海洋安全保障情報旬報 2018年9月21日-9月30日

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921日「インドは中国を排除しない印専門家論評」(East Asia Forum, September 21, 2018

 インド、ニューデリーにあるシンクタンクVivekananda International Foundationの研究員であるPrateek Joshiは、9月21日のEast Asia ForumのWebサイトに"The Indo-Pacific is big enough for both China and India"と題する論説を寄稿し、最近のインドの中国に対する非敵対的な姿勢は、インド太平洋地域における彼らのバランシングの試みであるとして、要旨以下のように述べている。

(1)より大きな二国間協力の前触れとなる動きとして、2018年8月、中国の国防部長魏鳳和上将が、初めてインドを訪問した。国防相会談の詳細は、ドクラムのような状況が再び現れることを避けるための措置を構築する、より大きな信頼への支持に向いている。防衛協力に関する2006年の覚書の改訂は、議題の中で優先度が高かった。インドは国境紛争に関する武漢の合意の精神の輪郭内である地域バランス戦略を試みているようだが、中国はインド太平洋における圧力の増大を避けるためにヘッジを行っているようだ。

(2)魏将軍の訪問は、日印防衛相年次会談のために、日本の防衛大臣小野寺五典のニューデリー訪問と緊密に一致しているため、より大きな重要性を担う。インド太平洋地域は一貫して日印間の会談の重要な焦点であるため、このような時に魏将軍との会談の開催を決定したことは、インドメディアによって、インド太平洋に関するその姿勢が中国を排除したり、脅したりすることはないというニューデリーによる微かなシグナルとして解釈された。武漢のコンセンサス以前において、インド領土へのすべての中国の侵入には、非難のゲームや広範なメディア報道が即座に続いた。このような出来事は、完全に無くなってはいないとしても、今は抑制されている。ニューデリーは、インドが2017年に中国の一帯一路構想(BRI)を声高に批判した後、現在はこのような公の批判を避けるようになった。むしろ、インドの首相Narendra Modiのシャングリラ対話での基調演説は、中国の膨張主義に繊細なやり方で言及したが、協調的な傾向をもっていた。これは親中国への傾斜として理解されるべきではなく、ニューデリーによるインド太平洋における独自のバランシングの道筋を計画する試みを、単に暗示するものである。

(3)中国の新たな方向性は、インド太平洋諸国とのその関係に影響を及ぼすだけでなく、BRIを激しく揺るがす地域全体の摩擦を最小限に抑えるための全般的な取り組みの一部を形成する。南シナ海における進行中の軍事化と中国が債務とスパイ活動の目的でBRIを使用しているという非難の高まりに加えて、2017年12月のスリランカのハンバントタ港の取得は、中国に対する国際的な反発の増大に貢献しただけである。インド太平洋地域では、オーストラリア、ニュージーランド及びマレーシアが、中国の拡大主義的計画を公然と批判している。BRIの壮大な計画、中国の信用とインフラプロジェクトの魅力は、BRIによる脅威を目立たなくすることができなかった。

(4)中国に対する高まる国際的な敵意を正式に承認することを避けるニューデリーの選択は、北京に一息つく余裕を提供している。インドは依然としてBRIへの参加を拒否しているが、その批判は、2017年の積極的な姿勢と比較して抑制されている。インドによる中国との貿易赤字拡大を抑制する動きである、2018年7月に中国がインドの米を輸入することに合意した後、インドと中国の経済関係に関して改善の初期兆候が見られる。戦略的シフトとして中国とインドの利益の収束が進んでいると解釈することは時期尚早であるが、このダイナミクスは、ニューデリーと北京の間の戦術的な動きとなる可能性がある。

記事参照:The Indo-Pacific is big enough for both China and India

921日「マヌス島交渉を前進させよ豪アナリスト論評」(The Strategist, September 21, 2018

 オーストラリアのシンクタンクAustralian Strategic Policy Institute(ASPI)の上席分析官Malcolm Davisは、同シンクタンクのウェブWebサイトThe Strategistに、9月21日付で "Going forward to Manus"と題する記事を寄稿し、近年の南太平洋における中国の影響力の拡大への対抗策のひとつとして、パプアニューギニアのマヌス島における軍事基地開発の重要性について、要旨以下のとおり述べた。

(1)近年、南太平洋における中国の影響力は増大しており、そのことは、オーストラリアにとって戦略上望ましくない結果をもたらすことになるであろう。スリランカのハンバントタの例を見ればわかるように、中国は一帯一路政策(BRI)における「負債の罠」外交を通じて、地域の資源や新たな市場へのアクセスだけでなく、港湾や空港の獲得を進めている。

(2)南太平洋においては、パプアニューギニア(PNG)のマヌス島に中国が開発する港ができるという見通しがあり、このことは豪政府の不安をかきたてている。マヌス島の港を中国が管理することになれば、北はグアム、南はオーストラリアへの足がかりを中国が獲得することになり、同地域への中国海軍のプレゼンスはさらに拡大するであろう。マヌスにおける対潜センサー・ネットワークや接近禁止・領域拒否(A2AD)能力の利用は、オーストラリアやアメリカ軍の活動を阻害しうるものである。中国は、アメリカとその同盟国を側面から撹乱し、包囲するという、あたかも地政学的な「囲碁」のゲームを行っているかのようである。

(3)したがって、中国がPNG政府に「拒否できない提案」をつきつける前に、オーストラリアとPNGの合同海軍基地建設に向けた合意がなされることが望ましい。習近平は11月のAPECサミットの前に、ポートモレスビーで太平洋島嶼諸国の首脳会談を計画しており、豪・PNG政府による迅速な行動が求められる。そうすれば中国の「囲碁」は後退を余儀なくされるであろう。

(4)ASPIのAnthony Berginは、マヌスにおけるオーストラリア海軍およびアメリカ海軍のプレゼンスが、PNGの海洋安全保障の強化に資すると主張した。とりわけ彼が注目するのはロンブラム海軍基地であり、また同基地の近くにあるモモート飛行場であり、同飛行場をアメリカ海空軍やオーストラリア空軍の航空機が利用可能にすることが重要であると述べた(抄訳者注:ロンブラム基地に関しては今年7月、オーストラリア国防当局者が現地を視察した)。同飛行場はBoeing 737型航空機を収容することが可能で、拡張工事によってP-8 Poseidonや無人戦闘機(UAV)Tritonを配備可能になるであろう。そうした航空戦力は、中国によるA2AD能力の利用を制限するであろう。またこの基地をめぐる交渉は軍事的な側面に限定されるべきではなく、PNG国民が受益者となる経済成長を促すような投資がなされるべきである。ここに、中国の利益を第一とする一帯一路政策との違いを強調すべきであろう。

(5)中国の野心は、台湾の統合や南太平洋のコントロールで終わるものではないであろう。中国は明らかに覇権国家として台頭しつつある。したがってオーストラリアはアメリカとともに、南太平洋におけるプレゼンスを強化し、中国のそれを制限する動きを速やかにとる必要がある。マヌス島に地歩を築くことは、その重要な第一歩となるであろう。

