海洋安全保障情報旬報 2019年3月11日-3月20日

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3月11日「ドレッドノート(Dreadnought)級戦艦から現代のステルス技術へ:軍事技術の優位を求めて-米陸軍大学教官論説」(The Diplomat, March 11,2019)

 3月11日付のウエブ誌The Diplomatは米陸軍大学の上級講師兼非常勤教授Robert Farleyの“From the Dreadnought to Modern Stealth: Seeking Military Technological Superiority”と題する論説を掲載、ここで Farleyは軍事技術の拡散は当該技術の取得及び習得の容易さが大きく関係しているとして、要旨以下のように述べている。 
(1) どんな軍事技術が米国の敵にとって習得が一番難しいのか?Andrea Gillと Mauro Gillによる軍事技術の優位性に関する記事(関連記事参照)には、東アジアの軍事力バランスをどう考えるべきかについて革命的な内容が含まれているが、このコラムではこれに対し生産的な批評を行うものである。
(2) Gill兄弟は、多くの産業基盤から導き出された高い技術の防衛システムに関してしっかりとした主張を持っている。拡散している軍事技術の多くは、習得することがかなり容易である。また、Gill兄弟は国際社会が大きな関心を持っている巡航ミサイルや弾道ミサイルの技術拡散について多くを語っている。この種類のシステムは先進国では入手しやすい。
(3) Gill兄弟は、英国からドイツがDreadnought型の戦艦を採用したことについて述べているが、その主張には当該技術を提供する国際的環境に関する考察が欠けている。英戦艦Dreadnoughtを作り出した技術革新は、基本的に造船に関するものであり、先端技術と言うよりもそれまでにあったさまざまな技術に少し手を加えて再利用することであった。(それはステルス技術においても同様である)「主砲のみの戦艦(副砲を撤去)」を作るという発想を持った国は英国が最初ではない。日本と米国が先にそのような考えに到達したが、建造するのが英国よりも少し遅れただけである。Dreadnought建造によく似た現代の例は精密誘導兵器である。それはすでにある技術の組合せによるものであり、中国はステルス技術よりも効率的に習得したと考えられる。
(4) 技術に注目しているものの、Gill兄弟は技術拡散に関する法的な障壁については語っていない。輸出規制、知的財産の保護、技術拡散防止条約という三点には注目すべきである。技術拡散防止条約は、技術拡散に関する技術的な障壁が高くないために存在する。輸出規制は、私企業や第三国による自由な拡散を阻止し、全般的に中国やロシアのような国々が米国の行動な軍事技術にアクセスできないようにする。知的財産保護の法律は幅広い技術過程を不正な取得から守る。これにより競争に必要な産業基盤の重要な要素へのアクセスを制限されるので、中国のような二番手の国が米国のような一番手の国に追いつけないようになるであろう。
(5) Gill兄弟は、軍事技術拡散の面での武器貿易の重要性について詳細には論じていない。大国でも武器を売買する。武器貿易は、先進兵器技術の合法的な貿易である。これによる技術移転は、西側のアナリストたちが注目しているサイバースパイよりも軍事技術を効率的に拡散している。要するに、あるタイプの技術拡散は、先進技術を集めることの困難さのため起こり(または起こらず)、またあるタイプの技術拡散は各国が自由に自国資源を特別な目的のため使用することができるために起こる(または起こらない)。ステルス技術は前者に該当するが、Dreadnought級戦艦(もしくは全通甲板型の空母)がどれにあたるかは不明である。しかし、巡航ミサイル、弾道ミサイル、化学兵器、そして核兵器さえもが「自由な」技術拡散という範疇にあてはまることは明らかだろう。
記事参照:From the Dreadnought to Modern Stealth: Seeking Military Technological Superiority
関連記事:Andrea and Mauro Gilli on Why China Can't Steal Its Way to Military-Technological Superiority(The Diplomat, March 6, 2019)

3月11日「次の大戦は北極で行われるか-米ジャーナリスト論説」(The National Interest, March 11, 2019)

 3月11日付の米隔月誌The National Interestのウェブサイトは、同誌防衛問題編集員David Axeの“Could the Next Big War Take Place in the Arctic?”と題する論説を掲載、ここでAxeは北極では温暖化による海氷の衰退に伴い資源、海上交通路の支配を巡る対立が激化し、その中で米国は備えに後れを取っていると警告する米議会調査局の報告を引用し、要旨以下のように述べている。
(1)北極地域は暖かくなりつつある。氷は薄くなりつつある。北極を通る航路はより広く開かれつつある。炭素に集中した人類がもたらした何世紀にもわたる工業によって引き起こされた変化は軍事的含意を持つかもしれないと2019年3月の議会調査局(以下、CRSと言う)の報告書は説明している。「過去10年以上の北極での海氷の広がりの低い記録は、科学的、政治的関心を世界的な気候変動と数十年以内に起こると予想される海氷のない季節との関係に集中させてきた。これらの変化は、米国内の気象、北極における鉱物及び生物資源へのアクセス地域の人々の経済と文化、国家の安全保障に影響を及ぼす可能性がある」とCRS報告書は述べている。
(2)「北極沿岸国の一部、特にロシアは極北における軍事力のプレゼンスを強化する意図を表明し、行動を取ってきている。米軍、特に海軍と沿岸警備隊は彼らの計画と行動において北極への関心をより払うようになり始めてきた」とCRS報告書は述べている。資源を巡る争いは地域の軍事化を引き起こす。「北極地域でますますアクセス可能となる石油と天然ガスの埋蔵量に対する主権的管轄への希求にある程度動機づけられたカナダ、ロシア、ノルウェー、デンマークの北極沿岸国4ヶ国は国連大陸棚限界委員会へそれぞれの拡大した大陸棚の外側について上申書を提出し、あるいは提出の準備をしている。2007年8月、ロシアの潜水艇はカプセルに入れたロシア国旗を推定北極点の海底に置いた。この行動は世界中の注目を引いた。しかし研究者は、この行動北極の海底及びその上の海域に対する公の権利を主張するものではなく、法的効力を持たず、したがって象徴的なものであると述べている。
(3)「科学者は、今後数十年の内に世界の温暖化はカナダ北方諸島の大浮氷群を減衰させ、夏季に北西航路として知られる北極回りの航行を十分可能にする。このような交通の見通しは、管轄権の問題を提起する。オタワは、そのような海上交通路は内海であり、したがってオタワの監視、規制、統制の対象となるカナダの主権下にある地域であると主張している。米国、EU、その他の国々はその交通路は2つの公海をつなぐ国際海峡を構成すると主張している」とCRS報告書は指摘している。米加は、ビューフォート湾における2国間国境画定協定を交渉中である。米ロは、1990年にベーリング海の係争地域について合意に署名した。米上院は1991年に批准したが、ロ議会は未だ承認していない。デンマークとカナダは小さな、不毛の岩だらけのハンス島(グリーンランドとカナダのエルズミーア島の間にある)の領有を主張している。「北西航路が創出されるのに十分な北極の氷の融解があれば、将来の海上交通路の支配を巡って両国が競い合っていると一部の研究者は考えている」とCRS報告書は説明している。
(4)北極圏国の砕氷船に対する投資は北極の資源を争う彼らの意図を反映している。北極の温暖化はまもなく氷結しない夏をもたらすかもしれないが、冬には氷は戻ってくる。ロシア政府は22隻もの砕氷船を運用している。これには何隻かの大型原子力砕氷船が含まれる。中国も北極での行動能力を持つ砕氷船「雪龍」を保有しており、2隻目が建造工事を終えようとしている。米国は後れを取っている。2019年初め、米沿岸警備隊はたった1隻の大型砕氷船を保有するだけで、中型砕氷船も1隻しか運用していない。大型砕氷船は信頼性が低く、機械的故障を起こしがちである。何年かの遅れの後、2019年1月に議会は最終的に1隻の新砕氷船建造予算6億5,500万ドルと追加で2隻目用の納入までに時間のかかる部材の調達経費2千万ドルを承認した。新砕氷船がすぐに就役するわけではない。全世界での気象パターンの変化と不安定化に加え、温暖化した北極はますます軍事力を強化する北極圏国間の激しい争いを促進するかもしれない。
(5)もちろん戦争が不可避なわけではい。しかし、「北極の問題について重要な国際的協調があるにもかかわらず、北極では安全保障問題が引き起こされる可能性があると一部研究者から見られている」として、米政策立案者は注意しなければならないとCRS報告書は警告している。
記事参照:Could the Next Big War Take Place in the Arctic?

