海洋安全保障情報旬報 2019年2月21日-2月28日

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2月21日「イラン、海軍演習をホルムズ海峡で実施と発表―イスラエル紙報道」(HAARETZ, Feb. 21, 2019)

 2月21日付けのイスラエル紙HAARETZは、イランがホルムズ海峡において年次の海軍演習を実施すると発表したとして、要旨以下のよう報じている。
 (1)イラン海軍は、米国がイランの重要な石油部門を標的に制裁措置を再び課した数ヶ月後にホルムズ海峡で年次演習を実施すると発表した。イラン海軍のHossein Khanzadi大将が21日、国営テレビに出演して発表した。
 (2) 実動演習は22日に始まり、オマーン湾からインド洋縁辺で行われる。演習には艦艇からのミサイル発射も含まれる。イランは定期的に海峡での実動演習を実施しており、米国の圧力と新たな対イラン制裁措置によって原油の輸出が阻止されれば「ホルムズ海峡を封鎖する」と警告している。
記事参照:Tehran announces exercise months after U.S. sanctions hit the country

2月21日「核爆発による津波を引き起こすロシアの大型水中無人機-豪ニュースサイト報道」(NEWS.com, FEBRUARY 21, 2019)

 オーストラリアのニュースサイト、NEWS.com,auは2月21日付の同サイトに“President Putin’s Poseidon drone designed to unleash ‘radioactive tsunamis’”と題する記事を掲載、ロシアが核攻撃能力を有する原子力推進式の大型長距離水中無人機を開発したとして要旨以下のように報じている。
 (1)ロシアは、世界中の沿岸都市に核爆発による津波を引き起こすことのできる「黙示録の魚雷」、Poseidonと呼ばれる原子力推進式水中無人機の映像を公開した。ロシアのVladimir Putin大統領は、同国のハイテク核兵器能力を相殺しようとするどの国にも負けない新たな兵器体系を作り出し、米国と欧州に建設中のミサイル防衛施設に対抗しようとしていることを明らかにした。Poseidon原子力推進核魚雷は、そのような既存の防御網を回避するように設計されている。それは静かに、そして素早く世界中の海から大陸間の距離を渡り、主要な目標に近接して核弾頭を爆発させる。これにより生じた衝撃波と気化した海水は大津波を発生させるだろう。
 (2) Putin大統領は、全幅2メートル、全長20メートルのKanyonとも呼ばれるPoseidonの映像を公開したが、これは従来の魚雷の約30倍もの大きさである。Poseidonは基本的には原子力推進式の水中無人機であり、伝えられるところでは核弾頭搭載巡航ミサイル、Buresvestnik(Petrel)と共にテストを受けているとされている。しかし、Putin大統領が最初に示したのはPoseidonの実物の外観であった。映像では試験水槽内の長い円筒形の魚雷が示されている。また、潜水艦から試験機が発進する映像や実験室で改造が行われている様子なども示されている。Sputnikニュースサービスによれば、ロシアのVsevolod Khmyrov提督は同機のテストは成功したとして、「独自の原子力パワーユニットのテスト、その後の包括的な海洋フィールドテストを含む実用試験を経て来ており、すぐにでも完全な最終テスト、すなわち無人機とその母機のテストを開始することが出来る。」と述べたとされる。
(3) Putin大統領によれば、本武器システムは今後数ヶ月以内に運用可能になる可能性もあるという。特別に設計された原潜Khabarovskが完成間近で、6月までには就役予定であるが、2隻のPoseidon搭載潜水艦が北海艦隊に2隻が太平洋艦隊に配備される予定である。これらの潜水艦には最大8機の水中無人機が搭載可能であるため、Poseidonの配備も最大32機に達する可能性がある。更にこれのプラットホームとしては、新しい兵器システムを搭載するように改造された既存のOscar級原潜も含まれる可能性があるとTass通信は報じている。
(4)もっとも、この武器システムの有効性については疑問もある。Tass通信はPoseidonが2メガトン級の弾頭を搭載可能と報じたが、軍事アナリストはそれでは効果的な津波を発生させるのには不十分と指摘している(2015年に発表されたロシア政府の武器開発関連報告書では100メガトン級の弾頭が搭載可能との情報もある)。技術専門誌Popular Mechanicは、海面下の核爆発は大きな津波を発生させるのには適当でないとの米国の研究があると指摘しており、例えば、Office of Naval Researchの報告も「核爆発の大部分のエネルギーは陸岸に到達する前に大陸棚によって減殺される」と述べている。
 (5)スピードについても疑問がある。クレムリンの情報筋は、最高時速200kmで水中を移動できると述べているが、 これはスーパーキャビテーションと呼ばれるラムジェット方式を用いて周囲の水との摩擦を減殺し、バブルの中で推進力を得る技術を利用した方式である。しかし専門家は、Poseidonの形状、コントロールフィンのサイズや駆動システムからして、これらがスーパーキャビテーションデバイスのバブル内では機能するような物ではないとPopular Mechaniに語っている。また、同じ専門家は、これが非常に航走雑音大であり、容易に探知され、撃破されるであろうとも指摘している。ではPoseidonプログラムはフェイクニュースなのであろうか。この点について、潜水艦武器システムアナリストのH.I. Sutton
は「検証された要素は偽造とするには余りに高価」としつつ、「潜水艦も武器をテストするために特別に作られており、他の目的では説明できない」とPopular Mechaniに語っている。
(6)これが実在し得るということは新たな米国の水中武器プロジェクトから類推できるかもしれない。Poseidonの実態が何であれ、米国はこれと同様の性能を有する4機の新しい大型水中無人機をボーイング社に発注した。Orcaと名付けられたこの大型水中無人機は、ボーイング社のEcho Voyagerを基にしているが、Orcaは数ヶ月間に亘り独自の人工知能(AI)の制御下で世界中の海に展開させることを目的としている。米海軍はこれを機雷探知、潜水艦や水上艦の追跡、電子的監視、そして攻撃ミッションなどへの使用を検討しているという。
※Orcaについては以下の関連記事を参照
記事参照:President Putin’s Poseidon drone designed to unleash ‘radioactive tsunamis’

(関連記事)