記事参照:Going forward to Manus

923日「地域構想に関する米印間の不一致印専門家論評」(East Asia Forum, September 23, 2018

 インド、ニューデリーにあるシンクタンクInstitute for Defence Studies and Analyses(IDSA)の研究員Jagannath Pandaは、9月23日付のEast Asia ForumのWebサイトに"Does India endorse a US-led regional order?"と題する論説を寄稿し、インド太平洋地域における、反中国的な米国主導の戦略や秩序とインドの思惑は決して一致していないとして、要旨以下のように述べている。

(1)インドと米国の戦略的パートナーシップは深化している。2008年10月に署名された民生原子力協定は、新たな始まりを告げた。また、2016年の後方支援に関する覚書(LEMOA)と2018年の通信、互換性及び安全保障協定(COMCASA)の両方が、その関係をさらに強化した。太平洋軍司令部をインド太平洋軍司令部に改名するという米国の決定もまた、この地域におけるインドの中心的役割に象徴的な賛同を与えた。

(2)この機運により、インドは、軍事的にも戦略的にも、将来において米国を強力なパートナーと仮定することは当然である。しかし、これは、米国主導の地域秩序の承認として誤解されるべきではない。地域安全保障秩序に関する米国の構想は、反中国的傾向に基づいており、「包含的(inclusive)」である地域秩序に対するインドの構想と矛盾する。中国はいくつかの面でインドに敵対者と見なされているが、ニューデリーは同様に、北京を二国間及び世界的な事柄のパートナーであるとも見ている。この見解は、今年のシャングリラ対話で、インドのNarendra Modi首相により表明された。Modiは、「インド太平洋地域は戦略、つまり、限られたメンバーのクラブである」という考えに同意することを拒否した。

(3)7月にワシントンで開催された米国主導のインド太平洋ビジネス・フォーラムにおけるインドの不在が、この点について語っていた。このフォーラムは、インド太平洋のインフラへの投資を促進するために、日本及びオーストラリアとともに開催された。これは、一帯一路構想が世界中に提供すると言っている、中国による「戦略的依存」アプローチに対してバランスをとることを望んで、米国の「戦略的パートナーシップ」アプローチを地域で推進することを意味した。

(4)米国の「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、アジアにおける米国の「戦略的同盟」戦略を補完する「戦略的パートナーシップ」を構築することに基づいている。このアプローチは、米国が主導する予定の「戦略的同盟」の枠組みを補完することなく、その戦略的パートナーシップを維持することによって戦略的自律性を維持することを目指すインドの地域秩序に対する構想と矛盾している。1つ例を挙げると、米国主導の地域秩序は、新興諸国の利益を促進し、支援することはほとんどない。米国の地域計画のほとんどは、ハイエンドの資本投資に向けられており、中国の封じ込めを重視している。

(5)インド太平洋という構築概念は、ニューデリーのアジア構想とある程度重複している。しかし、インドの地域構想は、米国がいなくてもアジア中心の秩序の下で中国が推進している構想に近い。Modiはムンバイで開催されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)会合での最近の演説で、インドとアジアの持続可能なインフラ整備のための「発展的パートナーシップ」を考慮して、中国とAIIBとの継続的な関与の重要性を強調した。とりわけ、印中の関係は、ドクラム問題の後に改善されている。今年初め、Modiと習による武漢サミットは、2014年に彼らが考え出した「発展的パートナーシップ」を軌道に再び戻した。インフラの協力は、この「発展的パートナーシップ」にとって不可欠である。物事を始めるために、Modiは、持続可能な外国直接投資と技能開発の条件を考案すると同時に、中国の企業にインドへの投資と協力を依頼した。彼の目標は、"Make in India"キャンペーンの下で、輸出主導の開発モデルを促進することである。このような観点から、インドは、インド太平洋の反中国的思考を支持することに慎重である。

(6)地域秩序に関するインドの構想は、米国主導の秩序と密接には一致していない。米国との関係を改善することは、インドが重要な地域パートナーとして中国との関係を構築することから退く用意があることをまったく意味しない。

記事参照:Does India endorse a US-led regional order?

923日「南シナ海における中比資源共有交渉、その障害と利益――比専門家論評」(South China Morning Post.com, September 23, 2018

 フィリピンのデ・ラ・サール大学政治学助教Richard Heydarianは、9月23日付のSouth China Morning Postに、"Major hurdles - and rewards - as China and Philippines try to forge deal to share South China Sea resources"と題する論説を寄稿し、中国とフィリピンによる南シナ海海洋資源共有に関する交渉について、要旨以下のとおり述べている。

(1)フィリピン政府は今年8月、南シナ海における中国との海洋資源共有の合意に向けた第一歩として、政治的・法的問題を解決するための作業部会の設置を表明した。南シナ海の領有権をめぐって中国とフィリピンはこれまで対立してきた。たとえばこの資源共有合意における重要な海域として南沙諸島にあるリード堆(Reed Bank)があるが、そこはフィリピンの排他的経済水域の内側にあると同時に、中国が南シナ海における領海だと主張する「九段線」の内側にも位置している。南沙諸島および南シナ海の主権をめぐる政治的および法的問題の複雑さを考慮すれば、この資源共有合意の実現可能性は大きいものではない。しかし、もしそれが実現されれば、同海域をめぐる地政学的論争のダイナミクスは劇的に変容するであろう。

(2)中国からすれば、共同開発を追求するというやり方は鄧小平以来の「論争は棚上げし、共同開発せよ」という方針に沿ったものと言える。しかし南シナ海論争は、中比二カ国の問題ではなく、マレーシアやベトナムも係る問題であり、外交的な解決は困難である。この問題の解決は、国連海洋法条約に基づき、相互「理解及び協力の精神」に則って目指されるべきであろう。

(3)フィリピンに関しては、2016年に大統領に就任したRodrigo Duterteの対中国政策、すなわち中国への接近という方向性と、エネルギー資源の枯渇に対する懸念が、この資源共有合意を導いたと言えよう。たとえばフィリピン第三のエネルギー供給を誇るMalampayaプラントのガス備蓄は10年以内に尽きると予測されている。アメリカ資源情報局の試算によれば、南シナ海の係争海域におけるエネルギー資源は石油54億バレル、天然ガス55.1兆立法フィートにのぼるという。

(4)フィリピンにとって同海域のエネルギー資源は非常に重要であった。しかし、中国の準軍事的部隊の存在のため、中国との地政学的な緊張の高まりの中で、その開発および利用に成功していない。それは、多国籍企業の東南アジア諸国への支援をためらわせるものでもあった。

(5)法的な問題も同海域における共同事業を妨げてきた(たとえば2005年のJoint Maritime Seismic Undertakingなど)。フィリピン憲法は、フィリピンの排他的経済水域内における多国間共同事業を禁じている。それに加えて、2016年の南シナ海仲裁裁判所裁定は、中国が主張する「九段線」は合法でないと結論づけた。つまり中比両国による南シナ海の共同開発合意は、なんであれ、フィリピン憲法と仲裁裁判所裁定に違反する可能性がある。Duterte政権は憲法修正を模索し、また仲裁裁判所裁定を無視することで、中国との資源共有合意を目指している。しかしこうした合意がなされれば、それは領有権を主張する他の国々にも影響を与えかねず、最終的に中国の南シナ海における主張を正当化することにつながりかねない。