3月11日「米ASEANパートナーシップフォーラムにおける討議の概要―Pacific Forum報告」(Pacific Forum, March 11, 2019)

 米シンクタンク、Pacific Forum は、インドネシアのシンクタンク、The Habibie Center との共催で、2月11~13日の間、ジャカルタで、The United States-ASEAN Partnership Forum(関連記事参照) を開催した。同フォーラムには、約70人の米国と東南アジアの外交専門家や有識者、そして米国務省のYoung Southeast Asian Leaders InitiativeやPacific Forum のYoung Leaders Programから若手研究者らが参加した。以下は、フォーラムにおける討議の概要である。
(1)米国のインド太平洋戦略におけるASEANの役割の重要性は、言うまでもないことである。ASEANは、この地域の主役であり、「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを具体化するためのプラットホームとして、ワシントンにとって不可欠の役割を有している。ASEANは、米国経済にとって重要な、ダイナミックで、多様で、かつ高い経済成長地域である。他方、ASEANにとっても米国は重要である。ASEANの中心性(ASEAN centrality)に対するワシントンの支持表明は、地域の安全保障アジェンダを具体化する上で、ASEANが引き続き主導的役割を果たし続け行くためには不可欠である。安全保障分野における能力構築イニシアティブを含む米国のプレゼンスは、どの大国も東南アジアを支配し、域内の諸問題を左右することができないことを意味する。米国はASEANの経済分野において重要な役割を果たしており、ASEANに対する累積投資額は2,700億ドルを超えており、これはアジアの4つの経済大国―中国、日本、インド及び韓国に対する投資額より大きい。
(2)ASEAN各国の異なった脅威認識、アセットと能力の欠如、そして当該国内省庁間の調整不足によって、南シナ海におけるグレーゾーン事態対処の難しさが増している。ASEAN各国は、米国の域内におけるプレゼンスと再保証を歓迎しているが、米海軍単独での「航行の自由作戦」の効果については依然、過小評価している。ASEAN加盟の南シナ海沿岸国の海洋問題に関する主たる関心は、国際法の下で認められた沿岸国の法的権限―すなわち、自国のEEZと大陸棚における石油、天然ガス及び漁業資源に対する自由なアクセス権にある。ASEANと米国にとって、海洋安全保障における「法の支配」について、共通の認識と相互に認め合う優先順位を生み出していくことが重要である。南シナ海における中国の活動、特に国際法に違反し、域内における誓約に反し、そして地域の現状を混乱させる強圧的で一方的な措置に適切に対処する上で鍵となるのは、情報の共有である。
(3)米国のASEANにおける日本とオーストラリアとの協力は重要である。日米両国は、調整された援助政策を通じて、ASEAN加盟国の主権と政策の独立性を損ねる、中国の高利の借款とインフラ計画に対抗し得る、別の選択肢を提示することができる。日米同盟は、東南アジアにおおける安定を促進する上で、未だ十分に活用されていない機構である。非伝統的安全保障分野におけるASEANの能力構築と「法の支配」を促進するための日米の協調的努力は、ASEANの役割を強化する上で役立つであろう。
(4)東南アジアに対するインフラ投資に当たっては、米国が能力構築に重点を置き、アジア開発銀行が長期の低金利資金を提供するといった形で、相互に補完することが可能である。「東アジア地域包括的経済連携」(RCEP)と「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定」(CPTPP)は、ASEANにおける地域的な貿易の在り方を決める2つの重要なメカニズムである。これらは、いずれも米国を排除していることからASEANとより広い地域を経済的に結びつける方向に進むか、あるいは進化する地域の経済的アーキテクチャの枠外に留まる危険を冒すか、早晩、決断しなければならないであろう。ASEAN加盟国はこの地域における変化する貿易力学から利益を得ることができようが、こうした利益を現実のものにするためには、中国から移転されるビジネスとサプライチェーンを吸収する態勢を整えなければならないであろう。このプロセスを実現するために、ワシントンは、このための投資を促す環境を整える上でASEANを支援することができよう。この点で、米国のThe Better Utilization of Investment Leading to Development(BUILD Act)は、こうした方向への重要な措置である(抄訳者注:Trump米大統領は、2018年10月5日にBUILD Actに署名した)。
(5)米ASEAN戦略的パートナーシップを維持していく上で、人的交流は重要である。文化交流、専門的な訓練そして学位取得のために東南アジアの人々を米国に招請する計画は継続されるべきだが、同時に、若いアメリカ人をASEAN諸国に招請する計画も推進されなければならない。
(6)東南アジア諸国には、自国の政策決定権を堅持し、米中の戦略的抗争によって圧倒されるのを回避し得る自国の国家的抵抗力を構築すべきであるという点で概ね一致している。ASEANの意志決定に関するコンセンサス方式は、この地域機構をしばしば非効率にしている要因となっている。ASEAN加盟国に棄権する権利を認めることによって、ASEANは、域外勢力からの報復の恐れなしに、重要事項の決定を実現することが可能になろう。
(7)ASEANは、実質的な協力のためのプラットホームになるべきである。このためには、ASEAN加盟国とそのパートナー諸国の双方によって、協力メカニズムを増やし、強化していく必要がある。米国がASEANを「1つの集合体」と見なすアプローチを追求するなら、中国(そして日本)が域内の経済成長と開発のドライバーであり、一方米国が地域安全保障の独占的な提供者であった、もはや持続不可能なモデルを再評価することが重要である。2国間主義を重視する米国の姿勢は、東南アジアにおける問題対処において、もはや効果的ではない。一方でASEANの中心性を維持するとともに、「自由で開かれたインド太平洋」を実現するためのより適切な多国間のアプローチを開発しながら、他方で経済領域において米国を、そして安全保障領域において中国を如何に受け入れていくかについては、新たな思考が必要である。
記事参照:ASEAN Centrality and the Evolving US Indo-Pacific Strategy
関連記事:A Conference Report of the U.S.-ASEAN Partnership Forum(Pacific Forum, March 2019)

