海洋安全保障情報旬報 2018年4月20日-4月30日

Contents

421日「台湾を巡って米国と中国は戦争に向かうのか?」(South China Morning Post.com, April 21, 2018

 South China Morning Post 紙の王向偉(Wang Xiangwei)在北京編集アドバイザーは、4月21日付South China Morning Postに、"Are the US and China headed for war over Taiwan?"と題する論説を寄稿し、要旨以下のとおり述べている。

(1)米中間の貿易戦争において、Trump大統領は台湾カードを切る際に慎重であるべきだ。さもなければ、本当の戦争に発展しかねないことになる。先週水曜日(4月11日)、中国は台湾海峡で実弾演習を実施し、その翌朝、中国国営放送が、ヘリコプターと戦闘艦から海上に向かって実弾が発射されるビデオを流した。

 台湾はこれを"通常の演習"であると片づけたが、この演習は、習主席を観閲官として1週間前に空母を含む48隻の戦闘艦等による海南島沖での建国以来最大規模の観艦式の後で実施されたものである。中国国営放送は、「独立志向を示す台湾のリーダーとそれを支援する米国への警告であった」と述べている。一方、駐米中国大使は、ハーバード大学での講演でこの実弾演習について触れ、「中国は主権と領域保全のためにはあらゆる手段をとることを躊躇しない」と述べている。4月当初、中国当局の広報官が、「台湾カードを切ることを試みる外部組織は、それが無駄なものであり、一線を越えれば自身を傷つけることを知るだろう」と述べている。この発言は明らかに米国政府に対するものである。米国と中国が貿易を巡って対立する中、米国が台湾カードを切ることに警告を与えたと見るべきである。

(2)予測の難しいTrump大統領の政策を振り返れば、大統領当選当時は蔡総統の祝福を受けて40年に及ぶ米中関係を破るかのように台湾カードを切ったものだった。その当時、Trump大統領は対中貿易においてより譲歩を得るために台湾を利用する意図であったことは確かであろう。しかしそれは、大陸中国はもとより台湾においても人質になるのではないかとの危惧を呼び、多くの面で批判を被ることになった。

 1年がたった今、中国に対するTrump大統領の台湾カードの目的はより広範に亘るものとなっている。多くの穏健派が政権を去り、反中親台湾色の強いMike Pompeo国務長官とJohn Bolton国家安全保障問題大統領補佐官が就任した。Trump政権は、米国企業による台湾への潜水艦建造技術の提供を認め、台湾旅行法にも署名した。更に、6月には事実上の大使館である在台湾米国協会が新築移転する。その際、Bolton大統領補佐官か他の高官が式典に参加するとの憶測もある。中国はそれを挑発と見なすはずである。

 米国政府は対中貿易摩擦を"戦争"と呼称しているが、北京政府は"戦争"に類似する言葉を使って、米国の台湾カードは貿易に留まらず、あらゆる面で"戦争"を生じさせると警告し続けている。貿易問題は交渉のテーブルに乗せることができようが、中国にとって台湾問題はまったく交渉の余地のないものである。つまり、レッドラインなのである。

(3)台湾のリーダー達は米国の親台湾姿勢に勇気づけられている面があるが、中国にとっては現状変更、つまり独立志向を促すものと映るだろう。この40年の間、北京も台北も現状維持に努めてきた。台湾は独立を志向せず、大陸は武力行使を控えてきた。

 しかし今月、台湾の頼清徳(William Lai)行政院長(首相)が「自身が台湾独立の政策者である」と述べたことが北京に深刻な懸念を生じさせている。

 両岸関係の緊張は毛沢東以来の強力なリーダーとなった習近平第2次政権となって高まっている。習主席は軍の強化によって台湾の独立志向を抑え込もうとしている。中国は常に、平和的再統合を目指すが武力の行使を放棄するものではないと述べてきている。以前は、党・政府もメディアも再統合を平和的に実現すると強調していたが、最近は、武力を誇示する面がある。更に、これまで中国は台湾再統合のタイムテーブルについて公式に言及することはなかったが、最近は複数の評論家が2035年か2050年には実現できると解説し始めている。その根拠は、第19回共産党大会での習主席による中華民族の偉大な復興の夢実現のためのタイムテーブル、つまり2035年までに近代国家となり2050年までにワールドパワーとなるとの発言にみることができる。台湾再統合は中国の夢の不可欠の一部である。

 米国は両岸の闘争に本気で介入する気があるのか?多くの人が米国の台湾関係法は米国による台湾防衛を規定していると誤解しているが、そのような義務は明確に示されてはいない。もし米国が台湾カードをちらつかせることを続ければ、台湾の独立志向を助長し、それに対して中国は台湾に対する武力示威を増強させるだろう。Trump大統領が台湾カード政策を改めない限り両岸の安全保障環境は悪化を続けるだろう。

記事参照:South China Morning Post.com, April 21, 2018

424日「インドは中国による「インド包囲網」に対抗すべき―インド専門家論評」(The Diplomat.com, April 24, 2018

 インドのシンクタンクThe Observer Research Foundation研究員Tuneer Mukherjeeは、Web誌The Diplomatに4月24日付で、"China's Maritime Quest in the Indian Ocean: New Delhi's Options"と題する論説を寄稿し、インドは中国による「インド包囲網」に対抗すべきであり、その際、長年に亘る「戦略的自立」(「非同盟中立主義」)政策無視を超越しなければならないとして、要旨以下のように述べている。