(6)いずれにしても中国とフィリピンは、あまり論争的でない共同調査活動などを資源共有合意に向けた第一歩として開始する可能性がある。ただし長期的に見て、それがスムースに進むかどうかは、かなりの程度政治的な意志にかかっている。Duterteの後継者が、彼とは異なるイデオロギー的信念ないし戦略的計算から、より強硬な姿勢を見せる可能性も十分にあるのだ。

記事参照:Major hurdles - and rewards - as China and Philippines try to forge deal to share South China Sea resources

924日「軍事パレードに対するテロ攻撃に伴うイランとサウジアラビア等との緊張関係独メディア報道」(Deutsche Welle, Sep 24,2018

 ドイツの国際放送局Deutsche Welleは9月24日付で同局Webサイトに"Iran threatens Saudi Arabia after Iran parade attack"と題する記事を掲載、9月22日に生起したイラン軍事パレードに対するテロ攻撃がサウジアラビアとの間にもたらす緊張関係などについて各国の中東専門家の見通しを要旨以下のように報じている。

(1)イランとサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など湾岸近隣諸国との関係は25人が死亡したアフワーズでの軍事パレードに対するテロ攻撃後、緊迫している。イラン国内のイスラム国(IS)などのグループが犯行声明を出しているが、イラン政府はサウジアラビア、UAE、そして米国がこの攻撃者を支援していると指摘している。

イラン最高指導者Ayatollah Ali Khameneiは「この行為は米国が援助し、サウジアラビアとUAEが資金提供する人々により実行された」と公式Webサイトで述べた。 また、イラン革命防衛隊副議長は、米国とイスラエルに対しイランからの「壊滅的な報復」を予期すべきと警告した。一方、サウジアラビアはイランの声明に沈黙をもって対応しているが、UAEのAnwar Gargash外相は「UAEへの扇動は残念」と語った。また、米国は「テヘランの主張は根拠がなく、イランは鏡を見るべきだ。」と主張している。

(2)ワシントンAtlantic Councilのイラン専門家であるHolly Dagresは、この攻撃がイラン・イラク戦争を記念する軍事パレードで実施されたことに触れ、「アフワーズでは革命防衛隊員のみならず退役軍人や幼い子供のいる家族も参加していた」として、イランにとってこれが大きな問題であることを指摘、イランにとっての脅威は湾岸の近隣諸国と米国によってもたらされる安全保障上の問題であると述べている。

 イランではアラブ人分離主義者グループが事件の背後にいるとの見方が強く、革命防衛隊のAbolfazl Shekarchi准将は、IRNA通信に「テロリストは湾岸の2ケ国で訓練を受けた者」として、ISによる犯行ではないと述べた。イラン国内のアラブ人分離主義者は、イラン国内のペルシャ人から差別を受けていると主張し、イラクとの国境地帯にあるクズスタンの独立を求めており、イラン外務省はUAEなどの湾岸近隣諸国がこれらのメンバーを支援していると考えている。

 イランのアラブ人分離主義グループがUAEなど近隣湾岸諸国からの支援を受けているという具体的な証拠はないが、Dagresはその可能性が高いと指摘している。

 サウジアラビアとイランは元より緊張関係にあり、 過去にはサウジのMohammed bin Salman皇太子がイランの脅威に言及、これが王国の安全保障を危険に晒す可能性について、2017年のインタビューで「サウジアラビアでの戦闘が始まるまで待つつもりはなく、極力イランでの戦闘となるよう努力する」と述べている。

(3)アフワーズでのテロ攻撃は両国間の緊張を引き上げるだろうと言われているが、結果として軍事衝突までには至らないだろうと専門家達は考えている。サウジアラビア専門家であるハンガリーGIGA中東研究所のJens Heibach研究員は、「サウジアラビアはイエメンとの紛争を抱えており、新たにイランと戦端を開く余力はない。」として「本件がイランとサウジアラビアとの直接的な軍事衝突につながるとは思えない。」と指摘している。

 Dagresもテヘランとリヤド間のエスカレーションは起こり得ないとして「サウジサウジアラビアとイランなど地域大国同士の対立は米国のようなワールドパワーを引き込むことになる」と指摘しつつ、イランは同地域における代理戦争を激化させる可能性もあると述べている。例えば、レバノンやシリアのヒズボラなどの代理グループによるイスラエル攻撃であり、イランはかつてサウジアラビアに向けロケット弾を発射したイエメンのハウチスにより多くの軍事的な支援を提供することもできるだろう。

 「イランはサウジアラビアに対して直接的な報復をするのではなく、イランの代理人にメッセージを伝えることに頼っている」とDagresは指摘している。

(4)イランによるそうした報復行為は米国の怒りを招き、イランを国際社会から隔離してその影響力を減殺しよう画策しているTrump政権の施策を後押しすることになるだろう。これについてワシントンDC在住の政治アナリストEmad Abdul Hadiは「緊張が高まる可能性が高い」と指摘し、Trump大統領は国連にイランがこの地域におけるテロリズムのスポンサーであると国連に信じせしめ、イラン核合意からの米国の離脱を正当化しようとする中、米国とイランとの外交的な敵対関係が顕著になっていると指摘する。

記事参照:Iran threatens Saudi Arabia after Iran parade attack

924日「米原子力潜水艦の導入は豪にとって安上がりな選択肢か?豪専門家論説」(The Strategist, September 24, 2018

 Australian Strategic Policy Institute (ASPI)の国防経済及び国防力の上席研究員Marcus Hellyerは、9月24日付の同シンクタンクのWebサイトThe Strategistに"Going nuclear: would US submarines be a cheaper option?"と題する記事を投稿し、原子力潜水艦の導入にはそのものの価格だけではなく、支援システムの構築費用も考慮する必要があり、導入予定の通常型潜水艦に比べ極めて高額になる。しかし、価格が価値を決める訳ではなく、原子力潜水艦の能力を考慮すれば、導入予定の通常型潜水艦と同数を調達する必要はないとして、要旨以下のように述べている。

(1)原子力潜水艦取得に関する議論はずっと活発に行われ続けている。しかし、Abbott元首相が記しているように、政府は原子力潜水艦という選択肢を精査したことはない。したがって、合意された事実上の基準はなく、原子力潜水艦に対する一般の主張は憶測に過ぎず、たぶん疑問符が付くかもしれない。例えば、米海軍のVirginia級原子力潜水艦の調達はオーストラリアで設計、建造されているNaval Group社(旧DCNS)のShortfin Barracuda級潜水艦の価格と同等かそれよりも安価であると言われているなどである。

(2)豪政府がその海軍建艦計画を放擲し、米国がその造船所からすぐ入手が可能なVirginia級原子力潜水艦を売却する意思があると仮定してみよう。その価格はどのくらいだろうか?1つは存在し、1つは存在していないという非常に異なる2つのことを比較してみることは困難な作業である。Virginia級原子力潜水艦は約8,000トンである。Shortfin Barracuda級潜水艦は4,500トンから5,000トンの間のようである。したがって、他の要素が全て同じであれば、Shortfin Barracuda級潜水艦の価格はVirginia級原子力潜水艦の約6割である必要がある。ランド研究所が2015年に行ったオーストラリアの造船業の調査では、水上艦艇だけを対象として行われたものであったにもかかわらず、オーストラリア国内での建造は米国に比べ歴史的に3、40パーセントの割り増しとなっている。政府の継続される建艦政策の目的はこれらの割り増しを削減することにある。しかし、たとえそれが起こらなかったとしても、Shortfin Barracuda級潜水艦はより安価のように思われる、