3月11日「北極海における米海軍の活動拡大方針が意味するもの―米北極圏専門家論説」(High North News, March 11, 2019)

 3月11日付、ノルウェー国立NORD UniversityのHIGH NORTH CENTERが発行するHIGH NORTH NEWSの電子版は、米シンクタンクThe Arctic Instituteの上級研究員Malte Humpertの“US Navy plans to send surface vessels through the Arctic”と題する論説を掲載し、ここでHumpertは、米海軍の北極海への艦隊派遣計画に見られる米国の政策の変化、また、それがもたらすであろう米露対立の可能性などについて、要旨以下のとおり述べている。
(1)米海軍は今夏、北極海への艦隊派遣を計画しているという。米欧州軍司令官であるCurtis Scaparrottiが言うように、気候変動による近年北極海の通行が容易になり、北極圏をめぐる資源や通商上の利益をめぐる各国間の競争が生まれた。とりわけロシアは北極海におけるプレゼンスを強化しているが、米国の艦隊派遣計画は、その政策がこの地域におけるロシアの影響力への対抗、その封じ込めへ変化することのシグナルかもしれない。Scaparrottiは「北極圏はわれわれにとって重要である」と強調している。
(2)米国は長い間、北極圏にあまり関心を払ってこなかった。ここ30年で米国艦隊が北極圏の海上を通行した唯一の例は、2018年10月、空母Harry S. Trumanと随行する艦艇がノルウェー沖で実施されたNATOの海軍演習トライデント・ジャンクチャーに参加したことだけであった。しかし、ワシントンDCにある無党派シンクタンクAmerican Security ProjectのChief Operating Officer であるAndrew Hollandは、「極北地域における米国の権利を強く主張するときが来ている」と指摘している。
(3)Scaparrotttiによれば、艦隊派遣計画は北極圏におけるロシアのプレゼンス強化への対応である。たとえばロシアは空港や軍事基地を拡大ないし再稼働させている。さらに最近の露メディア報道によれば、ロシアは北海航路を通行する艦隊に対して、ルートや船舶の情報を含めたさまざまな情報を45日前までに事前通告するよう要求するようになるとのことである。こうした方針は、アメリカが標榜する「航行の自由」や、南シナ海などで適用されている無害通航の概念と対照的なものである。北極圏は米露関係の悪化の原因となる可能性がある。ただし、Scaparrottiは、北極圏における軍事衝突のリスクは、少なくとも短期的には低いと主張した。
(4)米海軍による北極海の活動拡大が今後の方針になるとしても、北極海での米海軍の行動能力に対する疑問がある。米海軍は1970年代以降、氷海で運用可能な機能を備えた艦船を建造していない。それに対するロシアの北極海での運用能力は対照的である。今後北極海での氷が解けていくのだとしても、荒々しい北極海においては、特に小型艦の活動は困難である。2018年10月のトライデント・ジャンクチャー演習の際、アイスランドからノルウェーまでの航行中に小型のドック型揚陸艦が損傷し、帰港するはめになった。北極圏での米国の行動能力は、しばらくの間ロシアの後塵を拝し続けることになるであろう。
記事参照:US Navy plans to send surface vessels through the Arctic

3月12日「2019年2月のアジアにおける海賊行為と武装強盗事案に関するReCAAPからの報告―海運関係オンライン日刊紙報道」(Hellenic Shipping News, March 12, 2019)

 3月12日付のHellenic and International Shippingのオンライン日刊紙Hellenic Shipping Newsは、“ReCAAP: Three Incidents Of Piracy And Armed Robbery Against Ships In Asia In February 2019”と題する記事を掲載し、Regional Cooperation Agreement on Combating Piracy and Armed Robbery against Ships in Asia(アジア海賊対策地域協力協定、以下ReCAAPと言う)が報告した2月の海賊行為及び海上武装強盗の事案について、要旨以下のように報じている。
(1)2019年2月、アジアにおいては合計3件の船舶に対する武装強盗事案が報告された。事案は検証され、ReCAAP Focal PointsによってReCAAP ISC(ISC:情報共有センター)に報告されている。2018年2月に合計6件の事案が起きたが、2019年2月に報告された件数は50%減少した。
(2)2019年2月に報告された3件の事案のうち、1件は中国の曹妃甸の停泊地に停泊していた船中での事案、1件はインドネシアのべラワンの停泊地に停泊していた船中での事案、そして、シンガポール海峡で航行中の船中での1件である。2019年2月に報告された3つの事案はすべてがCAT -4事案である。(抄訳者注:CAT -4事案とは、ReCAAP が既遂事案の重大度を暴力的要素と経済的要素によって評価し、CAT -1 からCAT -4までのカテゴリー分けしたものの1つであり、「CAT-4 事案の半分以上は、襲撃者の人数が 1~3 人で、武装していない。襲撃者は乗組員に発見されれば、何も盗まずに直ちに逃亡する。盗難物品も、乗組員の負傷もない」とされている。2016年2月17日海洋情報特報「アジアにおける海賊行為と武装強盗事案の実態」を参照)。
(3)2019年1月から2月にかけて、合計6件の事案が報告された。すべてが、船に対する武装強盗の事案だった。2018年1月から2月までの期間と比較すると、報告された事案の総数は、2019年1月から2月までの期間で65%減少した。2019年1月から2月という期間の報告された事案の総数と実際の事案の数はどちらも、2007年から2019年の1月から2月までの期間という過去13年間の中でも最も少なかった。
記事参照:ReCAAP: Three Incidents Of Piracy And Armed Robbery Against Ships In Asia In February 2019

3月12日「ガス田採掘権を外国企業に提供するパキスタン―英通信社報道」(Reuters, March 12, 2019)