 本件は2月14日付の記事であるが、上記記事中でも米国の類似の水中武器技術であるOrcaについて言及されていることからのここで取り上げるものである。

214日「米海軍、ボーイング社に超大型無人潜水艦Orcaを発注―米防衛安全保障専門ライター論説」(Popular Mechanics, Feb 14, 2019
 サンフランシスコ在住の防衛安全保障専門ライターのKyle Mizokami は、2月14日付の米技術専門誌Popular Mechanicsのウェブサイトに“The Navy Just Ordered the 'Orca,' an Extra-Large Unmanned Submarine by Boeing”と題する記事を寄稿し、比較的安価で兵員の犠牲を伴わない無人の水中武器体系がゲームチェンジャーになるかもしれないとして、要旨以下のように述べている。
 (1)Orcaと呼ばれる無人潜水艦が長距離偵察から艦船攻撃まで、非常に幅広い任務を受け持つことになるだろう。このような水中ドローンは安価で、かつ、有人艦にとって危険な場所にも展開可能であることから海上戦闘に革命を起こすものである。今回発表された契約内容によれば、ボーイング社は4基のOrca級大型水中無人機(XLUUV)と関連支援機器の製造、試験、納入用として4300万ドルが計上されている。
(2)Orcaはボーイング社のEcho Voyager実証型水中無人機の技術に基づくものである。Echo Voyagerは桟橋からの発進、回収が可能なディーゼル電気式水中無人機であり、6,500海里の航続距離を有し、数ヶ月間の完全自動航行が可能である。要目は全長51フィート、全幅8.5フィート、深さ8.5フィート、重さは約50トンである。慣性航法システムと深度センサーを搭載し、浮上してのGPSによる位置修正も可能である。また、衛星通信で母基地と信号のやり取りが可能であり、また、情報を報告したり新しい命令を受けたりすることも出来る。最大潜航深度は11,000フィート、最高速度は8ノットである。また、Echo Voyagerの重要な特徴は任務に応じ様々な機器を搭載可能なモジュラーペイロードシステムであり、内部積載量は2000立方フィート、最大長は34フィート、容量8トンまで搭載可能であるほか、船体から吊下する形の外部ペイロードも使用可能である。
(3)Echo Voyagerの技術に基づき、Orcaが今後、どれだけ技術を向上させることができるかは不明であるが、米国海軍研究所ニュースによれば、Orcaは「対機雷戦、対潜戦、対空戦、電子戦及び攻撃ミッション」に使用可能とされており、Mk46対潜用短魚雷を搭載可能であるほか、より大型の対艦攻撃用Mk48魚雷や対艦ミサイルも運用可能であり、さらに海底への物資投下、機雷の探知や敷設なども可能である。これらのミッションはモジュラーハードウェアペイロードシステムとオープンアーキテクチャのソフトウェアにより必要に応じ迅速な設定が可能であるが、単一ビークルによるこれほど低コストでのこのような多用途性は軍事装備品では前例がない。強いて言えば海軍の沿海域戦闘艦(以下、LCSと言う)があるが、それでもLCSは40人の乗員と5億8,400万ドルの調達経費を要しており、Orcaは桁違いに安価で有用である。何しろOrcaは、一人のオペレーターが陸上から複数を運用可能であり、しかも数日、状況によっては何週間も自律的な運用が可能である。
(4)無人潜水艦のもう一つの利点は、これが使い捨ての無人機であり兵員の命を危険に晒すことなく危険海域で運用することが出来るという点である。例えば、Orcaが実際の潜水艦になりすまして敵の潜水艦に撃たれるのを待つ間に、本物のバージニア級攻撃型原潜が待ち伏せ攻撃するといった運用も可能であり、あるいは敵の防御が厳重な海域に機雷を敷設するといったことも可能である。今般、海軍が4機のOrcaを調達したのは実際にそうした運用を念頭においてのものであるが、今後の実用試験を経て、これらは艦隊の主力装備になるものかもしれない。Orcaのような安価な武器システムは、他の無人航空機、陸上機器と同様、今日の武器システムの管理不能なコストの増大を元に戻すことに大いに役立つだろう。有人装備のコストが大きく低減することはないだろうが、安価な無人ビークルは全体的なコストを低減するとともに艦隊に新たな機能を追加するだろう。将来の海上戦闘を展望するならば、Orcaに注目の要がある。
記事参照:The Navy Just Ordered the 'Orca,' an Extra-Large Unmanned Submarine by Boeing

2月22日「イラン、ホルムズ海峡での海軍演習で潜水艦からの巡航ミサイルを展示―英オンライニュース報道」(MIDDLE EAST EYE, 22 February 2019)

 2月22日付の英オンライニュースMIDDLE EAST EYEは、イラン海軍年次演習における国産のFateh級潜水艦からの巡航ミサイル発射について要旨以下のように報じている。
(1)国営イラン通信は22日、ペルシャ湾口での海軍年次演習の一部として初めて潜水艦からの巡航ミサイルを展示した。海軍の演習は、米国との緊張が高まり、イスラエルや他の湾岸アラブ諸国を含む米国が後押しする反イラン同盟創出を狙ったワルシャワでの「中東の平和と安全に関する国際会合」(2月13日、14日に開催)から1週間も立たないうちに実施された。
(2)「演習は脅威に対処し、兵器を試し、人員装備の即応体制を評価するものである」と海軍司令官Hossein Khanzadiは国営テレビで述べている。「Sahand級駆逐艦からのヘリコプター、ドローンの発艦に加え、潜水艦のミサイル発射も行われるだろう」とKhanzadi司令官は言う。
(3)イランは新しい国産Fateh級潜水艦の試験を実施中であろう。同潜水艦は巡航ミサイルを装備しており、バンダルアッバス海軍基地で2月10日の週にこれが発射されたとメディアは報じている。イランはそのミサイル計画、特に弾道ミサイル計画を拡大してきた。西側専門家はイランがその能力についてしばしば誇張していると言う。イランは2018年12月にSahand級駆逐艦を就役させており、同駆逐艦はステルス性能を有すると当局者は言う。
(4)戦略的水路における長期にわたる米空母不在に終止符を打ち、2018年12月、米空母John C. Stennisがペルシャ湾に入った。米国は2018年5月にイランの核合意から離脱し、テヘランに対し厳しい制裁を再び課している。
記事参照:Iran showcases first submarine cruise missile as part of Gulf war games

2月22日「インド、インド太平洋地域における『非軍事化と平和』を訴えるべし―印専門家論説」(Asia Times.com, February 22, 2019)