(3)我々は両潜水艦について利用可能な公開情報を比較することができる。ここで比較される米国での情報の質に大きな差があることに留意しなければならない。米国防総省の2019会計年度艦艇建造に関する予算見積もりが32億5,000万ドルというVirginia級原子力潜水艦の単価を提供している。これに12を掛け(豪は潜水艦12隻を調達予定)、現在の為替レートから537億豪ドルという答えが出る。上院公聴会での質問に答えて、国防当局者は12隻のShortfin Barracuda級潜水艦の設計、建造にかかる調達の全経費は500億豪ドルと見積もっていると述べていた。オーストラリアの計画に対する価格にはShortfin Barracuda級潜水艦を部隊運用できるようにするために必要なもの全てが含まれている。将来の潜水艦計画の場合、潜水艦用係留岸壁、訓練施設、試験設備、シミュレーターなどが含まれる。Virginia級原子力潜水艦とShortfin Barracuda級潜水艦を同列に比較するためにはこれらの要素をVirginia級原子力潜水艦の537億豪ドルに加えなければならない。それらはどのくらいかかるのか?多くのことは原子力推進システムを安全に支援するのにどれだけのインフラが必要か、評論家の間でコンセンサスが得られていないその他の領域にかかっている。これらの問題はさておき、Collins級潜水艦からVirginia級原子力潜水艦へ移行することは、大変なことであり、支援システムの他の部分を全て換装する必要がある。統合打撃戦闘機用の15億ドルの施設が霞んで見えるかもしれない。

(4)将来潜水艦計画見積には設計料も含まれる。しかし繰り返すが、Virginia級原子力潜水艦1隻当たりの32億5,000万ドルには含まれていない。Virginia級原子力潜水艦の設計経費のうちどのくらいの割合を米国は我々に請求してくるだろうか?過去の設計費用を除外するとして、Virginia級原子力潜水艦の将来型に対する性能向上のための設計経費のうち、どのくらいを建造に支払うのか?国防経費は通常インフレと価格上昇を考慮に入れた額になることを忘れてはならない。我々はかつての論説で予定価格等の上昇についてある仮説を立て、将来潜水艦計画の固定見積もりとして500億ドルと提言したが、790億ドルになるかもしれない。Virginia級原子力潜水艦の537億ドルという価格は本質的に固定価格であり、一旦我々がそう決定すれば、支援システムの全ての要素を加えると1,000億ドルを下回るとは考えにくい。

(5)加えて、運用経費がある。Virginia級原子力潜水艦の乗組員数135名はShortfin Barracuda級潜水艦のほぼ2倍であることを考えると、必要となる追加の乗組員には毎年4億ドル以上がかかるだろう。そして、運用経費はその大きさに比例するので8,000トンのVirginia級原子力潜水艦は5,000トンのShortfin Barracuda級潜水艦の維持よりも経費がかかることは疑いがない。我々は現在、6隻のCollins級潜水艦を維持するのに毎年5億9,200万ドルを支払っている。私は、Shortfin Barracuda級潜水艦の運用経費はこの3倍であり、Virginia級原子力潜水艦はShortfin Barracuda級潜水艦の倍であると予測している。12隻のShortfin Barracuda級潜水艦と12隻のVirginia級原子力潜水艦の運用経費の差は年約15億ドル、乗組員の経費を加えると20億ドル近くになるだろう。したがって、潜水艦の寿命を通して600億ドルが追加で必要となる。そして、それは固定の値であり、実績ではない。再び指摘するが、最も不確実なことは原子力潜水艦を支援するのに必要なインフラ経費である。

(6)これらの仮定について議論することは可能である。それは価格推定の術と科学の基礎である。しかし全体として、12隻のVirginia級原子力潜水艦の価格が12隻のShortfin Barracuda級潜水艦よりもどれほど安価であるかということを見ることはこれまで指摘したように非常に困難である。今、価格は価値と同じことではない。人が議論できるのは、将来潜水艦計画として有効であるかについてであって、本来、潜水艦の特定の隻数についてではない。原子力潜水艦のより大きな機動力、滞洋力、充電のために哨区を離脱する必要がないこと、より大きな武器搭載量から、原子力潜水艦はより有用であるので、Shortfin Barracuda級潜水艦12隻と同等あるいはそれ以上の有用性を得るために12隻のVirginia級原子力潜水艦を購入する必要はない。

 これは理に適っている。しかし、議論は他の機会にしたい。

記事参照:Going nuclear: would US submarines be a cheaper option?

925日「インド洋地域における地政学的対立と経済スリランカ専門家論説」(Center for International Maritime Security (CIMSEC), September 25, 2018

 スリランカ海軍のRoshan Kulatunga少佐は9月25日、国際海洋安全保障センター(Center for International Maritime Security)に"Geopolitical Competition and Economics in the Indian Ocean Region"と題する論考を寄稿し、要旨以下のとおり述べている。

(1)はじめに

 冷戦の時代のインド洋は、アメリカが卓越したマリタイムパワーとして、ソ連がランドパワーとして優越的立場にあった。海洋での力が欠如していたソ連は、存在感を失っていくこととなった。Alfred T. Mahan提督は、シーパワーを4つの要素に分けている。地理的有利性、利用可能な港湾、領域、人口、国民性、そして政治的特性である。Mahanのシーパワー論は、現代においても海洋世界の構造を形作っている。21世紀、世界の海洋を結ぶインド洋シーレーンに域内・域外から多くの国家、非国家主体がアクセスを強めている。域外国家としてアメリカ、中国、日本とロシアがシーパワーとしてのプレゼンスを狙っている。

(2)シーパワー構想

 イギリスは、世界に先駆けてシーパワーを及ぼすことによって地勢戦略的優位性を確保することができた。安全保障は軍事、政治、経済、社会、そして環境の5つから成り立つと言われる。海洋においても当てはまる。アメリカのMichael Glenn Mullen退役海軍大将は、「古典的海洋戦略はシーコントロールを重視したが、現代では、経済交流は1つの国によってシーコントロールされている状態ではなく海洋が安全で自由な情況にあることによってもたらされる」と述べている。シーパワーは戦闘能力だけの概念ではない。古典戦略では、シーパワーには「制海権(thalassocracies)」が重視された。現在のインド洋では、域外国が軍事・商業の双方から影響力を及ぼそうとしている。

(3)インド洋の地政戦略と地政学的意義

 インド洋には、コンテナ船やばら積み船が寄港するグワダル、チャハバール、ハンバントタ、コロンボ、チッタゴンナドがある。これらの港は域内国に地政戦略的な力を与えている。これらの港湾を有する国は紛争もまた抱えている。域外国はインド洋地域の紛争要因の解決が必要であり、そのために影響力を及ぼすことになる。