 3月12日付の英ロイター通信は、“Pakistan to offer gas fields to foreign explorers, investors: official”と題する記事を掲載し、国内に存在する豊富なガス田の開発のために、今後パキスタンがそれらを開発するための権利を外国企業に提供するとして、要旨以下のように報じている。
(1)過激派による暴力の急激な減少と開発政策への変化が、海外の投資家たちを呼び込むことをイスラマバードは期待し、パキスタンは、燃料不足を補うために来年には多数のガス田の採掘権を提供することを計画しているとある高官は述べた。
(2)1950年代までさかのぼるガスの発見にもかかわらず、鉱物資源が豊かな南アジアの国々の多くは未開発のままである。在来型ガスの埋蔵量は、20兆立方フィート(tcf)、すなわち5600億立方メートルと推定されており、手付かずのシェールガス埋蔵量は100tcfを超えている。イタリアのENIと米国の石油大手Exxon Mobilは、パキスタン側のアラビア海で沖合のガスを共同で掘削しているが、多くの他の西側企業は、イスラム主義の過激な暴力のせいで、10年以上前に去ってから戻って来ていない。
(3)Imran Khan首相のエネルギー改革タスクフォースを率いるNadeem Babarは、政府は、年内のライセンスラウンドとともに、天然ガス規制を改正し、初のシェールガス政策を策定していると述べた。政府は近年安全保障の向上を望んでおり、国の広範なパイプライン・ネットワークは投資家たちを引き付けるだろう。30以上の陸上のガスブロックが確認されており、政府は2019年末までに1から2回のライセンスラウンドでそれらの多くを競売にかけることを計画しているとBabarは述べた。
(4)石油省の年次報告書によると、パキスタンの国内ガス生産量は過去5年間で横ばいになり、2012/2013年の1.51兆tcfから、2017/18年には1.46兆tcfに落ち込んだ。これが深刻なガス不足につながっているが、パキスタンの人口は現在2億800万人で、同時期に急増しており、産業や新発電所からの燃料需要が高まっている。
(5)しかしLNGは費用がかかるため、イスラマバードは、外国企業が国内の開発を強化することを望んでいる。Babarは、パキスタンはまた、その最初のシェールガス政策を起草していたとし、それは、2020年の前半にライセンスラウンドがあるため、今年完成されるべきであると述べた。U.S. Agency for International Development(米国国際開発庁、USAID)による最近の調査によると、パキスタンのシェールガスの埋蔵量は、より低地のインダス地域だけでも100 tcf以上と見積もられており、現在の需要を少なくとも数十年間は満たすことができる。Babarによると、天然ガス生産を発展させるための鍵の1つは、投資家たちに手頃で信頼性のあるパイプライン・ネットワークへのアクセスを与えることである。
(6)Babarは、サウジアラビアのアラムコ、エクソンモービル、ロシアのガスプロムを含む関心のある企業により、オークションに出されるブロックは「多種多様で・・・優れたデータをもっていた」と述べた。パキスタンの広大な土地の約4%しか調査されておらず、発見される3つのうち1つの鉱泉の成功率は国際平均を上回っていると彼は述べた。Babarは、ENIとエクソンがガスを探している場所の近くで、少なくともさらに3つの沖合のブロックも区分けされたと述べた。
(7)安全保障上の懸念に対処するために、軍隊又は準軍事的組織が、パキスタンのより危険な地域を調査している企業を守るために創設され、それらの企業がその費用を支払うとBabarは述べた。彼はその例として、インフラプロジェクトである中国・パキスタン経済回廊(CPEC)を守るために設立された1万5千人強の軍隊を挙げた。
記事参照:Pakistan to offer gas fields to foreign explorers, investors: official

3月13日「環境破壊がもたらす人類へのリスクとその改善を訴える国連―シンガポール・メディア報道」(Channel News Asia, March 13, 2019)

 3月13日付のシンガポールのメディア Channel News Asiaのウェブサイトは、 “Environment damage behind 1 in 4 global deaths, disease: UN”と題する記事を掲載し、5月13日に発表された「グローバル環境概観」が提起した環境破壊のリスクとその解決策の内容について、要旨以下のとおり報じている。
(1)5月13日、ナイロビで開催されていた国連環境総会で「グローバル環境概観」(Global Environment Outlook:GEO)が発表された。その報告は、先進国における行き過ぎた消費や浪費、化学物質の利用による汚染が環境破壊を促進し、それがグローバルなレベルで経済に悪影響を及ぼし、豊かな国と貧しい国の格差をますます増大させていると述べる。
(2)GEOによれば、世界全体で見ると、寿命前の死亡や病気の4分の1が、環境破壊に起因するもので、2015年には900万人が、環境破壊が原因で命を落としたという。清浄な水を利用できないことで毎年140万人が命を落とし、また、海へ流出した化学物質は何世代も先の健康への悪影響をもたらす。超巨大農場経営や大規模な森林伐採による大地の劣化は、32億人もの人びとが住む土地で起きている。しかしこうした環境問題に対する関心や政治的合意は、温室効果ガスの影響に比べれば十分ではない。
(3)GEOは、人間の生活における解毒化について、「前例のない規模での緊急の行動が……必要である」と訴える。たとえば世界で生産された食料の3分の1が廃棄されており、それは温室効果ガス排出の主要因のひとつであるが、それは減らすことができる。GEO共同議長のJoyeeta Guptaによれば、2050年までに世界の人口は100億に到達すると予測されているが、それは現在の食糧生産が2倍必要であることを意味しない。廃棄を減らし、特に肉類の消費を抑制することが問題解決の一助となるであろう。
(4)GEOは、現在地球を覆っている環境破壊の責任が誰にあるのかを示唆するものではあった。したがって、先進諸国にとってGEOは歓迎せざるものであった。しかし限界もあった。英国の慈善団体Christian AidのMohamed Adowの指摘によれば、GEOは多くの危機や解決策を提示しつつ、根本的な原因や課題に直接言及することはなかった。彼は言う。「環境破壊や気候変動は、何を犠牲にしてでも終わりなき成長を追求してきた経済モデルによって導かれたのだ」と。現在の環境破壊、気候変動の根底には、国家間の不平等の問題が横たわっているのである。
記事参照:Environment damage behind 1 in 4 global deaths, disease: UN

3月14日「INF離脱後、米、新ミサイル開発に着手―米ニュース誌報道」(Foreign Policy, March 14, 2019)

 3月14日付けの米ニュース誌Foreign Policyは、同誌国防総省特派員LARA Seligmanの“U.S. Begins Work on New Missiles as Trump Scraps Treaty With Russia”と題する記事を掲載し、ここでSeligmanは米国がINF条約から離脱することを受け、新型ミサイル開発に着手したとして要旨以下のように報じている。
(1)INFからの離脱を受けて、米軍はこれまでであれば禁止されていた新型ミサイルの開発に着手した。この動きは欧州、アジア、さらにその他の地域で核弾頭を装備しないミサイルの競争の場を開くことになると言われている。国防当局者は3月13日に国防総省は2つの型の新しいミサイルの飛行試験を計画していると述べた。1つは射程約600Kmの低高度飛行の巡航ミサイルであり、もう1つは射程が約1,900から2,500Kmの弾道ミサイルであると当局者は匿名を条件に国防総省記者団に話した。同当局者は新型ミサイルの目的については言及しなかった。しかし、彼は現在実施中の作業はINF存続の可能性を排除するものではないとも強調した。米ロ両国は8月に正式に条約を終了する予定である。「ある方針を定めれば、あることができ、他の方針であれば他のことができる先行研究がある。それらは我々が下さなければならない決定である」と会計監査担当国防次官補Elaine McCuskerは3月12日の2020年度国防予算の説明に際し述べている。
(2)INF条約は、元々核戦争の危険を低減するよう計画されていたが、射程が500から5,500Kmの地上配備の通常弾頭のミサイルにも適用されている。重要なことは、この範囲の射程の非核弾頭のミサイルを大量に保有し、その保有数を増大させている中国がINFに加盟していないことである。
(3)新型ミサイルは開発の初期段階にあるが、軍備管理専門家は、これらミサイルはやがて欧州、あるいはそれ以外の地域にも配備されるだろうが、それは挑発的であり、また不必要であると懸念している。
(4)「INF条約がなければ、欧州やそれ以外の地域において新たなミサイル競争の危険が高まるだろう」とArms Control Association(軍備管理協会)の軍縮・脅威低減政策部長Kingston Reifは言う。米国は、ロシアが現有の9M729巡航ミサイル4個大隊に新たな部隊を追加しようとすることを阻止する「実行可能な計画」を現在、持っていないとReifは警告する。9M729巡航ミサイルは、米国とNATOの同盟国がINF条約違反と主張しているものである(抄訳者注:ロシアのロケット砲兵旅団長は9M729巡航ミサイルの射程は480Kmで条約に違反しないと主張している)。さらに、米国は同じロシアの新しい地上発射型ミサイルに脅威を及ぼすことができる空中発射型と海上発射型のミサイルをすでに配備できるのであるから、欧州に展開するためにミサイルを開発する「軍事的必要性はない」とReifは言う。
(5)新型ミサイルは配備されるのか、どこに配備されるのか、どれくらいの数が配備されるのかといったTrump政権内で、そして米国の同盟国と、詳細に議論する必要がある事項についてもっと情報を得るまでは新ミサイルの影響を推測することは時期尚早であるとCenter for Strategic and International Studiesのミサイル防衛計画部長Thomas Karakoは言う。「地上発射型ミサイルの存在や発想が本質的に不安定化するとは考えない。条約のその先に着くまでは使用するレトリックや形容詞、副詞は押さえたものにすることが重要だと考えている」とKarako言う。
記事参照:U.S. Begins Work on New Missiles as Trump Scraps Treaty With Russia