(1)今から13年以上前に、米防衛コンサルト会社Booz Allen Hamiltonが当時のRumsfeld国防長官に提出した報告書で、中国は南アジア沿岸域に海洋拠点、即ち港湾ネットワークを構築することを計画していると警告した。このネットワークが "string of pearls" strategyといわれるものである(抄訳者注:この報告書がこの用語の初出とされ、ここでいう "pearls" とは港湾をいい、これらを "string" し(繋ぐ)、かつインド亜大陸を取り巻いている形状から、我が国では「真珠の首飾り」と美称されることが多いが、従来から「旬報」「季報」では「真珠数珠繋ぎ」戦略と訳してきた)。この「真珠数珠繋ぎ」戦略は、以後の中国の軍事的経済的野心によって加速され、最近のモルディブのYameen政権による親インドの牙城から対中連携姿勢への転換に見られるように、インドの戦略的影響圏内にある諸国を惹き付けてきた。モルディブの転換は、北京の予兆された戦略における軍事的側面の現実化であり、中印両国の海洋力学関係における転機をなすものである。モルディブはインドの海洋戦略圏における緩衝地帯であるが故に、それへの中国の漸進的な進出はインドにとって重大な懸念である。これに対処するために、ニューデリーの大胆な政策が求められる。インドの政策担当者にとって中国の封じ込めに対抗する多様な戦略的選択肢があるが、同時に「戦略的自立」("strategic autonomy")(抄訳者注:「非同盟中立主義」の意)という、インドの原則的な立場も修整されなければならない。

(2)「海洋シルクロード」(MSR)を「真珠数珠繋ぎ」戦略の隠れ蓑として利用することで、中国は、多くの南アジア諸国との間で相互依存関係を確立してきた。これら諸国には、巨額の負債のためにハンバントータ港を中国国営企業にリースしたスリランカと、「中国パキスタン経済回廊」(CPEC )の一環として中国が建設したグワダル港を有するパキスタンが含まれる。そして、中国の最新の「パール(真珠)」がモルディブで、中国は、モルディブ群島の最北端の環礁で新たに経済特区を開発することを計画している。モルディブは長年に亘ってインドの安全保障圏の自然延長圏内にあると見られてきたことから、モルディブ群島における中国の基盤確立は、それによってインドの西岸と東岸を結ぶ戦略回廊に対する中国の監視が可能になることから、インドの戦略家にとっては最悪の悪夢である。インドの海洋領域に対する、この中国の最新の侵害は、ニューデリーによる明快な戦略的対応を促している。

(3)では、ニューデリーの戦略的選択肢には、どのようなものがあるか。海洋領域における戦略的緩衝領域という概念は、大国間政治において重要視される。現代において、米中両国などの海洋大国は、敵対相手による接近阻止/領域拒否戦術を回避するために、緩衝領域を確立してきた。即ち、東太平洋は米本土への敵対行為に対する戦略的障壁とし機能し、一方、南シナ海は中国にとって同様の機能を果たしている。従って、インドは、自国の戦略的領域に対する中国の包囲に対応するために、同様の概念を開発すべきである。この際、インドは、長年に亘る「戦略的自立」(「非同盟中立主義」)政策を無視し、インド洋において域外海洋大国との連携によるメリットを認識しなければならない。インドは、戦略的自立のままでは、中国の財政力と軍事力に対してバランスを維持することはできないであろう。従って、冷戦時代の「非同盟心理」に固執することは、短期的には毅然たる姿勢に見えるかもしれないが、長期的に見れば、自らの裏庭を通るシーレーンに対するニューデリーの防衛能力が、中国の敵対的な行動によって脅かされていくことになろう。インドは、その伝統的な戦略的姿勢を捨てて、自らのシーレーンの安全を確保する必要がある。

(4)したがって、ニューデリーが今後とるべき方途はまず、米仏両国との間で、ディエゴガルシア島(英領)、及びマヨット島とレユニオン島(何れも仏領)へのインド海軍の艦艇寄港許可を取得するために両国との海軍関係を強化し、一方で、米仏海軍による後方支援のためにインド国内の基地利用を認めるという、後方支援協定を実効化することであろう。更に、インドは、オーストラリアにインド国内基地への寄港許可を、そしてココス諸島のオーストラリア海軍基地に対する同様の権利をインドに認めるという、互恵協定を提示することもできよう。また、マダガスカル島北部の既存の監視施設に加えて、セイシェルのアサンプション島(アルダブラ諸島)とモーリシャスのアガレガに後方支援施設を開設することも有益であろう。同時に、ニューデリーは、オマーンの(アラビア海に面した)ドゥクム港とモザンビークのマプート港への既存の寄港許可を一層活用することもできる。その上で、これら海外における拠点と、インド国内の沿岸域の海軍基地や本土外の島嶼基地とを連結することで、インド海軍は、自国の緩衝領域を越えてより広範に活動することが可能になろう。また、これらの海外拠点は、インド海軍力の広範な到達範囲を誇示することで、インド洋におけるインド海軍の海洋拒否能力を強化することになろう。同時に、インドは、中国による南アジア諸国に対する外交攻勢に対抗するために、西太平洋において中国に対抗するプレゼンスの強化を図るべきである。

(5)インドは、近隣諸国との間で経済的、戦略的相互依存関係を構築する能力を欠いていたことで、中国がその間隙を埋めるに任せてきた。とはいえ、インドがその誤りを是正し、域内において影響力を取り戻すための適切な戦略を展開する機会は、依然開かれている。インドにとって選択肢は単純明快である。自国の影響圏に対する北京の侵害を黙認するのか、それとも、自国の戦略的領域を保全し、(インドを包囲する)中国の封じ込め戦略に対抗していくか、のいずれかである。

記事参照:China's Maritime Quest in the Indian Ocean: New Delhi's Options

424日「北極圏における変化―米議会調査局報告書の要約」FAS, April 24, 2018

 米国の海軍軍務の専門家であるRonald O'Rourkeは、4月24日付で"Changes in the Arctic: Background and Issues for Congress"と題する米議会調査局報告書を提出し、要約以下のように述べている