 印SVM Autonomous College講師、Dr Manoj Kumar Mishraは、ウエブ紙、Asia Timesに2月22日付で、“India needs to rethink its Indo-Pacific strategy”と題する論説を掲載し、インドは、インド太平洋地域で激化する軍事化に鑑み、非同盟運動のエートスである「非軍事化と平和」を訴えていかなければならないとして、要旨以下のように述べている。
(1)ザンビアの首都ルサカで1970年に開催された「非同盟諸国首脳会議」は、インド洋から大国間抗争を排除し、インド洋を「平和地域」として尊重するよう求めた。このイニシアティブは、冷戦期に出されたものだが、今日のインド洋を取り巻く環境下で、一層適切なものとなっている。今日、米国、日本、オーストラリア及びインドの4カ国は、インド太平洋地域において「一帯一路構想」(BRI)の名の下に追求される、増大する中国のプレゼンスと影響力を封じ込め、巻き返そうとしている。更に、通商貿易のための海上ルートへの北京の依存は、中国の原油の75%以上がインド洋と南シナ海を経由しているという事実から明白である。従って、中国は、経済成長を支えるために、また安全保障上の理由からも、より大きい海軍力のプレゼンスを必要としている。インド太平洋地域は、中国の増大する経済と戦略的影響力の重点地域であると同時に、こうした中国の影響力を抑制し、巻き返そうとする、その他の大国の努力の焦点ともなっている地域である。
(2)1987年の中距離核戦力(INF)条約を廃棄するという米国の決定は、インド太平洋地域における米国の軍事構想に対する中国の疑念を高めると見られる。多くの専門家は、以下のようなシナリオを予測している。中国は、1964年の最初の核実験から維持してきた、「核の先行不使用」政策(“no first use” nuclear-weapons policy)を見直すことになるかもしれない。関係大国の通常戦力と核戦力に対する野心を抑える新たな条約がなければ、軍事対決の可能性は一層高まるであろう。インド太平洋地域における非軍事化を推進し、この地域を「平和地域」にしようとする努力は、こうした環境下において、一層の重要性を持つ。米インド太平洋軍のPhil Davidson司令官は、最近の上院軍事委員会での証言で、この20年間における中国軍の近代化によって、米国とその同盟諸国にとって中国が「最大の脅威」(the “principal threat”)になってきたと述べた上で、この地域における中国の増大する経済プレゼンスに対抗するために、ワシントンの経済的影響力を強化するためにより多くの資金投下の必要性を強調した。
(3)最近数年間、中国の習近平主席とインドのModi 首相によるインド洋地域諸国への訪問回数の増加が目立つ。ニューデリーが日本との共同で2017年に打ち出した、「アジア・アフリカ成長回廊」(the Asia-Africa Growth Corridor)は、中国のBRIに代わるイニシアティブと見なされた。インドは、東南アジア地域での足場を固めるための一環として、2017年11月にシンガポールとの間でチャンギ海軍基地へのアクセスを拡大する協定に調印し、インド太平洋地域における安定を強化する上でのASEANの役割の重要性を強調し、2016年にベトナムとの関係を包括的戦略的パートナーシップに格上げし、そして日本との首脳会談で相手国の基地への相互のアクセスを認める軍事補給協定を実現させた。また、ニューデリーは、アフリカ東岸域に対する影響力の拡大に努力する一方で、自国沿岸域でも10の優先的な開発プロジェクトを進めている。
(4)しかしながら、この地域でのインドと中国の戦略的抗争は、インド洋地域における域外大国の一層の介入を容易にし、大国間の様々な合従連衡もたらし、軍事対決の可能性を高めている。例えば、インドとフランスは、両国の軍艦がインド洋における相互の海軍基地へのアクセスを認める、相互後方支援協定に調印した。米外交政策におけるインド太平洋地域の重要性と、この地域における中国の影響力を封じ込め、巻き返すという米印相互の願望から、インドと米国は、燃料供給と補給のために相互に指定された軍事施設へのアクセス、重要な技術移転、そして相互運用性を可能にする、安全保障協定に調印するに至った。この地域における米国の影響力は、インド洋のディエゴガルシア島を挟んでバーレーンからシンガポールに至る強固な海軍力のプレゼンスによって維持されているが、モーリシャスの南西に位置する仏領レユニオン島は、インド洋におけるフランス海軍の軍事活動の中心となっている。インドは、ココス諸島(オーストラリア)とレユニオン島などの基地へのアクセスを確保するために、オーストラリア、フランス及び米国との協定を求めてきた。
(5)中国のThe Carnegie-Tsinghua Center for Global Policyの核専門家、Zhao tingによれば、米国とその同盟国は、南シナ海とインド洋において対潜(ASW)能力を強化している。他方、中国海軍は、2018年11月に黄海でJL-3ミサイルの飛翔テストに成功した後、Type 096 として知られる新世代の戦略原潜を開発しているといわれる。シンガポールの南洋工科大研究員、Collin Kohは、米国がこの地域に攻撃型原潜をより多く展開させるとともに、増強されつつある中国の潜水艦隊に対抗するためにより多くの ASW 戦力を展開する可能性に言及し、インド太平洋地域における軍事競争の激化を指摘している。インドは、インド太平洋地域において激化する軍事化に留意し、非同盟運動のエートス、「非軍事化と平和」を、インド太平洋地域で訴えていかなければならない。
記事参照:India needs to rethink its Indo-Pacific strategy

2月22日「米沿岸警備隊の新しい船艇を待ち望むアラスカ―アンカレッジ地元紙報道」(ANCHORAGE DAILY NEWS, Feb 22, 2019)

