海洋安全保障情報旬報 2020年3月11日-3月20日

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3月11 日「マレーシアの『合同申請海域』における掘削活動、その法的意味―シンガポール専門家論説」(Asia Maritime Transparency Initiative, March 11, 2020)

 3月11日付のCSISのウエブサイトAsia Maritime Transparency Initiativeは、National University of SingaporeのCentre for International Law上席研究員Vu Hai Dangの “Malaysia Should Embrace Compliance on Its Overlapping Continental Shelf Claim”と題する論説を掲載し、ここでVu Hai Dangはベトナムとマレーシアが合同でCommission on the Limits of the Continental Shelf(CLCS)に申請した大陸棚限界延伸海域においてマレーシアが掘削活動を始めたことに関し、その法的意味について要旨以下のように述べている。
(1) 2009年にベトナムとマレーシアが合同でCommission on the Limits of the Continental Shelf(以下、CLCSと言う)に申請した重複する大陸棚の限界延伸海域*において、マレーシアが最近、石油・天然ガス開発を始めたことに、国際問題専門家は当惑している。マレーシア国営石油・天然ガス会社、Petronasが契約した石油掘削船The West Capellaは2019年12月21日、「合同申請海域」(the “Joint Defined Area”)に入り、運用を開始した。この動きは、軍艦、沿岸警備隊巡視船、海上民兵及び民間船舶を巻き込んだ、マレーシア、中国及びベトナムの3カ国間の対峙を引き起こした。何故、マレーシアは、ベトナムとの合同申請を無視し、ASEANの団結を傷つけるようなことをしたのか。
(2) 国連海洋法条約(以下、UNCLOSと言う)に基づけば、マレーシアとベトナムによる「合同申請海域」は、2つの点で「(法的に)未決定の状態」(“pending status”)にあると見なされるべきである。第1に、それは相対する反対側の国、あるいは隣接する沿岸国との間における境界が未確定の大陸棚であることである。そして第2に、それはCLCSによる勧告待ちの200カイリを超えた大陸棚の限界延伸申請海域であることである。
(3) 第1に関して言えば、UNCLOS は当該関係国に対して海洋境界確定についての最終合意の実現を危うくしたり妨害したりしないことを求めている。国際裁判の判例は、このことを未確定境界海域における一方的で過剰な活動を回避することを義務づけるものと認めてきた。例えば、2007年のガイアナとスリナムの海洋境界画定事案の判決では、仲裁裁判所は、海洋環境の物理的状態に変更を及ぼす、未確定海域や係争海域における一方的な試掘は境界確定についての最終合意の実現を危うくしたり、妨害したりしかねない、と認定した。仲裁裁判所は、係争海域における地震探査のような、あまり過剰ではない探査活動は許容され得るとした。また、2017年のガーナとコートジボワールの海洋境界画定事案では、国際海洋法裁判所(以下、ITLOSと言う)は、係争海域において境界画定判決が出るまで継続して実施されてきた一方的な活動を容認したが新しい掘削活動については禁止した。ITLOSは、2017年の判決でガーナが実施してきた掘削活動がコートジボワールの主権的権利への侵害を構成するものではない、とした。その際、唯一の事由とされたのは、当該係争海域は最終的にガーナに帰属する海域でガーナはこの仮定に基づいて誠実に行動してきた、ということであった。もし判決がコートジボワールに有利な海洋境界画定であったとしたらガーナの一方的活動はコートジボワールの主権的権利への侵害を構成するものになったであろう。
(4) The West Capellaが石油掘削船であることから、マレーシアの一方的な掘削活動はあまり過剰ではない探査活動と仮定できる。マレーシアは、「合同申請海域」における掘削実施海域が如何なる形であっても最終的な境界画定ではマレーシアに帰属するであろうと誠実に想定しているのかもしれない。しかし一方、この海域は2009年の CLCS への合同申請の時点では係争海域であり、従って、この海域での新たな掘削活動は、前出のガーナ・コートジボワール判決に示された判例の要件を構成しない。200カイリを超える大陸棚の延伸海域に関して、そうした延伸申請に対するCLCSによる勧告が出されるまでの間、当該沿岸国がどのような権利と義務を有するかについてはUNCLOS は何も規定していない。現在までの国際裁判の判例は、この問題に関しては、こうした活動が第3国や国際社会の権利を侵害すべきでないとする非常に一般的な指針を提示しているだけである。「合同申請海域」が係争海域にあり、しかも CLCS からの勧告が出されていない状況を考えれば、一方的な探査活動がこうした諸権利を侵害する活動と見なされるであろうか。ここでも、その答えはこうした活動が海洋環境の物理的状態に変更を及ぼすものであるかどうかによって左右されることになる。掘削活動に関して言えば、その答えは確実にイエスであろう。
(5) CLCS から勧告待ちの状況にある大陸棚限界延伸申請に関する国際裁判の判決と裁定を子細に見れば、国際法と確実に一致する1つの行為は関係当事国における当該海域に関する境界確定であると言える。各種の判例は、境界画定は第3国や国際社会の権利を侵害するものではないとしている。同様に、CLCS の大陸棚の外縁画定における役割は当該2国間の相対する側面の海洋境界画定とは異なることから、国際裁判による海洋境界画定は、CLCS の機能を侵害するものとは見なし得ない。この点に関して、2012年のバングラデシュとミャンマーの海洋境界画定事案の判決で、ITLOS は「ITLOSが海洋境界画定を行っても、CLCSの機能を侵害することにはならない」と述べている(抄訳者注:この事案はITLOSに持ち込まれた最初の海洋境界画定事案で、そのため、大陸棚外縁延伸部分の海洋境界画定についてはCLCSの勧告が得られていなかったため、ITLOSが海洋境界画定を行う権限を有するのか否か、そしてこの権限を行使するのが適切であるのかが、問題となった。ITLOSによる海洋境界画定なしには両国の大陸棚の外縁限界が明確にならないことにもなりかねないことから、ITLOSは海洋境界画定を行う権限を行使するのが適当であると判断した)。
(6) マレーシアは、「合同申請海域」の境界画定に関してベトナムと協議を始めることができよう。両国は、交渉あるいは審判のいずれかを選択することができよう。南シナ海領有権主張国にとって、交渉過程の明確な管理は海洋境界画定の好ましい経験になるように思われるが、他方、この事案では審判はマレーシアにとって幾つかの利点がある。第1に審判の方がより早く結果を得られよう。ITLOS あるいは特別に設置された仲裁裁判所が判決を出すまでにはおよそ3年程度であろう。他方、海洋境界画定交渉は合意に至るまで数十年続くこともあり得る。第2に、マレーシアは既に海洋紛争の解決を第三者機関に委ねた経験を持っていることである(例えば、「ジョホール海峡及びその周辺海域におけるシンガポールによる土地埋め立て事案」に関する2003年のITLOSの判決)。そして最後に重要なことは、国際裁判の判決はマレーシアとベトナムによる合同申請の妥当性を強めることになろう。バングラデシュ・ミャンマー事案とガーナ・コートジボワール事案に見られるように、ITLOS はCLCS が勧告を出す前でも、これら諸国が200カイリを超える延伸大陸棚に対する権原を有していると結論づけるために、CLCSに対する関係当事国の申請をも検討した。
(7) 海洋境界画定は、マレーシアにとって、一方的な掘削活動を強行するよりも、「合同申請海域」における主権的権利と管轄権を確認するための、迂遠だがあまり人目を引かない方法であるかもしれない。しかし、それは、合法的であることを保証される唯一の進むべき方法なのである。さらにより重要なことは、それはより大きな対立を招来し、ASEANの団結を損ねるリスクを伴う、現在の3カ国間の対峙のような対立を回避する上で、有益となり得るということである。
記事参照:Malaysia Should Embrace Compliance on Its Overlapping Continental Shelf Claim
備考*:2009年5月6日の合同申請内容と付帯海域地図については以下を参照
https://www.un.org/Depts/los/clcs_new/submissions_files/mysvnm33_09/mys_vnm2009excutivesummary.pdf
(なお、『海洋安全保障情報』2009年5月号1.3外交・国際関係に紹介記事あり)

3月11日「コロナウイルスも米空母の訪越を阻止できず-米海軍大佐論説」(The Diplomat, March 11, 2020)