(1)北極海氷の減少は、北極での人間活動の増加をもたらし、この地域の未来への関心と懸念を高めている。米国は、アラスカのおかげで、北極圏国であり、この地域に大きな関心をもっている。

(2)過去10年間で最少を記録した北極海氷の広さは、地球規模の気候変動との関連に科学的及び政策上の注意を集中させ、数十年以内に北極圏において氷のない季節を与える。これらの変化は、米国の気候、北極圏における鉱物資源及び生物資源へのアクセス、この地域における人々の経済と文化、そして、国家安全保障に潜在的な重要性を与える。

(3)米国、カナダ、ロシア、ノルウェー、デンマーク(グリーンランドがその領土)の5ヵ国の北極沿岸国は、延長された大陸棚の外側限界に関する大陸棚限界委員会への提出物を作成又は準備中である。ロシアが提出したものには、北極海の中心部からかなり離れた場所に広がる、海中のロモノソフ海嶺が含まれている。

(4)北極海氷の減少は、ロシアに近い北極海航路、そして北西航路という2つの北極航路の増加する商業航路を今後数年間もたらす可能性がある。

(5)温暖化による北極の変化は、石油、ガス及び鉱物のさらなる調査を可能にする見込みが高い。北極圏での石油とガスの調査と観光(クルーズ船)の増加は、この地域の環境破壊のリスクを増加させる。

(6)大規模な商業漁業が北極圏に存在する。北極の変化は絶滅危惧種に影響を及ぼし、魚種資源が新たな水域に移動する可能性がある。北極圏の気候変動は、北極圏の先住民族の経済、健康及び文化にも影響を及ぼすと予想されている。

(7)その沿岸警備隊の3隻の極地砕氷船のうちの2隻(Polar StarとPolar Sea)は、意図された30年間の耐用年数を超えており、Polar Seaは可動していない。沿岸警備隊は、3隻の新しい大型極地砕氷船を建設するプロジェクトを開始した。

(8)北極問題に関する重要な国際的協力があるが、北極圏は潜在的な新たな安全保障問題として、一部の評論家から見なされている。いくつかの北極沿岸諸国、特にロシアは、ハイ・ノース(high north)での軍事的プレゼンスを強化する意向を表明又は行動を起こしている。米軍、特に海軍と沿岸警備隊は、計画立案と運営において、この地域により注意を払い始めている。

記事参照:Changes in the Arctic: Background and Issues for Congress

(編集注:本URLは5月21日現在のものにアップデートされている。)

4月24日「北極海航路開拓の展望と中国の思惑―米専門家論評FAS, April 24, 2018

 米The Jamestown FoundationwebChina Briefの編集長Matt Schraderは、China Brief426日付で、"Is China Changing the Game in Trans-Polar Shipping?"と題する論説を寄稿し、停滞する北極海航路の開拓に中国が参加することで、北極海航路を巡る状況は一変し得ると指摘した上で、要旨以下のように述べている。

110年以上にも亘りロシアの政策決定者は、アジアとヨーロッパをロシアの北方海岸線沿いに結ぶ、北極海航路(NSR)を実行可能な商業航路にしようと無益な試みを続けてきた(Jamestown Eurasia Daily Monitor, 2016429日)。とうとうロシアの宿願は、中国の資金力で叶うかもしれない。NSRは、中国から西側の港までの輸送距離を1,370キロメートル~4,600キロメートル短縮し、理屈の上ではスエズ運河を迂回することで時間と資金を節約できることから、中国の海運企業にとって魅力のある航路となっている(CASS,228日)。また、NSRを開拓することで天然資源へのアクセスを確保し、中国の「マラッカ・ジレンマ」を緩和できることから、同航路は中国の政策決定者にとっても魅力的である(China Brief, 2006412日)。

2)現在、通常の船舶がNSRを航行できる期間は1年間で数週間しかなく、海氷のためにスエズ運河を経由する航路に比しても通過速度が遅い(Finish Transport Agency, 39日)。イギリスの政府科学庁が2017年に発表したレポートによると、世界的な二酸化炭素の排出が現在のペースで続くのであれば、今世紀の末までには「北極海のほとんどが年の半分程度、開水域になると予想される」とのことである。海氷域の減少は、NSRの有用性を大幅に押し上げるだろう。しかしながら、特に北極海のような危険な海域では、単に開水域が存在するというだけでは航路は成り立たない。Vladislav Inozemtsev博士は、2016年にJamestown財団のEurasia Daily Monitorに寄稿し、現在のNSRの経済的な実行性について以下のように酷評した。

 NSRのどこにも近代的な外洋船が修理や給油を受けるに適した施設が存在しない。その上、現行の砕氷船は幅25メートルの航路を確保することしかできない。その意味するところは、(幅が50メートル近くに及ぶ)「スエズマックス」や「パナマックス」級のコンテナ船がNSRを航行できないということである。世界的な海運企業の食指を動かすには、ロシア指導部は、新世代の砕氷船と地方のインフラ更新に数十億ドル規模の投資を行う必要があるだろう。しかしながら、それを実現させるためには通過貨物料を大幅に上げざるを得えないため、船荷主にとって最良の航路はスエズ運河を経由する南方航路であり続けるだろう。NSRは、ロシア政府が外国の海運企業を助成した場合にのみ、経済的な輸送航路として機能する。

