との連携強化を目指すことがオーストラリアにとって必要な方策である。加えて、より小規模な「少数国間枠組」の協議グループを結成し、地域の安全保障をめぐる課題に細かく対応することも重要であろう。
(6) オーストラリアは、中国に対する強硬姿勢をただ強めるのではなく、台湾問題を外部の行為者が国際化しているという中国の批判を和らげるようなやり方で、多国間外交を慎重に進めるべきである。その地理的位置及び地域の影響力ゆえに、オーストラリアはそうした外交において中心的役割を演じるのにふさわしい存在なのである。
記事参照:Taiwan: Rising stakes for Australia

11月4日「ミャンマーのココ諸島に関する戦略的展望―ミャンマー専門家論説」(Vivekananda International Foundation、November 4, 2020)

 11月4日付の印シンクタンクThe Vivekananda International Foundationのウエブサイトは、ミャンマーのThay Ninga Institute of Strategic StudiesのNaing Swe Oo博士の“Tatmadaw’s Strategic Perspective on the Coco Islands of Myanmar”と題する論説を掲載し、ここでNaing Swe Ooはココ諸島に制海権を構築することで、海上での秩序を維持し、伝統的および非伝統的な海上脅威により適切に対応できることになるとして要旨以下のように述べている。
(1) 近年、インド太平洋海域における大国間の戦略的競争の激化とその戦力展開により、インド洋のアンダマンニコバル諸島の重要性が高まっている。重要な地理的位置にあるココ諸島とプレパリス島は、ミャンマーの海洋安全保障にとって重要な構成要素になっている。過去10年間、特に現在のミャンマー軍司令官の任期中、これらの島々の開発が促進され、その地政学的重要性を増加させる措置が取られてきた。ミャンマー軍司令官がココ島を重要視した理由と、その将来に対する彼の戦略的ビジョンについて述べる。
(2) ココ島はヤンゴン市の南270マイルでベンガル湾とアンダマン海を分断する位置にあり、ミャンマーの領海を担当する司令部が置かれている。そしてインドのアンダマンニコバル諸島からわずか30マイルの距離にあり、戦略的に重要なシーレーン、インド洋の北東部、マラッカ海峡を掌握することができる。
(3) インドのアンダマンニコバル諸島は、過去数世紀の間、海軍基地とされていたが、接近阻止(anti-access)機能を備えた印軍の統合防衛司令部へと進化した。インドは対抗勢力を阻止するために海上防衛のための戦略的前哨基地として、アンダマンニコバル諸島の機能を強化した。日米豪印の4カ国安全保障対話参加諸国とインドとの兵站支援協定の下で、アンダマンニコバル諸島は、印海軍およびその同盟国がインド洋の奥深くに展開するための戦略的拠点となる。したがってインドの戦略的群島からわずか30マイルしか離れていないココ諸島は地理的、軍事戦略的に重要となる。
(4) ココ島は商業航路の重要なポイントでありモーティンポイント(ケープネグレイス)のハインギ島からインドのアンダマン諸島までの直線上にあって三つの水道を形成している。マラッカ海峡から来る商業船の多くがこの三つの重要な水道を通過している。18世紀にイギリスの支配下に置かれ、アンダマン諸島のイギリスが管理する刑務所の食料とココナッツの供給源になった。第2次世界大戦では日本軍が西側を守るための海軍基地として使用した。ミャンマー独立後、暫定政府の時代には流刑地として使用され、20世紀後半に海軍のレーダー基地が設置された。
(5) 就任後すぐにミャンマー司令官はココ島を訪れ、その際に早期警戒のために島を前方防衛の前哨基地に変え、装備を増強して地元の人々の生活に繁栄をもたらすという長期的展望が明らかになった。最近のココ島の動向は、2014年末以降、ミャンマーの海軍艦船と空軍の輸送機がヤンゴン-ココ島-ヤンゴンのルートを行き来している。2017年には大きな桟橋が建設されて海軍のフリゲートが停泊した。大きな桟橋は、将来、海軍艦艇以外の民間船の係留に供すると考えられる。
(6) ココ島の地理的特徴を反映し、現在の地政学的環境によって推進される海上安全保障の要件を満たすために、重要な兵器システムが島に設置された可能性がある。ココ島は海軍基地しかないことから、ミャンマー海域を戦略的に支配できるバランスの取れた編成で陸軍、海軍、空軍、防空軍からなる統合軍として進化することが期待される。ココ島の海域で毎年艦隊演習が実施されていることも評価できる。