 3月11日付のデジタル誌The Diplomatは、米Stanford University, Hoover Institution安全保障問題研究員Christopher Sharman米海軍大佐の“Even Coronavirus Couldn’t Stop the 2nd US Carrier Visit to Vietnam”と題する論説を掲載し、ここでSharman大佐はコロナウイルス拡散の懸念が広がる中で行われた米空母Theodore Rooseveltのベトナム訪問は、米越両国間の信頼を深め、両国関係を新たな段階へ引き上げただけでなく、南シナ海における中国の人工島軍事化への対応の機会を失うなど米国の対応に不安を感じていたASEAN諸国の米国に対する信頼を回復し、アジアにおける米国の戦略的利益を増進するとして要旨以下のように述べている。
(1) 信頼を得ることはできない。与えられるものである。このことは地政学的関係を含め全ての関係において真実である。米越は2020年、外交関係樹立25周年を祝っている。その道程はいつもスムーズであったわけではないが、信頼強化のため両国は賢明に努力してきた。3月第1週に両国は相互信頼を新しい段階に羽ばたかせる大きな段階を迎えた。そしてそれは中国の関心を引いた。
(2) ベトナムはダナン商港に米空母Theodore Rooseveltとその打撃群の艦艇を週末まで受け入れた。米空母ほど「自由で開かれたインド太平洋」を維持するという米国のコミットメントの有力な象徴はほかにない。ハノイはワシントンと北京との安全保障関係を注意深く均衡させている。10万トンの鋼鉄の塊は容易に均衡を覆し、将来の米艦艇の訪問を歓迎するというベトナムの意向を複雑なものにする。2018年3月の寄港では米海軍は空母が持つ明確なハードパワーの能力を控えめに見せ、代わりに調理から防火までの専門術科の交換を強調し、町や地方の学校におけるコミュニティのイベントでの音楽隊による演奏会を計画した。この寄港は中越の緊張を引き起こすことはなかった。むしろ、戦略的信頼を深め、今回の寄港に必要な積極的な条件を確立した。
(3) 確かにコロナウイルス拡散の震源地に近い国を訪問する6千名の乗組員は、訪問を進めるかについてハノイ、ワシントン双方において議論を活発化させた。両国にはもっともな健康に関する懸念があった。その一部として、米太平洋艦隊は空母打撃軍に対し感染の拡大を確認するため、アジアでの外国寄港前に14日間洋上に止まるように指示していた。最も容易で安全な選択として、この重要なイベントを延期するという案もあった。しかし、この訪問を進めるという相互の意思はワシントンとハノイの間の信頼が新しい段階に達したことを示している。米側にすれば、この寄港は海軍が約束を守り、米指導部はベトナム当局が乗組員達をウイルスの拡散から守るために適切な方策を講じることを信じていることを示すものである。ベトナムにとって、この寄港は最高指導部への信頼を構築するものであった。米空母寄港の承認は19人で構成されるベトナム政治局の全会一致の承認が必要であった。一部政治局員は米国とのより緊密な関係を望み、他は中国から予想される圧力を懸念した。寄港を進める決定はこの寄港と米国とのより緊密な紐帯を提唱する政治局員達に力を与えた。そして、今回の寄港は将来、同じように注目を浴びる行事が全ての政治局員にとってより好ましいものにするかもしれない。
(4) 中国はこの寄港を注視している。米国を南シナ海から駆逐すること以上の北京の望みはない。空母寄港によって中国の努力は無に帰する。この寄港は米国が国際的規範と基準を我慢強く支援していることを伝え、地域の友好国の独立を促進し、米国が地域への関わりを維持するという約束を示している。北京は既に対応を取り始めているかもしれない。中国海南海事局は、中越両国が権利を主張している西沙諸島近傍海域における極めて重要な調査のため「海洋石油719」を派遣したと発表した。この派遣は正当な中国の商業上の利益のためかもしれないが、中国は主権を主張し、ベトナムに対し不快感を表明するためにこのような艦船の派遣を使用している。ハノイは中国が同船をどのように、どこに展開するかを注意して順応するだろう。
(5) 地域に対する中国のメッセージは、米国は信頼できない相手であるということである。ASEAN諸国は、米国が信頼するに足るかを見極めるためワシントンの行動を注視している。南シナ海の人工島軍事化を阻止する機会を失ったことなどがASEANを不安にしている。さらにワシントンはコロナウイルへの懸念を理由にラスベガスで3月中旬に開催予定だったASEAN-米特別首脳会談を延期した。しかし、Theodore Rooseveltの寄港は、ワシントンのベトナムとの2国間関係を促進するという約束を示している。その再確認のメッセージはベトナムの国境を越えて広がっている。ASEAN諸国はそれぞれにワシントンあるいは北京との関係をうまく処理してきているので、寄港は各ASEAN諸国の戦略的計算に影響を及ぼすだろう。寄港は信頼を構築する。米国が粘り強く地域に軍事力を展開すること、およびASEAN各国との個別の目的に合わせた協力は米国への信頼をさらに深め、米国のアジアにおける戦略的利益をより良く増進することになろう。
記事参照:Even Coronavirus Couldn’t Stop the 2nd US Carrier Visit to Vietnam

3月12日「グアムに新しくできる米海兵隊基地の概要―米軍専門紙報道」(Stars and Stripes, March 12, 2020)

 3月12日付の米軍専門紙Stars and Stripesは、“New base expected to host thousands of Marines begins to take shape on Guam”と題する記事を掲載し、グアムで作業が進む米海兵隊のための新しい基地建設について要旨以下のように報じている。
(1) 何千人もの米海兵隊員のための新しい本拠地がアンダーセン空軍基地付近の土地で形になってきている。
(2) 2月末、グアムの北端に近いファインガヤンの建設現場に数十人の作業員が集まった。彼らが建設中の施設は海兵隊基地Camp Blazとして知られ、この基地は今後10年間に沖縄における米軍基地を削減するという計画の下、5千人の海兵隊員を収容できるよう設計されている。同伴者のいない海兵隊員のための兵舎が建設されるCamp Blazの中心部は、アンダーセン基地のすぐ西にあるNaval Computer and Telecommunications Station Guamの隣にある。この機密の傍受施設には、巨大なゴルフボールのような白いドームが印象的に並んでいる。海兵隊はグアムの北西海岸沿いに建設されている「多目的」機関銃射撃場を含む、いくつかの新しい射撃場で狙撃の訓練を行い、兵士たちはテニアン島とファラリョン・デ・メディニラ島でも訓練を行うとNaval Facilities Engineering Commandの建設の監督を支援しているBrian Foster海軍中佐は述べた。アンデルセン・サウスとして知られる放棄された住宅地域は市街戦訓練施設に変えられようとしている。海兵隊員の家族はアンダーセンに住むことになるが、そこにはさらに300の住宅が建設される予定だと彼は付け加えた。この基地はまた、海兵隊の航空部隊を収容することになる。アンダーセンのノースランプは、海兵隊の飛行場に相当する施設に変えられているとFosterは述べた。1つの格納庫は既に建設され、もう1つは建設中である。作業員たちはまた、本部ビル、そして地上支援装置と兵器庫のための施設を完成させたと彼は述べた。Foster曰く、南にあるグアム海軍基地では、作業員が海兵隊のために司令部、医療・歯科施設、装備品の貯蔵区域、税関検査に従事する軍用犬のための犬小屋などもを含む、新たな乗下船施設を建設する。グアムに常駐する海兵隊は1300名のみで、他の3700名は毎年夏にオーストラリアのノーザンテリトリーへ海兵空地任務部隊が訓練のために派遣されるのと同じように輪番制の部隊としてグアムに来ることになる。日本政府は海兵隊の移転のために30億ドル相当のプロジェクトに資金を提供しており、米国政府はさらに57億ドルを支出しているとFosterは述べた。
(3) 海兵隊の到着は32マイルの長さの島と17万人の住民に重大な影響を与えるだろう。「我々はインフラへの影響を最小限に抑えようとしている」とFosterは述べている。それは、道路、橋、そして水処理、電気、下水設備などの公共施設を海兵隊員に対応するために改善することを意味し、「この島に住むすべての人に大きな利益をもたらす」と彼は述べた。元グアム上院議員のRobert Klitzkieは、軍の増強を支持していると語り、重要な道路であるルート3Aを、2車線から4車線に拡張するなど、インフラの改善ももう1つの利益だとKlitzkieは述べている。
(4) 誰もが同意しているわけではない。Pacific Daily Newsが7月11日に報じたところによると、2019年、100人以上の住民が、建設が環境や文化的な場所に与える影響について懸念を表明するために、計画されている基地の南側の道路沿いで抗議行動を行ったという。海軍はこの島の生態系に与えるプロジェクトの影響を制限しようとしている。
(5) Naval Facilities Engineering Command Marianasの指揮官Daniel Turner大佐は、グアムで開催されたSociety of American Military Engineersでの前年3月20日のスピーチで、建設プロジェクトについて語った。「我々は、これらの場所の全てで工事を行っている」と彼は述べた。作業は2023年に加速し、残りの10年間を通しては大変なものになるだろう、とTurnerは言う。問題は、作業を完了するのに十分な外国人建設作業員のビザを取得することである。グアムには約3500人の現地建設作業員しかおらず、このプロジェクトは2023年までに1万1500人の作業員が必要となる。Turnerは、軍需貯蔵施設から兵舎、駐車場、燃料補給設備、射撃場及び井戸に至るまで、まだ発注されていない数十のプロジェクトのリストをエンジニアたちに見せた。この発展は、グアムにたくさんの政府の仕事があることを意味しており、Naval Facilities Engineering Command Marianasは島内で100以上の欠員があり、建設作業が進むにつれてさらに100以上の求人広告が出ることを予想していると、Turnerは述べた。
記事参照:New base expected to host thousands of Marines begins to take shape on Guam

3月12日「ロ対潜哨戒機、ICEXの情報収集―デジタル誌報道」(The Diplomat, March 12, 2020)