3)こうした中に中国が参加することはゲームチェンジャーたり得る。20177月のメドベージェフ首相と習近平主席の会談では、中ロが「北極海航路を巡る協力を発展させると共に、両国で『氷上のシルクロード』を築いていく」と宣言した(People's Daily,128日)。中国の政策決定機構は最高指導者のメッセージを受けて、以下のような対応を見せた。

a. 中国国務院が1月に初の「北極白書」を公表

b. 中国メディアが「氷上のシルクロード」を広範で肯定的に報道

c. 中ロの大臣級ワーキンググループが将来的な協力の概要に関する交渉を実施

d. 中国のシンクタンクがプロジェクトの潜在的な利点に関する詳細な説明を開始

4)外部の専門家は、一連の構想を深刻に受け止めるべきである。中国は、特に天然資源へのアクセスや「マラッカ・ジレンマ」を緩和できる航路の確保といった戦略的な理由がある中で、中国の資金なしでは実現不能な極地インフラプロジェクトから長期的利益を得られると確信している。中国の金融機関は、ロシアの大規模なヤマルLNGプロジェクトが必要とする270億ドルの内、120億ドルを供給した。同プロジェクトは中国の関与前、身動きのできない状態にあった(Eurasia Daily Monitor, 2009928日)。

5)中ロ共同の取り組みを正確に読み取ることを欲する専門家は、3つの指標を注視すべきである。

a. ロシア北方沿岸の輸送インフラに対する中国の投資

b. 北欧の交通インフラに対する中国の投資

c. 大型次世代砕氷船を巡る中ロの共同開発

6)中国の報道は、最初の2指標が調査段階にあることを示している。3番目の指標は推論ではあるが、全く信じ難い話でもない。北極における他の課題と同様に、ロシアが中国の金融支援なしに最近発表された120億ドルする「Lider」級砕氷船――「パナマックス」級の輸送船に対応できる大きさを持つ―を導入できるか否かは、判然としない(Maritime Executive, 13日)。

記事参照:Is China Changing the Game in Trans-Polar Shipping?

4月25日「『一帯一路』を契機に深まるスリランカと雲南省の経済関係―スリランカ紙報道」(Colombo Page Sri Lanka Internet Newspaper, April 25, 2018

 スリランカのColombo Page Sri Lanka Internet Newspaperは、425日付の"China's OBOR hub bullish on Sri Lanka FTA"と題する記事で、昨今のスリランカと中国のFTAを含む経済交流の拡大に向けた動きについて、要旨以下のように報じている。

1)スリランカのRishad Bathiudeen産業・商業相は、「中国の野心的な『一帯一路構想』(OBOR)に対する南東アジアの玄関口たる雲南省は、両者の貿易拡大を速やかに実現させる歴史的なスリランカ・中国FTAの実現を熱望すると表明した」と語った。

2)高樹勛・雲南省人民政府共産党委員兼顧問は423日にコロンボで、「現在の雲南省とスリランカの貿易高は1,800万米ドルでしかない。スリランカ・中国FTAは、両国にとっての大きな一歩であり、スリランカと雲南省、ひいては中国全体との新たな貿易の可能性を切り開くだろう」と強調した。

3)コロンボに派遣された公式代表団員らと共にBathiudeenを訪ねた高は、2018614日から20日までの予定で昆明において開催される、「第5回中国・南アジア博覧会」(CSAE)及び「第25回中国昆明輸出入見本市」(CKIEF)を宣伝し、両イベントへの公式招待状をBathiudeenに手渡した。高は、「雲南省人民政府は、スリランカと農業、バイオ医薬品、観光及び植物育種・植物開発分野における提携も切望している」と訴えた。

4)雲南省のGDP2016年に2,350億米ドルであり、中国の省の経済規模としては26位に位置する。連結性が高い昆明を擁する雲南省は、急成長する経済地域であると共に物流の中心地だと考えられている。雲南省は、スリランカから直行便でわずか4時間と最短の距離にある。雲南省は、中国の野心的なOBORにおける要所だと位置づけられ、「OBORの南東アジアへの玄関口」だとされている。中国本土からシンガポールに至るOBORの地上交通路は、物流の中心地である昆明を直接経由するものとなっている。

5Bathiudeenは、高のスリランカ・中国FTAへの関与を称賛し、「両国は、このFTAから恩恵を受けるだろう。Sirisena大統領とWickremesighe首相のリーダーシップの下で、わが国は目下FTAを締結すべく取り組んでいる。わが国は、世界的な貿易大国である中国とのFTAから、大きな経済的恩恵を受けると確信している。両国の貿易取扱量が増加していることも肯定的な傾向である。我々は今回提案を受けた分野で連携すべく、雲南省の投資家に最大限の支援を惜しまないつもりだ」と述べた。

6)商業省によると、2016年におけるスリランカの対中貿易総額は44.7億ドルであったが、2017年には3パーセント増加して46億ドルとなった。両国の年次貿易の約95パーセントがスリランカの中国からの輸入となっており、スリランカ側はこの点を新FTAにおいて是正することを切望している。

記事参照:China's OBOR hub bullish on Sri Lanka FTA

425日「モルディブに対するインドの軍事オプションの長期的影響」(The New Indian Express.com, April 25, 2018

 4月25日付、インドのThe New Indian Express紙電子版は"Any military option by India in Maldives would have had long-term implications : Sources "と題する記事を掲載し、インドが本年2月のモルディブYameen政権による軍事介入の要請に応じなかったのは、「ルールベースの国際秩序」を主張し南シナ海における中国の行動を非難するなどして来たことも考慮したものであるとして、要旨以下のように報じている。

(1)2月5日、モルディブAbdulla Yameen政権による非常事態宣言の後、野党指導者からインドに対し軍事介入の要請があった。インドは軍事介入しなかったが、それはルールベースの国際秩序というインドの立場に反するからである。ここ数年来、インドは南シナ海における中国の軍事的姿勢に対して、ルールベースの国際秩序を求めて来ている。情報源は「インドはルールベースの国際秩序を主張して来ており、インド自身がそれに従わないならば、国際社会はどのように我々を見るだろうか」と語った。

(2)情報源によれば、インドは非常事態宣言後、モルディブに対して何の措置も講じていないが、その進展についての懸念は政府内にもあったという。情報源は、インドとモルディブの関係は「最高の健康状態」ではないものの、ニューデリーはモルディブの政治的安定には関心があると付言した。