3月15日「米アメリカ(Ameria)級強襲揚陸艦3番艦起工-米海事関係ウエブサイト報道」(MarineLInk, March 15, 2019)

 3月15日付の米海事関係ウェブサイトMarineLinkは、“Ingalls Authenticates Keel of LHA 8”と題する記事を掲載し、米海軍のAmerica級強襲揚陸艦の3番艦が起工されたとして、その特徴を紹介しつつ要旨以下のように報じている。
(1)America級強襲揚陸艦Bougainvilleのキール据え付けと認証式が3月14日にthe Huntington Ingalls Industriesの造船部で行われた。伝統的にはキールの据え付けは艦船建造の第1歩である。しかし現在の新しいモジュール方式では、キールの据え付け儀式は艦船の建造ブロックを結合することと考えられており、艦船建造の主要な一里塚である。Bougainvilleの各ブロック内の艤装は2018年10月に開始された。
(2) Bougainvilleは強襲揚陸のためのウェルデッキを追加されるほか、America級強襲揚陸艦の設計にある航空機運用能力を維持されるだろう。ウェルデッキは海兵隊に必要なLCACを格納し、発進させることを可能にする。Bougainvilleに追加された項目には、統合打撃戦闘機(F-35B)とV-22オスプレイを搭載、運用するためのより大型の飛行甲板が含まれる。飛行甲板の拡張には小型化した艦橋構造物と追加された舷外張出し部も一部を担っている。
(3)「建造チームは着実に作業を進めており、我々は海軍と海兵隊に次世代の水陸両用戦能力を引き渡すことを楽しみにしている」とNaval Sea System CommandのProgram Executive Office shipにおける水陸両用戦計画部長Tom Rivers は言う。
(4)Huntington Ingalls Industriesは、1966年にIwo Jima級強襲揚陸艦Toripoli(LPH10)を建造以来、広い飛行甲板を有する水陸両用強襲艦の唯一の建造所である。アメリカ級強襲艦は、2番艦Toripoliが建造中であり、Bougainvilleは同級の3番艦である。
記事参照:Ingalls Authenticates Keel of LHA 8

3月16日「南シナ海で中国が企図する第3次世界大戦-米専門家論説」(The National Interest, March 16, 2019)

 3月16日付の米隔月誌The National Interestは、台湾国立政治大学客員研究員で元米海兵隊士官のKerry K. GershaneckとジュネーブのシンクタンクCentre for Security Policyフェローの元米海軍情報士官James E. Fanell退役大佐の “How China Began World War III in the South China Sea”と題する論説を掲載、ここで両名は南シナ海を巡る中国の挑発的な言動に対し米国をはじめとする関係国が「巻き返し」を図り始めているとして要旨以下のように述べている。
 (1)南シナ海の領有権に関する中国の主張は違法である。しかし、北京政府は強硬であり、その意を受けた者が米海軍艦艇に対する攻撃を公言するなど、まるで戦争を企図しているかのようにも思われる。しかし、一旦戦争状態になれば、それは南シナ海にとどまるものではなく、北京の体制変更にまで行き着く可能性がある。2018年12月8日、人民解放軍空軍退役大佐の戴旭は自身が代表を勤めるChina’s Institute of Marine Safety and Cooperationの公開セミナーで「米艦艇が中国の海域に侵入した場合、2隻の軍艦を派遣する必要がある。1隻はそれを制止し、もう1隻はこれを撃沈するためだ」と挑発的に述べた。また、12月20日には元中国軍事科学院の羅援少将が講演の中で、対艦弾道ミサイルによって2隻の米空母を撃沈すれば1万人を超える水兵を殺傷することになり、米国を恐怖させることが出来るだろうと述べた。人民解放軍高級幹部によるこうした好戦的な言辞は必ずしも中国政府の方針を反映したものではなく、単なる情報戦と解釈できるかもしれないが、しかし、いずれの者も「戦争を扇動」したとして懲戒を受けたという事実もない。したがって中国人民解放軍海軍は南シナ海全域においてより危険な方向に向かっているとも考えられるのである。
 (2)2018年9月30日、中国駆逐艦「蘭州」は南シナ海ガベン礁付近で米海軍駆逐艦Decaturの艦首を横切り45ヤードまで近接し、 Decatur艦長は「蘭州」の攻撃的な操艦から慎重な回避動作を取って衝突を避けた。米海軍はこれを「プロフェッショナリズムに欠けた危険な行為」と外交的に婉曲表現したが、これは「殺人未遂」という表現の方がより適切であったかもしれない。人民解放軍海軍、軍事組織として運用される海警及び海上民兵は、これまでもベトナムの船舶に脅威を与え、時には沈没させ、あるいはフィリピン海軍や同国の漁船を追い回したりしているところである。更に言えば、台湾もまた中国の南シナ海戦略の一翼を担っており、習近平国家主席は人民解放軍に対し2020年までに台湾への進攻準備を整えるよう命じたと伝えられる。中国は南シナ海を排他的に使用することにより、バシー海峡方面からの台湾軍の進攻を別の角度から迎え撃つことが出来るのである。
 (3)南シナ海の領有権に係る中国の主張は元より偽りである。 2016年7月12日、ハーグの常設仲裁裁判所は南シナ海の「歴史的権利」、いわゆる「九段線」という中国の主張は違法という決定を発表した。しかし、習主席が「偉大なる復興」を追求する中で、資源が豊富で戦略的にも重要なグローバルコモンズである南シナ海を支配するということは、明らかに戦争に値するもの、すなわち世界大戦の要因ともなるということである。第1次大戦は一見軽微な事件でも世界的な大虐殺に繋がるという警告と元米海兵隊中将のWallace C. Gregsonは指摘する。「1914年、戦争は非論理的で起こりそうもないと考えられていた時代にFerdinand大公とその妻が出稼ぎ労働者に殺害され、この行為が前例のない大虐殺となった戦争を引き起こした」のであり、その結果、800万人以上が戦死し、1,300万人以上の民間人も犠牲となった。そしてロシア、オーストリア - ハンガリー、ドイツ、オスマントルコの4大帝国も、それぞれこの大火に責任を負って倒れたのである。「今日の南シナ海は世界で最も危険な地域であり敵対的な声明や攻撃的な行動は想像もつかない結果を招くだろう」と Gregsonは述べている。では中国は、この想像もできないような結果、新たな世界大戦を引き起こす可能性もある南シナ海での激しい対決を、どのように動かそうとしているのであろうか。
 (4)2019年まで、習近平は北京が中国の主権領域として認識している地域の「統一」を達成すべく「偉大なる復興」という彼のビジョンを追求し続けて来た。彼のツールには積極的な政治戦と有能で自信を深めつつある軍の存在がある。南沙諸島の人工島を軍事化しないという2014年の約束にもかかわらず、中国はそこに空軍基地と防御施設を建設し、さらにはファイアリークロス礁、ミズチーフ礁、スビ礁にも新たな海軍基地を設置し軍艦を展開した。南シナ海では中国の海軍、海警、海上民兵による他国の漁船や軍民艦船に対する嫌がらせも継続している。しかし、世界中の国々は中国の明白な南シナ海への攻撃に対し、ゆっくりとだが巻き返しを始めている。
 (5)2019年初頭、北京は米英海軍が南シナ海で合同演習を実施したことに着目した。 同演習は前年8月、英海軍がいわゆる「航行の自由作戦」を初めて実施した係争地である西沙諸島に隣接する海域において実施された。ロンドンは南シナ海における中国の強権と軍事化に対抗すべく、この地域への英国の関与の意志を示したのである。また、NATO事務総長のH.E. Jens Stoltenbergも「東シナ海、南シナ海の状況に対する懸念」についてしばしば言及し、NATOは「現状を変更し、緊張を高める可能性がある一方的な強制行動」に反対するとして、防衛費の増額と能力の近代化を強調している。こうした急速展開可能な遠征軍による「海外での安定化任務」などNATOの域外コミットメント強化は予測されていたことではあるが、北京は9.11米国同時多発テロの後のアフガンなど遠隔地における持続的な作戦遂行能力を軽視していたのである。
 (6)EUもまた南シナ海における中国の違法行為に懸念を抱いている。EUは安全保障と防衛の統合強化に焦点を当てており、中国の拡張主義はEUに対する直接的な脅威と見なされている。 EUは展開能力を強化し、フランス主導の欧州介入イニシアティブを創設することにより軍事的即応性を高めている。そして本年3月には欧州諸国の中国の拡張主義に対する懸念の高まりを強調するべく、フランスは3隻の駆逐艦、潜水艦、補給艦の戦闘部隊とともに、原子力空母Charles de Gaulleを同地域に派遣することを発表した。中国は今や、世界で最も重要な海域で「航行の自由」を維持することを重視する国々の対応に直面している。
 (7)中国の攻撃性と政治戦が激しくなるのに伴い、フィリピンやベトナムなど東南アジアの南シナ海沿岸権利主張国は国際的援助を模索し始めた。フィリピン政府は、相互防衛条約に基づく米国の支援を正式に要求した。フィリピンの指導者たちはこれまで米国政府が中国との領土紛争においてこれを明言しなかったことにショックを受けていたが、2019年3月1日、Michael Pompeo米国務長官が「南シナ海でのフィリピン軍、航空機、または公共船舶に対するいかなる武力攻撃も相互防衛条約第4条に基づく相互防衛義務の対象である」と明らかにした。また、もう1つの特徴的な連携強化の動きとしては、米太平洋艦隊と日本の海上自衛隊による航空母艦、潜水艦の展開も挙げられる。これは南シナ海が中国の内海ではなく依然としてグローバルコモンズのままであり決して中国の弾道ミサイル潜水艦のための安全な隠れ場所ではないという明確なシグナルを北京に送ることになった。そしてそれは中国の拡張主義的な行動に対する有効な「巻き返し」を見ることのなかった多くの国々を鼓舞することとなった。さらにオーストラリアも状況の平和的な解決を求めつつも、それは決して「中国の南シナ海支配を黙って見守ることではない」と述べている。同国空軍P-8A哨戒機が南シナ海の警戒監視飛行を開始しているが、 オーストラリアはここで急速に拡大しつつある中国の活動のイメージを宣伝し始めているのである。
記事参照:How China Began World War III in the South China Sea