 3月12日付のデジタル誌The Diplomatは、“Russian Maritime Reconnaissance Aircraft Spied on US Submarines”と題する記事を掲載し、ロTu-142MZ対潜哨戒機がICEX2020の情報収集を行ったとして要旨以下のように報じている。
(1) 3月9日にアラスカ沖で米空軍および加空軍戦闘機に阻止されたロシアのTu-142MZ対潜哨戒機2機は米潜水艦の情報収集に当たっていたと米北方軍司令官が3月11日の議会証言で述べている。ロ対潜哨戒機はICEXで実際に潜水艦が氷原に浮上してくるその上空で行動していたと米北方軍司令官Terrence J. O’Shaughnessy空軍大将の発言がThe Military Times紙に引用されている。
(2) ロ対潜哨戒機は臨時氷上基地シードラゴン上空760m付近を遊弋し、米戦闘機が近距離で追尾した。ロ対潜哨戒機2機はアラスカ防空識別圏内で早期警戒管制機および空中給油機に支援された米空軍および加空軍戦闘機に阻止された。North American Aerospace Defense Commandは声明で「ロ対潜哨戒機はビューフォート海上空の国際空域にとどまり、アラスカ海岸から50海里にまで接近した」としており、ロ対潜哨戒機は米国あるいはカナダの空域には入っていない。
(3) Tu-142MZ対潜哨戒機は最近、ロ海軍航空部隊に導入され、近代的な航空電子機器、先進的な対潜機器、新型のNK-12MPターボプロップエンジンを搭載していると報じられている。ロ海軍は、約14機のTu-142MZ対潜哨戒機を約14機配備しているが、そのうちの何機が作戦可能あるいは飛行可能かは不明である。
記事参照:Russian Maritime Reconnaissance Aircraft Spied on US Submarines
関連記事:3月5日「米海軍、ICEX2020開始―米太平洋艦隊潜水艦部隊発表」(US Navy, 3/5/2020)
     U.S. Navy Kicks Off ICEX 2020

3月12日「米軍撤退はアジア、特に南シナ海において米国後の将来について考えさせる―英専門家論説」(South China Morning Post, 12 Mar, 2020)

 3月12日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、International Institute for Strategic Studiesのアジア安全保障会議のアジア太平洋安全保障担当上級研究員William Choongの “Trump’s troop withdrawals are forcing Asia to contemplate a post-US future, particularly in the South China Sea”と題する記事を掲載し、ここでChoongはアジア諸国はポストアメリカの世界に向けて心の準備をしているとして要旨以下のように述べている。
(1) 米国はタリバンとの交渉を中止した後、アフガニスタンからの歴史的な撤退を発表し、20年近く戦ってきた国での戦争を終わらせた。米国の歴史的な撤退は、地政学の歴史においては新しいものではない。1975年、北ベトナムとの交渉が妥結した後、南ベトナムから撤退した。1978年、台湾との外交関係を断ち、北京の共産主義政府を承認すると発表した。米国人の間に兵力削減の考えが再び生まれてきた。Thomas Wrightはフォーリンアフェアーズ誌において、現実主義者と進歩主義者の両方が兵力削減について共通の見解を有していると述べた。Trump大統領の取り引きに頼る方法は新しいものである。2017年のTrump大統領就任以来、米国は世界中の同盟国に防衛のためにより多く予算を支払うように伝えてきた。Trump大統領は、「米国第一」の戦略により画期的な貿易協定である環太平洋パートナーシップへの支援を撤回した。最近では、フィリピンとの長年にわたる訪問軍協定の終了に対するTrump大統領の気のない対応と「協定終了によって多くのお金を節約できるだろう」という発言が、米国で増大するアジアへの無関心に対する懸念を引き起こした。
(2) 2008年、私は米国のアジア地域に対する「注意力欠如障害」について書いた。私は、Obama政権はアフガニスタンとイラクでの戦争に集中しすぎていると述べた。それから10年間以上、米国はアジア地域での活動を強化してきたとは言える。主に南シナ海で中国が占領した島嶼に対抗するものとして、「航行の自由」作戦を増加させた。米国の東南アジアへの海外直接投資の総額は、中国、日本、韓国、インドの合計よりも大きい。米国は、法の支配、航行の自由、海上安全などの原則に基づいた、包括的なインド太平洋戦略を保持している。しかし、アジア太平洋諸国の懸念には先例がある。10年前、米軍が韓国から撤退するという考えに言及することさえ考えられなかったであろう。同じことは、フィリピンでの訪問軍協定の終了に向けたTrump大統領の無頓着ぶりにも当てはまる。ASEANに関して言えば、単に集会に出席するだけで戦いの半分は勝ったも同然であるという格言がある。Trump大統領は2019年10月にバンコクで開催されたASEAN主導の東アジアサミットに出席しなかった。米国がASEANへの関与を表明する場面は作られるはずであった。それは米国とASEANとの間でのラスベガスでの2020年3月に予定されていた会議である。しかしその会議は、急速に拡大するコロナウイルスのために延期されたのである。
(3) シンガポールYUSOF ISHAK INSTITUTE(ISEAS)が発表した最新の東南アジアでの調査では、1,308人の回答者の47%が、地域の安全保障の戦略的パートナーまたは提供者としての米国に対する信頼はほとんどない、またはまったくないと回答している。調査対象者の4分の3以上が、Trump政権下で米国の東南アジアへの関与が低下していることを認めた。逆に、中国はこの地域で著しい進歩を遂げた。現在では、多くのASEAN諸国のほか、豪州、日本、韓国などの米国の同盟国にとって最大の貿易相手国となっている。その一帯一路構想は物議を醸しているが、ASEANのほとんどの国によって歓迎されている。中国は世界最大級の海軍を持ち、他のどの主要海軍よりも急速に増強している。中国の戦略を見分けるのは難しくない。米国の同盟関係を弱め、米国の中心性を浸食し、アジアに新たな秩序を作り出す。ISEASの同じ調査では、回答者の52%が現在、中国を地域にとって最大の政治的および戦略的パートナーであると見なしている。これは、前年の45%から増加している。回答者の27%のみが米国について同じことを言っており、以前は30%であった。アジア太平洋地域での懸念は、米国が中国の行為を黙認しつつ地域からの撤退を行うことである。米国は中国に商業的な航行の安全を確保し、米国の地域拠点へのアクセスを許可するよう要求することができる。中国は、南シナ海の島の基地を建設しないことで、中国との往復の航海を行うであろう。これが起こった場合、アジアは1960年代後半のグアムドクトリンの時代に戻る可能性がある。1969年当時、Nixon大統領は、米国は核兵器の使用が始まってからの敵の侵略については同盟国を支援すると述べた。Nixon大統領は、核兵器が使用されるまでは、アジア諸国は自国の防衛のために主な責任を負うべきであることを強調した。
(4) アジア諸国が、ポストアメリカの世界に向けて準備をしている兆候はすでにある。論争の的になっている南シナ海に関しては、インドネシア、マレーシア、ベトナムなどの国々が独力で中国に立ち向かった。米国のインド太平洋戦略と比較して、2019年発表されたASEANのインド太平洋に関する展望は、中国のこの地域への関与についてより楽観的な見方をしている。そして、半導体と歴史問題に関する日韓の不和を米国が修復しようと行動していた一方で、中国はその空白を埋めるために動いていた。米国がこの地域から撤退するかどうか、いつ撤退するかは、どのアジア太平洋諸国にもわからない。しかし、この悲観的な見通しはすでに地政学上の予測に組み込まれているのである。
記事参照: Trump’s troop withdrawals are forcing Asia to contemplate a post-US future, particularly in the South China Sea

3月13日「米空母のダナン寄港と米越の戦略関係の将来―中国南海研究院非常勤研究員論説」(South China Morning Post, March 13, 2020)