(3)インドとモルディブとの関係は、野党指導者の解放を求める最高裁判所判決に端を発する、2月5日のYameen政権による非常事態宣言後、急速に悪化したが、この非常事態は45日後に解除された。

(4)一方、インドのセイシェルへの軍事基地建設について現地での反対状況について尋ねたところ、情報源は、このプロジェクトの進展を望んでいたのはむしろセイシェルの側だったと述べた。アサンプション島の基地はインドが建設する予定であった。

記事参照:Any military option by India in Maldives would have had long-term implications: Sources

425日「大国間の対立に応じる海洋戦略を」Center for International Maritime Security, April 25, 2018

 米国のNPOシンクタンクCenter for International Maritime Securityのオンラインコンテンツ部長Dmitry FilipoffCenter for International Maritime Securityに" Maritime Strategy for Great Power Competition"と題する記事を寄稿し、今が海洋戦略を更新するときであるとして、要旨以下のように述べている。

(1)大国の対立が報復を伴って戻ってきている。ロシアと中国はその利益を増進するため大胆に国力の全ての手段を使用しつつある。それはしばしば他国を犠牲にし、国際秩序に被害が及んでいる。

 しかし、人類の進歩と安全に対する世界の海の死活的な重要性は持続している。膨張的な世界規模の利害関係と莫大な富をもって大国は政策を推し進め、対立をかき混ぜる場として海洋を利用する準備が特に良く整っている。ロシアの水中での活動の頻度は冷戦期の水準にあり、鍵となる海上交通路の安全と新たな水中核抑止の脅威について懸念を刺激している。中国は数千年にわたる大陸国家として当ててきた戦略的焦点とは明らかな対照をなして、ごく最近は海洋国家として台頭してきた。さらに、中国は積極的な投資、政府全体での取り組み、中国の将来にとって海洋領域が重要であることを国家の指導者が明確に宣言することによって海洋国家への道を行ってきている。

(2)今日、アジアにおける海洋のフラッシュポイントは地域の対立、大国間の対立の双方で中心的話題となっている。新しい戦略は必要であり、自然、顕著な目立つ対立空間として海洋領域にまで及ぶだろう。21世紀の大国間の対立は世界の海でどのように現れるのだろうか?海洋戦略は、平時及び戦時の海軍力の目的と価値を明瞭に表現している。海洋戦略は、この先何年にもわたって海軍力を形作るであろう鍵となる意思決定に対し、しっかりとした背景を提供する。海洋戦略は、目的、主たる努力の方向、たとえドラスティックな変化に直面しても持ち続ける基本的な責務を定義する。海洋戦略はまた、生きた文書でなければならない。海洋戦略は、持続する基盤として機能することが求められると同時に、本質的に風化しやすく、定期的な更新が必要であることを認めなければならない。

そのような時は今である。

記事参照:Maritime Strategy for Great Power Competition

429日「豪加、北朝鮮に対する海上監視に参加へ」The Japantimes, Apr. 29, 2018

 The Japantimesは、4月29日付同紙電子版に" Australia and Canada to join maritime surveillance effort against North Korea sanctions evader"と題する記事を掲載し、豪加両国が北朝鮮のいわゆる「瀬取り」に対する監視活動に参加するとして、要旨以下のように報じた。

(1)日本は土曜日(4月28日)、海上における密輸によって国連安保理の制裁を逃れようとする北朝鮮の試みを監視するための多国間の努力に豪加両国が参画するだろうと述べた。

 外務省は、両国が嘉手納基地に哨戒機を派出するだろうと述べた。両国の哨戒機は、日本列島、朝鮮半島周辺海域及び東シナ海において、北朝鮮が物資を船から船へ移載するのを予防するための警戒監視に参加すると考えられている。

 北朝鮮に対し最大限の圧力を維持する視点から日本はこれらの活動を歓迎すると、外務省は声明で表明した。

(2)安全保障の専門家は、北朝鮮が必要性の高い燃料及び国連主導の制裁によって締め上げられているその他の物資の補給を得るために、海上における不法行動を行いつつあると考えている。1月以来、東シナ海において北朝鮮と外国籍タンカーが絡む船から船への移載が疑われる複数の事例を日本は国連に報告してきている。

記事参照:https://www.japantimes.co.jp/news/national/

【追加記事】

46日「米国のインド太平洋戦略の実効性を確保するための15のアイディア」

 (本記事の初出は4月第1旬であったが、入手時期が今旬となった。「インド太平洋戦略」に係る米国の施策の方向性を示唆する重要な情報と思われることから、今旬に追加で掲載するものである。)

 元米太平洋軍司令官特別補佐でCSISアジア安全保障担当特別研究員のEric Sayersは4月6日付、テキサス大学の運営する安全保障関連情報サイトWar on the Rockに"15 Big Ideas to Operationalize America's Indo-Pacific Strategy"と題する論説を掲載し、「インド太平洋戦略」の実効性確保には具体的な施策の実行が不可欠であるとして、要旨以下のように述べている。

(1)Trump政権は「自由で開放されたインド太平洋」に係るビジョンを提示したが、具現化のための施策や予算に係るイニシアティブはなく、空虚な理念になるリスクがある 。同政権が初年度に確認したのは「インド太平洋」が米国の国家安全保障計画の優先事項となっていくことということのみであった。この動きは2017年前半から始まり、Jim Mattis国防長官のアジア訪問、Rex Tillerson国務長官のCSIS演説 、大統領自身のアジア歴訪、そして「国家安全保障戦略」、「国防戦略」と続いた 。しかし、貿易政策の変化や日米豪印4ヵ国協調の再興以外には、新たな「インド洋太平洋戦略」がどのように運用されるのか、ほとんど説明はなされなかった。Barack Obama大統領が2012年にリバランス政策を発表した際にもこれが具体的な施策に乏しかったため、多くの人々が米国の意図とコミットメントに疑問を呈した。国家安全保障会議と国務省が新たな指導者を迎え、新年度予算サイクルも開始された今、米国政府として「インド太平洋戦略」の具体的計画を立案する機が熟している。