(7) ミャンマー軍司令官自身がミサイルの実弾訓練やその他の海軍の艦隊演習を監督したという報告もあり、これはミャンマー海軍が将来、より高いレベルの海軍を保有したいという願望を反映している。ミャンマー軍司令官の動きはミャンマー海域での積極的防衛戦略の強化を目指しており、それはココ島を戦略的な海上要塞に変えるための措置を取っていることを意味する。
(8) 最後に要約すると、ミャンマー軍司令官は海を基盤とする発展途上の島としてのココ島の構想を実現すると同時に、安全保障の観点からその地政学的利点を拡大することに焦点を当てている。ココ島周辺の海域の支配がチョークポイントとして機能し、国際海上貿易とエネルギー・ルートにセキュリティを提供できる可能性がある。ベンガル湾とアンダマン海を交差して支配することで120マイルに及ぶシー・ディナイアルの複合体をものにできる。さらにココ島に制海権を構築することで、海上での秩序を維持し、伝統的および非伝統的な海上脅威により適切に対応できることになる。
記事参照:Tatmadaw’s Strategic Perspective on the Coco Islands of Myanmar

11月7日「英国はインド太平洋で持続的な海軍力プレゼンスを維持できるか―シンガポール専門家論説」(The Diplomat, November 7, 2020)

 11月7日付のデジタル誌The DiplomatはシンガポールThe ISEAS-Yusof Ishak Institute上席研究員Ian Storeyの “Can the UK Achieve Its Naval Ambitions in the Indo-Pacific?”と題する論説を掲載し、ここでStoreyは英国がインド太平洋で持続的な海軍力プレゼンスを維持しようとする場合、日本がその根拠地として有力な候補だが、幾つかの障害があるとして要旨以下のように述べている。
(1) 英国防省が現在策定している計画が順調に進めば、英海軍は2021年に空母打撃群をアジア海域に派遣する。空母打撃群は英海軍史上最大の軍艦、6万5,000トンの空母「クイーン・エリザベス」を中核に、おそらくNATO同盟国からの艦艇1隻を含む駆逐艦、フリゲート、支援艦及び潜水艦からなる9〜10隻の随伴艦から構成されるであろう。空母「クイーン・エリザベス」は、英空軍F-35B戦闘機飛行隊1個を搭載する。最近、スコットランド沖で完全な編成の訓練が行われた。
(2) 英海軍のアジア派遣艦隊は、東南アジアを訪問し、間違いなくシンガポールのチャンギ海軍基地に寄港するであろう。さらに英国がシンガポール、マレーシア、オーストラリア及びニュージーランドと結ぶ軍事同盟、「5カ国防衛取極」(以下、FPDAと言う)50周年を記念する海軍活動に参加する可能性もある。艦隊は、南シナ海を航行し―おそらく、その途次、米国、日本及びオーストラリアの軍艦との合同演習に参加しよう―、中国の怒りを買うことは避けられまい。艦隊はその後、寄港を繰り返しながら日本を訪問する可能性がある。艦隊は5カ月から6カ月後に本国に帰投することになろう。この艦隊派遣計画はメディアの関心を高めているが、より興味深いのは、空母「クイーン・エリザベス」と2023年就役予定の姉妹艦「プリンス・オブ・ウェールズ」の将来の活動海域である。何故なら、英海軍高官は、両艦のキャリアの多くをインド太平洋海域で過ごすことを望んでいることを示唆しているからである。7月に英The International Institute for Strategic Studiesが主催したウェビナーで、英海軍艦隊司令官、Jerry Kyd海軍中将は空母を「戦略的レベルにおいてグローバルに関与する意図を有する国家の表徴」とし、空母は戦略的なメッセージ発信、戦力の投射、海軍外交及び貿易促進を含む多くの任務を果たすことができると指摘した。Kyd中将は、特に復活したロシアの脅威を考えれば、ユーロ大西洋は英国にとって依然として戦略的重心ではあるが、英海軍はインド太平洋に「戻りつつ」あり「我々の望みは空母打撃群によって、あるいは他の戦力によって、この地域に持続的な前方展開を維持することである」と強調した。