(4)インド洋地域における域外国の力関係

 環インド洋には35の沿岸国とそれに隣接する12カ国の47カ国がある。アメリカ、中国、日本やロシアのような主要な域外国とインド洋地域47国の関係は、他のすべての域外国の利益を左右することになる。中国は「一帯一路構想」に基づきインド洋に進出し、アメリカは西太平洋から海洋アジアに伸びる力の重要性を認識し、太平洋軍をインド太平洋軍と改名して影響力を強めようとしている。しかしながら、多くの国々は自国経済のために、チョークポイントやシーレーンの安全に関心を持っており、海洋秩序の維持を阻害するような域外国の介入に協力することに消極的である。インド、アメリカそして中国は、インド洋における自国の利益を拡大することを企図して影響力を及ぼしており、それによってインド洋のブロック化を招くことが危惧される。中国が南シナ海からインド洋へと進出する中で、アメリカはそれを危惧するインドとの連携強化を図っている。中国もアメリカもインドも、自国国益の最大化を図って域内国にパートナーを作ろうと画策する。スリランカやモルディブのような小国はどちらのブロックに入るかの判断に窮している。南シナ海問題やマラッカジレンマを抱える中国は、ミャンマーやバングラディッシュへの接近を強める一方でハンバントタやグワダルに足掛かりを作ろうとしている。アメリカとインドは中国の影響力を弱めることに共通の利益を持っている。

(5)インド洋における安全保障上の脅威

 インド洋地域においては、海賊や違法操業、海洋汚染などの非伝統的な脅威が顕著である。ソマリアの海賊はインド洋における交易に対する脅威との認識を世界に生じさせ、多国間協力による対処を可能とした。違法操業などへの対処にも同じような構造をみることができる。そのような脅威への多国間対処にはMaritime Domain Awareness のメカニズム構築が必須となり、そのためには外交と対話が重要となる。一方で、世界第3の広さを持つインド洋では域外国がプレゼンスを強めようとしている。中でも、スリランカやバングラディッシュ等に足掛かりを作ろうとする中国の動きが顕著である。それがこの地域のパワー・バランスと伝統的な地域国際関係を流動化させている。

 エネルギー・物流の大動脈としてのインド洋の安全保障は全ての国の関心事項であり、すべての国の責務でもある。

記事参照:Geopolitical Competition and Economics in the Indian Ocean Region

925日「モルディブの政権交代が中印の勢力圏争いに与える影響スウェーデン専門家論説」Asia Times.com, September 25, 2018

 スウェーデン人ジャーナリストのBertil Lintnerは、9月25日付のWeb誌Asia Timesに"India wins, China loses in Maldives election"と題する論説を寄稿し、モルディブの政権交代は同国における中国優位の状況を変化させ得ると指摘した上で、要旨以下のように述べている。

(1)中印の代理戦であったインド洋モルディブの大統領選挙は、親ニューデリーの大統領候補Ibrahim Mohamed Solihが勝利を収めた。親中派のモルディブ大統領Abudulla Yameenは、広く親インド派と目されるMohamed Solih野党候補に対して選挙で敗北したことを9月24日に認めた。インド外務省は中間集計の段階で「インドは第3回大統領選挙が成功裏に行われたことを歓迎する。我が国は心からIbrahim Mohamed Solih氏の勝利を祝福するものである」と声明を出した。

(2)北京は選挙結果に対して未だ反応を示していない。確かに中国とモルディブの友好関係はYameenが権力を握った2013年以前に遡るものである。しかしながら、モルディブの伝統的な同盟国であるインドにとって大変残念なことに、まさにYameen大統領在任中に中国とモルディブの一層緊密な絆が育まれた。習近平は2014年9月にモルディブを訪問し、同国首都マレ近郊のフルレ島に所在する国際空港を中国企業が改修する合意を結んだ。習近平のモルディブ訪問からわずか2か月後の2014年12月にモルディブは、習の野心的「一帯一路構想(BRI)」を支持する覚書を北京と調印した。空港の拡張等のインフラプロジェクトは全てBRIの一環であった。

(3)中国とモルディブは戦略的にも協力していた。本年すでに中国とモルディブは、北方最先端の環礁Makunudhooに共同海洋観測所を設ける計画を発表した。The Times of Indiaのあるライターは当時、当該施設が「中国に重要なインド洋における航路で有利な地点を与え、中国がインドに効果的に対抗することを許してしまう」と指摘した。

(4)298平方キロメートルの土地に417,000人が住むモルディブは国土と人口の観点からは小国であるが、同国の1,000以上の珊瑚島と環礁は北南750キロメートルに及ぶ広大な海域をカバーしている。自国への近接性に鑑みて、ニューデリーは常にモルディブを自国の地域勢力圏にあると見なしてきた。

(5)Mohamed Nasheedはモルディブ政治史に新たな、一層民主的な章を開き、インドとの緊密な関係を維持した。しかしながら、Nasheedは2012年に議論を呼ぶ状況下で辞任を余儀なくされ、Yameen大統領在任中の2015年に投獄された。Nasheed逮捕を巡る状況は人権団体のアムネスティ・インターナショナルに「政治的な動機に基づいている」と評され、米国務省の非難も受けた。2016年にNasheedは英国への出国を許され、同地で亡命を認められた。Yameenが政敵の釈放を拒否したことを発端とする2018年2月の政治危機において、Nasheedはインドと米国に介入を訴えた。Nasheedはインドに「軍の支援を受ける十分な影響力を持った」当局者の派遣を要請さえもした。

(6)マレの中国大使館はNasheedの主張に対して、彼の発言が「地域の安全保障を損ない、中国人民の感情を傷つけるものである」と反論した。中国の国営タブロイド紙Global Timesは、2月13日付で具体的な手段に言及することなく「中国はモルディブでインドの軍事行動を制止するだろう」し、国連のお墨付きがない軍事介入には「正当な理由」がないとする記事を掲載した。

(7)インドは2月危機に際して軍事介入を行わず、選挙を待った。選挙結果が発表されると亡命生活のほとんどをスリランカで過ごしてきたNasheedは、コロンボで報道陣に対してスリランカ政府が新大統領への円滑な政権移行を確実にすべく「一層強固にプロセスに関与する」よう呼びかけた。実際の政権移行は11月まで行われないだろうし、高度に戦略的な利害を踏まえると、しばらくの間、何が起こるかは不透明である。

(8)Yameen政権下で事実上脇に追いやられていたインドは、新大統領の平和的かつ安定的な政権移行によって権力を取得するとの主張に対して与え得る支援を行うだろう。Solihの大統領選出と、中国の増大する地域的な利益に戦略的に重要となったモルディブから同国の影響力が失われ得る事態に、北京がどう反応するかは現時点では判然としない。

記事参照:India wins, China loses in Maldives election

925日「一帯一路構想発表から5―CSIS専門家論評」(CSIS, September 25, 2018

 米国、ワシントンにあるシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は、9月25日付でWebサイトに"Experts React: China's Belt and Road Initiative Turns Five"と題する記事を掲載し、CSISの3人の専門家(Jonathan Hillman、Taiya Smith、Jane Nakano)による発表から5年経った一帯一路構想(BRI)の見解について、要旨以下のように紹介している。