(2)以下は、国防総省、国務省、太平洋司令部(PACOM)のスタッフがこの目的のために検討した一連のアイディア、イニシアティブである。

a. 数十億ドル規模でのインド太平洋安全保障イニシアティブを開始

 軍事バランスのインド太平洋シフトに対応するべく、太平洋軍の運用上のジレンマに対処し得るよう国防予算を大胆に投資する。

b. 太平洋海上共同タスクフォースの設立

 NATOが冷戦期に運用していたStanding Naval Forces Atlanticをモデルに、日本、オーストラリア、インド、欧州及び東南アジアのパートナー諸国の援助の下、太平洋共同海上タスクフォース(JMTF-P)を設立する。

c. アジア太平洋安全保障研究センター(APCSS)西部事務所の開設

 ハワイに所在する国防省アジア太平洋安全保障研究センター(APCSS)の西部事務所(サテライトオフィス)を、東南アジアに開設する。

d. 新たな空母及び空母航空団の日本展開の検討

 新たに原子力空母及び空母航空団を日本に追加で前方展開させる。

e. 東南アジアのパートナー諸国に対する国際教育訓練(人材育成)の強化

 東南アジア諸国に対する国際教育訓練のための予算を倍増し、これら諸国の人材育成を強化する。

f. オーストラリア、パースにおける海軍間協力の強化

 オーストラリア、パースに所在し、インド洋と南シナ海の双方への玄関口となるスターリング海軍基地の活用を促進する。

g. 日豪との共同による東南アジア諸国に対する能力構築支援の実施

 米国がこれまで推進して来た東南アジア諸国に対する海洋安全保障能力構築支援を、日豪の協力も得て更に推進する。

h. インド太平洋地域におけるリフォージャー演習の実施

 NATOが冷戦期に実施していた西ドイツへの迅速な部隊展開能力を検証する定例演習をインド太平洋地域においても実施する。

i. 主要イノベーション分野における中国人留学生のビザ申請のブロック

 中国からの留学生の受け入れ自体が問題ということではないが、防衛技術に係る革新的かつ敏感な分野については、最先端技術の流出防止に留意する。

j. 台湾へのインド太平洋地域におけるパートナーシップの保証

 武器供与に係る一貫した指針の策定、高度な共同訓練の実施、政府関係者の渡航拡大など、台湾との関係強化に係る包括的な政策指針を策定する。

k. F-221個飛行中隊のハワイ再拠点化と日本への展開

 現在、アラスカに配備されている2個F-22飛行隊の一つを以前のようにハワイに移転させ、必要に応じ三沢配備のF-16飛行隊との交代などの柔軟な運用を考慮する。

l. 日米豪印4ヵ国協調の枠組みにおける共同訓練の実施

 現在、インド主導で実施されている共同訓練マラバール以外にも、リムパック、タリスマンセーバー、コープナイト、レッドフラッグなど、既存の多国間共同訓練の枠組みを4ヵ国協調に基づく共同訓練の場として活用する。

m .日米共同による新たなミサイルの開発

 SM-3ブロックIIAミサイルの共同開発の経験を活かし、日本において新たにニーズが生じているが地上発射型長距離陸上/対艦攻撃ミサイルなどを日米で共同開発する。

n. 地域におけるトラック1.5の安全保障対話の促進

 国務省及び国防省が保有するリソースを活かし、米豪、日米韓、日米豪印などの安全保障対話、特に政府関係者と非政府関係者が一同に会することの出来るトラック1.5の枠組み構築を促進する。

o. 太平洋軍司令部をインド洋太平洋軍司令部に改称

 インド太平洋地域の戦略的重要性にかんがみ、太平洋軍司令部の実質的な役割も考慮して「名は体を表す」ような形に組織を改称し、同地域に対する米国のコミットメントのシグナルとする。(抄訳注:このインド太平洋軍司令部への改編は、5月31日付で実施された。)

記事参照:15 Big Ideas to Operationalize America's Indo-Pacific Strategy

49日「米海洋戦略についての3つの課題―米海軍中佐論評」Center for International Maritime Security, April 9, 2018

 (本記事の初出は4月第1旬であったが、入手時期が今旬となった。米国の海洋戦略の方向性を示唆する重要な情報と思われることから、今旬に追加で掲載するものである。)

 米海軍作戦本部の中佐であるFrank T. Goertnerは、49日付でCenter for International Maritime Securityのサイトに"Three hard questions of US maritime strategy"と題する論説を寄稿し、海洋サービスは、デジタル時代のための新しい米国の海洋戦略を必要としているとして、要旨以下のように述べている。

(1)ホワイトハウスからペンタゴンまで、このメッセージは明確である。21世紀における大国間競争の世界が到来し、それは、今日の米国の国家安全保障事業が直面するように設計されたものとは明らかに異なる。今では、行政機関の全ての機関、部門及びサービスが、自分たち自身に厳しい質問を行い、断固とした変更を検討する時が来た。米海軍、海兵隊、沿岸警備隊、商船隊よりも不可欠な内省が重要なところはない。彼らは、米国のシーパワーを維持する責任がある海洋サービスである。彼らの力は、海洋国家にとって海上優勢の保証人である。さらに、彼らの指導者たちは、海洋領域で新たなグローバルなライバルとしての、中国とロシアの台頭によって最も脅かされる国家資産の管理者である。このことを念頭に置いて、この大国間競争の時代の差し迫った状況が、これらの海洋サービスの役割と任務を再考する組織的活動を正当化するかどうかも検討する時である。