3月18日「インド太平洋エンデヴァー演習のため豪海軍任務部隊、スリランカ入港―ウエブ紙The Diplomat編集員論説」(The Diplomat, March 18, 2019)

 3月18日付のウエブ誌The Diplomatは、豪海軍部隊がインド太平洋地域で開催されている演習の一環でスリランカに入港したとして、要旨以下のように報じている。
(1)豪海軍はインド太平洋エンデヴァー2019演習の下で主要な展開を開始した。強襲揚陸艦Canberraをはじめとする4隻がスリランカに入港した。スリランカでは、スリランカ海軍との交流を深めるとともに人道支援、災害救助訓練を実施予定である。
(2)「豪軍は南アジア及び東南アジア全域の各国軍との長期にわたる関係を享受している。インド太平洋エンデヴァー演習のような年次演習などの関与によってその関係は強化されている」と国防産業相Linda Reynoldsは言う。「この構想は、2国間、多国間の取極、訓練、キャパシティ・ビルディングを通じてオーストラリア近傍地域の安全と安定を促進するよう計画されており、オーストラリアは対話と実動を通じて地域の国々と強固で積極的な防衛関係を発展させることを約束している」とコロンボの国防顧問事務所の高等弁務官Sean Unwin大佐は言う。豪国防白書2016年版は、スリランカを豪海軍の主関心海域であるインド洋における重要な戦略的結節点と認識している。「インド洋における死活的重要な海上路に位置するスリランカはオーストラリアに防衛協力を徐々に拡大させていった。我々の取極の焦点は、海洋の安全、海洋政策、緊急事態管理、人道支援、災害救助である」と白書は述べている。
(3)スリランカでの活動に続いて、豪任務部隊は演習及び交流のためにインド海軍と会合した。「オーストラリアのインド洋地域におけるきわめて重要な戦略的パートナーであるインドとの取極は、インド太平洋エンデヴァー2019の要石であり、豪印2国間関係の広がりと深さを示すため多くの高級レベルの行事が行われる」と豪国防省は2018年12月に発表している。豪海軍は日米印で行われるマラバール演習には招待されていない。2019年のインド太平洋エンデヴァーの一環として、2年に1回実施している2国間のAUSINDEX海軍演習を実施予定である。
記事参照:Royal Australian Navy Task Group Arrives in Sri Lanka for Indo-Pacific Endeavor 2019 Exercises

3月19日「中国に対抗するための欧州各国のインド太平洋地域における海軍プレゼンスの強化-香港紙報道」(South China Morning Post.com, March 19, 2019)