 3月13日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、中国南海研究院非常勤上席研究員で海洋政策問題研究の第一人者であるMark J. Valencia博士の “Why the US-Vietnam Strategic alliance in the South China Sea is likely to last”と題する論説を掲載し、文化も、思想も政治制度も世界観も異なる米越2国間関係は対「中国脅威」の一点のみで結びついているが、両国の信頼関係は醸成しておらず、米国の思惑とは異なり、米越の戦略的な関係は長続きしないだろうとして要旨以下のように述べている。
(1) 米国とベトナムは、文化、思想、政治制度、世界観の観点でなんらの共通点もないにもかかわらず、対「中国脅威」の一点で不可思議な同伴者となっている。しかし、中越関係に比して米越関係の信頼は深まっていない。南シナ海問題では中国と同様の主張を繰り返すベトナムの姿勢が、米主導の自由の航行作戦の遂行にとって弱点である。
(2)  3月初旬、米Theodore Roosevelt空母打撃群が、寄港地ダナンに向けてベトナムの領海を航行した。この行動は米越両国のハイレベル級防衛担当者のメンツを捨て、口を閉ざさせた。空母Theodore Rooseveltのダナン寄港は、南シナ海で中国の傲慢な態度が拡大している中で、関係諸国の戦略的関心が一致していることの象徴であった。要するに、米越両国はなんといっても不可思議な同伴者であって、現実の中身は両国の思惑や将来の構想のはけ口という点につきる。
(3) “中国脅威”への対抗手段として、米国政府は2017年『国家安全保障戦略(NSS)』のなかで、主権の尊重、公平かつ互恵貿易、法の支配の尊重を共有する新たな友好国との関係の拡大と深化を促進しながら、既存の同盟国や友好国へのコミットメントを拡大するとの戦略を打ち出した。この戦略は、「自由で開かれたインド太平洋」の壮大な構想を実施するものである。米国家安全保障担当補佐官H.R. McMasterによれば、自由で開かれたインド太平洋の中核となる原則は、航行の自由、法の支配、抑圧からの自由、主権の尊重、私企業の活動と開かれた市場、およびすべての国家の自由と独立である。他方、ベトナムは中国との南シナ海で領土や海洋空間を巡る対立があるために、ASEANにおける反中親米の最右翼の加盟国としてある種の監視員になりつつある。事実、ベトナムは米国の軍事プレゼンスを歓迎・支援し、同地域内での中国の影響力に対して米国が均衡を取るよう要請してきている。したがって、ベトナムは大国との関係について「多様化かつ多国間化」政策を表明し続けてきた。
(4) 米空母打撃群のダナン寄港をめぐる本音は、米越戦略関係の揺れの象徴のように見える。ベトナムは拘束を受けない軍艦の航行の自由という自由で開かれたインド太平洋の中核の部分を共有していない。ベトナムは、中国と同様に自国領海への軍艦の進入を長きにわたって規制してきた。とりわけ、ベトナムは最近の米国の艦艇による航行の自由作戦を直接の対象とした領海基線を設定し、事前通告制を採っている。西沙諸島周辺の領海で無害航行を実施する艦艇に求められる事前許可に対する米国の挑戦は、中国に対するだけでなくベトナムに対するものでもある。
(5) 今回の米空母Theodore Rooseveltのダナン寄港は、明らかにベトナムが事前通告を求めていないか、米国が事前通告をしていないか、それともその両方である。しかし、航行の自由に関連する法的解釈や政策の衝突は、両国間のより本質的な戦略的齟齬の兆候である。もちろん、両国には対中国を巡ってお互いを利用したいとの思惑がある。豪専門家Carlyle Thayerに言わせれば、平和と安定に寄与する限り、すなわち中国を抑止する限り、ベトナムの米空母打撃群のダナン寄港の承認は、ベトナムが米海軍のプレゼンスを支持するとの意思表明である。しかし、ベトナムと中国の航行の自由に対する立場はほぼ同じなので、中国に対する米海軍の南シナ海における行動、とりわけ航行の自由作戦はベトナムの海洋に対する主張や政策を徐々に害しつつある。
(6) ベトナムの思惑は、米国との防衛関係を強化することで中国のさらなる「嫌がらせ」を抑止することであり、一方で米国の思惑は軍事的に中国を抑止・封じ込め、同地域における米国の地域覇権を維持するために、在比軍港に代わるベトナム領内の港湾へのアクセスである。こうした両国の思惑は、両国の戦略的関係の基底にあるが、それが「中国脅威」以外に、米国との文化的、思想的、政治制度、あるいは世界観の一切の共通点をもたないベトナムの立場を問題化している。ベトナムと中国は、強固な政党間関係と経済関係を維持しており、生活スタイルにまで及んでいるようであるが、南シナ海紛争に関しては揺らぎ、緊張し続けている。ベトナムは反中・親米の立場を維持するかもしれないが、それは非常に心もとない。実際、越指導部は、永久に隣国であり、地域かつ世界大国として伸張している中国に対抗するために力が減退しつつある米国の側に立つことを本当の望んでいるかは疑わしい。越指導者は、北部と海洋で国境を接し、行動を予測することができない巨人、中国は常にそこにあり、他方で、米国の地域に対するプレゼンスは比較的変わりやすく、一時的なものであると考えている。さらに、越政府は一貫した非同盟政策である。事実、ベトナムの長期の政策は「3つのノー」、すなわち軍事同盟への不参加、ベトナム領内における外国軍駐留の拒否、他国と戦うために一国に依存しないである。
(7) 結論として、米国の思惑に関わらず、現下の情勢が一挙に変化することはないだろう。現に米越両国がお互いを信用し合うことはないし、理由はなんであれ、2国間の戦略関係が堅固で継続的な関係として構築されることもないだろう。今回のダナン寄港と米越間で芽生え始めたと思われる戦略的関係は、二国間の戦略的情勢が好転しているとはいえ、容易に霧散してしまいかねない見掛けだけの現実主義者の真似事に他ならない。
記事参照:Why the US-Vietnam strategic alliance in the South China Sea is likely to last

3月14日「ロシア、追加のAdmiral Gorshkov級フリゲート起工へ-デジタル誌報道」(The Diplomat, March 14, 2020)

 3月14日付のデジタル誌The diplomatは、“Russia to Lay Down Additional Project 22350 Stealth Frigates”と題する記事を掲載し、ロシアはSevernaya Verf shipyardと発注書を締結し、追加のAdmiral Gorshkov級フリゲートを同造船所で起工すると国防副大臣が発表したと報じている。
(1) ロUnited Shipbuilding Corporation傘下のSevernaya Verf shipyardは一連の追加のAdmiral Gorshkov級ミサイルフリゲートを起工するだろうとロ国防副大臣Alexei Krivoruchkoは3月12日にSevernaya Verf shipyardでの艦艇の進水式で発表した。Krivoruchko副大臣は「United Shipbuilding Corporation、特にSevernaya Shipyardとの間で締結された発注書は少なくとも今後10年間、造船所の能力を活用することを皆さんに請け負います。近い将来、我々は追加のフリゲートが起工されることを期待し、起工することになるだろう」と述べている。同副大臣は新造艦艇数や建造計画の詳細を示さなかった。しかし、副大臣は新造の水上艦艇はAdmiral Gorshkov級ミサイルフリゲートとなるだろうと明らかにした。
(2) 総数6隻建造予定のAdmiral Gorshkov級フリゲートは既に就役しているか、様々な建造段階にある。Admiral Gorshkov級フリゲートはロ海軍水上艦部隊と主力となるよう設計されており、打ちっぱなし型の対艦、対地巡航ミサイルを装備し、対潜ヘリコプターを搭載して、対空戦、対水上戦、対潜戦を遂行する多目的艦であり、主機としてCODAGを採用し、30ノット以上を出しうる。
記事参照:Russia to Lay Down Additional Project 22350 Stealth Frigates

3月14日「ロシア、追加のAdmiral Gorshkov級フリゲート起工へ-デジタル誌報道」(The Diplomat, March 14, 2020)

 3月14日付のデジタル誌The diplomatは、“Russia to Lay Down Additional Project 22350 Stealth Frigates”と題する記事を掲載し、ロシアはSevernaya Verf shipyardと発注書を締結し、追加のAdmiral Gorshkov級フリゲートを同造船所で起工すると国防副大臣が発表したと報じている。
(1) ロUnited Shipbuilding Corporation傘下のSevernaya Verf shipyardは一連の追加のAdmiral Gorshkov級ミサイルフリゲートを起工するだろうとロ国防副大臣Alexei Krivoruchkoは3月12日にSevernaya Verf shipyardでの艦艇の進水式で発表した。Krivoruchko副大臣は「United Shipbuilding Corporation、特にSevernaya Shipyardとの間で締結された発注書は少なくとも今後10年間、造船所の能力を活用することを皆さんに請け負います。近い将来、我々は追加のフリゲートが起工されることを期待し、起工することになるだろう」と述べている。同副大臣は新造艦艇数や建造計画の詳細を示さなかった。しかし、副大臣は新造の水上艦艇はAdmiral Gorshkov級ミサイルフリゲートとなるだろうと明らかにした。
(2) 総数6隻建造予定のAdmiral Gorshkov級フリゲートは既に就役しているか、様々な建造段階にある。Admiral Gorshkov級フリゲートはロ海軍水上艦部隊と主力となるよう設計されており、打ちっぱなし型の対艦、対地巡航ミサイルを装備し、対潜ヘリコプターを搭載して、対空戦、対水上戦、対潜戦を遂行する多目的艦であり、主機としてCODAGを採用し、30ノット以上を出しうる。
記事参照:Russia to Lay Down Additional Project 22350 Stealth Frigates

3月15日「インド太平洋での米国の不安定な振る舞い―米専門家論説」(East Asia Forum, March 15, 2020)

 3月15日付のAustralian National UniversityのCrawford School of Public Policy のデジタル出版物EAST ASIA FORUMは、米シンクタンクWilson CenterにあるKissinger Institute on China and the United Statesの名誉創設者であるJ Stapleton Roy元大使の“Whither the United States in the Indo-Pacific?”と題する論説を掲載し、Trump米大統領の奔放な振る舞いにより、インド太平洋という構想を米国は活かし切れていないとして要旨以下のように述べている。
(1) Trump政権は過去3年間、インド洋地域とアジア太平洋を結ぶ戦略構想の概要を述べてきた。このように政策の焦点を拡大することは、インド洋地域の重要性を強調するだけでなく、中国を米国の主要な戦略的競争相手と見なしているこの政権の政策の枠組みにインドを取り込むことになる。
(2) しかし、Donald Trump大統領がこの政策の枠組みの中に縛られることを無責任に拒否しているため、インド太平洋の概念は米国政府にとって限定的な効用となっている。このことは大統領が多国間協定よりも2国間協定を好むこと、貿易赤字への敵意、米国の同盟国が相互防衛の重荷をより多く負担すべきだという信念、首脳外交への偏愛、そして、権威主義的な指導者たちとの関係を育む一方で同盟国を批判することを進んで行う姿勢にも反映されている。政策的取り組みとして信用されていない関与によって、米国の政策コミュニティの大部分は、中国の台頭を制限するための好ましい方法として、対立することを怠っている。
(3) このような背景から、Trump政権は中国の台頭に関連した2つの重要な戦略的問題に適切に対処していない。1つ目は、西太平洋における軍事バランスの変化である。2つ目は、米国の台湾との関係の問題である。
a. 中国の軍事近代化の急速なスピードは、すでに西太平洋における米国の空と海の優位を蝕んでいる。このことは、米国に極めて重要な戦略的選択を示している。すなわち、西太平洋における空と海の優位を維持しようとするのか?それとも米中間の持続可能な軍事的バランスを追求するのか?である。前者の場合代替案を検討しないことで、Trump政権は軍拡競争を選択していることになる。後者の場合、米国は、中国の威嚇的行動を抑止し、同盟の義務という信頼性を維持するのに十分な西太平洋における軍事プレゼンスを維持する必要がある。
b. 台湾については、北京は台湾を「1つの中国」の枠組み内に収めるために軍事力を行使する用意があることを繰り返し明言してきた。台湾が完全に自治を行っている現状を考えると米国は1つの中国の枠組みに基づく現状の維持に強い国益をもっている。Trump政権はこの枠組みを支持してきたが、その行動は完全には一致していない。
(4) Trump大統領の1期目の任期の終わりが近づいているが、この政権はこの地域での経歴に多少の問題を抱えている。中国との貿易戦争は一時的に制限されているが、解決には至っていない。北朝鮮の核問題は依然として燻った火薬庫となっている。韓国と日本の関係は不穏なまでに悪化している。この政権は環太平洋パートナーシップ協定を拒絶することで、地域貿易を規制するための多国間のルールや制度を確立する上での米国のリーダーシップの役割を放棄した。また、特に非軍事分野での地域的関与に対する米国の確固たる義務に対する疑念も払拭されていない。そして、中国でのコロナウイルスの大流行は、見通しに新たな不確実性をもたらしている。
(5) ポジティブな側面では、1 月に「第1段階」の中国との米国の貿易協定が調印されたことで、少なくとも 11 月の米大統領選挙までの間、中国との貿易危機を回避するための土台ができあがった。もしこの停戦が成立し、北朝鮮が核実験や長距離ミサイル実験を再開せず、Trump政権が台湾との関係で不注意にレッドラインを越えなければ、政権は安堵のため息をつくことができるだろう。しかし、これから数年の間、地域問題に対処するための安定した基盤が欠けている。
記事参照:Whither the United States in the Indo-Pacific?