 2月22日付のアンカレッジの日刊紙ANCHORAGE DAILY NEWS電子版は、“Congress OKs money to build an Arctic icebreaker and more Coast Guard cutters for Alaska”と題する記事を掲載し、新しく建造される米沿岸警備隊の船艇のために獲得された予算とそのアラスカへの波及効果について、要旨以下のように報じている。
(1)2月10日の週に政府の新たな閉鎖を回避するために米議会が通過させた支出法案は、ここ数十年において最初の極地砕氷船の建造に6億5500万ドルを提供し、アラスカにおける新しい沿岸警備隊のカッター(巡視船)のため追加の資金を提供したとDan Sullivan上院議員の事務所は述べた。アラスカ選出のSullivan議員によると、米国は40年ぶりに新しい砕氷船を建造しており、将来さらに多くの砕氷船が建造される予定である。この予算法案には、2隻目の砕氷船のための資材の購入を開始するための2千万ドルも含まれている。
(2)アラスカ議会で演説した後、「これはすばらしいことである」とSullivan議員は記者団に語った。同法案では、アラスカ向けの154フィート級巡視船4隻を含む新しい巡視船にも資金が提供されていると同事務所は述べた。2隻はコディアックに、残り2隻はスワードとシトカにそれぞれ1隻づつ配備される予定である。アラスカの地方自治体当局者たちは、この新しい巡視船は経済成長に役立つ一方、広大なアラスカ沿岸沖での海洋の安全と漁業監督を強化すると述べた。アラスカは他のどの州よりも海岸線が長いが、沿岸警備隊の人員と資源が比較的少ないとコディアックの沿岸警備隊基地の港湾業務の責任者であるDerrik Magnusonは述べた。
(3)Sullivan議員は、米海軍長官のRichard Spencerが、いわゆる「航行の自由作戦」において、北極圏での米国の主権を守るために、1隻又は2隻の大型海軍艦を「極地とそのさらに先へ」派遣することを計画していると指摘した。The Wall Street Journalは、1月にSpencer海軍長官にインタビューし、この取り組みは今後数ヵ月のうちに行われ、この地域では初めてのものとなるだろうと報じた。そのような任務は、砕氷船のプレゼンスから恩恵を得ることができるとSullivan議員は述べた。米国の砕氷船の船団は、ロシアのカウンターパートに大幅に数で上回られている。「ロシアには40隻あり、さらに13隻が建造中である。そのうちのいくつかは原子力で、いくつかは兵装されている」「そして、我々には2隻あり、そのうちの1隻は壊れている。先に進むときが来た」とSullivanは述べた。
(4)新しい砕氷船の母港は決まっていないとSullivan議員のスポークスマンMike Andersonは述べた。Andersonによれば、沿岸警備隊は今年その建造を開始し、2023年にそれが進水することを望んでいるという。Sullivan議員は2月20日の声明の中で、この予算割当額は、ワシントンにおける国家の指導部からの重要なコミットメントを示すと述べた。この支出法案には、スワードの沿岸警備隊施設への3100万ドル、コディアックへの2200万ドルとともに、施設の建設を支援するための5300万ドルも含まれている。コディアックのMagnusonは、2隻の新しい船が到着した後で地元の請負業者と船の維持管理を行う造船所がより多くの仕事から恩恵を受けると語った。スワード市長David Squires は、2月21日、沿岸警備隊は、スワードのための新しい巡視船を支援するための資金を賄う方法を決定すると述べた。彼は、それがSeward Marine Industrial Center近傍のレズレクション湾に船舶を修理、整備する新しい建造物や船渠につながる可能性があると述べている。
記事参照:Congress OKs money to build an Arctic icebreaker and more Coast Guard cutters for Alaska

2月22日「米薬物検査実施率の引き上げが米海運業者の経営を圧迫する―米専門家論説」(Marine Link, February 22, 2019)

 2月22日付のウエブ誌Marine Linkは、米法律事務所Seham, Seham, Meltz & PetersonパートナーLee Sehamの"The USCG-Mandated Drug Testing Increase"と題する論説を掲載し、米国で薬物検査の実施率が引き上げられることは米海運業者に様々な経営上の困難をもたらすと指摘した上で、要旨以下のように述べている。
(1)米沿岸警備隊は2018年12月28日に、2019年における年次無作為薬物検査の最低実施率を25パーセントから50パーセントへと引き上げる決定を海運業界に警告する通知を連邦広報で公表した。業界の一連の規制への順守を手助けする、非営利業界コンソーシアムAmerican Maritime Safety, Inc(AMS)は沿岸警備隊の決定を遺憾に思う。AMS内では、現在の統計データが政府の義務付ける検査率引き上げの根拠とならず、したがって現行の主要海運オペレーター向け無作為検査の最低実施率25パーセントを、それを超える水準に引き上げることは各雇用者の判断に任されるべきだと考えている。
(2)1988年に米沿岸警備隊規則が公布されたとき、薬物検査の年次実施率は50パーセントと規定されていた。その後、無作為薬物検査の実施率は、「データ」が業界全体の薬物陽性者の比率が2年連続で1パーセント未満を示していると沿岸警備隊長官が判断すれば、年次検査率を25パーセントまで減らし「得る」と規定する法律(46CFR16.230f)に従って削減された。法的手続きという観点から見ると薬物陽性者の比率が1パーセントになると、検査は元の水準へと既存の規制に戻ることから、沿岸警備隊は立法案公告を出してパブリックコメントを募るという点で行政手続法の手続きを要しない。
(3)AMSは米商業の基幹である海運業の大半をカバーするコンソーシアム横断の統計データを保有している。こうした統計は、毎年25,000回から30,000回に亘る薬物検査の陽性、陰性データを含むものである。2018年10月9日に行われたAMS年次総会で議論されたように、コンソーシアム内では2017年の薬物陽性者の比率がおよそ0.9パーセントに上昇した。恐らく沿岸警備隊が参照した1.0パーセントの要因は、薬物陽性者の比率が1.0パーセントを超過した非AMS海運業データ(主に小規模オペレーターのもの)の総計だろう。我々の見解では当該統計データは、現在の薬物検査レベル25パーセントを上回る海運雇用者の適切な薬物検査レベルを定める裁量を奪う根拠となり得る、米海運業における運営上の安全が低下したとの結論を支持するものではない。最低検査実施率を倍増することは追加コストを生じさせるだけでなく、海運雇用者に大きなロジスティック上の課題と運営上の混乱をもたらすものである。
(4)上述のように薬物検査で陽性が増加している(そして薬物検査の実施率を倍増する規制義務の)一次的要因はマリファナである。我々の業界は厄介な問題を抱えている。マリファナの使用が州法でますます合法となる中で、連邦法では違法のままである。州によるマリファナ合法化の進展は、州が住民にマリファナの使用が健康や安全そして雇用にどうような影響を与えるか教育する取り組みを凌駕した。雇用者は自らを引き締めて、明確なメッセージを出す必要がある。即ち米海運業で海上勤務員として働きたいのであれば、マリファナを決して使用してはならないということである。
記事参照:The USCG-Mandated Drug Testing Increase

2月23日「インドネシアの新漁業区域開設―ウエブ誌The Diplomat編集委員論説」(The Diplomat.com, February 23, 2019)