(3) では持続的なプレゼンスとは何を言い、そしてそれを如何にして実現するのか。「持続的」(“persistent”)という言葉は熟慮されたもので、長期にわたる期間を意味するが、必ずしも永久というわけではない。英海軍の空母打撃群をこの地域に恒久的に配備するという考えは現実的ではない。ある時点で、空母「クイーン・エリザベス」は大規模な改装のためにドック入りの必要があり、その場合、空母「プリンス・オブ・ウェールズ」は英海軍唯一の空母となり、しかもユーロ大西洋の重要性の故に、英国本国に残留している必要がある。同様に空母「プリンス・オブ・ウェールズ」が改装中の時には、空母「クイーン・エリザベス」は本国に残らなければならない。更に、英海軍艦艇の3分の1以上を恒久的に海外に配備することに伴うコストは法外なものになろう。また、英国の世論もこの考えに反対するであろう。海軍基地は何千人もの人々を雇用しており、従って英国内の失業率が上昇している時期に、何故、税金がイギリス人ではなく外国人労働者の雇用に費やされなければならないのか疑問に思うであろう。「持続的」プレゼンスとは、英海軍が年に一度、あるいは現実的には隔年毎に、空母打撃群をインド太平洋に配備することを想定していることを示唆している。しかしながら、一方では英海軍のフリゲートや駆逐艦がより恒久的にアジアに前方展開する可能性がある。この方式は既に英海軍によって実施されており、フリゲート「モントローズ」が現在3年間、バーレーンを基地として配備されている。
(4) それではインド太平洋地域において、英海軍空母打撃群にとっての適切な一時的根拠地は何処にあるか。東南アジアは選択肢の一つで、シンガポールとブルネイは歴史的な理由と英国と両国との広範な防衛関係から英国のリストのトップになるであろう。英海軍は既にFPDAを支援するためにシンガポールに海軍補給施設を維持しており、また同国のチャンギ海軍基地に優れた施設があることから、両国の内、シンガポールの方がより合理的な選択肢となろう。また、オーストラリアでは特にノーザンテリトリーのダーウィンが選択肢の一つとなろう。
(5) しかしながら、以下の3つの理由から、日本が英海軍にとって好ましい場所であろう。
a.第1に、英国にとって最も緊密な同盟国である米国は、横須賀に大規模な海軍基地を維持している。米第7艦隊は、原子力空母「ロナルド・レーガン」を含め、ここを拠点としている。英海軍の軍艦は、2018年8月にパラセル諸島で「航行の自由作戦」(以下、FONOPと言う)を実施したドック型揚陸艦「アルビオン」を含め、補修と乗組員の休養のために定期的に横須賀に寄港している。横須賀に加えて、米海軍の4万5,000トンの強襲揚陸艦「アメリカ」が拠点とする佐世保も選択肢に含まれよう。強襲揚陸艦「アメリカ」は海兵隊のF-35Bを搭載しており、空母「クイーン・エリザベス」に最も近い軍艦であり、これら2隻が協同すれば明らかな相乗効果が見込まれる。
b.第2に、日本を拠点とする英海軍空母は、日英の戦略的関係の強化に役立つであろう。日英両国は2017年に、期限3年の防衛協力計画に合意した。英国は、オーストラリアの次に、英国軍人が国内に駐留するための法的枠組みとなる、日本との訪問軍人の地位協定を交渉することになっている。
c.第3に、日本を拠点とする英海軍艦隊は、英米日3カ国が既に合意している、3カ国海軍間の相互運用性の強化に役立つであろう。米英両国軍は既にF-35Bを運用しており、また日本は改修後の護衛艦「いずも」、「かが」に搭載する短距離離陸/垂直着陸機42機を購入する計画である。海軍のパイロットは一緒に訓練し、経験を共有することができよう。
(6) これら3つの理由は説得力があるが、日本における英海軍の持続的プレゼンスは大きな障害に直面することになろう。
a.第1の障害は、英海軍艦隊を長期間日本に前方配備するための膨大なコストである。
b.第2の障害は、兵站補給上の問題である。横須賀の米海軍基地はかなり混雑しており、英海軍の空母は米海軍の空母より小型とは言え(米空母「ロナルド・レーガン」の乗組員は5,000人、英空母「クイーン・エリザベス」は1,600人)、係留スペースは大きいものとなろう。新しい桟橋を建設することができても、そのためには数億ドルの費用を要することになろう。別の選択肢としては、横須賀の海自基地を利用するか、あるいは護衛艦「かが」が拠点とする広島県の呉基地など、日本の別の海軍基地を英海軍空母の根拠地とする こともあり得る。空母が根拠地に在泊中、艦載機F-35Bの飛行場を見つけることも、1,600人の乗組員と何百人もの支援スタッフの収容問題と同様に、新たな兵站補給上の問題となろう。
c.第3の、そしておそらく最も重大な障害は日本政府の支持を確保することであるが、結局、それは世論の動向次第であろう。日本政府は国内における英国海軍の駐留に関する見解を公にはしていないが、外国の軍隊が国内に駐留するという問題は、常に日本国民の間で論議の的となってきた。例えば、日本政府は6月に、地元の反対により、陸上配備イージスシステムの配備を中止せざるを得なかった。英海軍のプレゼンスに対して、例え一時的なものであっても、日本の世論がどう感じるかは不明である。とは言え、菅義秀首相が英国海軍のインド太平洋への野望のために首相の座を危険に晒す可能性は極めて低い。