(2)これらの海洋サービスは、国益への脅威に対する国家の防衛の第一線、そして、国内外の災害への対応の第一線で常に従事してきた。伝統的に、これは、軍事力を投射するための即応能力を発揮する、又は世界中の物理的危機に対して災害対応を提供する一方で、米国を他の海洋国家につなぐ物理的な海上交通路(SLOC)を維持し、管理する形をとっている。現在の米国の海洋戦略は、抑止、海洋コントロール、戦力投射、海洋安全保障、全てのドメインのアクセスという5つの永続的な役割にグループ分けし、そして、本土の防衛、紛争の抑止、危機への対応、敵対行為への対応、海洋コモンズの保護、パートナーシップの強化、人道支援及び災害対応といった7つの海軍の任務を推進する。これらの正当性はすぐに見出せるが、将来の海洋競争に直面するためにどのように変化するべきかという正確な方向性を見つけることは難しい。これは問題である。中国とロシアはともに、海での、そして海からの競争の本質を根本的に変える可能性のある能力を開発している。彼らは、物理的及びサイバー空間における強制力の新しい手段のための前例のない能力に投資している。エスカレーションや紛争の初期段階では、ライバル国が、米国の広大な地域にわたる、民間通信を混乱させる、デジタル・インフラを損なう、又は電気設備を妨害する可能性が十分にある。将来の海洋サービスへの意味合いは深い。それぞれが、海洋のライバルによるサイバー攻撃を防ぎ、将来の海洋作戦のために新しいデジタルSLOCを保護する準備をしなければならない。海洋サービスが、平和と戦争におけるそのような強制を抑止するための他の国家的パワーの手段と調和する手法とは何か?そして、各海洋サービスが、抑止が失敗した最悪の場合に、この国に何を提供できるのか?要するに、これらの海洋サービスは、今日の役割と任務を越えて進化し、21世紀の強制力から米国を守り、明かりが消えた場合に対応するための将来の手段を特徴付ける戦略を必要としている。

(3)海軍戦略の原則の1つは、常に世界の海洋の広大さということだった。伝統的には、それほど大量の水があり、その中や周辺で活動が活発に行なわれているため、あらゆる国にとって、それを捉えて解明することは思いもつかないことであった。海の船舶は、諺で有名な干し草の山の中の針というだけではなく、それは揺れ動き、変化し、そして人すらいる干し草の間を動く針である。歴史において最高の海軍は、この原則を彼らの優位性に応用した。彼らは、素早く、又は秘かに外洋を横断する最速の船舶と併せて、干し草の山で何よりもどこに彼らの船舶があるのかを知ることにおいて、ライバルよりも優位性を維持する航行や通信の技術を開発した。その要素を維持することは、彼らが挑戦することが可能な物理のあらゆる境界線を活用するために構築されたプラットフォームのコマンド、制御及び通信技術の継続的な進歩が求められ、常に困難であった。一方で、潜伏は歴史的に容易だった。海洋の多層域で隠れる場所を知る、又は他の針や積み重ねられた干し草のように見える物理的な特徴を十分に縮小することが問題だった。歴史において初めて、これがまさに完全に変化しようとしているかもしれないという証拠がある。センサー・ベースの経済の登場により、この世界は、2020年代初頭までに高性能デバイスと1兆のデジタル接続されたセンサーをホストする方向に向かっている。もちろん、それらは全て海洋領域を感知するわけでないが、多くはそうである。それらは、海のデータを収集し、解読し、送信する長期滞洋ドローンを使用する。このデータを収集するものにとって、事実上干し草の中の全てが目に見えるようになる可能性がある。海洋の重要な部分は効果的に透明になる。しかし、それは問題の半分にすぎない。量子計算とレーダーの発達に伴い、人工知能(AI)と自律システムの開発と運用化は、人間がこれまでに達成したよりも高い精度で、ほぼ全ての針が、発見することができるか、又は少なくとも確率的に存在が表示することができるような、データのパターンを識別するための機械処理を用いるという見込みを与える。将来の海洋サービスへの影響は非常に大きいだろう。消極的防衛の姿勢は、もはや海洋での彼らのアセットを保護するのに十分ではない。センサーの飽和とAIの支配の競争が、海での、そして海からの勝利の核となる決定的な戦いのために、米国の準備はできているのか?そして、おそらく最大の懸念事項は、もしこの透明性が海面下に広がれば、海軍による海中での三元戦略核戦力への貢献は、何が露わになるだろうか?陸上戦闘部隊に対する戦略的兵器や大型戦術ミサイル、空母発進型航空機、又は非常の際は、その商船隊のコンテナ船すら含めた多様な活用のような戦略的ヘッジには価値があるのか?要するに、これらの海洋サービスは、もし海が透明になるならば、米国のシーパワーをどのように維持するかを全体的に扱う戦略を必要とする。

(4)米国は依然として海洋国家だが、現在のデジタル時代における、デジタル的にも相互依存する海洋国家である。これは新しいものである。これらの海洋サービスにとってのこの重要性は劇的である。彼らは、米国の国家の革新的総合施設をどのように確保し、共有化されたデータと情報の世界で知的優位性をどのように守るかを考え抜く必要がある。それらは、米国とその同盟国の代わりに、シーパワーの競争のために第四次産業革命の産業界の巨人たちを動員する集団的偶発性に値する。要するに、国家的ビジョンを明確にし、水平線においてデジタル化された競争のためにデジタル化された米国を動員するための基礎を構築する戦略があるはずである。

(5)これらは、米国の海洋サービスが尋ねるべきである多くの質問のうちの最初のものであるが、これらの質問は単なる出発点である。集合的に、これらのサービスには回答が必要であり、そして、将来現れる海洋のライバルを打ち負かすためには、しっかりとした回答が必要である。同様に重要なことは、これらの回答は、米国や同盟国の公的及び民間の機関、サービスといった全ての海洋関係当局を越えて、そこで全てが一致することを確実にするために、調整されなければならない。