 3月19日付の香港紙South China Morning Post電子版は“European militaries ‘will do more to counter assertive China’ in Indo-Pacific”と題する記事を掲載し、安全保障専門家の発言などを紹介しつつ南シナ海における人工島造成など中国の国際法を無視した海洋秩序への挑戦に対する欧州諸国の対応について要旨以下のように報じている。
 (1)アナリストや外交筋によれば、欧州諸国はインド太平洋地域における中国の攻撃的活動に対抗するため海軍の活動拡大を含むプレゼンス強化を企図している。ワシントンの保守系シンクタンク、Hudson InstituteのLiselotte Odgaard客員上席研究員はインド太平洋地域におけるEUの役割を議論するイベントに際し、「EUは既にインド太平洋地域でその地位を確立し始めている」と述べた。EUはこれまでも南シナ海問題に係る中国の主張への反対や「航行の自由」への支持といった一般的な政策方針を持ってはいたが、それが具体的な政策イニシアティブに進むことは困難であったとOdgaardは指摘する。
 (2)今日、南シナ海における中国の人工島造成やその他の軍事活動は米国と同盟国の懸念を引き起こしている。インドもまた、インド洋における中国のプレゼンスの高まりを警戒している。EU加盟国中の何カ国かも論争の的になっている南シナ海での中国の活動への懸念を繰り返し表明してきた。米海空軍は「自由で開かれたインド太平洋」の維持のための艦艇と航空機による警戒監視を強化しており、フランスも2014年以来、南シナ海での海軍活動を実施している。Odgaardによれば、近年、EUは「航行の自由」に関する国際法上の主張を担保すべく一部の国がフランスの艦艇に乗艦する兵員を派遣しているという。「例えば今年、デンマークはインド太平洋地域にフリゲート艦を派出するであろうし、フランスも空母を派遣するだろう」とOdgaardは指摘する。
(3) Odgaardはまた、EU加盟国の一部でもインド及び日本との合同演習を行うべきであると主張しており、「それはEUそのものではないとしてもそこで発信されるメッセージは個々の参加国のみならず欧州という大きな国家グループによるもの」という意味を持つと指摘する。実際、英国は1隻の空母をインド太平洋地域に展開する計画であり、この地域への新たな基地建設も検討している。フランスも海上自衛隊との合同演習実施の可能性を検討している。このような動きについて、Hudson Instituteのアジア太平洋安全保障部門の責任者であるPatrick Croninは、中国を国際法上の「航行の自由」の原則に従わせるためにはインド太平洋地域において「欧州を公式化」することが重要と指摘する。「中国の領土主権に関する解釈には疑問があり、「法の支配」はインド太平洋及び世界が直面する最大の課題の1つ」であればこそ、「国際規範の尊重が重要ということを広く想起させる上でも、この地域への欧州の関与は重要」とCroninは主張する。
 (4)欧州では中国のブロック経済化と安全保障上の課題への懸念が高まっており、これらは国際的ルールに違反していると非難されている。3月11日の週に発表された文書において、欧州委員会は中国を「経済的な競争相手」であり「相容れない統治モデルを推進する体系的ライバル」と認定した。そこでは中国と均衡した関係を模索し、中国の経済ブロックの影響に対抗してEUの団結を固めるための10件の提案が提示されていた。
(5)EUは3月21日木曜日に首脳会談を開催、習近平国家主席がこの週から仏伊を訪問し、4月に中国で開催される首脳会談(抄訳者注:一帯一路フォーラムを指すものと思われる。)に招聘があったことについて対応を協議した。また、3月18日月曜日にはブリュッセルで中国とEU加盟国外相との安全保障対話が開催され、中国とEUはいくつかの問題で相違点があるものの協力が関係の基本であると確認されたという。
(6)欧州外交筋はSouth China Morning Postに対し、ブリュッセルと北京の間の市場アクセスの相互性の欠如に対する不満の高まりの他、南シナ海のような中国の攻撃的な海上戦略の主張について深刻な不安があると述べている。情報筋によれば、南シナ海におけるEU加盟国による海軍活動は今後さらに進展する可能性があるという。英国はアジア海域における活動拡大を繰り返し表明しており、昨年8月には南シナ海の中国が領有権を主張する島嶼付近の海域で海軍艦艇を航行させ、北京を怒らせた。今年に入ってからは米国との合同訓練を二度、係争中の海域で実施している。
 (7)英シンクタンク、Asia Studies Centre所長でHenry Jackson Society副代表のJohn Hemmingsはワシントンで開催された上記(1)のイベントに際し、英国は日本との情報の共有を公式化することを検討しているとして、「英国は問題をリードすることはないが、インド太平洋に関心を持つ関係国コミュニティの責任あるパートナーとして、それに参加することになるだろう」と述べた。ちなみにオランダは昨年10月、2021年に予定されている英空母 Queen Elizabethのインド太平洋方面への最初の作戦展開行動に参加するため、艦艇を派遣すると発表しているが、Hemmingsは「英国、カナダ、オーストラリア、そしてヨーロッパのさまざまな国々がこのようなグループとして団結して活動することになるだろう」と付言した。
記事参照:European militaries ‘will do more to counter assertive China’ in Indo-Pacific

3月20日「中国、実験用と称する原子力船建造へ-香港紙報道」(South China Morning Post, 20 Mar, 2019)

 3月20日付の香港紙South China Morning Postは、中国が「実験用プラットフォーム」と称する原子力船の建造にまもなく着手するが、そこから得られる技術と経験は将来の原子力空母建造に活用されるであろうとして要旨以下のように報じている。
(1)中国は、入札書類には「実験用プラットフォーム」と記載された3万トン級の原子力船の建造をまもなく開始する。海軍は、原子力空母を建造中と広く信じられているが、中国はまだ原子力船を保有していない。
(2)中国広核集団は同船の建造契約の入札に参画している。要目は空母には小さいが、軍事専門家は中国の造船能力の向上に役立つと述べている。応札の期限は3月20日であり、中国本土以外からの応札は認められていない。同船は25メガワット(MW)、火力発電出力換算で200MWの小型加圧水原子炉2基を搭載可能であり、これにより最大速力11.5ノットとされている。同船は、実験用船舶と記載されているだけで、その運用目的は明らかにされていない。
(3)船の大きさは、ロシアの原子力砕氷船によく似ていると香港を拠点とする軍事専門家宋忠平は言う。2018年6月、中国核工業集団公司も洋上型小型モジュラー原子炉を搭載する原子力砕氷船計画への入札要請を受けている。中国は北極海での活動を拡大しており、砕氷船の保有は重要である。中国の北極における調査、遠征の能力を加速する初の国産砕氷船「雪龍2」は、2018年に進水し、2019年後半に就役する。
(4)砕氷船の運用実験が順調であればその技術と経験は次世代空母に適用でき、「この船は技術の確認と実験ができる」と宋忠平は言う。この手法は、旧ソ連が原子力空母を開発するときの手法をなぞるものである。旧ソ連は原子力空母の建造(編集注:ソ連崩壊により建造の途中で計画中止となり解体)を開始する前に、5隻の原子力砕氷船を建造した。
(5)計画されている中国広核集団の船舶に搭載される原子炉は比較的小型であり、空母に搭載するには複数基が必要であることを意味する。似た事例として、世界初の原子力空母「エンタープライズ」は150MWの原子炉8基を搭載しており、ニミッツ級空母は550MW原子炉2基を、最新のフォード級空母は700MW原子炉2基を搭載している。
空母に加え、原子炉は貨物船、科学調査船、遠望級衛星追跡船のような追跡船など大型艦船に搭載可能であると宋忠平は付け加える。
記事参照:China to built 30,000-tonne nuclear -powered ship described as ‘experimental platform’

3月20日「北極圏で中ロと対峙するための米北極戦略―米ニュース専門放送局報道」(Fox News, March 20, 2019)