d.もう一つの問題―必ずしも障害とは言えないが―は、中国からの否定的な反応であろう。中国政府は、前記の揚陸艦「アルビオン」のFONOPを巡って英国を激しく批判し、空母の根拠地をアジアにおくことは「非常に危険な動き」となるであろうと警告した。アジアにおける英国海軍の持続的なプレゼンスは中英関係の新たな紛争の種になろう。
(7) これらの障害はいずれも克服し難いものである。兵站補給上の問題は克服できても、英国にとって大きな財政的支出を必要とし、現在の悲惨な経済状態では非常に厄介なものとなろう。同様に、あるいはそれ以上に問題なのは、ロンドンにとっては日本に英海軍のプレゼンスのメリットを説得することであり、他方、日本政府にとっては、それが日本の国益にもなることを国民に説得することであろう。もっとも、中国が南シナ海と東シナ海において高圧的な行動を強化していることから、日英両国にとって、あまり大きな説得の労は不要かもしれない。
記事参照:Can the UK Achieve Its Naval Ambitions in the Indo-Pacific?

11月8日「Biden政権とアジア太平洋―米専門家論説」(East Asia Forum, November 8, 2020)

 11月8日付のAustralian National UniversityのCrawford School of Public Policy のデジタル出版物East Asia Forumは米シンクタンクAtlantic CouncilのThe Brent Scowcroft Center for Strategy and Security上席研究員Robert A. Manningの“A Biden presidency’s impact on the Asia Pacific”と題する論説を掲載し、ここでManningはBiden政権下のアジア太平洋政策がどのようなものであり、それがその地域にどう影響を与えるかについて要旨以下のように述べている。
(1) 米大統領選挙が完全に決着するまであと数週間かかるだろうが、現在のところBiden民主党政権と共和党が多数派を占めるであろう上院でねじれが生じると観察されている。そのうえでアジア太平洋に対する米国の方針は、変化よりも継続が予測されている。ただし、Trump大統領のもとで進展した、そして彼が勝利していたら今後も進展していたであろうアジア、ヨーロッパでの同盟の弱体化を修正しようとはするだろう。これは地域の抑止力の強化につながるはずだ。
(2) Biden政権は今後、米国的価値を推進するようになるであろう。他方で対中方針に関して中国が「戦略的競合国」だという認識は超党派の合意を得ているため、Biden政権になっても変わらないであろう。ただしこのことが正確に何を意味するかについてはTrumpとBidenでは重要な違いがある。
(3) Trumpは中国を悪魔のように見なし、従来の「関与政策」を放棄した。他方Bidenは競合しながらも共存のできる枠組構築を目指し、米中関係悪化のスパイラルに歯止めをかける可能性がある。たとえばBidenの側近であるKurt CampbellとJake SullivanはForeign Affairs誌に、米国の「目的は、軍事・経済・政治・グローバルガバナンスの四つの重要な競合的領域において、中国との共存のための望ましい条件を確立すること」だと書いている。その目標のために米国は2国間取り組みから多国間取り組みを採用するのではないか。
(4) 経済と技術の問題について、Biden政権はより穏健な取り組みを採るであろう。民主党は共和党同様に自由貿易には慎重だが、EUや日本、オーストラリアとの間で緊密に動くことが予想される。WTOについても技術移転や知的所有権、人工知能や5Gなどの新技術に関するルールやスタンダードづくりを目指していくはずである。中国との間でも、これまでも半導体や5Gなどの技術について、より良い競争のための方針づくりを進めてきたが、Bidenはこれを引き継ぐことになるだろう。
(5) 米中関係が安定すれば、それはインド太平洋戦略にも影響を及ぼすことになる。Trump政権が拡大していった同地域での足場をBiden政権が減らすことは考えにくいが、より同盟・提携関係の強化を重視し、安全保障協力のネットワークを拡大する可能性がある地域の安全保障を強固にするためには、より緊密な経済関係と経済的安定が必要であるが、他方で、たとえばBidenがTPPに改めて参加するかどうかは不透明である。BidenはTPPに関心を持っているが、それは無条件ではないし、最終的な参加はどれだけ議会の支持を得られるかにかかっている。