(1)Jonathan Hillman(CSIS上級研究員)

a. 協力のレトリックで覆い隠された巨額の投資計画である一帯一路構想(BRI)は、北京がコントロールするために悪戦苦闘するローラーコースターとなった。BRIの大規模で、しばしば非現実的な投資数は80カ国以上を魅了している。いくつかの国が彼らの開発戦略をBRIと結びつける意向を発表している。中国政府当局者たちは、BRIは新しく、そして改善された形のグローバリゼーションであるという主張すらしている。一方で、BRIは、最近深刻な安全保障と主権の問題に影響している。持続不可能な債務、暗黙の戦略的動機、腐敗、中国企業に対するえこひいき、そして、環境的及び社会的影響についての懸念が高まっている。

b. しかし、実際中国当局者たちは、BRIをどの程度コントロールしているのか?政府当局者によると、BRIには、アジア各地とその外に、物資、人及びデータを運ぶ6つの経済回廊が含まれるが、我々の調査によれば、その中国の投資は、それらの範囲内で、その回廊の中の5つの回廊の外部に出る可能性が高い。例外は、中国と単独の国を結ぶ唯一の回廊である中国・パキスタン経済回廊(CPEC)である。中国の公式計画と実際の活動との間のギャップは、利益団体が習近平の署名の権利を歪曲していることを示唆している。BRIは、サイバー空間、北極、さらには宇宙空間まで網羅するようになり、そして、現在BRIブランドのファッションショー、マラソン及び美術展示が行われ、より多くの利益団体が利権のための闘争に参加する。

c. BRIをより安定した軌道に乗せるために、北京はどのプロジェクトが資格を得るのかという基準を導入すべきである

(2)Taiya Smith(CSIS非常勤上級アソシエート)

a. 中国のBRIの環境への影響が問題をもたらしている。今月、パキスタンは、その新政府が中国の投資を見直し、不当に中国企業に利益をもたらし、環境基準が不十分であると述べている10年以上前に署名された貿易協定の再交渉を発表した。インドネシアも同様に、環境影響調査が不十分であるため高速鉄道の方針が頓挫した。一方、中国銀行と中国水电(Sinohydro)から資金提供を受けているインドネシアの水力発電ダムプロジェクトは、世界で最も希少な類人猿タパヌリオランウータンの唯一知られている生息地を害しているため批判を受けている。ベトナム、ラオス及びカンボジアは、BRIプロジェクトによってもたらされた環境被害、またはプロジェクトの計画実行における脆弱な環境計画立案について全面的な苦情を申し立てている。

b. その新たに発生した悪評に対応して、中国政府は昨年、"Guidance on Promoting Green Belt and Road"を発表した。このガイダンスは、環境に配慮した開発プログラムがどのようであるべきかを説明したものである。ガイダンスはどんな法的強制力ももたないため、それが、どれほど影響力があるのかを知るのは時期尚早である。しかし、もし中国がBRIの環境方針を変えることができないならば、中国は、開発プログラムを装って他国を搾取する罪を犯すだろう。

(3)Jane Nakano(CSIS上級研究員)

a. まだ回答が得られていない5年前のBRIの立ち上げの背景にある北京の動機に関する最大の疑問は、BRIが中国の過剰生産能力を海外へとまさに送ろうとしているのかどうか、そして、BRI関連のエネルギープロジェクトが地球規模の気候変動の取り組みに利益をもたらすかどうかである。中国は、今日の世界でトップのクリーンエネルギー投資家になっている。しかし、中国が輸出する石炭火力発電所による排出ガスの影響は、引き続き細心の注意が必要な問題である。中国の財務活動に関連しているデータの不足と透明性の欠如は、BRIエネルギープロジェクトによる炭素の影響を追跡することを困難にし続けている。

b. ほんの数年前、中国は、「国内外の深刻な公害や炭素排出量が伴うプロジェクトに流れる公的投資を厳格に管理するという観点から、グリーン及び低炭素政策と規制を強化する」コミットメントを発表した。地球規模での炭素排出量の課題に取り組むには、中国がこのコミットメントを果たす必要がある。そして、中国は、近隣諸国からのそのBRI支援活動に対するいくつかの最近の抵抗へ反撃する新しい手段の1つとして、このコミットメントを必要としているように思える。

記事参照:Experts React: China's Belt and Road Initiative Turns Five

928日「『一帯一路』構想(BRI)だけでは中国主導秩序は非現実的、香港紙報道」(South China morning Post, September 28, 2018

 香港紙South China Morning Post(電子版)は、9月28日付の "China's new world order 'unrealistic' if built on belt and road alone, senior US diplomatic observer says"と題する記事で、このほど北京で開催されたフォーラムで、米外交評議会上席研究員Miles Kahlerが「一帯一路構想(BRI)」だけでは中国主導秩序の実現は非現実的と指摘したとして、要旨以下のように報じている。

(1)米外交評議会上席研究員Miles Kahlerは、中国がその大規模なインフラ投資を通じて、新たな世界秩序の選択肢を構築しようとするのは現実的ではない、と指摘する。何故なら、地域各国は、北京かワシントンかのいずれかの選択を迫られることを望んでいないからである。北京の「一帯一路」構想(BRI)は、既にマレーシアで挫折し、モルディブでも先行きが懸念されている。Kahlerは、北京で開催されたフォーラムで、地域各国は守るべき自らの国益と自律性を持っており、「特にアジアに多い中規模の国は、米国主導の秩序から中国主導の秩序に移行することに関心を持っていない」と述べた。

(2)米国は7月に インド太平洋地域向けに1億1,300万ドルの新たな投資計画を発表した。それに先立って、EUも、持続可能性を重視したアジア向けのインフラ投資計画を公表した。前出のKahlerは、アジア諸国は域内での大国間の競争を望んでいるが、いずれかの大国が支配的になることを望んではいないとし、もし中国が「発展途上国を取り纏めて」中国主導の秩序を構築しようと望んでいるなら、それは豊かで技術的に進んだ国を目指す中国の野心にとって有害となろう、と指摘している。「何故なら、それは天然資源と商品をもたらすだけの発展途上国に対する貿易と投資によって実現するものではなく、そのためには先進工業諸国との取引が避けられないからである。」

記事参照:China's new world order 'unrealistic' if built on belt and road alone, senior US diplomatic observer says

929日「中国の悪夢、2020RIMPACの南シナ海での実施米、越専門家提案」(The National Interest, Blog, September 29, 2018

 米誌The National Interest(電子版)の9月29日付ブログに、ベトナム国際問題専門家Tuan Phamと、日本戦略研究フォーラム上席研究員Grant Newsham(米海兵隊退役大佐)は連名で、"China's Worst Nightmare: RIMPAC 2020 in the South China Sea?"と題する論説を寄稿し、2020年のRIMPAC演習が南シナ海で実施されることになれば、それは中国にとっての悪夢となろうとし、興味深い提案をしている。本稿の筆者らは、南シナ海における中国の跳梁跋扈をこれ以上許さないために、「非現実的」などといった異論を承知の上で、議論を広めるために敢えて南シナ海でのRIMPAC 2020実施を提案している。以下はその要旨である。

(1)2年毎にハワイ周辺海域で実施されるRIMPAC演習は2020年に第27回目となる。2020年の RIMPAC演習を想定してみよう。この2年間のシャングリラダイアログでインド太平洋地域が焦点となったこと、そして米Trump政権の国家安全保障戦略と国防戦略が提示するインド太平洋地域重視の方針に従って、RIMPAC 2020 を南シナ海で実施することを真剣に検討すべきである。