3月16日「豪政府による対南太平洋『ステップ・アップ』政策―豪ジャーナリスト論説」(The Strategist, March 16, 2020)

 3月16日付のAustralian Strategic Policy InstituteのウェブサイトThe Strategistは、ジャーナリストで同Instituteで研鑽中のGraeme Dobellの“Six inquiries on Australia’s South Pacific step-up”と題する論説を掲載し、ここでDobellは南太平洋に対するオーストラリアの「ステップ・アップ」政策に言及し、豪政府がどのような領域について「ステップ・アップ」を進めようとしているのか、その政策に内在する問題点について要旨以下のとおり述べている。
(1) オーストラリアは現在、南太平洋の島嶼諸国との関係強化を目指した「ステップ・アップ」を推進している。課題は、そのステップ・アップがどの程度の高みまで到達するのか、どのような領域、形態がありうるのか、その優先順位はどうなるのかなど、様々である。現在進められているステップ・アップとして、6つの問題に関する見直しや調査が実施されている。
(2) そのうちの1つは国防に関するものであり、国防省の見直しはほとんど完了した。それは中国の力と影響力が想定よりも大きく、それが南太平洋にまで伸びていることへの脅威を強く認識している。南太平洋がオーストラリアにとって戦略的に決定的に重要だというのがその基本的評価である。
(3) 外務貿易省は、「新たな国際開発政策」に関する調査を実施中である。より具体的に言えばそれは「インド太平洋における安全保障、安定、繁栄、弾力性」を支援するものである。国防同様、南太平洋はオーストラリアの対外政策にとって決定的に重要であり、島嶼国家への支援はオーストラリア全体の最大の割合を占め続けることであろう。
(4) それとは別に、豪議会では、外務・国防・貿易に関する合同委員会で、以下の4つの問題に関する調査を実施している。
a. 太平洋島嶼諸国とオーストラリアの防衛関係。島嶼諸国のニーズや要求を把握し、また国防省とその他省庁との協同の段階の確認
b. 島嶼諸国との通商・投資の活性化。太平洋諸島経済緊密化協定(Pacer Plus)の潜在能力や、オーストラリアと島嶼諸国における貿易と投資に関する「見方、規範、文化的実践」と、その差異の調整などについての検討
c. 太平洋における女性・少女の人権問題。島嶼諸国におけるジェンダー平等や家庭内、性的暴力への対応における、市民社会グループの役割、またそれらグループにおける指導者の存在の重要性について検討、オーストラリアがそれにどのような支援を行いうるか。
d. 太平洋島嶼諸国とオーストラリアの関係強化。オーストラリアのステップ・アップ政策を政府全体として履行することの重要性、それが太平洋島嶼諸国のニーズを反映するものだということの確認
(5) こうした豪政府の方針に対し、太平洋島嶼諸国のなかには疑念の眼差しを向けるものもあるが、それは真っ当なことである。これまで、オーストラリアの南太平洋への関心には波があり、現在のところ、その波がただ高まっているだけなのかもしれない。以上に挙げた6つの見直しや調査は、現在の豪政府による南太平洋への関心の高さを示すものではあるが、それが今後維持されるかどうかは確実ではなく、Griffith UniversityのTess Newton Cainが指摘するように、今後、進められる政策や関心の量に質が追いつかねばならないだろう。
(6) 対外的には、豪政府が太平洋諸国に対して何をするかという問題があるが、ステップ・アップ政策には国内的な問題もある。それはすなわち、その政策を推進するうえで誰が主導権を持ち、資金を獲得するかという問題だ。その点において、政府関係者と、専門家や支援団体、NGOなどの間で分断が生じる。
(7) ABC放送で太平洋問題のレポーターを務めたことがあるStephen Dziedzicは、この分断について、気候変動問題を例に挙げて簡潔に説明した。気候変動問題はオーストラリアと太平洋諸国との関係のあり方について最も激しい議論が交わされ、時として個人攻撃の様相を呈することがある分野である。
(8) Dziedzicによれば、外交官や政治家は専門家たちを「ナイーヴ、イデオロギー的に頑固で、オーストラリアの国益にまったく無関心」な集団と見なし、他方で専門家たちは外交官らが父権主義的で地域文化に無関心であり、専門家を無視して太平洋諸国のニーズを正確に認識できていない、さらに太平洋島嶼部を地政学的なチェスのゲームのようにしか捉えていないと非難している。そしてジャーナリズムもしばしば「太平洋が良く、オーストラリアが悪い」という二項対立的な議論を行いがちだとする。
(9) 太平洋諸国との関係をステップ・アップさせていくためには、こうした国内的な分断も乗り越える必要があろう。今後多くのステップが踏まれねばならない。
記事参照:Six inquiries on Australia’s South Pacific step-up

3月16日「中国、伝染性疾病に対処するため浮かぶ病院を設計-香港紙報道」(South China Morning Post, 16 Mar, 2020)

 3月16日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、中国が伝染性疾病に対処する新しい「救急船」を建造するとして、要旨以下のように報じている。
(1) 中国はコロナウイルスの大量感染との戦いを支援するため浮かぶ病院の概念設計を完了した。コロナウイルスの患者や同種の伝染性の呼吸器系疾患に対処することができる「救急船(中文:急救船)」は中国国営の701研究院で設計された。701研究院はコロナウイルス大量発生の発生源である武漢にあり、艦艇の設計を行っている。「船は、新しい医療防護実施要領と人員、機材、燃料、空調、廃棄物と汚水の組み合わせをもってコロナウイルスのような未知の伝染性疾病に効果的に対処できる」と研究院の担当者はメディアに対して語っている。中国は、14,000トンの病院船「岱山島」1隻のみを保有している。同船は人民解放軍海軍が運用しており、同船は「和平方舟」の別名で主として海外での人道支援任務に当たっている。「岱山島」は約300床のベッドを保有し、これには感染症用の20床、検疫用の10床が含まれる。しかし、「岱山島」は非感染性の傷病に対する在来型の医療に焦点を当てており感染性疾病に対する特別な能力はない。
(2) 「新病院船が建造されれば、感染拡大の中で救出と同様に海外に対する医療支援も可能である。隔離機能の設計はモジュール化されており、艦艇にも装備可能である。新病院船の重要な性能は交差感染を防止するための検疫能力である。将来、艦艇に感染防止モジュールが加えられると考えている。洋上で感染性疾病が発生した場合、それ以上の拡散を防止するため患者は隔離モジュールに隔離することになるだろう」と香港を拠点とする軍事専門家宋忠平は言う。
(3) 計画チームは、武漢封鎖と厳格な自己隔離政策によって多くの問題を克服しなければならなかった。設計者達は、大量感染に対処するため武漢に10日未満で建設された2つの臨時病院からの教訓と各室および空間の区画を改善するため「ダイヤモンド・プリンセス」の感染のクラスターからの教訓を汲み上げた。最近の数週間、コロナウイルスのクラスターの連鎖によって工業は重大な損害を受けてきた。「もし、『浮かぶ病院』の設計がクルーズ船に適用できれば、大きなビジネス機会となるだろう」と宋忠平は言う。
記事参照:Coronavirus: China designs floating hospital to combat infectious diseases

3月16日「北極圏におけるロシアの軍事政策の動向―ロ安全保障専門家論説」(Eurasia Daily Monitor, March 16, 2020)