(6) 北朝鮮の核問題については、北朝鮮が事実上の核保有国だという厄介な現実を引き継ぐものである。ただし、Bidenは首脳会談には前向きであるという意図を表明している。しかし、現実的に北朝鮮に核を放棄させたり、あるいはその軍備管理を実現させたりすることは、可能性が低いと言わざるをえない。国際原子力機関などによる完全な査察と監視という前提条件を整えることが困難なためである。
(7) アジアがBiden政権に期待できることはあまり大きくないかもしれない。Bidenは外交の経験が豊富であるが、その成果は高く評価できるものではない。また、アジア太平洋問題にどの程度米国が積極的役割を持って動けるかどうかは、国内政治によるところも大きいためである。
記事参照:A Biden presidency’s impact on the Asia Pacific

11月9日「ロシアの新しい北極圏開発戦略の要点―ロ専門家論説」(Eurasia Dairy Monitor, June 9, 2020 and June 24, 2020)

 11月9日付の米シンクタンクThe Jamestown Foundationが発行するEurasia Daily Monitorのウエブサイトは同シンクタンクの研究員であり湾岸諸国分析のアドバイザーであるSergy Sukhankin博士の “ Russia Unveils New Arctic Development Strategy: Focal Points and Key Priorities”と題する論説を掲載し、ここでSukhankinは2020年10月にロシアが発表した新しい北極圏開発戦略は地域のインフラ整備、軍事力増強、社会経済の発展という3点を重視しているとして要旨以下のように述べている。
(1) 2020年10月26日、プーチン大統領は「ロシア北極圏の発展戦略と2035年までの国家安全保障の提供」と題する文書を正式に採択した。この発展戦略は、2020年から2024年、2025年~2030年、2031-2035年の3段階で実施される。極東・北極圏開発大臣Alexander Kozlovは、この戦略は以前に採用された同様の文書とは対照的に、二つの異なる特徴を持つと述べている。第1は、地域の生活の質を高めるための社会経済発展に重点を置いていることである。第2は、その社会経済発展は、以前に実践された一般的な方法ではなくケースバイケースで地域固有の取り組みで行うことである。文書を詳細に分析すると、ロシアが重視している三つの主要な戦略的分野が明らかになる。
(2) 第1の分野は北極圏のインフラ整備である。今回の戦略文書で概説されているすべての行動がアジアからヨーロッパに到達する最も短く最も安価な方法で北極海航路(以下、NSRと言う)を中心に展開している。2035年までに達成される具体的措置は以下のとおりである。
a. NSRの戦略的な分岐点における海洋インフラ(特に港湾)の整備
b. NSR全体を管轄する「運航管理本部」の設立
c. 輸送サービス(特に貨物輸送)のデジタル化 
d. 白海・バルト海運河とオネガ川の流域を経由する水路などの航行機能の強化
これらの措置が実施されたならば、NSRの効率が高まり、戦略的に重要なアジアへのロシアのエネルギー資源の迅速な供給が容易になると予想される。
(3) 第2の分野は、地域の軍事力の増強である。これは、ロシアの北極圏の部隊に最新の装備を持たせ、地域の軍事インフラを強化することである。具体的には、この文書では「北極圏で有利な軍の運用体制を作る」必要性を強調している。北極圏での軍事的プレゼンスを高めることを目的としたロシアの以前の措置に沿って、この文書はこの地域における「競合する可能性の高まり」を強調するだけでなく、北極圏に配備された部隊の装備を常にその性能を向上させる必要性を認めている。しかし、この文書は軍事関連の課題に過度に重点を置いていないことは注意すべきである。
(4) 第3の分野は、社会経済的進歩の必要性である。戦略文書は、地域の社会経済状況の劇的な改善が、この地域におけるロシアの確固たる地位を維持し、天然資源を効果的に利用する鍵であることを強調している。その他の措置の中でも、「経済体制の構築、循環経済への移行の促進」を計画しており、それは地域の経済・生態学的持続可能性の実現に向けた道を開くものである。さらに、この戦略は、人的資源を誘致し、地域の人口統計学的可能性を向上させることを目的とした多くのステップに言及している。1989年以降、北極圏の人口は社会経済状況の悪化と魅力の欠如により、少なくとも20%減少している。過疎化は、この地域の主要な脅威の一つとして認識されている。