 2月23日付のウエブ誌The Diplomatは、同誌上席編集委員Prashanth Parameswaranによる“What’s in Indonesia’s New Natuna Fishing Zone in the South China Sea?”と題する記事を掲載し、インドネシア政府が発表したナトゥナ海での漁業区域開設が、4月に行われる選挙との関連において持つ意味について、要旨以下のとおり述べている。
(1)2月20日、インドネシアの海洋担当調整相のLuhut Pandjaitanは、同国が新たな漁業区域をナトゥナ諸島北部の海域(ナトゥナ海)に開設する計画を立てていると述べ、注目を集めた。この計画は、エネルギー資源開発や漁業振興、中国との関係や安全保障問題などにもまたがる、これまでのインドネシアの長期的な方針の一部に位置づけられるものである。
(2)Joko Widodo大統領のもと、インドネシアは近年エネルギー資源開発や漁業振興政策を進めてきた。これまであまり注目されることはなかったが、インドネシアは海洋施設や漁業施設の建設を進めており、日本もJICAによる資金提供など、これに関わることがあった。インドネシア漁業の成長は目標に達しているわけではないが、ナトゥナ海での漁業区域の開設はこの流れに位置づけられるものである。
(3)対中国関係も重要な側面のひとつである。南シナ海をめぐる論争においてインドネシアは公式にはクレイマント国ではないし、漁業区域の開設も排他的経済水域内のことであるが、中国はその海域を伝統的な漁場と主張している。インドネシアは近年、排他的経済水域内において違法操業をする漁船などの取り締まりを強化してきた。Pandjaitanはこの漁業区域開設に関して、中国を牽制する意味で、「その海域が自分たちの伝統的な漁場などと主張する国はどこにもないだろう」と述べた。
(4)このようにこの度の漁業区域開設のニュースは、必ずしも目新しいものではなかったが、それが注目を集めたのは、今年4月に大統領選挙が行われるためであろう。その選挙では、インドネシアの主権と領土保全へのアプローチや中国のような大国との国家間関係が重要な争点となるであろうが、その際、今回の漁業区域開設についてPandjaitanが中国との関係を念頭に、その地政学的な側面を強調したのはJokowi政権のアプローチを端的に示すものとして、選挙に際し重要な意味を持つように思われる。
記事参照:What’s in Indonesia’s New Natuna Fishing Zone in the South China Sea?

2月25日「英国によるディエゴ・ガルシア島支配の違法性―米紙報道」(The New York Times.com, February 25, 2019)

 2月25日付の米紙The New York Times電子版は、“U.N. Court Tells Britain to End Control of Chagos Islands, Home to U.S. Air Base”と題する記事を掲載し、国際司法裁判所がディエゴ・ガルシア島を含むチャゴス諸島への英国の統制を終了させるべきと判決を下したことについて、要旨以下のように報じている。
(1)2月25日、国際司法裁判所は、戦略的な米軍基地が設置されていることで知られるインド洋遠方の植民地的な前哨拠点、ディエゴ・ガルシア島に対する統制を「できる限り迅速に」終わらせるべきと英国に告げた。ハーグの国際司法裁判所の裁判官たちは、英国が米国に軍事施設としてリースするため、1965年に英国の植民地だったモーリシャスからチャゴス諸島を分離させるという非合法な行為を取ったということを13対1で採択した。国連のモーリシャス大使Jagdish D. Koonjulは「我々は、チャゴス諸島に関する、この明確で全員一致に近い判決をもちろん非常に喜んでいる」「我々は今、国連でさらなる行動を模索している」と電話で述べた。1964年に基地建設に関する米英間の交渉が始まり、基地としての建設が始まると、英国はその労働に関係のないすべての住民を立ち退かせた。追い出された推定1800人の島民の誰もが帰還を許可されていない。ソマリアのAbdulqawi Ahmed Yusuf裁判長は、英国が独立前の植民地の分割を禁じる1960年の国連宣言に違反したという判決を下したと述べた。
(2)言い渡された文言は、助言的意見としての役割を果たすだけで、強制力のある判決としての役割を果たすものではなく、裁判所は、英国による統治の終了を達成し強制的に退去された住民の権利に対処するためにどのような措置が必要かを決定するのにまったく役に立たないと述べた。1票の反対投票は、米国のJoan E. Donoghue裁判官によって投じられた。英国の外務省は、これは強制力のある判決ではないと指摘した上で、詳細については慎重に検討すると述べた。
(3)米軍基地としてのプレゼンスについては審理の間に法的問題として提起されなかったが、専門家たちは、島の状態のどのような基本的な変化も新しいリースの交渉を必要とする可能性が高いだろうと述べた。米軍基地のプレゼンスについて、Koonjul大使は「モーリシャスはディエゴ・ガルシアに対する米国の活動を混乱させるようなことは何もしないつもりであることを非常に明確にした。我々はこの地域におけるその安全保障上の必要性を十分に理解している」と述べた。
記事参照:U.N. Court Tells Britain to End Control of Chagos Islands, Home to U.S. Air Base

2月25日「仏海軍唯一の空母、大修理・近代化から復帰。アジアへ派遣―米ジャーナリスト論説」(The National Interest, February 25, 2019)

 2月25日付の米誌The National Interest電子版は、米フリーランスジャーナリストDavid Axeの“France’s Only Aircraft Carrier Is Back in Action(And Headed Asia)”と題する記事を掲載、David Axeはここで仏海軍唯一の空母Charles De Gaulleがオーバーホールを終了し、インド太平洋方面に派遣されるとして、要旨以下のように述べている。
(1)仏海軍唯一の空母Charles De Gaulleは、18ヶ月に及ぶオーバーホールから任務に復帰した。「18ヶ月に及ぶ空母のオーバーホールと近代化は、戦闘システム、搭載航空機整備設備、船殻に及ぶ」とJane'sは報じる。「新しい探知距離の長い3次元対空レーダー、より正確な航海用レーダーが装備され、ネットワークはデジタル化され、管制室は取り替えられ、通信システムは近代化された」とJane'sは続ける。格納甲板、航空機の駐機スペース、着艦システムは海軍用ラファール戦闘機の要目に対応させるよう改修された。
(2)仏軍事省は新たに近代化されたCharles De Gaulle戦闘群は2019年3月から5ヶ月間、インド太平洋方面へ展開すると発表した。同方面へ展開中、Charles De Gaulleとその護衛部隊は海上自衛隊、エジプト軍、インド軍などと訓練を実施するとNHKワールドJapanは報じている。同報道は「フランスはここ数年、インド太平洋でのプレゼンスを強化しており、中国が島嶼の軍事化を進める南シナ海を同国艦艇に航過させている」と言及している。
(3)空母を1隻しか保有しないことは問題である。Charles De Gaulleの艦載機搭乗員は修理期間中、その技量維持の方策を見つけなければならない。これが各国海軍とも空母を少なくとも2隻取得しようとする理由である。2017年に唯一の空母の修理が開始され、仏空母艦載機の搭乗員達は初めて米空母艦載航空部隊に合流した。2018年4月、27名の搭乗員、350名の整備員等はラファール戦闘機12機、ホークアイ早期警戒機1機とともに米国バージニア州に移動、陸上基地拠点での訓練後、空母George H. W. Bush搭載され、洋上訓練を実施した。
(4)Charles De Gaulleは1994年に進水しており、2040年には代替する必要がある。Euronaval 2018の会議において仏軍事大臣Florence Parlyは仏海軍が2020年に新たな空母の要求をまとめると述べた。新空母は2080年に就役することになろう。「検討期間に決定される鍵となる事項には、新空母をCharles De Gaulleと同じ原子力空母にするのか、ドイツと共同開発の新戦闘機をどのように搭載するのかが含まれる」とAFPは報じた。「フランスは依然、国際社会で主要なアクターであろうとしており、原子力空母の保有はその野望を支援する」と米RAND研究所のMichael Shurkinは述べている。
記事参照:France's Only Aircraft Carrier Is Back in Action (And Headed to Asia)