 3月16日付の米シンクタンクThe Jamestown Fondationが発行するEurasia Daily Monitorのウェブサイトは、同シンクタンク研究員で在キエフのInternational Center for Policy Studiesの準専門員Sergey Sukhankinの“The ‘Military Pillar’ of Russia’s Arctic Policy”と題する論説を掲載し、ここでSukhankinはロシアにとって北極海航路が重要であることを指摘し、その防衛強化を進めている動向について要旨以下のように述べている。
(1) ロシアが北極海航路の安全保障強化を進めている。2月28日、ロシアの国防相Sergei Shoiguは、北方艦隊(以下、NFと言う)が防空師団を新設したことを発表し、「北極海航路はいまや強固な防衛下にある」と述べた。彼によれば、北極海航路の防衛はNFだけの役割ではなく、ロシア空挺部隊、航空宇宙部隊、特殊作戦部隊の協同によって実施されるものである。2020年終わりまでにNFには多くの装備が追加されることになり、その中にはBorei級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦が含まれるだろう。
(2) 北極海航路の防衛強化は、以前から軍事専門家で超保守的な評論家であるAlexander Shirokoradによって繰り返し主張されてきた。彼は北極海航路の戦略的・地理経済的価値について指摘しつつ、米国などの西側諸国を北極圏に侵入させないことがロシアの主要目的だとし、その軍事力強化の重要性を訴えていた。
(3) 具体的に言えば、北極圏防衛のために4つの能力・部隊の強化が進められるであろう。ひとつめが防空・ミサイル防衛能力である。ロシア政府は、2020年終わりまでにコラ半島(ムルマンスク州)にレゾナンス・N・レーダーを2基設置すると発表した。それは弾道ミサイルや巡航ミサイル、超音速の飛翔体やステルス機を捕捉できる。軍事評論家によれば、北極圏の環境のために、もし北極圏で軍事的な衝突が起こるとしたらそれはこうしたミサイルなどによるものとなる蓋然性が高く、それゆえに防空・ミサイル防衛能力は格段の重要性を持つのである。
(4) 第2に、戦略航空軍である。ロシア側の情報源によれば、具体的に言えばそれはツポレフTu-160爆撃機の配備が考慮されている。それは核弾頭搭載可能な空中発射巡航ミサイルKh-101やKh-102を搭載可能であり、西側諸国に対する強力な軍事的脅威を与える。軍事評論家Aleksandr Frolovによれば、ロシアがそれをグリーンランドのチューレ空軍基地に発射したとすれば、米国はその攻撃を回避、防御することは不可能だという。
(5) 第3に強化すべきは輸送車両や歩兵戦闘車両(以下、IFVと言う)である。これはロ陸軍全体にとっても重要であるが、北極圏においては特にそうだと指摘するのは、ロ国防副大臣Aleksey Krivoruchkoである。彼はとりわけ、極北での作戦行動のために設計された新世代ロシア製IFVのRitsarに言及した。それは「北極圏における軍事作戦の、主要な地上ベースの装備」になることが期待されている。
(6) 最後は高精密兵器である。2017年、ロシアの南部軍管区に核弾頭搭載可能な空中発射弾道ミサイルKh-47M2 Kinzhalが配備されたが、ロシアはその運用可能範囲を北方へと拡大してきた。2019年11月半ばには、ロシアの北方、コミ共和国のヴォルクタ最北端に位置するペンベイ訓練場近郊で、MiG-31kがKh-47M2ミサイルを発射した。ロシア航空宇宙部隊はこの訓練について公式に論評していないが、これは、「北極圏におけるNATO軍の潜在的な増強」に対応したものと考えられている。
(7) 北極圏におけるロシアの軍事政策は、社会経済的、文化的、政治的な政策よりもはるかに確固とした、結果を先に見据えた道のりを進んできたのである。
記事参照:The ‘Military Pillar’ of Russia’s Arctic Policy

3月17日「コロナウイルス蔓延に伴いRIMPAC計画担当者が直面する厳しい事実-米ジャーナリスト論説」(The Diplomat, March 17, 2020)

 3月17日付のデジタル誌The Diplomatは、米国ハワイを拠点に活動するジャーナリスト Jon Letmanの“As the Coronavirus Spreads, RIMPAC Planners Face Grim Facts”と題する論説を掲載し、ここでLetmanはコロナウイルスの蔓延に伴うRIMPAC開催の能否について、これがハワイにもたらす経済的利益からも開催を強く推す声がある一方、世界的感染拡大の状況から反対の声も強く、予断を許さない状況にあるとして要旨以下のように述べている。
(1) 2020年夏、ハワイ周辺海空域で計画されている第27回環太平洋合同軍事演習(RIMPAC)が予定どおり開催されるには一つの大きな条件がある。SARS-CoV-2と呼ばれる新型コロナウイルスの世界的感染拡大が生起しており、大規模な行事のキャンセルや移動の制限など、前例のない大規模な混乱が増加しつつある。学校閉鎖により7億人以上の児童生徒が影響を受けているほか、国際会議などの大小様々なイベントもキャンセルされており、健康上の問題に加え、ビジネスの停滞、金融市場の急落も懸念される中、東京オリンピック(まだキャンセルされてはいないが)などのイベントの計画者は、規模の縮小、延期の検討などを迫られている。6月下旬から8月上旬にかけて開催が予定されている今回のRIMPACの計画者にとって、そのタイミングには特に注意が必要である。
(2) USNIニュースは、米太平洋艦隊司令官John Aquilino大将がコロナウイルスの蔓延にもかかわらずRIMPAC 2020の準備は順調と述べたと報じている。このことはコロナウイルスに対応して共同軍事演習の規模が縮小、ないしは中止された欧州、中東、アフリカとは対照的である。Aquilino司令官は今般のRIMPACの実施に際し、米海軍艦船乗員とその家族が健康を維持し、この疾患によって米海軍の能力が制限され、即応性が損なわれることがないよう、適切な予防策が講じられると述べたとされている。米海軍第3艦隊副広報担当官Rochelle Rieger大尉も「RIMPAC 2020参加者の健康、安全が最優先」として、「計画担当者と医療関係者はコロナウイルスの世界的な状況を引き続き注意深く監視し、適切な緩和策を講じてウイルスが米国や参加各国に蔓延することを防止する」と語った。
(3) しかし、この間にも米軍内のCOVID-19感染事案が生起している。ノースカロライナ州のキャンプで海兵隊員が陽性反応を示したほか、在韓米軍では少なくとも9件の感染事案が確認されている。米陸軍は、軍人とその家族に対し韓国及びイタリアとの往来停止を停止すると発表した。また、欧州陸軍司令官も自らの感染可能性を考慮し、自発的に隔離の措置を取るなどしている。そして3月14日には、Mark Esper国防長官も軍人及び家族の移動を60日間禁止することを発表した。
(4) こうした世界的感染拡大の懸念の一方、RIMPACがハワイ経済に多くの利益をもたらすという側面も無視はできない。RIMPACの経済的影響を正確に見積もることは困難であるが、Chamber of Commerce HawaiiのCEOのSherry Menor-McNamaraは、米海軍補給支援コマンドとハワイ州ビジネス・経済開発・観光局による推定として、2014年のRIMPACはハワイ州のビジネスに6,700万ドル相当の利益を生み出したと指摘している。2018年も同様の数値が報告されており、「RIMPAC 2020も同レベルの経済規模が期待される」とMcNamaraは述べている。McNamaraはまた、「RIMPACは米海軍と地域の同盟国及びパートナー諸国にとって重要な訓練の場」であり、その機会が失われることも懸念されるとして「人道支援/災害救助訓練は平和と繁栄に資するものであり、特にこのハワイにおいて重要な商業の自由につながる安全と安定を確保し、地域全体の国際協力と信頼を育む重要なもの」と述べている。また、Kirk Caldwellホノルル市長もこれに呼応して、「ホノルル市は世界中からオアフ島でのRIMPAC演習に参加する軍関係者を常に歓迎する」として、RIMPACは国際協力、多様性、相互理解など「米国及びハワイのコミュニティにとって不可欠な安全保障協力」と経済へのプラスの影響を促進すると強調している。
(5)  Honolulu’s Office of Economic DevelopmentエグゼクティブディレクターのEd Hawkinsも、RIMPACがオアフ島の税収にもたらす多大な経済効果に言及しつつ、「CDC(米国疾病予防センター)のガイドラインに従うだけだ」と述べている。すなわち、大規模行事の実施には制限があるかもしれないが、「プロトコルが守られている限りそれについての懸念はない」ということである。また、ハワイ大学の熱帯医学微生物学研究機関であるthe John A. Burns School of Medicine Biocontainment Facility所長Vivek Nerurkar教授も「6週間後には状況が大きく変わるだろう」として、RIMPACのスケジュールが確定されるまでに世界の状況を見極める余裕はあると述べている。さらにNerurkar教授は軍艦よりむしろハワイに寄港するクルーズ船の脅威を懸念しているとも述べている。
(6) 一方、1893年に米国に打倒されるまで独立王国であったハワイでは、RIMPACを継続的な征服の一形態であり、歓迎できないハワイの軍事化であると見なす傾向もある。2003年のイラク戦争に抗議して退役したAnn Wright元米陸軍大佐は、RIMPACの開催を「挑発的」であると断じ、「米軍の国内移動に制限がある時に外国軍隊のハワイ訪問を許可することは無責任」と述べたが、David Ige知事のオフィスとハワイの保健省は、このコメントの要求には応じなかった。
(7) 多国間訓練と新装備のテスト、国際交流による戦術技量及び相互運用性の向上、多国籍任務部隊の指揮統制の検証から訓練参加部隊によってもたらされる数千万ドル規模の経済効果まで、RIMPACが中止になった場合の影響は計り知れない。しかしまた、世界中で17万人以上が感染し、140カ国で少なくとも7千人の命を奪い、さらに拡大しつつあるパンデミックとの戦いという厳しい事実は、RIMPACプランナーがこの演習を開催するためには、さらに長く厳しい検討を要するということを示唆している。
記事参照:As the Coronavirus Spreads, RIMPAC Planners Face Grim Facts 