(5) ロシアの現在及び長期的な社会経済状況により、今回の戦略文書の野心的な内容と現実を比較すると、いくつかの重要な結論が出てくる。第1は、ロシア政府は目標がどのように達成されるべきかについて実際の計画を持っていないことである。多くの主要なロシアの専門家の解説と分析に基づいて、この目標を追求するためにロシア政府はいわゆる「動員」型の方法に依存する可能性が高いようである。ソビエト時代の特徴の一つであるこの方法は短期的には有効であるが、長期的に良い結果をもたらす可能性は低い。第2は、地元の人口統計に関しては、ロシア政府が北極圏に住む人口の規模を劇的に増加させる政策に着手できるかどうかは、全く明らかではないことである。実際、すでに北極圏とその近傍に住む人口は250万人となっており、さらなる増加は実際にはロシア経済に有害である可能性がある。ロシアの専門家の多くは現在、ロシアはこの地域の天然資源を利用する最も費用対効果の高い方法として、いわゆる「出稼ぎ」労働者に依存しているカナダ、米国、ノルウェーの例に従うべきだと主張している。第3は、今回の戦略文書においては軍事関連の取り組みは一見、限界的な役割しか持っていないように見えるにもかかわらず、軍備の増強は実際にはロシアの北極圏への包括的な取り組みの中心的な柱であり、国からの財政的支出を受ける大きな理由となると考えられることである。その結果、現在の経済的苦難を考えると、ロシアはNSRの重要な箇所を結ぶ戦略的な「リンク」への選択的投資を前提とした取り組みを追求することが予想される。今回の戦略文書は、北極圏地域とその中のロシアの見通しに関連する様々な文書に類似しており、東西を結ぶために不可欠な輸送動脈としてNSRの長期的な戦略的価値を強調している。
記事参照:Russia Unveils New Arctic Development Strategy: Focal Points and Key Priorities

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書
(1) Making Waves: Militant Maritime Operations Along Africa’s Eastern Coast
https://warontherocks.com/2020/11/making-waves-militant-maritime-operations-along-africas-eastern-coast/
War on the Rocks, NOVEMBER 4, 2020
By Tyler Lycan, a maritime security researcher with Stable Seas
Christopher Faulkner, a visiting assistant professor in international studies at Centre College
Austin C. Doctor, an assistant professor at Eastern Kentucky University
11月4日、海洋安全保障のプログラムStable Seasの研究者Tyler LycanとCentre Collegeの客員助教授であるChristopher Faulkne、Eastern Kentucky Universityの准教授Austin C. Doctorは米University of Texasのデジタル出版物War on the Rockに、“Making Waves: Militant Maritime Operations Along Africa’s Eastern Coast”と題する論説を寄稿した。ここでLycanらは、①暴力的な非国家武装集団が沿岸地域を利用する方法については知られていないため、アフリカの東海岸で活動する 二つの反政府勢力、ソマリアのアル・シャバブとモザンビークのアル・スンナ・ワル・ジャマー(以下、ASWJと言う)のことを知る必要がある、②アル・シャバブは2012年はアルカイダに忠誠を誓い、それ以来、多国籍テロリストグループと緊密な関係を維持している、③アル・シャバブは海洋活動を重要視し、陸上での作戦を支援するためにソマリアの港や沿岸海域に依存している、④ASWJは、ソマリアの首都モガディシュから1000マイル近く離れた、モザンビーク北部で主要な攻撃姿勢を始め、2020年3月には海洋作戦を増やしている、⑤アル・シャバブとASWJの最近の海を拠点とした活動は、武装勢力の広範で多様な方法を示しており、将来の反政府活動の雛形となる可能性がある、⑥暴力的な非国家行為主体たちは、異なるパターンで海洋活動を利用しており、政策立案者たちは、その存在がまだ初期の段階にある武装集団の海洋活動を監視するのがよいだろう、⑦意思決定者たちは、海洋環境を無視する傾向のような“sea blindness”を克服し、武装勢力の具体的な海洋活動に対抗するための、それぞれの事情に合わせた戦略を立案することが不可欠である、⑧両国とも、経済発展、汚職の克服、法の支配の支援、沿岸地域に住む人々の人権保護など、より総合的なアプローチが必要である、⑨これらの戦略を最大限に利用するためには、陸と海の境界線を越えた構想が必要である、といった主張を行っている。