2月26日「ミクロネシア諸国が太平洋諸島フォーラムへの中台双方の対等なアクセスを要求―台湾英字紙報道」(Taiwan News, February 26, 2019)

 台湾の英字新聞Taiwan News電子版は、2月26日付で“Taiwan’s Pacific allies propose Taipei and Beijing receive equal diplomatic recognition”と題する記事を掲載し、ミクロネシア5ヵ国が、この地域において中国と台湾が外交的に平等に扱われるべきと呼びかける共同声明を発表したとして、要旨以下のように報じている。
(1)パラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、ナウル、キリバスの各政府による太平洋諸島フォーラム(PIF)の前に発出された共同声明は、同フォーラムに際し中国と台湾の双方に平等なアクセスが許可されることを推奨している。ミクロネシア連邦を除き、これらの国々は現在台湾と友好関係にある。彼らは、中国との外交関係を好んで台湾をほぼ見捨てている太平洋諸島フォーラムの加盟国に、台湾に対するより公平な政策を採用することを強く求めている。
(2)2月20、21日に開催されたミクロネシアサミットに先立ち、中国のエージェントたちは台湾支持から中国支持への転向を画策してミクロネシア諸国の政府当局者に言い寄ったと伝えられている。しかし、首脳会談の開会時には、米国のMike Pompeo国務長官がワシントンからメッセージを伝え、ミクロネシア諸国と台北との関係については米国が重要視していることを強調、台湾問題について直接的に言及した。この共同声明は、ツバルで2019年8月に予定されている第50回年次太平洋諸島フォーラムを手始めに、台湾と中国の双方からの代表者たちがすべての関連する太平洋諸島フォーラムの会場に参加するために平等にアクセスを与えられるべきであると推奨している。台湾も中国も正式な太平洋諸島フォーラムのメンバーではない。台湾はこの組織の唯一の「開発パートナー」であり、中国は、太平洋諸島フォーラムの多くの「対話パートナー」の1国として認識されている。
(3)過去に、北京はその友好国に、このフォーラムへのアクセスを台湾に許可しないように要求した。ラジオ・ニュージーランドは過去に、中国と台湾の双方が太平洋諸島フォーラムの際に「排他的」な会議を開催し、どちらの国も中央のフォーラムの会場には参加しなかったと報じている。しかし、ツバルは台北の長年の友好国であるため、今年の太平洋諸島フォーラムは類のない機会をもたらす。2018年8月、台湾の陳建仁副総統がツバル副首相Maatia Toafaと会見した後、2019年に台湾が太平洋諸島フォーラムに初めて公式代表団を派遣することが発表された。ミクロネシアの国々からの政策提言がツバルの太平洋諸島フォーラムで採用されれば、それが国際的な舞台で台湾にとって重要な発展を示すかもしれないし、それによって台湾と中国の双方が、彼らが主権国家であるとして正当に認められる。このような発展は、世界中の国際機関にとって新たな先例を示す可能性がある。
記事参照:Taiwan’s Pacific allies propose Taipei and Beijing receive equal diplomatic recognition

2月26日「国際海運会議所が船主に対して硫黄含有燃料油規制の無視を警告―米海事関係誌論説」(The Maritime Executive, February 26, 2019)

 2月26日付の海事関係ウエブサイト The Maritime Executiveは、国際海運会議所が“ICS Warns Shipowners on Sulfur Cap “Free Pass”と題する論説を掲載し、要旨以下のとおり述べている。
(1) 国際海運会議所は、船主側が抱く低硫黄含有燃料規制による安全と運航への懸念を妥当と認めた国際海事機関の決定を歓迎した。ただし、国際海運会議所は船主に対して、これが規制の無視につながらないよう警告している。MAPOL条約に基づく「燃料油以外の可用性報告」(Fuel Oil Non-availability Report : FONAR)は効力を失ってはおらず、船舶が硫黄含有燃料を常に使用できると認めたものではなく、報告に示される内容は限られた条件の下で適用できるものであり、船主は2020年にはすべての規則を遵守するよう準備しなければならない。国際海軍会議所は世界の幾つかの港では当初において0.5%の規制に従うことが難しい状況となる可能性を指摘する一方、高額となる代替燃料を使用することは考慮の範疇に入らないとも述べている。
(2) 国際海運会議所は0.5%硫黄分の燃料が無効となった場合には0.1%含有のものを積載することも念頭におく必要がある旨ガイダンスを更新した。国際海運会議所は、次のFONARが発行されたなら許可されないすべての燃料は次の港で抜き出し引き続き使用することができないことから、使用不可燃料を積載する場合は最小限度に止めるよう注意喚起している。MARPOL条約によれば、船舶を拘留するか否かは港湾当局の判断によるとされている。港湾当局は当該船舶が過去12ヶ月以内に提出したFONARと共に当該船舶の運航者が所属する他の船舶に出したFONARを判断材料として拘留の適否を検討することになる。国際海運会議所のBennett事務局次長は以上に加え、「船舶運航者は、燃料積載予定港において使用可能燃料を積載するとことを証明する書類を提出する義務を負う」と述べている。国際海運会議所は船主に対して2020年計画の実行に向って準備するよう勧告している。
記事参照:ICS Warns Shipowners on Sulfur Cap “Free Pass”

2月27日「トルコ海軍による大規模演習のねらい――英ニュースサイト報道」(MIDDLE EAST EYE, February 27, 2019)