 3月20日付の米ニュース専門放送局FOX Newsのウェブサイトは、“Trump team vows to hit back against Russia and China’s ‘Polar Silk Road’ with Arctic Defense Strategy”と題する記事を掲載し、米国の新しい北極戦略について要旨以下のように報じている。         
(1)中国は超大国になるために(勢力の)世界的な拡大にきわめて積極的に取り組んでおり、北極圏で足場を切り開くことさえ行っている。そして、ロシアが極寒の地域においてその軍事力を構築する一方で、トランプ政権は反撃する国防計画を練り上げている。米国防総省の報道官Johnny Michaelによると、この戦略は、世界的なテロ対策への焦点を当てることとは対照的に、ロシアや中国との「大国間競争」に軍事的な焦点を置く、2018年に発表された新国防戦略に沿って、国防総省がどのようにすれば「北極圏において、最も良く米国の国益を守り、安全保障と安定を支えることができるか」について詳しく述べるものとなる。
(2)ロシアは、砕氷船の船隊を強化し、冷戦時代に建設された軍事基地を復活させた。一方、中国も、地理的に北極圏の近くに位置していないにもかかわらず、昨年までに「北極近傍国家」(near-arctic nation)であることを宣言することによって、いくつかの米国の国防サークルで深刻な懸念を引き起こした。2018年の、中国にとって初めてとなる北極戦略において、北京は、アジアからヨーロッパへの中国製品の円滑な海上輸送のために、すでに物議をかもしている一帯一路構想の延長である「北極シルクロード」を創設する計画を発表した。
(3)「北極圏は世界のどこよりも速く変化しており、より古くて長期にわたる海氷を急速な速度で失っている」とWoodrow Wilson International Centerの上級研究員であるSherri GoodmanはFox Newsに語った。Arctic Instituteの上級研究員兼創設者であるMalte Humpertが、この地域は「非常に安定している」とはいえ、「状況把握とその影響を予測するために必要なアセットを米国が持っていないことには、一般的な懸念がある」「砕氷船が1隻だけでは十分ではない」とHumpertは述べた。「特に、6隻の原子力砕氷船を含む1ダース以上の大型砕氷船を運営しているロシアとは対照的である」。Wilson CentreのPolar Instituteによる最近の分析によると、中国は、原子力空母と現在ロシアでしか製造されていない先進的な艦船の建造を意図している。これらは前後進ともに砕氷能力のある国産初の砕氷船とともに中国の保有する艦船群に加えられるだろう。比較すると、このレポートは、米国に属する唯一の機能している大型砕氷船は、1970年代に建造された船齢30年のPolar Starのみであると述べている。
(4)外交政策アナリストのSean McFateも、「中国は天然資源を開発し、地球上の人間の手が入っていない地域に環境被害をもたらした」だけでなく、「最前線のアラスカの安全保障を最優先とする北極戦略を米国は必要とする」と主張している。紛争は従来の戦争のようには見えないだろう。アラスカは海空作戦の足がかりとなるだろう。また「アラスカは地域の緊張によって経済的に影響を受けるだろう。戦争が変わったため、我々もそれとともに変わる必要がある」とMcFateは述べている。Obamaは、2013年に気候変動に関連した国家北極戦略を発表したが、トランプの今度の青写真は「この地域で利益を侵害するロシアと中国に焦点を合わせる」ことに優先順位を移行する可能性が高いことも彼は強調し、「新しい北極戦略では、モスクワと北京の行動を単に鈍らせるだけでなく、この地域における米国の国益を明確にする必要がある」とMcfateは指摘する。
(5)さらに、政策アナリストたちは、対処が求められる北極における安全上の欠陥を指摘している。RAND Corporationの政治学者であるStephanie Pezardは、クルーズ船ですら船舶通行量の増加により、必要な時に救助手段が十分ではないかもしれない危険な海域を航行していると強調した。「安全保障に関して、改築あるいは新設された基地とそこに配備された新しい部隊と軍事装備によって、ロシアによる軍事化の増大が懸念されている」と彼女は続けた。
(6)しかし、北極圏が重大な脅威をもたらし、大幅な手続き上の変更が必要であることにすべての専門家が同意するわけではない。ノートルダム大学の政治科学の准教授Eugene Gholzは、「米国の大戦略は今日の問題に対する対外政策を合理的なものとすべきであり、他国の経済的機会を米国の安全保障上の脅威と見誤ってはならない。北極圏での紛争は、すべての参加国にとって、非常に困難で、費用がかかり、損害を与えるだろう。そこに戦力投射を行うための必要な種類の装備は、非常に高価であり、そして、負傷者のための治療や医療処置を提供することが難しい」と述べている。
記事参照:Trump team vows to hit back against Russia and China’s ‘Polar Silk Road’ with Arctic Defense Strategy

【補遺】

(1) Andrew S. Erickson and Ryan D. Martinson Discuss China’s Maritime Gray Zone OperationS
http://cimsec.org/andrew-s-erickson-and-ryan-d-martinson-discuss-chinas-maritime-gray-zone-operations/39839
Center for International Maritime Security, March 11, 2019
By Dmitry Filipoff
Dr. Andrew S. Erickson is a Professor of Strategy in the China Maritime Studies Institute at the Naval War College
Ryan D. Martinson is a researcher in the China Maritime Studies Institute at the U.S. Naval War College.
On March 15th, the Naval Institute Press will publish China’s Maritime Gray Zone Operations, a volume edited by professors Andrew S. Erickson and Ryan D. Martinson from the Naval War College’s China Maritime Studies Institute. CIMSEC recently reached out to Erickson and Martinson about their latest work.
 2019年3月11日、米国のNPOシンクタンク、Center for International Maritime Securityは、"ANDREW S. ERICKSON AND RYAN D. MARTINSON DISCUSS CHINA’S MARITIME GRAY ZONE OPERATIONS"と題する論説記事を発表した。同論説は、3月15日に公刊されたChina’s Maritime Gray Zone Operationsの著者である米海軍大学のAndrew S. Erickson教授とRyan D. Martinson教授への質疑応答形式で構成されている。その中で両教授は、中国人研究者はあまりグレーゾーンという概念を使用しないが、実はこれが現状をよく示しており、中国はこれまでにない手法で時間をかけて他国と主権を争っているグレーゾーン海域を変更しようとしており、海軍や中国海警局だけでなく海上民兵も活用しながら、様々な活動を展開し、現状変更を試みていると述べている。

(2) Global arms trade: USA increases dominance; arms flows to the Middle East surge, says SIPRI
https://www.sipri.org/media/press-release/2019/global-arms-trade-usa-increases-dominance-arms-flows-middle-east-surge-says-sipri
SIPRI Press Release, March 11, 2019
 2019年3月11日、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、"Global arms trade: USA increases dominance; arms flows to the Middle East surge, says SIPRI "と題するプレスリリースを発表した。同研究所は、定期的に世界の武器移転に関する最新情報を公にしているが、今回の発表では、①2014から2018年の間の5大武器輸出国は、アメリカ、ロシア、フランス、ドイツ、中国であったこと、②その中でも米国の存在感が大きくなっており、米国の武器輸出は、2009年から2013年の5年間と2014年2018年の5年間との比較で29%増加し、全世界の武器輸出のうち米国が占める割合は、同期間で30%から36%に増加したこと、③中国の武器輸入は2014年から2018年の間に自国の開発・製造能力が高まったため減少したが依然として世界第6位の武器輸入国であったこと、などが明らかとなった。