記事参照:Three hard questions of US maritime strategy

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書

1 Abandoned at Sea : The Tribunal Ruling and Indnesia's Missing Archipelagic Foreign Policy

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/aspp.12393

Asian Politics & Policy, Volume 10, Number 2, pp.300-321, April, 2018

Evan A. Laksmana, senior researcher with CSIS

Ristian A. Supriyanto, Indonesian LPDP Presidential PhD Scholar with Strategic and Defence Studies at the Australian National University

CSISの上級研究員Evan A. LaksmanaAustralian National UniversityRistian A. Supriyantoによる2016年のハーグ仲裁裁判所裁定と群島国家インドネシアの未成熟な対外政策に関する報告

2 Countering China's Militarization of the Indo-Pacific(War on the Rocks)

https://warontherocks.com/2018/04/countering-chinas-militarization-of-the-indo-pacific

War on the Rocks.com, April 23, 2018

Michael J. Green, Senior Vice President for Asia and Japan Chair at CSIS and Director of Asian Studies at Georgetown University

Andrew Shearer, Senior Adviser on Asia Pacific Security and Director of the Alliances and American Leadership Project at CSIS

CSISのMichael J. GreenとAndrew Shearerによるインド-太平洋の軍事化を進める中国への対応策に関する報告

3 Is China Changing the Game in Trans-Polar Shipping?

https://jamestown.org/program/is-china-changing-the-game-in-trans-polar-shipping/

The Jamestown Foundation China Brief, April 24, 2018

Matt Schrader, the Editor-in-Chief of the China Brief at The Jamestown Foundation

The Jamestown Foundation China Briefの編集長Matt Schraderによる北極航路に対する中国の影響に関する報告

4 A SIGN OF THE TIMES: CHINA'S RECENT ACTIONS AND THE UNDERMINING OF GLOBAL RULES, PT. 2

http://cimsec.org/sign-times-chinas-recent-actions-undermining-global-rules-pt-2/36168

Center for International Maritime Security, April 24, 2018

By Tuan Pham, on the executive committee of the Yokosuka Council on Asia-Pacific Studies

the Yokosuka Council on Asia-Pacific StudiesTuan Phamによる中国の行動が国際秩序に及ぼす影響についての報告

5 China Naval Modernization: Implications for U.S. Navy Capabilities--Background and Issues for Congress

https://fas.org/sgp/crs/row/RL33153.pdf

Congressional Research Service, April 25, 2018

Ronald O'Rourke, Specialist in Naval Affairs

海軍問題の専門家Ronald O'Rourkeによる中国海軍の近代化と米海軍の能力への含意に関する議会調査局の報告

6 New Navy Ship-to-Shore Connector Hits the Water - Changes Amphibious Warfare(Warrior Maven)

https://www.themaven.net/warriormaven/sea/new-navy-ship-to-shore-connector-hits-the-water-changes-amphibious-warfare-1KEH3GNHVUeROx0E5bJxDQ/

Warrior Maven, April 26, 2018

Kris Osborn, Managing Editor--Warrior Maven

Warrior Mavenの編集長Kris Osbornによる米海軍の新型両用戦艦艇と水陸両用戦の変革に関する報告

7 How America Could Lose Its Most Powerful National Security Tool

http://nationalinterest.org/feature/how-america-could-lose-its-most-powerful-national-security-25582?page=show

The National Interest, April 26, 2018

Takuya MATSUDA, a PhD student in War Studies at King's College London

英国King's College博士課程のTakuya MATSUDAによる米軍事力凋落の分析

8 Flashpoint East China Sea: Current Trends

https://amti.csis.org/flashpoint-east-china-sea-current-trends/

Asia Maritime Transparency Initiative, CSIS, April 26, 2018

Zack Cooper, a research fellow at the American Enterprise Institute

the American Enterprise Instituteの研究員Zack Cooperによる東シナ海の現状分析

9 China's Ballistic Missiles Threaten Australia's Self-Reliance(WAR ON THE ROCKS)

https://warontherocks.com/2018/04/chinas-ballistic-missiles-threaten-australias-self-reliance/

WAR ON THE ROCKS, April 27, 2018

Peter Layton, Visiting Fellow at the Griffith Asia Institute, Griffith University

Griffith大学アジア研究所客員研究員Peter Laytonによる豪における中国の弾道ミサイルの含意の分析

10 Grand strategy: all along the polar silk road

https://www.aspistrategist.org.au/grand-strategy-along-polar-silk-road/

The Strategist, April 27, 2018

Mike Scrafton, a former senior Defence executive, former CEO of a state statutory body, and former chief of staff and ministerial adviser to the minister for defence

元豪参謀長、国防相顧問Mike Scraftonによる中国の『北極白書』に見る中国の野望と米国の対応の在り方への提言

11 Flashpoint East China Sea: Potential Shocks

https://amti.csis.org/flashpoint-east-china-sea-potential-shocks/

Asia Maritime Transparency Initiative, CSIS, April 27, 2018

Zack Cooper, a research fellow at the American Enterprise Institute

the American Enterprise Instituteの研究員Zack Cooperによる東シナ海における中国漁船の動向や、防空識別圏など日中の対立事案が日本、米国、日米同盟に及ぼす問題の分析

12 Flashpoint East China Sea: Policy Implications and Recommendations

https://amti.csis.org/flashpoint-east-china-sea-policy-implications-recommendations/

Asia Maritime Transparency Initiative, CSIS, April 30, 2018

Zack Cooper, a research fellow at the American Enterprise Institute

the American Enterprise Instituteの研究員Zack Cooperによる東シナ海の潜在的問題に対応するため日米が採るべき方策の提言