 2月27日付の英ニュースサイトMIDDLE EAST EYEは、 “Turkey conducts largest ever navy drill as tensions rise in Mediterranean”と題する記事を掲載し、同日開始されたトルコ海軍による大規模演習のねらいと、それをとりまく東地中海の情勢について要旨以下のとおり報じている。
(1)トルコ海軍は2月27日、103隻の艦艇と数千人の兵員が参加する、トルコ史上最大規模の海軍演習「ブルー・ホームランド」を開始した。この演習は隣国のギリシアなどにとって懸念のもとであるが、それについては、近年トルコやギリシア、キプロスなどが地下天然資源をめぐって緊張を強めつつあることを考慮する必要がある。
(2)ギリシアは公的には「ブルー・ホームランド」を「いつもどおりの訓練」と見なしているし、これは純粋にトルコ軍の行動能力を知らしめ抑止力を高めるためのものだという見解もある。しかしある情報源によると、この演習は昨年9月の計画段階では実際行われたような規模ではなかったし、演習が開始されたのは、トルコのMevlut Cavusoglu外相が、石油ガス調査開始のためにキプロス周辺に船舶を2隻派遣すると宣言した一週間後のことであった。トルコのねらいは、こうした地下資源調査との関連において、隣国に対してメッセージを送ることであったように思われる。トルコはすでに10月、最初の掘削船を進水させている。
(3)エネルギー資源やエネルギー安全保障をめぐり、東地中海は微妙な状況にある。昨年11月、ギリシアとイタリア及びキプロスが、イスラエルとの間で、パイプラインの敷設とイスラエルの天然ガス購入に関する70億ドルの契約をイスラエルとの間で締結した。エジプトはキプロスとの間で石油に関する契約を結ぶことで、そこに割って入ろうとしている。
(4)「ブルー・ホームランド」の実施はこうした文脈において理解できる。トルコ軍特殊部隊に所属した経験を持つフリーの安全保障アナリストNecdet Ozcelikによれば、「ブルー・ホームランド」のねらいは、トルコがエネルギー安全保障を提供する能力を融資、資源の輸送ハブとして活動できることを示すことにあった。こうした観測は、Cavusoglu外相による「地中海でトルコなしにできることなど何もない」という発言と一致するものでもある。
記事参照:Turkey conducts largest ever navy drill as tensions rise in Mediterranean

2月27日「中国退役軍人の『米空母撃沈』発言は米国の本質を理解したものではない―米専門家論説」(The National Interest, February 27, 2019)

 2月27日付の米誌The National Interest(電子版)は、同誌寄稿ライターMichael Peckの"What Happens if China Sinks Two U.S. Navy Aircraft Carriers?"と題する論説を掲載、ここでPeckは中国退役軍人の過激な発言は無謀であり、かつ米国の本質を理解したものではないとして要旨以下のように述べている。
(1)羅援(元人民解放軍の中国軍事科学院世界軍事研究部副部長、少将)は「米国が最も恐れることは死傷者を出すことである。我々は米国がどれほど怯えるのかを目の当たりにすることだろう」と述べた。米空母を沈めることは戦争行為に他ならない。羅少将のような中国人が正しいのであれば、米国は最強国として終わりである。米海軍軍人1万人の命を戦いに賭する価値がないのなら、米国は台湾や日本、イスラエルそして西ヨーロッパを防衛しないだろう。
(2)日本の都市を焼き、後には戦略空軍を率いた米空軍大将LeMayは、好戦的な性格で悪名高かった。彼は1950年代のキューバミサイル危機でソ連に対して先制核攻撃を行うよう試み、ベトナム戦争では北ベトナムを爆撃して「石器時代に戻す」よう主張した。
(3)羅援は元中国軍事科学院副部長であり、中国の台湾進攻を支持するタカ派の軍事専門家である。羅は2019年1月に中国の軍産会議の講演で聴衆に対し、中国は南、東シナ海を巡る緊張を2隻の米空母を撃沈することで解決できると語った。羅は過去に中国が反乱地域だと見なす台湾を米海軍が基地として利用した場合には台湾進攻を行うべしと主張したことがある。LeMayは共産主義の信奉者ではなかったが、羅の感情は理解したことであろう。
(4)残念ながらLeMayも羅も積極性と無謀さの違いを十分理解していないようである。LeMayのソ連に対する先制攻撃は核超大国であるソ連との第三次世界大戦の先端を開いただろう。米国がソ連の核兵器の大部分を破壊できたとしても、ソ連陸軍の西ヨーロッパに対する復讐を引き起こしただろうことは言うまでもなく、ニューヨークやロサンゼルスに数発の核爆弾が着弾しただけで数百万の人命が失われただろう。
(5)羅は「米国が戦えないほど弱い」として中国で高まっているように思われる考えを代表している。こうした考えを持つのは中国人が最初ではない。ドイツ人や日本人も1941年に同じことを考えた(実のところ中国は、日本人が1930年代に中国を弱者だと考えたことを思い出すべきである)。羅は中国の対艦ミサイルが米空母とその護衛艦を破壊するに十分だと強調する。純軍事的には、対艦ミサイルに転用された極超音速ミサイルや弾道ミサイルがこうした目的を果たせるというのはおそらくは正しいだろう。その反面、それらの兵器は実戦でテストされていないことからそうでないのかもしれない。これこそ真の問題、すなわち米空母を撃沈することは戦争行為だということを提起するものである。
(6)米空母を撃沈することは戦争行為である。羅少将のような中国人が正しいのであれば、米国は最強国として終わりである。しかし、羅が誤っているならばどうだろう。まさに米国の力と威信の象徴である米空母撃沈に強く対応しないのであれば、如何なる米大統領も上院議員も下院議員も地位を維持できないだろう。米国の本質、国民性などに照らすと、そのような行為は真珠湾や9.11に等しいものである。
記事参照:What Happens if China Sinks Two U.S. Navy Aircraft Carriers?

2月28日「ロシア最新の通常型潜水艦、海上公試へ-ウエブ誌The Diplomat上級編集委員論説」(The Diplomat, February 28, 2019)