3月18日「ASEANの中で南シナ海に関して権利主張国は互いに味方でも敵でもない―中国専門家論説」(South China Morning Post, 18 Mar, 2020)

 3月18日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、中国南海研究院の助理研究員丁鐸の“In disputed South China Sea, Asean claimant states are neither friends nor foes”と題する記事を掲載し、ここで丁鐸は南シナ海に関し主権を主張しているASEANの国々は、中国が相手であることは共通であるが、それぞれの主張を抱えているため互いに味方でも敵でもないとして要旨以下のように述べている。
(1) 過去10年間、フィリピンは中国を南シナ海での最大の挑戦者と見なしてきた。しかし、フィリピンは他の権利主張国について中国が共通のライバルであることを認めてはいるが、自国が問題としている海域に隣国が干渉することを拒否しようとした。2019年3月初め、フィリピンは外交文書を国連事務総長に送り、マレーシアが南シナ海において大陸棚を基線から200マイルまで拡大しようとする提案を検討しないよう要求した。比政府は、2019年12月に提出されたマレーシアの主張はフィリピンの大陸棚と重複していると指摘した。これには、フィリピンが主権を有するカラヤアン群島と北ボルネオの一部が含まれている。フィリピンが国連のCommission on the Limits of the Continental Shelf(大陸棚限界委員会:以下、CLCSと言う)にマレーシアが主張を提出することを拒否するように要請したことは、これが初めてではない。 2009年、フィリピンはマレーシアとベトナムによる共同提出に抗議した。南シナ海における海域の管轄権を巡って各国の主張は食い違っている。この海域には毎年3.4兆ドル相当の価値の資源があり、不信と緊張の元となっている。紛争を管理するための多くの努力にもかかわらず、解決は行き詰まっているようである。その一方で、フィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシアは、中国の主張に抗議するために団結し、中国の立場が国連海洋法条約を含む国際法に違反していることを指摘した。中国政府は、南シナ海の「九段線」内の4つの諸島の主権とさまざまな形の海上管轄権を主張している。
(2) 各権利主張国には、それぞれ海域と海底に関し独自の主張がある。2009年5月、マレーシアとベトナムは、南シナ海の南部に関し主張をCLCSに共同提出した。ちょうど1日後、ベトナムは自国のみで南シナ海の北部に関する部分的な主権の主張を提出した。この領域でもフィリピンと中国は争っている。2019年12月、マレーシアは南シナ海において大陸棚を拡張するための主張を提出した。大陸棚を拡張するという主張のないフィリピンと中国は、マレーシアとベトナムが共同して、または個別に提出した主張にそれぞれ抗議した。CLCSの規則によれば、CLCSは紛争が最初に解決されるまで、紛争の当事者である国によって行われたいかなる主張も考慮しない。したがって、CLCSは、領土及び海洋の主張について異議が唱えられた場合、南シナ海の沿岸国により提出された主張の検討をさらに延期する可能性がある。フィリピンは国連に提出した文書において、マレーシアの主張に対する中国の拒否を却下し、南沙諸島のすべての島の主権の根源は12海里の領海のみにあり排他的水域や大陸棚にはないと認定した2016年のハーグ国際司法裁判所への明確な支持を示した。2016年7月、ハーグ国際司法裁判所はフィリピンに圧倒的に有利な仲裁裁定を下した。中国が主張した根拠は無効であると主張した。フィリピンは過去3年間、中国との2国間会議での決定を求めていないが、フィリピンは中国に対する裁定は拘束力を持つということを国際舞台で主張し続けている。この裁定は、南シナ海でのフィリピンの主張と行動に対する支持するものとして、南沙諸島のパグアサ島での新たな上陸用スロープの中国による建設などに関しても引用された。他の申立国もハーグ国際司法裁判所の裁定に基づいた海洋活動を行っている。Vietnam Society of International Law(ベトナム国際法協会)が2019年10月にChinese Society of International Law(中国国際法学会)に宛てた書簡の中で、ベトナムは隣接する海域での石油及び天然ガス掘削事業の法的根拠としてこの裁定を挙げた。
(3) 2020年1月、インドネシアは自国が支配するナツナ諸島の近くで中国の漁船と海警船を発見し、中国に激しく抗議した。中国とASEAN諸国がこの問題にどのように対応するかはまだ分からないが、南シナ海に関するハーグ裁定以後の論争の進展を見ると、この裁定が状況に及ぼす影響を見逃すことはできない。ハーグ裁定は南シナ海では短期的には緊張を高め、ASEANの行動規範交渉に障害を生じさせたが、長期的には関係国の間での海洋協力と沿岸国間の政治的信頼性向上に影響を与える可能性がある。
記事参照: In disputed South China Sea, Asean claimant states are neither friends nor foes

2020年3月「ロシアと中国、急拡大する同盟―米専門家論説」(Proceedings, March 2020)

 US Naval Institute Proceedings3月号は、U.S. Army War College’s Strategic Studies Institutenの元Russian national security studies教授Stephen Blank博士の“China and Russia: A Burgeoning Alliance”と題する記事を掲載し、ここでBlankは中ロ同盟の構築に最大限の危惧を示し、要旨以下のように述べている。
(1) ロシアと中国の複雑な関係は、今や敵対から相互支援と友好へとシフトした。ロシアと中国は同盟関係とはなれないとの多くの識者の見解に反し、2019年10月にロシアのPutin大統領が同盟を宣言したことから、2020年には条約が結ばれるかもしれないとの見方が多くなってきた。ロシアのLavrov外相は 2019年のCouncil on Foreign and Defense Policy(SVOP)集会で「中国政府とのパートナーシップは相互に有益であり、対米問題を解決する方策を有効なものとする」と述べている。両国の関係にどのような名称を付けようとも、その狙いとするところは、互いを害さない行動歩調をとることにあるだろう。ロシアの識者の間では、NATOのような同盟を否定する向きがあるが、帝政同盟に近いものとなる、殊に軍事ではとの予想がある。中ロの軍隊間の人事交流は以前から続けられてきた。これまで3,600人の中国軍人がロシアの軍事アカデミーを卒業している。両国の間では武器売買や技術移転も盛んである。中国のDF-17ミサイルはロシアの新極超音速ミサイルを複製したと見られている。防衛技術の相互開発もあり、2011年には共同兵器開発とメンテナンスを開始している。共同生産は輸出用Amur級潜水艦、GPSシステムなどに及んでおり、将来は大型軍用輸送機も期待されている。ロシアは中国に第5世代のステルス戦闘機Su-57の中国への輸出を開始している。
(2) 中ロは長年にわたって共同軍事演習を実施してきており、近年はシナリオと実施項目において着実に洗練されたものとなっている。2017年と2018年に実施された中ロ防空・ミサイル防衛演習では、米軍による北朝鮮侵攻阻止をシナリオとした共同作戦が演練されたと見られている。2017年に日本海で実施された中ロ海軍演習は、米海軍による朝鮮半島周辺でのシーコントロールに対抗する共同作戦であった証拠がある。中ロの共同演習には日本を仮想したものもある。2016年、ロ太平洋艦隊が人民解放軍海軍とともに尖閣諸島周辺海域を航行し、2017年にはロ軍機が中国軍による尖閣諸島周辺空域の飛行をサポートしていた。中ロによる日本の防衛態勢を調査するための飛行は2019年の1、3、11月にも実施された。中ロ海軍は南アフリカ海軍やイラン海軍との合同演習も実施しており、アジアを越え、中東、インド洋、アフリカにおけるパートナー構築を進めている。
(3) 10年前には、ロシアには明らかに極東における中国の軍事力の意図と能力に対する懸念があった。しかし今、中国に対する警戒感は忘れ去られている。ロシアの防衛政策は中国との同盟を前提として進められている。中ロの共同演習は洗練されたものとなり緻密で複雑な運用が試行されている。中ロの共同演習が作戦上の必要性というよりも政治的側面の方が強かったとしても、米国とその同盟に対する心理戦の形態として懸念を高めている。両国の海軍演習はそのスケールだけでなく質においても充実してきており、アジア太平洋における米国とその同盟国による演習と遜色ないものとなっているように見える。海空と宇宙との連携では米国の優位を脅かしつつあると言える。
(4) 中ロ両国は、一連の海軍演習によって個別的あるいは集団的な防衛態勢を構築してきた。攻撃力を前面に出した演習シナリオは、アジアにおける戦略バランスのシフトを印象付けるものとなっている。米国は依然として太平洋での軍事的優位を保ってはいるが、増強する中ロの海洋での共同演習は、多極化というよりもむしろ2極化の始まりを告げている。中国の海軍戦略は、米国と日本に対抗する海域拒否から第2列島線を越えた海域から日本海に至るまでのパワープロジェクション戦略に移行している。ロシアによる軍事技術移転がそれを可能なものとしている。ロシアとしては、中国の海軍能力増強によって西側諸国との対峙正面が陸上から海洋に移ることは戦略上望ましいことである。ロシアにとって中国の海軍増強は、西太平洋における米中対立を激化させ、米国の軍事力がそこに集中されることにおいてメリットがある。ロシアによる中国への武器提供は、中国による台湾封鎖も可能なものとしている。ロシアの学者であるArtyom Lukinは、中国が台湾に武力侵攻した場合、ロシアが外交・軍事の両面で支持することに疑いの余地はない、と断定している。「中ロ同盟は恐れるものでない」とする意見があるが、それは自己満足に過ぎず、誤解を通り過ぎて危険なものである。
記事参照:China and Russia: A Burgeoning Alliance