(2)Why the Arctic is Not the ‘Next’ South China Sea
https://warontherocks.com/2020/11/why-the-arctic-is-not-the-next-south-china-sea/
War on the Rocks, NOVEMBER 5, 2020
By Elizabeth Buchanan, a lecturer of strategic studies at Deakin University delivering the Defence and Strategic Studies Course at the Australian War College
Bec Strating, the executive director of La Trobe Asia and a senior lecturer in the Department of Politics, Media and Philosophy at La Trobe University, Melbourne
11月5日、豪Deakin University講師でthe Australian War Collegeに出向中のElizabeth Buchananと豪La Trobe Universityの外交・海洋安全保障問題専門家のBec Stratingは米University of Texasのデジタル出版物War on the Rockに“Why the Arctic is Not the ‘Next’ South China Sea”と題する論説を発表した。ここで両名は、近年、南シナ海と北極は、新たな大国間競争が繰り広げられる戦略的な舞台としてひとまとめにされているとした上で、南シナ海と北極海の地政学的な 「競争」 の相違点と類似点を理解することは、中国の将来の海洋姿勢と政策の戦略的含意を予測する上で極めて重要であることは認めるものの、戦略的競争の文脈で南シナ海の紛争勃発のポイントと北極のそれとを比較することは、やや短絡的であると指摘している。そして、中国とロシアは、南シナ海と北極地域に関して国連海洋法条約 (UNCLOS) に局地的かつ利害関係を重視した形で密接であるが、こうした海洋法に対する局地的なアプローチは、グローバル・コモンズの多国間ルールに基づくガバナンスに対する課題を理解する上で意味を持つものだと主張している。

(3) STRATEGIC AUTONOMY AND U.S.-INDIAN RELATIONS
https://warontherocks.com/2020/11/strategic-autonomy-and-u-s-indian-relations/
War on the Rocks.com, November 6, 2020
Jeff M. Smith, a research fellow at the Heritage Foundation
11月5日、米シンクタンクThe Heritage Foundation のJeff M. Smithは米University of Texasのデジタル出版物War on the Rockに“STRATEGIC AUTONOMY AND U.S.-INDIAN RELATIONS”と題する論説を発表した。ここでSmithは1947年に独立して以来、インドの外交政策は非同盟という一つの包括的原則に導かれてきたが、このドクトリンは「世界政治におけるインドのアイデンティティの中心的な要素である」と評され、インドを非同盟運動の指導者として位置付けようとする一方、冷戦と米ソのどちらとも協調しないよう導いたと、インドの非同盟主義を取り上げ、冷戦の記憶が薄れるにつれ、インドでは非同盟主義の魅力も薄れ、特に2014年にModi首相が選出されて以来、さらにこのドクトリンの政治的位置づけが低下していると指摘している。そして、米国から見れば、インドが豪州や日本のような米国と長年に渡る同盟関係にある国とは異なる対応を示すなど、米印関係は期待どおりではないとして評する声もあるが、インドの立場から見れば、米国との戦略的パートナーシップはすでに例外的な存在、かつ同盟関係の限界を押し広げる新たな段階となっており、これはすでに、独立以来インドが築いてきた戦略的パートナーシップの中で最も拡大したものであると主張している。