 2月28日付けのウエブ誌The Diplomatは、同誌上級編集委員Franz-Stefan Gadyの“Russia’s Latest Diesel-Electric Attack Sub to Commence Sea Trials in 2019”と題する論説を掲載、ここでGadyはロシア海軍のLada級通常型潜水艦の2番艦が紆余曲折を経て海上公試を行うことになったとして要旨以下のように述べている。
 (1)ロシアのProject677Lada級通常型潜水艦2番艦はKronstadtと命名され、2019年に一連の公試を実施するとロ海軍司令官Vladimir Korolyov大将は、the Rubin Central Design Bureauを2月に訪問した際、記者団に語った。「Lada級通常型潜水艦の同型艦の建造は継続される」とのKorolyov大将の発言がTASS通信で報じられている。
(2)Kronstadtは起工されて13年後に進水した。公試は、2019年に開始される。Kronstadtの建造は、設計上、技術上の問題、予算の不足から2011年に延期され、2013年にようやく再開された。「工程の遅れによってSt. Petersburg(Lada級潜水艦1番艦。Kilo級潜水艦の後継として1997年に起工され、2004年に進水、海上公試を経て2010年に就役したが、ロシア海軍は要求性能、特に推進装置の出力、ソナーシステムの性能を満たしていないとして受領を拒否。改修を経て北海艦隊に配属されたが、最終的には実験艦的プロトタイプとされた。2番艦以降の建造は中止されたが、2013年に2番艦、3番艦の建造が再開された。:訳者注)の建造と運用で得られた経験を活用することができた。Kronstadtのすべての性能要目はProject 636と呼ばれるKilo級改を上回るものである。ロシア海軍の通常型潜水艦の将来はProject 677に託されると確信している。Project 677は多くの同型艦が建造されるだろう」とAdmiralty Shipyardの CEO Alexander Buzakovは言う。
 (3)ロシア国防省はLada級潜水艦6隻を計画している。Lada級潜水艦3番艦Velikiye Lukiはロシアの最新の装備計画で確保されている。4番艦、5番艦の契約は2019年に行われると考えられているが、Velikiye Luki引き渡し後、建造は終了しそうである。代わりにロシア海軍はKilo級潜水艦の改良型であるProject 636.3 を追加調達する。
(4)Lada級潜水艦は最も先進的な改良型Kilo級潜水艦よりも小型で、安価である。しかし、十分な打撃力を有している。Lada級潜水艦は533mm発射管6門を装備しSS-N-27巡航ミサイルを含む魚雷、巡航ミサイルを搭載している。Lada級潜水艦は特殊なターゲット・ストレングス低減の素材によってきわめて低い音響特性を有している。水中排水量は2,700トンで乗組員は38名である。最新のソナーシステムと自動化戦闘指揮システムを装備している。Lada級潜水艦の主任務は対潜戦、対水上戦による沿岸防衛、監視偵察、情報収集である。
Lada級潜水艦に非大気依存型推進装置を搭載する計画は当面ないことは注目に値する。
記事参照:Russia’s Latest Diesel-Electric Attack Sub to Commence Sea Trials in 2019

【補遺】

(1) Magnetic North Relocation and Future Maritime Navigation
https://www.maritime-executive.com/editorials/magnetic-north-relocation-and-future-maritime-navigation
The Maritime Executive, 2019-02-23
By Harry Valentine, a technical journalist for the past 10-years and has more than 2 decades of research in the transportation industry
(旬報2019年2月1日-2月10日掲載、2月4日「北極を跨ぐ磁北の不思議な動きーフリーランス科学ジャーナリスト論説」(The New York Times, Feb. 4, 2019)関連記事)
米海事専門情報誌The Maritime Executiveは2月23日付で技術ジャーナリストHarry Valentineの“Magnetic North Relocation and Future Maritime Navigation”と題する解説記事を掲載し、磁北のシベリア方面への移動の兆候に関連して、これと地球温暖化及び太陽活動の変動が相まって、ロシア、カナダなどの北極圏航路の状況が大きく変化する可能性があり、将来の海運、貿易に大きな影響を与えるおそれがあると指摘している。
(2)Introduction to China’s Military Operations Other than War
https://www.rsis.edu.sg/rsis-publication/idss/introduction-to-chinas-military-operations-other-than-war/#.XHqRa3duJPa
RSIS Policy Report, February 25, 2019
Fan Gaoyue, Guest Professor at Sichuan University, and formerly Chief Specialist at the Department of Foreign Military Studies, Academy of Military Science, People’s Liberation Army.
James Char, Associate Research Fellow with the China Programme at the S. Rajaratnam School of International Studies, Nanyang Technological University.
2019年2月25日、中国・四川大学の客員教授であるFan Gaoyueとシンガポール・S. Rajaratnam School of International Studies (RSIS)の特任研究員であるJames Charは、RSISのウェブサイト上に" Introduction to China’s Military Operations Other than War"と題する共著レポートを公開した。同レポートは、人民解放軍のmilitary operations other than war(MOOTW:戦争以外の軍事作戦)や非伝統的安全保障に関する動向や今後の見通しなどを取り上げたものであるが、その要旨は次のとおりである。
・人民解放軍に関する研究は伝統的な安全保障分野に集中しており、非伝統的安全保障やMOOTWに関するものは少ない。そこで本レポートは、改革開放政策後の人民解放軍の部隊編成などの変化や質的変化を捉えることで、人民解放軍研究における陥穽を補うものである。
・人民解放軍では、以前よりテロ対策や治安維持、人道支援などの活動を実施してきたが、2006年以降、MOOTWという用語を公式に使用し始めた。MOOTWを概念化し正式な用語として活用し始めるあたり、人民解放軍は、軍内の関係機関が詳細な検討を行い、制度整備や能力開発などを開始した。それと並行して、MOOTWに関する理論研究も開始し、多くの研究文献を発表していった。
・人民解放軍のMOOTWには3つの視座がある。第一は、主に国防大学の考えであり、抑止、テロ対策、災害救助、国境警備(封鎖)、核・化学兵器・生物兵器からの防護や救助といった12の活動である。第二は、人民解放軍中央の考えであり、テロ対策やHADR、主権擁護などの6つの活動である。第三は、軍事科学院の考えであり、テロ対策、社会安定、災害救助、国際的な平和維持活動などといった7つの活動である。このように、人民解放軍のMOOTWに対しては軍内でも複数の考え方が混在しているが、そのいずれも活動には党中央軍事委員会および国家中央軍事委員会の承認が必要であるという点では一致している。
・米軍は奇しくも2006年にMOOTWという用語の使用を中止しているが、米軍と人民解放軍のMOOTWの考え方には、大きな差がある。主に異なるのは、米軍が規定していた武装解除、反乱行為対策、ストライキ対策といった活動が人民解放軍のものには含まれていないこと、また、人民解放軍のMOOTWでは政治的活動が重要視されていること、などである。
・今後、人民解放軍はMOOTWの推進に対応すべく、部隊編成が変更される可能性がある。MOOTWには伝統的な戦闘力以外の多種多様な能力が要求されるため、人民解放軍は、これらを満たすためのスキルが必要である。そして、人民解放軍はこれまでに馴染みのない分野での活動を実践していくため、NGOやボランティア団体といった市民団体と協力していく必要もあるだろう。人民解放軍のこの種の活動は、地域の信頼醸成のプラットフォーム形成に有益であり、歓迎すべきであろう。