(2)マラッカ海峡から台湾海峡に至る広くかつ水深の深い南シナ海は、水上艦艇、潜水艦及び航空機が参加する大規模部隊に多様な戦術的演習環境を提供し、実戦的で複雑な海洋演習が可能である。さらに、南シナ海には、水陸両用作戦、実弾射撃そして艦船撃沈演習といった、ハイエンドな戦闘演習が可能な公海と空域がある。では、運用面ではどうか。RIMPAC 2020への参加が見込まれる、日本、韓国、インド、スリランカ、イスラエル、英国、フランス及びドイツは演習海域への移動距離が短くなり、一方、沿岸国のベトナム、フィリピン、ブルネイ、シンガポール、マレーシア及びタイは自国の母港から直接参加でき、また外国参加艦艇の受け入れが可能であり、将来的な防衛協力を促進することもできる。他方、米海軍は、シンガポールに西太平洋兵站グループ司令部(CLWP)、日本に第7艦隊があり、東南アジアにおいて広範な戦域安全保障協力活動を実施しており、RIMPACを主催する米太平洋艦隊を補完できる態勢にある。

(3)南シナ海でのRIMPAC 2020は、以下の戦略的効果が期待できる。

a.戦略上重要な海上交通路を支配しようとする北京の広範囲の活動―7つの人工島の軍事化による支配の強化、南シナ海での中国版 RIMPAC の実施など―を妨害する。

b.国際規範を共有する他の諸国に対して、過剰な海洋権限主張に対抗する「航行の自由作戦」(FONOP)を慫慂する。領有権主張国(ベトナム、フィリピン、ブルネイ、マレーシア、インドネシア及び台湾)、域内諸国(オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国及びインド)、そして域外諸国(英国、フランス及びドイツ)は、米国が真剣であり、法による支配を維持することが長期的な集団的国際努力の一貫であると考えるなら、南シナ海におけるFONOPと関連する軍事、経済活動を、個々に、あるいは合同で実施する意志を高めるかもしれない。

c.Talisman演習やMalabar演習など、南シナ海の公海で実施される多くの海洋演習の実施要件を設定し、そうすることで沿岸国が国連海洋法条約(UNCLOS)の下で当該自国のEEZ内での外国の経済的、軍事的活動を規制する権利を有するとの中国の法的立場―ただし、中国は他国のEEZ内では正反対のことを行っている―を事実上無視する。中国は過去3回のRIMPAC で米国のEEZ内に情報収集艦を派遣したが、米国と他国の海軍が中国のEEZ内で同様のことをした場合の北京の反応とは違って、ワシントンはこれに反対しなかった。他国のEEZ内への情報収集艦の派遣は、前例がないわけではなく、また国際法違反でもないが、中国がUNCLOSの下での海洋権限の解釈に対して強い影響力を行使する意志を持つ大国であることを、世界に思い知らせることになった。このことは、北京がUNCLOSの規定を選択的―即ち、好ましい規定を遵守し、そうでない規定を無視するか、再解釈する―に運用していることを示している。要するに、北京は、自らの海洋権限には敏感だが、他国の同様の権限に対しては必ずしも容認したり、受け入れたりしているわけではないのである。

d.特に情報収集艦を派遣せず、RIMPACの交戦規定や行動規範を遵守するという条件で、中国をRIMPACに再度招待する機会となる。もし北京が招待を受け入れるなら、それは、2016年の南シナ海仲裁裁判所裁定が「紙くず」ではないことを暗黙裏に認めることになるとともに、慣習国際法の下で公海と他国のEEZ内での軍事活動が完全に合法であり、UNCLOS 第58条の下でも同じであるとする、米国の法的立場を受け入れることを意味する。多数の国(中国以外の全ての国連安保理常任理事国を含む、100カ国以上)はUNCLOSの解釈に関して米国と同様の法的立場をとっており、わずかに27カ国が北京の解釈と同様の立場をとっている。従って、北京が招待を受け入れなければ、北京の域内及び世界における立場を損ね、北京を不安定化勢力とする域内諸国の認識を強めることになろう。

e.戦略上重要な海上交通路に既得権益を有し、かつ南シナ海領有権主張国でもある台湾を、RIMPACに招待する機会となる。

f.南シナ海において長い間求められてきた、海洋状況把握(MDA)措置を促進し、域内受け入れ国に経済的恩恵をもたらし、そして南シナ海の一部で未だ活動する海賊行為を阻止する。

(4)しかし、南シナ海でのRIMPAC実施には障害もある。特に、各国に参加を説得することである。中でも北京は、南シナ海でのRIMPACを南シナ海における中国の議論の余地なき主権主張に対する挑発的な行為と断じて、さらには中国の平和的台頭を封じ込めるものとして猛反発するであろう。北京は、参加が見込まれる国に対して説得したり、恫喝したりするであろう。応じない国は、恐らく北京の政治的、経済的報復や軍事的威嚇に直面することになろう。従って、域内外の国に参加を説得するためには、米外交の真剣な努力が必要である。

(5)この40年間の米国の期待(そして誤った希望)に反して、中国は、周辺諸国そして米国さえも軍事的に脅かすに十分強力な存在になってきた。さらに経済的に強欲であることに加えて、中国は、益々高圧的になり、自らの世界秩序―中国による支配を目指している。Trump政権は、北京に対して真剣に挑戦している最初の米政府であり、そして皮肉にも、こうした努力は米議会において超党派的な支持を得ている。さらに、米国や西側の産業界さえも、中国市場から得られる富への期待が幻想に過ぎないかもしれないことを理解し始めている。従って、 RIMPAC 2020を南シナ海で実施することは、それが「法による支配」と国益を強く主張するための経済、外交そして情報分野を含む、極めて広範な米主導の多国間努力の一貫である限りにおいて、効果的であろう。逆に、それが単なるRIMPAC 2020演習だけであり、それ以外の何物でもなければ、例え参加する国があっても、その後、中国の怒りに直面するだけであろう。

(6)そこで、問題は、共産党支配の中国に対する米国の考えと行動に、長期的な根本的変化が実際にあったかのかどうかということである。もしこうした変化が確かであり、そして将来の政権においてもこれが引き継がれていくなら、また米海軍の再建も実現できるなら、他の有志諸国も南シナ海でのRIMPAC 2020に 参加するかもしれない。しかしながら、もし北京の高圧的行動に対するワシントンの現政権の対応が一時的なものに過ぎず、米国が再び以前の対中アプローチに戻るとすれば、南シナ海でのRIMPAC 2020は無用であろう。それどころか、ワシントンは、アジアから完全に手を引き、ハワイを中心とするいわゆる第3線を防衛線とすることになるかもしれない。しかし、もし米国が真剣であるなら、「一発長打を狙う」("swing for the fences")時期である。南シナ海におけるRIMPAC 2020は、まさにそれである。

(7)既に、南シナ海でのRIMPAC 2020に関して、「非現実的」「考えられない」「できるわけがない」といった、異論が一部から聞こえてくる。これは当然なことであるが、本論の目的は、議論を広めることである。例え2020年にRIMPAC演習の全てを南シナ海で実施できなくても、既にRIMPACの一部演習が南カリフォルニア沖で実施されているように、何故その演習の一部を南シナ海で実施できないのか。恐らく、ベトナム沖での人道支援/災害救助(HA/DR)演習、あるいはインドネシア近海での海賊対処訓練などは実施可能であろうし、またグアムや北マリアナ諸島でも一部演習の実施が可能であろう。要は、断念するのではなく、段階的アプローチをとることが重要で、そうすれば、2022年あるいは2024年までに は、南シナ海でのRIMPACの全演習(あるいは大部分)の実施の可能性が見えてくるかもしれない。

記事参照:China's Worst Nightmare: RIMPAC 2020 in the South China Sea?