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書
(1) Strategy after Deterrence
https://www.csis.org/analysis/strategy-after-deterrence
Center for Strategic and International Studies (CSIS), March 11, 2020
James Andrew Lewis, a senior vice president and director of the Technology Policy Program at the Center for Strategic and International Studies in Washington, D.C.
3月11日付の米Center for Strategic and International Studies(CSIS)のウエブサイトは同所senior vice presidentでdirector of the Technology Policy ProgramのJames Andrew Lewiの“Strategy after Deterrence”と題する論説を掲載し、ここでLewiは米国に対するサイバー攻撃とその抑止について論じている。その中では、①核兵器とは異なり、サイバースペースは比較的低コストでリスクも低いため、新しい紛争の主要な舞台となっている、②核兵器と対照的に、サイバー「兵器」は日常的に使用されており、強力なサイバー戦力を保有して、傍観者の立場から相手を睨みつけても抑止力にはならない、③これを変えるには、関与が一番の方法であり、これは1度限りの行動ではなく、大規模なキャンペーンの一部であるべきもので、報復のリスクをどのように管理するかを計画する必要がある、④強力な軍事力を保有することは、それらを出し抜くための戦略を開発し使用するための相手の取り組みを考慮すると不十分である、⑤米国は、抑止力の受動性を捨て、相手の戦術を反映した低レベルの関与を持続的に行い、強制的効果を放棄することなく、エスカレートのリスクを最小限に抑えることが必要である、⑥これらのことは、現在の米国の体制では、大規模な改革がない限り、全くできないかもしれない、⑦相手に具体的な行動を見せて初めて、強制的な行動によって米国とその利益を害するリスクが大きいことを信じ込ませることができる、といった主張を述べている。
 
(2) Defining the Diamond: The Past, Present, and Future of the Quadrilateral Security Dialogue
https://csis-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/publication/200312_BuchanRimland_QuadReport_v2%5B6%5D.pdf
Center for Strategic and International Studies (CSIS), March 16, 2020
Patrick Gerard Buchan, the director of the U.S. Alliances Project and a fellow of Indo-Pacific Security at the Center for Strategic and International Studies (CSIS) in Washington, D.C.
Benjamin Rimland, a research associate with the Alliances and American Leadership Program at CSIS
3月16日付の米Center for Strategic and International Studies(CSIS)のウエブサイトは同所Patrick Gerard BuchanとBenjamin Rimlandの“ Defining the Diamond: The Past, Present, and Future of the Quadrilateral Security Dialogue ”と題する長文の報告書を発表した。ここで両名は、日米豪印安全保障対話(以下、The Quadと言う)に関し要旨以下のように述べている。
(1) 2007年に初の高級事務レベル会合が開催されて以来、日本、米国、インド及びオーストラリアのThe Quadは、地域の安全保障問題を議論する高級実務者会合として、また、海軍演習及び机上演習の基盤として、活動してきた。この4か国は、2004年のインド洋大津波への共同対応の際に初めてコアグループを形成した。この協力がThe Quadの実質的スタートとなったが、東アジア地域での安全保障環境の不安定化が長期間続いた結果、自由で開かれたインド太平洋の確保、テロに対する共同行動、法に基づく海洋ガバナンスの促進を中心に、4カ国の外交政策の収斂が進んだ。その結果、The Quadは2017年に再結成され、定期的に会合が開催されるようになった。The Quadのイデオロギー的、地理的基盤は、当初から日本の安倍晋三首相が構想していたが、安倍首相の「2つの海の交わり(Confluence of the Two Seas)演説」がグループ化の基礎となった。そして、The Quadを構成する4カ国のビジョンや思惑については、これまでにも、The Quadは中国の台頭を封じ込めるためのネットワークとなる「アジア版NATO」の起源を目指しているなどの憶測を生んでいる。
(2) そこでCSISの調査チームは、関係者への意識調査を通じて、The Quad諸国のエリート層の意見、特にThe Quadの使命と今後の活動についての幅広い概要を得ようと考えた。今回の調査では、4か国の戦略的エリートがThe Quadに参加し、地域の経済・開発支援を調整する役割を担うことが明らかになった。調査チームはさらに、オーストラリアがマラバール演習から除外されていることや、インドが明確な反中同盟への懸念を抱いていることなど、The Quad統合を進める上での障害を明らかにする定性調査を行った。そして調査チームは、CSISで行われた公開イベントで最終的な調査データを発表し、いくつかのパネルディスカッションを特集した。判明した事項は次のとおりである。
(3) 調査チームは問1として、「4者会合(定期的な閣僚級会合を含む)の政府首脳による常設年次会合をどの程度支持するか」と質問した。回答者は一般的に、日米豪印の各国政府首脳による年次定例会議と、政府首脳会議を補完する定期的な閣僚級会議の開催を支持している。インドと日本の戦略的エリートの80%近く、米国の戦略的エリートの100%、オーストラリアの戦略的エリートの100%が、年次首脳会議開催のアイデアに肯定的な反応を示した。インドの回答者は確かに「強く同意」には賛成票を投じなかったが、しかし、この調査結果は、インドがThe Quadの関係強化を促進することに反対するという通説が間違っていることを示している。調査結果は、4か国の一部の戦略的エリートが、より緊密な政策協調のために、より声高な中国批判を受け入れる用意があることを示している。
(4) 次に問2として「3年ごとに委員長が交代する常設のThe Quad事務局の創設をどの程度支持するか」を質問した。当然ながら、The Quadの制度化に対する反応はまちまちだった。4カ国の戦略的エリートからの回答は、質問1よりもはるかにバラバラであり、新事務局の設立に懐疑的な回答者もいた。ある回答者は「(限定的な武力衝突の発生のような)地域の安全保障認識に大きな変化がなければ、これは価値のある取り組みとは思えない。The Quadには小さな 「q」 を使用した方がよいでしょう」と回答している。The Quad の制度化に関する結果は、Huong Le ThuがThe Quadに対する東南アジアの姿勢を調査した際に指摘したASEANなど既存の枠組みが希薄化することへの懸念と合致する。
(4) 問3では「共同指揮下で日米豪印によって構成される常設軍事任務部隊の創設をどの程度支持するか」と質問した。この問題に関しては、インドとアメリカの戦略エリートの間には違いがあった。インドが主要な兵器システムを米国以外の兵器に依存し続けていることや、インドの戦略的思考における非同盟戦略の影響力が続いていることから、インドの回答者の否定的な結果は、事前に予測したとおりである。4カ国の中で最も軍事的に統合されているオーストラリア、米国、日本は、中国の重要なシーレーンをまたぐ3つの強力な海軍であり、このようなタスクフォースの中心的役割を果たすことは間違いない。われわれの調査に懐疑的な回答を示した戦略エリートたちは、そのような取り組みが「中国を挑発し、侵略を強めるだけだ」と懸念を表明している。
(5) 問4では、「借款、技術開発、インド太平洋地域全体の人権促進を含む地域経済・開発支援において調整的役割を担うThe Quadをどの程度支持するか」と質問した。常設の軍事タスクフォースの創設やThe Quadの事務局の立ち上げと比較して「柔和な」このイニシアティブには大きな支持が得られた。すでにインド・太平洋地域では、軍事分野と同様に、オーストラリア、ニュージーランド、日本、米国によるパプア・ニューギニアの電力網構築構想などの共同インフラ整備事業が進んでいる。
(6) 現在のThe Quadは、閣僚レベルで複数回会合を開催している。4か国は早期の高級事務レベル会合で、自由で開かれたインド太平洋を確保し、共同でテロ対策に取り組むことで一致している。The Quadは2017年の再スタート以来、ほぼ半年ごとに開催されているが、最終的な目的については、まだはっきりとしたものが定まっていない。The Quadは「非公式の」対話として存在し続けているにもかかわらず、中国はThe Quadによる封じ込めを非難している。今回の調査は、四か国から選ばれた「戦略的エリート」を対象に実施し、二国間で意見の相違が生じている重要な分野を特定した。例えば、マラバール演習から除外されたことに対するオーストラリアの不満などである。また、インド太平洋地域の共同インフラ開発プロジェクトで4か国が主導的な役割を果たしていることなど、今後の新たな道筋を示した。今回の調査では、4カ国の戦略的エリートの間で、「首脳会議がThe Quadのさらなる政治的潮流を生み出す効果的な方法である」という合意の可能性も示された。HA/DRとインフラ開発の共同イニシアティブも、共同の鍵となる分野として際立った。
(7) 長年にわたる中国の脅威の存在とその拡大を考えると、4カ国間の関係と4カ国が共有する中国への警戒心はかつてないほど緊密になっている。The Quadの真の試練は、各国の政党が政権を失った時に来るだろう。オーストラリア労働党が第1次のThe Quadを陥落させたように、第2次のThe Quadもまた、同じ脆弱性を抱えている。こうした困難性を乗り越えThe Quadをさらに発展させることが、インド太平洋地域における安全保障環境の安定の柱としてのThe Quadを維持するために不可欠である。