930日「変化する北極圏の地政学的環境に適応すべき米国米専門家論説」The National Interest, September 30, 2018

 米シンクタンク、The Stimson Centerのリサーチインターン、Alison McFarlandは、9月30日付の米誌、The National Interestに"Arctic Options: Why America Should Invest in a Future with China"と題する論説を寄稿し、米国は将来的な機会の喪失を回避すべく、北極圏の急速に変化する地政学的環境に対して関与を強める必要があると指摘した上で、要旨以下のように述べている。

(1)米国は北極圏の急速に変化する地政学的環境に対して関与を強める必要がある。融氷は環境上の懸念を引き起こすだけでなく、地政学的な変化をもたらす可能性も有している。中国はこうした変化に対して牽引力を見せており、地形の変化や近い将来もっと簡単に活用し得るであろう資源を利用すべく動いている。

(2)中国はこのところ北極圏に関与しようとする取り組みを強化してきた。中国は2017年に5度の北極航海を実施し、北極評議会の8メンバー国すべてと高官レベル協議を行った。中でも最も注目すべきは2018年1月に北京が公表した「北極白書」(以下、白書)である。「北極近傍国家」なる中国の自己認識に関する解釈は国際法では完全に承認されていない。中国は北極に対する正当性の主張をスヴァールバル条約と国連海洋法条約に基づいて立証している。白書は国際法を尊重すると再三強調することで、中国が秩序を乱す勢力ではないと北極圏諸国を安心させようとしている。それにもかかわらず、カナダの学者は中国による国際法の推進が北極圏諸国の主権を制限しようとする企てである、と懸念を表明してきた。実際のところ白書は、北極圏とその資源が一部の北極圏諸国に独占されるべきではないという中国の主張を明確に示し、北極圏の世界的な重要性を強調してもいる。さらに、中国は現在の北極圏におけるガバナンスが不十分だと主張し、自国が新システムの形成に「極めて重要な役割」を果たすと見なしてきた。北極圏諸国が「ガバナンスギャップ」を認めていないため、中国の主張は潜在的な対立点を示す形になっている。

(3)中国の北極圏におけるプレゼンスは必ずしも米国に脅威を突きつけているわけではない。しかしながら、北極圏で急速に変化する地政学的環境に対して米国が一層の関与を行わなければ、ワシントンは北極圏における将来的な機会を失ってしまいかねない。米海軍大学のRebecca Pincusは、米国が2050年までに支配的な力を持った中国と北極圏で対峙するという、まったく異なった政治的環境に直面し得ると指摘する。それゆえに、米国は中国と関わり、協力する方法を模索して、中国の北極圏における成長を米国の国益と協調した形にすることで利益を得るだろう。実際、北極圏で米中が協力し得る複数の分野がある。例えば、米中両国は北西航路と北極海航路が国際水域を構成すべきだとの見方を共有している。

(4)最近の中国の進捗とは対照的に、米国の極地域に対するアクセスは歴史的な低水準にある。米砕氷船Polar Starの更新計画は、メキシコとの国境の壁建設に予算を再配分するという国土安全保障省の提案を受けて後退を余儀なくされた。American Security ProjectのAndrew Hollandが米国防省は新北極戦略の遂行に必要な資源を投じていないと見なすように、米国の北極圏に向けた取り組みでは資金が重要な問題であるようだ。それゆえに米国の北極圏への関与強化に向けた明白な第1歩は、新たな地政学的ダイナミクスの将来的な課題に対応できるよう予算の適切配分を行うことである。米国の北極圏における活動強化に向けた第2のステップは国連海洋法条約の批准である。

(5)国連海洋法条約の批准がない状況では、米国は中国に対してその他の優位点を用いることに専念できる。米国は中国と異なり、北極圏に対する主張の正当性を立証する必要がない。中国は自国の創設する新たな形の北極圏におけるガバナンスを要求する必要があるが、米国は北極評議会など既存の地域ガバナンス組織と協調するために自国の北極圏国家としての地位を利用できる。こうしたことは北極問題への更なる外交的関与と相まって行われるべきである。例えば、習主席がノルウェー首相のErna Solbergとの会談で北極圏における協力を議論したように、Trump大統領が1月のSolbergとの会談で同じことを論じたとは思えない。

(6)北極圏の環境が変化する中で米国はその立場の変化――場合によっては悪化する立場――に向き合い、米国の主張があまねく伝わるようにすべきである。

記事参照:Arctic Options: Why America Should Invest in a Future with China

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書

1 How the Marines will Help the U.S. Navy and America's Allies Win the Great Indo-Pacific War of 2025

https://warontherocks.com/2018/09/how-the-marines-will-help-the-u-s-navy-and-americas-allies-win-the-great-indo-pacific-war-of-2025/

War on the Rocks.com, September 26, 2018

 米海兵隊の将来構想検討を担当したScott Cuomo、Olivia A. Garard、Jeff Cummings、Noah SpataroによるWarbot戦闘チームの活用に係る提言。これは十分に訓練された200名規模の海兵隊員と自立型の各種ハイテク武器システム(無人機等)及び緊急展開手段としての航空機を組み合わせ、分散配備した同チームを必要に応じ所要の地域へ展開させて作戦を遂行するという構想であり、Scottらは本構想が将来の米海軍及び海兵隊の作戦遂行に寄与し、インド太平洋地域において新たな脅威に直面している米国及び同盟国の権益維持に大きく貢献することになると主張している。

 なお、Warbot戦闘チーム構想に係るより詳細な情報については下記を参照。

Marine Warbot Companies: Where Naval Warfare, the U.S. National Defense Strategy, and Close Combat Lethality Task Force Intersect

https://warontherocks.com/2018/06/marine-warbot-companies-where-naval-warfare-the-u-s-national-defense-strategy-and-close-combat-lethality-task-force-intersect/

2 U.S. Aircraft Carrier Deployments at 25 Year Low as Navy Struggles to Reset Force

https://news.usni.org/2018/09/26/aircraft-carrier-deployments-25-year-low

USNI News, September 27, 2018

Sam LaGrone, the editor of USNI News.

 USNI Newsの編集者Sam LaGronは、過去15ヶ月間の空母打撃群の展開は1992年以来最低のレベルにあるとし、その背景としてテロとの戦争、イラク、アフガニスタンでの戦いに空母を酷使してきたため空母の修理に遅れが生じていると指摘する。米海軍が新国防戦略に基づき、"Dynamic Force Employment"と呼ばれる新しい展開スキームをスタートさせたが、延期された修理がこれに追いつけていないとしている。また、原子力空母を修理できる4個所の工場の操業状況がボトルネックになっているとも指摘する。米海軍首脳は艦隊の健全さを獲得するためにプレゼンスの在り方を変革する選択肢が必要であると認識しているとして、抑止任務のため巡洋艦、駆逐艦、攻撃型原子力潜水艦、巡航ミサイル搭載原子力潜水艦により全世界で前方展開することを提言している。